第8期 環境エネルギー科学技術委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成28年8月16日(火曜日)13時00分~16時00分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 今後の環境エネルギー分野の研究開発について
  2. 研究開発計画(環境エネルギー分野)素案について
  3. 平成28年度の事後評価の進め方について
  4. 平成29年度概算要求にかかる事前評価について(※非公開)
  5. その他

4.出席者

委員

安井主査、橋本委員(主査代理)、高村委員(主査代理)、市橋委員、江守委員、沖委員、奥委員、加藤委員、河宮委員、小長井委員、関委員、関根千津委員、関根泰委員、館山委員、田中委員、手塚委員、花木委員、松橋委員、山地委員

文部科学省

藤吉環境エネルギー課長、樋口環境科学技術推進官、小野専門官、亀田課長補佐、石橋課長補佐、直井地球観測推進専門官

オブザーバー

十倉理化学研究所創発物性科学研究センター長、篠崎理化学研究所環境資源科学研究センター長、候理化学研究所環境資源科学研究センター副センター長、落合GEO事務局Scientific and Technical Officer

5.議事録

【安井主査】  それでは、ほぼ時間でございますので、ただいまから、第8期科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会環境エネルギー科学技術委員会の第6回となります会合を開催させていただきたいと思います。
本日、お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
それでは、まず、事務局から出席者の確認をお願いしたいと思います。
【亀田課長補佐】  田島の後任として着任いたしました亀田と申します。よろしくお願いいたします。
本日の御出席の委員ですけれども、15名の方から御出席の御連絡を頂いております。まだ2名ほどお越しいただいておりませんが、いずれにせよ、この委員会は成立しております。
また、今回は、議題(1)として、「今後の環境エネルギー分野の研究開発について」において御説明いただくため、理化学研究所創発物性科学センターの十倉センター長、同環境資源科学センターの篠崎センター長、同副センター長の侯様、及び地球観測に関する政府間会合(GEO)事務局、落合様に御主席いただく予定となっております。落合様につきましては、電車の遅れでまた後ほど御到着になるということでございます。
以上でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。
それでは、議事に入ります前に、本日の資料の確認を一通りお願いします。
【亀田課長補佐】  お手元の議事次第を御覧いただければと思います。本日の資料ですが、配付資料として、資料1から資料8までの8種類、さらに、参考資料として、参考資料1から4までの計12種類をお配りしております。
なお、資料7及び8につきましては、非公開の議題となりますので、非公開資料となります。お取扱いには御留意いただければと考えております。
また、落丁・不足等ございましたら、事務局までお申し付けいただければと思います。
【安井主査】  大丈夫でございましょうか。
それでは、次に進ませていただきますけれども、本日の議題は、お手元の議事次第を御覧いただきますと、(1)(2)(3)(4)そして、(5)その他となっております。時間が3時間というかなり長丁場でございますが、ひとつよろしくお願い申し上げます。
それでは、最初の議題でございます。「今後の環境エネルギー分野の研究開発について」ということでございますが、本日はいろいろと進行に工夫が凝らされておりますので、その段取りにつきまして、事務局からの御説明をお願いします。
【亀田課長補佐】  前回委員会において事務局より御説明いたしました通り、本年度、当委員会において、第5期科学技術基本計画に基づく環境エネルギー分野の研究開発計画というものを審議する予定となっております。前回委員会におきましては、その研究開発計画の骨子について御審議いただきました。今回につきましては、ちょっと肉付けをさせていただきまして、素案という形で御審議いただきたいと考えております。
段取りといたしましては、この後、素案についての御説明をさせていただいた後に、環境エネルギー分野における最新の知見、動向として、理化学研究所、科学技術振興機構(JST)、低炭素戦略センター及び全球地球観測システム(GEOSS)の現状について御説明をお願いしたいと考えております。それぞれ十倉センター長、篠崎センター長、松橋委員、さらに、落合様より御説明いただく予定となっております。最後に、それらの議論も踏まえた後に、素案として議論を頂くという形になっております。
それでは、まず、事務局から素案について御説明させていただきたいと思います。お手元に、お手数ですが、資料5及び参考資料2、3を御準備いただければと思います。
まず全体像を御説明してから素案の御説明をさせていただきたいと思いますので、参考資料2及び3をまず御覧いただければと思います。こちらの資料は、7月の段階で、当委員会の親会でございます研究計画・評価分科会において提出された資料でございます。
まず参考資料2でございますけれども、これが研究開発計画の構造ということになります。大目標が、科学技術基本計画からの記述を引用する形で設定され、さらに、その下に中目標が設定され、さらに、その中目標達成状況の評価のための指標が設定される。その評価、中目標の達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組というものを記載するという形の構造になっております。そして、最後に、その研究開発を行う上での留意すべき推進方針を取りまとめる、こういった構造になっております。
前回審議いただきました骨子の段階で、大目標、また、大目標達成のために必要な中目標及び研究開発の取組及び推進方策というものは、既に御覧いただいているものでございます。今回の素案につきましては、中目標達成状況の評価のための指標という部分について、新たに事務局において座長と相談の上、記載させていただいた部分、さらに、研究開発の取組というところで肉付けをさせていただいたというのが、今回の素案の構成になっております。
続きまして、参考資料3を御覧いただければと思います。本日審議いただきました研究開発計画の素案につきましては、その後、親会であります研究計画・評価分科会に御報告をするという流れになっております。直近8月24日につきましては、今申し上げた中目標達成のために重点的に推進すべき取組の肉付けの部分について報告をさせていただき、その後、11月には全体を通じて御報告ということで、最終的には、2月を目途に研究開発計画全体の決定というふうな流れで進んでまいります。
それでは、具体的な素案の内容について御説明させていただきますので、資料5を御準備いただければと思います。
資料5の中で赤字下線を引かせていただいている部分が、前回の骨子からの追記部分になりますので、その部分を中心に御説明させていただきます。
まず、資料5の2ページ目を御覧いただければと思います。資料5の2ページ目、重点的に推進すべき研究開発の取組、大目標1として、【創・蓄・省エネルギー等に係る革新的な技術の研究開発の推進】という項目がございます。
中目標として、エネルギーの安定的な確保と効率的な利用ということで、低炭素化技術の研究開発を大学等の基礎研究に立脚して推進するということと、抜本的な排出削減を実現するための革新的な技術の研究開発を推進するという中目標を既に立てさせていただいているところでございます。
これを評価する指標としまして、2ページ目から3ページ目の上の方にかけてですが、事務局において案を作成しております。
まず、アウトプット指標でございますけれども、低炭素化技術の研究開発、温室効果ガスの抜本的な排出削減のための明確な課題解決のための研究開発を実施するテーマ数というものをアウトプットの指標の案として掲げさせていただいております。
また、アウトカムの指標といたしましては、こちらは成果に関する指標でございますので、特許出願件数、論文数、また、実用化に向けた研究開発等への橋渡しテーマ数、さらに、抜本的な温室効果ガスの削減に向けた研究開発成果の寄与状況ということで、例えば、太陽電池の変換効率等を目標に掲げてはどうかというふうに記載させていただいております。
その下でございます。研究開発の取組の肉付け部分でございます。骨子の部分は黒字でございまして、赤字、肉付けした部分でございます。
まず、大学等の基礎研究に立脚した新発想に基づく低炭素化技術の研究開発でございます。「具体的には」以下でございまして、ステージゲート評価による課題の選択と集中等を通じて、革新的技術シーズに関する研究開発、実用化に向けた技術の研究開発を一体的に実施すること。さらに、国立研究開発法人における分野融合による超低消費電力デバイス等に関する研究開発や、資源・エネルギー循環型の持続型社会に貢献する研究開発等を推進するということで肉付けをさせていただいております。
さらに、その下でございます。明確な課題解決のための研究開発の部分でございます。こちらも「具体的には」以下でございまして、経産省との合同検討会を経て設定した次世代蓄電池、ホワイトバイオテクノロジーにおける共同研究開発、また、次世代半導体ということで、窒化ガリウムに関する研究開発、さらに、「エネルギー・環境イノベーション戦略」を踏まえた、2050年の温室効果ガスの大幅削減というゴールからバックキャストした明確なターゲットを設定し、あらゆる手段を駆使してターゲット達成を目指す複数チームによる研究開発を関係省庁との連携により実施するということで追記をさせていただいております。
おめくりいただきまして、4ページでございます。上の方に論点例ということで書かせていただいております。今回、エネルギー分野につきましては、2050年ということを1つの目標にしながら、5年後の指標、取組を記載するという形になっておりますので、どのような指標を設定することが適切か、是非御意見をいただければと考えております。
その次でございます。大目標2、【最先端の気候変動予測・対策技術の確立】の部分でございます。
こちらの中目標に関しましては、4ページの一番下でございます。気候変動メカニズムの解明、気候変動予測モデルの高度化を進め、より精確な将来予測に基づく温暖化対策目標・アプローチの策定に貢献すること、また、不確実性の低減、高分解能での気候変動予測や気候モデルのダウンスケーリング、気候変動影響評価、適応策の評価に関する技術の研究開発を推進するということが、中目標で既に立たせていただいております。
それを踏まえた指標でございますけれども、5ページ目に事務局の案を記載させていただいております。
アウトカムの指標といたしまして、1番として、気候変動メカニズムの解明や気候変動予測モデルの高度化、影響評価技術モデル等の開発数、2つ目として、「データ統合・解析システム」(DIAS)に格納された地球環境情報の数、3つ目といたしまして、気候変動影響評価・適応策評価技術の研究開発に参画した地方公共団体等の数というふうに設定させていただいております。
また、これに連動するアウトカム指標ですけれども、1点目として、国際共同研究等の海外連携実績、2つ目として、論文発表数、3つ目として、DIASを利用する研究課題、利用者、提供ソリューションの数、4つ目といたしまして、気候変動適応策の立案・検討を開始した地方公共団体の数というふうに設定させていただいております。
その下でございます。重点的に推進すべき研究開発の取組の部分でございます。
1点目が、気候変動予測・影響評価技術の開発というところで、前回、骨子の部分に加えて、そもそも何をやるんだというところを第1段落に書かせていただいております。1つ目ですけれども、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等における議論をリードするとともに国内外における気候変動適応・緩和策の立案・推進に貢献するため、全ての気候変動対策の基盤となる気候モデル研究の高度化に必要な研究開発を進めるというふうに記載させていただいております。そのほか、その下に、「具体的には」の部分で、緩和策立案の科学的根拠となる炭素・窒素循環・気候感度等環境の不可逆変化等々の解明を進めるということも追記させていただいております。
その下、地球環境情報プラットフォームの構築でございます。こちらについても、そもそものお題目として、気候変動への適応・緩和等の国内外の社会課題に貢献する社会基盤として、企業等の具体のユーザーニーズも踏まえた地球環境情報プラットフォームを構築するというふうに追記をさせていただいております。また、具体的な取組の部分で、企業等のユーザーが長期的・安定的に利用できるための運営体制の強化、さらに、社会課題の解決に一層の貢献をするという観点から、共通基盤技術の開発を行うということを追記させていただいております。
おめくりいただきまして、6ページ目でございます。最後は、地域レベルでの気候変動適応に活用するための技術の開発の部分でございます。冒頭ですけれども、地方公共団体における地域レベルでの気候変動適応策の立案・推進に貢献するため、これまでの研究の蓄積を生かして、地域を指させる共通基盤的な気候変動影響評価、適応策評価技術を開発するとさせていただいております。その下、「具体的には」の部分ですけれども、影響の可視化等を可能とするアプリケーションについて、関係者の協働による開発をする等々を追記させていただいております。
その下でございます。この論点に関する具体的な論点例でございます。気候変動メカニズムの解明・気候変動予測モデルの高度化や効率的・効果的な立案のための評価手法の開発という、ここで取り組むべきテーマにつきまして、どのような指標を設定することが適切か。また、「地域での適応の推進」という観点から、地方公共団体の数を指標として案として掲げさせていただいておりますけれども、それ以外に適切な評価指標はあるかということについて御意見を賜りたく思っております。
最後でございます。大目標3、【地球観測ビッグデータのプラットフォーム構築】でございます。
