安全・安心科学技術及び社会連携委員会 社会と科学技術イノベーションとの関係深化に関わる推進方策の検討作業部会(第1回) 議事録

1.日時

平成27年5月8日(金曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省15階 科学技術・学術政策局会議室1

3.議題

  1. 主査代理の指名について(非公開)
  2. 議事運営について(非公開)
  3. 社会と科学技術イノベーションとの関係深化に関わる推進方策について
  4. その他

4.出席者

委員

奈良由美子主査、平川秀幸委員、藤垣裕子委員、三上直之委員

5.議事録

【奈良主査】  それでは、委員会の発足に当たりまして、まず科学技術・学術政策局人材政策課長から一言御挨拶を頂きたいと思います。
【片岡課長】  人材政策課長の片岡でございます。先生方におかれましては、本作業部会の委員をお引き受けいただきまして、また、本日お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 科学技術と社会の問題につきましては、第1期の科学技術基本計画のときから取り組まれておりまして、最初は科学技術に対する理解の増進という形でどちらかというと一方向的な形でされておりましたが、その後、双方向のコミュニケーションが大事だということになり、また、国民の参画を促進しないといけないという話になり、そして、第4期では、社会とともに作り進める科学技術という視点で書かれているというところでございます。現在は第5期の科学技術基本計画の検討に入っているという状況でございます。
 そういった中で、特に欧米の方では、Responsible Research and Innovation、責任ある研究・イノベーションという考え方が言われるようになりまして、これは科学者、研究者の責任ということだけではなくて、市民社会、一般国民も含めたあらゆるステークホルダーがお互いの考えに応え合うという形での責任を共有するという、そういう形の考え方が言われるようになってきております。
 そういった動向も踏まえまして、今後我が国で科学技術と社会の関係を深化させていくためにはどうすべきかということで御議論をお願いしたいと考えております。5月、6月の短期集中の議論になると思いますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【奈良主査】  ありがとうございます。
 それでは、私からも一言御挨拶を申し上げます。この分科会がおかれている安全・安心科学技術及び社会連携委員会の役割について、改めてここで時間を少し頂戴して御紹介したいと思います。この安連委員会の役割は次のとおりです。科学技術基本計画で示される重要課題に対応するため、文部科学省における安全・安心科学技術及び科学技術と社会との連携・共創の在り方に関する研究開発計画の作成、推進、評価並びに関係行政機関の事務の調整の方針に関する重要事項について調査、検討を行うと、このように書いてあるわけです。私、改めてこれを見まして、この作業部会で行うことというのは本当に当該委員会の本務中の本務であるなと思っている次第です。是非しっかり務めていきたいと思っております。
 ただ、社会と科学技術イノベーションの関係深化といいますと、ともすれば何か抽象的でぼんやりしたものになってしまう危険性がないとは言えません。そうなってしまうと何が起こるかというと、将来のステークホルダーになってくれるはずの人たちが、つまり、関与者たちが、うちの機関には、僕には、私には関係がなさそうだと思いかねないと思うのです。ですから、そうならないように、是非出口がしっかりイメージできるような、社会に確実に定着できるようなところまでしていきたい、そういう具体的な方策までこの部会では議論していきたいと思っています。
 ただ、具体性も大事ですが、もちろん理念もとても大事で、私たちは東日本大震災から4年たった今、改めてこういったことを話し合うわけですけれども、その必要性も含めまして、関与者に届くようなしっかりした理念、枠組みを作っていきたいなというふうに思っております。
 本当に短期集中でなかなか大変な作業になると思いますが、是非皆様のお力をおかりしたくよろしくお願いいたします。
 それでは、平川主査代理からもここで一言お願いします。
【平川委員】  では、着席で御挨拶させていただきます。先ほど片岡課長からも説明ありましたように、我が国においても科学技術政策において、科学技術と社会との関係、これに関する政策というのがだんだん一方向的なものからより多様な双方向的なものに進化してまいりました。
 しかしながら、まだまだやり残した課題、例えば第4期科学技術基本計画での「社会とともに創り進める政策」で見ても様々なやり残した課題もありますので、この作業部会の一つ大きな取り組み課題としては、まずは第4期までの宿題をどう片付けていくのか。特に今、奈良主査がおっしゃいましたように、ともすればこの議論というのは抽象論だけで終わってしまうので、それをいかに具体的な形に落とせるか。その上で更に第5期、いかにチャレンジをしていくのかということが、短いながらもこの作業部会に課せられた課題だと認識しております。
 更にもう一つ申し添えれば、この科学技術と社会との課題というのは、例えば先ほど片岡課長が紹介されましたResponsible Research and Innovationという考え方はヨーロッパから生まれたものではありますが、ただ、実際その中身を見てみると、ヨーロッパで研究者やポリシーメーカーたちが直面している問題というのは、実は我々が直面している問題と全く同じである。そういう意味ではどこも先進国はない。この問題に取り組む上で何か特にソリューションを出す面で先進国はどこにもなくて、みんな、ある意味横並びでフロントランナーである。そういう意味で、常に我々も世界の最先端でこの仕事をしているという、そういう気概とパースペクティブを持ってこの委員会で何かいいものを生み出せればと考えておりますので、皆様どうぞ御協力お願い申し上げます。よろしくお願いします。
【奈良主査】  ありがとうございました。
 それでは早速、次の議事に移ってまいりましょう。議題3になります。議題3は、社会と科学技術イノベーションとの関係深化に関わる推進方策についてです。まず最初に、事務局から、文部科学省内で検討してまとめてくださった論点(案)と、それから、先日の安連委員会の方で出された各委員からの意見について、資料に基づいて御説明していただきたいと思います。

