近未来の地域気候変動適応研究(地域モデル研究)の今後の在り方(ディスカッションペーパー)

 近未来の気候変動適応研究(地域モデル研究)であるSI-CATは、気温、降水量、海水温に関する気候変動予測情報の創出、先端的なダウンスケーリング技術及び影響評価技術の開発、モデル自治体の適応策検討を支援してきたところ。
 本事業は、2019年度末に終了するため、今後の近未来の気候変動適応研究(地域モデル研究)の在り方について、現時点での考えを以下に示す。


1.背景(SI-CATを取り巻く状況)

  • 気候変動適応法(国:科学的知見の充実、自治体:適応施策の推進・計画策定)の施行。
  • SI-CATのほか、RECCA、創生プログラム、統合プログラムを通じた科学的知見の蓄積。
  • 影響評価に関しては、SI-CAT立ち上げ時とは状況が変化(環境省が取組開始)。
  • 文部科学省・気象庁共催「気候変動に関する懇談会」を開始。

2.国又は文部科学省として取り組むべき課題

(1)国は、環境基本計画や科学技術基本計画に基づき、気候変動の影響への適応を推進する観点から、適応に係る科学的知見を充実することとされている。なお、気候変動適応計画(平成30年11月27日閣議決定)において定められている国の基本的役割は以下のとおり。

  1. 気候変動適応の総合的推進
  2. 気候変動適応に関する施策の率先実施
  3. 多様な関係者の気候変動適応の促進及び連携の確保
  4. 国際協力の推進
  5. 科学的知見の充実・活用及び気候変動影響の評価

(2)文部科学省は、気候変動適応計画に基づき、気候変動予測情報の創出や気候変動の影響に関する調査研究を行うこととされている。

3.他省庁における気候変動適応に資する研究開発等の取組状況

  • 気象庁では、長期的な観測・監視、将来予測を行い、情報提供。気象研究所において、統合プログラム・SI-CATとの連携・協力の下、気候変動対策の強化に関する研究を推進。
  • 環境省では、2017(平成29)年度以降、適応策の検討等に資する次の取組を開始。地域適応コンソーシアム事業による自治体の影響評価・適応策検討の支援、環境研究総合推進費による影響評価研究及び国環研に設置した気候変動適応センターを通じて情報の収集、整理、分析及び提供等の業務や気候変動適応関連研究を実施。
  • なお、文部科学省は、SI-CAT、データ統合・解析システム(DIAS)を通じた予測情報提供、JAXA及びJAMSTECによる地上拠点・船舶・人工衛星による観測を、それぞれ実施。

4.留意・検討する際の視点(案)

 SI-CATは、近未来の気候変動予測情報をモデル自治体等に提供してきているが、気候変動適応法の施行等に伴い、環境省が、地方公共団体における適応策の検討支援等を開始した。一方、同法に基づき地方公共団体が適応計画を策定する努力義務が課せられたことから、地域ごとの特性に応じた適応計画の策定に資する近未来の地域気候モデルを一層精緻なものとして、予測情報を提供する必要が生じている。また、適切な適応計画を自治体で策定するためには、提供される科学的知見や気候モデルを的確に理解することが必要となる。さらには、気候変動に伴う課題に挑戦する研究開発も進んでいる。
 以上のことを踏まえると、文部科学省の行う近未来の地域気候変動適応研究(地域モデル研究)の取組として、環境エネルギー分野として以下の視点が重要なのではないか。

  • SI-CATにおいて創出された近未来の気候変動予測情報は、気温、降水量及び海洋の一部データのみで構成されている現状を踏まえ、地域の適応策を策定するために十分な精度がある気候モデルなのか、気候変動適応計画に定められた国としての役割を果たしているか、という観点から検討すべきではないか。
  • SI-CATが担っているモデル自治体等への適応策の検討支援は、環境省の対応状況に留意すべきではないか。
  • 自治体や事業者等が気候変動適応への対応を円滑に行うため、文部科学省は予測情報の出し手として分かりやすい情報を提供できているか、また、受け手のリテラシーは必要十分な水準を満たしているか、という観点で検討すべきではないか。
  • エネルギー分野における技術革新が及ぼす近未来の影響について、気候モデルや影響評価に適時適切に反映するとともに、地方公共団体等に関連情報とともに提供することを検討すべきではないか。



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