量子科学技術委員会 量子ビーム利用推進小委員会(第9期~)(第8回) 議事録

1.日時

平成29年5月29日(月曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 16階 科学技術・学術政策研究所会議室(千代田区霞ヶ関3-2-2)

3.議題

  1. 軟X線向け高輝度放射光源やその利用について(国の主体について、高輝度放射光源に係る地域構想の調査について)
  2. その他

4.出席者

委員

雨宮委員、内海委員、金子委員、小杉委員、近藤委員、髙原委員、田中委員、山田委員

文部科学省

中川大臣官房サイバーセキュリティ・政策評価審議官、村上研究開発基盤課長、上田量子研究推進室長、橋本量子研究推進室室長補佐、大榊量子研究推進室専門職

5.議事録

【雨宮主査】  それでは、ほぼ定刻になりましたので、第8回の量子ビーム利用推進小委員会を開催いたします。本日はお忙しい中、御出席いただき、ありがとうございます。
 本日は8名の委員に御出席いただいております。御欠席は、石坂委員、尾嶋委員、岸本委員、高橋委員です。
 本日の会議ですが、委員会の運営規則に基づき、公開という形で進めさせていただきたいと思います。
 それでは、事務局より配付資料の確認等をお願いいたします。
【大榊専門職】  それでは、お手元の資料を御確認ください。議事次第にございますように、資料1から6並びに参考資料を机上配付しております。また、前回までの資料がドッジファイルに入っております。資料に不備がございましたら、事務局まで御連絡ください。
 それでは、本日の参加者について簡単に御説明させていただきます。近藤委員は、審議会の期が変わってから初めての御出席ですので、御紹介させていただきます。御所属と御専門に加えて、一言お願いできればと思います。よろしくお願いいたします。
【近藤委員】  慶應義塾大学の近藤と申します。専門は触媒化学です。第6回、第7回と参加させていただくことができなくて、議論についていけるか少し不安ですけれども、少しでもまたお役に立つことができればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【大榊専門職】  ありがとうございます。
 なお、本日、御発言いただく際には、お近くのマイクを御使用いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【雨宮主査】  それでは、早速、議題1に入っていきたいと思います。
 国の主体についてというところですが、第7回の当小委員会において、資料1にありますような観点を踏まえて御議論を頂きました。共用法の枠組みやオープンイノベーション、また産業利用の推進といった点などを見越すと、国立研究開発法人が適切でないかとの議論を頂きました。そして、放射光施設の整備実績を有する国立研究開発法人である理化学研究所(理研)及び量子科学技術研究開発機構(量研機構、量研、QST)に、その時点での受け止めといいますか、コメントを頂きましたけれども、こういった議論は具体的に議論するということが必要ですので、両法人の方に持ち帰っていただいて、組織としての意思とか御意向を検討、確認してもらうというふうにお願いしていたところです。それに関して、両法人の方で御確認いただいたと聞いておりますので、今日はまずそれをお伺いしたいと思います。
 それでは、まず、量研機構に所属されている内海委員から御意見をお願いいたします。
【内海委員】  ありがとうございます。量研の内海でございます。組織に持ち帰って検討させていただきました。その結果については、本日、経営の責任者である理事の田島が来ておりますので、田島より報告という形にさせていただきたいのですけれども、よろしいでしょうか。
【雨宮主査】  それでは、田島理事の発言をお認めしたいと思います。
 それでは、田島理事、マイクを使って御説明、御報告をお願いいたします。
【田島理事】  量研の理事の田島でございます。本件を量研において担当しております。量研として検討した結果をこれから御報告いたします。
 まず、日頃より、当小委員会の委員の皆様にはいろいろとお世話になっていることに感謝申し上げます。
 前回、5月18日の当小委員会で、高輝度放射光源に係る計画案の検討を行う国の主体候補の1つとして、我々量研の名前を挙げていただき、法人としての見解を問う旨の依頼を受けたものと理解しております。また、事務局である量子研究推進室から、同趣旨の検討依頼も頂いております。
 我々量研としましては、今回の検討依頼を大変重く受け止めました。組織的検討を行った結果、量研として、本計画案の検討を行う国の主体候補となる意思があるという結論を得ましたので、ここにその旨、意思表明をいたすものであります。
 量研について少し述べますと、我々は、日本原子力研究開発機構の量子ビーム科学研究部門と核融合研究開発部門の2つの部門に係る研究事業を分離して、放射線医学総合研究所(放医研)と統合して、昨年の4月に発足した新しい研究開発法人であります。
 我々の目指すところは、昨年に、「QST未来戦略2016」という形で冊子にまとめて、自分たちの方向性を示しているところですが、その中に、世界トップクラスの量子科学技術研究開発プラットフォーム構築を目指すと記載しております。まさに今回の高輝度放射光源に係る計画は、その方向性と極めて高い整合性を有するものと考えました。
 我々の前身の組織の一端である日本原子力研究開発機構は、以前、理化学研究所と共同でSPring-8を建設・運営してきたという実績を持っております。現在におきましても、量研の関西光科学研究所の播磨地区の研究グループがSPring-8を拠点として、放射光を用いた研究開発を進めております。
 また、量研は、放医研の加速器による重粒子線がん治療装置HIMACや高崎研究所の複合イオン加速器TIARA、電子線加速器、ガンマ線源、そして、関西光科学研究所木津地区の高強度レーザー施設など、多くのユニークな量子ビーム研究施設を保有し、それを駆使して、現在、物質材料科学、生命科学、医学、医療など幅広い分野にわたって研究開発を実施しておりますが、それとともに、これら施設を、量研の施設共用制度に基づいて外部利用者の利用に供してもおります。
 今回、この高輝度放射光源が実現すれば、新たな量子ビーム源の大型共用施設として、国内外多数の研究者が訪れることが予想され、科学技術、学術、産業利用の幅広い分野について研究開発の幅と深さを大きく拡幅し、より高度な成果を生み出し、イノベーション創出の場を提供するものと期待しておりまして、量研の目指しております量子科学技術研究開発プラットフォームを大きく充実させることにもなると考えています。
 なお、本計画の重要なポイントの1つに、官民地域パートナーシップでの事業展開、それから、産学連携の推進ということが挙げられていると理解していますが、量研もまた、産学連携活動を積極的に推進して、イノベーションのハブとして役割を担うことを重要な経営戦略の1つに位置付けています。量研の産学連携の取組におきましては、イノベーション・ハブ構想の一つとして、既に材料開発や創薬のアライアンスを民間企業とともに立ち上げているところであります。本計画への参画を通じて、産業界とより密接で具体的な連携・協力を行い、それを通じて産学連携活動の一層の活性化と、幅広い連携事業の具体化を図りたいと考えています。
 これまで述べましたように、量研の施設の建設・運営といったプロジェクト推進に関する経験、放射光をはじめとする量子ビームを用いた研究開発に関する経験と活動の現況、並びに量子ビーム研究等を通じた産学連携に関する経験、こういったものを全て活用して、高輝度放射光源に係る計画案の検討を行う国の主体候補として、本計画の実現に向けた貢献を行いたいと考えたものであります。
 また、本計画に基づく高輝度放射光源の利用が可能となった段階においては、量研として施設の共用を推進するとともに、物質材料科学、生命科学、医学医療など量研の研究開発事業の飛躍的展開を図るために、施設における枢要なユーザーとして、必要な利用機会を確保して、積極的に施設を活用したいとも強く希望しております。
 なお、他の国立研究開発法人と全く同様に、現行の中長期計画を遂行していくための予算、人員のリソースは大変に厳しい状況にあります。これらの計画は、量研にとって必ず達成すべき命題でありますので、現在の予算、人員リソースの確保に影響が出るような事態は避けなければならないと考えています。したがって、量研が本計画の推進に当たることとなった場合、新規事業となる本計画の遂行に必要な新たな予算、人員の確保が不可欠と考えております。この確保に向けては、文部科学省に特段の御配慮をお願いしたいと希望するものであります。また、本計画を迅速かつ円滑に進めるためには、量研の人材のみならずオールジャパンで推進体制を組むということが重要です、これは、当小委員会でもそのように議論をされていると承っていますが、量研としてもそれに対応する用意があり、また、理化学研究所をはじめ、大学、研究機関等関係諸方面から最大限の御協力を頂きたい旨お願いしたいと思います。