こちらにつきましては、7ページ目を御覧いただきまして、中目標といたしましては、環境エネルギーをはじめとする様々な社会・経済的な課題の解決等を図るプラットフォームの構築を図るというふうなことで掲げさせていただいております。
この評価のための指標としては、その次でございますけれども、アウトプット指標として、DIASに新たに格納された地球環境情報の数、アウトカム指標として、DIASを利用する研究課題数、利用者数、提供ソリューション数ということで、大目標2の部分と同じような指標を掲げさせていただいております。
その下の重点的に推進すべき研究開発の取組につきましても、大目標2と同じような書きぶりとさせていただいておりますので、説明は省略させていただきます。
この部分に関する論点例といたしましては、社会・経済問題の解決等を図るプラットフォームの構築について、指標としてどのようなものが適切かという部分について、御意見を特に賜れればと考えております。
最後でございます。8ページ目でございます。こちらの部分は、推進方策というところで、全体に係る部分でございまして、1点だけ追記をさせていただいております。社会との関係深化というところでございます。持続可能な開発目標(SDGs)の記載がもともと書かれておったところでございますが、環境分野に関する記載のみが書かれておりまして、エネルギーについても当然記載すべきという判断で、再生可能エネルギーの導入割合の大幅増加やエネルギー効率の改善等に関する目標についても追記をさせていただいております。
長くなってしまいましたが、事務局からの説明は以上となります。
【安井主査】  ありがとうございました。
これを先に御説明いただきましたのは、こういう形に今のところなっておりますが、やはり何となくまだすっきりしないというか、しっくりしないというのが一番いいですかね。そんな感じがいたしますので、本日は、有識者の方々からいろいろとお話を頂いた上で、その間に、これをどうしたものかというのをお考えいただきながら、それを聞いていただいて、それで議論をしていきたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
ということでございまして、本日御準備いただきました有識者の方々から御発表いただきまして、それぞれ大体10分ないし15分と考えておりますけれども、その後、10分程度の質疑応答を行って進めてまいりたいと思っております。
それでは、最初で恐縮でございますけれども、理研の創発物性科学研究事業につきまして、十倉センター長から御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【十倉センター長】  どうもありがとうございます。理化学研究所創発物性科学研究センターの十倉でございます。よろしくお願いいたします。
きょうはお時間を頂きましたので、その資料を使って、今現在理研で行っている創発物性科学研究事業について、非常に駆け足ですけれども、説明をさせていただきます。
最初のページをめくっていただいて、2ページ目、創発物性という非常に変わった、まだ人口に膾炙(かいしゃ)していないような言葉が出ていますけれども、ここでいう創発性とは、多数の要素が集まったときに、個々の要素からは予測できなかった性質が現れること。これはDNAから人間ができているのを見れば当たり前のことなんですけれども、こういう物性科学の分野においてもこういうことをやって、環境に負荷をかけずにエネルギーを効率よく作り出し、一方で、エネルギーの消費を極限にまで低減するような、そういう新しい技術をこの創発物性の考え方を用いて作っていこうというものであります。
ページ、次をめくっていただいて、3ページ目ですけれども、我々の創発物性科学の目標は、このような多体系の創発現象の理念と原理を提案するような、いわゆる物性物理学、それから、分子のものをいっぱい組み合わせて作るような超分子機能化学、それから、一方で、量子力学的な構成要素をやはりたくさんつなぐことによって、新しい成果へとつなげる量子情報エレクトロニクス、すなわち、物理学、化学、エレクトロニクスの、この3つの部門でシナジーを持ってエネルギー機能の課題を解決する。
それは次のようなものでありまして、まず1つは、環境に調和したような超高効率のエネルギーの収集・変換機能。これは従来より太陽光発電とか熱電変換とか、そういうものがありますけれども、我々はむしろ非常に原理的に新しい、今までに提案されていないような、いろんな新しいパスを原理に立ち戻って提案するということに重点を置いております。
もう一つは、超低エネルギー消費エレクトロニクス。これは、もちろんシステムをインテグレートすることによって、既存のものでも随分の進展が得られているわけですけれども、ここでもやはり同じように、物質や新しいデバイス原理を根本に立ち戻って、著しくエネルギーを低減するような、革命的な革新的な電子技術ができないかということを考えております。
次のページをめくっていただいて、4ページは、これは先ほど言いましたことをポンチ絵に示したもので、すなわち、物理学、エレクトロニクス、機能化学、この3つのシナジーのもとに、最終的な目標は、右上と左下に書きましたような、超低消費電力エレクトロニクスと、それから、超高効率のエネルギーの捕獲・貯蔵ということを目指す新しい原理を開発していきたいということであります。
次のページ、5ページですけれども、これは電子技術の1つのパスなんですけれども、例えば、左下側の円環に書いてありますような、強相関電子系を使ったようなエレクトロニクスとか、超分子を組み合わせたようなエレクトロニクス、量子情報のエレクトロニクス、それから、トポロジーという新しい考え方に基づくエレクトロニクス、これも後でちょっとお話しいたしますが、そういうものを使って、結局、超低エネルギー消費の電子技術の全く新しいものを開発していきたいと、そういうふうに考えております。
次、6ページですが、ここから各部門の現状の活動状況というのを簡単に御説明していきたいと思います。
6ページは、まず強相関物理部門。強相関というのは、電子が固体中に非常にたくさん入ったときに、それの相互作用によって、思いがけない新しい革命的な物性が出るということでありまして、これが一番典型的に現れたのは、その下側の括弧の中で右上に書いてありますけれども、いわゆる高温超伝導、これはもう見つかって四半世紀になりますけれども、いまだに高温超伝導の限界がどこにあるのかということが分かっていません。我々は、この超伝導の転移温度、もちろん室温を目指しているわけですけれども、そういうものを原理的に追究するというほかに、左上に書いてありますように、エネルギーロスのないエレクトロニクス。これはちょっと漫画のような話なんですけれども、最近、物理学では、電子波というのを使って、従来とは全く違う原理で、エネルギーロスがほとんどないような新しい電子技術の可能性、いわゆるトポロジカルエレクトロニクスということが言いはやされております。これは超伝導ではなくて、エネルギーロスのない新しい電子の流し方なんですね。そのほかにも、左下に書いてあります磁気熱材料とか、それから、新しい原理に基づく太陽電池の開発を行っております。
7ページに行きまして、その幾つかの例をお話ししたいんですけれども。1つは、我々はいろんな情報担体をやるときに、磁気の力を使います。N極・S極というところがあって、我々のハードディスクというのは、全部これで情報を使っているわけですけれども、これを効率よく書き込んだり読み出したりするということに、新しい手法が今求められています。特に電気的な手法で、これをやりたいということです。1つの解決法としては、そこに書いてあるマルチフェロイックスということが言いはやされております。これはどういうことかというと、1つの物質に強誘電体、分極を持っているものと磁化を持っているもの、その上側にポンチ絵がありますけれども、こういう2つを同時に持っているものを作ると、外部から磁場をかけることによって、分極をひっくり返すだけではなくて、電場をかけると、つまり、電流を流さないで、電場をかけるだけで、エネルギーをほとんど使うことなく分極をひっくり返せば、自動的に磁化もひっくり返る、そういうことができないかということです。そのやり方のポンチ絵が左にありますけれども、実際にそれが成功したという例、我々のセンターで作ったものですけれども、データが細かいデータですけれども、印加電場というのをかけていまして、それをプラス・マイナスとかけています。そうすると、真ん中の段の電気分極というのがプラスとかマイナスで、これで揮発しない、non-volatileな状態で行っておりまして、もっと大事なのは、これと同時に、磁石のN極・S極の向きである磁化がプラス・マイナスと進展していると。これはもちろん室温ですぐに起これば一大革命が起こるわけですけれど、まだこれは非常に限られた温度域でしか起こっていませんけれども、こういうことの新しい原理を見つけていきたいという手法であります。
それでは、次に、8ページにめくっていただきまして、もう一つ、創発物性科学の一種の典型例として、非常にエネルギー消費を少なくし得るような情報担体として、スキルミオンということを、このセンターでは提案しております。スキルミオンというのは、もともと核物理学のバリオンのモデルでして、核種のモデルであるんですけれども。つまり、粒子というのは、波動関数からどう定義するかというときに、むしろトポロジーによってその粒子というのを定義して、その安定性を担保しようというわけです。実際に、例えば、右側に書いてありますような真っさらなお皿のような状態と、穴が1つ開いた状態というのは、トポロジーとしてつながっておりませんので、一旦こういう状態があれば非常に安定になるというわけです。
実は、こういうスキルミオンという核物理学の非常に理論的な概念であったものが、次の9ページにありますけれども、実際の固体の磁性体中で非常に一般的に存在できるものだということを我々が示しました。スキルミオンというのは、右上に書いてありますように、たくさんのスピンが集まって、一種の渦巻を作って、ちょうど台風の目のようにして粒子が安定になっている状態なんですけれども、それがわずか10ナノメートルとか数十ナノメートルという非常に小さなナノ粒子でありまして、こういう多数のものから、新しい高いヒエラルキーとしてナノ粒子を作るということの創発原理の典型例であります。これが、9ページの左下にありますように、非常に規則正しく結晶状に並んでいるとか、あるいは、右下にありますように、孤立粒子として、1個の粒子として希薄に存在できると。それを、1個をローレンツ顕微鏡という手法で見ますと、確かに右上に書いているような電子のナノスケールの渦があって、それが粒子として働いているというわけです。
実はこれはもちろん創発センターで初めて見つかったことなんですけれども、次の10ページをめくっていただきますと、このスキルミオンという状態は、外部の電流でも、非常に低い電流密度で動かすことができまして、これは従来、現在言いはやされているスピントロニクスの最高性能の更に三桁から四桁低い電流密度でスキルミオンを動かすということから、今、我々の研究を契機として、世界中で、特にヨーロッパ、イギリスでは非常に研究が盛んで、幾つものプロジェクトが立っている状況です。これはスキルミオンというのは粒子ですから、いろいろ不純物があって、止めようとしても、それを巧みにすり抜けて、内部変形をしてすり抜けて、非常に少ない電流密度、少ないエネルギーで動かすことができるというわけです。
11ページが、我々の希望のポートフォリオなんですが、これは容量と書き込み時間を縦軸・横軸で持ったものですけれども、従来のフラッシュとかReRAM、いろんなものは、現在実現されているもので、スキルミオンの方は、我々がシミュレーションの結果、こういうことができるという希望しているものですので、それは頭に置いていただきたいんですけれども、ポテンシャルとしては、非常に短い書き込み・消去時間で高い容量を実現する新しいメモリ、非常に省エネルギーのメモリになり得るということを提案しております。
それで、次、12ページに行っていただきますと、そういうものだけではなくて、ここでは、例えば、熱電材料を革新します。これはもう御存じのように、ありとあらゆる研究所でこういうことが研究されているわけですけれども、我々は従来の考え方を一つ進めて、固体中のトポロジーという考え方を用いて、説明が長くなるので省きますが、右上にありますように、電子のスピンの自由度を用いてバンドを分裂させる、わざとそういうことをやります。そうすると、このバンドの谷というのがいっぱいできまして、それで電子がたくさんのエントロピーを付与することができるんです。そういう従来全く活用されていなかった自由度というのを新しく考えて、この熱電材料を革新したい。これは実際にある企業と共同研究をしておりまして、まだ知財の関係で具体的な数字は出せませんが、排熱の温度で従来の材料を上回る、zTが1.5を上回るような非常に高い、非常に温度の広い範囲で従来の最高値を出すような材料が既に見つかって、今、実用化に向けた研究にまい進しております。
次の13ページ、これも一種の熱電材料のようなものですけれども、磁気熱量効果といいまして、要は、磁石でもって物事を冷やすということなんですね。これは物理の原理のところでは、断熱消磁といって、低温をやるのに非常に広く使われている分野ですけれども、これを民生の、例えば、冷蔵庫とか普通の室温状態でもこれを使うということで、ガドリニウムをはじめとした多くの材料が従来研究されてきたわけですけれども、我々は、これでエントロピーをゲインするのに最もいい方法として、物体の構造が変わるのと、磁気の構造が変わるのと、2つをちょうど組み合わせると、そこで非常にこの状態が大きく性能指数が上がるということを研究しております。
さて、次、14ページ、今度は超分子機能化学部門、これは主に化学の分子デザインをもとにしたものですけれども、そこでの研究テーマというのは、例えば、有機の超分子のエレクトロニクス、具体的には、有機の薄膜の太陽電池であるとか、それから、有機の界面デバイスを使った非常に高効率の熱電材料、素子ができないかとか、それから、右下に書いてあるようなアクアプラスチック、水で作るプラスチックということであります。
