量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第13回) 議事録

1.日時

平成29年10月18日(水曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省15階 科学技術・学術政策局会議室1

3.議題

  1. 軟X線向け高輝度放射光源やその利用について
  2. その他

4.出席者

委員

雨宮委員、石坂委員、内海委員、金子委員、岸本委員、小杉委員、高橋委員、田中委員、山田委員

文部科学省

村上研究開発基盤課長、西山量子研究推進室長、大榊量子研究推進室専門職

5.議事録

【雨宮主査】  それでは、定刻になりましたので、第13回の量子ビーム利用推進小委員会を開催いたします。
 本日はお忙しい中、御出席いただきありがとうございます。
 本日は9名の委員に御出席いただいています。御欠席の委員が尾嶋委員、近藤委員、高原委員です。
 本日の会議ですが、委員会の運営規則に基づき、公開という形で進めさせていただきたいと思います。
 それでは、事務局より配付資料の確認などをお願いします。
【大榊専門職】  それでは、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の資料を御確認ください。
 議事次第にのっとり、資料1-1から資料3、及び参考資料1、2を配付してございます。また、前回までの資料につきましてはドッジファイルに入ってございます。資料に不備等ございましたら事務局までお知らせください。よろしくお願いいたします。
【雨宮主査】  資料、よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 それでは、まず、西山室長より、本日の小委員会の議論のポイントなどについて、御説明を頂きたいと思います。西山室長、お願いいたします。
【西山室長】   お手元の1枚目の議題につきましては、軟X線向け高輝度放射光源やその利用についてとなってございますが、本日の議論を大きく分けると3つお願いをしたいと思ってございます。毎回の話で大変恐縮ですが、参考資料の1を御覧いただきますと、整備運用計画案の策定に向けて今後検討すべき事項として、7月27日の小委員会で御議論いただいたペーパーを参考資料1として提出をしてございます。ここにございますとおり、挙げられた論点について順次議論を進めてきているわけでございますが、本日につきましては、前回からの議論に引き続きまして、ビームラインの整備運用について、ビームラインの利用収入をいかにビームライン若しくはエンドステーションの高度化、利用環境の充実に充てていくか。そのための具体的な仕組みですとか取組について、これまで御議論をしていただいております。それらについて、これまでの議論を踏まえまして、内海委員に具体策の案をまとめていただいております。それについて、本日、御議論をお願いしたいと思っております。また併せて、整備運用計画案につきましても、現状の案について全体を御確認いただくということを考えてございます。それが1つ目の議題でございます。
 もう一つは、学術分野のビームラインの利用についてでございます。この3GeVの放射光施設の整備運用に当たっては、人材育成も含めて学術分野の利用について、どのような役割分担なり連携なり協力体制を考えていくべきか、御議論をお願いしたいと思っております。本日、放射光学会長の小杉委員よりプレゼンをお願いしております。それを踏まえて御議論をお願いしたいと思っております。
 3つ目につきましては、これらの整備運用計画案の策定に当たって検討すべき事項、ほぼ終盤に来ております。最終報告書の検討段階に今後入っていくわけですが、本日は、まずは骨子案、全体の構成について御議論を最後にお願いしたいと思ってございます。
 以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 今日、議題の両括弧1の中の具体的には3つの議題があるという御説明でした。どうもありがとうございます。
 それでは、前回の小委員会において、本格的な産学共創をどのように進めるべきかについて議論いただいたわけですけれども、これを踏まえて、量子科学技術研究開発機構(量研)において具体案をまとめていただいたということで、量研の立場から内海委員に御説明を頂ければと思います。また整備運用計画案についても、これまで小委員会での議論を踏まえて検討を進めてきましたけれども、その進捗も報告いただければと思います。その説明を頂いた後、まとめて議論できればと思っています。
 それでは、内海委員、よろしくお願いいたします。
【内海委員】  ありがとうございます。量研の内海でございます。
 まず資料1-1の御説明をさせていただいた後で、整備運用計画の現段階での案を御紹介したいと思います。
 まず、はじめに、資料1-1ですが、ここの委員会で何度も議論されておりますように、新しい3GeV光源は、学術もしっかりやる、そして産業利用もしっかりやる。特に産業振興、産学の共創を本格的に考えていきましょうというところが大きな題目になっています。
 今日はこの後、小杉先生に、学術の方のプレゼンをしていただくとお聞きしていますが、私からは、この産学共創について、新しい枠組みをどういうふうに設けていくのか、そして同時にどういうふうに収入を上げていって、それを高度化や運用につなげていくのかというような観点で資料を作ってまいりました。これを運用計画にも書き込む予定ですが、その部分ついては調整中とさせていただいており、今日ここで御議論を頂いて、その結果を反映させたいと考えておりますのでよろしくお願い申し上げます。
 1枚目でございますが、高輝度3GeV放射光源における本格的産学共創についてというタイトルを付けさせていただきました。ちょっと読ませていただきますと、高輝度3GeV級放射光施設を利活用し、企業の製品開発競争に直接貢献できる課題解決型の本格的な産学共創スキームを構築する。実はこの課題解決型というのは、すでにSPring-8(Super Photon ring 8GeV)でも使われている言葉でございます。今SPring-8の産業利用ビームライン等でうまくいっていることをオール施設、全体でもっと発展させましょうという意味です。製品開発競争に直接貢献できる課題解決型の出口を意識した、産学共創スキームを構築しましょうということです。
 併せて利用料収入の大幅な増加を図るとともに、得られた収入をビームラインの整備や高度化に充てるなど、新たな研究開発やさらなる産業連携の促進に向けた整備投資につながる正のスパイラルを作るという、これが目的でございます。
 この背景は、この委員会でも何度も議論されておりますように、残念ながら今、国の財政事情は必ずしもよくないということで、例えばビームラインに関しましても、共用ビームラインは初期投資では何本かできるんですけれども、その後は、なかなか増えない。ましてやそれの改廃というところまでは、なかなかお金が回らないということで、是非とも得られた利用料収入をうまく活用して、そういうところへ持っていきたいというのがこの根本にある考え方でございます。
 幾つかアイデアがございます。まず1番目ですが、これは新しい制度の構築、今までの議論の中に出てきたものを絵にさせていただいたものです。ビームライン横断的なビームタイム枠というのを導入しましょうというのが、最初の課題でございます。傍線で書いておりますが、これが、1つ1つのビームラインの1年間のマシンタイムを表しています。今の特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律(共用法)の枠組みの中では、いわゆる国が共用法の枠組みの中で整備する共用ビームラインと、それ以外の専用ビームラインという形に分かれております。この専用ビームラインの中には、例えば国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)でありますとか、国のナショナルプロジェクトで大学が設置するもの、それからJ-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)の場合ですと高エネルギー加速器研究機構(KEK)が整備するもの、それからもちろん民間の企業さんが整備されるもの、それら全部が専用ビームラインというカテゴリーになっております。そして、共用ビームラインの使い方と専用ビームラインの使い方というのは、ある意味、縦割りの独立した運営になっているというのが現状の共用施設の状況です。SPring-8でもJ-PARCでも工夫をしていただいて、ここの壁をなくそうという努力をしていただいているのは重々承知おりますが、ここでは概念的に書かせていただきました。
これを新たな3GeVでは、法律改正が必要になるかと思いますけれども、共用ビームラインが共用法の枠組みの中で運営されるのは当然としても、新たないろいろな方々が様々な立場で作っていただける専用ビームラインの中にも、いわゆる共用法の制度の中で運用できるような共用枠というのを導入しましょうというのが1つの考え方でございます。つまり、ここの中では専用ビームラインの中の利用についても、ここの青の部分のビームタイムに関しては共用の枠組みで一元管理をしていく、ユーザー支援等々も、共用法の中でできるようにしていくということでございます。
 それから、産業利用については、今までの共用法のルールに従ったものとはがらりと変えて、新たなルールで産業利用枠というのを明確に定義して、そういう枠組みの中で利用を行っていきましょうというのが新たな考え方でございます。ここは例えば、いろいろな方が作られる専用ビームラインがございますので、必ずしも一義的に決まっているものではございませんけれども、例えば1つの専用ビームラインについては、産業利用枠というのが半分ぐらいあって、そこは今までの共用法のような運営とは違うような、産業界にとって非常に使いやすい運営をするというようなイメージでございます。
 それから、一方で、例えば大学が設置するような専用ビームラインについても、今までは、そこの中に共用を入れるというのはなかなか難しかったわけですけれども、そこにも一部、共用法の適用を受けるような共用枠を作って運用をしていけるようにする、大体そういうようなイメージでお考えいただければ結構かと思います。
 繰り返しになりますが、ビームラインごとではなくビームタイムで分けて共用枠を設定し、様々なビームラインの共用枠を一元的に管理することで、課題審査や支援を総合的・統合的に実施するというのが、共用枠についての新しい考え方の1つ。
 それから赤色で示した産業利用枠については、課題審査の簡略化であるとか、成果占有ルールというのを大幅に見直す。それからマシンタイムの配分についても、企業の開発ペースに合わせて迅速かつ柔軟なビームタイムの配分をするというような新しい、今までの共用枠の中でやっていた産業利用の取組とは違ったようなルールをここで作ろうじゃないかというのが1つの考え方でございます。