 以上、量研として、高輝度放射光源に係る計画案の検討を行う国の主体候補となる旨の意思を表明するものであります。
 以上のことを御勘案の上、よろしくお願いいたします。
【雨宮主査】  田島理事、どうもありがとうございました。質問があるかとも思いますが、まず、もう一つ、理研所属の田中委員の御検討についても御報告いただきたいと思います。よろしくお願いします。
【田中委員】  理化学研究所放射光科学総合研究センターの田中でございます。前回の要請を受け、理研本部と3GeV級放射光施設に対する理化学研究所としての対応を協議し、確認したことに関しまして、この場で報告させていただきます。
 理化学研究所で本件に対応可能でございますのは、播磨事業所の放射光科学総合研究センターということになりますが、基本的に供用開始20年のSPring-8施設のアップグレードの検討並びに供用開始5年のSACLAの利用拡大に注力する必要があります。このため、主体的に取り組むというのは現状では困難というのが結論でございます。
 一方で、3GeV級放射光施設は放射光科学にとりまして必要かつ重要なものであり、理研としてその実現に最大限の協力をしてまいります。
 以上でございますので、よろしくお願いいたします。
【雨宮主査】  ありがとうございました。
 今、2つの国立研究開発法人からの御意見がありました。量研機構からは、計画案を検討する意思がおありであるということ、理研は、今プロジェクトがあるので、いろいろと受けることはできないけれども最大限協力するとの意向ということだったと思います。それぞれの国立研究開発法人で具体的に意思が確認できたということは、非常に重要なことだと考えております。これを踏まえて、また第7回の当小委員会において、資料1にあるような条件というものが観点として挙がっていたわけですけど、改めてこの観点を踏まえて、我々としてどう受け止めるか、また今の御発言に基づいて議論をいただければと思います。
 どうぞ、各委員、御発言をお願いいたします。
 特に、田島理事もここにいらしていますので、何か委員からの質問などがあれば。
 私としては、少なくとも受け止める国立研究開発法人がゼロではなく1つ以上あったということを非常に喜ばしく思っていて、もちろん田島理事のご発言の中に、現状のままではいろいろと大変なので、いくつか要望付きだったということも、非常に現実的な感覚であると思います。また、理研からの御意見も非常に事情は分かるので、そうなのかなということです。当小委員会として、資料1という観点で、こういうフィードバックがあったところですが、特に今のことに関して御意見はございますでしょうか。次の資料にも関係してきますけれども。
 では、小杉委員。
【小杉主査代理】  気になっているのは、やはり人の問題だと思うのですね。建設予算を取るところはどこかにやっていただくにしても、その予算を要求した組織が人の問題も含めて全部行うというのは、多分非現実的ですので、今の枠組みでその辺りの協力体制がとれるのか、新しい枠組みが必要なのかというところを、ある意味きちんと検討しないといけないかなという印象は持っています。オールジャパンと言ったところで、どこがまとめるかという問題があります。放射光のコミュニティというのは、日本放射光学会がオールジャパンをまとめるべき組織としてあるのですけど、そことの協力も必要と思います。その辺りについて、いろいろな形で、現存の施設との関係とかも含めて、どこかで何かいい仕組みを作っていかないといけないかなという印象は持っています。具体的にこうやるべきだというアイデアがストレートにあるわけではないのですが、今後、概算要求を行う中で、人件費等も必要だという御意見も伺いましたけれども、必ずしもその組織で責任を持って全部をやるという話ではないと思います。オールジャパンという意味もいろいろな捉え方があると思うので、検討をよろしくお願いします。
【田島理事】  はい。
【雨宮主査】  今まで当小委員会でも、オールジャパンということは、大きな要素であり、推進すべき、考慮すべき要素ということになっています。今の小杉委員の意見は、そのことを強調してもう一度リマインドしたということと理解していますが、それに関して、山田委員、何かコメントありますでしょうか。
【山田委員】  今までオールジャパンという言葉が何回か出てきたと思うのですが、やはり実質的に何か物事を本当に進めようというときに、実質的意味のオールジャパンをこれから形成していく必要があると考えています。私の所属するKEKも放射光施設を持っていて、もう30数年で非常に古くて、将来計画をきちんと考えていかないといけない状況ですが、これについては、やはり日本全体のことを考えて、我々自身どういうふうな計画を進めていくかという、それこそオールジャパンとしての考え方に立って進めていく必要があると考えています。ですので、今回の共用法をベースにしてやっていく計画が、本当の意味でのオールジャパン体制が打ち立てられて、実質的にうまく計画が進んでいくことは、我々自身にとっても将来的にはプラスのことであると、私自身は捉えています。
 抽象的な発言だったかもしれませんが、とにかく、現状では、共用法をベースにした運営形態もあるし、大学共同利用をベースにしたものもあるし、また地域主体で進んでいる放射光施設もあります。様々あるのですが、ユーザーにとって、あるいは、もっと広く国民にとって本当にいい施設は一体何なのかという理想的なものを追い求めていくというのが、我々施設に関わる者に課せられた責務ではないかと考えています。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 当小委員会としては、資料1にありますように、国の主体候補として、こういう観点があるのではないかという議論をしてきたわけです。これは当小委員会で議論したことが骨格になっているわけですが、現実的に可能かどうかということのフィードバックがないままに議論を進めるのも片手落ちなので、ここではフィードバックに基づいて議論することが重要なことかと思っています。
 当小委員会として、まず資料1の国の主体候補についてというこの見解については、当小委員会の考えということで纏めたいと思います。
 それでは続きまして、計画案の検討に当たっての留意点についての議論に入っていきたいと思います。具体的には資料2になりますが、事務局の方から御説明をお願いいたします。
【上田室長】  事務局でございます。資料2を御覧ください。計画案の検討に当たっての留意点とございます。冒頭ございますように、中間的整理やこれまでの御議論を踏まえて、主体候補が計画案の検討を行うに当たっての留意点というものも当然あろうかと思います。中間的整理に示された国の政策の方向性、在り方を踏まえて計画の検討をしていただくわけですから、その際の留意点という御議論をいただきたいと思いまして、取りあえず事務局でこれまでの議論を整理してあります。
 最初の4つは、中間的整理に書いてある関係記述でございます。最初のポツは、施設の大きさ、あるいは利用環境の早期整備が求められるということ。2番目は、本格的な産学連携を促すための柔軟な利用体系及び体制の構築が重要であるということ。3番目は、産・学・施設が協同して新光源を活用した解析手法を開発・整備し、常時更新していくことが、持続的なイノベーション創出のために重要であるということ。4番目は、財源負担を含め、言わば官民地域パートナーシップにより推進することが、プロジェクトの実現や成功にとって重要であるということ。こういったことが中間的整理に記述としてございます。
 また、それ以降の小委員会の議論として、次に記載したような御指摘があったものと認識しております。1番目が、安定的な運転時間が確保されるべきという話。2番目が、今も御議論ございましたけれども、整備段階において、加速器技術者等の人材がオールジャパンで結集するということ。3番目が、放射光施設を通じたオープンイノベーションや産業利用等が推進されるということ。4番目が、運用段階におきまして、複数の放射光施設が日本にございますけれども、分散型の施設間アライアンスの形成だとかユーザーフレンドリーな利用環境構築にきちんと貢献するような計画案としていくことでございます。
 事務局からの説明は以上でございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。今、資料2について御説明いただきました。
 それでは、ただいま説明があった観点を補足する意見とか、何か新たな観点、若しくは主体候補への質問とか御意見とか、しばらく、資料1と、もう少し踏み込んだ内容の資料2に関して少し議論をしたいと思います。これらは、今まで議論してきた中で各委員から出され、主立った意見を大体まとめたものですが、改めて何か補足等あれば、よろしくお願いいたします。