○事務局より資料3、資料4について説明。

【奈良主査】  ありがとうございます。
 今御説明いただいたことも踏まえまして、議論に移りたいと思います。ただ、我々が話し合わなければいけないことは非常に多くて、資料も非常に情報量が多うございます。そこで、前半と後半に議論を分けたいと思います。前半では何をするかというと、資料3の1ポツの基本理念から3ポツの基本的な視座までの事項、これが前半。4ポツの具体的な取組例、これを後半としまして、二つに分けてこれから議論を進めていきたいと思います。
 ではまず、前半の議論をいたしましょう。つまり、1ポツの基本理念から3ポツの基本的な視座、この事項について御意見を頂きたいと思っています。きょうは分科会の1回目ということで、ともかくたくさん御意見を頂くということをしたいと思っています。ですから、是非いろいろな角度から御意見賜りたいと思っております。
 では、まず藤垣委員にお教えいただきたいことがあります。今事務局から説明がありました資料4ですけれども、一つ目のポツの科学技術における不確実性下の情報公開の在り方について、第7期うんぬん、これは藤垣委員が前回の安連委員会で御発言くださったことです。この点について少し補足を頂けましたらと思います。
【藤垣委員】  資料4の丸ポツの1ですね。分かりました。これは4月にありました第1回の会議での発言だと思いますが、そのときに平川委員の方から、責任ある研究・イノベーションの考え方に関する、つまり、RRIの概要についての説明がありました。その中に予見的ガバナンス論というのがRRIのベースとしてあるという説明があった、そこから出てきたと思います。予見、アンティシパトリーガバナンスですから、要するに、不確実性下の意思決定。科学者に聞くことはできるけれども、科学者がまだ答えを出せないような不確実性下でどういうようなガバナンスが可能かということなんです。
 それに関しましては、我々の前の第7期で堀井先生が主査だった頃に、片田委員を中心として、災害時にどういうふうに逃げるかという話も含めまして、不確実性が絡む、例えば地震の予知にせよ、それから、津波が突然発生したときにどうするかということを考えてなくてはいけないという話がありました。片田委員がやったのは、町の人にどういう教育をしておけばいいかという話だったのですが、それに対になる話として、科学者は不確実性に絡むものをどこまで情報公開すればいいのか、そして、どこまで責任を負えばいいのかという話がありました。それは第7期の議事録をひっくり返してみれば、もういろいろな場面で議論をしたと思います。責任に関しては、結構ひっ迫した議論をしたように記憶しています。
 ちょうどあの頃議論したのは、例えばイタリアであったラクイラの地震のときに、あれは地震学者の方が訴訟、要するに、アキューズされたわけです。では、どういう情報公開の仕方をすれば彼らは責任が取り得たのかということになります。イタリアの地震学者は逮捕されて、それで有罪判決を受けているわけですけれども、実は日本も4年前に、東日本大震災のときの科学者としての情報公開の在り方は本当に責任取れるものだったのかということが問われたわけです。ですから、イタリアの話だけではなくて、日本の学者もそれを真摯に大震災の後に問いました。
 そのことは、日本学術会議でも相当熱心に議論されていまして、特に第3分科会という工学関係の人が集まってやっている会議の中で、例えば気象庁があの直後に発した情報はあれでよかったのか、あるいはSPEEDIの情報をどこまで公開すればよかったのかというようなことを真剣に議論しました。その一部は日本学術会議の報告あるいは提言という形で出ています。
 それはもうあのときに自分自身の問題として、ではどこまで公開すればよかったのか。日本学術会議がユニークボイスというものにこだわるが故に、本当に確信が持てるところまでのものしか、要するに、ある程度不確実性の中でも確実の方に寄ったものしか発信することをしなかったのです。そのことによって責任が取れた部分もあるし、責任が取れなかった部分もある。そうだとしたら、意見分布をもう少し発信してもよかったのではないかというような意見などもありました。
 あるいは、日本はどうしても深刻な判定をなるべく後回しにして、本当に確証を持って深刻だと証明できるまではそれを口にしないという傾向を持つのですけれども、アメリカのNRCだと、考え得る最悪のケースの可能性をまず最初に言って、ただし、まだそれは可能性のレベルであって、そこまでには至っていない、という発信の仕方をするわけです。
 ですから、そのようなことが不確実性下の情報公開という話で震災後にいろいろと議論がありましたので、Responsbile Research and Innovationというところには不確実性下の意思決定とか、あるいは不確実性下の科学者の情報公開というものが入り込みますので、そういうようなことも含めて議論していただければと思います。
【奈良主査】  ありがとうございます。今の御意見は、科学の本質のようなものも含めた御発言だったと思いますし、あと、責任ということの扱いについても重要な御示唆があると思うんですが、まずどんどん御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。
 この分科会として責任という言葉をどう扱うかということも、大変重要な課題だと思います。結果のみに関する科学者の責任という捉え方では恐らく好ましくないでしょうというのがこの委員会としては出したいメッセージだというふうに理解しておりますが、皆さんの方からいかがでしょうか。
【横山委員】  よろしいでしょうか。
【奈良主査】  お願いします。
【横山委員】  恐れ入ります。まだこの御議論に余り慣れておりませんで、不勉強な点も多いかと思いますが、よろしくお願いいたします。
 今の藤垣先生の御意見、本当に大変密な御議論があったんだなというふうに伺っております。私、震災時に東大理学部の情報発信の窓口として多くの研究者と放射性物質の拡散予測をどこまで出すかと、それを大学の名前の出すのか、個人で出すのか、ツイッターで流していいのかという議論を随分と内部で行っておりました。そのときに本当にいろいろな反応があり、個人で御判断して動いた若手の研究者もいましたし、シニアの教授の方もいらっしゃいました。あるいは、まさに今御議論されている責任を恐れて、ほかの大学から流してくれと、そのような議論までございました。
 その中で一つ有効に機能したグループがあったというふうに拝見しております。それは原子核物理のグループでございまして、大阪大学と東京大学、その二つが中核になって、東北大学の一部も御協力されました。何をされたかというと、福島の土壌の放射線の測定のグループを組んで行いました。立ち上げのミーティングに私も参加していたのですが、どのように情報を出すかというところでシビアな議論がございました。
 そのときに彼らがとった方法が私としてはかなり有効だったと拝見しています。自治体にいきなり乗り込んで測定をするわけにもいかないので文科省からの御依頼であるという形式をとりあえずとられました。自ら手を挙げたのは研究者たちなのだけれども、形式としてはやはり国の指示の下御協力しているという態勢を整えて、そして、情報も文科省のウエブページから発信させていただくという、そのような形をとっておりました。
 科学者にとっては、自分たちが測定したデータをなるべく外に開示して協力したいという、その気持ちは強くあるけれども、それに伴って起きる事象の責任を、すべて個人で負うことはやはり無理だというふうに拝見しております。それはやはり国が責任を持つという形で、できるところまではなるべく情報開示をしていくというのが彼らがとった方法で、それは現実的には割と有効な方法なのかなというふうに拝見いたしました。一つの実例まで御紹介申し上げました。
【奈良主査】  ありがとうございます。
 いかがでしょうか。
 この分科会が検討するとき重要な概念となるRRIは、日本語そのまま訳してしまうと、責任ある研究・イノベーションというふうになるわけです。この責任という言葉は、比較的聞こえのきつい表現といいますか、それを例えば国民の皆さんに届けたときに、科学者の責任であるとか、それこそ国の責任であるとか、日本人が感覚として捉える責任として捉えられることも大いにあるわけですけれども、何か国民の皆さんに受け入れていただきやすいような概念規定及び表現というものがあり得るでしょうか。
 今、横山委員が言ってくださったのは、研究者、国の結果に対しての責任……。
【横山委員】  土壌測定は初期値のわからないシミュレーションなどとは異なり不確定性は低いので、結果に対しては、恐らく彼らは自信を持って責任を持てるんですが、それを開示したときに、予期しない、例えばそれを見てすぐに引っ越しをしなきゃと思って交通事故に遭われてしまったなど、その先で起きる事象に対して彼らは責任は負えないと思っているようです。
 その後、私、学術会議の地球惑星科学の方の提言に少しだけ関わらせていただきましたが、やはりシミュレーション結果については同様の議論があったように拝見しておりました。
【奈良主査】  ありがとうございました。
【平川委員】  結果責任をどういうふうに社会として負う仕組みを作るかということですよね。不確実性下での情報をできるだけ出やすくするというかたちで、科学者としての責任が全うされるようにしつつ、でも、負い切れない責任はまた別のところがちゃんと担う。そうすることで、科学者の方は一層自らの責任を発揮しやすくなるという、その一例としてということになりますよね。
【横山委員】  はい。
【平川委員】  あと、恐らく、責任ある研究・イノベーションということでもう一つ責任という言葉に関して大事なのは、これは藤垣委員が何年か前に物理学会誌に書かれていた論文で責任を三つに分けて紹介していたと思いますが、それが結構大事かなと思いますけれども、藤垣さん、ちょっと紹介していただけますか。
【藤垣委員】  まず、科学者共同体の内部責任ですね。専門誌共同体の中で生産する知識の品質管理に関する責任が一つ目。二つ目が、科学的知識というものに対する製造責任。例えば原子力を研究して原爆を作ってしまったことの責任というものがこの二つ目の責任に含まれます。三つ目が応答責任です。ある研究の成果が社会に埋め込まれた時にどのような意味を持つのかということを想像できる社会的リテラシーや、国民から来る問いに対して答える応答責任などが含まれます。ですので、少なくとも自分たちが作っている専門的知識の水準を保証する責任と、それが社会の外に出ていったときの製造物責任と、それに対して国民から問い掛けが来たときの応答責任、少なくともその3種類に分けられるだろうというふうに物理学会誌では書きました。