 ただし、それとセットで、利用料金については、共用のところの利用料金の設定とは違う考え方でやらせていただきたいということでございます。
 資料の2枚目でございます。これについては、これからもっと議論をしていきたいと思っていますが、最初のたたき台としてお示ししているものです。本格的な産学共創スキームを実現するためのいろいろな仕掛けを考えましょうということです。1つは、産業界と学術研究者、施設が協働して、出口イメージを共有した課題解決型の産学連携を推進するということです。具体的には、これまでもやっていることも多々ありますけれども、1つは、まず入り口のところで利用相談、コンシェルジュというのか、コーディネーターというのか、呼び方はいろいろあるかと思いますが、産業界の方が入ってきやすいような制度なり、相談室のようなものをしっかりと設けましょうということです。そこでは適切なビームラインを紹介するということにとどまらず、是非とも課題解決のための、こういうアプローチがありますよというところまで突っ込んだ御提案をできるようにしていきたいと考えている次第です。
 それから2番目。ここでも何度も紹介された例ですけれども、個別企業と学術パートナーの大学の先生とがタイアップして、SPring-8でも非常にいい成果ができております。それをSPring-8では、いわゆる産業ビームラインの中でこういうスキームを作って、数々の成功体験を持っておられるわけですけれども、これを3GeV光源では、施設全体としてこういうことをやりましょう、組織的にこういうマッチングのあっせんをしましょうというのが2つ目の柱でございます。個別の企業と専門性の強い優秀な大学の先生がタッグを組み、そこにインハウススタッフが絡んでいくことで、非常に強い産学共創ができるんじゃないかということを期待しているわけでございます。
 もちろん実際の実験ステーションでは、高精度・高スループットのデータの取得でありますとか、データの解析、それから解釈まで、大学の先生やインハウススタッフが協力して製品開発につながるような研究開発を進めていきたいということでございます。
 それからもう一つはメールインサービス、測定代行でございます。これも、今から3GeV光源が完成するまでの間に、非常な勢いで変わっていくだろうと想像しています。3GeV光源では、わざわざ現場に行くということがどんどん少なくなってくるかもしれないということを想像しているわけでございます。ですからこの測定代行とかメールインサービスというところの仕組みを最初から全体の中にしっかりと組み込んだ形で、制度設計をしていきたいと考えている次第でございます。
 ご紹介したそれぞれ1つ1つは、従来の放射光施設でもテスト的に、あるいは本格的にやられていることばかりかもしれませんけれども、これを産学共創スキーム、それを先ほど申し上げました産業利用のビームタイム枠というところとも合体させて、有機的に、効率的に進めていきたいと考えている次第です。
利用料金の方ですけれども、使用したビームタイムに対しては、いわゆる運営費回収の考え方に基づくビーム利用料金を頂くというのが、原理原則でございますが、さらにこういうような特別な別のきめ細やかな支援に応じて、それに応じたような適正料金も頂くという方向を是非とも検討したいと考えている次第でございます。
  それからさらに別にもう一歩踏み込んで、会社とそれぞれの企業と、それから放射光施設が組織的な共同研究体制を作るというような制度を構築していくということも検討したいと思っている次第です。これは、3GeV光源の主体機関が、個々の会社と組織対組織の本格的な共同研究契約を結ぶということです。そういう契約を結ぶことによって、当然ながらビームタイム配分とか実験そのものの御支援というのは組織的にさせていただくわけですが、それらはインハウススタッフとの共同実験という形で進めさせていただく。また、実験室とかラボに常駐していただくために、場所をお貸しするとかいうようなことを積極的に考えていければいいなと思っています。さらに、それとセットで、是非とも企業と3GeVとの間で、積極的な人事交流をはかっていく、いわゆるクロスアポイントメント制度というのは今はやりですけれども、そういったものを通じて、本格的な共同研究制度というのを作っていきたいと考えている次第です。
 実はこういうような枠組みを作ることに関しては、今、国の方でいろいろな法律なり制度を準備していただいているところです。その中では、産学官連携による共同研究強化のためのガイドラインというのが国の方で示されておりますので、それにのっとった形で進めていくことを想定しております。またお金のことばかりで大変恐縮なのですが、その中には、必要な経費として、直接経費やスタッフの人件費相当額というものだけでなくて、戦略的産学連携経費という言葉が、この法律ガイドラインの中にも書き込まれており、こういうものを積極的に頂いていって、共同研究を実のあるものにしていくということでございます。
 それからもちろん絶対にやらないといけない大前提として、知財や秘密情報管理というのもしっかりやっていく、また、当然のこととして、さらに高スループットデータベースやデータ解析装置、学術ネットワークの整備等々のハード・ソフトをしっかりと整備していくということでございます。
 それからもう1枚、3枚目ですが、少し新たな御提案というか少し考えているお話というのを挙げさせていただくと、ベンチャーのお話です。2枚目のページでお示ししたのは、すでに放射光をお使いの企業の方を想定しているわけですけれども、全く新しい芽を持っておられるような小さな会社、あるいはテーマ、ベンチャーとひとくくりで書いてしまいましたけれども、そういうところに対しては、先ほどの手厚い支援に対してたくさんお金を頂きますよというのは必ずしもふさわしいかどうか分からないと思っています。そういうような新しい芽が出るような、創薬や材料分野などのベンチャー企業とか、あるいは有望な研究テーマを有する中小企業さんたちに対して、例えば利用料金を大いに減額するとかというような優遇措置を設けることで、新たな光源を利用する企業の開拓を図りたいと思います。一方で、そういう方にはどういう形で対価をお払いしていただくのかということに対する1つのアイデアが、ここに書いた新株予約権です。将来に期待して、こういう株を持たせていただくことで、料金の代わりにするというようなことも検討に値するのではないかと考えている次第です。実は今、国の方でも研究開発力強化に関する法律を、改正する動きがあるとお聞きしています。その中で、国の独立行政法人もこういうベンチャー企業の株を持てるというような方向に議論が進んでいるとお聞きしていますので、それが可能になるならば是非ともそういうことも、この3GeV光源に応用していければいいなと考えているところで1つ挙げさせていただきました。
 それから4番目ですが、専用ビームラインとタイトルだけしか書いてございませんが、いろいろな専用ビームラインがありますので、十把一からげには議論できませんけれども、現状では専用ビームラインは、いわゆる地代といいますか、設置料というのは恐らく取っていないのだろうと思います。そんなところからも金取るのですかという御意見はあるかもしれませんが、あくまで一定基準の下でと書かせていただいていますけれども、専用ビームラインの設置料とか、そういうことも検討していくに値するのではないかということで書かせていただいています。
 これの背景は、ここでも議論になりましたが、専用ビームラインは一旦設置してしまうと、10年、15年と経過して陳腐化してもなかなか改廃は進まないという事情がございます。そういうときに、例えば一定期間を過ぎた後の専用ビームラインについては、設置料を頂くというルールにしておくと、改廃を促していくための1つの手段になりはしないかということです。細かい議論はこれからしていかないといけませんけれども、1つ芽出しとして書かせていただきました。
 全体のイメージを描いたものがここですが、まず産業界と学術が一緒になって、この製品開発の課題を見付けるところから、トップクラスの研究者と企業の方が一体化していただいて研究開発ターゲットの戦略的設定をする。大学の先生にとっては新たな研究テーマの開拓になるということだと思います。放射光を使って、データをとり、解析し、それを製品開発にフィードバックしていただいて、優れた成果と社会的に認知につなげるという、研究開発の中ではこういうサイクルを回していただく。同時に、増加した利用料収入をビームラインの高度化や周辺装置への新たな投資に回していくというサイクルを回したいと考えています。
 基本的な考え方は、標準的な利用に係る基本的なコストは国で負担する。すなわち加速器を回すであるとか、そういうところは国で負担する一方で、いわゆる産業界への手厚い支援に対しては利用者に応分の費用負担を求めるというようなことが原理原則かなということを考えている次第でございます。
 是非ともいろいろなアイデアや御意見を伺えればと思います。よろしくお願い申し上げます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 引き続き、整備運用計画案についての資料1-2を説明していただいて、その後で質疑の時間をとりたいと思います。よろしくお願いします。
【内海委員】  分かりました。資料1-2の整備運用計画案(案)と書いてある資料をご覧ください。まだ完成版ではございませんが、現状での案を御紹介させていただいて、これも御意見を賜れればと思っております。ワードの文章ばかりのもので、大変見にくいところで恐縮ですが、順番に御説明させていただきたいと思います。
 1ページを開いていただいて、目次でございます。1章のはじめにから、2章、基本方針、3章が整備する主要施設、それから4章が運用、5章が官民地域パートナーシップ、第6章が経費・スケジュールということになっております。経費・スケジュールのところに関しては、今日お示しできないので、検討中という形にさせていただければと思います。ということで今日は第1章から第5章までを御紹介させていただきます。
 それでは第1章、2ページでございます。このはじめにのところですが、これは今までの経緯が書かれているところでございますし、7月にお示しさせていただいた骨子の文章とほとんど一緒でございます。真ん中から、下から3分の1ぐらいのところに少し背景が書かれておりますが、「同年5月、我々量研が計画案の検討を行う国の主体候補として適切である」というふうにこの小委員会で見解をまとめていただいたということで、それを受けて国から量研に対して、この高輝度放射光源とその利用に係る整備運用計画案の検討を具体的に進めるような依頼があったということです。