【小杉主査代理】  資料2の中間的整理における関係記述の2つ目のポツは、先ほど言った人材の協力体制の話で、3つ目のポツにある財源のところについて。これは、官民地域の協力でということなのですけれども、その際、やはり役割分担をはっきりした上で財源の負担を分けて、国として概算要求すべきところはどの部分かというのをはっきりしながらしっかりやっていかないと、いろいろな意味で先々困ることになると思います。1つの施設が全部やるのであればいいですけれど、協力体制でやる場合は、きちんとその役割分担を先に決めた上での財源の負担かなという印象を持っていますので、そのあたりの詰めが必要と思います。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。4番目のポツですね。財源負担の具体的なイメージが重要であると。
 ほかにいかがでしょうか。
 今までの議論で出たことをまとめてあるという意味で、特に新たに補足することがないという場合であれば、今の小杉委員のように、今まで出たものの中で、もう少し深掘りして具体化するという点も含めてのご意見もありましたら是非お願いいたします。
 高原委員、お願いします。
【高原委員】  最後のポツにあります分散型の施設間アライアンス形成やユーザーフレンドリーな利用環境の構築への貢献のところで、やはりいろいろな施設において、人材というのがまだまだ不足しているのではないかと思います。今回、いろいろな相補的な意味も持つような施設間の連携というのが実現するわけですから、その際に、やはり運用段階における人材から、さらにその先の将来を見据えた人材育成というのも、仕組みを何か考えていけばよろしいのではないかと思います。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。仕組みということになると、行政から見たときの何かコメントも頂ければと思うのですが、何かあれば。
【上田室長】  今日の議題の後半でも、少し施設間のアライアンスについては触れます。現在行われている施策は、必ずしも人材育成がメインというわけではなくて、施設間のアライアンスを促すといった観点ですので、そこも踏まえて後段にまた御議論いただくのもよろしいかと思います。
【雨宮主査】  では、小杉委員。
【小杉主査代理】  施設を造ってしまえば、それを運用して共用して成果を上げれば終わりというようなイメージを持つのですけれども、また次のフェーズが何十年後かもしれないのですけど、あると思いますので、やはり人材育成の要素は絶えず入れていかないといけない。そこに学がどう絡むかというところが一番重要かなという感じはします。官が中心になると学生も含めた人材育成システムというのはなかなか入りにくいところだと思いますので、すぐではないのでしょうけど、学をどう取り込むかというところを考えなくてはいけないと思います。人材育成という意味では、施設を造るという経験は非常に重要なので、若い人をその段階から入れる――学生が入るかどうかは分かりませんけれど――そこから考えないといけない。施設が定常的な運用になったとしても、次の改良なり改善なり更新なりというところに絶えず学が入る形が、長期的な放射光でのサイエンスを続けていくのに必要と思います。特に日本は、非常に先端を切っていたのに、今、低エネルギーのところ(軟X線領域)は遅れ気味という状況を挽回(ばんかい)して、また世界トップに行くためには、早い段階から学を入れていくというところを是非考慮していかないといけないという印象を持っています。
【雨宮主査】  学の貢献は非常に重要だと思います。
 高原委員、何かそれに対して、例えばSAGA-LSで九州大学のビームラインを学としてやっているとか、あと、SPring-8では産学連携でフロンティアソフトマタービームライン(FSBL)をやってきたとか、学の放射光施設における役割ということに関して、今までの経験で何か補足とかありますでしょうか。
【高原委員】  実際に私たちがやってきたことは、全体の施設整備よりも、その中での解析部分での装置の設計から、あと、まだ十分できていませんけれども、得られたデータをどうやって解析するかというところです。特にFSBLの場合はいわゆる製品に近いところまでやっておりますので、できるだけ産と密接な連携をとりながら、データの解析までを含めて、得られたデータが最終的な製品特性とどういうふうに関わっていくかというところを、かなりマンツーマンで対応しているという状況であります。したがって、それなりに学の役割というのは果たせているのではないかと思いますが、まだまだ効率的な解析とか、そういったところでは力不足な点がありますので、絶えず新しいフレッシュな人材を育成しながら実施していく必要があるということは言うまでもございません。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。
 学の立場で、慶応大学の近藤委員も何かあればお願いします。
【近藤委員】  私ども、放射光施設に学生と一緒にお邪魔して、装置の開発、それからデータの取得、解析まで一貫してやるということをこの10年来やってきておりますけれども、やはりその中で非常に懸念していることとして、この装置を実際に運用してやっていく学生に、マシンタイムや実験をする機会が今、十分に与えられなくなりつつあるという現状がございます。その結果、学生に伝えられてきているいろいろなテクニックや学んでいる基礎的な技術がどこかで途切れてしまうというような懸念を、非常に感じているところでございます。このような状況が、このまま本当にあと数年続くようなことがあると、ロストテクノロジーではないですけれども、放射光を担う若い人たちの流れが止まったり、あるいは、それによって技術がつながっていかなくなるというようなことが十分起こり得ることを、現場でやっている者として非常に危惧しているところです。
 ですので、今、計画中のこの新しい軟X線領域の放射光施設の建設が実現することに非常に強く期待しているところでありますけれども、その中で、是非人を育てて次の世代につなげていく視点を非常に重く皆様で御配慮いただいて、その施設の運営に、あるいはその施設の立ち上げに活かしていただきたいと強くお願いする次第です。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。
 はい、どうぞ。
【上田室長】  人材育成の観点も含め、割と大型の研究計画を動かすときにこういった議論が出てくるのは、文科省としてもよく承知しています。例えば、それがとても重要だというのは当然承知しているのですけれども、計画する施設を全て造っていくということよりも、やはりそこで優先順位なり、こういった審議会における議論の積み重ねというのがあろうかとは思います。私ども事務局が承知している限り、諸外国においても同様の議論が行われているようではあると感じております。諸外国でも、放射光施設を造るといったことは、数年なり10年なり、それ以上かもしれませんけど、ある一定期間で行われるわけでして、特にヨーロッパもアメリカもそうですけど、その機会を最大限捉えて、人材育成もそこで最大限の効果を発揮していくというようなことが行われているのであろうと、事務局としても思うところでございます。
 【雨宮主査】  分かりました。
 これまでの議論は、資料1の国の主体についてというところの議論で、量研機構の方にも来ていただき、それから資料2の方に移ったわけですが、資料1、2を含めて、これまでの議論を纏めたいと思います。資料1をもう一度見ていただきたいのですが、将来の共用法の枠組みに基づく共用が重要であるということがうたわれていますし、資料2では、産業利用の促進が重要だということ。そういうことを見越した上での国立研究開発法人が国の主体として適切であるという、それが資料1と2を総合してのまとめのポイントだと思います。
 本日は具体的には、国立研究開発法人である量研機構が計画案の検討を行う主体候補として挙げられて、妥当性を検討していただける可能性があるということがポイントかと思います。量研機構が適切であるとする理由は、この資料1にあるような観点を満たしているということ、組織として、ある条件の下で積極的な意思が認められるということであると思います。更に、量研機構は他の量子ビームを使っているということで、相補的利用の推進という点からも、妥当であると思います。
 それから、オールジャパンという言葉が何回も出てきましたが、SPring-8がそうであったように、整備に当たってはオールジャパンで人材を結集して当たることが重要で、理研、KEKを含んだ関係機関の積極的な協力が重要であるということ。
 資料1と資料2に書かれていることや、本日の両国立研究開発法人からのフィードバックを踏まえると、今申し上げたことが、当小委員会としての見解ということになるかなと思います。これに補足する点としては、本日ご意見のあった、教育、人材育成が大切だということです。それはまさしくそのとおりです。更に、オールジャパンで人材を結集するということ、学術が果たすべき役割が重要であるということが改めて述べられました。これらの点も含めて当小委員会での見解、及び、国の主体としての見解のまとめになるのかなと思います。何か他に御意見や補足はありますでしょうか。
