平成29年9月25日(月曜日)10時00分~12時00分
文部科学省 16階 科学技術・学術政策研究所会議室
雨宮委員、石坂委員、内海委員、尾嶋委員、岸本委員、小杉委員、高橋委員、髙原委員、田中委員
西山量子研究推進室長、大榊量子研究推進室専門職
矢橋牧名 理化学研究所 放射光科学総合研究センター ビームライン研究開発グループディレクター、木下豊彦 公益財団法人 高輝度光科学研究センター 利用推進部長、金谷利治 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 特別教授・MLFディビジョン長、横溝英明 一般財団法人 総合科学研究機構 理事長・中性子科学センター長
【雨宮主査】 それでは、定刻になりましたので、第12回の量子ビーム利用推進小委員会を開催いたします。
本日はお忙しい中を御出席いただきまして、ありがとうございます。
今日は9名の委員に御出席いただいております。金子委員、近藤委員、そして山田委員の3名の委員は御欠席です。
本日の議論に関係して、4名の方にお越しいただいております。お一人目が理化学研究所放射光科学総合研究センターの矢橋牧名グループディレクター、お二人目が公益財団法人高輝度光科学研究センター利用推進部の木下豊彦部長、三人目の方が高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所、金谷利治MLFディビジョン長、四人目の方が一般財団法人総合科学研究機構、横溝英明理事長です。
本日の会議ですが、委員会の運営規則に基づき、公開という形で進めさせていただきたいと思います。
それでは、事務局より配付資料の確認等をお願いいたします。
【大榊専門職】 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の資料を御確認ください。
議事次第のとおり、資料1から資料3-2及び参考資料1から3を配付してございます。また、前回までの資料がドッジファイルに入っております。資料に不備等ございましたら、事務局まで御連絡ください。よろしくお願いいたします。
【雨宮主査】 ありがとうございました。
まず、前回のビームラインの整備・運用についての議論を踏まえて、事務局において前回の資料の追加・修正をしていますので、事務局から資料1の説明をお願いいたします。
【大榊専門職】 それでは、お手元の資料1を御覧ください。
「高輝度3GeV級放射光源におけるビームラインの運用について」という資料でして、頭にポンチ絵を付けてございます。2枚目以降が、前回お配りしている資料を修正したものでございます。
まず、頭に付けてございます資料ですが、前回、ビームラインの整備・運用について表が複雑で分かりづらかったものですから、簡単にまとめたものを作らせていただいております。
まず、ポンチ絵の説明を簡単にさせていただきます。これまでの特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律(共用法)対象施設には、共用ビームラインと比較して、専用ビームラインは一部有効活用し切れていない部分があるとか、ビームラインによってサポートの質にばらつきがあるといったいろいろな課題がございました。
そこで、従来の共用法対象施設の図を描いておりますけれども、そこから比較しまして、次世代放射光については国以外の者が設置するビームラインにおいても、共用することが適切なものについてはビームタイムで切り分けて共用枠を設けることを考えております。
共用枠は国が共用に利用するビームライン、専用枠は、設置者自身が利用するビームライン、すなわち従来では専用ビームラインとしていたものです。
この、国が設置するビームライン、ないしは国以外の方が設置するビームラインの中に共用枠を設けまして、それぞれ前回御指摘がございましたように、様々なビームライン共用枠を一元的に管理する形にしたいと考えてございます。ビームラインではなく、ビームタイムで分けて共用枠を設けるという解決策を作ることにより、国以外の方が設置したビームラインを最大限有効活用していくということを考えてございます。
また、ビームラインの共用枠を一元的に管理いたしまして、提案、審査、実験のサポートを総合的に実施したいと考えてございます。
資料1に関しては以上でございまして、おめくりいただきますと、前回の「高輝度3GeV級放射光源におけるビームラインの整備・運用の考え方(修正案)」について書いてございます。修正は1点ございまして、おめくりいただくと「2.想定されるビームラインの種類と役割分担」の3ですが、もともと民間企業と大学、大学共同利用機関法人を分けて記載してございましたけれども、民間企業の中でも共用枠を設ける可能性もあるという御指摘もございましたので、3には「民間企業」を記載してございます。
別紙について、前回は複雑な表でしたので、その部分を修正いたしまして、少しシンプルにしてございます。国が設置するビームラインと、それ以外の方が設置するビームラインという作りは同じでございますが、民間企業だけ個別に分けるのではなく、大学や大学共同利用機関法人、国立研究開発法人、民間企業、それぞれ国以外の方が設置しているビームラインと、国が設置するビームラインと、それからパートナー機関が設置するビームラインという形に分けて記載してございます。
全体の構成としては前回の内容と同じでございますけれども、一番下に「ビームラインの利用に係るサポート」について書いてございますが、国やパートナー機関、それから大学や民間企業の中で共用枠の部分につきましては、一元的に利用に係る提案、審査、実験のサポートを総合的に実施する、という形としております。
国以外の方が設置するビームラインにつきましては、専用枠について「設置者自身が対応」するというところは、前回と変わってございません。
簡単でございますけれども、以上でございます。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。
それでは、今の説明について、御質問や御意見がありましたら、お願いいたします。
前回から少し修正され、別紙の方は非常に分かりやすくなったかと思います。全てのカテゴリーにおいて共用枠があるということで、別紙の修正案、若しくはその前のポンチ絵、この2枚に関して何かございますでしょうか。
【小杉主査代理】 人の問題なのですけれども、別紙にきれいにまとめていただいたところのビームラインのサポートの欄で、専用枠は設置者自身が対応になっていますが、そうではないところは設置者がどう関わるかという点がクリアではないです。例えば専用枠のとなりの共用枠のところですが、設置者がノウハウを持っているので、関わる必要があるという観点は入っているのでしょうか。
【大榊専門職】 こちらの共用枠につきましては、国やパートナー機関が基本的にはサポートしていくというイメージでおりました。ただ、御指摘のとおり、専用設置者自身の方がノウハウをもっているので、そちらの方のノウハウを取り入れていくのも、十分あり得るかと思っております。
【小杉主査代理】 もう一点は、放射光の場合、ビームラインといっても、どの部分をビームラインとして定義するかもクリアにしないといけないと思います。加速器の取り出し口から全て一つのビームライン、末端の装置まで含めて一つのビームラインで、それを大学や、ほかの法人や、民間が全て造るというのが、今までのスタイルでしたけれども、共用枠や専用枠というものを共存させる場合には、必ずしもその必要はなくて、例えば末端の装置をつなぐ上流部は共用というか、施設側で全部共通化して造って、下流部を「エンドステーション」と言い切ると問題があるかもしれませんけれども、エンドステーションの装置を専用的に造るというのもあり得るのではないかと。
特に放射光の場合はそんなにエンドステーションは大きな予算は掛からない。J‐PARCの中性子のエンドステーションなどを見ると、それ自身がかなり予算も掛かる大きなものですけれども、放射光の場合、エンドステーションだけ専用というのもあり得る。その専用の装置を持ち込んで共用の上流部のビームラインにつないで使うとかは、あり得る。そういうのも少し含めていただくと、ビームラインの種類や役割分担に更にいろいろな選択肢が出てくるのではないかという印象を持ちました。
【雨宮主査】 今のことに関して、矢橋グループディレクター。
【矢橋グループディレクター】 今の小杉先生の意見、後半の方の御意見に非常に賛成で、同様のことを述べるのですけれども、専用ビームラインであっても共用枠でサポートや選定を進めるということもあると思うのですが、そもそも実験装置をどうするかというのがあります。 例えば専用ビームラインが全部自分で造った実験装置で、しかも、ほかと余り差別化もないようなものだったとすると、そこに共用を入れてくださいと言っても、その共用側からしても余り魅力はないとか、いろいろな問題があるかもしれないので、やはり全体でそこは考えていただく必要があると思います。 また、前回から議論になっているように、 専用ビームラインについては、やはり蛸壺化というか孤立化が進みがちなので、そこをどう防いでいくかという仕組みをどう入れていくかという観点が大事なのかなと思います。
したがって、 専用ビームラインのところに共用が乗っかるという形に加えて、逆に、共用的なところに専用が入ってくるということもあるのかもしれないと思います。
【雨宮主査】 いろいろなバリエーションがあると思いますが、取りあえず大きくこの3つの枠で、小杉委員としては、専用ビームラインにいろいろバリエーションがあるということをどういう形で反映するということを具体的にこの表に盛り込むということですか。この表でいいけれども、何か附則を付けてということでしょうか。
【小杉主査代理】 ビームラインを上流側から全て一つのビームラインと定義すると、いろいろな意味で、先ほど申し上げたように、フレキシビリティーがなくなるので、ビームラインの定義としてエンドステーションだけの場合もあることを付記のように書いていただくと、もう少し多様性が出るかなと感じました。
あとは、先ほど言いませんでしたけれども、長期的に運用していく場合の老朽化対策とかそういうところを、完全に専用ビームラインを専用ビームラインの設置者に任せてしまうと、既存施設でもいろいろな問題が起きていますので、施設側で上流側はしっかり長期運用するという体制がとれればいいので、その場合、上流部はすべて施設側のものという位置付けでいい、基本は上流部はすべて共用でいい、と思いますけれども。
だから、ビームラインの定義をどうするかによって書き方が随分変わってくるので、表自身を複雑にする方向で私はコメントしているわけでは決してなく、ビームラインの定義を上流の分光器から含めて、最初のミラーから含めて下流まで全部というわけではないというところを注記しておけばいいというコメントです。
【田中委員】 今の最後の小杉先生の話にも関連するかと思うのですが、前回も議論したのは、ビームラインの陳腐化対策というか、維持・管理・高度化の部分を個別に分けてしまうと非常に大変になるということでした。この表を見ますと、「ビームラインの利用に係るサポート」、そこは一緒にやりましょうと読めるのですが、この中に今言った部分も含まれていると理解してよろしいのでしょうか。文章からは、そのようには読めなかったので、お聞きします。
【大榊専門職】 高度化に関してですね。
【田中委員】 はい。先ほどのビームラインの基幹部をどういうふうに維持管理していくかということと正に関連する問題ですけれど、そこにちゃんとした仕掛けを作らないと、多分、同じように陳腐化していって、アクティビティーが下がっていくことにつながっていくと思います。表層の「ビームラインの利用に係るサポート」だけでなく、そこの底辺の部分についても、やはり効率的にやる仕掛けを入れていかないといけないのではないかという議論が前回あったと理解しています。
【雨宮主査】 小杉委員の話を私なりに整理しますと、この別紙の修正案の3番目の行、「ビームラインの設置に係る財源」というところがあって、一番右の専用ビームラインに相当するところは「設置者の資金」となっていて、ビームラインをどこまで含めるかは、もう少しいろいろなケースがあり得るということなのですか。
【小杉主査代理】 はい。
【雨宮主査】 ですね。それはいろいろあるかと思います。デザインをどうするか、資金はどうするかは、少しバリエーションがあるということかと思います。
それで、今、田中委員の言われたことは、一番下の「ビームラインの利用に係るサポート」の話で、この表で何を反映した方がいいかというコメントだったのでしょうか。
【田中委員】 ビームラインの運転・維持管理・高度化の部分を一元的にやっていくように、というのも、それぞれの研究機関や大学、個別の設置者が別々にやろうとすると、リソースと資金の面で非常に大変である、そういう議論が前回されたと理解しています。そこをどうするかは、パートナー機関を中心とした一つの組織が、集中的・効率的に基盤の維持管理の面倒を見ていくような仕掛けが必要ではないかということであったと思いますが。
【雨宮主査】 ええ。それが一番下のラインのところには「様々にビームラインの共用枠を国とパートナー機関が一元的に管理し、利用に係る提案、審査、実験のサポートを統合的に実施」と、その言葉に含まれて。
【田中委員】 いるのかどうかとお聞きしたのですけれども、私は。
【雨宮主査】 ええ。
【田中委員】 そこのところは含まれているのでしょうか。
【西山室長】 御意見、ありがとうございます。
まず、基本的な考え方として、今御覧いただいている表の2ページ前、ワードの資料の「ビームラインの整備・運用の考え方(修正案)」の「1.(1)」で基本的な考え方としては、今、田中委員もおっしゃったような内容は含まれているかと思います。これは前回からも含まれておりまして、そういう考え方にのっとってやっていくということです。