 1枚めくっていただいて3ページ、基本方針でございます。これも骨子のところに書かせていただいた基本方針をほとんどそのまま踏襲してございますが、重要部分ですので、少しポイントだけ御紹介させていただきます。まず括弧1ですが、まずそもそもどんなものを作るのかということですけれども、先端性と安定性を兼ね備えたコンパクトな軟X線向け高輝度3GeV放射光源を作るということでございます。それを作って放射光による世界レベルの最先端学術研究、及び多彩な産業利用成果を創出、その2つ、両輪をやりましょうということで、そのための利用者視点に立った研究開発拠点を作りますというのが、1番目でございます。
 それから2番目でございますが、国内の他の放射光施設との役割分担とか相互性を考慮し、その中でも特に軟X線利用の研究の推進ということ、産業利用の拡大、それから汎用測定のハイスループット化、こういうようなことに重きを置いた整備運用をしていきたいということ。
 それから3番目でございますが、共用法の適用を見越しているところでございますが、これまでの制度の枠組みに必ずしもとらわれることなく、柔軟な発想や検討に基づく新しい放射光施設にふさわしい運用を目指すというのが3番目でございます。
 それから4番目ですが、これは、放射光科学に係る人材が結集してオールジャパンで整備運用に当たりましょうということでございます。量研が今、整備計画案の検討をさせていただいているわけですけれども、量研以外の関係機関の積極的な協力を仰ぎ、本光源計画を推進するという、オールジャパンでやりましょうというのが4番目。
 それから5番目が、何度も議論になっております官民地域パートナーシップでございます。国だけでなく地域や産業界の活力を取り込み、官民地域パートナーシップによって整備運用を推進するということをうたっております。
 それから6番目、できるだけ早く作りましょうということで、今のところは2020年代初頭の運用開始を目指すという書きぶりにさせていただいています。
 次のページからですが、全部読んでいると時間がございませんので、適当にかいつまんで御紹介させていただきます。まず4ページでございます。第3章、整備する主要施設でございます。まず3.1、加速器ですが、主なところだけ御紹介しますが、フルエネルギー入射用線形加速器、いわゆるラインナック及び蓄積リングからの3GeV電子加速器を整備するということです。その中でキーワードは、いわゆるマルチベンドアクロマートラティスの採用による電子ビームの低エミッタンス化を図るということでございます。本委員会の中間とりまとめでも書かれていた、主要パラメータをここに列記してございます。
 以降のところは項目だけ御紹介します。加速器のコンポーネントとして、3.1.1、ラインナック、それから3.1.2、蓄積リング、その蓄積リングの中に、コンポーネントとして磁石システムや真空システムや高周波加速システム、ビーム診断系と書いてございますが、恐らくこのあたりが予算要求の項目にそのままなっていくと思われます。
 それから3.1.3、このライナックと蓄積リングをつなぐライナック-蓄積リング輸送系、3.1.4.制御・タイミング系、3.1.5放射線安全を項目出しし、重要と思われるポイントを記載してございます。
 皆さんの御興味は、ビームラインの方にあると思いますが、6ページの3.2、ビームラインです。まず3.2.1挿入光源ですが、本施設では、挿入光源からのビーム利用を基本とするということです。軟X線領域、200エレクトロンボルトから5キロエレクトロンボルトにおいて高い輝度が得られることを特長とし、硬い方のX線領域に至る幅広い波長領域もカバーできるよう、必要とする波長領域や偏光特性等に最適したアンジュレータ又はウィグラーを採用いたします。言いたいことは、軟X線に特長を持つ光源ですが、ハードX線の方もカバーできるようにしましょうということです。
 それから次のところ、3.2.2のビームラインでございます。ビームラインは、施設全体で、最終的に25本程度を整備できるものとするということです。物理的に周長を決めてリングの設計をすると、ビームラインの数というのは二十五、六本程度になりそうというのが今の見通しでございます。ただし、全てのビームラインというわけではないですけれども、各ビームラインにおいて実験ステーションを複数設置するということも検討するということです。最終的に25本できるとしても、運用当初の段階においては、利用ニーズに配慮した10本程度のビームライン整備を目指すということを考えているところでございます。数行飛ばしまして、機器調整や試料交換、データ解析等において、いわゆるAIやロボティックス等の最先端技術を積極的に取り入れ、利用者にとって使い勝手のいい利用環境を構築するというところでございます。
 それから次のところ、具体的にどういうビームラインを作るのというお話ですが、どのようなビームラインを整備するかについては、今後、アカデミアや産業界から幅広く意見を聴取し、民・地域のパートナーとも十分な協議を行った上で決定していくものといたします。ただ、ここに何も具体例が記載されていないというのは好ましくないので、本光源の特長とか産業利用ニーズ、ここまでの小委員会での議論等々を踏まえて、恐らくは以下のようなものが候補として挙がってくるのではないかということを列挙させていただいたのがそこのビームラインの名称でございます。繰り返しになりますが、これを正式に決めていくのは、今後、皆さんの意見を取り入れて決定していくということで、ここはあくまでこういうものが想定として考えられる例であるという形でお示しさせていただいているとご理解いただければと思います。
 それから7ページでございます。今度は3.3基本建屋の部分ですが、この建屋に関しては、いわゆるライナックが入るところ(3.3.1ライナック棟)と蓄積リングが入るところ(3.3.2蓄積リング棟)に大きくは分けられ、それに加えることの3.3.3附帯設備やユーティリティという形で項目を整理させていただいています。この蓄積リング棟の外周部、実験ホールの外周部には、いわゆるインハウススタッフのための居室であるとか、測定準備室であるとか、共通実験室みたいなものが、恐らくここのところに入ってくると今考えております。
 駆け足で申し訳ございませんが、8ページでございます。いわゆる3.4研究準備交流棟という建物を別途整備することを検討しております。来訪する研究者の実験準備や実験研修や、あるいは異分野を含む産学の交流・融合促進の場とするような、そういう場です。そこにはユーザーズオフィスや利用者の居室や会議室なども整備するとともに、十分な調査の上で、必要な実験室の整備も行っていくことになろうかと思います。この小委員会でも何度も出てまいりましたが、放射光実験をする前の前準備というのが非常に重要であるというお話ですので、それを、あるものは基本建屋内に作るのかもしれませんけれども、あるものは交流棟内にということを検討していくことになると考えております。
 それから3.5、整備用地でございます。これについては言わずもがなですけれども、高輝度放射光源施設を確実に支持し、十分な耐震性を確保できる安定した地盤であるということが求められるわけです。それで加速器の安定運転に影響する周辺環境からの振動やノイズなどが十分に小さく、それで面積は確保できることが必須であると。これは最低条件ですけれども、それに加えでアクセスや宿泊インフラなどの利用者の利便性が高いということも極めて重要な選定ポイントになりますでしょうし、さらに重要なことは、周辺の産学集積や産学連携の発展可能性など、産学共創の拠点となり得る場、いわゆるリサーチコンプレックスということがよく言われますけれども、そういうようなことも条件になりますよということでございます。その下には具体的な3.5.1敷地寸法、それから3.5.2地盤要件というのを数値化して書かせていただいております。
 今度は9ページでございます。第4章の運用のところでございます。調整中と赤色で書かせていただいていますが、ここのあたりの記述、今日の小委員会の御意見等も踏まえて、もう少しブラッシュアップしたいと考えております。今の段階のものをそのまま読ませていただきますが、一番はじめの表書きのところは、世界レベルの最先端学術研究や産業利用による質の高い成果の創出を目的とした研究開発拠点であるので、広く門戸を世界に開いた国際的な共用施設であるとともに、産学共創の場としての役割を担うということ。それから自由な発想と意欲に基づく真理の探究と、いわゆる学術研究はこれに当たると思いますが、それと社会のニーズに基づく課題解決の双方の要請に的確に応えることができるような運用をやっていくということでございます。恐らくこれは量研だけで決めるものではなくて、今後、国の主体と地域・民間のパートナー機関との間でも詳細な協議を行い、綿密な連携の下でこれを進めていくということになろうかと思います。
 それで幾つか項目立てをしてございます。まず4.1、運転時間です。運転経費の極小化というのは至上命題ですが、やはりできるだけ長時間の運転時間が望まれているところです。今もSPring-8のマシンタイムが足らないという話が聞こえております。国際的な標準では年間6,000時間ぐらいの運転をしているところが多いとお聞きしていますので、是非とも新しい3GeV光源では、その標準である6,000時間を超える加速器の運転を確保して、ユーザータイムとして5,000時間というようなところをひとつ目標として考えていきたいと考えております。それからさらに、これも大きな問題になっていますが、年間を通じて、例えば夏、日本中の放射光施設が止まっているというような状況をできれば避けたいということで、ほかの施設の停止期間を考慮した運転スケジュールを考えたいということでございます。
 それから4.2ビームラインの整備の仕方、運用の仕方でございます。国内の他放射光施設との役割分担や相互性を鑑み、この放射光施設において、恐らく軟X線の利用の促進、産業利用の拡大、汎用測定のハイスループット化などに重きを置いたビームライン整備をするということが適切であろうと考えています。運用当初段階に10本程度のビームライン建設を目指すというふうにしていますが、恐らくは、共用法の枠組みに基づき国の主体が設置するビームラインと、地域・民間のパートナー機関が設置するものが先行するということを今のところは想定しております。将来的にはそれ以外に、大学や大学共同利用機関法人や別の研究開発法人が設置するビームライン、あるいは国の、NEDOのプロジェクトのようなもので設置するようなビームラインというのもあるでしょうし、あるいは100%民間企業が設置されるようなものというものも出てくるだろうということを想定しています。そういうような多種類のビームラインが整備されることが予想できるということで、そういった様々なビームラインに関しては、先行事例の経験を生かした上で、大学等の学術コミュニティや産業界の今後の検討進捗に大いに期待するところでございます。