【小杉主査代理】  産業界との連携が非常に重要な位置付けにあると思います。大学でも以前よりは産学連携はやりやすくはなっています。当小委員会での議論では、例えば民間が占有の部屋を持って、そこで試料準備できるような受け皿が欲しいというのがありました。そういうことが国立研究開発法人でもやりやすい体制はあるのでしょうか。
【雨宮主査】  理事の方から何か補足、コメントがあれば。
【田島理事】  産業界との関係では、産業界の方は、ある種の意図を持ってある技術開発をしたいとか、そのときに我々の研究リソースを使いたいという意図がおありになる。そうすると、我々のやっている研究開発の方向と合致しておれば、すぐに共同研究を走らせる。この共同研究の中でそれぞれが成果を、産業界の方では自分の目的に沿って使うし、我々は学術的なまとめをしてというふうにやっていきます。
 それから、我々のところに既にある施設を外部に利用させるという制度がありますが、それはもちろん産業界からの広い利用を念頭にしたものであります。それから、その中に、例えばある種の計測器を産業界に持ち込んだり、そういうことも自由にできるようになっております。もちろん我々も自分たちの財物を管理する上で、場所代とか、そういった規定の料金を取ったりもしますけれども、少なくとも不当な価格にしないで、産業界が広く使えるような制度を作って今やっていると思っておりますし、また、我々の前身であるところの日本原子力研究開発機構においては、それに加えて加速器、それから原子炉とありましたけれども、やはりそのようなやり方で産業界とこれまで協力をしてきて、連携を図ってきたつもりでございます。
 したがって、今回の施設が完成のときにも、当然ながら今SPring-8でやっているようなこと、それからJ-PARCでやっているようなことを基に、同じような制度ができるのではないかと。そのときに、産業界とのいろいろな交渉、協力、それから協同ができるものと考えています。
【雨宮主査】  では、金子委員。
【金子委員】  我々は使わせていただく方の立場ですので、大体これまでですと、基本的には、施設はもう出来上がっていて、ビームラインも整備された状態で、例えばアタッチメントを持ち込むですとか、サンプルの前処理をするスペースをお借りするとかという形になるのですが、せっかく新しい施設を造るのであれば、整備段階から入らせて頂けると良いと思います。準備施設も、例えば湿度調整がきちんとできるだとか、真空装置の仕様はこうあってほしいとか、ガス配管がここに来ているようにとか、そういうような結構細かいことになるかもしれないのですが、やはり使い勝手の部分も含めて、最初の基本設計の中に多少ユーザー側の意見を入れさせていただけたらと思います。後になって、ここに本当はガスを持ってきたいのだけど、ボンベをここに持ち込むのですかとか、そういうことにならずに済むかなとも思っておりますので、是非、施設の最初のところで、どんな使い方をするのかというところを、産業界の意見も聞いていただきながら、準備室なりの構想も作っていただけると有り難いなと思います。
【雨宮主査】  どうも。ほかにいかがでしょうか。いろいろ産業界からの要望をきっちりと酌んでいただきたいということです。
 では、山田委員から。
【山田委員】  これまでの小委員会での議論を踏まえた観点を全体的に見ると、整備段階とか運転とか、そういうものは書かれているのですが、施設をどのようなやり方で運営すべきかという議論は余りやらなかったかもしれません。例えば安定的な運転時間の確保という、運転時間については書かれているのですが、安定的運営形態の確保とか、何かそういうものが必要ではないかと思います。これから計画していくものはどういうような運用や運営を目指していくべき施設なのかという観点が、少し欠けているのかなという気がしました。具体的に何をどう入れていけばいいかというのは、すぐにはなかなか思い浮かばないですが、運転時間だけのことでなく、安定的にきちっと運営していくことも、やはり目指すべき点ではないかという気がします。
【雨宮主査】  それに関しては、運営ということにおいては、広い意味で共用法の適用というのを原則としているわけで、私が先ほど、将来の共用法の枠組みに基づくという表現を用いたのは、現時点での共用法が、将来更に良い方向に改定していくということも含めた共用法だという理解です。以前の当小委員会での議論で、共用法と大学共同利用はそれぞれメリット、デメリットがあるとの議論を行いました。将来の共用法の在り方に関しても、民間からの委員や様々な立場の委員から御意見を頂ければと思っています。
【山田委員】  そういう観点からすると、先ほどの小杉委員らがおっしゃっている人材育成という観点も、そういう理想的な運営形態、将来の共用という中に取り込まれるという、そういう可能性も秘めた共用ですね。
【雨宮主査】  はい。
【上田室長】  はい、分かりました。
【雨宮主査】  私の理解では、共用法も大学共同利用も、どちらも人材育成ということに関しては、運用の中で工夫できる自由度はあると思っています。
 それでは、国の主体についてというところで、資料1、資料2に基づいて本日議論いただいたことについて、事務局で観点を整理していただければと思います。
 それでは、次に移りたいと思います。高輝度放射光源に係る地域構想の調査についてです。
 前回説明した地域構想の調査について、事務局の方から御説明をお願いいたします。
【上田室長】  まず念のため次の議題に入る前に確認させてください。先ほど雨宮主査がおっしゃったことは、事務局として、本日おまとめいただいたような議論を整理しておくということですよね。
【雨宮主査】  はい、そうです。
【上田室長】  途中でおっしゃった、まず1つは共用法の枠組みですとか、産業利用の観点、こういったものを見越して、国立研究開発法人が適切であるということですよね。
【雨宮主査】  はい。
【上田室長】  あとは、具体的には、国立研究開発法人である量研機構が候補として挙げられて、適切と現時点で考えられるということですね。
【雨宮主査】  ええ、先ほども申し上げました。
【上田室長】  資料1にあるような観点が、量研機構が適切と考える理由であって、資料2も踏まえると、記載のある観点以外も、例えば人材育成だとかは、将来の共用法の枠組みに付随するような可能性として考え、枠組みとしても考えていくべきで、そこも含めて今後もまた議論をするということですよね。
【雨宮主査】  はい。あと、オールジャパンということも申し上げました。
【上田室長】  オールジャパンということもあると。あとは、量子ビームの相補的利用という視点も踏まえると、それも1つ量研機構が適切と考えられる理由だというようなまとめだったと理解しています。
【雨宮主査】  口頭で羅列しましたが、今、室長が言われたことは申し上げたつもりです。
【上田室長】  また、機会を見て御相談させていただきたいと思います。
 それでは、次の議題ということで、資料3を御覧ください。地域構想の調査ということで、本年2月にまとめていただきました中間的整理から2、3か月経過しているということもあって、先週24日を提出日といたしておりました。その結果を確認しましたところ、現時点において地域構想の提出が限られてございます。主査と御相談いたしまして、念のため再度周知しまして、もうしばらく期間をとって、他に地域構想がないか確認することが適切と考えまして、提出日であった24日の翌日、先週になりますけれども、資料3の形でホームページに掲載させてもらっています。
 念のため2枚目を御覧ください。調査の方法は前回と同じです。回答法としては様式自由ということで、下線を引っ張ってございますように、6月の中旬までに御提出くださいという形をとっておりますので、御報告申し上げます。
 説明としては以上です。
【雨宮主査】  それでは、今のことについて御質問等あればお願いいたします。
 少し延期したということです。よろしいでしょうか。
 それでは、次の議題に進みたいと思います。その他でくくっていますが、量子ビーム利用推進小委員会における調査検討についてということですが、第7回の御議論で、量子ビーム利用のプラットフォームの構築の議論や、ユーザーフレンドリーな利用環境のためのアライアンス形成の御議論がありました。こういったことは、量子ビーム利用全体にとっても大事なことです。そこで、第6回に引き続いて、小委員会において、中期的な検討項目について、皆様のディスカッションをいただければと考えております。資料を事務局から説明していただいた後、それぞれの資料についての御質問があれば御質問いただいて、その後、議論を行いたいと思います。
 それでは、資料4、5について、事務局の方から御説明をお願いいたします。