 ではそのように分けたときにこのResponsible Research and Innovationというのはどういうふうに考えられるかというと、恐らくResponsible Researchというのは第1の責任にかなり近付いてしまうんです。要するに、研究者内部の中でその質を保証する。例えば研究不正は今回扱わないということになっていますが、第一の責任は研究不正とのちょうど表裏の関係にある、不正をしない、きちんとした知識生産ができるということがResponsible Researchであるというのが一番原義的な意味のことです。
 ただ、Responsible Innovationの方になりますと、その知識をもとにして何かを作っていったときに、産物の製造物責任、つまり第二の責任というのはResponsible Innovationの方に関係します。また、第三の応答責任の方は両方に関係しますよね。Responsible ResearchにもResponsible Innovationにも両方関係すると思います。
【奈良主査】  ありがとうございます。
【平川委員】  さらに言うと、きょう最初に片岡課長がおっしゃったように、責任というのは科学者だけの話ではなくて、社会のいろいろなステークホルダーもそれぞれなりに役割と責任がある。言い換えれば、応え合う関係がある。今、藤垣委員がおっしゃった応答責任という方でいうと、応答する責任というのはそれぞれの主体にそれぞれあるというイメージになるのでしょうかね。その場合に何かそれを的確に表す表現というのがあればいいんですけれども。
【藤垣委員】  Respoisibilitrというのが、もともとレスポンス+アビリティーから来ているので、応答する責任、応答することの能力という意味を持ちます。そこから応答責任というのが出てきているんですね。恐らくRRIというものの定義を前回の安全・安心科学技術及び社会連携委員会で平川さんがしてくれたではないですか。
【平川委員】  ええ、きょうこちらの参考資料にあります。
【藤垣委員】  そこにはそれぞれが、ステークホルダーが互いの見解に応え合うと書いてありますね。だから、おそらく応答責任に一番近いと思います。この中にも応え合う仕組みをどうやって作るかとなっていますので、もちろん責任分担の在り方も考えなければいけないけれども、応え合う仕組みをどうやって作っていくかということも考えないといけないですね。
【平川委員】  応え合う仕組みって響きがいいですね。
【奈良主査】  ステークホルダーが互いの期待と懸念に応え合うということですかね。
【藤垣委員】  はい、そうですね。
【奈良主査】  この点についていかがでしょうか。責任の表現。
【三上委員】  今の三つの分類、藤垣さんの論文にある三つの分類でいうと、やっぱり私もあえて今議論する意味というのは、3番目のようなことが大事だということが背景にあるんだろうと思うんです。非常に伝統的には1番目の、科学者の共同体の中でどういうふうに質保証するかということがもちろん学者の責任ということだったんだと思うんです。それが実際社会の中に持ち込まれたときにどうなるかということの責任というのが多分2番目の段階だとすると、そこを越えてあえて研究の責任とかイノベーションの責任ということを論じなければいけないという意味は、ここに関わってくるステークホルダーの種類も数もすごく増えているという中で、やっぱりそういう人たちときちんと応答関係に入ってその中で研究なりイノベーションを進めていくということなので、今の三つの分類でいうと、1番目とか2番目も視野に収めながら、どちらかというと中心は3番目の部分を、そこの部分をどう太らせていくのかということかなと思いました。
【奈良主査】  今、三上委員の御発言の中に、なぜ今我々がこういったことを検討するのかという観点が入っています。これは、とても重要だと思います。科学技術基本計画が第1期から段階的に進化を遂げてくる中で、この委員会の重要主題も同様となりました。3.11の後も、我々は社会と科学技術の在り方について相当に議論をしてきましたそして、震災から4年たったこの時点で、さらにまた何らかの新たな理念を我々はきちんと検討しようとしています。そこで、社会と科学技術イノベーションの関係の深化を求めるためのメッセージを今これから出す、その意義を、やはり一つきちんと我々は共通して認識しておく必要があると思うのです。それがひいては関与者、将来のステークホルダーの心に響くメッセージになっていくと思います。
 三上委員の方からは、責任の意味の捉え直しといいますか、応答責任ということにしっかり向き合うことが、今、我々が震災から4年たってこれを議論する一つの意義だという、そういう御発言ということで。
【三上委員】  そうですね。やっぱりそれは大きいんじゃないかなと思います。
【奈良主査】  ありがとうございます。
 いかがでしょうか。震災から4年たって、あえてさらに社会と科学技術イノベーションを論じることの意義。藤垣委員の方から、これは是非今だから必要だというようなことがあれば。
【藤垣委員】  今こそ必要だ……。オリンピックがありますよね。
【奈良主査】  オリンピックあります。
【藤垣委員】  2020年までにきちんと放射性廃棄物関連のことは制御してアンダーコントロールにしなければいけないと一応安倍首相は言ったんですよね。
【奈良主査】  はい、アンダーコントロール。
【藤垣委員】  そのように言ったけど、本当に大丈夫かしらと結構心配なんです。あとは、今、再稼働のことがいろいろな地裁で別々の結果が出ていますけれども、あれも世界中の人たちが注目していますので、やっぱりResponsibleな原子力発電所でないと困るわけですよね。
【奈良主査】  横山委員の方から何か。震災後からいろいろな取組をなさってきたわけですけれども、今こういうことを議論することの必要性、意義、どのようにお考えですか。
【横山委員】  やはり原発とエネルギー政策の課題は継続して非常に大きな問題です。決して先々、未来に生み出す成果に関わるコミュニケーションや社会的な問題だけではもちろんなく、今現在日本の地盤となっている問題にまず取り組むことが日本にいる我々としてのミッションだと思いますので、その辺り、今の日本をしっかりと見てやる意味というのは非常に大きいかと思います。
 あと、オリンピックに関しましては、やはり夢とか未来というキーワードがよく出てきておりますが、恐らく文科省が抱えるまた異なる問題としては、貧困家庭の増加で6人に1人のお子さんたちが食事もままならないような現状が今の日本にあるという状況だと思います。科学リテラシーを上げようといっても、食事ができないような環境にあったら学習どころではございませんので、やはりそうした現実も見ながら現実に合った議論を今の社会に合った形でしていただくのが今のミッションというのでしょうか、そのように感じております。
【奈良主査】  ありがとうございます。
 科学者の信頼が失墜したということが言われていますけれども、これとの関係ではいかがでしょうか。科学への信頼の復権にこの4年間我々一生懸命取り組んできました。そして、今、4年たってみて、何か新たな視点であるとか、この分科会のキーワードと絡めて、責任とか応答とか信頼とか一緒に何か扱って議論することはできるでしょうか。
【三上委員】  よろしいですか。
【奈良主査】  お願いします。
【三上委員】  このまとめていただいたこの間の委員会の意見のリストでいうと4番目ですかね、これ、片田先生が多分指摘してくださった話だと思います。これは前段があって、どちらかというとemerging(萌芽的)な技術に対するResponsibleな体制をどう作るかというような議論がその前段にあって、その上で、「それももちろん大事なんだけども、例えばそこにあるように、防災などの現実の問題に向き合っている分野にも当てはまるような関係深化が求められているんじゃないか」という片田先生のコメントだったと思うんです。
 それで、今の話でちょっと思ったのは、責任というのを捉えるときに、例えば科学者であれば、社会からの信頼をどういうふうに回復するかというようなことをいろいろなところで考えていろいろな方が取り組まれていると思うのですが、求められているのは、そういうときにどういうふうに振る舞ったらいいのかという実践の指針、最初に奈良さんが言われた言葉で言うと「抽象的な理念にとどまらない枠組み」ということに多分なるのかと思います理念からもう一歩ぐらい落とし込んで、実際にその理念を実現するための方法というか、どういう道具立てでどういうことをすればいいのか、そんなことが求められているのかなというのは、今の意見のリストを見ながら片田先生の話をちょっと思い出して思っていたんです。
 だから、責任というのを抽象的に捉えるんじゃなくて、どういうふうに社会の中で振る舞うことが例えば科学者にとって社会の中で真っ当に責任を果たしていることになるのかという、そういう指針というんでしょうかね、そういうものがやっぱり求められていると。それはすごく大きな背景としては東日本大震災があって、その直後に、今、横山さんが紹介してくださったようないろいろな取組をいろいろな分野の方がされて、その中では本当に皆さん必死でいろいろな形で信頼を回復するためにやられているんだけども、改めてそういうものを振り返ってみて、何が真っ当な責任を取った振る舞い方になるのかということをもう一度捉え直したいということがあるのかなと。それが今このタイミングでやるということの意義なのかなと思いました。
【奈良主査】  ありがとうございます。そうですね。
 幾つかの大事なキーワードがつながってきたと思います。今、もう少し資料3について、一つ一つする時間はないんですけれども、皆さんにも見ていただきながら何か気が付いた点等あれば更に、5分ぐらいしか時間がないんですが、御意見等頂ければと思います。
 きょうは、先ほども申しましたように、ともかくいろいろ御意見を頂く会ですので、発散していただけますか。御意見をどうぞ下さい。
【藤垣委員】  いいですか。
【奈良主査】  はい、お願いします。