15ページに、アクアマテリアルのその例を書いておりますけれども、これは相田、石田らがかなり前に、ほとんど水、95%あるいは98%以上を水で作るような、石油を使わないプラスチック、アクアマテリアルができるということを示したわけですけれども、これは水の中に最近は酸化チタンの物質を溶かし込んで、いろんな機能を溶かし込むことができるんですね。それで固めます。そうすると、それをチタンO2の面を規則正しく並べると、例えば、光で一度切ったものをもう一回つなぎ合わすとか、それから、左下にありますように、ちょっとこれは字が小さいですけれども、上から押さえると固いんだけれども、横にずらすとぐらぐら揺れるとか、これはまさに人間・動物の関節を模式したものですけれども、人工関節であるとか、それから、右下のように、ものをうまく切り出しますと、温度を上げ下げすることによって、このアクアゲルは、ナメクジというより、もうちょっときれいですけど、前に進むようなアクチュエータの機能を出すと。いろんな新しい環境に優しい機能を出すことに成功しつつあります。
次のページ、16ページですけれども、これはもう一つの大きな超分子化学部門のテーマでありまして、有機太陽電池の高効率化を図りたいというわけです。これはもちろん現実の無機の太陽電池というのは、タンデム型で20%、30%を超えるものができているわけですけれども、我々は、非常に人体に優しいような、あるいは、塗っただけで太陽電池ができるような、そういうものを目指しております。ただし、それをシステムとして開発するというよりは、むしろ根源の材料開発まで目指してやっているわけで、これは我々、瀧宮グループというのが、瀧宮有機半導体と言われる新しい分子を合成して、それを高分子化することによって、また、その高分子を並べることによって、最近では、タンデム型ではなく、単体の物質で10.5%、だから、いよいよ二桁に乗ったというわけです。これは実用のレベルとしている15%を目指して、今、この基礎原理に立ち戻った研究も行っているところであります。これは現在でも、最近、ペロブスカイト太陽電池という非常に新しい原理に基づく太陽電池が出ていますけれども、鉛等を一切含まない、体に貼れるような太陽電池という意味で、大変期待が持てると考えています。
最後に、17ページで、量子情報エレクトロニクス部門。これは大分先の話なんですけれども、これはいわゆる基礎のナノエレクトロニクスを研究する部門でありまして、具体的には、最終的な目標としては、誤り耐性を含めたような量子コンピュータ。もちろん、これができれば、今、計算時間に、ビッグデータを扱うためにエネルギーが指数関数的に増大しているわけですけれども、これを革命的に低減することができますが、一体いつできるんだという話があるんですけれども、それに至るまでに、これを使った量子中継のネットワークを小さなキュービットコンピュータで作り、超伝導回路の開発を行っています。
次のページをめくっていただくと、ここには、具体的にはもう説明いたしませんが、最近の量子情報エレクトロニクス部門、日本の精鋭を全て集めたと思っていますけれども、その部分で、例えば、超伝導回路を用いたパラメトロンというコンピュータの基層回路を作るなどをしたり、右下にありますように、実際の固体素子でもっていわゆる非局所もつれ、量子エンタングルメントというのを検出したりとか、そういうことがあります。
最後、19ページ、これで終わりですけれども、それだけではなくて、この3つの部門を融合したような分野融合プロジェクトで、例えば、先ほどの熱電材料、それから、光発電、そういうものの技術を統合しまして、どこでも気軽にできる発電機能と、それから、センシング機能を持ったいろんなデバイスをインテグレーションして、その少なくともひな形デバイスでそういう統合的なデバイス概念を実証したい、そういうようなことを考えて研究を行っております。
非常に雑駁(ざっぱく)ですけれども、以上でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。
何か御意見、御質問等ございましたらお願いしたいと思いますけど、いかがでございましょうか。
すぐには出ない感じですかね。
じゃ、ちょっと時間をつないでおきますけど。ありがとうございました。いろいろとおやりになっていることは、もう大変なことなんですけど、こういう御研究をやられるときに、世の中にあるニーズをどのぐらいカバーしているという感覚を持って、要するに、ニーズと先生方のおやりになっているシーズのマッチングみたいなことというのは、どういうふうに意識をしてお進めになっていらっしゃいますか。
【十倉センター長】  もちろん、国の研究所でありますから、ニーズコンシャスでやっているんですけど、もちろん我々だけではその辺のことが完全にフォローできない場合がありますので、実は、民間会社から十数名程度の研究員をほぼ常駐の形で受け入れて、それを2年ぐらいのサイクルで流していって、具体的にどういうことが問題になっているかという問題意識をつくるようにしているのと、もう一つは、やり方自体が、現在のニーズがあって、それのある数値目標を達成するためにどうシステムをインテグレートしていくかというのは、まさにエンジニアリングの考え方で、それはとても大事なのは分かっているんですけれども、むしろここでは、ほかではなかなかできないような、それを達成するために違う道筋があるのではないかという。それは、もちろん、学術的には興味があるんで、そのキュリオシティ・ドリブンで動いている部分はあるんですけれども、よそではできないような新しい考え方で革命的な革新的な技術が生み出せないかということもコンシャスとしてやっております。
【安井主査】  今おっしゃってくださった最後のことは大変重要だということは分かっての話での質問なんでございますけど。と言いますのは、この文章をお読みになってどうかと思いますけど、やはり何かアウトカムとかアウトプットとか、いろいろなものを書かなければいけないとなると、そういうところにニーズ・シーズマッチングとか、そういうようなキーワードを入れるべきかななんて、そんなことをどうも思わず考えてしまうものですから、失礼いたしました。
ほかに何かございませんか。どなたか。どうぞ。
【関根(千)委員】  どうもありがとうございました。
今、ニーズがどうかというお話が出ましたけれども、私は、本当にここに書かれている特性というものを発現するものができれば、本当に革新的だと思っていますので、是非頑張っていただきたいと思います。
それで、企業で開発するときにいつもやっぱり気になるのは、例えば、太陽電池にしても、こういった効率というのはすごく大事なんですけれども、一方で、耐久性みたいなものは、実際に使うときには非常に大事なんですね。その耐久性が、実は、性能を発揮する根源的なものと結構関わっていることが多いのではないかなと思うんですが、そのあたりはどういう形で研究に盛り込まれているんでしょうか。
【十倉センター長】  1つ、我々が扱っている物質というのは、主に量子物質と言われるもので、磁性体というのは、そもそも量子力学の原理が室温で発現しているものそのものなんですけれども、そういう意味で、それがどれほどいろんな外的な擾乱(じょうらん)に対してロバストかということは、いつも考えております。
従来の新しいこういう面白い材料、こういうemergent quantum matterと言われるような材料というのは、大体低温でしかできないとか、ちょっとして上から落としたら壊れるとか、非常にやわいものだというんですけれども、個別の例はいろいろあると思うんですけど、考え方自体としては、むしろ量子力学的なそういう作用によって、あるいは、トポロジーと言われているものによって、それの安定性を担保するということが、新しい学術の分野としても非常に重要だということが出てきまして、そういうことでやっています。
それから、今おっしゃったことで、もう一つ大事なのは、やはり非常に環境に優しい物質群を作ってものを作るというのは、必ずしもこういう基礎研究に矛盾するものではなくて、例えば、うんと重たいものを使って磁石を作れば、スピン軌道相互作用というのは量子力学的に大きいので、いい磁石ができるんですけど、そうではなくて、それをもっとこういう創発的な考え方でもって物質をデザインする、あるいは、電子構造をデザインすることによって、それをうんと大きくできるような手法というのが、最近いろいろ基礎分野では提案されてきていますので、是非、そういうことも考えながら研究を行っていきたいと思っています。
【関根(千)委員】  ありがとうございました。
【安井主査】  どうぞ、江守委員。
【江守委員】  どうもありがとうございました。
素人なんで、詳しくは分かりませんでしたけれども、非常に画期的な研究が行われていることは、雰囲気は理解したつもりでおりますけれども。素人の視点から1つお伺いしたいのは、海外との競争状況というのはどういうふうになっているかというのを、雰囲気だけでも教えていただければと思います。
【十倉センター長】  これは個別のテーマによってかなり違うんですけれども、例えば、最初の強相関物性物理学のところのテーマとして、例えば、6ページに書いてある左上のところのエネルギーロスのないエレクトロニクスの開発。これはまだ非常に言葉が踊っているような状況ですけれども、トポロジーという考え方を利用して、トポロジカル絶縁体というのが、今から8年ほど前に物理の分野でやって、今、世の中を席巻(せっけん)していると言ってもいいんですけれども、これ自体は、我々のグループももちろんやっていますけれども、当初はアメリカ、主に理論が中心ですけれども、発表されました。ところが、いろんな研究のステージが上がってくると、実際にそういう理論の予測をできるだけではなくて、実際にデバイス構造とか、物質のものに当てはめて、その予測されている機能を出すというところでは、日本のものづくりの伝統というのもありますし、かなりリーダーシップを取っているんだろうと思います。
そのほかの分野に関しては、全部とは言いませんけれども、世界のトップを走っているんだと思います。ただ、世界の競争が激しい分野でありまして、例えば、先ほどスキルミオンという新しい概念を、ドイツのグループが結晶状態を見つけて、我々が1つの単独の粒子として、そういうのが結晶中を動き回っているんだというのを最初に目に見える形で出したんですけれども、これももうたちどころにヨーロッパとか、特にフランスとかイギリスで新しいプロジェクトが立って、実用化に向けた研究もそこでやっています。だから、研究は提案しても、それがもうたちどころに競争状態に陥るという意味では、非常にまだ健全なステージにいるんだろうと思いますけれども、一応世界をリードしているとは自負しております。
【江守委員】  ありがとうございます。
【安井主査】  ほかに何かございますでしょうか。
それでは、もし何かございましたら、しばらくまだ十倉先生は席にいらっしゃいますので。ということで、次に行かせていただきたいと思います。
それでは、次でございますけれども、理研の環境資源科学研究事業につきまして、篠崎センター長からの御説明をお願いしたいと思います。お願いいたします。
【篠崎センター長】  環境資源科学研究センター長の篠崎です。よろしくお願いします。
私は、専門分野は植物科学ですので、きょうは触媒化学の侯副センター長にも同席していただいています。
最初のページ、2ページ目ですけれども、環境資源科学研究センターは、理研の中の、ある意味では組織再編によって生まれたセンターですが、資源の循環的な創出と活用を目指すことを目標にして、植物科学研究センター、基幹研究所のケミカルバイオロジーの領域と触媒化学、合成化学の領域が融合して新しいセンターを開始しました。生物学と化学を融合させて、資源循環的な社会に貢献するというのが目標です。
この図にありますように、有用資源の創成、それから、効率的な資源生産システム、あるいは、持続可能な農業の実現ということで、かなり幅広い取組をしています。融合を進めるという意味で、この下に箱がありますけれども、4つのキーになるプロジェクトを立てまして、融合を進めています。創資源、省資源、活資源、研究基盤と書いてありますけれども、それぞれは炭素の循環的利活用、窒素の循環的利活用、金属元素の循環的利活用のプロジェクトということで、化学と生物を意識したプロジェクトにしています。例えば、炭素ですと、CO2の資源化、光合成の効率化、触媒を利用したCO2の資源化。それから、省資源は、窒素の有効利用ということで、農業でも窒素肥料を少なくするとか、あるいは、後で話がありますけれども、窒素からアンモニアを低エネルギーで合成するようなプロセス。さらに、金属の高度の利用、触媒としての利用法などを考えています。
それから、もう一つ、下にバイオマス工学研究部門と書いてありますけれども、これは、この研究センターに先立って、2010年から開始した理研内の横断的なプログラムですけれども、植物バイオマスの生産の向上、バイオマスの利活用、そして化成品の生産、主にバイオプラスチックを目指した生産ということで、分野横断的な研究開発をしています。バイオマス工学は2015年にこのセンターに統合しまして、より広い取組ができるようにということで組織を広げております。
3ページは、センターの組織図ですけれども、非常に多様な分野の研究者がいまして、植物科学、触媒化学、ケミカルバイオロジー、そして、バイオマスの部門が入ってきているという形で、このセンターを9名のコアのリーダーでマネージをしています。
次の4ページですけれども、これが基本的にこのセンターの長期的な目標になります。化石資源を利用した石油化学プロセスが主だった20世紀型から、生物を資源として、生物プロセス、植物とか微生物のプロセスを利用してものを作って、化学プロセスで高度化をして、それによってエネルギー、化成品、あるいは、生物由来の材料を作っていこうということが大きな目標になっています。
このセンターは非常に多様な人材がいますので、それをいかに融合させて新しい学際研究に発展させるかというのが目標ですけれども、5ページ目に、プロジェクトの階層構造を書いております。コア研究は植物科学、化学生物学、触媒化学。それぞれ理研の非常に強い分野でして、トムソン・ロイターでも非常に引用度の高い分野になっています。これらを融合させて、融合研究として、炭素、窒素、金属、あるいは、基盤技術の研究プロジェクトを進めています。次に橋渡し研究に関しては産業連携が非常に重要ですので、産業連携本部とセンター推進室の協力で企業との連携を進めています。それによって、バイオマス工学、あるいは、創薬・医療基盤などは、実際の応用につながる研究成果が出ています。