【上田室長】  事務局でございます。資料4を御覧ください。こちらは、第6回の当小委員会のときに、中期的にどういう調査検討項目が視野に入るかとお示ししたものです。検討の仕方自体は、皆さん、過度にお忙しくなっても御迷惑なので、種々相談しながらだと思っていますが、真ん中にありますように、中期的な調査検討項目の例といたしまして、量子ビームの相補的・相乗的利用の現状とその促進という観点があるのではないかと。あるいは2番目にありますように、ユーザーフレンドリーな放射光施設の利用環境があるのではないかと。これは、今御議論いただいている軟X線向け高輝度放射光源とも関わってくることかと思います。あるいは放射光だけではなく中性子も当然、量子ビームの中にはございますので、小型中性子源の現状及びその促進と大型中性子源を含めた利用環境、こういったことも中期的な検討項目としては挙げられるのではないかという御説明を差し上げたところです。
 第7回の小委員会では、量子ビームの相補利用みたいな話もございましたし、ユーザーフレンドリーというキーワードがございましたので、そこに関係する資料を御参考ということで御用意いたしました。
 資料5を御覧ください。量子ビームの相補的・相乗的利用ということは、これまでも文部科学省の政策的にも、過去の審議会においてもその促進をするということが打ち出されておりまして、そういった政策的方向性もあってのことだと思いますが、事例がもちろん見られますので、それを代表事例ということで、本日、御紹介させていただきたいと思います。
 事例1でございます。こちらは高性能・高品質な低燃費タイヤの開発ということで、2003年頃から、主にSPring-8を中心として始まった研究でございます。これは、タイヤの写真もございますけれども、真ん中にある写真にございますように、タイヤの摩擦抵抗を39%低減し、従来より6%燃費を向上させた低燃費タイヤの開発に成功といったところでございます。ゴム中の補強材、ナノ粒子であるシリカやカーボン、こういったものが凝縮して塊状になったときに、ゴムとの結合点が少ないという状況を、大型放射光施設が用いられて解明が進んだと。新たに開発された低燃費タイヤというのはシリカ粒子の分散性が増し、シリカとポリマーの結合力が向上しているといったことでして、ゴム中のナノ粒子の三次元配置を数百ナノメートルオーダーで精密に計測することが可能となったという研究成果でございます。仮に日本国内の全ての車両で燃費が6%向上したとした場合、消費者価格では年間7,000億円相当のガソリン消費の低減という意味で、コストダウンという経済効果が現れています。現在は、当該の企業のみならず、他の国内主要タイヤメーカーもSPring-8を利用するようになったというのがございます。
 下段にあります発展成果が相補的・相乗的利用の1つの例と言えるかと考えております。この企業が東京モーターショーでも御発表されていましたけど、タイヤには低燃費性能、グリップ性能、耐摩耗性能の相反性能があります。例えば低燃費性能だけを追求すると、グリップ性能が下がってしまい、自動車の安全に関して課題が出てきてしまいます。一方で、そういったグリップ性能だけを向上させると、耐摩耗性能が落ち、タイヤがよく摩耗してしまう。タイヤにはこういった相反するような課題があるといったことに対して、上段の放射光の利用成果によって、シリカやカーボンですとかその周りのゴムなどがよく見えるようになったことで、それに引き続き、SPring-8にとどまらないような相補的・相乗的利用がなされています。
 大まかに申しますと、SPring-8ではゴム分子の構造解析、上段中央の写真のような構造が解析されると。その後、J-PARCの中性子実験によって運動解析がされる。これは、中性子が分子の運動を解析することにも有用といった特徴を持っており、必ずしも放射光では得られない観察がなされるということです。資料には書いてありませんけれども、これ以外にも、中性子を使って、私どもの理解するところによると、シリカとゴムの間の状況がどうなっているか、層構造の状況がどうなっているかというのも、中性子がちょうど得意とするところなので、そういった解析が行われているということです。
 そういったところに出てきます解析情報は、タイヤをミクロンオーダーから、場合によってはナノメートルオーダーまで、それぞれのスケール階層において構造解析なり運動解析がなされたところで、ある意味マルチフィジックス、マルチスケールのシミュレーションでもって製品開発に寄与させたいということだと思います。そのような大規模シミュレーションはやはり複雑になりますので、そういったものを現在の我が国の最高レベルのスパコンであります「京」でシミュレーションしたということです。SPring-8を起点とした先端大型施設のローテーション・ユース――相補的・相乗的利用のことをローテーション・ユースとも私どもは呼んでいますけれども、その成果ではないかと思います。
 このような研究が第1弾の製品の販売開始につなげられました。漸進的な性能向上ではなく、従来製品に比して耐摩耗性能が51%という飛躍的な向上だそうで、通常の値としては、場合によっては数%から十数%といったところ、飛躍的向上が成し遂げられたということです。本年になりますけれども、国際的なTire Technology of the Yearという賞も受賞されていると認識しており、こういったものが、相補的・相乗的利用の事例の1つとして挙げられると思います。
 次のページを御覧ください。光合成でございます。植物が地球上に誕生して、27億年かけて光合成のメカニズムを発達させたと言われております。左にあります大きいリボン状の色で示されたものが膜タンパク質で、具体的には光化学系Ⅱタンパク複合体、PSⅡと呼ばれるものの結晶構造でございます。
 右側に書いてありますように、総分子量は70万という非常に大きな分子であり、ここの中で、赤の点々でお示ししたところが触媒の中心であろうということは、従前の研究より指摘されていたと聞いております。この触媒の中心のところにH2Oが入って、それが光エネルギーを使って酸素とプロトンとエレクトロンに分解されるという、光合成反応のうちの前段の明反応と言われるものが起こっているときに、この触媒中心の状況がどうなっているのか、ということに取り組まれた研究で、2005年頃、あるいはその少し前から進められていた成果です。
 これは、この時点で放射光とX線自由電子レーザーの相補的・相乗的利用になっております。真ん中の段にございますように、PSⅡという膜タンパク質で水分解を行って酸素を取り出すことは長く知られていたが、触媒中心の原子構造や反応機構は未知のままだったと。そういったPSⅡの全構造と触媒中心構造を解明することに世界で初めて成功されたといったところで、赤色の枠囲みで示しておりますが、これが触媒中心、通称歪(ゆが)んだ椅子とも呼ばれています。マンガンと酸素と黄色で示したカルシウムが結合している構造なのです。その一つ一つの原子の間に2.5とか2.1と書いてあるのが、単位としてはオングストロームですが、オングストロームオーダーで各原子の距離、構造がどうなっているかということを解明したところ、歪(ゆが)んだ椅子のような形になっていることが分かってきて、それをさらにX線自由電子レーザーSACLAで開発した手法で解析すると。これは、右側にございますように、SACLAではフェムト秒パルスで、試料に対する放射線損傷が発生する前に観察が可能ということで、鍵となる歪(ゆが)んだ椅子の構造を、SPring-8使用時から0.1から0.3オングストローム程度さらに正確化したということです。最初はSPring-8を使って構造を決定していって、それを精緻化するときにSACLAをお使いになったということで、こういった歪(ゆが)んだ椅子の構造が大きな鍵を握るのではないかと言われているようでございます。
 左下にございますように、光合成の反応としては5段階の反応が進んで1つの反応となるということで、コックサイクルモデルということが前世紀から言われていると聞いています。今回解明された構造がS1状態の構造ということで、自然界ではこのS1状態から順次光エネルギーを取り込みながら、エレクトロンあるいはプロトンを?ぎ取っていって、最後、S4からS0に変わるときに水を取り込んで酸素を取り出すときに、この歪(ゆが)んだ椅子が構造を変化させているのではないかという推察が成り立つそうです。
 ここにおいて、真ん中に、SACLA利用とありますけれども、PSⅡ試料に光を当てて短時間の反応を進める。すなわちこのS1から例えばS2、あるいはS3に進めると。SACLAから来るビームとは別のビームを当てて、短時間の反応を進めて、そこでSACLAのフェムト秒パルスで極めて速い動きを観察することで、いかに動的に構造変化を起こすかということを解明することが、今後期待される進展と聞いております。
 さらにJ-PARCを使うことで、放射光では観察が難しい水素原子の位置や動きを中性子で捉えることが可能になります。すなわちコックサイクルに進むにしたがって、この歪(ゆが)んだ椅子の構造が動的に変化しているところに、恐らくは水分子が近寄っていったり、プロトンが?ぎ取られたりということをしているのだと認識していますけど、そういった状況を放射光で見るのは難しいので、中性子を使っていかに水を取り込み分解するのかを解明すると。このような相補的・相乗的利用が考えられていると聞いております。