具体的な仕掛けをどうするかということが問題になるわけですが、この表でその仕掛けを書くのは内容的に少し違いますので、正に今日の議論として具体的な収入をどのように確保していくかといった話の関連で御議論いただければと思っております。
以上です。
【雨宮主査】 よろしいでしょうか。
それでは、続きまして施設の運用についての議論に入りたいと思います。
まず、西山室長より、本日委員の皆様に特に御議論いただきたいポイントに関しての説明をお願いいたします。
【西山室長】 私から、本日の議論につきまして少し御紹介させていただきたいと思います。
本日の議論ですが、引き続き次世代放射光施設の整備・運用計画案、これは現在、量子科学技術研究開発機構(量研機構、量研、QST)が検討中でございますので、これに盛り込むべき内容について御議論を頂きたいと思います。
具体的には、参考資料2を御覧いただきたいのですが、こちらの参考資料2は、前々回、第10回の量子ビーム利用推進小委員会に提出した資料ですが、本日の議論としては、具体的な次世代放射光施設の整備・運用に必要な組織体制・人員ということと、ビームラインも含めてになりますが施設全体を、先ほど少し議論になりました、例えば年月がたっていくに従って老朽化の対策をどうしていくかという話も当然ありますし、それぞれのビームラインの高度化をいかに持続的にやっていくか、世界的にも魅力あるような施設をいかに正のスパイラルを作っていくかも含めて御議論いただきたいと思っております。
ですので、施設の全体の運用に当たりまして、この施設の運用マネジメントに加えまして、特に本格的な産学連携・産業利用の促進に向けた枠組みですとか、それを通じた利用料収入の増加方策について御議論をお願いしたいと思っております。
これに関連しまして、政府全体の動きについてどのようになっているかを参考資料1を添付しております。簡単に御紹介いたしますと、参考資料1で「我が国の産学連携の進展の状況と課題」という3枚物の資料を配付しております。
大学等、この「等」には研究開発法人等も含まれるわけですが、産学官連携の活用の規模は着実に拡大しているものの、米国等との比較においては、いまだ大学による民間資金の導入は低調、ライセンス収入は大きな差があるということでございます。
我が国の産学連携の進展を見ますと、左側の図にありますとおり、共同研究の実施件数や研究費の受入額は着実に増加しているわけでございます。特許等のライセンス収入についても大きく増をしているわけでございますが、他方で、米国との比較で言うと、日本は大体20年あとを行っているぐらいの規模でございまして、投資の格差を見ますと、国内の大学の共同研究の個別契約額を1とした場合のイメージは、御覧のとおり(10~20)でございます。
また、ライセンス収入を日米比較すると、日本のライセンス収入は、グラフにしますと非常に一目瞭然ということでございます。
現状、大学若しくは研究開発法人の民間との共同研究については、1件当たりにつきましては、大学が平均して200万円強、研究開発法人が平均して300万円から400万円の間ぐらいが現状でございまして、研究室単位で企業の相方で言うと、研究開発本部若しくはセンターの担当部署、グループ等の単位ごとに行われているのが現状かと思います。
そういった課題を踏まえまして2ページを見ていただきますと、「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」を、文部科学省と経済産業省が共同で昨年の11月に策定しております。
これは経緯で申し上げますと、安倍総理が主宰する官民投資の拡大の会議においていろいろな議論がこれまでなされているわけですが、日本経済団体連合会(経団連)からも昨年2月に「産学官連携による共同研究の強化」ということで報告を出しておりまして、今後、大学・研究開発法人への企業からの投資を今後10年間で3倍に増やすことを経団連から提案され、昨年閣議決定されています成長戦略にもそのことが盛り込まれております。
そういった経緯を踏まえて、具体的にどういった形で民間からの投資を拡大していくのか、大学・研究開発法人等に求められることはどういったものがあるのかといったことについて、こういったガイドラインがまとめられたという状況でございます。
その次の3ページに、そのガイドラインのポイントのみ記載した資料を付けております。ごく簡単に御紹介しますと、産学官連携による共同研究を拡大していくためのポイントとして、1つ目として「産学連携本部機能の強化」ということで、部局横断的な共同研究を企画・マネジメントできる体制を構築すべきであるということ。これについても、放射光施設についても、例えばビームタイム若しくはエンドステーションを横断的に使える体制をどう構築していくかといったことが当てはまるかと思います。こういった指摘がなされていたこと。
また、「資金の好循環」という2つ目のところで申し上げますと、これまでは直接的に掛かる費用のみを積算している、積算をなかなかしにくい例も現場等にはあるかと思いますが、費用の積算根拠を明確に示していく努力を進める。
そこには人件費の相当額も含める。さらには、将来の産学官連携活動の発展に向けた戦略的産学連携経費、これは明確な積算があるわけではなく、むしろ企業で言うと利益率に当たるような話だと思いますが、そういった今後の投資に向けた経費を積算することも今後やっていくべきだといったことで、それらを含めた共同研究の対価を設定していくべきだということを、既に政府全体の方針としても設定しております。
具体的な取組として大学の方でも進んでいる状況でございまして、一番後の5ページに、1つの例として名古屋大学の例を付けております。名古屋大学では、従来型の共同研究の仕組みは残しつつも、新たな枠組みとして指定共同研究を創設していると承知をしております。大学が本部主導で横断的な体制を敷き、研究の企画の段階、さらには研究の実施の進捗管理、成果を技術移転していく、そういったことも含めて産学連携活動の全体を進める体制の整備をしているところと承知をしています。
費用につきましても、これまで大学の共同研究は積算を作るのが難しい側面もあるのですが、それは本部主導で見える化を図っていると承知をしています。右下に「必要な経費」として、これまで取っていた直接経費だけではなく、大学のパーマネントのいわゆる承継教員の共同研究の参画経費もアワーレート方式で取るといったこと、さらには今後の産学官連携活動の発展に向けた将来の投資分、これは名古屋大学に聞くところ、全体の共同研究経費の5パーセント程度を計上していると聞いていますが、そういった戦略的産学連携経費についても計上するといった取組もしていると承知をしています。
こういった政府全体の状況も踏まえて本日の御議論を賜ればと思っております。
以上です。
【雨宮主査】 今、国若しくは大学での取組を予備知識として御説明いただきました。
それでは、具体的な議題に入っていきたいと思いますが、矢橋先生と木下先生からSPring-8(Super Photon ring-8 GeV)の組織体制、人員等についての現状や、施設全体の運用マネジメント、公募課題の審査プロセスや利用料の収入の増加の方策に関する現状、また、次世代放射光源に向けた提言等について御発表いただきたいと思います。その後に、金谷先生、横溝先生からはJ-PARCについて同様に御説明を頂きます。
発表に対する質問については、個別の施設についての発表後に少し時間を設けますので、SPring-8、J-PARC、双方の説明後にまとめて、また更に全体で議論したいと思います。
それでは、まずSPring-8の運用に関して、矢橋先生から御説明をお願いします。
【矢橋グループディレクター】 よろしくお願いします。
まず、私から「SPring-8施設の運営について」ということでございますが、特に運営予算、方針、体制、それから産学連携に向けた取組、そして最後に利用料収入の増加方策、こういったことについてまとめなさいということですので、順を追って御説明いたします。
まず予算ですけれども、SPring-8の運営経費の中で、これは昨年度の例でございますが、トータル約90億円のうち、約9割が特定先端大型研究施設運営費等補助金(共用補助金)として施設者たる理化学研究所から運営に流れている。残りの約9.4億円が特定先端大型研究施設利用促進交付金(利用促進交付金)ということで、これは専ら利用者選定、利用者支援ということで行っております。
SACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser)の方も同様になっておりまして、トータルの約58億円のうち約9割を施設者が施設の維持管理・運転を行うということで、残りが利用者選定・支援を登録施設利用促進機関(登録機関)が行うということになっております。
この「SPring-8/SACLAの運営の基本方針」でございますが、基本的には施設者たる理化学研究所(理研)の中でも放射光科学総合研究センター(放射光センター)が全体を統括する、それで施設運営・運転に責任を持つということで進めております。
これは必要に応じて、理化学研究所の中だけではなく、外部に業務を委託しておりまして、特に効率的・効果的な業務遂行のために、対象業務や必要なスキルを基に、 この数年案件を整理してまいりました。
それで幾つかかなり小分けにした形で進めておりますが、例えば運転業務、この後御紹介しますけれども、定型のルーチンの加速器運転・保守・維持管理、あとは高性能化支援業務といいまして、これは基幹システム、特に加速器、ビームラインでございますが、ここの高性能化の支援、これは主に人に関わるところでございます。それから安全管理業務、それから計画調整業務、こういった形で、これはごく一例を示してございますが、業務ごとに仕分をしているということでございます。
こういうことをやって、その効果・効率というところはいいのですけれども、一方で、その結果として、運営に関わるところで様々な出身母体からのリソースが混在することになりますので、これは施設者として全体の方向性を整え、モチベーションを高めていくところに特に留意して進めております。
これは、もともとSPring-8ができたときも上坪先生も非常に御苦労されていたと伺っておりますが、いろいろな母体をまとめてやる必要があります。ただ、大型施設の目的は非常にクリアでございますので、そこに向かって非常にやる気があるとか実力がある人は、出身母体に関わらず非常に活躍していただくような環境を整えるような責務が施設者にある。逆に施設者だからといってふんぞり返ることがないよう、 特に留意をしております。
最後に、登録機関と「SPring-8運営会議」を開催いたしまして、運営に関わる重要事項を審議しております。
次に、施設者の中の理研放射光センター内の運営の体制でございますが、特にここは加速器を中心に示してございますが、SPring-8の加速器の運営責任は、これは組織図、若干小さくて見にくいのですけれども、幾つかセンター内に部門がございまして、そのうちの先端光源開発研究部門がございます。そこの回析限界光源設計検討グループがSPring-8の加速器の運営責任を持っているということでございます。ここが約8名で司令塔となって運営をしているということです。
同様に、SACLAの方はXFEL研究開発部門がございまして、そこで加速器の方は加速器研究開発グループ、これは約10名でございます。ビームラインの方は、ここ(ビームライン研究開発グループ)にぶら下がっておりまして、ビームラインは約13名で運営の責任を負っている。ここの人数を「~」と書いているのは、若干、厳密にきちっと出すというよりは、客員研究員や兼務も含んでおりますので、目安でございますが、ただ、規模感はこれでお分かりいただけると思います。
先ほど申し上げたように、定型のところは委託で外に出しておりまして、「SPring-8/SACLA加速器運転の体制」ということで、次のスライドに示してございますが、加速器の運転全体は統括リーダーが見ているということで、その下に運転と保守・管理グループを作ってございまして、この保守・管理は約12名で運用されていると聞いています。
運転リーダーの下に、これはSPring-8、SACLAのチームがございまして、SPring-8の方は3人シフト掛ける5組で、SACLAの方は2人シフト掛ける5組ということで、計約25名程度、全部合わせると40名程度で運用されております。
現在こういうことでございますが、今、SPring-8とSACLAの加速器を一体で運用するようなことも検討しておりまして、こういったことが進んでくると、今、これは足して1シフト5人でございますが、さらなる効率化を図れるのではないかということで、ここも鋭意検討を進めているところでございます。
次に、産業利用の取組で、まずSPring-8から御紹介いたしますが、「SPring-8産学連携の取組」、SPring-8から生まれた多様な製品を御紹介しております。
皆様御承知のとおり、諸外国では主に創薬のところに非常に偏っているわけでございますが、SPring-8は満遍なく、特に素材のところやエレクトロニクス、環境エネルギーも含めた形で非常に大きな形で貢献している。ここにも書いてございますが、自動車用の触媒、エコタイヤ等々の製品が大きな市場規模を達成しております。