 ただ、重要なこととして、10ページ目の上の方に少し書かせていただきましたが、ビームラインの整備に当たっては、施設全体を俯瞰して、学術研究にも産業利用にも効果的でバランスのとれた形にするということが極めて重要で、お金を取ってきたから勝手な専用ビームラインをどんどん作るというのは、必ずしもよろしくないというのは今までの議論にもなっていたことだと思います。ですから財源の問題もございますので、いろいろな種類のビームラインがあるということは否めないと思いますが、それをまたいだポートフォリオというのを是非とも構築する必要があるということをここに書かせていただいています。また、科学技術の急速な進歩や利用ニーズの変化に対応するため、評価に基づいたビームラインの適切かつ迅速な改廃ということを少し踏み込んで書かせいただいています。いわゆるスクラップ・アンド・ビルドの話です。作る前からスラップかという話もありますが、ここはやはり最初から十分に考えておく必要があるかなと思っています。それを円滑に行えるということが必要であって、設置者の別やビームラインの種類を問わず、整備・運用・評価・改廃などに関する多くの部分を、施設全体で一元的に管理できるようなシステムというのを是非とも作りたいと。それをどういうふうにするのかというのはこれからですが、そういうところがないと、なかなかそういうスクラップ・アンド・ビルドはうまく進んでいかないのではないかと考えております。
 それから4.3、利用制度及び支援体制でございます。繰り返し申し上げていますが、共促法の適用を受ける施設となることを想定していますが、その運用に当たっては、さらに進化したものが求められるということで、少しそのあたりについてのことを書いてあります。例は、先ほど御紹介しましたビームライン横断的なビームタイム制度の導入でございます。先ほどのパワーポイント資料では書きませんでしたが、1つの課題で複数のビームラインを使いたいという話は常に出てまいりますのでそれについてもここに書いております。それから特に産業利用については、課題審査や成果公開/非公開ルールの大幅な見直しを検討すべきだと考えている次第です。
 次のページ、11ページでございますが、ここのところはちょっと全面的に今調整中と書かせていただいておりまして、今先ほどのパワーポイントの資料の、主に2ページ目の内容を、恐らくもう少しブラッシュアップした形でここに書かせていただきたいと考えています。
 それから利用料金のところですが、ここも今検討中ではございますが、基本的な考え方は、ここに記載のとおりであろうと思っています。成果公開の学術研究に対しては、原則ビーム料金は無料、ただし、消耗品費は頂くという今までのルールに乗った料金体系を想定しています。ただし、学術研究でも、マシンタイムを優先的にプロジェクトで使用したいというようなときには、SPring-8でも既に実施されていると思いますけれども、その場合には成果占有による利用料金を頂くというのが基本かなと思っています。一方、産業利用に関しては、原則成果公開であろうと非公開であろうと、一定の料金を頂くというのが原則かなとも考えておりますが、少しそのあたりまだ詰まっていないので、もう少し検討させていただきたいと思っています。
 また、メールインサービスがかなり多くなってくると思いますが、その料金体系は必ずしも利用時間で決まるものではないので、それは別途、きちんと設定するということでございます。
 あと4.4の人材育成、この小委員会で出てきた議論を書かせていただいています。
 それから4.5には、本施設が日本の放射光施設のネットワークのハブになりたいということ、それから量子ビーム、中性子施設等々も含めた強い連携やネットワークが必要で、その中で是非ともスタッフの人材の流動化を施設間で図りたい、というようなことを記載しております。
 ちょっと長くなってしまいました。最後の項目でございます。官民地域パートナーシップでございます。ここは運用を通じて官民地域が対等な立場で協力関係を構築して事業を遂行していく官民地域パートナーシップにより推進することが肝要ということを書かせていただいています。そしてそのときに、民及び地域における協力の中核となる機関を指定し、当該機関が地方自治体、産業界及び地域学術機関との連携協力によるハブ機能を有し、国の主体と地域・民間との連絡窓口となることが求められるという記載にさせていただきました。
 骨子で書いたことと、基本的には変わっておりませんが、整備についての役割分担というのを書かせていただいています。具体的には、加速器については、国が予算要求をして、国の責任で整備する。建屋についてはパートナー側で用意して整備を行っていただく。ビームラインについては、国が国の財源により整備するものと、パートナー機関が財源を用意して整備するもの、両方が考えられるということ。それから研究準備交流棟については、パートナー側にお願いしたい。整備用地についても、場所の確保並びに造成というのを是非ともパートナー側で御検討いただきたいという記載をしております。
 最後に、この官民地域パートナーシップを実際に進めるにあたっては、非常に難しいことが多々ございます。これを有効に機能させるためには、官民地域の間で位相が整った推進体制が確立されることが是非とも必要であって、分担された役割を同時並行的に進めるようなことができるような可能なシステムを、パートナーが決まった段階でそういうものをしっかり作って、全体の計画遂行に遅れが生じないようにすることが重要である、ということを書かせていただいております。
 最後、6章として経費とスケジュールについて、今検討中のものが付いて、整備運用計画案の全体像ということになります。
 少し長くなり申し訳ありませんでした。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 今、内海委員から説明いただいた資料1-1、資料1-2、まとめて御質疑、議論したいと思います。よろしくお願いします。
【小杉主査代理】  2つ目の御説明の中に研究準備交流棟というのがあるのですけれども、ここは専用で居室を使いたいとか、専用で実験室を使いたいとかいういろいろな要望に対応できるような形で設計されるのか、あるいは大きな実験室の中で、それぞれコーナーだけを専用に割り振るようにするのか。先々の需要に応じて、最初からしっかりしたものを作っても、空きが埋まらないこともあったりもするので、そんなに最初から計画は難しいかもしれないのですけれども、そのあたりはどういうふうに。
【内海委員】  ありがとうございます。ビームラインに加えてそういう周りの、いわゆる周辺環境ですね、そこが非常に重要であるというのは今までの議論でも明らかなので、そこに関してはきめ細かくこれから対応してまいります。実を申しますと、まだ基本建屋についても、研究準備交流棟についても、具体的な設計はまだ始まっておりませんので、今、小杉委員がおっしゃっていただいたことを十分考慮した上で、どういうものを優先的に整備していくかを検討してまいります。今、お答えにはなっていませんが、そういうことの認識は十分に持っているつもりだということでございます。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
【小杉主査代理】  もう1点。
【雨宮主査】  どうぞ。
【小杉主査代理】  前半のお話では専用ビームラインについての運用方法の御説明がありましたが、例えば1枚目のところで専用ビームラインではいろいろな枠が入る形にはなっておりますけれども、学術の方で議論している中では、この1本の専用ビームラインを使う場合でも、1つの特定の装置で全部使うというよりは、エンドステーションを入れ替えたりするというのもあるし、エンドステーションがそれぞれ違う組織というのもあり得るので、そういうところの枠組みも入れて欲しいところです。実際、専用ビームラインをある組織が作ったとして、1つの装置で6,000時間を使い切るという実験は、かなり確立したルーチン的な装置になると思いますが、学術では必ずしもそうじゃなくて、開発中のところでは成果は出ないですし、それだけで専用ビームラインを学術が使い切るというのはまずいので、期間を分けて開発中の装置をつなぐとか、それが終わったら、ルーチン的に使える装置をつなぐとか、空いた時間があれば、民間でも利用するとか、非常に難しい高度な実験を入れるとか、1本のビームラインをいろいろ分けて使うというのもあり得るので、そのあたり是非含めるような形を考えていただくといいかなと思いました。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
 じゃあ私から、資料1-1の1枚目なのですが、専用ビームラインのところで、ある専用ビームラインで共用枠と産業利用枠と組み合わせがあるけれども、三色だんご的なこともあり得る。
【内海委員】  もちろんそうです。
【雨宮主査】  ですよね。
【内海委員】  もちろんそうだと思います。
【雨宮主査】  それから、そのときの専用枠の場合のビームタイム配分の課題審査は、共用枠とは別に行うということを前提としているわけですね。
【内海委員】  はい。私のイメージでは、そこは入り口のところから分かれていてもいいんじゃないかなと思っている次第です。
【雨宮主査】  今までも専用ビームラインで、例えばSPring-8とだと2割は共用に供出するというルールがありますが、その割合がもう少し増えるということなのだろうと思うのですが、そのときの専用ビームラインを建設するときの建設費は、先ほどの説明で建設費プラス地代ということですね。
【内海委員】  建設費は、当然ながら持ってきていただいて、作っていただく。それで、一番はじめに作るときに地代を頂くかどうかどうかというのは、これは相当な議論になると思うので、余りそこまで突っ込んでは考えていませんが、そういうことです。
【雨宮主査】  建設費というのは上流のインサーションのデバイスから入るのでしょうか。
【内海委員】  今回の整理の仕方では、インサーションデバイスからビームラインという整理をしています。
【雨宮主査】  そうですか。
【内海委員】  ただ、小杉先生の今日の御資料を今、拝見していたのですけれども、むしろ上流部分だけ共用で作ってほしい、後ろだけお金を持ってくるから、実験ハッチだけ作りたいとかそういうようなことも、多分これも出てくる可能性があるだろうということを今回感じました。その可能性については今回はここに含まれておらず、国が作る共用ビームラインと、他の組織が作っていただく専用ビームラインという、整理にしてあるので、もう少し踏み込んだ議論が必要かもしれません。
【田中委員】  ちょっといいですか。
【雨宮主査】  はい。