環境資源、環境エネルギーに関する分野に関して、主に成果を御紹介したいと思います。
最初に、触媒化学の成果ですけれども、特に「科学技術重要政策アクションプラン」への貢献ということで、このセンターからの貢献は、赤で書いてあります。「エネルギーキャリア製造次世代基盤技術の開発」ということで、2つの課題、「窒素等の循環的利用技術の研究開発」、それから、もう一つは「『水素社会』を支える革新的エネルギー生産触媒の研究開発」として貢献しています。
7ページに、実際に2つの課題をまとめて書いてありますけれども、この資料は、総合科学技術・イノベーション会議エネルギー戦略協議会に文部科学省から出した配付資料に基づいていますけれども、先ほど述べました省エネルギーな革新的アンモニア合成法の開発、それから、中性の水を用いた水分解による水素の創出という、この2つの課題について御紹介したいと思います。
8ページに、最初の窒素分子の切断と水素化を常温・常圧で実現という成果です。これは侯副センター長のグループの非常に大きな成果ですけれども、非常に活性の高い多金属のチタンヒドリド化合物を発見しまして、常温・常圧で窒素分子を、窒素の三重結合を切断して、窒素-水素の結合は見られたということで、非常に大きな成果になりました。この成果をもとにして、窒素から省エネルギーでアンモニアを合成しようということで、今、侯グループ、あるいは、産業連携本部も含めて、企業との連携を考えながら研究を進めているところです。
9ページ、これは中村グループの成果ですけれども、中性の水から電子を取り出す「人工マンガン触媒」を開発ということで、これも非常に注目されました。植物の光合成のメカニズムをモデルにして、中性環境で人工マンガン触媒を使って、水から電子を取り出して、活性なものを作るということに成功しました。水素まではまだ行ってないんですけれども、初めて酸化マンガンを使って水を分解して電子を取り出すということに成功した、非常に先駆的な仕事になっています。
次に、バイオリファイナリー、あるいは、バイオマスの研究に関係した課題について御紹介しています。このセンターでは、生物、特に微生物、植物の研究者がバイオマスの研究をしていますけれども、特に最近では微生物を用いた燃料・化成品の開発に向けた技術開発が進展しています。1つは、具体的な取組と下に書いてありますけれども、有用代謝化合物生産に向けた新規代謝反応構築技術の開発ということで、後で御紹介します。それから、微細藻類を用いたバイオ燃料・化成品の創出ということで、これに関しましては、微細藻類の研究を進めています。
最初の有用代謝化合物生産に向けた新規代謝反応構築技術の開発の方ですけれども、それは11ページにまとめてあります。これは微生物の代謝を効率化する、それによってものづくりに資するということで、特に代謝のプロセスを、計算科学を駆使して代謝のパスウェイを設計して、さらに、それに適した酵素も設計して、ものを作るということを、近藤チーム・白井副チームリーダーのグループで進めています。11ページにプレスリリースの内容がありますけれども、これはバイオマスを原料として合成ゴム、特にイソプレンの新技術を開発したという成果です。これに関しましても、横浜ゴムとか日本ゼオンとの共同研究で、実際にこの代謝系の研究を進めていまして、非常に画期的な成果が出たと思っています。
その成果は次のページ、12ページにまとめてありますけれども、イソプレンの合成系は、ここに代謝のパスウェイが書いてありますけれども、メバロネートから5つの経路、反応系を通してイソプレンができます。人工代謝系を設計して、2つの反応系でメバロネートからイソプレンを作るという代謝系を新たに作り出しまして、これは計算科学を使ったBioProVというソフトウェアを作って代謝経路の設計をしています。さらに、一歩進んで、これに使う人工酵素を設計しまして、実際にモデルになる代謝酵素を用意しましたけれども、それの変異体をたくさん作りまして、野生型の100倍の活性を持つような酵素も合成して、この代謝系の効率を上げています。これは企業との初期からの共同研究を進めていまして、実際の応用研究に向けて進めているところです。
13ページ、これは微細藻類の燃料開発に向けた企業連携です。御存じだと思いますけれども、ユーグレナ社では、ミドリムシを使った健康食品の開発、それと同時に、ジェット燃料、あるいは、ディーゼル燃料の製造を進めるということで研究開発をしています。現在、理研横浜キャンパスの近くに同社の研究所がありまして、共同研究を進めています。具体的には、下にありますように、重イオンビームを用いて油を溜(た)めるようなユーグレナを選抜するということ、あるいは、ユーグレナのゲノム解析を進めておりまして、あるいは、代謝産物の解析を進めていまして、ゲノム解析による効率的な燃料の生産ということで共同研究を進めています。これは横浜研究所の近くに実際の燃料製造の実証プラントを作るということで進めていますので、こういった成果に貢献できるのではないかと考えています。
14ページは、実際に研究成果が企業に利用されているという成果です。これはバイオプラスチックの成果ですけれども、理研の特許をもとにして、カネカ社で、ポリヒドロアルカン酸のPHAの実際の生産のための実証試験を、これはJSTの委託事業で進めていました。年間1,000トンの製造ができまして、さらに、これを、主にヨーロッパの方ですけれども、農業資材のプラスチック、生分解性のプラスチックの生産に向けて研究開発を進めています。私たちのセンターでは、阿部チームリーダーの下で、熱成形の加工性を格段に向上するような基盤技術として、結晶化を促すような添加剤の探索に成功しましたので、これをこの生産工程に入れて応用研究に役立てているということで、カネカ社との実際の成果が利用されているというものです。
次に、エネルギーの利活用・省エネ・CO2削減への取組ということで、触媒化学、それから、生物科学からの取組を2つずつ紹介したいと思います。
触媒化学は15ページですけれども、これは侯グループからの成果、最近の成果2つです。1つは、リチウムホウ素化合物の新しい合成法を開発ということで、CO2を利用する有機合成反応について研究を進めているんですけれども、今回の成果ではCO2、ホウ素化合物、アルデヒド類、リチウムアルコキシド、この5つの原料をもとにして、銅の触媒を使って1段階で5員環(かん)の構造を持つリチウムホウ素化合物の選択的合成に成功ということで、多成分のカップリング反応に働く新しい反応触媒が見つかっています。
それから、右側の方ですけれども、これは先ほどの多金属、チタンヒドリドの化合物ですけれども、窒素-窒素の結合も切断することは先にお話ししましたが、ベンゼン環(かん)の非常に安定な炭素-炭素結合も室温で切断できるということを発見しました。この多金属チタンヒドリド化合物は非常に安定な化合物を分解できるということで、多様な利用が考えられます。実際に、ガソリンの有害成分を除去することを目的に、企業との共同研究で進んでいます。
その次、16ページですけれども、これは生物の利用に向けてということで、2つ、先駆的な研究を御紹介したいと思います。
1つは、電気で生きる微生物を初めて特定ということで、これは電気を使ってエネルギーを得ている微生物を初めて見つけたということで、非常にこれは注目された成果です。鉄イオンをエネルギーとして利用するような鉄酸化細菌の一種が電気しか利用できないような環境で生育できるということを確認して、実際にこの微生物が、光とか化合物以外に、電気からエネルギーを得ているということを明らかにしました。こういった新しい生物の利用ということが今後考えられると思っています。
それから、その次は、ペプチドの利用に関する研究ですけれども、高機能なペプチドを利用して、植物、あるいは、動物細胞もできますけれども、DNAを送り込むシステムを作り出しました。これは沼田チームの成果です。ペプチドを利用して、従来非常に難しかった葉緑体とかミトコンドリアへのDNAの導入、それから、遺伝子の改変ということを可能にするような方法論を開発しました。これに関しましては、最近注目されているゲノム編集への応用が期待されているところです。
最後、17ページですけれども、私たちの環境資源科学研究センターでは、非常に多様な分野を含んでいます。研究開発の目標に関しては、以下に述べる5つの課題の成果を目指して、更に研究を発展させようと考えています。
1つは、触媒化学に関する課題です。環境・エネルギー分野に貢献するための新規触媒の開発と高機能化を進めます。
それから、2.ポリマーの利用というのは非常に重要だと思います。新規高分子素材の開発、それから、これを使った遺伝子導入の素材などの開発も進めている。
それから、3.食料安定確保、それから、バイオマス生産というのは、地球温暖化に伴って、より厳しい環境での生産が求められます。そういったものに対応できるような作物、あるいは、省資源で生産できる作物を作るということで研究が進んでいます。
それから、4.有用植物・微生物の利用という内容です。これは、最近、メタゲノム解析で、いろいろな根圏の微生物とか、あるいは、腸内の微生物の研究が進んでいますけれども、いろいろな新しい難培養の微生物、あるいは、それに伴う遺伝子も見つかっていますので、そういったものを利用するバイオリファイナリーの技術に使っていきたいと考えています。
それから、理研はいろいろな研究基盤を持っていますけれども、特にこのセンターでは、ゲノム・メタボロームの解析、あるいは、ケミカルバンクとかケミカルスクリーニングということで、いわゆる化合物、あるいは、小分子などが非常に特徴になりますので、そういったものを中心にして研究開発を進めていきたいと考えています。
以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。
それでは、何か御質問、御意見等ございましたら、お願いしたいと思います。いかがでございましょうか。どうぞ。
【田中委員】  藻類の件でちょっとお伺いしたいんですけれども。最近、オイルの価格が下がっているせいか、ユーグレナさんも含めて、藻類よるオイル生産のターゲットが、有用な化学品の製造とか、あるいは食料的な、あるいは栄養素みたいなものに変わっているという状況だと言う人もおりますし、一方、ゲノム編集なんかの進展に伴って、そういう酵素の改変技術がどんどん進むので、もう一回藻類の研究の進展が期待できるだろうという、そういう両方の情報があるような感じなんですけれども、全体として、今、藻類の研究の動向というのはどんな感じなんでしょうか。
【篠崎センター長】  確かに、石油とかシェールガスとか、そういったいわゆるエネルギーに使われているオイルが非常に安くなっているということもあって、バイオマス由来のオイルはやっぱり苦戦していると思います。私たち、バイオマス工学を2010年に始めましたけれども、そのときにも、バイオエタノールよりは、むしろバイオリファイナリーを目指そうということで、有用な化合物を作るということで、微生物生産を向上させるということがいいのではないかなと思っています。
1つ、きょう紹介しましたけれども、イソプレンの合成は非常にうまくいっているケースで、代謝の経路も、新しい経路を作り出して、それから、人工酵素も設計するということで、今後、いろいろな化合物をどう作るかということなんですけれども、人工知能の技術なんかも入れていって最適化できるというふうに持っていければ、新たな展開があるのではないかと思います。
扱っていて、やっぱりエネルギーは非常に難しいなという感じがするんですね。やっぱり実際に大量に安いものを作るので、価格競争になるんですよね。だから、やはり今までにない新しい高付加価値のあるものを作る方が、生産としてはいいのかなと思っていますし、開発のターゲットも、その方がいいのではないかなと私は思っています。
【田中委員】  ありがとうございました。
【安井主査】  ほかに何かございますか。どうぞ。
【松橋委員】  今のお答えで、半分ぐらい私も理解いたしましたけれども。同様の質問で、13ページのユーグレナのものなんかは、ここに重イオンビームを打ち込むとか、こういうウエットなバイオマスですから、エネルギー、おっしゃったように、非常に安いものですし、あと、いわゆるレベルの高いサイエンスの研究とは別に、もう少しローレベルと言うとあれなんだけど、エンジニアリングの基本的なエネルギー収支の算定というのは当然あるんだと思うんですね。つまり、1のエネルギーを作り出すときに、どのぐらいのエネルギーをここに突っ込んでいるのかと。イオンビームのエネルギー、それから、ウエットなものから油を取り出すので、当然、乾燥のエネルギーも必要で、そういうところをエンジニアリング的にやると、かなり厳しい計算結果になることが多いと思うんですが、そのあたりをどのように進められているかというのを教えていただきたい。
もう一つは、15ページのリチウムホウ素のお話なんですが、これもCO2が温暖化につながるから、CO2削減につながる有効な利用法ということで御紹介されているんですけれども、我々も長くやってきて、大量に、日本だけで13億トン以上出ているCO2と、これによって吸収できるCO2の量ということを考えますと、基本的にはサプライとデマンドのミスマッチでもって、何か高付加価値なものを作るという意味ではいいけど、CO2削減の方法というふうに言うのはちょっと難しいのではないか。つまり、そういう意味では、ここも非常に単純な物質のフローの検討といいますか、低レベルの話なんですが、そこらが理研でどのように進められているかを教えていただければと思います。
【篠崎センター長】  じゃ、最初のユーグレナ社との連携ですけれども、これはLCAというほどには進んでいないと思いますけれども。ただ、ちょっと誤解があるといけないんですけれども、重イオンビームの育種の方は、重イオンビーム、普通、加速器で重イオンを発生させていますけれども、一度の照射で多数の変異体が取れますので、変異体を利用するということで、重イオンビームをいつも動かしているわけではないので、そこは多分誤解があるのではないかと思います。