歴史を追って御紹介いたしますと、もともとSPring-8、産業ビームラインもございまして、個別の会社によって放射光利用もされておりましたが、徐々にこれが大きな塊になってきて、例えば国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプログラム、革新型蓄電池先端科学基礎研究事業(RISING)のプログラムといったところで、電池関連のところ、これはビームライン36番(BL36XU)とか28番(BL28XU)ができて、ここで研究開発が進められているということでございますが、最近は更に例えば革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)や戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)、そういった大きなプログラムに非常に関連したビームラインもたくさんございまして、こういったところでかなり包括的な、単に分析をするだけではなくて、企業の経営戦略に関わるようなところまでSPring-8が貢献を始めました。
次に、SACLAでございますが、SACLAは非常に新しい光源、しかもコヒーレントでフェムト秒という非常に魅力的な光源ではございますが、一方で、産業の皆様にはこれは非常にハードルが高いということも伺っておりまして、使ってみたいけれども、どうやったらいいのかという声を多数頂いておりました。
それで、平成26年度より「産学連携プログラム」を開始しまして、今、「産業利用推進プログラム」というふうに発展的になっているわけですが、これは新しい光源ゆえのハードルの高さがございますが、これを乗り越えて産業利用振興を行うための調査研究ということでございます。
これは、特に産業界の皆様、それから我々SACLAのファシリティーがございますが、更にアカデミーの皆さんで、特にいわゆるパワーユーザー、SACLAを非常によく使っておられる大学の先生、研究機関の先生方にも入っていただいて、三者で産業利用の振興に何が必要かを考えるプログラムでございます。
特に我々ファシリティーからサポートリソースを提供いたしまして、実際に産業界の皆様にSACLAを体験していただく、そのフィードバックを頂いて更に発展するということでございます。
平成29年度、今年度は6社に実行していただいておりまして、こういったところから既に、これは施設の中の取組でございますが、共用課題に進んでいただいているところ、それから、成果専有課題も始まっておりまして、鉄鋼・金属、触媒、創薬、バッテリー等、多岐にわたる分野でSACLAを使い始めていただいているということでございます。
例えばこういったフィードバックのところでは、SACLAは非常に膨大なデータが出てきますが、それをしっかり秘匿する、隠す仕組みがやはり必要ではないかという御意見も頂きましたので、そういったシステムはかなり手を入れて、しっかり外部に漏れない仕掛けを作らせていただいています。そういうことも進めております。こういったところが、やはり成果専有を始めるに当たって非常に、ある意味で必須のところでございましたので、そういう枠組みは、非常にきちんとできたのかなと思います。
3番目の議題ですが、「利用料収入の増大に関する検討」ということで幾つか考察をしたいと思います。
これは高輝度光科学研究センター(JASRI)がまとめた「SPring-8/SACLA有償利用料収入の実績」で、この後もこの資料を使わせていただきますが、これは2017年4月ですが、有償利用の収入、これはSPring-8の成果専有、それからSPring-8の成果公開優先利用というものがございまして、これは主に競争的資金を持っておられる方が優先的に使うということです。
それぞれシフトとしては、成果専有のところは1シフト8時間48万円、これは共用でございまして、専用ビームラインについては1シフト31万2,000円、それから公開優先の場合は1シフト13.1万円でございます。
これを見ていただくと分かるのですが──ちなみにこの赤色はSACLAの有償利用料収入でございます──年次を見ていただきますと、3億円前後で行ったり来たりをしているということでございますが、これがこの先どういうふうにいくのかを議論したいと思います。
次のスライドが「ビームライン別有償利用料収入」で、2016年度の収入をビームライン別に分けた絵でございます。左側の塊が共用ビームライン26本、それから専用ビームライン19本、理研ビームラインに分類されておりまして、この上の薄いグレーは成果公開優先ですが、その下は、いわゆる成果専有利用でございます。
これをビームライン別に簡単にカテゴライズしてみますと、まず、共用ビームラインのうち、この3つ(BL14B2、BL19B2、BL46XU)が主に産業利用ビームラインということで、当然ですが産業からは一定の収入があるということでございます。
次に、軟X線、これは当然SPring-8の軟X線はもともとアカデミックな利用のためにできておりますので、アカデミックなビームラインで有償利用はなかなか難しいのかと思いますが、実は結構これは利用料が多いということでございます。
成果専有もそうですし、あと成果公開の優先利用、これは恐らく個々に研究費を持っておられて利用されるということだと思いますが、ほかのリソースも非常に日本国内で限られていますので、こういったところに集中している。これは恐らくこの後、3GeVができると非常にここは伸びてくるのではないかと期待されます。
それから、マイクロCT/ナノ分析がございまして、これもかなり伸びてきておりますが、これは今後のSPring-8を高度化すると、ぐんと伸びてくることが期待されますので、しっかりここはやっていきたいところです。
最後に、創薬がございます。これは幾つか主にたんぱく質の結晶構造解析のビームラインがございまして、例えばここはビームライン41番(BL41XU)でございますが、一番利用料が多いということでございます。
この後、少しこの創薬関連の議論をしたいと思いますが、創薬、特にたんぱく質結晶構造解析のビームラインについて分析してみますと、全体の約4分の1の利用料収入を上げているということです。しかしながら、アンジュレータビームライン、特にこれはビームライン41番ですが、これは非常に光源が強くてビームのクオリティーが高いため、非常に早く測れるということで、ここに利用希望が殺到する。
一方で、偏向電磁石ビームライン、いわゆるベンディングマグネット(ベンディング)を光源とするビームライン、これはアンジュレータに比べたらそれほど明るくないので、ここの希望は少ないということで、かなりアンバランスがあって、ビームライン41番は受入れいっぱいということで、なかなかこれ以上有償利用を受け付けられない、いわゆる機会を逸しているのではないかと思われます。
これに対する対策を幾つか進めておりまして、まず1番目は非常にシンプルでございますが、理研のアンジュレータビームラインがございまして、これはもともとSPring-8の立ち上げ時から造ってきたビームラインですが、この1つをたんぱく構造解析のビームラインに転換できないかと。いわゆるスクラップ・アンド・ビルドできないかを検討しております。ここに長時間の有償利用を受け入れることができるのではないかということを進めております。
それから、もう一つは、ベンディングのビームラインを含めた機会の平準化ということで、等価時間のような考え方が導入できないかということを検討しております。
これは、アンジュレータビームラインで1つの試料当たりの必要平均計測時間(等価時間)を大体割り出しておく。例えば1試料で2時間であったり、1時間であったり、もっと短いのかもしれませんが、その上で、計測試料数と等価時間を掛け算して、これを利用時間とみなして、この後は運営費回収方式によって料金を算出することができないかということでございます。
実際どうするかといいますと、測定代行制度を使って、ユーザーはSPring-8に試料を送付していただく。ただし、ビームラインの指定はしない。ここで必ずやってくださいということは言わない。そうすると、今度、SPring-8側はこの当該のビームライン群、これはID(Insertion Device)、ベンディングともに含む一群がございますが、ここのビームタイムの空きを見ながら、この試料だったらベンディングでもできるのではないかと。ただし、実際ベンディングでやると少し計測時間がIDより掛かる可能性はございますが、そこはここの等価時間のところで吸収するということで何とかできないかと。
こういうことがもしできるようになると、今申し上げたようなベンディング、IDの測定時間の違いを等価時間で吸収することで、実は何でもかんでもIDではなくて、ベンディングも含めた平準化ができる。ある意味でビームラインの空き状況に応じた迅速な対応が可能ではないかと。
平たく言うと、計測時間は速いけれども、待ち行列が大変長いIDビームラインを使うよりも、計測時間は少し長いのだけれども、待ち行列が短いベンディングの方が素早く結果が得られるケースもあるのではないかということで、こういったことが現行の制度を大きく変えなくてもできないか、運用のところで何とかできないかということの検討を始めております。
最後ですけれども、ビームライン別の有償利用料収入の、先ほど御紹介しましたが、専用ビームラインのところを見ていただくと分かるのですけれども、ここはやはり前回の成果の話もございましたが、有償利用料もかなり少ないということで、ここの問題点と対策案を考えたいと思います。
これは実際、算数をしてみますと、ビームライン1本当たりの有償利用料を比較しますと共用ビームラインは約1,000万円/本/年でございますが、それに比べて専用ビームラインは100万円を割り込んでいるということで、10分の1以下になっております。
この専用ビームラインであっても、成果を公開せずに専有する場合は有償利用となるはずですが、その成果のところも、前回議論があったようにそんなに出ていない。かといって、有償のところもなかなか出ていない。要は、成果の捕捉が不十分ではないかと思われます。
これは、前回もお見せしたスライドでございますが、専用ビームラインの捕捉をするところが、登録機関のSPring-8選定委員会の下の専用施設審査委員会でございますが、これは飽くまでも設置や更新に関わるところを見る委員会ということで、実質的には運用に踏み込んだところまでなかなか見切れていない。しかも、ビームラインの本数も、今19本と、非常に多くなっておりますので、なかなかこの制度の中では難しいのが現状ではないかというところがございます。
これは飽くまでも紙の上の試算でございますが、仮に年間5,000時間運転するとして、全て専用ビームラインの有償利用だと仮定しますと、掛け算をすると約2億円になります。
これは一方の極限的な試算でございますが、逆に、ただ全運転時間にわたって本当に公開可能な成果が得られるかというと、これもなかなか現実的ではないということで、実際にはこの間のところが実態を反映しているのではないかということが考えられます。
ここで海外のケースを御紹介しますと、これは欧州のある施設ですが、年間の維持費として相当額の料金を課しているケースがある。これを非常に戦略的に使っているある施設があるということです。
2つ目、ESRF(European Synchrotron Radiation Facility)はもう少しオープンでございまして、専用ビームライン、彼らは「コラボレーション・リサーチ・グループ・ビームライン」(CRG Beamline) と呼んでいますが、これが12本ございます。これは、ただしESRFに資金を拠出しているメンバー国のみに利用が認められている。このビームライン全て、その国の名前が付いておりまして、フランス、スイス、ノルウェー、そういったところでございますが、これは結局、毎年の運営費を負担している。ESRFは約90ミリオンユーロでございますので、これの少ないところでも4パーセント、多いところで約4分の1を負担している国が、専用ビームラインを設置して運営しているということでございます。しかも、これはベンディングのビームラインに限定されていますので、いわゆるアンジュレータ、非常に性能の高いところは、基本的には共用ビームラインとなっております。
こういったところも見ますと、やはり専用ビームラインの孤立化、蛸壺化を抑制し、どんどんダイナミックにやっていかないといけないことが御議論されていますが、そういったことを実現するには、定常的な費用負担の見直しの議論は避けては通れないのではないかということがございます。
その上で、本日の最初の議論もございましたが、施設者も関与しながら、ビームラインのみならずエンドステーションも含めて常に最新鋭に保つ、それで新たな課題解決に身軽に挑戦し続けられるような仕組みを検討する必要があるのはないか。例えば企業コンソーシアムと施設者との共同運用ビームラインのようなことが考えられないかということでございます。
最後のスライドでございますが、今の収入の増大策に関しまして、幾つかの問題点と方策を検討いたしました。例えばビームラインのスクラップ・アンド・ビルドとか、等価時間の運用とか、専用ビームラインのお話をさせていただきました。
このうち、速やかにいろいろなことをやっていかないといけないわけですが、このためには、やはり現行の制度を基本的には維持しながら運用・改善できることがまずあるだろうと。しかしながら、抜本的に制度の見直しが必要な部分もあるだろうという、この2つに分けて議論していかないといけないと思いますが、特に新しい3GeV光源は、新しい制度、抜本的な見直しのモデルケースになる、非常によい機会かと思います。
一方で、SPring-8は長年の蓄積というか慣性力がございますので、ここをどうしていくかを考えなければいけないわけですが、やはり年限を定めた抜本的な改革を実現するためには、施設、光源を含むアップグレードの議論が極めて重要になると思います。
以上でございます。
【雨宮主査】 ありがとうございました。
それでは、引き続いてSPring-8の公募審査や成果公開のルール、利用料の収入等について、木下先生から御説明をお願いいたします。
【木下利用推進部長】 よろしくお願いします。