【田中委員】  その点で1つコメントをさせていただきます。SPring-8ではビームラインを作る時に、特に軟X線では、ヘリシティースイッチングに対するいろいろな要求があるので、ビームラインで何をやるかというサイエンスとアンジュレータのデザインが密接に関連することが多く、アンジュレータより下流を取っ替え引っ替えするというのは、実験ニーズとうまく噛み合えばできるかもしれませんが、なかなか難しいなと感じます。そこでもう一つ、余りうまくいっていないことに関連してコメントします。こういうところで言うのは恥をさらすようですが、今後のために敢えて言います。SPring-8はエネルギーが高く、どちらかというとアンジュレータが与える摂動のエミッタンスに対するインパクトというのは比較的穏やかというか、少ない方なのです。それでも、特殊なアンジュレータがビームに与える影響というのが、いろいろなところで問題になってきています。3GeVですと、ビームのエネルギーが低いので、それがより深刻になるでしょう。どういう光を出すかという要求を、ナイーブに全てアンジュレータの機能に押し付けるのではなくて、ビームラインの方でもある程度分担できるようにしていく、アンジュレータ側の機能を軽くしていかないと、大変なこと(折角の光源性能を活用できない)になると思います。それが、少なくともSPring-8の20年の運転経験として言えることだと思います。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ。
【西山室長】  今の御議論の中で、少し補足というか、こういう観点ということなのですけれども、国側のやはり観点で申し上げると、蓄積リングの部分については、それは皆さんの共用だということで、国費でやるべきだというのはすんなりすとんと入るんですが、各特殊なアンジュレータを使う場合、若しくはそれぞれのビームラインを引っ張ってくるところから、それについてはそれぞれの使う側の受益者の負担というのが、基本的には原則になってきますので、全部ビームラインを建設して、最後のエンドステーションだけお金を持ってきますというのはなかなか難しいかなと思います。ですので、受益者負担をどうするかということもよく考えながら、できるだけ柔軟な考え方を取り入れたいとは思っているのですが、そういったことも考慮する必要があると思っています。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ。
【金子委員】  1-1の1ページ目なのですけれども、産業利用枠は、専用ビームラインだけというふうにこの絵だと見えるのですけれども、そういうことでしょうか。
【内海委員】  おっしゃるとおり。すみません、実は共用ビームラインのこの青色のところにも赤色のところを設けることを検討したいとは思っています。ここは今、議論を明確にするために、上の3本全部青色になってしまっていますが、ただ、そこのところに関しては、これから法律や量子研究推進室(量研室)ともいろいろこれから御相談していかないといけないのですけれども、国が設置しているビームライン関しても、現状は共用法の共用ルールの中で産業利用をやっていただいている。今回の提案では、専用ビームラインにおいては独立的ルールで産業利用を運用するというのはすんなりできてしまうのですけれども、国が作る共用ビームラインの中にそれをしみ出してやるためには、少し乗り越えないといけない事柄もありそうなので、ここの図面では入っていないということでございます。
【金子委員】  分かりました。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
 田中さん。
【田中委員】  本格的産学共創をうたった2枚の資料に関してですが、これまでの議論が反映されていて、制度設計自体は大変すばらしいと思います。制度設計はいいと思いますが、それがすばらしかったならば、産業利用が促進されるかというと、必ずしもそんな単純なものじゃない。すばらしい制度をちゃんとワークさせるための仕掛け、特に最初の仕掛けが要るわけです。例えばSACLAでも、最初は、産業界の人たちには、そのメリットが明確ではなかったので、引き込む入り口を用意した、トライアルユースのようなものですが。産業界の人たちが、確かに役に立つね、これだけのバリューがあるから、このお金を払う価値があるというところを納得して貰う。そういう導入があって、定常状態にはじめて入ることができる、制度に則ってくるくる回っていくと思います。スタートアップというか最初の導入の部分をどう立ち上げていくかがなかなか難しい。2枚の資料にトライアルユース的なものが全然書かれていないのですが、呼び込む最初の部分というものもセットで考えるべきでしょう。そこでは無料なのか、ともかく、定常飛行に移った後の価格体系ではないはずで、そういうことも考慮された方がいいと思いますね。
 それともう一つ付け加えさせていただくならば、この2ページ目の収入を高度化に回していくというのは、まさにそのとおりで、実は我々もそういうことを、制度にはなっていないですけれどもやろうとしています。そのときに一番問題になるのは、お金ではなくて、高度化をどうしていくかという、その中身なんです。要するにお金があっても、ただの物買い、例えば、検出器を買いましょうとかでは、本当に世界最先端のビームラインを作ることにつながる高度化のプランニングが、施設として、全体としてできません。その経験から考えて、こういう制度があってもうまくワークしない可能性が高い。結局は人間というか中身の問題であって、制度を最初にちゃんと作った後に、それをどう機能させるかという肝心なところをどう実現するかです、機能しないと制度が泣いちゃいますので。思い描く程簡単じゃないなという印象を持ちます。
【高橋委員】  同じところで、こちらの資料の10ページのところです。この一番上にあった、施設全体を俯瞰してビームラインの整備を今後も進めていくというお話があったと思うのですけれども、そこに責任を持つ、俯瞰するのは誰なのかといったら変ですが、どういった組織なのかということの案というのは何かあるのかなとも思います。
【内海委員】  現時点での我々量研は、整備運用計画案をつくる国の主体候補という立場です。仮に今後、この整備運用そのものを量研がやりなさいということになった場合には、もちろんパートナー機関との位置関係というのがございますけれども、国の主体である量研が、一義的には全体に対しての責任を持つということになるのだろうと思われます。SPring-8におけるビームライン全体のポートフォリオについては、理化学研究所さんが最終的な責任を有しておられるのだと思いますが、専用ビームラインの審査はJASRIさんがやっておられたりするので、そのあたりももう少し整理した上で、少し今より強い強制力を持つような形にしていかないといけないのかなと考えています。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
 山田さん。
【山田委員】  ビームラインに関して施設全体のグランドデザインがどうしても必要だと思います。しかし実はそれはなかなか難しい。中性子科学会としてJ-PARCのMLFのビームラインのグランドデザインを作成する立場にありましたが、汎用的なビームラインを最初はメインにし、数年後に先端的なビームラインを作る具体的なビームラインを幾つかアサインしていましたが、現実に施設がスタートすると、例えばNEDOのお金が取れましたとか、大型の科学研究費助成事業(科研費)が取れたから作らせてくださいという要求が来ます。そのときにもグランドデザインのあるなしで、対応の仕方が違いますが、どうしてもそういうことは起こってしまいますね。その際どのような対応をするかは、やはり施設側がどれだけきちっとした哲学(ビジョン)を持っているかが大事です。中性子では1台の金額が大きくて、お金が取れても、グランドデザインに乗っかってないからだめよということが言えないですね。放射光の場合には、金額はもう少し少ないかもしれませんが、それでもやはりなかなか難しい対応を迫られることは心に留めておく必要があると思います。同様に装置の改廃も難しいと思います。それをどういう組織やシステムでやっていくかが、難しいけれどもやらないといけない。そうでないと、どんどん時代遅れのビームラインが残ってしまうことが起こるかもしれません。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょう。
 岸本委員。
【岸本委員】  コメントだけになるのですけれども、この本格的産学共創による問題解決型って、非常にすばらしくて重要なことです。それで、ちょっとコメントをさせていただきたいのが、この共同研究制度ですけれども、これは恐らく契約に基づくものだと思うのですが、その場合に契約に何か月も掛かるようなことだったりとか、例えば正直ベースで言うと、もう今すぐにでも今期の課題、来期の課題で実験を行いたいのだけれども、契約をまたいでいる間に期をずらしてしまったとか、そういうことがあると、こういうものはうまくいかないはずなんですね。ですので、そういうところも鑑みて、ちょっと計画していただきたいなということと、これからの議論になるのかもしれませんけれども、共同研究制度があったときに、そこから課題申請をするのか、それともビームタイムが確保されるのか、これによっても大きく変わると思うのですね。そのあたりもちょっと今後議論が必要になってくるんじゃないかなと思いますので、是非また御検討をお願いしたいと思います。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
 ビームラインの挿入光源のところの記述で、軟X線領域が200eVから5keVは、全く異存ないのですが、その下に硬X線領域として5から20keVというところ、これはあえて私は硬X線ではなくてX線領域とした方がいいかと思います。というのは今まで我々、X線領域として使っています。20keV以上のX線用に硬X線という言葉を残しておかないといけないのじゃないかと思いますので。
 あとミスプリントだと思いますが、6ページの下から2行目にX線吸収微細構造ビームラインと、7ページの上から2行目に硬X線吸収微細構造ビームラインとありますけれども、これは重複していると思います。
【内海委員】  ありがとうございます。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
【内海委員】  雨宮先生、すみません、後で詳しく教えて頂きたいのですが。「なお、硬X線」って書いている「硬」を単に取ってしまうのが一番正しいという感じですか。
【雨宮主査】  その方が私はいいんじゃないかと思います。基本的に軟X線のエネルギー領域を定義すればそれで十分であり、従来、X線と呼ばれていたエネルギー領域を全て硬X線と言い換えてしまうのは、混乱を招くと思います。
【内海委員】  分かりました。
【雨宮主査】  世界的に見ても、どこを軟X線にするか、硬X線にするか、議論がまだ決着していないので、使うときには必ずエネルギー付きで議論すればいいかと思っています。そのときに5keVから20keVはX線とするのが一番自然で、それを硬X線としてしまうのは、大多数のX線実験している人が、いつからX線が硬X線に変わってしまったのかという、違和感を感じると思います、ということがコメントです。
【内海委員】  分かりました。