生物生産は、特に光合成によって無機物からいろいろな油も作れるということで、すごく期待しているんです。実際にユーグレナ社では2020年にユーグレナからとれる燃料でジェット機を飛ばすという目標でやっていますけれども、そのときに、実際にそれがどのぐらいのコストになるのかというのが、1つのポイントになるかなと思います。
あと、ユーグレナ社の研究者とも、近いのでいろいろ話をしていますけれども、オイルの製造に関しては、健康にいいオイルとか、いろいろありますから、この実証プラントで、これはユーグレナだけではなくて、いろいろな素材を用いて油を作ろうということになっているので、そういった意味での評価もすれば、私たちでも貢献できるのではないかなと思っています。
それから、リチウムホウ素のことは、侯さんの方から。
【侯副センター長】  CO2の話については、おっしゃるとおりです。ここはちょっと誤解を与えたのかもしれませんが、この項目では、理研の中では、触媒開発以外に、植物の活用とか、光合成も含めて様々な研究に取り組んでいます。その意味では、CO2の削減に貢献しているという大きな枠組みの中で、今、この触媒の話が上げられたんですけれども、おっしゃるとおりで、触媒を用いたCO2の有効利用については、むしろCO2は非常に入手しやすくて、安価で、かつ、本質的には再生可能な資源として活用するということは非常に重要だということで、そこで、例えば、この場合は、入手しやすいCO2を使って、1段階でこのようなリチウムホウ素化合物を作り出すことに成功したということで、例えば、現在、まさにその性質を調べているところですけれども、リチウムイオン電池の電解質としての利用の期待もされているし、あるいは、CO2を使って、従来の高い原料でも使って作りにくいような有用物の合成も可能な場合も多いです。我々としては、CO2の特徴を生かした有機合成を目指しています。
【松橋委員】  ありがとうございます。
【安井主査】  じゃ、最後。
【江守委員】  ありがとうございました。
僕も、実は、ユーグレナのあの部分に関して、これは質問ではなくてコメントなんですけれども、エネルギーは難しいということを先ほどのお答えの中でおっしゃったんですけれども、確かに、例えば、今、お話に出てきたように、石油価格が下がっていたりすると、化石代替エネルギーの研究とか、それは特にこういうベンチャーでそういうことをやっているところに対しては逆風になりますので、その間、彼らは健康食品を売って、会社を成り立たせながら研究を続けなくてはいけないんだと僕は思っているんですけれども。
長期的に考えますと、気候変動の長期目標を実現するためには、世界的にCO2の排出量を実質ゼロにするようなことを実現しなくてはいけない。そのときに、電気以外の部分というのは非常に難しくて、特に輸送の燃料というのはその最たるものであろうと考えられますので、それをバイオ、あるいは、水素になるのか、ほかの可能性もあるかもしれませんけれども、それに置き換えて、それをなるべくCO2を出さないで作るという研究は、長期的に非常に重要な意味を持つと思いますので、是非、その観点からも、こういうエネルギーの部分にも注目していただいて、研究を進めていただければというふうにお願いいたします。
【篠崎センター長】  どうもありがとうございました。
ただ、最近感じるのは、20世紀型はマスプロダクションだったんですけれども、やっぱりそれをもうちょっと持続的な小さなシステムで作るようなことができれば、本当にCO2の削減になるようなシステムがあるのではないかなというふうに私は思っていますけど。
【安井主査】  ちょっと個人的にコメントをしたくなってしまったんですけど。
10ページに指摘はされているんですけど、やはりバイオマスも、今、バイオエタノールで、これ、ガソリン代替なんですよね。それで、ただ、それでは、今のジェット機の燃料が2050年に何になっているか。木材のバイオマスを用いた発電というのは、多分、ある程度一定量行われていて、そこから出てきたCO2と、それから、再生可能エネルギーからの水素、その水素は多分電解で作るんでしょうけど、その水素とそのCO2から、かなり大工業的に炭化水素が合成されているというイメージではないかと思うんですね。そんな気がするんですよ。そこあたりのマクロシナリオは、ちょうど松橋先生もコメントされたんですけど、それこそLCSあたりと共同研究されたらどうなんですかね。そのような勝手なことを考えてしまいました。
【篠崎センター長】  エンジニアリングの部分は非常に重要だと思うので、そういった意味での共同研究ができれば、もうちょっとシステムとして考えられるかなというふうに私たちも思っています。
【安井主査】  というわけで、ちょっと時間を使ってしまいまして申し訳ございません。ありがとうございました。
それでは、次でございますけれども、今申し上げた松橋先生から、JSTのLCSの活動につきまして御報告いただきたいと思います。お願いします。
【松橋委員】  今、安井主査の方からもお話を頂きましたが、LCS、必ずしも科学の最先端というわけではないんですが、エンジニアリングのいわゆるプロセス設計をできる研究者・技術者がそろっておりますので、共同研究なんていう御提案も頂きましたけれども、ちょうど先ほどのウエットなバイオマスのエネルギー利用に関しては、コストに関しては、江守委員がおっしゃったように、必ずしも短期的なものに振り回されるべきではないけれども、エネルギーはやっぱりもうちょっと安定的なものですから、ウエットなバイオマスからエネルギーを取り出すのは、やっぱりエネルギー収支の観点で厳しいものがあると思います。そこらは十分吟味した上で進めるべきだろうと思っておりますし、そういうことはきちんと評価できるものはLCSにはそろっておりますので、是非、機会があればというふうに思っております。
それでは、早速でございますが、資料3になります。低炭素社会実現のための社会シナリオ研究事業ということで、おめくりいただいて、2ページを御覧いただきたいと思います。LCSが発足した、いわゆる存立の基盤になるところなんですけれども、文科省の低炭素社会づくり研究開発戦略の中に、戦略的社会シナリオ研究の実施というのがあって、低炭素社会実現のための社会シナリオ研究、これを低炭素社会づくり研究開発戦略の一丁目一番地に位置付けたと、ここから始まっております。それで、平成22年4月から発足予定でしたが、JSTの理事長の意向もあって、それより早く、その前年の12月に発足しまして、22年4月から本格的に「低炭素社会実現のための社会シナリオ研究」に踏み出したというわけでございます。
その下には、JSTの中期目標・中期計画の中に、この低炭素社会戦略センターの社会シナリオ研究が位置付けられているということ。先ほど亀田補佐から御紹介がありましたが、研究開発計画(環境・エネルギー分野)の素案の中にも該当する文章が織り込まれておりまして、そういったところがLCSの現在進んでいるところになっております。
1ページおめくりいただきまして、3ページでございますが、低炭素社会実現のための社会シナリオ研究というのは、これは我が国の経済・社会の持続発展を伴う、科学技術を基盤とした持続可能で「明るく豊かな低炭素社会」の実現に貢献する、そのための望ましい社会の姿を描き、その実現に至る道筋を示す社会シナリオ研究を推進するということになっておりまして、「明るく豊かな低炭素社会」というのが度々議論になるんですけれども、そこに書いてある緑色の四角の枠中にありますように、CO2を中心とした温室効果ガス排出量が削減されると。それで、安全・安心な生活が維持でき、エネルギーが安定的に確保され、そして、経済が拡大して生活の豊かさが増し、若者に将来への展望が開け、高齢者が生きがいを持って暮らすことができる活力ある社会、これを明るく豊かな低炭素社会というふうに定義してございます。
4ページ目、絵でございますが、2020年、30年、50年の社会というのがございます。先頃、地球温暖化対策計画というものが閣議決定されましたけれども、その中で、2030年、2050年の温室効果ガス削減の目標が出ております。2030年の目標、それから、2050年には温室効果ガス80%削減を目指すというものが閣議決定されておりますが、こういった目標からバックキャスティング、フォーキャスティングを併用しながら社会シナリオを描いていく、これがLCAのミッションということになってまいります。2050年の姿、先ほど申しました80%削減を目指すというのは、エネルギーシステムの抜本的な変更を迫られておりますので、明らかにこれはフォーキャスティングでは絶対できない世界でございまして、まず至る点を示して、そこからバックキャスティングで何をしなければいかないのかということを描き出すということ。2030年に関しては、フォーキャスティングとバックキャスティングのちょうどぎりぎりのところかと思っておりまして、フォーキャスティングとバックキャスティングの両面から2030年のシナリオを描いていくというような手法を取っていくということでございます。そこに向けて、技術ということをまず大前提に置きながら、それだけではなく、経済・社会システムの制度設計も含めまして、研究開発課題を明確化し、シナリオを描いていく、こういう形になります。
次のページ、5ページ目でございますが、低炭素社会戦略センターの絵が書いてございまして、現在、5年の第1期が終わって、2期目に入っております。1期目から若干この絵を、いろいろ推進委員の皆様とかの御意見を頂いて変えたんですが、どこを変えたかと言いますと、我々、大きく言うと、技術システム、技術の評価グループというのがずっとできておりまして、それ以外に経済・社会システムの方の経済制度を検討する、社会システムを設計するグループがおります。これが分かれて仕事をしていたんですが、2期目においては、融合して、より一体になって低炭素社会のシステムを構築していかないと、有効なことにならないだろうということをしております。それから、さらに、ここで提案されたものを社会実装につなげていくということで、地方自治体や中央省庁の皆様と意見交換をしながら、提案したものを社会実装に導いていくという仕事をしているところでございます。
具体的なところですが、まず技術シナリオの方ですけれども、7ページ目を御覧いただきますと、我々の技術評価チームの仕事というのは、例えば、太陽電池や蓄電池、そういうものの製造プロセスに全部立ち入って、一つ一つの製造プロセスをデータベースにしていきまして、階層構造のデータモデルを作っていく。それに基づいて、太陽電池はコスト幾らになるのか、それが量子ドットであればどうなのか、あるいは、多結晶シリコンであればどうなのかということを一つ一つ丹念に評価をしていくという仕事に一つはなっております。
その例が、8ページにある太陽光発電の階層構造の図なんですが、非常にマクロなスケールから、架台をどうする、架台のシステムはどういう材料でできているとか、そういうマクロな話から、ミクロ、ナノに至る結晶構造をどういうふうに制御しているんだというところまで立ち入って、その製造プロセスを一つ一つ積み上げていく。そして、それをデータベースにして、最終的には効率、性能がどの程度なのか、そして、コストが幾らになるのかということを計算していく。そこに若干の技術のブレークスルーを織り込んでシナリオを作っていく、こういう姿になっております。この上の方に表がありますが、ワット当たり60円、周辺システムも入れて、キロワット6万円ということになるんですが、出した当時は非常に反響を呼びまして、これ、計算するとキロワットアワー6円ぐらいになるんですが、NEDOが7円というのを出しております。これは、NEDOは経産省のシナリオに基づき、グリッドパリティで、ほかの電源と競争するには7円にしなければいけないという必要性から出しているんですが、我々の方は、一つ一つ製造プロセスを積み上げて、このぐらいまで安くなりますということで出していますので、NEDOはもう非常に衝撃を受けまして、意見交換に参ったというような次第がございます。また当時は、これは安すぎるのではないかということで、いろんなところから御意見を頂いているんですが、今となっては、例えば、「サイエンス」とか、いろんな雑誌に、これより更に安く、キロワットアワー3円とか4円になるというような論文が出ておりまして、むしろ我々のものは、当時は非常に飛び出た評価だったんですが、今は、現状の方が追い越しているというような状況になってございます。こんなことを、太陽電池だけではなくて、蓄電池とか、さっき御紹介にありましたバイオマスとか、いろんなものに対して丹念に積み上げていくというのが、1つの技術チームの仕事です。
9ページ目を御覧いただきまして、今度は経済・社会の方なんですが、技術はそれなりに評価していきますと、これだけ安くなるということは分かっているんだけれども、しかし、現実には世の中に普及していないものですから、なぜ普及しないのかということを解明していくというのが経済・社会のチームの仕事でございまして、この9ページ目の絵は、今あるものを家庭に導入したら、それだけで家庭のエネルギー消費が4分の1になると。しかるに、それらは必ずしも導入されていない。それはなぜなのかということを原因を究明するところから始めておりまして、1つの問題として、消費者の行動には限定合理性というのがあって、きちんと買ったら、ちゃんとそのライフサイクルで元が取れる、そういう投資であっても必ずしも買うものではないんだということが行動経済の方から分かっておりまして、じゃ、それを突破するにはどうしたらいいのかということで、ファイナンスの仕組みとして、「電気代そのまま払い」という仕組みを提案し、プレス発表し、現在、いろんな自治体と協力をしながら、この導入を進めているところでございます。
これは一言で言うと、要は、省エネ設備、省エネ家電とか省エネ技術をただでその御家庭になり民生部門に入れまして、そして、節約される電気代、エネルギーコストで支払っていただくという仕組みでございます。簡単に言うとそういうことなんですが、現実には、例えば、損害保険であるとか、リースの事業者であるとか、ファイナンスの問題、いろいろございまして、そう簡単にはいかないところなんですが、自治体や事業者と協力をして、これに非常に近い事業スキームも現実に出てきて、静岡ガスなんかは、まさにこれにそっくりの事業スキームで現実に世の中に出しております。我々も実証実験を幾つかやっております。そんなことで、その事業体をグリーンパワーモデレータと呼んでおりまして、それは省エネの推進だけではなくて、再生可能の導入に従って、系統の変動電源への対応、系統の不安定化というのが問題になってきますから、我々としては、省エネだけではなく、系統の安定化にも貢献できるような事業体として、グリーンパワーモデレータというものを提案して、これから世の中に導入していこうということを考えてございます。