今日は、頂いたお題が「課題選定の仕組み」「産業利用促進について」、それから成果の公開と利用料収入」とその「課題」でございます。産業利用のところ、特にうちの産業利用推進室に協力いただいて資料を作らせていただきました。
これは皆さん既にここで御議論されていると思いますけれども、現状の共用法の枠の中で国の4つの大型施設、SPring-8、SACLA、スーパーコンピュータ「京」、J‐PARCが運用されていて、この(2ページ)左の部分が施設者、今、矢橋グループディレクターが御説明になりましたけれども、SPring-8、SACLAは理研で、登録機関として、今、我々が利用促進業務を担っているということです。
次のスライドの説明にまいります。我々、登録機関として利用者支援を行う、それから利用者選定も行うことになっておりまして、その選定を行うに当たっては、有識者の諮問を受けてそれを決定しなさいということが定められておりますので、SACLA、SPring-8に選定委員会を設けています。
SPring-8に関しましては、それぞれの委員会、ここ(3ページ)に書いてありますような委員会で、大きな委員会で、あと、これが一番、実質上、課題選定に関わる「PRC(Proposal Review Committee)」と呼ばれている委員会ですけれども、その下に数多くの分科会があって、更にその下にはレフェリーが付いて審査をして、この分科会でそれぞれの分科の課題のセレクションをして、PRCで議論をして、最終的には選定委員会でどういう課題を採択するかという御議論を頂いた上で、JASRIからそれをユーザーに通知するというシステムをとっております。
SACLAはビームラインも少ないこともございまして、レフェリーとPRCの先生方、メンバーが全く同じで、事前審査をした結果をPRCに持ち寄っていただいて議論していただいて、それを選定委員会で最終的には御議論いただくことになっております。
SACLA、SPring-8、両方とも、基本的には成果専有以外の課題は成果公開が義務付けられておりまして、その成果の認定や成果の把握をどういうふうにしていくかというところを、「SPring-8/SACLA成果審査委員会」で御議論していただいているということになります。
SPring-8の方では、年間約1,900課題、採択率はビームラインごとに非常にばらつきがありますけれども7割前後、SACLAは最近、課題数、採択率も、同時運転のビームラインが増えてきたこともあってだんだん上がってきているのですけれども、大体150課題で採択率が50パーセントとなります。
これら全ての御議論に関わっていただいている先生、国内外たくさんお願いしているのですけれども、大体350名の委員の先生にお願いして審査をしているということです。
4ページ目は、ユーザーにお配りしているパンフレット、利用の手引きのようなものをうちの方で作って配っているもののコピーですけれども、今、いろいろ選定委員会等々で御議論いただいて、効率よく、それから非常によい成果を上げるためにどういう課題を導入してきたらいいかが長年議論されて、2年に1回ぐらいの割合で表の下の方は見直しが進んでいるのですけれども、一般課題、それから長期利用課題、これは昔は3年有効だったのですけれども、今は2年間の有効です。
それから緊急課題。これは本当に今までほとんど実績がないと言ってもいいぐらいなのですけれども、本当の本当に緊急的にやらなければいけない課題。
それから、時期指定課題。これは成果専有課題の中でメールインサービスのようなものも含む、これが測定代行課題、こういうものは時期指定ということで、ちょっと高いお金を頂きながらお使いいただいているということがあります。
それから、大学院生(ドクターコースの学生)提案型課題にも一般課題と同様の審査でやっていただいています。
それから成果公開優先利用課題。これは先ほど矢橋グループディレクターが説明されましたけれども、科学研究費助成事業(科研費)やCREST、科学技術振興機構(JST)関係の資金を持っている外部の先生たちにビームタイム、成果公開なのだけれどもお金を出していただいて、ビームタイムを確保していただく。科研費等が当たってビームタイムを確保できないと、その後の評価にもつながりますので、お金を払ってでもビームタイムを確保したいという方たちはこれを御利用いただいているということです。
それから、重点利用課題ということで、これは適宜見直しが入っているのですけれども、現在では産業新分野支援課題というもので新しい分野の企業が入ってきやすい仕組みを今までここ2年運用してきたのですけれども、これからあいち放射光(AichiSR)やフォトンファクトリー、立命館大学、佐賀(SAGA Light Source)等と国内のほかの放射光でやった結果、横断産業利用ということなのですけれども、そういうものを踏まえて、新たにSPring-8で産業利用を展開していただくという課題も次回から始まります。
それから、社会・文化利用課題ということで、これはなかなか社会的な関心は高いのですけれども、いわゆる構造解析とか、イメージングとか、分光という、これまでのSPring-8の審査カテゴリーだとなかなか拾い上げにくい課題もここで拾っていこうということで、今、3年目の実施をしています。
パートナーユーザー課題、これは施設のスタッフの人数が限られていること、それから非常にヘビーユーザーの方で世界的な競争力をお持ちで競争的資金も獲得していただけるようなユーザーの方にパートナーユーザーとなっていただいて、新たな分野、施設の整備、ビームラインの整備も含めて御協力いただいて、更に施設スタッフのサポートのような形でユーザーの御支援、ユーザー拡大も行っていただいています。
それから新分野創成利用課題とは、ここ2年半ぐらい新たに始めた制度ですけれども、いわゆるこの上の課題は個々の課題なのですけれども、科研費で言うと新学術領域研究(新学術)のようなものですか、グループを作っていただいて新たに分野を創成していただくようなチャレンジングなことまでやっていただこうという仕掛けでございます。
大体、課題募集は年2回ございまして、流れとしてはビームライン担当者による技術審査、これは科学審査を含まずに、課題実施が可能か否かというところ、この装置でできるかということです。
それから安全審査。一般安全、放射線安全を含みます。
それから科学審査は外部のレフェリーの先生に見ていただいて、点数化をして、その後、先ほどの分科会で審査をした後、PRC、選定委員会での審議を経て、ユーザーへの通知となっています。
申請課題数、これは共用開始以来ですけれども、今は大体、共用ビームラインの数は変わっておりませんので、この辺(2006年頃)からずっとほぼ一定数の割合をキープしているということです。会社の割合がこの辺(2006年頃)までずっと伸びてきて、ここも今、一定になったことが分かります。
それから、利用後の成果に関してです。成果公開の利用に関しては、利用終了後60日以内に報告書を出していただきます。昔は、この報告書が出ていれば、成果として認めるということになったのですが、2010年かその少し前ぐらいから、これではいけないのではないか、というような議論がやはり相当強く起こりまして、査読付き論文が成果ということになりました。
これに関しましては、なかなか短期に結果が出ない課題もありますので、原則として3年以内に論文を出してくださいということにしてあります。なかなか成果が出ない場合でも、理由があれば2年かける2回で実験終了後合計7年ぐらいまでは延長の制度がありますけれども、延長願い、成果集、論文、何も出せない場合にはSPring-8への課題申請はできませんという制度を2011年から導入しています。
この成果公開を前提に利用いただいても、やった結果、これは特許にしたいとか、会社で内緒にしておいてこれを次の製品開発につなげたいというケースもございますので、この60日レポートの以前に、成果公開でやったのだけれども成果専有に変えたいというユーザーもおられますので、それは利用料をお払いいただければ、それに切替えが可能だということにしております。でも、ここで「成果公開します」とある意味宣言してしまうと、必ず論文をお書きいただくことになっています。
これ(5ページ)が論文の出方のデータですけれども、成果公開のルールを厳しく定める以前は、このぐらいの感じで時間経過とともに論文が出ていたのですけれども、この制度を導入したら、やはり皆さんさすがにお尻に火がついて、この立ち上がりと到達数が結構上がってきている状況にあります。
「利用料金の考え方」です。これはSPring-8ができるときに、航空・電子等技術審議会で20号答申という諮問が出たその考え方に基づいて、これは諸外国の例がまさしく成果公開に関しては利用料を徴収しないのが世界のスタンダードだと書いてあります。ただし、成果を公開しない利用者からは、運営費回収方式によってビームタイム使用料を徴収しているということです。
一応、成果公開も、先ほどの公開優先課題はお金を取っているのですけれども、実際には消耗品の実費負担だけをユーザーから頂いているということです。成果専有に関しては、共用に関しては施設の全体の部分、加速器やスタッフやいろいろ、それとビームライン、全てを含めてそれを割り算したところでシフト当たり48万円というお金が出てきています。時期指定やメールイン、測定代行などは、これの約1.5倍のお金を頂いているということです。
それから、専用ビームラインに関しましては、後で議論になると思うのですけれども、ビームラインのところは設置者がお金を負担しているという考え方に基づいて、SPring-8の共用の施設部分や電気の部分、そういうところで成果公開よりも安いお金を取っているのが算定基準だということです。
次に、産業利用に話題を変えさせていただきます。
赤色の矢印がいわゆる産業利用ビームラインで、今、3本ございます。それから緑色の矢印が専用ビームラインで産業利用を志向した専用施設のビームラインになっているということです。
産業利用をスタートして最初は、企業の方にお願いしてSPring-8に来ていただいたという状況があります。当初は成果公開を前提としていたのですけれども、トライアルユースという制度を入れたということ、その後、トライアルユース的なものを徐々に拡大していく中で、企業の人たちの間でSPring-8が認知されて、徐々にそれが広まっていった。それから先が課題数としては、成果公開よりも成果専有の課題数がどんどん増えていっているということです。
これが増えていっている要因の1つが、ここにX線吸収微細構造(XAFS)、それから粉末のディフラクション、それから高エネルギーの光電子分光(HAXPES)、小角散乱、そういう、ある程度SPring-8ならではであって、しかも割と企業の人たちに標準的に評価方法として認知されている手法に測定代行を入れていって、この数が伸びている。ちょうどここで愛知の放射光が稼働し出したところで、XAFSのユーザーが多分かなりあちらに行かれたのだと思うのですけれども、その後、また少し回復傾向にあるかなと思います。
ただ、これは課題数でございまして、時間自身は先ほどお示ししたように成果専有のものがそんなに増えているわけではない。上限も、いわゆる成果公開の部分と有償利用の部分のバランスを定めておりまして、産業利用とかたんぱくのビームラインでは、上限、成果専有のビームタイムは25パーセントという枠を、今、付けておりますので、そういう状況があります。
これは(9、10ページ)、どういうところで利用されているかで、産業界の方、非常に幅広くユーザーが利用されています。それから、利用企業の割合も見ても、「共用のみ」「専用のみ」両方に非常にまたがって使っているのが企業の特徴です。
「産業利用の成果」ということで、これ(11ページ)はお隣におられる金谷先生が去年の産業利用報告会で問題点をかなり指摘してくださっています。今までは、使ってなんぼだったけれども、これからは使ったことを社会に理解してもらうためにはどうすればいいかというところまで含めて考えなければいけない、そういう御趣旨でこの原稿をお書きいただいていますので、目を通していただければと思います。
これ(12ページ)は先ほど矢橋グループディレクターが、前回ですか、出していただいた、まずパブリケーション。共用ビームラインは産業利用のビームラインでも結構パブリケーションが多いのですが、専用ビームラインに関しては我々が、問題を感じているところでございます。
それから、お金の部分です。これも先ほどと一緒です。ここ(13ページ表下段)が専用ビームラインの部分ですけれども、非常にお金が少ないです。それで、ここら辺(軟X線ビームラインなど)は成果公開の部分の時間数が多いのですけれども、お金を払ってでも、やはりリソースが少ないので使いたいということです。
これは最後のスライドになります。ダブるところもありますけれども、まず専用ビームラインのアクティビティーをどう評価するかというところです。基本的には、成果公開で使っているのだから論文を書いてくださいと相当申し上げているのですが、なかなか表に出てくるものが少ない。それから、収入も少ない。
それから、イノベーションにつながる実績はもっと発信してくださいと申し上げているのですけれども、岸本委員がおられますけれども、ああいうエナセーブのようなものがなかなか会社としても出しにくいところがあるようです。
では、使って満足すればそれが成果なのかといったら、そうも言えない。それから専用ビームラインは、あるビームラインではコンソーシアムを作ります。そうすると、お金を出した割合でビームタイムを配分するので、ある意味での既得権というか悪平等の状況が起こっていて、競争原理が全く働かないので、この1番目のような問題が出てきているのかなと感じております。