【山田委員】  資料の1-1のところの「ビームライン横断的なビームタイム枠」(中性子では共用ビームタイムという言葉を使っていますが)、を導入する必要性、なぜこれを入れるのかというのが、どこかに入った方がいいという印象を持ちます。今までいろいろな議論が多分あったと思いますが、一番重要な点をもう1回再確認した方がいいのでは。例えばビームラインは、複数のスタッフが、複数のビームラインをきちっと、共通化も含めて維持管理、先端化するという意見があったし、それにより蛸壺化に陥らせないという議論もあったと思います。なぜこういうビームライン横断的なビームタイム枠を設定するのかは、やはり広く伝えた方がいいという気がしました。
 それから2ページ目の一番右側のA社、B社、C社、大学教授って書かれている部分、気分的な面かもしれませんが、「大学教授」でないとできないのかなという印象を持ちますので別の言葉が適切ではないでしょうか
 それからもう一つ、この絵の中に是非入れていただきたいのは、両矢印で表せるとおもいますが、やはり「人材交流」だと思います。人材交流を活性化して、最終的には課題解決による製品化が出てくるので、この絵の中に、例えば大学教授からA社への人材交流、それが施設スタッフを経由して行なわれるとかですね、やはり人の動きをこの中に示すことが重要という気がしています。
 それから先ほど内海委員が説明された、「施設と企業間の組織的共同研究制度」、そういうものも、この絵の中には描けると思います。この基本の図に、いろいろなものを組み込んで、ブラッシュアップされたらいいと思います。
【雨宮主査】  まだあるかと思いますが、ちょっと時間が迫ってきていますので、次の議題に移りたいと思います。2番目の議題ですが、学術分野のことについての内容になりますが、現在、放射光学会の会長である小杉委員に、学術分野のビームライン利用についてまとめていただきましたので、御発表いただきたいと思います。15分ぐらいでまとめていただければと思います。よろしくお願いします。
【小杉主査代理】  それでは、早速始めたいと思います。今日は、基本的には放射光学会長の立場として、オールジャパンの視点で学術的なところを中心にまとめた御報告になります。
 まず、1ページ目です。日本の放射光の施設というのは全世界にある施設の2割弱が日本にあるというような状況ですので、現在まで放射光学会として国内各施設をどう分けるかといったところで、学術研究用とか産業利用用の施設だとか教育用の施設だとか、そういう整理をしてきたのですが、実際はSPring-8、先週20周年祝賀会がありましたけれども、この20年間やってきて、こういった整理はほとんど意味がないことがはっきりしてきました。学術研究が先端的で、それが終わったら産業利用や教育に使えばいいというような考えを昔はよくやっていたのですけれども、実際は教育の観点でも、今、先端の研究ツールがどうなっているかを経験しないことには教育にはなりません。SPring-8ができたおかげというのもあるんですが、今ではもうこういう整理は意味がないという前提で、今後、学会としてどう各施設の特徴を整理すればよいかということを考えなければならないフェーズになっています。
 この20年間の経験を踏まえて、低エネルギー領域で、今、世界では第三世代から第四世代に移っている中で、第三世代さえもないという日本の状況が非常にまずいということで、SPring-8の経験も踏まえた上で、学会として3GeVクラスの高輝度施設を提案してきて、今日に至っているわけです。1ページ目に0歳と書いていますが、満で言うと0歳じゃなくて、まだマイナス1歳かマイナス2歳か分かりませんので、0歳は書き過ぎです。
 それで、2ページ目に行きますが、20年前を思い出すと、SPring-8が突然現れたわけではない。その背景としては、当時20歳、今となってはもう40歳ぐらいになっている既存の施設があるわけですね。例えばアンジュレータでも東京大学物性研究所(物性研)の施設でのアンジュレータの開発が高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所(物構研)というかPF-ARでの真空封止のアンジュレータの開発になり、その蓄積があって、真空封止のアンジュレータをベースにしたSPring-8ができたという流れもありますし、それから人も随分、物性研、自然科学研究機構分子科学研究所(分子研)、物構研からSPring-8の方に動きました。そういう意味ではこの重なっている部分というのは非常に重要でして、ここがちゃんとできたおかげで、このSPring-8が20歳を迎えても世界最先端の施設として君臨しているわけです。また、そのフィードバックが学術の方にもあって、SPring-8があるおかげで、既存の施設の位置付けもはっきりしてきています。例えばSPring-8は100ミリアンペアですけれども、PFは400ミリアンペアとか500ミリアンペアとかで、電流値を考えると光量はほとんど変わらない。光量は大きく変わらないという点を活かして、輝度やコヒーレンス以外の切り口で既存学術施設が貢献するという位置付けができてきたわけです。また、SPring-8は利用の成果を上げるというところが結構問われているので、すぐに成果に結び付かないような開発研究をじっくりとやれるかというと必ずしもそうじゃない。その部分は既存学術施設で支えているという位置付けが最近はっきりしてきたということです。
 3ページになりますが、そういう中で3GeVクラスのものを位置付けるということを考えないといけなくて、SPring-8の成果を活かすばかりではなくて、学術と重なっている部分が非常に重要でして、そこで人やノウハウを、既存学術施設側が支えるところが非常に重要であるということです。今、物性研、分子研、物構研というのは大学共同利用の機関だったり拠点だったりしているんですけれども、そういうところが連携を組みながら、3GeVクラスの計画に関わっていかないといけないということで、関係者で議論を始めております。ある意味、今後、大学共同利用として将来どういう施設を持つべきかといったところを考える際に、SPring-8と3GeVクラスの2つがある前提で、違う切り口での施設を将来に向けて位置付けることが必要です。今から20年後を考えると、SPring-8が40歳、3GeVクラスが20歳、既存学術施設が60歳で、もう多分60歳はないので、新しい学術施設の位置付けも見据えて、3GeVクラスを考えないといけない状況に学術サイドは置かれています。
 4ページになりますが、学術研究の基本は、手法の開発をして、確立して、応用するというところ。あるいは非常に特徴ある試料を解析して成果を出すところ。こういうところで人材養成が自動的に入っておりまして、大学院生の博士課程は5年ですし、ポスドク含めると大体5年から10年サイクルで新手法や新材料が生み出されているというのが学術の方の動きではあります。そういう中で共用施設や地域施設が日本にはあるわけで、確立した手法で新しい試料を測定するということもやっていますし、大学共同利用機関や大学の共同利用・共同研究拠点(大学共同利用機関・拠点)は独自の光源を持って、以前、独自の光源を持っていた物性研はSPring-8のアウトステーションだけになってしまいましたが、開発研究を含めて共同利用を展開しています。学術研究の成果がまた共用施設や地域施設にフィードバックするというのが現在の流れです。
 新しい光源に向けてやることはいっぱいありまして、X線光学や電子光学を駆使してやらないといけない。要素技術でもいろいろありますし、高精度化もいろいろ課題があります。それから高速、高感度、自動、リモート、この辺も確立した手法というのは必ずしもないので、しっかり学術の方でやっていかないといけないですし、今や単に三次元の顕微ができるというだけではなくて状態、状態でも単に電子状態ばっかりじゃなくてスピンとか入ってくると四次元、五次元、時間が入ると六次元、七次元、こういうのはどんどん進んでおります。それからクライオ電子顕微鏡で典型的なのですけれども、単粒子解析的な技術というのが、もうX線のFEL(Free Electron Laser)でも近い技術を使っていますし、高輝度光源になってくると、当然、試料ダメージが深刻化するので、この種の技術をちゃんとやらないといけない。それから単機能で性能を上げるというのがありますが、多機能も重要。ただ、この場合、単なる多機能は意味がなくて、二兎を追ってそれぞれの機能を落とすというのはやめた方がいい。単機能で性能が上がったところで多機能化するというのが筋です。それから、必ずしも放射光だけで済ますのがベストじゃなくて、ほかの手法と組み合わせるというのも重要になってきますから、単独で放射光の施設があれば済むという話じゃなくて、いろいろな研究ができる環境の中で放射光施設があるというのは、海外でもそういう環境作りをした施設というのは増えていますので、このあたりも考えていかないといけない。今はリアルな系をそのまま測定するという、放射光の実験のために試料を合わせて結晶化したりするという時代ではなくて、実際、機能を発している状態のものをそのまま直接測定しないといけない時代ですので、試料の取扱いについてはいろいろな技術を開発してやっていかないといけない。このように沢山の課題がありますので、学術の貢献というのは非常に重要だと思います。
 5ページになりますが、賞味期限、変なタイトルになっていますけれども、ビームラインというのはどういうふうに捉えるかというと、上流部と下流部があって、これは必ずしも切り離せないという実験もありますが、ここでは、切り離せるのではないかということで整理しております。上流部は加速器の基幹部を含む部分です。下流部はエンドステーション。上流部というのは挿入光源と一体化してコストは非常に掛かります。これは更新・高度化の周期は20年以上です。SPring-8が20年たって、全て更新しなきゃいけないというわけではなくて、まだまだ使っていけるところだと思います。しかし、これからは消費期限というのをちゃんと見極めて、その前に手を打たないと、老朽化に追われるフェーズに入ってしまってはだめで、老朽化が始まる前に施設側の観点でしっかり次の手を打つというのが重要です。ここはなかなか人材育成を組み込む機会が多くなくて、やっぱり施設側との協議でしっかり手を打っていくというのが重要です。
 一方、下流部の方は、開発・確立した手法を利用して、もちろん産業応用にも対応しつつ高度化してという、手法開発の流れが学術ではサイクルとして人材育成とともにやっております。大体新しい手法というのは10年たてば普通になります。20年たてばもう時代遅れというか賞味期限切れですね。もちろん昔はこれを教育に使うという、20年超えて最先端研究ができなくなると教育に回すとかいうのをやっていたのですけれども、今や先端をやらない教育は成り立ちません。ある程度手法が確立して10年たったら、普通になるので、学術としては次の新しい手法開発に行かないといけないということで、この辺は人材のサイクルともフィットしますが、10年がエンドステーションの先端性の賞味期限の目安になります。重要なのは、先端性には経験の積み上げと十分な予算が必要でして、海外である手法ができているから導入しようというだけではだめで、実際、経験を積み上げた上で取り組まないといけない。それから予算が必ずしも十分じゃないケースがあります。その場合、予算を少しずつ集めて作っても、作っている途中で先端性の賞味期限が来て普通になってしまいます。予算不足にならないようにやるためには、数を狙うんじゃなくて絞り込んで質を狙って、ちゃんと予算をしっかり付けて、その時点でも最先端のものを作るということをしないと、もうこの10年サイクルというのも成り立たないような状況になるかと思います。