 こういったことが解明されますと、またスパコンを用いて分子シミュレーションが考えられまして、こういったところの共同研究も既に開始されていると聞いております。これも、SPring-8、SACLAを起点とした相補的・相乗的利用による今後の展開であろうかと思います。
 次のページを御覧ください。事例3でございます。最初のものが、燃料電池のコスト低減を可能とするような燃料電池の電解質膜で、プロトンが電解質膜を移動して発電するプロトン型といった形態のものです。ここでは、プロトンの動きを保つために水を添加しなければいけないが、その水の添加を少なくしても高い導電性を保った膜にしなくてはいけない。ところが、この水添加用の補機というのがそれなりの大きさを有するので、実際の利用、例えば自動車利用においては課題になっていました。こういう電解質膜の研究において、テフロンとかエンプラといった廉価な高分子基材、これは市販で買ってこられるもの、これに対してこの研究所の電子線、ガンマ線を照射して、放射線の作用で新しい電解質膜を製作、あるいは性質を改変するといったことがなされる。これがグラフト重合と呼ぶものだそうでございます。
 このグラフト重合というものを起こさせると、新しい電解質膜が作製できるということは知られていたところです。この状況をガンマ線、イオン線で作製し、さらに放射光、中性子でも検証されていると聞いていますが、その結果できる新材料膜は、低加湿でも実用に使われる材料であるNafionと同等出力であったり、膜の機械的強度、破断強度も向上したりということが論文発表なされました。それ以降、特許のライセンスが行われておりましたり、メーカーにおける開発に移行したりといったことが行われていると聞いております。
 下側に記載しています成果も同様の燃料電池に関するものでございますが、今度は白金を用いない、より革新的と言われるアルカリ型の燃料電池についてです。ここにおいても電解質膜が鍵になります。アルカリ型は、アルカリ性が高いので膜がすぐに腐食して、耐久性の高い膜の実現に課題があったところに、グラフト重合という先ほど申し上げたものによって新材料膜を作製し、これも膜の詳細な構造や機能解析がSPring-8、J-PARC、放射光、中性子の双方で行われて、耐久性の高い構造が最適化されたということです。
 右側にありますけれども、新材料膜はアルカリ耐性が飛躍的に向上したので、目標の導電率を一定時間維持することができたことが論文発表されまして、それを受けてメーカーでプロジェクトが走っていましたり、あるいはこの法人がオープンイノベーション・ハブという計画を進めていると聞いていますが、そのアライアンスにこのメーカーも参画して、研究開発を推進するというような展開が行われているといったことでございます。
 以上、事務局から事例3つを御参考までに御説明申し上げました。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。今、上田室長の方から資料4と資料5について御説明いただきました。資料5については詳しく説明いただきましたけど、何か御質問あればどうぞ。
 成果はほかにも多分あるのだろうと思いますが、行政として把握している典型的なものを御説明いただいたということだと思います。
 よろしいでしょうか。
 それでは、特になければ、次の資料6の御説明についても、事務局の方からお願いします。
【上田室長】  資料6を御覧ください。先ほどの中期的な調査検討項目(例)のうち、ユーザーフレンドリーな放射光施設の利用環境といったところに関連する、現時点で行われているプログラムを御説明いたします。
 1ページ目を御覧いただきまして、先端研究基盤共用促進事業と言われる事業でございます。背景としまして、研究開発活動を支える最先端の研究施設・設備の整備・共用化を進めようといったこと、あるいは産学官による研究開発成果を最大化するといったことに基づきまして、現時点の予算が4億円ということで、関係機関に支出して支援させてもらっています。
 右側を御覧ください。これは、私ども文部科学省で使うポンチ絵なのですけれども、共用というものは様々なレベルがあるだろうということを示しております。一番真ん中に書いてございますのは大型の研究施設の整備・共用ということで、SPring-8、SACLA、J-PARC、「京」が共用法に基づき共用されます。こういった段階もあれば、途中段階で、共用プラットフォームという事業がございます。設備・機器としては、そこまで大きくはないのだけれども、きちんと共用が進んだ方がいいもの、それも一定の技術なりのまとまりごとに全国的に共用を進めた方がいいだろうというものを共用する枠組みを、共用プラットフォーム事業と呼んでおります。さらに、一番外輪にありますのが、新たな共用システムを導入するということです。現時点における状況を踏まえると、研究組織、大学でいうと例えば専攻とか学科とか、学部というレベル、独立行政法人の中においても研究所というレベルなど、研究組織ごとに、普段使うような機器も含めて供用を進める方がいいだろうということで、共用システムの導入を促進しています。
 これから御説明するのは、この真ん中の共用プラットフォーム事業です。各技術体系ごとに設備・機器の全国的な共用を進めた方がいいだろうということでして、具体的な取組内容は左側にありますように、取りまとめ機関を置いてワンストップサービスを設置して、産学官の利用があればサービスを提供しております。また、専門スタッフを配置し、人材育成機能の強化を行います。普段この機器を運営する専門スタッフの研修・講習という機会を捉えて施策を推進しています。また、共用に係るノウハウ・データの蓄積・共有、技術の高度化、国際協力の推進を行っているといったところでございます。
 現在は、技術分野を踏まえ6つのプラットフォームを推進しています。このうち当小委員会の御議論と関係が深いのが、左側にあります光ビームプラットフォームと認識しております。
 その光ビームプラットフォームについて次のページに書いてございます。同じ光・量子ビームの施設である放射光施設と大型レーザー施設の8機関がプラットフォームを形成して、個々の施設の特長を活(い)かしつつ連携活用するといったことを進めております。具体的には、施設連携のコーディネーション、そのためのサービス基盤、人材育成を推進するということで、[1]構成機関にありますような放射光施設とレーザー施設について、4つの活動を支援しています。4つの活動というのは、[2]にありますように、放射光の高度利用の推進、地域発課題の展開、人材育成の推進、事業取り纏め、広報活動を含む企画運営ということで、それぞれグループリーダーを置いてこの施策を推進しています。[3]については説明を割愛いたしますが、このような施策が進んでいるといったことでの御紹介でございます。
 以上でございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。資料6に基づき、共用プラットフォームについて御説明いただきましたけど、何か御質問ありますでしょうか。ここの委員の皆様は、既に1ページ右側の3つのリングの共用プラットフォームという絵は何回か目にされているかと思いますが、こういう形で現状実施されているという整理がなされましたけれども、御質問などありますでしょうか。
 では、山田委員。
【山田委員】  このプラットフォームの話と、その前に出された量子ビームの相補的・相乗的利用というのは、非常に密接に関係していると考えています。
 相補的・相乗的利用というのは、異なる量子ビーム(中性子、放射光、レーザー等)を使うという考え方が多いのですが、同じ放射光を使う場合でも施設によって、それぞれ得意な部分を持つ放射光施設が、今、日本には合計9つあります。そういう施設をうまく相補的・相乗的に利用して、いい研究を進めていくということが大事であると考えています。さらに、1つの放射光施設でもビームラインがたくさんあり、異なる装置をそこに設置しているので、例えば構造を見る装置とあるいは非弾性散乱で動きを見る装置というのがあって、そういうものをきちんと相補的、有機的に使える施設が、ユーザーフレンドリーな施設にもつながっていくと思います。つまり、異なる量子ビームを使う相補的利用もあれば、同じビームの施設を使う、あるいは同じ量子ビームの中性子でも、パルスと原子炉の定常炉中性子を相補的に使うというやり方もあり、相補的・相乗的利用にも階層性があって、それらをトータルに、どう使って成果を最大化させていくかが非常に大事だと私は思っています。
【雨宮主査】  どうもありがとうございます。全く私も同感で、本日、相補的な利用の中で多様な話が出ましたけど、SPring-8といっても、SPring-8でも複数のビームラインを使っていろいろなことを行っていて、イントラSPring-8でいろいろなことをやっていると。そこの相補的利用もすごく重要なものだと思います。