それから、もう一つは、専用ビームラインはあれだけ数があるのですけれども、ビームラインの特色が余りないのではないかと思われます。HAXPESとか、XAFSとか、イメージングとか、1つのビームラインで全部の機能を備えているのです。装置もそうなのですけれども、スタッフにしても、我々のJASRIのスタッフと比べると、本当の意味での専門家ではないので、こういうことも知らないのというようなことが多々あります。ノウハウの共有とか知見の蓄積も、ビームラインの中に閉じている状況です。
それに対して共用ビームラインのスタッフは、本当にその分野でのプロですので、産業利用に限らず横断的な知見や経験の共有ができているので、会社の方からは無駄な実験をせずに済んでいます、本当に効果的で適切な実験のコーディネートができていますという、いい評判を頂いていると思っています。
これは矢橋グループディレクターの言われたことと同じですね、共有ビームライン、専用ビームラインを含めて、本当にどういう装置をどう適切に配置していくかということ。一度できてしまうと、既得権を打破するのは大変なので、仕組みのところから考える必要があるかなと思います。
それから料金です。今、我々が頂いている成果専有の料金は、成果に対する保証ではないのです。飽くまで時間でお金を払っていただいているということです。データが得られなくても、ビームが供給できている限りはユーザーの責任で実験を行っていただいていて、しかも、ビームタイムの補塡はしないということで料金を頂いているのですけれども、それに対してユーザーが、若干、不満を抱いているというのはあるかもしれません。
もう一つは、利用料収入は入ってくるのですけれども、特に我々、登録機関でそのビームライン・スタッフはお金を得ることが一体何の得になるのだろうかという、そういうモチベーションの問題を感じながら仕事をしている部分もあります。やはり成果が出るとうれしいのですけれども、お金を稼ぐことが成果なのかというところは考えないといけないかなと思います。
それから、アンジュレータや、光源、検出器が高性能化してくると、利用時間自体は1課題当たり少なくて済んでしまうのです。そうすると、時間を売っている限りは増収が本当に見込めるのかという問題があります。
そのほか、今のところSACLAに関しては日本国内に法人格を持つ企業のみが利用可能ということになっています。
それから、もう一つ、今、我々が考えている問題は、成果専有枠でビームタイムを確保された後、それをキャンセルしますといったときに、違約金は取れない、それから期の終わりの頃にそういうことがあったら、新たにビームタイムを配分できないという、結局捨てることになってしまうところをどうしようかということです。
それから、測定代行、メールインサービスはすごく有効なのですけれども、利用料金にグレードを付けていいかもしれないと思っています。データを取るだけ、それからデータの質まで保証します、それから解析をサポートします、解釈まで付けてあげますということです。
それから、守秘義務、知財の問題等は、今のところ顕在化していません。
以上です。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。
今、お二人の先生方のお話に御質問があるかと思うのですが、時間が押しているので、引き続きJ‐PARCの運営について、金谷先生から御説明をお願いします。
【金谷ディビジョン長】 まずは、私からJ‐PARC MLFの施設の運用ということで全体的な運営について話をさせていただきます。
課題選定、産業利用、それから料金問題等につきましては、次の横溝センター長がしっかりと話をしてくださる予定でございます。
これは、前回も示した我々のMLFの全体図でございますが、日本原子力研究開発機構(JAEA)が担当している部分がリニアック、それから3GeVのシンクロトロン、そして我々の物質・生命科学実験施設(MLF)、この青色の部分でございます。
費用としましては、共用補助金、利用促進交付金を合わせまして大体、100億円強ということです。
赤色で囲われている部分、すなわちメインリングを中心とした部分及びMLFの部分が高エネルギー加速器研究機構(KEK)担当でございまして、費用的には運営費交付金及び国立大学法人先端研究推進補助金で約60億円でございます。
これ(3ページ)も前に示しましたが、我々MLFだけの体制図を書きましても、こういうように非常に複雑です。MLFはJAEAとKEKの共同運営でございまして、J‐PARC運営会議を持っております。その下にJ‐PARCセンター長、現在、齊藤さんが務めておられます。その下にMLFディビジョン、ここに金谷がいることになります。その下に中性子の利用セクション、ミュオンセクション、共通技術開発セクション、中性子基盤セクション、そして中性子源、ターゲットを扱うセクションがございます。
今日はミュオンの話はかなり複雑になりますので、避けさせていただきます。
さらに、共用法の下に登録機関として総合科学研究機構(CROSS)が存在します。さらに、専用ビームラインを持ちます茨城県がここに入ります。我々は、これら全体を合わせて「拡大MLF」という呼び方をしております。
こういう構造のためにビームラインにもかなり色が付きまして、茨城県が専用ビームラインを2本、KEKが設置者ビームラインを8本、JAEAが設置者ビームラインを4本、そして共用法の下にあります共用ビームラインが7本というのが、我々の実態でございます。
まず、運用経費という形からそれぞれのビームラインを見ていきますと、基本的に茨城県のビームライン、これは専用ビームラインでございますが、茨城県からの費用で運用されております。ビームラインの維持管理、高度化、試料環境整備、利用者支援などが行われています。
KEKの設置者ビームラインは、先ほど述べました運営費交付金及び国立大学法人先端研究推進補助金のうちMLFの取り分の中で運用されています。具体的な数字は言いませんが、それほど多い額ではございません。
共用ビームライン7本につきましては、共用法の補助金約100億円でございますが、そのうちMLF分、この中には、先ほど申しましたように中性子源でありますとか、基盤技術でありますとか、ビームラインの維持管理、それから試料環境整備などが含まれまして、約10億円で運用しております。更にCROSSへの利用促進交付金がございまして、それが共用ビームラインの運用をサポートしております。
更にJAEAの設置者ビームラインが4本ございます。これはJAEAの運営交付金で運用されております。いわゆる共用法の対象にはなっておりませんので、共用補助金はこれには流用することができません。
基本的にここで言いたいことは、ビームラインの間の維持管理費、高度化費用、利用者支援費用のアンバランスがビームラインの間で非常に大きくあるということでございます。
組織間で経費を混ぜて使用することは不可でございますので、共用ビームタイムのようなビームラインに色分けせずに、ビームタイムのフラクションで分けていただくことが我々にとって望ましいと考えております。
次(5ページ)、非常に細かい図で申し訳ないのですが、これはMLFの中性子関連のスタッフ数をまとめたものです。ここで数字を細かく見ることは避けたいと思うのですが、言いたいことは、共用ビームラインと茨城県の専用ビームラインの支援スタッフは国際レベル、大体、ビームライン当たり6名が割り当てられておりますが、他のビームラインでは必ずしもそうではない。そのために、利用者支援、それから装置維持、高度化にアンバランスが生じていることは否めません。
こういう状況におきまして我々としましては、組織の区別なく、ビームラインの機能によるグループ化でありますとか共通基盤技術に向けた一体的運用を行っております。次にそれを御紹介させていただきます。
これ(6ページ)は利用セクションの中で行われているビームラインの運用でございますが、ビームラインの機能によりまして、分光グループ、これは非弾性散乱の分光器でございます、結晶構造のグループ、ナノ構造のグループ、それからパルス中性子応用グループという4つのグループに分けまして、ビームラインの色に関係なく運用を行っております。
ただ、やはりここでも基本的に運用経費を混ぜることはできませんので、どうしてもそのアンバランスに関しましては大きな問題となります。
さらに、主に利用セクションの活動として、全ビームラインに共通でありますデータ解析、利用系の技術につきましては、他のセクションと協働しながら、それぞれのビームライン個々ではなく、ビームライン全体にまたがる共通の支援をしております。
これ(7ページ)はその模式図でございますが、それぞれのビームラインがありますが、そこにチョッパーのサブグループ、検出器のサブグループ、試料環境のサブグループ、計算環境のサブグループ等を設けて、それぞれのビームラインに関する基盤技術の面倒を見ているシステムでございます。
しかしながら、例えばチョッパー技術を見ていただきますと、ここに溝があるのですが、これは初期の段階において、チョッパー技術に関してKEKが持っているものがあり、またJAEA側として共通技術開発セクションが開発したものがありました。初期において一緒にやることがなかったので、いまだにここは分かれた形で運用されております。初期からの共通技術の開発は非常に重要であると思います。
もう一つの問題は、こういう共通基盤技術に対しまして余りにも人が少ないのが我々の悩みでございます。具体的に海外施設と比べてみますと、計算環境におきましては、米国SNS(Spallation Neutron Source)で16名、英国ISISで9名、試料環境に至りましてはSNSで20名、ISISで21名があります。我々の場合は約4名でございます。そういうことも大きな問題と思います。
それから、MLF全体としての産業利用の現状を少しだけ述べさせていただきます。
産業利用については、横溝センター長がかなり詳しく述べてくださる予定です。実際のところ、茨城県、登録機関であるCROSSは、産業利用をミッションとして持っていますので、ほとんどこの2つで産業利用は進んでいます。特に茨城県の2本の専用ビームラインは産業利用に特化されておりますので、産業利用の半分以上はここから出ております。
産業利用における問題としましては、JAEA、KEKの設置者ビームラインの問題があります。それぞれ現状としましては、ビームラインを基盤とした産業利用課題の受入れということで産業利用が進められておりますが、組織的な産業利用促進は、ほとんどこのビームラインに関してはありません。
その理由の幾つかが考えられますが、1つは現場のビームライン担当者への負担がかなり大きく、かつ、ビームラインの方へのインセンティブがない、モチベーションが湧かないという問題がございます。
それからもう一つは、ここで議論するかどうか難しいところがございますが、大学共同利用機関法人であるKEKの問題がございます。例えばKEKの産業利用受入れは2016Bから産業利用課題、具体的には産業界の方がPIの課題という意味ですが、を受けることが可能になった。産業利用における大学共同利用機関法人の役割は、今後、議論していかないといけない大きな問題だと考えております。
まとめますと、産業界の利用には、試料準備、測定指導、データ解析指導などの充実が非常に必要です。しかし、これはビームライン担当者にとっては非常に大きな負担であり、かつインセンティブがないという状況でございます。これの改善が必要であると思います。
その一つの改善策として、これはSPring-8の03番(BL03XU)にありますフロンティアソフトマター・ビームライン(FSBL)の例を参考にさせていただきますと、基本的には非競争領域における学術界の産業界への協力、コンソーシアムの形成などを通じた協力が非常に重要だろうと思っております。
学術界の産業界への試料準備、データ解析の指導ができますために、ビームライン担当者への負担が非常に軽減されます。大学の力、研究所の力を利用するということでございます。また、学術の論文出版によって、成果創出の拡大も期待できます。
将来的にはこのような活動を分析会社へ受託するようなことも考えられますし、それから、有料サービスへの導入もこういうものを機会にできると考えております。
ただ、MLFにおける問題としては、産業利用ビームタイムの確保がございます。急に専用ビームライン増設は不可能でございます。そのために我々としては、産業利用に供するビームタイムの確保が非常に大きな問題になっています。そういう意味からも、ビームラインの色分けではない、ビームタイムによる共用の導入のようなことが一つの道であるのではないかと考えております。
以上、まとめますと、ビームラインにおける維持管理費用等、費用面のアンバランスがございます。組織間で経費を混ぜて使用することはもちろん不可でございますので、その改善が望まれますが、現在、3GeV計画で議論されている共用ビームタイムの導入が、我々にとっても必要ではないかと考えている次第でございます。
さらに、ビームラインをまたぐ組織を超えた利用者支援、それから基盤技術の整備等、これは我々にとっても課題ですし、初期の頃からこれは非常に計画的にやるべきであると思います。
そのためには、組織を超えた一元的運営・責任体制の構築が不可欠でありますし、人員的には、海外並みの人員整備ができれば必要であると考えております。
産業利用におきましては、先ほども言いましたが、我々のところにおける特殊問題かもしれませんが、大学共同利用機関法人における産業利用の問題は、今後、解決していかないといけない問題であると思います。
さらに、非競争領域における産学連携が重要であり、それは我々の施設にとりましては装置担当者の負担をかなり軽減できるものであります。その後、分析会社等への受託なども考えることができます。
それから、装置担当者への利用料金の還元による装置高度化など、やはりインセンティブが現場の士気を高めるという意味で非常に重要であります。