 最後、6ページになりますが、今、検討中の光源はもともと放射光学会で提案していたものでもありますので、最優先事項としては、やはり日本には第三世代光源もない状況ですので、まずは世界の高輝度光源で確立している手法の導入ということで、オールジャパンとして、これは組織というよりは、オールジャパンでやっていかないといけないというフェーズだと思います。これが多分、フェーズ1で考えられている10本のビームラインになるかと思います。
 その後、全体25本だとすると15本ぐらいが残りのビームライン計画になるのですけれども、次の戦略としては大学共同利用機関・拠点の連携によってチャレンジしていくというフェーズ2をそろそろ議論しないといけないかなということで始めております。既定のユーザーがそれぞれ大学共同利用機関・拠点にはあるわけですけれども、今、大学共同利用機関の見直しの議論でも、今までのコミュニティだけを相手にするのではなくて、新しいコミュニティを作って進みなさいという指摘も受けていますので、そういうところを含めながら、産業応用も前提にしながら、今までできなかった試料が測定できるとかをやっていかないといけない。
 それぞれの機関はそれぞれの経験で得意とする分野があります。だからそのあたりをちゃんと議論して作らないと、各大学共同利用機関・拠点がそれぞれ同じもの、似たようなものを作るという状況は非常にまずいです。SPring-8は60本もビームラインが取れますから、中には同じようなビームラインがあるかもしれないのですけれども、今度作る予定の計画中のものは最大でも25本ですから、そこに同じようなビームラインが2本、3本あるというのは絶対あり得ないので、このあたり慎重に連携を組んで、議論していって、得意とするところをしっかりやる必要があります。人材交流は量研も含めてしっかり進めていかないといけない。
 大学共同利用機関・拠点の関わり方としては幾つかのオプション、この1)、2)、3)、以外の4、5のオプションもあったのですけれども、いろいろ大学共同利用機関・拠点の主要な人に意見を聞いたところ、1)、2)、3)の選択肢しかなさそうでした。
 1)の独自のビームラインをそれぞれ建設するというのは、お互いの調整で重複しないように作るという手はあるのですけれども、結構予算も掛かるし、独自に作ったものの20年サイクルを逃すと老朽化のフェーズになってどうしようもないという状況になりますので、むしろ、2)のように共同して予算を出し合って、上流側をしっかり作ったうえで、エンドステーションのところはそれぞれの独自というのもあり得るかなというような議論にもなっています。3)のように、場合によっては1つのエンドステーションを共同建設するということもありますけれども、その場合、やっぱり共同といっても最終的には共同利用に結び付けるためには責任を持つ組織というのはしっかり決めないといけません。ここにはちょっと小さく書いていますけれども、非公式に調査をしておりますが、連携については皆さん意欲的で、場合によっては現物支給も含めて選択肢としては2)か3)という話にはなっています。1)については施設側との協議が不可欠ですので、このあたりをどうしていくかというところで、今、学術の方は議論している段階です。
 以上です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、今の学術の視点ということに関してのプレゼンに関して、御質疑、それから議論を深めたいと思います。よろしくお願いします。
 よくまとまっているなと思いますが、ちょっと細かいことですが、4ページ目で。非常に細かいことなのですけれども。要素技術のところで、右側に干渉があるのですが、散乱・回折とほとんど同義で、むしろ分光というのが抜けているんじゃないかなと思います。
【小杉主査代理】  はい、分かりました。干渉というのは、回折・散乱にはなりますけれども、コヒーレンスという意味でちょっと違うカテゴリーとしてしまいました。
【雨宮主査】  今の視点の御発表に関して、どうぞよろしくお願いします。
【田中委員】  細かい話で恐縮ですけれども、是非、開発要素に軟X線における位相子の開発を加えて頂きたい。X線のダイヤモンド位相子みたいなものが軟X線でも利用できれば本当に楽で、20年ぐらい前は日本でも頑張って開発していたところもありました。多層膜が何故うまくいかなかったのかは分からないですけれども、今はほとんどアンジュレータでやっているのですよね。
【小杉主査代理】  そうだと思います。
【田中委員】  アンジュレータもいいのですけれども、あれがまたなかなか難しい。もし位相子ができれば非常に早く偏光の切り替えもでき、非常にいいと思います。それができたら多分、世界中の多くの研究者に利用していただけますし、日本の位相子開発は、世界的にも評価され、この分野への大きな貢献にもなると思います。是非、放射光学会を挙げて取り組んでいただきたいですね。何でみんなやらないのかなと思うのです、是非お願いします。
【小杉主査代理】  すみません。いろいろと漏れている部分はこのX線光学という表現に入っていると考えてくださると助かります。この資料では、思い付いたのをばばばっと書いただけで、網羅はできていないと思います。
【雨宮主査】  確かに軟X線の位相子は日本でやっている研究者、歴史的にはたくさんいて、頑張っていたのですけれども。
【田中委員】  そうなんです。すでに死滅しちゃったんですかね。最近聞かないんですけれども。
【雨宮主査】  いいアプリケーションの出口につながるかどうかというところがポイントですね。
【田中委員】  いろいろなところで、軟X線はヘリシティースイッチングができないと駄目だ、特に磁性研究に使う場合かもしれませんが、そこが肝だと聞いています。この3GeV光源においても、多くの人がそれをビームラインに導入したいと言うのですよね、きっと。
【小杉主査代理】  今のところ、議論している中では、下流部のエンドステーションと上流部を一体物で考えないとできないことは出てきていません。
【雨宮主査】  どうぞ。御意見、御質問あれば。
 山田委員。
【山田委員】  6ページに書いていただいた「次の戦略」で、既存の大学共同利用機関・拠点の連携による「チャレンジ」という言葉を使うのは非常にすばらしいと思います。今度の3GeVクラスの高輝度光源に学術利用を、どのように織り込んでいけるかを、新しい視点で、今までの大学共同利用機関の視点だけをキープしているのでなくて、「新コミュニティ形成」ということを、大学側あるいは大学共同利用機関法人側もその意識を持って、この3GeVリングに取り組んでいく必要があると非常に強く感じています。さらに、産業用のビームラインと学術用のビームラインがインデペンデントにやっていくというのは非常にまずいので、いかに共通項、つまり両者が存在することで、新しく生まれ出てくるものを意識しながらやっていかないといけないと思っています。
【金子委員】  ちょっとよろしいですか。
【雨宮主査】  はい、どうぞ。
【金子委員】  学術研究というところをどこまでの範囲とするかだとは思うのですけれども、産業界の方から言うと、産業応用では、難しい技術だから使いたい、簡単だから使いやすいとかそういうことではなく、課題解決に使えるものであれば何でも使いたいと思っています。なので、そういう意味でいけば、今までできなかったことができるようになりますと言われれば、どんどん使っていきたいとやっぱり思うわけで、そこは余り、産業界は分けて考えていることはないと思います。
【高橋委員】  分けてはいないのですけれども、例えば4ページにあったような要素技術の出口として、こういうことができるといいなという希望を多分伝えていくということが大事なのかなと思います。
【小杉主査代理】  ええ、そうですね。
【高橋委員】  お話の中で、装置にサンプルを合わせるのではなくて、サンプルに装置を合わせるというのがすごく印象に残ったのですけれども。
【小杉主査代理】  そこは実感としてはあります。我々、試料は今まで実在系の試料を余り扱ってこなかったので、どちらかというと装置を作って、それに試料を合わせているというのが今までの学術だったのです。でも実際この第三世代から、SPring-8もそうですけれども、試料に合わせて技術開発しないとやっていけないというフェーズになっています。山田委員も言われていましたけれども、今まで個々の施設はそれぞれのユーザーコミュニティを持っていて、そのユーザーコミュニティを相手にやってくるとこういう発想はなかなか出てこないので、新しいコミュニティを形成することで大学共同利用機関法人としてもコミュニティを変えていくというところは非常に重要だと思います。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。
 どうぞ。
【内海委員】  3GeVを責任を持って推進していくことになるであろう我々の立場からすると、まずはじめの10本をどういうふうに仕上げるかというところが極めて重要で、私の資料にも書かせていただきましたが、産業利用のところについては議論もかなりしており、少しイメージが膨らんできているんですが、ここの色分けしたように、全体の10本のうちで、割合からすると青色のところが多いわけですよね。青色のところでも産業利用をやっても構わないのですが、やはり赤色のところで、かなり産業に特化した部分にはそちらを優先的にという運用をすることになると、青色のところは学術利用の比率がかなり多くなってくるはずなのです。そうすると、やはり学術界の方々に、その10本の建設のところにも是非ともダイレクトにコミットしていただきたい。10本目以降については、当然いろいろなコミットの仕方、知恵だけ出す、あるいは、お金も出してビームラインやエンドステーションを建設するなどなどいろいろあると思うのですけれども、まずはじめの10本にも積極的に関与頂きたいというのが、私からの強いお願いでございます。
【小杉主査代理】  ええ、もちろんその意味は入っています。ただ、専用ビームラインでチャレンジするという観点では、この最初のところは入り得ないと考えています。放射光学会としてオールジャパンで適切なビームラインのグランドデザインを作りながら、既に日本は遅れていますので、時間掛けずに早く立ち上げて、早く応用に結び付けていかないといけないと思っています。このフェーズ1で開発要素の高いものを2年、3年掛けて立ち上げる時間的余裕はないのではないかと。学術利用には2通りあって、先ほど言いましたように新しい試料を、芽がありそうな試料を学術の方から出して測定するというような学術利用と、本当に方法論として開発に時間を掛けるものがあって、最初は多分、前者の方で、エスタブリッシュしているものを、この光源を使うことによって、もう一歩先に進められるような、できることがはっきり見えているものを最初の10本に入れておかないといけないのではないかという印象を持っています。決して大学共同利用機関・拠点はフェーズ2しかやらないということではありません。