次のページ、11ページですが、家庭の電力消費量見える化実験ということで、これはLCSの方で「i-cosmos」というシステムを開発して、東京都内、それから、関西の方でも一部しておりますが、数百世帯の家庭について、1分ごとの電力消費量のデータをずっと取り続けております。これをもとに、省エネのこれから高度普及を促進するために、どのようなシステムを作っていったらいいか、また、電力でこれからアンシラリーサービスというものが、今年度にもそろそろ始まろうかと。欧米ではもう10年ぐらい前から始まっているんですが、我が国でもいよいよこういうものが始まるに当たって、系統の安定化にも家庭から貢献していく、そのためにはどういうふうに家庭が対応していったらいいのか、どういうふうにアグリゲートしていったらいいのか、そういうことをするための基礎的な研究のデータとして、「i-cosmos」のシステムを作っております。
12ページですけれども、これから我々としては、これはごく一部だけ御紹介しましたが、このような技術チームの成果と経済・社会システムチームの成果、これを統合して、特に2030年・2050年の日本の国家としての目標、それから、国際貢献ということを進めていくわけですけれども、大きな問題として、特に2050年の80%削減、電力システムに限って言うと、非常に大きな削減が求められる中では、電力システムそのものも抜本的に変えていかなければいけない。そのときに、どういう技術が必要であるのかということもさることながら、電力のシステムとしての研究が非常に大事である。要素技術としても、太陽電池や蓄電池の研究も重要ですけれども、システムとして安定的に運転しながら、その大宗が、例えば再生可能エネルギーになったときに、どういうふうにその変動を吸収し、どういうふうに過渡安定度の問題をクリアするのか。これは要素の技術というよりはシステムの研究が非常に重要になってまいりますので、ここのあたりで技術チームと経済・社会、その制度設計も含めまして、抜本的なシステム変更に対応できるように、そういう研究を進めてまいるということが今後の使命になってくるかと思います。
また、安井主査からも御示唆いただいたように、もちろん、理研のような立派な研究所もそうですけれども、我々、非常に小さな部隊ですので、いろいろな機関と垣根を外して連携することで、何とかこれからの低炭素社会の実現に貢献してまいりたいと思っております。
以上でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。
何か御質問、御意見。花木委員、どうぞ。
【花木委員】  花木でございます。
今、御説明の中でもありましたように、きょうはその一部を御紹介いただいたということであります。とりわけきょうは個別の技術を中心にお話を頂いたのかなと理解しておりますが、それに関連してちょっとお伺いしたいと思います。
このセンターの研究開発戦略のところにもありますように、社会シナリオを研究するというのが一番の中心だということになっているわけですね。このセンターが発足しましたのが、平成21年から22年4月ということで、その直後に東日本大震災があったということですね。東日本大震災によって社会の考え方も変わってきたということは、皆さん、御承知のとおりであります。直接的には、原子力発電所に対する将来が非常に見えにくくなったということと、それから、社会全体として、冗長性であるとか、あるいは、レジリエンシー、そういったものが重視されるようになってきて、効率だけではない部分にも社会が重点を置くようになってきましたですよね。
そういう中で、将来の社会シナリオを描くときに、そのような大震災後の社会の状況、あるいは、価値観というものを反映した検討は行っておられるのか。それは、このセンターの発足から言うと、東日本大震災後も既に最初から織り込んだ形でそのあたりを考えておられるのか。その社会的な要素についてちょっとお伺いしたいと思います。
【安井主査】  私自身、30年ぐらいエネルギーとか温暖化対策の研究をやっておりますが、やはり東日本大震災と福島第一原発の事故というのは、私が研究している中で最も大きな衝撃的な出来事であり、そして、その後、エネルギー政策や電力システムの改革というものが大きく進んでいったことも事実でして、否応(いやおう)なく、意識するせざるにかかわらず、そういったことは織り込んでLCSの研究も進めていかざるを得ないことは言うまでもないことでございます。
特に電力システムについては、それがどのぐらい影響したかどうかは別として、今、大きな改革の真っただ中で、エネルギー維新と言ってもいいような状況でございますから、電力システム自身の制度設計は、さっき申し上げたように、欧米と比べると大きく遅れておりまして、アンシラリーサービスの制度なんていうのは、ヨーロッパの小さな国でもきちんともうできているところ、日本はこれからですから。そして、再生可能が増えていく中では――これ、再生可能が増えていくということは、もう震災以降の間違いない事実であるという中で、系統の安定性が脅かされていると。これに対してどう対応していくかというときに、需要側の資源であるとか、蓄電池や電気自動車、こういったものを利用して系統の安定化に貢献しませんと、これまでの火力発電を中心とした周波数制御とか、そういうものでは対応できないことは全く明らかでございますので、このときに、いかにいい制度を提案して、建設的に再生可能を受け入れながら、系統の安定性を確保していく。こういうところに、1つ、電力システムで言えば、最大の努力を傾注していかないといけないということが、1つは間違いないことであろうかと思っております。
今、電力システムのことだけを申し上げましたが、閣議決定された地球温暖化対策計画のこともありますし、そのことを考えますと、電力システムに限らず、エネルギーシステムが抜本的な変更を迫られているわけですから、そこからバックキャストして、我々がやるべきことを考えていくという意味では、価値観の転換と言われたところを織り込んでやっていかなければいけないと思っております。
【安井主査】  どうぞ、小長井委員。
【小長井委員】  毎年、LCSの活動が活発になって、実力が付いてきたなと頼もしく思っております。
私、せっかく今御紹介いただいたので、7ページ、8ページのあたりでコメントと御質問をさせていただければと思うんですけど。先ほど、太陽光発電のところで、いろいろ製造コストの分析とか頂いているんですけど、やはり気になるのは、NEDOとどのくらい協議されているかなというところだと思うんですけれども。かつて、10年以上前は、生産レベルが1社当たり、例えば、年に数十メガくらいのときには、企業さんもかなり積極的に製造に関わるプロセスやら各工程の価格まで出して議論したこともあるんですけど、今のようなこういう現状になりますと、最近はもう企業さんは一切そういうデータは出さないんですね。だから、ここのところに書かれている基盤データベースというのがどのくらい信ぴょう性があるのかよく分からないんですけど、こういうところは慎重に、NEDOなんかもデータを持っているでしょうし、御議論いただけたらいいなと。これからは、やはり1社1ギガ以上の製造ラインになるので、データもどんどん変わってきてしまいますから、ここら辺を御注意いただきたいということ。
それから、8ページのところを見ると、原価の展望で書かれていますけど、今、NEDOは、最後は基本的にはキロワットアワーコストでしか出していないので、そこへ行く過程がやっぱり重要だと思うんですね。そこまで行きますと、例えば、現状でも、今、ドイツとかアメリカと見ると、比較すると、日本はやはりキロワットアワーコストは高いですよ。倍ぐらい。その理由がどこにあるかというのも見えてくるでしょうし、システム利用率がおかしいとか、やはり流通にかかっているとか、是非そこまで踏み込んで、この先を続けていただければいいのではないかなと思っております。是非、キロワットアワーコストまで、これを更に続けていっていただきたいと思います。
以上です。
【松橋委員】  分かりました。ありがとうございます。是非、そのように続けてまいりたいと思います。
【安井主査】  ちょうど頃合いなんですけれども、よろしゅうございましょうか。それでは、ありがとうございました。
それでは、最後になりますけれども、GEOSSにつきまして、GEOの事務局の落合Scientific and Technical Officerからの御説明を頂きたいと思います。お願いいたします。
【落合Scientific and Technical Officer】  ありがとうございます。落合と申します。GEO事務局、こちらの事務局は、今、スイスのジュネーブにございまして、今回、夏休みで帰国する機会がありましたので、御発表させていただきたいと思います。
GEO/GEOSSについてまず御紹介ということで、1ページ目ですけれども、GEOSS、全球地球観測システム(Global Earth Observation System of Systems)ということで、複数の観測システム――これを複数の観測システムと言いますのは、衛星観測、並びに海洋のブイですとか船舶、並びに地上のフラックスタワーですとか気象ネットワーク、こういったものを統合した複数の観測システムからなる包括的な地球観測のシステムということです。ポンチ絵にありますように、位置情報、災害情報、また、温室効果ガス、降水情報等の衛星データ、並びに海洋・地上からのデータ等を統合いたします。こういったところをGEO、これはフレームワークの方になるんですけれども、地球観測に関する政府間会合(Group on Earth Observations)、こういった枠組みの中で実施していきましょうということで、現在、103か国の国、並びに欧州委員会、ヨーロピアン・コミッションは別扱いになっていますが、あと103の国際機関ですとか、ドナーエージェンシー、並びに研究機関等が参加しているフレームワークでございます。
2ページ目に参りまして、GEOのビジョンとミッションになりますけれども、ビジョン、一般的にはなりますが、調整され包括的・持続的な地球観測及び情報によって、人類の利益や意思決定に資する活動ということになります。
そのミッションについては、これまで衛星並びにいろんな地上観測につきましては、一国がやるには限界があるということで、それらのことを補完するために、観測点の不十分さですとか、観測頻度のギャップを埋めるために、ベースとしては、既存のシステムを使います。それらを充実・連携させることが1つのミッションであるとともに、新たなリソースを投入して観測手段を構築することも、この活動の範囲になっています。そこから出てくる観測データにつきましては、一発ものに終わるわけではなくて、十分な気候変動観測等に資するために継続性を確保する。並びに、それらのデータを最小時間、最低限の費用による適切なデータ及び情報提供、いわゆるフリーオープンデータといったものです。さらに、それらの複数システムを連携させるものですので、相互運用性を確保することが大事になってきます。開発途上国との積極的関与と能力開発の支援を行っております。
3ページに参りまして、これらGEOの設立経緯ですけれども、2002年に世界首脳会議(WSSD:World Summit on Sustainable Development)やG8のエビアンサミットにおきまして、重要性の高まりを受けまして、GEOSSの構築が合意されております。これは2003年から2004年、2005年の3回のサミットにおきまして、インプリメンテーションプランを決めまして、計画されました。2004年、第2回は東京で開催されて、この際には小泉首相が参加されております。
4ページ目ですけれども、実は、もう既に第2期が始まっておりまして、第1期は2005年から10年計画、今回、第2期が2016年から2025年までの次の10年実施計画ということで、既にスタートしております。それが、先般、2015年、メキシコシティで開催されたサミットで、日本からは冨岡副大臣に参加いただきまして、次の実施計画が了承されました。
5ページ目に行っていただきまして、その戦略計画というものをどう具体化していくかということで、GEOのビジョンの実現を目指しまして、GEOSSを構築するためのフレームワークということで、GEOの戦略というのは、やはり一国ではできないために、結集する力というものが非常に大事になってくる。その次のスライドで説明いたしますが、8つの社会利益分野を対象としております。さらに、地球観測の重要性の提唱をハイレベルで実施していくものと、あと、政策決定者との連携、さらに、データと情報の提供、そのAdvocate、Engage、Deliverという3つのキーワードを使っております。
それらを具体化するコア機能としまして、先ほど話にも出ましたが、ユーザニーズというものが非常に重要になってくる。こちらと連携、こちらのユーザニーズをベースとして、ユーザドリブンに基づいて、観測のギャップ解析ですとか、データの提供を行っていく。それらを、先ほど申しましたように、データの継続が重要であると。それらユーザニーズに基づいて、連携促進とリソースの最適化を行い、データは原則としてフリーオープンを目指していく。グローバルと地域のイニシアチブの調整整備。特にGEOは、今回、「持続可能な開発目標(SDGs)」を優先目標として掲げております。さらに、GEOは実は国連ではなくインターガバメントな組織ですが、関連する国連との連携、民間セクターとの連携、開発銀行とエンドユーザーとの連携、並びに技術イノベーションの推進というものを目指しております。
6ページが、先ほど言いましたように、8つの社会利益分野を表しておりまして、非常に広範な範囲を対象として、こちらからユーザーの要求ですとか、関係の機関との連携というものを目指しております。生態系・エコシステムの持続、災害、エネルギー、食料保障、インフラ、公衆衛生、都市開発、水資源管理等を対象としております。