【藤垣委員】  資料3に関して、基本理念は非常によく書けていると思います。ただ、2の方針に落としたときに一番欠けているのは、責任ある研究・イノベーションの推進主体は誰かということです。推進主体は別に公的機関の科学技術推進者だけではないはずですよね。つまり、大学とか公的な研究機関だけではなくて企業の研究者もResponsible Innovationの担い手だけれども、その辺の視点が余り入っていないと思います。例えば四つ目の白丸の「責任ある研究・イノベーション」とはというところで、科学者・技術者、これ、個々人ではなくて、やはり企業の研究開発現場にも声が届くようなものであってほしいわけですよね。その辺が基本的方針の中で余り書き込めてないことかもしれないと思います。
 それをどう書くかは非常に難しくて、例えば国際的に存在感ある日本になるためには、企業におけるイノベーションにおいてもResponsible Innovationは各企業でどう考えるのかをCSRの枠組みの中でどれだけ考えられるかとか、何かそういう形で企業の研究部門の人を誘い込むようなものをどれだけ書き込めるかということですよね。CSRは、Corporate Responsiblityに関してはもうかなり進んでいます。環境に配慮する、という形ではかなり動いているはずなんですが、では、それが環境以外のいろいろな側面の研究開発にどうやって応用していけるだろうと。だから、一部には、もう既にResponsible Innovationできているところもたくさんあるんだけれども、それを環境以外のところにも敷延していったときに何ができるだろうかということも入れ込まないといいけないだろうなと思います。
【平川委員】  恐らく企業とかマーケットを考えたときには、CSRという観点だけではないと思います。今日では、CSRの考え方自体もある種、企業の、昔のものでいうとメセナ的なものじゃなくて、むしろ本業の中で位置付けていくというのがだんだん定着していると思います。だから、CSRというコンセプトで切るだけじゃなくて、オープンイノベーションというコンセプトで考えるのも企業の巻き込みという点では重要なのかなと。
 つまり、オープンイノベーションを行うことでよりマーケタビリティーが上がる、市場性が上がる、需要が発掘できたりとかいうところで、企業の本業にちゃんとそれが還元できるんだと。それゆえに、利益を追求する組織体としての企業のインセンティブを高めていくということも、責任ある研究・イノベーションというのを単にお題目ではなくて実行できる形にする大事な切り口じゃないかなと思います。ですので、オープンイノベーションというコンセプトは、ほかのところでも多分入ってくると思いますけれども、CSRに加えて挙げておいた方がいいかなと思いました。
【奈良主査】  ありがとうございます。
 資料3につきましていかがでしょうか。
 確認ですが、資料4の四つ目のポツで、前回の安連委員会では片田委員が、萌芽的な最先端の科学技術に関わる問題だけじゃないんだ、ステークホルダーも明確な例えば防災のようなものについても扱うべきではないかということを発現されました。枠組みの中にこのような点を入れていくということについて、あるいは入れないということについて何か御意見ありますでしょうか。
 そのときの安連委員会ではたしか三上委員は、それを入れた、普遍的な枠組みを作るということに手を挙げられていたと記憶しているんですが。
【三上委員】  そうですね。たしか小林先生のまとめ方もそういった狭い意味でのイノベーションというか、新興技術じゃなくて、社会としての新しい知恵の作り上げ方というのを考えていきたいというようなことをおっしゃっていたかなと思うので、そういうものも含めてできるといいかなというか、しないといけないんじゃないかなと思ってきょうは来ました。
【奈良主査】  それをすることが、さっき三上委員がおっしゃった、今4年たってこういうことを議論することの意義を果たすことでもあるというふうな、そういう理解ですかね。
【三上委員】  そうですね。やっぱり現実の問題に直面して、そこでどういうふうに振る舞ったらいいのかということをいろいろなところで試行錯誤されてきてということがこの間あったんだと思いますので、そういうものに対する回答と言ったら変ですけれども、指針なり具体的な取組の提案をするということをやっていく必要があるんじゃないかなと思います。
【奈良主査】  ありがとうございます。何か普遍的な枠組みをということについては、藤垣委員はいかがでしょうか。
【藤垣委員】  片田委員がおっしゃっていた、ステークホルダーの明確な防災も入れた方がいいと思います。それは恐らくイノベーション概念をちょっと広げることになると思います。つまり、普通、私たちはイノベーションというと、研究開発の現場におけるイノベーションのことを考えてしまうんですが、片田委員がおっしゃった、防災のシステムをより良いものにどうしたらいいかというのは、システムのイノベーションだったり、ガバナンスのイノベーションだったりするわけです。だから、そういうことも含めた意味でのResponsible Innovationということを考えた方がいいだろうなと思います。
【奈良主査】  ありがとうございます。横山委員は前回の議論は聞かれてはいないんですけれども、いかがですか。
【横山委員】  今の委員皆様の御意見に賛同いたします。そのとおりだと思います。
【奈良主査】  ありがとうございます。
 それから、資料4の一番最後のポツについてです。前回の安連委員会で田中委員からデジタルヒューマニティーについての御意見をいただきました。これについてはどうでしょう。皆さんから追加の御意見等ありますでしょうか。では、具体的に各論という形で扱うという方向でよろしいでしょうか。またありましたら、後でおっしゃってください。
 最後に、この資料3についてこれだけは言っておきたいというところがあれば。
 では、今から後半に今から移ろうと思うのですが、その中でまた戻って御発言いただいても全然構いませんので、そのようにさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
 では、続きまして、具体的な取組の方に、後半の議論に移っていきたいと思います。資料3でいうと4ポツ以降です。今後の社会と科学技術イノベーションとの関係深化における具体的な取組例、ここ以降について議論をいただきたいと思います。
 ここの議論をするときに非常に有益な示唆を前回の安連委員会で頂きまして、それが資料4の各委員からの意見の2ポツと3ポツに当たります。これには三上委員や山口委員が発言してくださったと記憶しています。対話やコミュニケーションを行う際の具体的な出口のイメージを持つことで、効果的な議論ができるのではないかという、そういった御意見です。
 この点も含めまして議論を深めていただくために、ここでお二人の方にレクチャーを頂きたいと思っています。まず平川委員の方から、事務局から説明のあった具体的な取組例を更に具体化したものを御紹介いただきたいと思っています。その後に、今度は科学コミュニケーションセンターの柴田事務局長から対話支援システムについて御説明を頂きたいと思っております。
 ではまず最初に、平川委員、よろしくお願いします。
【平川委員】  説明させていただきます。最初見ていただく資料は資料5-1と、それから、参考資料1と2がございます。それからさらに資料5-2があります。これをまとめてお話をしていきます。
 まず資料5-1ですけれども、これは先ほどの資料3の論点の4ポツにある(1)から(5)、一つだけ最後の、先ほどの資料3の4ページ(5)の中にマル3の市民参加型研究(シティズンサイエンス)だけ、これちょっと特出ししまして(6)という位置付けになっていますけれども、構成としては4ポツの構成と同じ形でそれぞれのスライドができています。要は、この4ポツに並んでいること、(1)から(5)、あと(6)も加えて、それぞれに関してより具体的なイメージの湧くものを並べてあります。
 まず一つ目、資料5-1の1ページ目ですけれども、こちらが共創・共治に向けた多様なステークホルダーの対話についての取組例です。目玉の一つは、そうした対話を支援する組織が必要なのではないかということで、その対話支援組織の機能を充実させる取組として、国は、政策や研究開発における多様なステークホルダーの参画促進のため、以下のような機能を持つ対話支援の組織的な機能を充実させるということでaからiまで挙げています。これについてはまた後ほどJSTの科学コミュニケーションセンターの柴田事務局長から対話支援システムについて御説明がありますので、詳細は省かせていただきます。
 さらに、そうした対話の支援を行う組織だけではなくて、それをある種ハブとする形で広がる対話ネットワーク、つまり社会の中で多様な対話の場を作り、政策や研究開発への参画に対する意識の醸成、日常化、また緊急時に向けた準備のため、国は、科学館、公民館、図書館などの社会教育施設における対話ネットワークを構築するということも必要です。その役割、機能としては、そこのaからeにあるようなものが想定されます。
 次に、3ページ、(2)ELSIへの対応及びリスクコミュニケーションの強化のための取組、これに関しても幾つかあります。例えばELSI研究等の推進ということに関しては、国は、研究開発プロジェクトの事前評価において、サイエンスメリット、学術的な観点から見たメリットだけではなくて、研究活動やその将来の成果に関するELSI、つまり、倫理的、法的、社会的な課題、インパクトや、またリスクや多様性の確保等社会の求める事項まで含む幅広いインパクトを評価項目として設ける。これはもちろん扱う研究テーマに応じて変わってくるわけですけれども、射程としてはそこまで含めて考えるということなども盛り込んでいます。そのほか、研究者の評価や支援体制も入っています。
 次に、4ページ目の(3)の人文学・社会科学との連携。これについては、人文学・社会科学と自然科学の研究がうまく連携して相乗効果が発揮できるような様々な取組、仕組みを整備していこうということで幾つか挙げていあります。ここには特に書いておりませんけれども、例えばアメリカのNSFでは、Socio-Technical Integration Researchというプロジェクトの中で、人文社会系の研究者が理工系の研究室、ラボラトリーに何か月か滞在して、理工系の研究者たちと日常的にいろいろな議論を行う。そうすることで、理工系の人たちが、従来自分たちだけでは考えなかったような、自分たちの研究が持っている社会にとっての意味、プラスの面もあれば、場合によっては何か問題的なものもあるかもしれませんけれども、そうした両面の社会から見た自分たちの研究の意味を研究者自身が考えるようになり、それをやがては自分たちの研究計画の中に反映させていって、その結果、例えば研究の様々な評価指標の観点から見たパフォーマンスも上がったというような事例がございます。