最後、MLFにおける産業利用のビームタイムの確保が必要であり、そういう意味からも、共用ビームタイムの導入が我々にとっても重要であると考えております。
以上です。
【雨宮主査】 ありがとうございました。
それでは、引き続いて横溝センター長から「MLFの利用促進活動」についてお願いいたします。
【横溝センター長】 頂いた課題はここに示します課題審査システム、産業利用の推進、利用収入等に関する事項でありますが、J‐PARC MFLでは4つの機関が協力して運営しておりますので、私の話はMLF全体をカバーしている内容になっております。
共用ビームラインは7本ですけれども、JAEAが建設し所有しております。このため、JAEAに維持費が支給されており、運転をすることになっています。共用ビームラインに関してCROSSの活動は、この7本に応募される研究課題の選定と利用支援になっております。共用法ではJAEA業務の一部をCROSSにやらせることになっており、業務の重複はないいないことになっております。
JAEAは4本のビームラインを造り、自らの目的のためにビームタイムの一部を使っていますけれども、残り部分は一般の利用に供出しています。KEKは8本ありますけれども、これもKEKが基本的に運用していて、KEKの大学共同利用としての利用と、それ以外に一般に供出して利用をさせております。
茨城県の専用ビームラインでは、1マイナスベータという考えを導入しており、ベータとは、80パーセントは茨城県が専有します、20パーセントをJ‐PARC側に供出して一般利用に公開しています。
図(3ページ)にしますようにビームタイム100パーセントのうち、施設側で利用する部分がこれぐらいです、それ以外は一般で利用してもらいます、そういう考えで時間枠を配分しています。大体のイメージは、この施設が専用で利用するところが40パーセントぐらい、残り一般利用が60パーセントぐらいになっています。
ここの一般課題調整枠は、一般の方に結果的には使ってもらっていますけれども、緊急課題、非公開課題、スクールなどに振り分けています。
実際、どういうふうにビーム配分がされているかというと、ここ(4ページ)の下の方の青色の部分が一般利用になっている部分です。
ビームラインによって違うのですけれども、例えば共用ビームラインでは、今、75パーセントぐらいを一般利用として外の方に使ってもらって、施設側の利用が25パーセントぐらいになっています。ただ、幾つかのビームライン、特にBL22などは最近完成したビームラインで、まだまだ調整が必要であり、その時間を優先的にとっているところもあります。
緑色の部分がJAEAですけれども、JAEAは40パーセント前後をプロジェクト課題として優先的に利用しておりますが、それ以外は一般課題に公開しております。
KEKは、この黄色の部分が非常に多く見えますけれども、これはS型課題といって、KEKが独自に公募して利用課題を決めている部分なのですけれども、それ以外は一般利用になっています。一般利用が少なく見えていますけれども、競争率が過剰にならないように、先にプロジェクト課題の選定はしておりますが、一般課題の応募が多いときには、この黄色のところの利用時間を減らして、一般課題の競争率が高くならないような調整もしています。
茨城県の方は、20パーセントはJ‐PARCに供出し一般課題募集をしています。残りの80パーセントは、茨城県が独自に課題の募集、審査をしているのが現状です。
これ(5ページ)が一般課題の審査ですけれども、ここは共用のところのCROSSが運営している審査で、J‐PARCがこういう審査をしています。一般の方は一元化窓口に応募してもらう。応募された課題に関して分科会でどこのビームラインを使うとかを決めて、レフェリーに審査してもらっています。分科会ではレフェリーの点数に大きな開きがある場合にだけ調整しますが、評価結果を利用研究課題審査委員会に提出し、この委員会で利用課題の選考を決めております。その審査結果は選定委員会に提出され、この委員会で最終的に承認してもらうことになっています。
ただ、共用法では、共用ビームラインの課題選定はCROSSが独自にやりなさいということになっているので、形の上では独自の委員会で実施しないといけません。でも、議論は他の課題と一緒にやらないと全体が把握できないので、委員会の運営はMLF側の委員会と合同開催にしております。その結果、MLFの施設利用委員会、これは25名の委員がいるのですけれども、選定委員会は14名、そのうち10名が重複しているので、トータル29名の委員が委員会を構成しており、非常に大人数で運営しています。
専用ビームラインの選定はCROSSが実施することになっており、専用施設審査委員会でビームラインの選定をしています。その結果は選定委員会に報告して承認されます。
これ(6ページ)は、一般利用以外の課題選定はそれぞれの機関で審査しており、その審査体制を示しております。後ほど御覧いただければと思います。
利用課題申請数及び採択数野変遷を、ここ(7ページ)で示しております。左図が申請課題数、右図が採択課題数の変遷です。
ビームラインの整備が進んでビームライン数が増えた結果、アカデミックな利用が赤で示されていますが、年々増えてきています。でも、青色で示す産業利用の部分ですけれども、それほど大きく増えていない。最初、産業利用の比率が非常に高かったように見え、年々下がってきているように見えます。実際には産業利用数が大きく増えていないので、そのように見えております。全利用課題数がここに示しておりますが、産業利用は532件、全体の中で約30パーセントが産業利用になっております。
では、産業利用の促進活動を紹介します。これは産業利用だけに限定しておらずMLF全体での利用促進活動も示しておりますが、現在コーディネーターはCROSSに4名、茨城県に2名いるので、そういう人たちも含めまして多様な活動をしています。
多様なシンポジウムや研究会、講習会を茨城県や中性子産業利用推進協議会などとも協力して一緒になって開催しておりまして、年間25件ぐらい実施しております。
それから2番目が3機関連携で、JASRI、RISTと一緒に研究会を開いているのですけれども、大型研究施設の中では放射光利用者数が多いので、その研究者たちに中性子の利用にも活動範囲を広げていただくこと、また計算物質科学の研究者と一緒に議論し中性子利用研究にも興味を広げていただくという意味では有効な交流になっています。
それからCROSSroads、これは現場に近い意見交換や議論をする会合、それから学会でのポスター、それから企業を訪問する。これはコーディネーターを中心に装置担当者も一緒になって企業を訪問して、こういう利用研究ができますということを啓もうしております。
それからトライアルユース。これは最初の5年間は国の予算を戴(頂)いて実施していたのですけれども、その後はCROSSの独自なNew User Promotionという活動なども実施しています。
産業利用の状況はこれ(9ページ)で示していますけれども、ビームラインによって非常に産業利用数が偏っています。特に20番(BL20)が非常に多い。余り使われていないビームラインがありますし、全然使っていないビームラインも幾つかあります。
どういう企業の人、どういう分野の人が利用しているかを示していますけれども、自動車、化学分野の利用が多い状況ですが、幅広い産業界の方が利用してくれております。研究分野としてはリチウムイオン電池がかなりのウエートを占めている状況です。
トライアルユース事業、これは5年間にわたってやったのですけれども、全数で37件の課題が採択されています。利用されたビームラインはここに示しているように特定のビームラインに偏っております。特に、余り産業界が利用しないビームラインもあるということですけれども、BL15小角散乱、BL17反射率とか、BL02DNA準弾性散乱などが良く使われているという状況です。
トライアルユース事業のサマリーですけれども、全体37件採択されて、いろいろな装置のトラブルで止まった時期がありましたが、実際は34件の実験が実施されました。トライアルユースを実施した企業が、その後一般課題に応募することが多くなっており、43件が申請されて28件が採択されております。課題の申請書の作成から報告書の作成などを懇切丁寧に協力していることでリピーターが増えている状況になっています。
それから、産業界の方に結果を発表してもらう活動もしていますし、ホームページでその結果が見られるようにしており、これまで使ったことのない企業の方もこれを参考に検討できるようにしています。
次は「成果公開・非公開のルールと利用料金」ですが、成果を公開する場合は利用料金を免除するということで、これは「IUPAPの原則」という国際標準に従っております。当初、国の評価委員会でもこういう議論をしていただきまして、この方針を採用いたしました。
成果非公開の場合は、運営費回収方式で算出していまして、1日あたり約300万円弱の利用料金を徴収しております。これは放射光と比べると高いのですけれども、中性子利用で国際的に比較してみますと、海外の施設とも同程度の料金になっております。
この表(14ページ)には茨城県は除かれていますけれども、茨城県は成果公開の利用に関しても独自の料金設定をしておりまして、一般課題で60万円ぐらいを徴収していることが特徴になっています。
では成果非公開の利用状況と料金収入はトータルでどのぐらいになっているかということですけれども、129件の非公開利用がありました。産業利用総数が532件なので、24パーセントを成果専有で使っていただいております。
ただ、15ページの表のスラッシュの後に書いている数字は、昨年度の利用数を示しておりますが。昨年は24件でありましたが全採択課題数の約10パーセントに当たっております。利用時間を見てみますと、成果非公開の利用は非常に絞られていて、全時間数で9日分しかありません。21本のビームラインで1年間の利用時間と比較して考えますと、0.2パーセント程度の利用時間にしかなっていないということです。利用料収入は約1.8億円です。これは運転開始以降の総額ですから、利用料収入は大きくないという状況です。
産業界はそういう意味では有償利用を工夫して絞って利用しているのがこれから分かります。この利用料1.8億円は全てJAEAが徴収し、そのまま国庫に返納することになっているので、全く現場で活用できない状況になっています。
129件の成果非公開利用に関して、実施した企業数を見てみますと34社です。1社で5件以上の利用をした会社が10社で、1回だけしか利用していないのは17社。半数は1回しか利用していないという状況になっています。
トップ3の会社を匿名で書いていますけれども、この3社で利用料収入の約50パーセントを占めているのも、大きな特徴になっています。利用が多い企業ではルーチン的に製品開発に中性子を利用していることがうかがえます。
課題と提言(17ページ)ですけれども、課題は、一般利用に関してユーザー対応の一元窓口は実現しているのですけれども、実は組織ごとに書類フォーマットやルールに多少の違いがあります。例えば提出書類の宛先が知事宛てだったり、J‐PARCセンター長だったり、CROSSの責任者だったりしています。これらは今後の課題と考えています。
課題選定のため合同で委員会を開催しているのですけれども、委員の数が多い。レフェリーの制度で公平・透明性を維持するということで、レフェリーの点数で合否がほとんど決まっており、研究テーマに関する施設の特徴が出しにくいのが課題になっております。
4機関の存続基盤となる法律が異なりますので簡単にできるとは思えないところもあるのですけれども、一般課題の募集や選定業務はどこかが一本化して実施できると効率化が図れるでしょう。課題選定システムの改善を図り、「MLFでは今回こういう研究テーマを重点にして課題審査をしました」ということが出せると良いと思います。
産業利用の促進に努めていろいろな活動をしているのですが、それなりに利用企業は増えておりますが、学術利用が増加しているほど産業利用数は増えていない。産業界のニーズと現状でギャップがあるのではないかとも考えます。特に生命科学では、大きなたんぱく質を作ることに時間と費用が掛かるので、産業界での生命科学での中性子利用が敬遠されてしまうようですし、有償利用をどんどん使うほど産業界に中性子が浸透していない、そういうことを感じます。
利用料金が高いと敬遠したり、安い利用料の施設へ研究者が流れてしまうこともあるので、利用料金を多少低く設定して、たくさん使ってもらった結果利用料収入が増化する等を図れないでしょうか。産業界の成果公開でも低額の利用料金を課すのも一つの選択肢でしょう。また、高度なデータ解析の支援では、計算科学解析などを有料にすることも一つの検討課題かと思います。
利用料収入をMLF現場へ還元できるといい。将来的にはそうなってほしいと、今、文科省にもお願いしているところですけれども、ただ、得られた利用料金だけでは運転維持費までカバーできませんが、試料環境性能向上とか、技術支援の充実に使えるといいのですけど。多少でも使えれば、現場の人のインセンティブは上がると考えています。
今の状況では、現場のメリットが全然ないこと、産業利用、特に有償利用は非公開にしていますので、どの会社がどういうことに使っているかは一切外部に見えていないことで、担当者にとってはただの奉仕活動になってしまう、ビームラインの成果としても宣伝できない、などデメリットの方が非常に大きいという状況になっています。
以上です。
【雨宮主査】 どうもありがとうございました。