7ページ目ですが、こういったビジョンとか戦略を具体化するために、どういった活動をしているのかということで、ワークプログラムというものを実行しております。原則3年間分の活動を集めて実施しているんですけれども、2016年は、前回の10年から次の10年に移行するための移行期としまして、1年間だけのワークプログラムを今実施しておりまして、4つの下にあるようなカテゴリーを考えております。
フラグシップ活動というもので、いわゆるマチュアの度合いによって分類をしているんですけれども、GEOのコミュニティにおいて、政策課題とかユーザニーズが大変明確であって、それらの社会ニーズ――先ほど社会実装という言葉がありましたけれども、社会実装可能なレベルで運用移管が可能となるもの。また、そういった活動リソースが確保されていることを、これをフラグシップ活動と呼んでおります。現在、これはまだ選定中でございますけれども、後で御紹介させていただきますが、GEOGLAM(農業監視)ですとか、GFOI(森林の監視)、さらに、バイオダイバーシティ監視、あとは、水銀の監視のシステム等が対象となっております。
もうちょっとレベルが下がるものとして、イニシアチブ活動として、共通的に調整できる――まだユーザニーズとかは明確でないものの、コミュニティにおいて実施できるもの。そういったものは、先ほど述べましたが、SDGsなんかは、まだユーザニーズの方、あと、どういった指標が衛星データですとか地球観測データで観測できるかというのをマッチングを行わなければいけないものがありますので、こういったところはまだもう少しマチュアになる必要があるということで、イニシアチブ活動と。
コミュニティ活動というものが、萌芽(ほうが)的なタスクという、だんだん芽が出てきて、研究開発も含めて実施していくべきもの。
さらに、基盤タスク(Foundational Task)などと呼んでおりますが、GEOSSのシステムが構築される上で必要なデータ共有の原則ですとか、観測システムの調整、情報インフラの整備、ユーザニーズの調整等々、こういったところが基盤のタスクとなって、こういったフラグシップ、イニシアチブ、あるいは、コミュニティ活動を支援していくといったような構造になっております。
それでは、8ページで、具体的なグローバルですとか地域のイニシアチブの候補を挙げていますが、3つだけ御紹介させていただきます。
9ページで、先ほど言いました全球の森林観測イニシアチブ(GFOI)と呼んでおりますけれども、皆さん御存じのとおり、二酸化炭素の吸収源として森林は非常に大きな役割を担っておりまして、特に、やはり途上国の森林資源保有国の森林管理を効率的に実施するため、衛星データを使います。あるいは、地上データを統合します。そういったところはGEOが貢献いたしますということで活動を行っています。こういったところは、オーストラリア、ノルウェー、米国、あと、地球観測の衛星を調整する委員会、CEOSと呼んでいますけれども、JAXAなんかもこちらに入って活動しております。あとは、世界食料機関(FAO)が入っておりまして、5つのこういった能力開発・研究開発コンポーネント、手法とガイダンス、どうやってデータを使うのか、処理するのか、あとは、衛星データの取得調整といった形で、それらを取りまとめるGFOIオフィスというものがございます。
具体的にどういう活動の流れになるかというのを10ページに示しておりまして、例えば、衛星データだけ今取り上げておりますけれども、日本のALOS-2という「だいち2号」、JAXAから打ち上げています衛星データ、あるいは、米国LANDSAT、欧州の宇宙機関であるSentinel 2等のデータを調整して、データを取得し、研究・解析によって、こういった森林マップの作成を、例えば、年2回行って、こういったところを政策貢献に対して提供するといったような流れになっております。どういった効果が出たという意味では、こちらの黄色のハッチで、森林保有国、特にブラジルは非常に大きな森林を保有しておりますけれども、そこでALOS、日本の衛星が違法伐採の特定を実施している。これは国際協力機構(JICA)・JSTのプロジェクトで実施しておりまして、数年前に実施されたもので、結果、非常に伐採地域の減少効果に大きな役割を行ったといったような政策効果が出ているという1つの例でございます。
11ページは、視角化して、ブラジルのフィッシュボーン、アマゾン熱帯雨林が日本のALOS/PALSAR、あるいは、ALOS2/PALSAR2、2010年と2015年の比較を行いまして、赤いエリアが新しく伐採された地域という形で、クリアに見えるというところ。これは非常に分かりやすい例として挙げさせていただきまして、特に魚の骨のように見えるところが、フィッシュボーンの伐採という形で呼んでおります。特にブラジルなんか、熱帯雨林で雲が非常に厚くかかるんですね。そうなると、衛星で見ても、やっぱり通り抜けられない。特に光で見る衛星はやっぱり難しいということで、ALOS/PALSARは、レーダセンサを用いていますので、雲を通り抜ける。なので、常時観測できるという強みを持っております。こうしたところから、違法伐採の削減効果が出ております。
これはGFOIでございまして、12ページが、GEOGLAM、今度は農業の監視のイニシアチブ、Global Agricultural Monitoringと呼んでいますけど、こちらの方はハイレベルなアクションプランが設定されまして、特に2011年のG20の農業大臣会合、フランスで行われましたが、こちらからアクションプランとして設定されまして、世界食糧農業機関が提供します農業市場情報システム(AMIS)と呼んでおりますけれども、こちらに地球観測データをインプットとして、質の高い食糧供給情報を提供するというようなアクションが具体的に設定されたと。これを受けまして、GEOの方で、日本を含む関係各国でチームを構成しまして、実際にこういったガバナンス活動、諮問委員会から整備委員会、さらに、全球・地域の監視システムですとか、国別の監視システム、さらに、リスクがある対象の国を監視する特別な活動を行ったりして、横断的に、先ほどGFOIでも同じでしたけれども、地球観測データをきちんと効率的に採れるような調整をしたりですとか、研究開発活動、さらに、その対象国となるようなところに能力開発を行うような活動を実施しております。
13ページにつきましては、これは参考情報としまして、最近の農作物価格の高騰状況ということで、1972年から2007年まで、小麦の価格が大体150ドル/トンという形になっていたんですけれども、最近では、2008年から2012年では、倍近く値上がりしている。こういったところに地球観測データを用いて、作況情報を関連付けながら、こういったところの高騰の価格を予期して、対象国に通知して、政策決定に生かしてもらうといったようなことが目的となっております。
先ほどのGFOIと同じような流れになりますが、観測を行って、研究・解析を行ってマップを作る。そのマップを報告として政策決定に生かしていくというような流れになっております。
15ページが、具体的に作付けの監視情報と、こんなものを出していますということを御紹介させていただきたいんですけれども、これは既にAMISという、FAOの方に提供を2013年9月から開始しているんですけれども、トウモロコシ、小麦、大豆、米の作付け状況を地図上の起因情報、つまり、今いいのか悪いのかというものを色付けで判断させて、さらに、その原因が、台風、あるいは、干ばつなのか、高温、冷害、あるいは、エクストリームイベントで起こっているものなのかというところを判別して、月別ごとに出しているというような地図です。これが地球観測データから出てくるアウトプットとしてAMISに提供して、さらに、AMISから各国に提供している。
具体的に、16ページで、更に進んだ形で、早期警戒情報として、アフリカのタンザニアですとか、全体に告示情報として提供されるというような仕組みも行っております。
3つ目の具体例ですけれども、これは特に日本の東大の小池先生が非常に真剣に活動していただいている、GEOSSのアジア水循環イニシアチブということで、アジア域の水に関する共通課題を特定し、GEOSSのデータを活用し水資源管理に資するデータ統合を促進という形で活動しています。その活動の特色は、アジア各国に1つの河川流域を設定しまして、そこの河川についてこの管理を行いましょうと。衛星・地上観測、並びにモデルを集約します。それらの相互運用性を確保し、データ統合を行い、能力開発を実施し、早期の成果を創出していく。具体的に、2005年から既にもう第1期の10年間を進めておりまして、18ページにあります18のデモンストレーションの実施河川流域を特定し、それぞれのデータを提供して、モデルを作って、予測情報を作っております。
それを表したのが19ページになるんですが、特に、カンボジアにおけます水・気候・農業ワークベンチということで、政策決定会合から、あとは、雨量計を用いて衛星データを補正して、広域データセットを作る。そういったところをモデルに組み込んで、オペレーションのシステムに組み込むようなところまで行って、地域の実務者までOJTを行っている。そのプロセスにおいては、農家の具体的なニーズを聞いたりとかして、水循環と稲作収量の連結モデルを作成したりということをやって、具体的なインプリメンテーションまで行っているという状況です。
以上、こういったような3つの政策課題を具体的に設定して、活動を行って、そのベースにあるところは、やはりデータの共有原則ということが非常に重要になります。それが20ページになりまして、3つの原則、フル・オープンデータアクセスを原則とします。データとプロダクトは最低時間と最低のコストで提供します。無償あるいは実費による提供とします。これは原則なので、強制ではないということで、GEOに参加している参加国につきましては、なるべくこれに沿ってやっていただきたいと。こういったところで、現状、これを実際に実施するためのインフラも作っておりまして、世界140のデータのシステムが、現在、GEOSSの情報共有基盤に通じてデータを公開している。日本は、実際にDIASがこれに接続されているという状況です。また、民間のセクターからも5つのデータシステムが連携しております。
21ページなんですが、そういったところで、GEOSSの意義というものは、もう一回振り返るとどういうことになるんでしょうということで、やはり先ほども言いましたように、そういったいろんな観測システムやデータを統合して、いわゆる地球規模課題を解決するためには、一国ではなかなか難しい。そういったところを、各国、なるべく多くの国あるいは機関に参加してもらうために、データ共有ポリシーを策定して、提唱して、浸透させたりですとか、情報をつなげてデータを共有させる。あるいは、イニシアチブを立ち上げて、課題解決を一緒に実施する。あるいは、そういった戦略を作って、皆に共有する。そういったことが、GEOの全体の枠組みになっております。
日本にとってどういう意義があるかと言いますと、そういったところをプラットフォームの構築として、具体的に、日本の中でも研究機関等が統合して参加していく。それがイニシアチブへの貢献やデータ提供等による日本の科学技術の利用推進につながってきまして、特に、それは観測データ、予測データ、そういったものをDIASに登録することによって、世界に流れていくと同時に、いろいろな利用が拡大していくと考えております。また、それは国際貢献にもつながってきます。あるいは、逆のパターンとして、諸外国のデータを日本の中で利用する可能性も、GEOを通じて行うことができると考えております。
最後、22ページ、所感になるんですけれども、先ほど言いましたように、こういった唯一のプラットフォームとしてGEOはやっておりますので、是非、関係のある方は参加していただきたいというところもあるんですけれども、一方、地域のイニシアチブというのも立ち上がりつつありまして、特にアフリカと中南米が、既にもう自分たちの地域でGEOSSの具体的なシステムを立ち上げております。アジアはこれからといったような段階です。
やはり今注目されているのがSDGs、これに対して、観測データがどういうふうに提供されるかというのは、全体で考えられている。
あと、もう一つ注目は、オープンデータがもう前提であって、ビッグデータとそれを加工するツールですとか、処理するシステムというのはもう十分でき上がりつつあるということで、もうこの流れは絶対止まらないでしょうというのが我々の見方で、こういったところをどういうふうに考えていくか。
あと、民間ビジネスとの連携。特に、やはりグーグルなんかは、GEOとある意味相対する立場ですので、どう連携していくのか。お互いバッティングはしないで、GEOとどう連携していくのか。あるいは、マイクロソフトとIBM、そういったところの民間セクターともどういうふうに連携していくかというのは、非常に重要なテーマとなっております。
以上でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。
何か御質問、御意見ございましたら、お願いしたいと思いますが。どうぞ。
【花木委員】  ちょうど最後に言われた民間セクターとの連携のことで、もうちょっとお伺いしたいと思います。やはり社会のいろんな面に貢献していくというのを考えると、さっきグーグルとかIBMとかおっしゃいましたが、そういう非常にビッグな会社もそうだけれども、もっと専門性を持った様々な、天気予報を始め、そういう会社との連携というのもあると思うんですね。
だけど、一方では、このGEOのシステムを作るのに、それぞれの国の政府がお金を出し、あるいは、国連がお金を出している。そういった初期投資にお金を投入しているということを考えると、最後の果実の部分だけ民間が持っていくというのは、それは問題があるだろうと思うんですね。そのあたり、民間がこのデータ、あるいは、このシステムを使うことに対して、GEOの方ではどういうような方針を持っておられるのか、もし分かりましたら教えていただけますでしょうか。
【落合Scientific and Technical Officer】  ありがとうございます。
先ほど、最後の果実だけ持っていかれるというのは、そこは我々もセンシティブになっておりまして、例えば、GEOで集めたデータをグーグルがみんな持っていって、自分たちで処理して見せてしまうというところは、非常に警戒はしております。