【雨宮主査】  ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 どうもありがとうございます。
 それでは、3つ目の議題、報告書の骨子案のことについて、議題に入りたいと思いますが、まず事務局から資料3に基づいて、御説明お願いします。
【大榊専門職】  それでは、資料3を御覧ください。新たな軟X線向け高輝度3GeV級放射光源の整備等について(報告)、今回骨子案を示させていただいております。冒頭の方、西山室長から説明させていただきましたように、もうそろそろ議論がかなり終盤に近付いておりまして、最終報告の取りまとめをしたいと考えております。その上での骨子案という形で、整理をさせていただいたという趣旨でございます。
 1ポツのところ、はじめにということ、報告書の位置付けを書かせていただいて、2ポツ、3ポツ、4ポツ、それから5ポツの頭の早期整備の必要性の観点について、中間的整理において御報告いただき、かなり整理していただいたところでございます。それに加えて2月以降、小委員会で議論していただいた内容について5、6、7、それから今後議論していただく8について、まとめた形にして最終報告という形をとらせていただきたいと考えてございます。
 特に5ポツにつきましては、早期整備の必要性以降、学術研究、産業利用による最先端の研究成果の持続的な創出であるとか、官・民・地域連携による推進、それからリサーチコンプレックスの形成、産学共創による正のスパイラルの構築といったところについて、これまでの議論を踏まえて整理をさせていただきたいと考えてございます。
 それから今年の夏前ぐらいまで、ずっと議論いただいておりましたが、整備運用主体について量研を主体とすることについて御議論いただきました。その結果なり理由なりをここに書かせていただくのはどうかと思っております。
 それから7ポツでございますけれども、今まさに御議論を頂いている部分も含めて、整備運用に係る具体的なマネジメント方策について記載をさせていただきたいと思います。今回、新たなビームタイム制(共用枠)という考え方を導入しておりますので、そういった内容について、整備運用計画の中から一部エッセンスを書かせていただきたいと思っております。それから共用枠の課題審査・支援の一元的なマネジメントであるとか、本格的産学連携の推進について、それから最先端の放射光研究の場を活用した人材育成といったところ、これまで数回にわたって御議論いただいている内容についてまとめさせていただいて、整備費用・運用経費についての内容を書かせていただこうと思います。このような形で骨子案として整理させていただいておりまして、最終報告をまとめさせていただきたいなと考えておりますので、御意見を頂ければと思います。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 今までこの小委員会で議論してきた内容を、こういう骨子案にまとめていくわけですが、何か御質問、御意見ありましたらお願いいたします。
 どうぞ。
【内海委員】  すみません、ちょっと事実関係の確認なのですが、6ポツのところに、量研を整備運用主体とすることについてというふうに書かれております。委員の皆さんにとってはほとんど同じというように思っておられるかもしれませんが、実は我々が文科省から文書で依頼を頂いているのは、あくまで整備運用計画案の検討を行う国の主体候補です。この小委員会での議論の中では実際の整備運用まで量研に任せればいいじゃないかという議論になっていたのかもしれませんけれども、少なくとも公式な今の我々の立場、位置付けとしては、この整備計画案の検討を行う国の主体として今は働かせていただいているということでございます。もちろん、実際の整備運用を量研がやるという覚悟で我々はやってはおりますけれども、そこのところは公式な事実関係を踏まえながら進めていただけるとありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【雨宮主査】  それに関して何か、量研室の方から。
【大榊専門職】  書きぶりについても含めて、よく相談して作らせていただくというのがよいかと思います。おっしゃっていたことは分かりました。
【内海委員】  我々量研は、今頂いているミッションに沿って整備運営計画案を作っておりますので、その内容を踏まえて量研に実際の整備運用の主体をやらせてもいいんじゃないかという議論をしていただいて、その結論をもう一度我々に頂くというのが本当はありがたいなとは思っています。逆もあって、こんな程度の整備運用計画案しか作れない量研には、放射光施設を作らせるのを任せられないんじゃないか、他の法人にやらせるべきというのも理屈上はあり得る、そういう状況なのだと思います。
【西山室長】  内海委員のおっしゃった段取りはそのとおりでありまして、骨子案を今日御提案した方がいいということで、事務局の方でこういうような形で案を作っているのですが、正式な手続というか段取りとしては、これまで整備運用計画案について量研の方で御検討いただいた内容を内海委員に御説明いただいて、この場で御議論いただいていますけれども、その内容を踏まえて、最終的な整備運用計画案というのを量研側から御提出を頂いて、その上で、この最終的な報告書が決まるという形になるかと思っています。ですので、量研の方でその整備運用計画案が最終的にできたのを見て、我々がこの報告書の中で判断をしていくということになるかと思います。
【雨宮主査】  厳密に言えば、そういう2つのプロセスは別ですが、私個人の意識としては、そこは何かギャップがあって、全然別のものになるという想定はしていません。とはいうものの、量研にいろいろな案を考えてくださいというのはこの小委員会としての期待ですが、手続的には別なプロセスとして整理するというのは、そのごとくかと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 この参考資料の2に関して、何か補足があれば。
【大榊専門職】  時期については改めて先生方のスケジュールを調整させていただきますけれども、雨宮先生から御指摘ありましたとおり、第14回において量研から整備運用計画案の御報告を頂くとともに、その内容を踏まえて、今、骨子案を作っております最終報告書について御審議を頂いて決定するという形をとらせていただければと思っております。
【雨宮主査】  こういう形でもう1回、第14回ということを想定しているという流れの中で、今日、全体を通して何か御質問等あれば御意見を頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。
 石坂委員、何か。
【石坂委員】  研究者、ユーザーとしてお聞きしたいんですが、最初の10本のビームラインの測定系というのはどういう過程を経て決まっていくことになっているのでしょうか。あと、もしその10本に自分のやりたいことが含まれていなかった場合は、どのような働き掛けの方法があるのでしょうか。
【内海委員】  恐らくパートナーが何がしかの形で決まるプロセスが、どこかのタイミングであろうかと思います。それが決まった上で、量研とパートナーが協議をし、オールジャパン的な選定プロセスを実施するということを想定しています。来年度中ぐらいにはそういうことをしていかないと間に合わないので、恐らくそこには放射光学会にもいろいろお世話になるかもしれません。そういう検討の中に、様々なコミュニティが是非とも積極的に参加をしていただきたいと思います。
【雨宮主査】  今、放射光学会と出ましたので、学会長の立場から何か。
【小杉主査代理】  学会としては、新しいコミュニティ形成と言いつつ、既存のコミュニティがかなりいますので、そういうところを各施設を通じて、意見を集める動きをやろうとはしております。ただ、既存の施設でできることをここに持ち込むというか、今の状況ではなかなかマシンタイムが取れないところが、新しい施設ができることによって同じ実験ができるように改善されるという印象でユーザーが捉えている部分もなきにしもあらずなので、そこは放射光学会として注意しなければならないと考えています。大きな施設であればそれもいいかもしれないですけれども、SPring-8に比べてかなり小さな施設ですし、国際的に見ても大きな施設ではありませんので、放射光学会としては新しい施設は新しい施設の性能を生かすところをしっかりやるという方針をコミュニティ全体にちゃんと伝えないといけないとは思っております。
【西山室長】  補足をしますと、まず現行は、国としての考えをまとめるという検討をしていますので、現状いろいろなコミュニティにおいて、各種の自主的な検討なり調査が行われているとしても、おもんばかったような形の検討は一切するつもりはありません。パートナー機関がどこになるか決まっていませんので、そういった前提を踏まえた上で、国側の考えをまずはまとめるということでこの小委員会を開いています。最終的にパートナーがどのように決まるかについては、仮に次世代放射光施設の整備を進めていくべきだと文部科学省として決定した場合、その後にしかるべき、例えば公募等の手続を通じて決めることになるのだと思います。その上で、ビームラインをどのようにするかについては、主体となっていただきたいと思っている量研とパートナー機関の間で何らかの協議体なりを作って、そこで最終的に決めるような手続が踏まれるのだと思いますが、その前段階として、各コミュニティ等における検討というのは加速をしてほしいと思っています。その中で、この3GeVの施設は、国の財政状況が厳しい中、こういった施設を新しく作るという方向は、なかなかやっぱり難しい側面、ハードルが多くありますので、是非よい施設となるように、各コミュニティの検討を加速してほしいというのが私のお願いであります。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。
 よろしいでしょうか。
 大体予定の時間になりましたので、議題もちょうど終わりましたので、本日の議題は終了いたしました。
 それでは、最後、事務局から連絡事項等あったらお願いいたします。
【大榊専門職】  ありがとうございました。次回の量子ビーム利用推進小委員会の日程につきまして、改めて御連絡させていただきますので御協力のほどよろしくお願いいたします。不要な資料ですとかドッジファイルについては、机上にそのままにしていただければと思います。
【雨宮主査】  以上をもちまして、第13回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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