時間が押してきましたけれども、これから残り時間で議論していきたいと思いますが、今までの発表、SPring-8、J‐PARCの発表を踏まえて、高輝度3GeV級の放射光源の施設の運用と全体討論に入りたいと思いますが、最初に西山室長から御説明がありましたように、参考資料2を見ていただいて、今日の議論のポイント、主にそこにフォーカスした形で御質疑というかディスカッションをお願いしたいのですが、特に本格的な産学連携、産業利用の推進に向けての枠組み、それから、利用料金の設定を含む利用料収入の増加方策について御議論いただければと思います。もちろん、今までの質問も含めた上で御議論いただければと思います。
【尾嶋委員】 J‐PARCにしても、SPring-8、SACLAにしても、国の非常に大事な最先端の研究インフラですよね。もちろん産業利用ということは非常に大事だと思うのですけれども、まず一番大事なことはこれらは研究インフラだということです。
その上で、収入を増やすということが矢橋グループディレクターの話にありましたけれども、では、一体、こういう位置付けの研究インフラでどのくらいまで収入を増やせばいいのか、そのフィロソフィーがなくて単にどんどん増やしていく、金を払わないユーザーは来なくていいみたいな話になってしまうと、私は非常に本末転倒であると思います。
SPring-8は92億円の予算を使って、現在、非常な努力をされて3億円集めておられるのですけれども、これを例えば予算の半分稼げるようにしないと、国は維持できませんというようなばかなことは、多分、国は言わないと思うのです。
だから、そこのところはフィロソフィーを持って、これだけ稼げば十分ですとか、これだけの設備だから5億円ぐらいまではという、KPI(Key Performance Indicator)的な、みんなが納得するインデックスを持たれた方がいいのではないかと。このままだと、稼げないビームラインは潰せという、そういう方向に行ってしまうのではないかという懸念を持ちました。
以上です。
【矢橋グループディレクター】 稼げないビームラインは潰せというのは、全くそういうことはございません。要は、当然、稼げるもの、それから全く稼げなくて、しかしながら学術的に非常に貢献するものは、全くそれは違うので、ここをごっちゃにして混ぜるとよくないかなと。
あと金額の目標も、当然、内部では議論はしておりますが、私がここで軽々しく申し上げることはできないのですが、それはやはりリーズナブルな目標があって、そこに向けて年次を決めてやると。
例えば今の体制でどこまでいけるか。SPring-8の場合はアップグレードがもしいけると、その後でどれぐらいいけるか、そういう議論は、当然、進めております。
【雨宮主査】 今、尾嶋委員の言われた産業利用の促進は重要で、国の全体的な方針として官、学、民と、またいろいろなところがリソースを出し合う、この流れは重要だと思いますが、高輝度3GeV級に向けて、どの程度がフィージブルかということのイメージは、今までSPring-8のいろいろな経験に基づいて現実的なイメージを出しておくことが重要であるかと思います。もちろん、今までのやり方でもっと改善できるところはあると。そこをどういうふうにして改善するかは知恵の出しどころかと思います。
確かに学術的に必要なものが採算性ということだけでスクラップされるようなことがあってはならないと思います。いかにそれをバランスさせるかは、非常にこれから重要なところかとは思います。今日の議題は、今まで産学連携、産学利用をやってこられていますが、いろいろ改善の余地があるので、その辺のところの知恵や、成果も増やすけれども利用料も増えるためにどうすればいいか、これは決して簡単な問題提起ではないのですが、御議論いただければと思います。
【高橋委員】 基本的なことで申し訳ないのですけれども、利用料金のところで運営費回収方式は変更する余地はないというか、そういう法律の下でやっているという認識で合っていますか。
【西山室長】 文科省からお答えいたしますと、運営費回収方式でやるというのは、先ほど来出ています成果公開若しくは成果非公開の場合もどういった収入を取るかというところを、過去、平成七、八年ぐらいに審議会で議論した結果に基づいて、今、現行そういった考えになっているところなのですが、これは一定の国際的な考え方にのっとってやっているものではありますが、今回、新しい放射光源を造るという話ですので、そういった過去の議論の実績も踏まえながら今後どうするかということですので、必ずしもそれに縛られるものではないです。
【高橋委員】 こういうことをお聞きしたのはどういうことかと申しますと、お金を払う企業の側(がわ)からすると、払ったお金に対するどれだけのリターンが得られるかということを常に考えるわけでして、どっち側に対するお金というのももちろん大事なのですけれども、矢橋さんの議論の中にもありましたように、時間当たりに取れるデータの量が高度化によってどんどん上がっていくと、やはりその分、得するような気分になってしまうわけですね。
逆に言うと、我々が中性子をうまく使えていないのもその辺に理由がありまして、1つのデータを取るために必要な時間がどうしても掛かってしまうと、利用料が膨大になってしまって、それに対してペイできないという考え方になってしまうのです。
なので、今、先生がおっしゃられたように、単位時間に換算して利用料金の考え方ですとかそういったものを導入できると、よりいろいろな施設も使いやすくなるのではないかということは感じました。
【雨宮主査】 いろいろな観点からどんどんディスカッションいただきたいと思います。予定は12時でしたけれども、遅れていますので、12時半ぐらいまでをめどに。少なくとも時間で区切ることでディスカッションが中途半端にならない設定で議論したいと思います。よろしくお願いします。
【岸本委員】 本格的な産業利用の推進と利用料金の増加方策は、多分ほとんどイコールですが、利用料収入を上げるためには魅力のある施設、魅力のあるデータが取れることがやっぱり大前提にあるのかなと思います。
そして、魅力のあるデータが取れるのか取れないのか、そういう判断に至る過程では、これまでも議論してきましたけれども、コーディネーターによる使う前にいかにそういうところのフィージビリティー・スタディーができるか、机上でのフィージビリティー・スタディーになるのかもしれませんけれども、どこまでサポートできるのかが重要。
それと、利用料収入においてデータが取れるところまでを保証するというのは言い過ぎかもしれませんけれども、保証するのか否か、それとも木下先生からありましたけれども、データ解析、解釈というところまで踏み込むのかということにおいても、全然収入の得方が違うと思うのです。
というのも、今、このぐらいの利用料金だと、恐らく普通の分析会社に企業からお願いすることは多々あると思います。結構、自前では持っていないような高額な装置だったら、このぐらいのお金は多分払っていると思うのです。そのときに何でそこまでしてお金を企業が払うのかというと、先ほど高橋委員からもありましたけれども、きちんとしたリターン、きちんとした報告が返ってくる、たとえ測定できなかったとしても、なぜ測定できなかったのかがきちんと返ってくるところに魅力を感じるわけなのです。
ですので、そういうところをいかに次の中型のときには利用料収入増加に向けて考えていくのかというところも非常に重要になってくるのかなと思います。
もう一点ですけれども、専有というのもいろいろと考えていかなければいけないのかと思うところがあって、今は成果を公開するか否かだけで決まっているところがあると思うのです。
そして、SPring-8の制度で言いますと、成果公開型だと論文化を義務付けられているわけですけれども、そういった場合に、体力のある企業だったら論文を書くことが実績として認められるケースはあると思うのですけれども、そうではない会社もたくさんあります。その場合、論文の代わりに成果公開といっても学会レベルで発表するとかそういうレベルでもいいと思うのですけれども、その代わり成果専有の料金への若干安い設定での料金設定をしていただくとか。論文を書くのは、結構、会社の中ですと大変な仕事になりますし、しかも、それが会社としては実績として認められないということになると、個人にものすごく負担が掛かる企業もありますので、そういったところのうまい仕組みは収入増加には必要だろうと思います。
最後に、測定技術、こればかりはビームラインごとにソフトウエアなのか何なのか、いろいろ考えていかなければいけないのですけれども、これが前回、矢橋先生が言われた基幹部としてのデータ解析だとか、データ処理部分とか、そういったところで使いやすい標準化した環境は、やはり魅力であると思うので、そういうところの議論もしていかなければいけないのかと思います。
以上です。
【高原委員】 私自身はMLFとSPring-8の両方で企業との共同研究を行っておりまして、その性格が全く違うと感じています。
MLFはまず、私はSOFIA(BL16)の設置にERATOで協力したという関係上、まずS課題でスタートしました。そのときに企業の方に加わっていただいきました。その企業の方も、最初はアメリカに行かれて中性子の有用性を認識された上で参画されたということでした。その後も何人か企業の方がいらっしゃっているのですけれども、ESRFとかヨーロッパの幾つかの中性子施設を使われて中性子の有用性に着目されたという背景で共同研究を推進しているという状況です。そのとき重要なのはビームタイムの確保、専用ビームラインをMLF分につくることは難しいので、ビームタイムの確保が重要で、それに対する解析等のサポート、試料周りのサポート等も、私たちとビームライン担当者が協力していっていくというやり方をしております。
それからSPring-8に関しましては、先ほどお話に出てきましたFSBLを設立したときには、企業に対してどのような装置の有用性があるかをアピールして使っていただくということでスタートしました。その結果が論文となっていることもありますし、企業の特許として役立っていることもございまして、このあたりは成果の見せ方が非常に難しいことになってきます。
それからもう一つ、私たちはSAGA Light Sourceの九大ビームラインもパワーユーザーとして利用していまして、そこでは民間との共同研究の契約の際に、ビームタイム使用料を計上していただくということも行っていただいています。九大ビームラインも非常に財政的に厳しい状況になっておりますので、企業と共同研究する上では、BL使用料を含めて共同研究契約を結ぶことがあります。産学連携においては、産業界はやはり良いデータ、自分たちが研究や開発に必要なデータを得ることを求めています。学の方もどのように協力していくかということをきちんと明確にした上での産学連携を行っていくことになります。特に最近の傾向は、いろいろな測定法のビームラインを使いたいという企業ユーザーが増えてきており、そういった枠組みを新しい施設では作っていただくのが非常に重要かと思います。
それから、成果公開・非公開に関しては、産学連携で行う場合は、大学側が余り縮こまった契約をしないで、企業との共同研究も外部発表できるような契約する必要があります。完全に企業に一方的な言いなりになることがないようにしないといけないので、そのあたりはひとつ今後、私どもアカデミアの方で考えていかなければいけないことだと思います。
それから、最初の西山室長の資料にありました日本における共同研究の費用が非常に少ないというのは、同じ企業がアメリカには大体、3倍から4倍出していて、日本では100万円から200万円とか、そういう現状なので、そのあたりは私たちも企業の方にはかなり要求をしていますが、実現していません。
【高原委員】 アドバイザリーをやっても同じような状況なので、このあたりはもう少し日本の先生方が主張していくべきかと思っております。
【雨宮主査】 いろいろな視点でのコメント、ありがとうございます。
どうぞ、ほかの委員。これに関係したこと以外でも。
【金谷ディビジョン長】 高原先生に、今、幾つか言っていただいた中で、施設側として気になることについて、我々の方針も含めて述べさせていただきます。種々のビームラインを使いたいというユーザーは、最近、非常に多いのですが、なかなか施設間のコミュニケーションが難しいところがあって、SPring-8でやってこんなデータが出た。だから、きっと中性子を使うと別の特徴があるのでこういうデータが取れるだろうと考えるわけです。それぞれの別の課題としてユーザーサイドでやっていただくことはもちろん可能なのですが、ただ、もう少しそこをいつもシステマチックにやれないかと思うのですが、施設の壁を乗り越えないと難しいので、なかなかいい案が今のところは出てきていない。それこそ何か国のお力をかりてそこは乗り越えたいといつも思うところです。
それからもう一つ、企業の方が大学の先生、特に日本の大学の先生に出すお金が少ないのは、施設や大学の先生の方にも問題があって、いわゆる守秘義務をもうちょっときちんと我々としても考えないといけない。昔の日本の先生は、A社から聞いたことをB社に平気でしゃべったりするという傾向があったかと思うのです。
我々施設としても、今は守秘義務に関しては非常にシビアになってきていますし、それから、契約なので、どこまでの成果を出すということを、我々施設も含めてきちんと考え直さないといけないところなので、一応、お金をもらっているけれども、研究なのだからうまくいかなかったという態度では、ちょっと産学連携がうまくいかないというところがあるかと思います。
ほかにもいろいろあって、データの処理まできちんとした形のケアをしてほしいというのが高橋委員から出たと思うのですけれども、そこも我々、非常にやりたい、やるべきだと思うのですが、そういう専用ビームラインの場合はまだいいのですが、そうでないビームラインにおいては、そこはかなりの負担になる。
特に企業の研究では、外に出せないような非公開の課題もあって、そこは今回、横溝センター長からありましたけれども、何かそれを有償でやる会社に任せるとか、それか我々としてももしそれをやるならば、ビームラインの現場の方に少しそれなりのインセンティブ、納得していただくシステムを作っていただかないと、単にやれと言っただけでは彼らはなかなか動いてくれないのも現状だと思います。特に解決策にはなっていないのですが、こういうふうに施設としても非常に強く思います。