 それから、当小委員会でも議論なされたと思いますが、特に軟X線向けの高輝度放射光源というところで、回折と分光、山田委員の言われた構造とダイナミックスというところの両側面からプローブするということの重要性は今までも議論されてきたと思いますし、そういう広い意味での相補的・相乗的利用というのは非常に重要だと私も思っております。
 ほかに何か御意見ありますでしょうか。はい、どうぞ。
【小杉主査代理】  今の山田委員のお話ですが、中性子の方では、いろいろな施設をどう使い分けるかというのは、学会側である程度整理はされているのでしょうか。
【山田委員】  中性子の課題採択のとき、この課題はパルス中性子でやった方がいい、あるいは原子炉中性子を使った方がいいという、そういうリコメンデーションをつけて返す場合があります。さらに、中性子を使うより、むしろ放射光の方がいいのではないかといったリコメンデーションをつけた課題もあったように記憶しています。
【小杉主査代理】  最終的には量子ビーム全体でのプラットフォームができれば一番良いのでしょうけど、今、動いているのは放射光だけですし、中性子の方はどうかなということで御質問したのですけど、そういう量子ビーム全体でのプラットフォーム化というのは、何か考えはございますか。
【上田室長】  一つ一つ分解します。放射光、リング型の施設につきましては、大きいものから地域主体のものまで9つがあって、得意・不得意という整理をしていくのにちょうど良いような段階にあります。さらに軟X線向け高輝度放射光源ということも考えられますから、そういったものは、できれば実現して稼働開始する前段階で、当小委員会でも御議論いただくのが良いのではないかと思っています。
 中性子の方は、今小杉委員もおっしゃいましたけれど、パルス型の中性子源はJ-PARCということでございます。一方、定常的な中性子源というのは、海外もそうなのですけれども、これは研究用原子炉を用いたものが基本でございます。我が国の場合は、日本原子力研究開発機構がJRR-3、あるいは3号炉と呼ばれる研究用原子炉を産学官の一般共用に供するということを歴年やってきていまして、こちらの炉については、J-PARCと同様に日本の二大主力施設というふうに量研室としては考えております。その炉の方は3.11の大震災以降、安全規制の審査を受けているような段階で、稼働はまだということになっています。
 これに加えて、では、ほかに中性子源が日本国内に種々共用されているような状況かというと、私どもが認識する限り必ずしもそうではなくて、小型の中性子源といったものは必ずしも産学官に広く共用されているような状況ではないのかなとお見受けしています。それが、この議題(資料4)の中期的な調査検討項目(例)の3番目にあるように、小型中性子源というものを促進して、二大主力施設とともに中性子は中性子で1つの体系にするといったことも、1つの中期的に御検討いただくような課題になるのかなと思うところです。
 それらをまとめたといったことにつきましては、現時点では手がかりを少しずつ御議論されているような状況だと思いますので、そういったことも含めて、当小委員会で中期的には御議論いただくのがよろしいのではないかなと思うところでございます。
 以上です。
【雨宮主査】  ほかに何か御意見ありますでしょうか。
 では、内海委員、お願いします。
【内海委員】  これまでの当小委員会の議論で軟X線向け高輝度放射光源については、大体方向性が見えてきたのですが、少し先走りし過ぎているのかもしれませんが、その次の放射光源のお話、具体的にはSPring-8の硬X線を、どういうふうに高輝度化していくのかというのが次の大きな焦点になるだろうという気がいたします。是非ともその議論も、当小委員会の中でしかるべきタイミングで入れるべきと感じますので、一言意見として申し添えさせていただきます。
【雨宮主査】  さらに次のステップということですが、田中委員、今のことに関して何かコメントとかあれば。
【田中委員】  非常に有り難いコメントと受け取っております。オフィシャルには、SPring-8のアップグレードの予算化の時期は分からないのですが、現状のSPring-8の性能が世界的にどういう位置付けになっていくか、それは現在の世界情勢を見る限り明らかであります。近々には、現在の性能を世界最先端レベルまで、大幅に引き上げていくことが必須と予想され、これに対し地道な準備をしているところでございます。
 ESRF(欧州シンクロトロン放射光研究所)のアップグレードは2020年から21年ぐらいには完了するということです。MAX IVは、いろいろと調整に手間取っておりますので、フル性能でいつ頃運転されるかについては見通しがつきません。まだまだ時間がかかりそうです。MAX IVに比べ、ESRFのアップグレードはかなりきちんとした検討がなされているので、それなりのスピードで性能が達成されるだろうと思います。
 このような情勢を踏まえ、2020年の初頭ぐらいにSPring-8のアップグレードを実現するという目標設定で、理化学研究所では準備を進めているところでございます。
【雨宮主査】  今、田中委員から、海外の動向も含めてまた情報提供がありましたけれども、MAX IVは、やはり今も設計値では運転できていないと。
【田中委員】  MAX IVの設計蓄積電流値は500ミリアンペアですが、それに比べ低い蓄積電流でしか運転できておりません。IPAC(国際粒子加速器会議)という国際会議が5月の中旬にありました。そこにブラジルで現在建設中の放射光施設であるSiriusの加速器物理グループのリーダーであるLin Liu氏も参加しておりました。ブラジルのカンピーナスというところにもMAX IVに似た中型の放射光施設Siriusを造る計画がありまして、彼女はIPACが終わった次の日にMAX IVに向かって、現状を自分の目で見てきたいと言っておりました。
 今、インターネットが普及しており、非常に便利になっていますので、MAX IVの運転状況というのは、世界のどこにいても見ることができます。フレンドリーユーザーに向けて、去年の秋に初期のユーザー運転を開始したという発表がなされた訳ですが、その後モニターしていますと、蓄積電流がすごく低い上に、しかも定常的に運転されておりません。一体何が起きているのかということですが、幾つかの可能性があります。Lin Liu氏によれば、「自分で現地に行って聞いてきたい」ということでした。「MAX IVの運転がうまくいってはいない」という認識が、世界的なコンセンサスになっていることは間違いないだろうと思います。これは先々週ぐらいの話でございます。
【雨宮主査】  どうもありがとうございました。当小委員会でもいろいろ議論があって、世界レベルの先端性はもちろん必要だと。同時に、安定性も必要で、どちらも両立することがマストだということです。この点に関しては、学術、産業界含めて強い要望があったと思います。
 SPring-8のアップグレードに関して、硬X線に対しての期待感は、軟X線向け高輝度放射光源の議論に関わらずあるわけですから、また適宜新たな情報を頂ければと思います。
【田中委員】  1つだけ付け加えさせていただきたいと思います。MAX IVだけではなく、次世代放射光源の光源性能に関してはいろいろな議論がありますけれども、我々は、特にピーク性能を出すということと、きちんと使える、ユーザーが利用しに来たときに、常に一定レベルの性能を安定的に供給できる信頼性、性能と信頼性、安定性を両立させることが、SPring-8を20年間運転してきた経験によって、非常に重要だと理解しております。それをしっかりと踏まえて次を考えた上で、性能を飛躍的に上げる、そこに拘(こだわ)ってきました。そこの点で、ある意味では今の世界的な潮流に比べ、若干違った方向に向かっているとも言えます。ものすごく無理をして非常に高いところを狙うというよりは、確実にできて、かつ性能的なジャンプが十分であるところをどう狙うか。十分というのをどう定義するかは少し難しいのですが、性能と安定性、そこのところを天秤(てんびん)に掛けた上で最適化するというアプローチを、ここ5年近く実施し、これに向けていろいろな検討を続けてきております。特に、SPring-8と同じように、電子ビームの調整から半年、遅くとも7、8か月でしっかりユーザー運転へ移行できるということを前提に、現在基本設計を詰めております。その基本設計、コンセプトに基づいて、各種コンポーネントの研究開発を少しずつ進めているという現状でございます。
【雨宮主査】  では、上田室長。
【上田室長】  よろしければ、今あった御議論を少し整理しつつ理解しておきたいのですけれども、MAX IVというのはスウェーデンの放射光施設で、去年夏頃から稼働開始した施設で、私どもの議論の区分でいうと、軟X線に強みを有する3GeV級ということでございますね。それが稼働して、一方でヨーロッパのESRF、これはヨーロッパ全体で持っていますSPring-8と同等の世界三大放射光施設、SPring-8とヨーロッパのESRFと米国のAPSという中の1つで、こちらはもう既にアップグレードがなされているということでよいのかということと……。