 そうしたことも含めて、人文科学・社会科学と自然科学との連携、これはコンテクストとしては、イノベーション、研究を行うという面もありますし、レギュレーションあるいはガバナンス、研究が生み出す様々な問題・課題に対応していくという面もあります。どちらの場合でも社会が関わってきますので、人文・社会科学との連携必須であり、これを何か具体的な形で展開できればということで、ここに書かせていただいています。
 次は、(4)社会と科学技術イノベーションをつなぐ人材養成及び確保です。これは大きく分けて、職業としてのということと、あとは職能としての――職能としてのというのは、それぞれ例えば自分自身は普通に例えば生物系のウエットな研究者である、日々実験をしている研究者であるけれども、同時に科学コミュニケーションに関わるような活動も行っている。あるいは、何か科学コミュニケーションに関わるようなイベントをやるときに、自分自身は一から十までできなくても、例えばファシリテーションに関してはプロのファシリテーター等がいますので、そうした方たちにうまくアウトソースしながら連携してイベントなど行ったりする、そういうことができるような職能としての科学技術コミュニケーション能力、これを涵養するための仕組みをここに盛り込んでおります。
 次が(5)科学技術コミュニケーション活動の推進で、マル1からマル3があります。細かいのはいっぱいあるんですけれども、あえてここで言及するとすると、マル3の国民の科学技術リテラシーの向上に関しては、例えば3ポツ目で「国は、情報弱者、デジタルネイティブなどの多様な国民のニーズを把握し」ということが書いてあるんですけれども、これは、先ほど横山さんがおっしゃったような例えば貧困家庭とかの子供たちが科学に触れたり学習したりするような機会をどう確保するか、そのための社会教育施設であったり、場合によっては企業や財団なんかとの関係なんかも含めてうまくサポートできる仕組みを考えることもここに入ってくるのかなと思います。
 それから最後が市民参加型研究、いわゆるシティズンサイエンスです。これに関しては、例えばオープンサイエンスとか、よりプロダクト指向あるいはサービス指向でいくとオープンイノベーションということになるかと思いますけれども、そうしたことは第5期の基本計画の中でも恐らくフォーカスが当たってくる話でもあります。また、実際にこれは理念を政策として打ち出す以前に既に始まっているものでもあります。社会の中でオープンサイエンスの取組はたくさんあります。またオープンイノベーションの取組も企業等様々行っているところもありますので、そうした動きをいかにより加速していくか、そのために国として政策として何ができるかという観点でいろいろと考えられたと思っております。まだここには細かいことは書いていませんけれども、方向性としてはそういうことでこの(6)を入れてあります。
 それから、今述べたように非常にたくさんのことが書かれているんですけれども、これを少し網羅的に見やすいようにしたものが参考資料2です。参考資料2は、RRI、責任ある研究・イノベーションを三つの輪、知識創造、研究とイノベーションそれ自体と、あとは、それのいろいろなかじ取り、ガバナンス、それから、その両面に関わるコミュニケーション、それが交わるところに共創・共治があるという位置付けでこの三つの輪を考えています。
 ここに、これまでの第4期の基本計画で社会と科学技術イノベーションとの関係深化に関わる方策群、これは、第4期基本計画の中でも第5章に様々盛り込まれておりますがそれを当てはめると、第4期基本計画と書いてあります図のようになります。
 また、今年の2月に中間取りまとめが出ております、文科省の総合政策特別委員会で第5期に向けて打ち出されている社会と科学技術イノベーションとの関係深化、この中間取りまとめの中では関係強化という言葉を使っておりましたけれども、そこに盛り込まれている施策・方策群を同じくこの図の中にまとめるとこの図になるという形になっています。こういう形で整理できるということです。
 さらにこれをいわば合わせる形で、今紹介しました具体的な取組例あるいは先ほどの資料3の4ポツの方、そこに書かれていることを並べていくと、第4期基本計画+総合政策特別委員会中間取りまとめの図になります。この中には、今回のここで扱っております推進方策の対象外である責任ある研究活動、いわゆるResponsible Conduct of Research、研究公正や研究倫理はここでは扱っていませんけれども、それも含めてこの図の中に入れてあります。
 そして、これを更に整理したものがもう1枚あります。参考資料2の最後の図が、この作業部会で検討する社会と科学技術イノベーションの関係深化に関わる推進方策の要素として抽出したものです。
 それからもう一つ、参考資料1、これは(1)から(6)までベタッと並んでいるものを、対話を推進するということから、優先順位といいますか、めり張りを付けたものとして整理すると、こういう形でできるのではないかということで作成したものです。この対話は、先ほど主査からも確認ありましたように、いわゆるエマージングな萌芽的な科学技術に関する未来志向の対話だけではなくて、今現在の問題あるいは差し迫った様々な災害のリスクとかそうしたことに関する問題なんかも含めて広くイノベーション、知識の共創・共治に関する対話、その全般に関して、対話というところに推進の目玉を置きまして、それを推進するための具体的な方策としてこのアプローチとかファンデーションの方策を位置づけるとうまく全体、(1)から(6)の取組が整理できるんではないかということでこの図を作ってみました。
 最後、駆け足になりますが、資料5-2、こちらは、そうした対話あるいは協働ということも入ってくるかと思いますが、その対話や協働の出口を考えるために、対話を中心に支援を行うとしたらば、どういう形で対話、協働を具体的なことにできるのか。先ほど三上委員がおっしゃっていました言い方でいうと、単に理念だけではなくて、その振る舞い方、いわば理念を行動に読み替えていく、翻訳していく、落とし込んでいくための整理の枠組みとしてこの分類枠組みを作ってみました。これは後ほどJST科学コミュニケーションセンターの柴田事務局長から説明あります、資料6として配ってあります「科学コミュニケーション案内」の中に科学コミュニケーションの分類の図がありますが、これをある程度参考にして、対話、協働に即して並べたものです。
 第7回の安連委員会の各委員からの意見の2ポツ目、具体的な取組例では科学技術のタイプや段階、関与者、応答方法などのカテゴリーを類型化してイメージを持つことで効果的な議論ができるではないかということもありましたので、それを踏まえて主題のタイプであったり、主題の性格であったり、またいつその対話が行われるのか、物事のフェーズであったり、また、その対話の目的や、また扱っている知識、これはきょう最初の方で藤垣委員からもお話がありました不確実性の問題も含めての話です。あとは、対話の主体、誰と誰の対話なのかとか、また対話を主導的に行っているのは誰なのかということなども含めています。あとは、対話に関わる参加者の数、少人数なのか中規模なのか大人数なのか、より社会に広く不特定多数なのかというところで分類できるんじゃないかなと。
 また、この分類の図の見方なんですけれども、例を付ければよかったんですが、要は、例えば自然災害とか疾病に関わる対話ということであれば、それに応じて、じゃ、主題の性格は科学的な話なのか、つまり、地震のリスクがどのぐらいなのかとか、あるいは防災の仕組みとして技術的な話なのか、それとも、何か政策的な話なのか、またそこでの価値のすり合わせという意味で規範的な話なのかとか、そういう形で順番に問題を切り分けて整理していって、どれに当てはまるかということで具体的な対話の支援、対話を成り立たせるための要素は何かということを考えることができるんではないかなと、そういう形でこの図は使っていただければということで今回紹介させていただきました。以上です。
【奈良主査】  ありがとうございます。それでは続けて、柴田事務局長、よろしくお願いします。
【柴田事務局長】  はい、よろしくお願いします。では、資料っぽくないんですが、「科学コミュニケーション案内」という冊子の、44ページと45ページを使って簡単に説明させていただきます。こちらの冊子は、我々が平成24年度にJSTの中に科学コミュニケーションセンターを立ち上げて3年間調査研究事業ということで行ってきた、成果集ではないんですけれども、その中のエッセンスとして、科学コミュニケーションって何だろうという初心者の方向けに分かりやすくまとめたものです。
 この中の44ページ、45ページをお開きいただきたいんですが、今お話のございました対話システムというところです。これ、実際は平川先生等の御尽力があってできたもので、私ごときがここでお話しするのも何なんですが、簡単に説明させていただければと思います。
【平川委員】  三上さんが特に対話システムに関わっています。
【柴田事務局長】  いろいろな対話、上に組織があって、下に赤で対話と書かれているんですけれども、世の中でいろいろな対話がそれぞれそれなりに行われているという実感は私も持っています。一方で、個別に行われて単発で終わっているんじゃないか、行事で終わっている、やっぱりムーブメントになってないであろうと我々も実感しています。社会で行われた対話が一つのエコシステムとして捉えられていくことでもっと大きな力ができるだろうということで、書いているとおりですけれども、英国のサイエンスワイズ事業を参考に対話支援組織を活用した対話システムの在り方ということで簡単にまとめたものがこのページです。
 対話支援組織として絵が左側にあって、右側にその説明が書いてあるんですが、アクションとしては、議題の探索ないし提案です。社会の中で広く議論される必要がある科学技術と社会の課題を探索し、提案する。これは、結構難しいことだと思いますが、こういったアクション、ないしは、科学者や政策担当者の皆様からの相談を受けて、問題を整理して解決に向けた対話のデザインを行うこと。このようなところが出発点かと思います。