【内海委員】 多くの方に現状の課題等々を御指摘いただいているわけですが、それを踏まえて3GeVでどういうふうにやっていくかということに活かしていかないといけないと考えております。
恐らくは次回に、今、私たちが検討している内容も少し御披露させていただきますが、今日のお話の中で私が感じているキーポイントの1つは利用料金についてです。利用料金をどう設定するかは施設者側にとっての最大の経営ですから、そこについてはかなりフレキシブルにやらせていただきたいと思っています。
いみじくも先ほど御質問が出ていましたが、今ベースになっている運営費回収方式は、全体に掛かっている運転費用をビームタイムで折半しましょうという考え方ですけれども、それに固執している限りは、成果公開型のところについてはお金を取らないわけですから、全体としていつまでたっても運営費総額を回収することはできない。新しい施設では、成果専有の利用者──もっと言ってしまいますと、産業界の方、あるいは今抱えている課題解決に対して極めて役立つと思っていただける方には、それよりも更に高い料金をベネフィットに見合った内容で頂けるような料金設定を検討することは、経営として大変重要であると思っています。
それから、前回の委員会でも議論がありましたけれども、ビームラインの改廃や高度化に国の予算はほとんどついていないという現状があります。SPring-8でもJ‐PARCでも、最初は共用ビームラインが国の予算で建設されますが、あるところから、ばったりと止まってしまって、共用ビームラインで本来造るべきところを専用ビームラインにお願いしているみたいなところがございます。まして高度化、あるいはビームラインの改廃というところには、なかなか国の予算がダイレクトに付かないという実態を考えると、こういう利用料収入を、毎年幾らとは申し上げられませんけれども、施設として確保させていただいて、それを国に返すというのではなく、高度化なりビームラインの改廃に使うというスキームを作れれば有り難いと考えています。例えば1年間に5億円の利用料収入があれば、新しいビームラインが毎年1本ずつできるわけです。そういうような方向に使っていけるようなポジティブサイクルを考えていきたいと思っています。
もう一つの目玉は、一番初めにお話がありましたけれども、全ての専用ビームラインについて、ビームライン横断的に共用枠を設けてビームタイム化をするというところにあります。それとセットで産業界の利用枠については、利用料金もさることながら申請や使い方についても、学術の方がお使いになっている共用ビームラインのルールとは抜本的に違う制度を作って、産業界の方にとって本当に使いやすい形にしたいと思います。
特にこれからは、メールインサービスみたいなことがどんどん増えてきますので、そういうところに関しては、本当に時間単位ではなく、1件幾らという形の利用料設定をさせていただきたい。そういったことを含めて、新しい制度を導入するに当たってどのようなことが必要になるか、共用法の改正も含めて、文科省と相談させていただきながら、進めていきたいと考えている次第です。
【雨宮主査】 私から1つ感想というか、コメントなのですけれども、ビームラインでなくてビームタイムでということで、どこのビームラインでも使えるというのは、学術にとっても産業界にとっても非常にいいことだと思います。ということで、今までのように共用ビームラインとか専用ビームラインという分け方ではなく、今回の提案、私は非常にいい方向だと思っています。
そのときの運用で、先ほどSPring-8からもJ‐PARCからも、産業利用をサポートするビームライン・サイエンティストのインセンティブということがありましたけれども、もちろん施設全体としてのマネジメントも重要なのだけれども、各ビームライン担当者が、自分のビームラインからいかに成果を最大化させるかという目的で経営観念を持つことが重要だと思います。
そのためには、担当ビームラインを産業利用で使ったら、その収入でビームラインを高度化できる自由度もあって良いと思います。そうすれば、学術利用に対しても産業利用に対しても、ビームライン担当者のインセンティブが保たれるという気がします。
それとは別に、岸本委員が言われたように、全体施設としてのURA(University Research Administrator)というかコーディネーターが重要です。
【田中委員】 今の主査の意見に反対です。
ビームライン1本1本の担当者がそんなことをしたらめちゃくちゃになります。気持ちは分かるのですが、それは駄目で、もう少し大きなグループでやらないと。
例えば10本とか、領域に分けた十数本のビームラインの中で、そういう経営的なことを考えるのはいいのですけれども、1つ1つやったらめちゃくちゃになるというのが1つ。
【雨宮主査】 分かりました。
【田中委員】 もう一つは、先ほどから議論されています、アカデミックな方向性と利用料収入を増やしていくという方向性を両立してくのが難しいという点ですが、両者は相反しないと考えています。今までは、確立されているが、産業界の方々が知らなかった放射光の使い方を示して、使ってくださいと言う時代だったと思いますが、今後より一層産業利用を増やしていこうとすると、それだけでは、頭打ちになっていくのです、きっと。
放射光科学というか、放射光利用技術の高度化が新しい利用を開拓していくこと、新たなニーズの掘り起こしと既定の利用の充実をうまく組み合わせていく、その両面がないと、多分、利用料収入は増えていかない。つまり、学術が牽引していくということだと思います。
SPring-8では、今こんなことを言わない方がいいのでしょうが、8GeVのリングを造って20年たったけれど、これまでの高エネルギーのX線の利活用が十分であったのかという反省もあるわけです。オペランドをやられている方(尾島委員)を前に言うのも何ですが、産業界は実際使っている、製造しているプロセスの中で何が起きているのかをダイレクトに見たい訳ですが、本当に見たいものを観察するのは本当に大変です。現状では、実験環境を見えるものに変えるような工夫をしていますが、実際に見たいものに観測できるものを近づけていくというところは、まだまだ十分ではありません。そういう点で
は、実はやらなければいけないことがたくさんあるわけです。
今のは一例ですが、そういうところをどんどんやっていった結果として企業の利用も増えていくはずです。先ほど、学術と産業利用の促進が相反するように言われていたのですが、やり方によっては両立が可能だというのが、2つ目のコメントです。
【雨宮主査】 最初のことに関しては、何も私はビームライン単位がいいと言っているわけではなく、産業利用に対してのインハウス・スタッフのインセンティブをどう上げる、確保するかということの一案で申し上げました。
一人一人が全ての役割をやるのは無理なので、あるクラスターサイズが必要なのだろうと思いますけれども、ある適切なサイズ、規模で私はいいと思っています。
他に何かご意見等、ありますか。
【矢橋グループディレクター】 今の現場のスタッフのインセンティブということで議論がございますが、やはり利用料収入を上げるための現場というかビームラインのスタッフは、必ずしもアカデミックにやっている人ばかりではなく、ルーチンになったらいろいろなやり方があるわけです。委託もある、それから当然ルーチンにしていくところでいろいろな、今後AIの活用もあるわけなので、そういう方向に利用料収入も振り向けていって、それで要は、現場の方がそれをやることでマイナスになるようなことはしない。
恐らくそれは、最初に西山室長が言われたいろいろな産学連携の取組の戦略的産学連携経費のような概念と同じだと思います。直接的なものではなくて、附帯的な間接的なところも含めてしっかり見ていくことをしていくのが必要なのではないかと思います。
【雨宮主査】 ほかにどうぞ。
【小杉主査代理】 産学連携で収入があるというのは、いろいろなタイプがあって、本当にルーチンの使い方をする、試料もその装置に合わせた試料を持ってきて測定する、試料だけ送ってきてスタッフが測定するのも含みますが、そういう内容での利用料金以外に、決して産業利用の場合はルーチンばかりでなく、イン・サイチュの実験が必要になると、試料周りのところまで含めていろいろ施設側も対応しないといけないのがあって、その場合には必ずしも利用料金というカテゴリーではなく、西山室長が最初紹介していたような共同研究という形でしっかり研究者とタイアップして開発していくというのもあって、それはある意味、学術側の人にとっても何のインセンティブも湧かないものでは決してなく、新しい測定技術の開発も含まれてくるような産学連携もあって、そこが3GeV施設では結構重要になってくるかなと思います。3GeV施設を造っていくときに、そのファクターをどこで入れるかは、QSTが直接、共同研究するのか、大学や研究所などと共同研究する場合の受皿をQST側で作るのかとか、いろいろなやり方があると思います。また、専用か共用かというのもあるし、専用ビームラインでもいろいろな専用ビームラインがあって、民間等がコンソーシアムを作ってやる専用ビームラインは、ルーチン的な使い方が基本になると思うのですけれども、大学などが学術的に作る専用ビームラインでの産学連携では測定技術の開発なども必要になる共同研究を多分やっていると思うし、そういう専用ビームラインでは共用ビームラインに比べて論文の出が少なくなるのは仕方ないと思います。専用ビームラインと言っても一律ではないと思うので、収入を上げるという観点では、いろいろな仕組みを考えていかないといけないという印象は持ちました。
【雨宮主査】 ほかにいかがでしょうか。
【尾嶋委員】 私も産業界に長くいましたので、産学連携の観点から言いますと、本当にいいデータ、欲しいデータがあれば、お金には糸目は付けない、かなりの額は払ってもいいと思うのです。対価に見合うデータが出さえすれば。
以前は高分解能、すなわち空間分解能とか時間分解能などだけで価値があったのです。でも、その時代から、もっと見えないものを見たい、やっぱりオペランドとか、in situという方向にいかないとどうしようもない時代に、今、入っている。これは産業界と大学が共同で仕掛けを作っていかないとうまくいかない。だから燃料電池にしても、リチウムイオン電池にしても、専用ビームラインを作って大きな成果を上げておられる。
そういう仕組みが作りやすいような3GeVの体制を作っていけば、大学にしてみても新しいネタが得られる、要するに死んだスルメを見るのではなくて、泳いでいるイカを見ることができるというわけで、新しい情報が得られますので、これは『サイエンス』『ネイチャー』のネタにもなると思うのです。
そこはもっと3GeVでは進めていくべきだと思いますが、それでどこまで収益が入るかは見えないところがある。収入増のためにオペランドをすぐやればいいかというと、それは多分違うと思うのです。そこを複線的にいろいろな戦略でやっていかないと、なかなか運営費回収みたいな話にはとても僕はいかないのではないかと思います。施設のフィロソフィーは何か、どこまで運営費を回収すれば別にそれ以上は要らない、という考えをしっかり示せばいいのではないかとは思っております。その方が、大学にとっても大きなメリットになると思っています。
以上です。
【高橋委員】 いろいろな人にいろいろなインセンティブがあるのだなと非常に興味深く伺ったのですけれども、それが実際、共同研究をする場合でも、知財のありかと機密保持の方法さえ明確にしていただければ、公開できる範囲は交渉できることだと思うのです。
だから、全部公開するわけではなく、例えばテクノロジーの部分は公開しているけれども、実際に何の試料を使ったかは非公開にしてほしいとか、どこまでを公開する、そこにグラデーションが出てくることが、特に最先端の分野では絶対に出てくると思うのです。もちろんルーチンのところはまた別枠として。
なので、そういう新しいことを始めるときに、知財と機密保持の線引きさえしっかりしていただければ、一部を公開する形での共同研究のような形で利用できる枠がもし放射光にできるのであれば、非常に面白いと思ったのですけれども、なかなか難しいとは思うのですが、最初に共同研究、産学連携の話をされたのは、そういった背景もあるのかなと思いまして、こういった考えを放射光を利用するシステムの中に盛り込むことができると、フレキシブルな共同研究的なことができるといいと思います。
特定の先生と例えば共同研究を結んだ上で放射光に来いというのも敷居が高くなるので、まずコーディネートからどこか相談窓口があるとよりいいのかなという感じはします。
【雨宮主査】 まだいろいろあるかと思いますけれども、12時半になりますので、今日はいろいろ頂いた御意見をQSTにおいてまたフィードバックして御検討いただければと思います。
時間が遅れましたけれども、全体を通して何か御質問はありますでしょうか。
特になければ、事務局から最後、事務連絡をお願いします。
【大榊専門職】 時間が超過してしまって申し訳ありませんでした。
次回の量子ビーム利用推進小委員会の日程は改めて御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。不要な資料ですとかドッジファイルは机上に置いたままにしていただければと思います。
以上でございます。
【雨宮主査】 以上をもちまして、30分遅れになりましたが、第12回量子ビーム利用推進小委員会を閉会します。どうも本日はありがとうございました。
── 了 ──
科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室