【田中委員】  ESRFに関しては、はい、アップグレードが進んでおります。
【上田室長】  はい。20年といったところで稼働開始といったところなのですけど、その際、どれぐらい工事期間なりユーザーにとって使えないような期間が出てくるのか、現地の情報があれば教えていただきたいなというのと……。
【田中委員】  ESRFでございますか。
【上田室長】  はい。それと、私たちが今議論している3GeV級放射光施設というものとSPring-8のアップグレードの関連性について、当小委員会では必ずしも議論がなかったと思うので、少し事務局の理解を助けるためにも御議論いただければと思います。
【田中委員】  ESRFも現在稼働中の施設でございますので、ブラックアウトタイムは最小限にするということで彼らもかなり工夫しております。私が理解しているのは、我々と同じく、ブラックアウトタイムは基本的に1年ということです。実際にマシンを止めて、中のものを入れ替え、新しいリングにして、ビーム運転をするということが、ほぼ1年で完了するというスケジュールで進んでいます。
【雨宮主査】  あともう1個、軟X線向け高輝度放射光源とSPring-8のアップグレードとの関わりについて。完全にSPring-8が止まるというときに、もしこの軟X線向け高輝度放射光源が実現していると、ブラックアウトに伴うユーザーのダメージがどの程度緩和されるか、されないかということのイメージというのが、今、室長からの質問の中には含まれていたように思います。
【田中委員】  もちろん3GeV級放射光施設ができて立ち上がったそのタイミグでSPring-8のアップグレードがブラックアウトタイムを迎えるのがよろしいと思います。というのも、3GeV級放射光施設は、テンダーX線から30~50keV程度のX線までをカバーできる能力がありますので。その光源がSPring-8のブラックアウトタイムまでにできていれば、SPring-8のブラックアウト期間の1年の間の実験というものが、新しくできた3GeV級放射光施設で、全てとは言わないまでも、かなりの部分をカバーされると期待します。そういうお答えでよろしいでしょうか。
【雨宮主査】  はい。
【田中委員】  ただ、それは、(私のような)加速器の専門家よりは、どちらかというとユーザーの方々の方が適切にコメントできるのではないかと思います。もちろん、そういうタイミグのことはよくよく考えて、日本全体のポートフォリオを考えた上で、3GeV級放射光施設の建設とSPring-8のアップグレード開始のタイミングを、全体でバランスしていくのがよろしかろうというふうに思います。
【雨宮主査】  SPring-8-Ⅱの計画の話が、内海委員から出ましたけれども、やはり軟X線向け高輝度放射光源のタイミングというのは非常に重要だし、SPring-8が1年丸々使えないというのは、かなりSPring-8ユーザーにはダメージを与えると思いますので、その辺のタイミング調整というのは非常に重要な要素だと私は思います。
 実質的に、既にその他の自由討論に入っているのですが、当小委員会で今までいろいろなことを議論してきていますけれども、本日は国の主体についてということと、それから調査のことについて、地域構想の調査については少し延期したということがメインなことで、そのほか資料の後半は、今までの議論、プラットフォームのこととか相補利用のこととかということの、改めて行政から見た情報の展開がありました。何か全体で本日御議論することがあれば、是非御意見を頂ければと思います。
 では、どうぞ。
【中川サイバーセキュリティ・政策評価審議官】  例えば、第5期の科学技術基本計画の中で、新しい産学共創という、今までの産学連携にとどまらない、ともに汗をかくという形の産学共創というのが掲げられているものの、現場ではそういう形がなかなかうまくいかない。そういう中にあって、本日、資料4の中期的な調査検討のお話の中で今までのご議論もあったかと思うのですが、先回の金子委員や高橋委員の御発表、それから岸本委員のエナセーブに関する御発表もそうですが、本日御議論されている産学共創とかプラットフォームというのは、現場、研究者、施設運用者、さらに産業界も含めて、かなり高いハードルにチャレンジしているということかと。それをまさに一緒に汗を流したりしながらやっていくという形が、この大型放射光施設の中にあるのだと思います。
 そうした産学共創の姿は、恐らく今後こういった大型施設を造るためのキーの1つであろうと。先ほど小杉委員や山田委員から役割分担の議論がありましたが、例えば、財源の役割分担といったときに、単に、産業界が幾らで何割にするというようなことありきではなく、恐らくこの小委員会でやる議論は、産業界の期待でありチャレンジでありということ、各研究現場あるいは施設運用者というもののチャレンジをいかに双方で高めて、その結果どういう役割を担っていくかというものであるかと思われます。その中で、第5期基本計画で提唱されている、産も汗をかく、官も汗をかく、学も変わるといった、こういった新しい産学連携のひとつのモデルケースになっていくものだと思われます。
 それが、本日お話しのあった量研機構がそういうチャレンジをされ、コミュニティが一緒にやっていくということであります。資料4には、利用とかユーザーというのは書いてあるのですが、あえて産業のコミットとか、産学共創とかオープンイノベーションという観点は若干遠慮がちになっているようにも見えます。最後に田中委員がおっしゃったようなユーザーサイドといったときに、世界的な産業競争力を競うというようなユーザーも、ある意味キーのひとつになっていくかと思います。官も学も利用者も、かなり対等な立場で高い最先端研究を議論できるというのが当小委員会の非常に良い特長だと思います。是非今後ともそういった視点についても継続してご議論いただけると、新しい産学共創という観点からも良い方向になっていくのではないかということを期待しているということでございます。

【雨宮主査】  了解しました。
 今日は岸本委員と高橋委員、産業界の委員がたまたまお二人御欠席で、金子委員だけなのですが、この委員会では産業界からの期待というのは、いろいろな視点から述べられていますし、それと同時に、やはり学術がしっかり人材育成を含めてやるべきということはあって、そういう意味では産も学も、また官も汗をかくということが、基本的な構想であると私は理解しています。御意見、どうもありがとうございます。
 ほかに何かありますでしょうか。今までも軟X線向け高輝度放射光源ということをいろいろな観点で議論してきていますけれども……。
 はい、どうぞ。
【内海委員】  量研の内海でございます。本日の当小委員会の御議論で、軟X線向け高輝度放射光源に係る計画案の検討を行う国の主体候補として、量研機構が適切であるというお答えを頂いたと思っております。
 早速、本日の委員会の結果を組織に持ち帰りまして、それを報告するとともに、今日の資料2にあります計画案の検討に当たっての留意点や本日の御議論の中で出ていたことを肝に銘じて、計画案の検討作業に入らせていただこうと思っております。
 それから、少し締切りが延長されましたが、地域構想の調査の結果も間もなく出てくると思いますので、応募のあった地域とも十分にいろいろな検討・協議をさせていただくつもりでございます。それから、一番重要なことですが、何度もオールジャパンでというお話が出てきました。様々な機関にいろいろな御協力を頂きながら、新光源の軟X線向け高輝度放射光源の計画案というものを練り上げて、これを成功に導きたいと思っておりますので、是非とも皆様の御協力をよろしくお願い申し上げます。
【雨宮主査】  よろしくお願いします。もう一度明示的に言いますと、量研機構がこの計画案の検討を行う主体候補として適切であるというのは当小委員会の意見ですので、是非いい意味でプレッシャーを感じて、頑張っていただければと思います。
 ほかにいかがでしょうか。
 特になければ、本日の議題は終わりましたので、事務局から事務連絡をお願いします。
【大榊専門職】  ありがとうございました。次回の量子ビーム利用推進小委員会の日程につきましては改めて御連絡させていただきますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 また、本日の資料について、郵送を御希望の方は、封筒に入れた後、机上に置いたままにしていただければと思います。不要な資料やドッジファイルについては、机上に置いたままにしていただければ結構でございます。
 以上でございます。
【雨宮主査】  以上をもちまして、第8回の量子ビーム利用推進小委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。


―― 了 ――

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