 具体の対話に向かって、サポートを行うということで、専門家やファシリテーターの紹介を行ったり、対話のためのツール開発を行ったり、場合によっては資金提供等、必要なリソースを提供して場作りをサポートし、実際の対話の実施を行うということで、この実際の対話に関しては議題や目的、場作りの主体、参加者などに応じて、グローバルなもの、ナショナルなもの、非常にローカルなもの多々あるかと思うんですが、いろいろな形で行われていく。
 具体には、グローバルですと、我々の方で6月にやりますWorld Wide Viewsという世界市民会議の取組とか、ナショナルですとマルチステークホルダーの対話、ローカルですとさんかく△テーブルという、これ、大阪大の八木先生が開発されたものとか、我々の日本科学未来館で今、OPINION BANKというものを出しましたがそういった取組とか、個別にはいろいろあるかと思っています。
 そういった行われた対話の次はアーカイブということで、対話の結果を蓄積し、可視化、これが今、やっぱり弱いと思っています。いろいろなことと比較をしたり、あるいは対話を基に発展的な対話の場、1回で終わらないで、それをどう生かしていくかという、その場を作ったり、それによって新しい知見、提案、情報の開発につなげていく。さらには、その場合は分析をして、例えば政策立案のための参照情報になったり、新しいアジェンダになったり、新しい対話の手法の開発だったりというようなこういう循環が起きて初めて世の中の大きなムーブメントになっていくんじゃないのかということでの在り方と考えています。
 さらに、JSTということで我々はファンディングエージェンシーでございますので、ここには書いてないのですが、対話のところに自然科学系の研究者の方々に、今まで以上にどのようにして御参加いただくかというのが課題でございます。そのような方々に御参加いただき、まさにアーカイブ分析を通じて御自身の研究に何かを持ち帰っていただいて、それがイノベーションエコシステム的な一環にも寄与するんではないのかなと、JSTの中でそういうことも考えていきたいと思っています。3年間の調査研究の中でこういうものを作ってきましたので、我々もこういう方向で文科省さんと一緒になって頑張っていきたいと思っております。以上でございます。
【奈良主査】  ありがとうございます。それでは、ただいまお二人から頂きました情報を踏まえまして、具体的な取組例の意見交換をしていただきたいと思います。冒頭部分で事務局からも説明がありましたように、この取組例は若干網羅的に記載されているものであります。このとき大事なことはリソースに制約があるということです。したがってそれを踏まえて優先順位を付けるということになりますのでどれを打ち出していくかという議論もしていただきたいと思います。また、第5期の科学技術基本計画が始まった際に具体的にどう進めていくのか、そういった実効性の点もしっかりとにらみながらですね。もちろんこの資料の具体的取組はどれも重要ですし、どれもできるといいなと思うわけなのですが、リソースの観点、実効性の観点も踏まえて御意見を頂ければと思います。
 きょうはここに結構時間を配分していますので、是非どうぞ御意見お願いします。
【平川委員】  意見というわけではないですけれども、方向性としては、それぞれの主体、科学者とか、あるいは行政の中のポリシーメーカーであったり、あるいは一般の市民だったり、親だったり子供だったりとかというのが、どうやったらこれを自分ごととして魅力を感じてもらえるか、あるいは必要性を感じてもらえるかという、そこを一つ着眼点として何か具体的なものを出していただけると。あとは、先ほどの理念を行動にというところであると、こういうことができるようになるというような観点で考えていただけるといいかなと思います。
 いかがでしょうかね。
【横山委員】  それでは。
【奈良主査】  はい、お願いします。
【横山委員】  平川委員の資料5-1で5ページの(4)の社会と科学技術イノベーションをつなぐ全体要素及び確保というところで、質問といいますか、私自身悩んでいるところなので是非皆様の御意見を伺いたいんですが、丸1として職業としての科学技術コミュニケーターの養成及び確保という項目がございます。いろいろな大学機関でも、あるいはMiraikan、科博でも養成を頑張っていらっしゃると思いますし、私の周りにも希望する学生がたくさんおります。だけれども、彼らは就職がないということが分かっているんですね。これは非常に大きな問題で、やはり人材を養成する大学としては、そこの道筋は、もちろん自己責任ではあるけれども、無責任ではいられないという点は非常に大きいものとして感じております。
 私たちの夢見る未来の将来像とやっぱりそこに関わってくる人々の将来の現実と重要性というのを我々なりに責任持った形で提案するときに、この養成及び確保というのをどれぐらい押していいかという程度問題はかなり気を付ける必要があるのかなと感じております。
 また、丸2については本当にそのとおりだなと思います。私も大学で研究者になる人たちと一緒にいろいろな議論をこのようにしておりますが、今一連の御議論は、私にとっては非常に勉強になり、非常に心地良いなという感じを受けているんですが、恐らく現場の科学者にとっては、全くなじみのない、受け入れにくい要素がかなりあるんじゃないかと想像します。なので、丸2をまず科学者の辺りから浸透を徹底していくというところはかなり現実的であるし、やるべきことであるのかなというふうに思いまして、どちらかというと丸1と丸2の程度問題でいいますと、丸2というところなのかなと思っております。
 あとは、まだまだ不勉強でございますが、最近の潮流として、やはり科学者と多くの人々が直接インターネットを介してつながっていく社会においては、やはり科学者がどう振る舞うべきか、信頼問題とも関わってその辺りも重要になってきますので、程度問題としては多分丸2からというのかなという印象を持っております。もちろんコミュニケーションセンターとか様々な各所で御努力があると思いますので、総合的に御議論いただければと思いました。ありがとうございます。
【奈良主査】  ありがとうございます。
【平川委員】  よろしいですか。
【奈良主査】  お願いします。
【平川委員】  恐らく今おっしゃったことは結構大事なポイントで、実はこれの第7期の安連委員会の下にリスクコミュニケーションに関する推進方策の作業部会があったんですけれども、そこでもやはりこの人材育成に関して職業なのか職能なのかという話になって、やはりそこは職能が大事なんだろうと。職業ということで考えると、今おっしゃったようにジョブマーケット自体がなかなか大きくないのでなかなかそれで食べていくことができないということがありますから、やはり職能というところが大事なのかなと。それはやはり今回の場合でも同じになるんだと思います。
 他方で将来的なことを考えると、ある程度職業として食べていける人も成り立つような形で、ジョブマーケットといいますか、オープンイノベーションとかオープンサイエンス、オープンな形での対話、共創・共治ということでお金が回るような仕組みを作ることが必要でしょう。例えば政策を作るときにそういうオープンなやり方をする。その際に、財源は税金になるわけですけれども、とにかく政策を作るときにそういったところにコストをかけるようにする。
 あるいは、企業が何か新しいサービス開発、商品開発をする際にそういうオープンなプロセスをとったり、産学共同の中でそういう仕組みをやっていく。例えば近年文科省の取組でも進められているCenter of Innovation、CoIの取組の中でも、ある種オープンイノベーション的なことも入っていたりしますので、そういうところで実際に企業と大学が連携してオープンな取組を進めていく。その際に、例えばファシリテーターをやるような人がそれなりに必要になるわけですがこれを大学の中の人がすべてやるというのはかえってコストがかかってしまったりするので、そこはアウトソースする。そうやってアウトソースする関係を作っていくと、ある程度のジョブマーケットができてくると思います。
 そうやって、対話という手間をかけることが良いものを生み出すための必要なプロセスなんだと、そこにお金をかけることが大事なんだという認識が、社会のあちこちでできるようされていくと、それなりにお金が回って人件費も出やすくなるのかなと。ちょっと遠い話ですけれども、そういうことまで考えないと、多分ここは成り立たないことだと思います。そういう意味では、文科省の範囲を超えてしまうことかもしれませんけれども。
【奈良主査】  そうですね。その辺は、一つ目の、理念の方の、枠組みの方のエコシステムを作るのとも関係しますし、あとは、対話支援組織の具体的な活動とも関係しそうですね。
【平川委員】  そうですね。何のためにやるのかという。
【奈良主査】  ありがとうございます。
【三上委員】  教育は、こういう人材を作りたいと思ってポッとできるわけではないので、今、平川さんがかなり長いスパンの話になるとおっしゃいましたけれども、やっぱりそこは当座何をやるかという議論をここでしていると思うのですが、本当に十年の計とかそういう感じで10年20年というスパンという多分考えなければいけないんだろうと思います。
 今、オープン化の支援者というのを、例えばそういう人材を育てていって、そういう人が仕事できるような場所を作っていくというような一つ方向があるんじゃないかというお話だったと思います。平川さんのペーパーの中で言うと対話支援組織の話が(1)の丸1にありますよね。今の平川さんの話を伺っていて思ったのは、そういうオープン化を支援する仕事をするような人の動き方の一つの特殊な形がこの(1)の丸1の対話支援組織なのかなと思ったんですけれども、そんな理解でいいんでしょうかね。
【平川委員】  そうですね。
【三上委員】  というのを思ったのは、(1)で主語が「国は」となっているじゃないですか。多分それは政府できちんと取り組むような仕事なんだろうなと思う一方で、国が充実させるとか国が構築するというだけでは多分間に合わない部分もきっとあって、そこは例えばここにいる人は皆さん大学に勤めていると思いますが、大学もすごく大事なプレーヤーになるでしょうし、民間の団体とか、それから、先ほど出てきていた企業もすごく大事なプレーヤーになると思います。
 もちろんそういう取組を、そういう対話の支援を政府として支援するというようなことは必要なのかもしれないなと思いますが、でも、それも先ほどの平川さんの人材育成で出た話でいうと、あくまでも科学をオープン化するとかオープン化を支援する活動全体の中で最初に力を入れるべき一つの分野だ、と位置づけたらいいのではないか。そんなふうに整理すると、課題というかのでしょうかね、位置付けがはっきりしてくるのかなというふうにちょっと思ったという話です。
【平川委員】  そうですね。この対話支援組織というのも、今回推進方策という、文科省として何をするか、国として何をするかということでこういう限定にある程度なっていますが、それが結果的には全体のビジョンとしては、あちこちで自発的に、民間でやっていること、例えばNPOやLLPとして社会起業的にやったりとかも含めて、自由に動いているものを全体として底上げしていく、サポートしていくことにつながればいいと思います。そうした全体のエコシステムがうまく活性化するように国の施策をうまく入れていくというイメージになるかと思います。
 あとは、さっきちょっと言い忘れたんですが、職業としてというところでいうと、普通に例えばいろいろな民間企業に入っていって、民間企業の中でいろいろと商品開発、サービス開発とか、ビジネスをやっていく中にこういうコンセプト、やり方を入れ込んでいく。そこで新たにビジネスを作っていってもらうというのもありなのかなと。必ずしもコミュニケーターとして食べていくのではなくて、どこかの例えば広告代理店とか、あるいはいろいろなコンサルタントなんかの社員としてそういう力を発揮していくというやり方も、そういう意味では職能と職業の混ざった感じのイメージもあるのかなと思います。
【奈良主査】  私からもよろしいでしょうか。先ほど長いタイムスパンで人材育成、教育は考えなければいけないという御意見があって、私もそのとおりだと思います。無論、ある期間例えば3年間、5年間で一定の結果は出さなければいけないとは思いますが、私は、平川委員の作ってくださった資料5-1の6ページ目の(5)の科学技術コミュニケーション、特に丸3の国民の科学技術リテラシーの向上というのは、やっぱりここでしかやっていないし、ここがやらなければいけないのかなと思います。
 ここで言う科学技術リテラシーというのは、良質の対話とか良質の共創を行うときの要件になっていくと思います。システムというのは要素と要素及びその関係性の総体ですよね。エコシステムの最小の単位、要素とは何かというと、やっぱり個々人になっていくと思うのです。その個々人のリテラシーが高いことはやはり全体のエコシステムの底上げにつながって、それが良質の対話や良質の共創につながっていくと私は思います。ひいては、イノベーションにつながっていくと思うのです。
 そのときの私の考えている科学リテラシーというのは、各分野の、例えば物理学とか有機化学といったある分野の専門的な知識ではなくて、つまり、科学技術基本計画の第1期で理解増進が言われたあの頃の、理科離れ・科学離れが甚だしいからそういった知識を与えようという意味合いでの科学リテラシーではありません。分野横断的に汎用性がある科学についての知識なんです。例えば先ほど藤垣委員もおっしゃってくださった不確実性の問題とか、科学の暫定性の問題とか、反証可能性とか、こういった分野横断的に知っていなければいけないことというのは科学にはあるはずで、そういうリテラシーを国民の皆さん、私たちも含めて身に付ける必要があると思っています。
 少し科学リテラシーについて振り返ってみますと、第1期、第2期の頃から、先ほども申し上げましたように若者の科学離れが進む中で、「科学技術の智プロジェクト」というプロジェクトが行われました東京理科大の北原先生が主査で随分立派な報告書をまとめてくださっています。数理科学、生命科学、物質科学など7分野のリテラシーについてまとめたすばらしいもので、報告書が現場での使い勝手良くなるようにと、その後も有志が活動を続けていますその全部を、7冊の報告書すべてを一人の個人が読むのはやっぱり無理なんです。そこで、それらに共通する、横串になっている科学の本質とかそういったものについて理解するということが今求められている科学リテラシーだとかなと私は思います。
 それがどう対話とか共創に結び付くかというと、例えば原発とか再生医療とか食品安全について対話をしましょうという場合には、対話のテーブルで資料を提供して、あるいはレクチャーをして、あるいは自分の思っていたことを踏まえて対話をするということが多いかと思います。そこであらかじめ、科学とは暫定性、不確実性があるんだということとか、基準というのはあるものではなくて作るものなんだということとか、そういう知識を個人がリテラシーとして持ってテーブルに着くことによって、対話の質は随分違ってくるでしょうし、「共に創る」ということの中身も違っていくと思うのです。そういった科学リテラシーというものをいま一度精査して、「科学技術の智プロジェクト」の報告書なども精査しながら、今の科学リテラシーを考えて作っていくということをすべきだなと思っています。
 もちろんその際に、さっき横山委員や平川委員がおっしゃった、いろいろな多様性に富んだ国民の方がいらっしゃいますので、そういったことにも目配りをした科学リテラシーの育成も必要です。それを含めて科学リテラシーの中身の検討、これをいま一度行う必要があると思っています。こういった科学の本質についてのリテラシーを持っていることは異分野の人とも話ができるパスポートのようなものになりえます。そうすると、イノベーションにつながる何らかの手助けになるのかなと考えています。
【三上委員】  よろしいですか。今の点にすごく賛成で、しかもここでやろうとしている関係深化の方針とすごくマッチしている話かなと思ったのは、今みたいな科学についての理解って、何か本を読んで覚えるとか理解するというよりは、やっぱり対話をしながら身に付いていくものなのかなと思ったんです。
 勤めている大学でサイエンスカフェという催しを企画するという仕事を数年やっていたことがあるんです。そこでもちろん登壇する研究者は、今、自分の部屋でこういう研究やっていますとか、こういう論文書きましたみたいな話もするんですけれども、今、奈良さんがおっしゃったような、科学ってこういう方法で実験するんですとか、あと、実験するために例えばこれだけのお金が必要でこうやって研究費をとってきますみたいな科学の手続だとか、科学というのはどういう社会的な営みなのかみたいな話も一緒にするわけです。サイエンスカフェ自体は非常に短い催しですが、科学者ってこういう人だったんだとか、こんなふうにやっているんだみたいなことも一緒に味わって、帰ってもらうというような対話の場になっていました。
 確かに論文でどういうことを発見したかみたいなことは、それは新聞記事を読んで理解するとか、教科書読んで理解するということはできるかもしれませんけれども、まさに今言われたような、科学の手続がどういうものであってとか、科学というのが社会的にどういう営みかみたいなことというのこそ、まさにそういった対話を通じて身に付くというか、理解できるものなのかなと思います。もちろん対話のテーブルに着く前にそういう知識が前提としてあるのも望ましいんですけれども、対話を通じてこそ身に付きやすいと言ったらちょっと変ですけれども、やっぱり理解が深まりやすいことなのかなと思うので、そこを強調していくというのは今ここで議論しようとしていることとすごくフィットするなと思って伺っていました。
【奈良主査】  対話を通じて身に付いていくし、身に付きやすいものであるということですよね。
【三上委員】  何かそういう実感がありますよね。だから、例えば分かりやすく言うと、目の前に例えば科学者が来て、こんなふうにこの研究は進めていますとか、社会的な営みとしてこの研究を成り立たせるためにこういう問題があるんですというようなことを話される。そういうことを聞くというのがやっぱり今、奈良さんが言われたような意味での科学リテラシーを深めていくには有効だなという感覚を持っているので、ちょっとそういうことを思いました。
【奈良主査】  これは対話支援組織の活動とも相当関わってくると思います。ここからも支援するというような組織であるということで。
【平川委員】  よろしいですか。今おっしゃったことをちょっと別な観点から整理すると、対話の目的というのが、先ほど資料で紹介させていただいた中では細かく七つぐらいに分けているんですけれども、もうちょっと大ざっぱに三つに多分分けられると思います。
 一つは、今、三上委員と奈良主査が議論されていたような、何かを知る、何かを理解するための教育的な目的。つまり、単にレクチャーで聞いているだけ、あるいは何か読んだりするだけではなくて、対話的なプロセスを通じてこそより理解が深まるという、理解を目的にしたものと、それから、何かソリューション、それは技術的なソリューションかもしれないし、政策みたいなソリューションかもしれないし、自分たちの自治、コミュニティでこういうことをやっていきましょうという社会的アクションという形でのソリューションかもしれませんけれども、とにかく何かソリューションを導き出すためにみんなで知恵を出し合う、議論するというもの、それが二つ目です。あとは、三つ目は、お互いの信頼とか、あとは、リスクコミュニケーションなんかで結構重要になってきますけれども、何か事件、出来事があって、いろいろとお互い対立したり断絶が生じた後の回復期での和解とかを目的にしたものがあるのかなと。
 対話支援として何が必要かと考えるときに、例えば今の三つの目的それぞれで何が必要かというふうにも整理できるのかなと思いました。理解というのがやっぱりここの中では、リテラシーということとして従来やってきたことをより発展させるためにも対話が使えるという点では非常に射程の大きな話だと思います。
【三上委員】  今の枠組みというのはあれですよね、例えば2時間のワークショップが一つあって、その中にもそういう三つの要素があるみたいなふうに考えてもいいいわけですね。
【平川委員】  そうですね。
【三上委員】  もちろん今回は主にソリューションについて議論しますみたいな場合もあるけれども、何か対話の持っている機能というか、そんなふうに考えたらいいんですよね。
【平川委員】  そうですね。実際何かソリューションを出そうとしているけれども、そこでいろいろと理解が深まっていくというプロセスもあるでしょうし、信頼関係ができていくということもあるでしょうから、そこは全部ばらばらにあるわけじゃなくて、多かれ少なかれ重なっている。
【三上委員】  そうですよね。その直上の、今さっき触れられていた丸3の上の丸2にあるところに社会教育施設の話が出てきますけれども、例えば公民館での活動なんて考えたら、ほんとそうですよね。
【平川委員】  そうですね。
【三上委員】  多分そこで取り組まれていることは本当に抜き差しならない地域の問題で、それをどうにか解決しようと思ってみんな公民館に集まってくるんですけれども、でも、それをやる前提には、やっぱり問題をきちんと理解したりとか、そこに集まる住民同士できちんと信頼関係ができてなければいけないということだから、やっぱりそれは一つの対話という中にそういういろいろな側面があるということですよね。
【平川委員】  そうですね。恐らく実際にこの4年間で考えてみても、そうした取組、例えば放射線の低線量の問題なんかに関して特に東日本各地、福島中心にいろいろな各地でそういうことをやってきた専門家は、名も知れない方で結構いっぱいいらっしゃると思うんです。そういうところでやっているのはまさにそういうことで、理解を広める、だけども、同時にそこで信頼関係を築いたりとか、場合によっては何か問題を解決しなければいけないというソリューションを一緒にみんなで考え出すとか、そういうことは実際に実例としてたくさん起きた話であると思いますので、何らかの形でこの対話支援の中で大事な財産として可視化できるといいですね。
【奈良主査】  そうですね。
 いかがでしょうか。網羅的といってもやはりそれぞれが関連しているなというふうにも思うわけなのですが、藤垣委員、いかがでしょうか。
【藤垣委員】  これは、最終的には資料3の4ポツをどうまとめるかという話にすればいいんですよね。
【奈良主査】  そういうことです。
【藤垣委員】  今、資料3の4ポツの(1)、(2)、(3)、(4)、(5)は、今ある施策を単位にして分けられているのだと思います。でも、本当は基本理念から作っていかなければいけないので、基本理念の1から単位を作るもう少し再整理ができそうで、少なくとも三つに分けることができると思います。
 一つ目は、研究推進側への教育です。ですので、研究者教育、研究者の社会的リテラシーをどうするかという話ですね。これに相当するのが、現在の(2)のELSIだったり、それから、(3)の連携型取組になるかと思います。二つ目が国民の側の教育で、国民はどう振る舞うべきか、国民の科学リテラシーの中身をどうするか。先ほど奈良主査がおっしゃったような、横串の教育をどう作っていくかという話で、それは現在の(5)に相当します。三つ目が、対話の場をどう設計するか、対話をどう支援していくか、あるいはそれをつなぐような、二つの間をつなぐような人材をどう作るかという話で、それは現在の(1)だったり(4)だったりするわけですね。
 そういうふうに少なくとも三つの層に分けて、それぞれの施策として何があり得るかというような整理をしていった方がいいだろうなと思いました。今は(1)から(6)まで、何でこの順番なのとか頭が混乱するので、少なくともその三つの側面で、第5期基本計画では何ができて、それぞれに今ある施策がこうあって、今後はこれに力を入れていくべきだというふうに再整理した方がいいかなと思いました。その上で、先ほどの目的ごとに、理解を目的としたもの、解法を目的としたもの、信頼構築を目的としたものそれぞれの、対話がどういう役割を果たすかという分類が利いてくるだろうと思いました。
【奈良主査】  ありがとうございます。
 対話の場をどう作るかについていろいろ御意見して頂きたいと思います。対話支援組織のイメージ、どう作るか、どんな機能を持たせるか。対話支援組織といっても、人によって単位とか規模とか機能を少しまちまちに考えてしまうところがあると思いますが、三上委員の考える対話支援組織というのは例えば?
【三上委員】  先ほど柴田さんの方から御紹介いただいたようなスキームというか、それは私もそのプロジェクトに参加していましたので共有しているところなんですけれども、ただ、一つ前の、今、藤垣さんがおっしゃった、具体的な施策というか取組例をどう構造化するかということによって、対話支援組織だとか、それで言われている対話のイメージが少し変わってくるのかなという感じもするんです。
 例えばここでELSIと呼ばれているものは、やりようによっては例えばテクノロジーアセスメントみたいなものとすごく接近してくると思いますし、そのテクノロジーアセスメントの中にも、コンセンサス会議だとかというもののように、例えば参加型でやられてきているような伝統とかもあるわけですね。
 だから、対話支援組織というのが、今のところこの整理では一番目に来て、特集っぽく取り出されているわけですけれども、やっぱり一つ前の藤垣さんの発言を私は聞いて、そこは1回頭を冷やしてという言い方は変なんですけれども、もうちょっとフラットに全体を見る必要があるかと思いました。ここでの課題は科学技術と社会の関係の深化なんだから、科学技術の側、そこを担っている研究者の側に対してどういうことができるかということと、社会の側、一般の多くのいろいろな立場の人々に対してどういうことができるかということと、あとは、そこをつなぐような対話のためにどういうことができるかという整理をしていただいたと思いますが、そこら辺の取組の構造化の仕方によって、対話組織のイメージが変わってくるかなと。奈良さんからの問いかけに対しては、一歩手前の話で申し訳ないですけれども。
 それにつけ加えて対話支援組織そのものについて言いたいことが二つありまして、それを短く言います。一つは、これは平川さんが挙げてくださったのがかなり網羅的で私はほとんど付け加えることないなと思ったんですけれども、もし一つ加えられたらなと思ったのは、対話に関する国際的な協働とか国際的な取組みたいなことです。つまり、課題が非常にグローバル化していますよね。そういう中で、いろいろな国とか地域において言われているような意味での対話とか協働とか共創をやって、それをつなぎ合わせるような機能というのは、これ、なかなかローカルレベルの取組では難しいので、そういうことをサポートするような機能がリソースセンターの中にあるといいなというようなことが一つです。
 あとは、このaからiに加えるというよりは、ここを強調したいという、私はポイントかなと思っているのは、さっき柴田さんが紹介してくださったスキームで、これがぐるぐる回るようになっているわけですよね。44ページで、リソースセンターのサポートでいろいろなところで対話が実施されるとなっているんですけれども、多分今までの問題は、左側の下向きの矢印が仮に動脈だとすると、そこで対話をやって何か力尽きて終わってしまって、右側の上向き矢印の静脈の部分、課題設定や新しい議論の議題を探索したりというところになかなかつながってこないというところが問題だったのかなと思います。ここの静脈をどう鍛えるかということが、多分このリソースセンターの機能を考えるときにはポイントなのかなという、その二つのことを具体的に支援組織に関しては思っています。
【奈良主査】  ありがとうございます。具体的施策を構造化するということの必要性ですね。三つに分けるというのは確かに分かりやすいですね。
【藤垣委員】  三つに分ければ、例えば今日の議論の最初で言及した企業の研究推進の人をどう取り込むかという点は、「研究者の社会的リテラシー」の方に入ってきますし、オープンイノベーションの話を平川さんがちょっとされましたけれども、そういう話は第1のカテゴリーに入ってくるわけですね。それに対して、一般の人々が自分ごと化して考えるとか、一般のステークホルダーの人たち、これは企業以外のイノベーションの受け取る側ですけれども、自分には関係ないわと思わずに引き込まれるようなことをするにはどうしたらいいのかというのは第2のカテゴリーの方に入るわけですよね。その上で第3の対話の場をどう作るかという話をしなければいけないわけです。というふうに分けると、もう少し見やすくなりますよね。
【三上委員】  それは、三つがパラレルになっているというよりは、3番目というのは両方に関わるような気がしますよね。
【藤垣委員】  ええ、両方に。
【三上委員】  だから、1番目、2番目のような取組というのが、そこに対する問題の捉え方があって3番目がデザインができるみたいな、そういう関係なんでしょうかね。
【藤垣委員】  ええ。あるいは、その逆もあるかもしれない。つまり、研究者が社会的リテラシーを付けるための対話というのはどういうふうに設定されるべきかとか。
【三上委員】  そうですね。それは大きいテーマですよね。実際ここで対話といっているものの中でやはり研究者が学ぶということが非常にリアルに起こるわけですよね。
【藤垣委員】  ええ。
【平川委員】  学生向けに関しては、少なくとも三上さんの大学とか、私の大学とか、横山さんの大学とか、あと、藤垣さんも、皆さんやっているので、それを実際プロの研究者の人たちも含めてできる機会をどう作るかというのは次のチャレンジですよね。
【三上委員】  そうですね。
【奈良主査】  ではもう一度整理してみましょう。きょうはもうほとんど時間がありませんが、次回以降の議論としては、今、藤垣委員から御提示いただいたような三つの構造に基づいて施策を整理していきながらやっていくということでよろしいですか。
【平川委員】  はい。
【奈良主査】  分かりやすいですよね。
 ありがとうございました。あと、最後にこれは言っておきたいということがあれば是非、委員の方からいかがでしょうか。
 ありがとうございます。では、議題3をこれで閉じたいと思います。
 本日は貴重な御意見本当にどうもありがとうございました。きょう頂いた御意見は、本当に示唆に富んでいました。また実践的な御意見も頂きました。これを踏まえまして事務局の方でも整理をしていただきまして、次回以降、より具体的に掘り下げていきながら、それこそ構造化して整えていく作業もしてきたいと思っております。次回の作業部会の議論に生かさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 では最後に、今後の日程について、事務局の方からよろしくお願いします。

○事務局より次回の日程について説明。

【奈良主査】  それでは、次回は5月18日ということで、皆様お忙しいと思いますが、またどうぞお集まりください。よろしくお願いいたします。
 それでは、以上で本日第1回の社会と科学技術イノベーションとの関係深化に関わる推進方策の検討作業部会を終了します。どうもありがとうございました。

                                                                  ―― 了 ――

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