ただ、そこは、基本、データポリシーはオープンということでありますので、そういうビジネスが育っていくことを阻害するものではないというふうな一方でありまして、そことのバランスで、完璧な方針というものはないんですけれども、例えば、グーグルの一人勝ちにはさせないとか、あるいは、もうちょっと中小企業を巻き込んでいくとか、特に日本、アジア、それはもうグローバルで活性化していくべきものであるというふうに我々は信じておりますので、そこは今、現状、個別の会社がアプローチしてきた段階で、我々は話をしているんですけれども、我々が打っていくようなところは、まだ方針が完璧には育っていないので、そういった状況になっております。
【花木委員】  是非、日本の会社もそういうところへ入っていってほしいですね。ありがとうございます。
【安井主査】  ほかに何かございますでしょうか。
大変ちょうどいい時間になっておりまして、よろしゅうございましょうか。
それでは、次の議題に移らせていただきます。御専門の方からいろいろと現状の御報告を頂きましたけれども、それがどのように生かされるかという対象が議題(2)でございまして、研究開発計画素案を作っておりますが、先ほど説明を頂いておりますけれども、読んでみて、やっぱり何となくしっくりこないんですね。何でしっくりこないのかなといろいろ考えるんですけど、多分、パリ協定のネットゼロエミッションをはじめとしたインパクトがでか過ぎて、それで、それにぴったり合った格好を現実的な文章にするというのが多分難しいんですね。そういうことだと思うんで、いろいろと御意見を頂きながら、まあまあのレベルにそろえていかなければいけないなと思っておる次第でございます。
お手元の資料5を御覧いただきまして、きょう、今すぐ全部意見を出せと言われても多分無理で、次、これが、しかしながら、比較的早いんですね。次は8月24日ですかね。上の委員会で何かしゃべらなきゃいけないんで、そのために、できるだけ変えなければいけない部分を変えるという、そういう作業を是非お願いしたいということでございまして、きょう御意見が頂ければそれに越したことはありませんが、事務局をどのぐらい時間を与えないでの仕事をしてくれるかという、そういうことをやれば、まだ若干の余裕はあると、そんな感じでございます。
いずれにいたしましても、ちょっとお読みいただいた感想などを、なるべく本日中多く頂きたいなということでございます。
何かございましたら。どうぞ。
【橋本主査代理】  3ページ目ですけれども、特に、最初のアウトカム指標のことですが、御案内のように、第5期の科学技術基本計画には、数値目標を入れるということが入っているのでこれを入れているんだとは思いますが、第5期の科学技術基本計画に数値目標を入れるということに対する危険性は非常に議論されて、私も入れるべきではないと強く主張した人間なんですが、これはいろんなことがあって入れざるを得なかったという経緯があります。
その危険性については随分議論されたので、別紙に指標の入れ方・使い方については注意書きがかなり詳しく書き込まれています。例えば、論文数をそのままプログラムごとに使うのではなくて、相対的に見たときにそういうものが出るようにということになっています。実は総合科学技術会議の議論では、各プロジェクトに論文とか特許というものがアウトカム指標として単純に入ってしまうことを非常に恐れそうならないように非常に工夫したんですが、やはり現実はこうなってしまうんだというのを今感じた次第です。
言うまでもありませんが、例えば、特許出願累積件数についてですが、特許は増やそうと思ったら幾らでも増やせますし、出願しない方がよいという場合もあります。論文数についても、論文は幾らでも書けるものではなく、また論文が出たからいいというものでもない。あるいは、論文を書かないという選択もありいろいろあるわけです。
また、研究内容によっても全然違います。例えば、きょうのお話ですと、十倉センターは、明らかに論文数を指標にして間違いないと思います。篠崎センターも、多分、論文数がメインでいいんじゃないかと思います。逆に言うと、その下の橋渡しテーマ数を十倉センターの指標にするべきではないと思います。篠崎センターは微妙で分かりません。というように、実は、研究内容によって指標は全部変わるものなのです。そうしないと間違ってしまうと思います。
このため十倉センターや篠崎センターがなぜここに入っているのかという根本的な問題があるとしても、これはいろいろな予算のたてつけ上、仕方なく入っているのでしょうから、その前提で申し上げると、ここに書いているような特許数、論文数、橋渡しテーマ数、研究開発成果の寄与状況などはそれぞれ全部に適用されることでは決してなくて、最終的にプロジェクトごとにしっかりと見ていくということが必要です。何もないということはあり得ないです。いろいろなプログラムについて、個々のプログラムをしっかり見る一方で環境エネルギー課のやっているプロジェクト全体がトータルで見てどうなのか、かなりきめ細かく見ていく必要があるのではないかと思います。
多分私の理解は間違いないと思いますが、十倉センターは、論文数にしたらすごく喜ぶと思います。いい論文でこうやる。彼らの研究は非常にそれでブラッシュアップされていくんだと思うのです。これは篠崎センターも、多分そうだと思います。しかし、例えば、私がPDをやっているALCAのプロジェクトで、実は論文数にされたら困るのです。特許数でも困るのです。実は、すごく微妙なバランスでやっていて、例えば、橋渡しテーマ数とかにされるとやりやすいです。やりやすいというよりも、それが多分そのプロジェクトの最高のパフォーマンスを評価しているんだと思います。
というようなことが分かるような形で、このアウトカム指標をしっかりと書いていただく必要があるかと思います。いろんなところで、多分、こういうことが起きているのではないでしょうか。私は、指標を作ったときの経緯を分かっているので、非常に気になったんですけれども、是非その概念をうまく入れて、ここで見本になるようなものを作っていただいて、ほかに広げていただきたいなと思います。それが1点目です。
2点目は、その下のところで、ステージゲート評価に関する記述の後に、国立研究開発法人におけるとの記述があり、この後、最初の物性物理との記述がありますがこれは十倉センターに向けられているし、その後の植物科学、これは篠崎センターに向けられているし、これ、余りにもダイレクト過ぎて、もう少しこれは分野を広げておいていただかないといけないと思います。これは十倉センターと篠崎センターにお金を入れるために書かれているとしか読めない文章ですので、そこはちょっと工夫していただく必要があるし、ここを一体どうするのか。今申し上げたように、実際にはこの2つのセンターが環境エネルギー課の予算枠の中に入っているということだけなのであればこれでいいのでしょうけれど、もう少しここは広く見るべきなんだと思います。ですので、そこは工夫していただきたいと思います。
もう一つ、そこで絡めて言いますと、その下のところとの記述で、その下の方は、2030年と2050年と書いていますが、その上の記述は位置付けが書かれていないですね。こういうふうに書くと、下の方が2030年をやって、それで、次、2050年をと明確に書いていて、上の方は一体何なのかということが、この書き方だったらちょっと分からないと思います。プロジェクトとしての、位置付けが分からないのではないでしょうか。そこは一回整理していただく必要があるかと思いました。
【安井主査】  ありがとうございました。
ほかに。どうぞ、お願いします。
【高村主査代理】  ありがとうございます。
今、橋本先生がおっしゃった点で、随分、私が質問したいと思っていた点が解決しているんですが。事務局に念のための確認なんですが、こういう理解でよいかということですけれども。特に、ここで今回新しく付記していただいている指標の位置付けであります。私、こちら、文科省の役割の下に書かれているので、基本的には、文科省として全体の取組について評価をする際に使うものだという理解をしていたのですが、それでよいかどうかということで、それはひょっとしたら、文科省が運営するプログラムについても対象になるのか。その指標の使われ方、位置付けという点について、まず教えていただければと思います。
その後、もし、それを受けて。
【安井主査】  お答え、お願いします。
【亀田課長補佐】  お答えをさせていただきます。
この指標ですけれども、この研究開発計画といたしましては、まさに中目標を達成しているかどうかという評価に使われるということなんですけれども、同時に、政策評価体系においてもこの指標を活用するというふうになっておりますので、そちらの方で、つまり、我々がやっている具体の事業の評価においてもこういった指標を活用していく、そういうふうな位置付けになっております。そういう意味でいきますと、先ほど橋本委員から御指摘ありましたとおり、我々も全ての指標を全ての事業に適用するという考えではもちろんございませんので、そこら辺、書きぶりの工夫とか、そういったものは検討させていただきたいと考えております。
【安井主査】  ありがとうございます。よろしいですか、何か。
【高村主査代理】  追加で。ありがとうございます。
それでしたら、特に、先ほど御報告いただいた十倉先生と篠崎先生に、もし可能なら、この資料5の4ページのところに、この委員会で議論をせよということで、特に従来の延長線でない新たな発想に基づく研究開発、あるいは、2050年を目標としつつ、当面すぐに研究成果が必ずしも出るとは限らないといったような時間軸の研究の指標として、やはり盛り込まれるべき、あるいは、盛り込まれるべきではないといったような点について、もし御意見がおありでしたら伺えればという点でございます。
以上です。
【安井主査】  もし何かあればお願いします。
【十倉センター長】  ありがとうございます。
特に、割と将来を見据えたような研究開発のときに、その業績をどういうふうに判断するかというのは大変難しい話でありまして、論文のサイテーション等というのはよく言われるんですけれども、それだって理論をぶって3年目ぐらいからどんどん上がっていくような形ですので、結局、そういうものの評価というのは期待値でしかないんですね。
そういうときに、よく使われるのは、インパクトファクターといって、これは大変評判が悪いもので、名前だけがよければいいかというとあれなんですけど。ただ、組織として使うときには、割と大きな分母で使うときには、結局は、それが平均的なものに期待値として機能するということがあります。
もちろん、論文成果というときに、先ほど橋本先生の話にありましたように、逆に、論文を書こうと思えば幾らでも書けるんで、数をやってもほとんど意味がないということがあるんですけれども。最近は、そういうので、あんまりいい指標ではないけれども、最低限やるものとしては、例えば、「ネイチャー・インデックス」というような、非常に有効な、研究者が誰でも出したい、みんなが読みたいと思っている雑誌に幾つ出しているかというのは、割と大きな分母のときの統計では割と有効だろうと思います。具体的には、それぐらいしかアイデアがありません。
【安井主査】  どうぞ。
【篠崎センター長】  私たちの役割は多分ゲームチェンジングな技術の開発ということだと思います。実際に基礎研究から取り組んでみて、結果的にゲームチェンジングになって新しい社会に貢献するということに関しては、やはり社会側が研究成果をどう受け取るかという社会システムの問題もありますので、研究者は常に社会とのコミュニケーションが必要かなと私は思っています。コミュニケーションに関しては、企業とだけやっていていいのかという問題もあるし、むしろ研究者から社会に提案すべきだという人もいるわけだし、今後、実際に橋渡し研究に取り組みながらやっていくしかないかなと思います。
それから、温室効果ガスの問題、気候変動という大きな問題があるので、課題解決にどう貢献するかという大きな課題設定は、なかなか個人の研究者には難しいと感じています。ただ、CO2削減というのはやはり大きな問題なので、そこに結び付く技術、個々の技術だけではなくて、社会システムとか、生産システムとかと関係づけて議論して新しい提案ができると、環境エネルギー科学技術委員会では重要な方向性を示せるのではないかなと思います。
個別の技術は、確かに論文とか特許になると思いますが、それを実際に社会実装するというときには、社会システムとの関係をかなり考えなければいけないかなと思っています。それをうまくこの中に入れていただくと、研究する側から言うと、やりやすいかなと思います。
【安井主査】  ありがとうございました。
ほかに何か。どうぞ。
【手塚委員】  企業の立場でちょっとコメントさせていただきますと、指標についてですが、これを定量的にやると数の指標みたいになっちゃうというんですけど、やっぱりどうしても質の話をしなければいけないんだろうと思うんですね。そういう意味では、論文数といっても、発表数ではなくやっぱり引用されている数だとか、そういうことの方が本当は重要なのかもしれないなと思いました。
それから、あと、ここでやられている研究は、基本的に、最終的に社会に実装されて、実際に地球温暖化対策に貢献していくということが望まれているわけですから、いかに実装されるところに近くまでいっているかということが大事で、それは質の問題であり、ポテンシャルの問題なんだと思います。そういう意味では、測り方は難しいと思うんですけど、例えば、先ほどの物理現象的なものから出てくる新しい物質というようなものになってくると、どういう分野に応用されるかというのは、なかなかシーズの方から想定できないようなものがあると思うので、どこかでそういうニーズとのマッチングみたいなイベントが行われる必要があるんだろうと思います。つまり、シーズとしてこういう研究開発が進んでいますということを紹介するイベントです。実際、それを使える分野が電力なのか、デバイスなのか、エレクトロニクスなのか、何なのかわからない中で、関係のありそうな分野の人たちにそれを評価してもらって、実際にそのマッチングがある分野で実用化が行われていくという、マッチングの数みたいなものをきちっと測るのもよいかと思います。ものすごく具体的に言えば、興味を引いた企業が何か提携関係にサインをしたというような数も、非常に大きな評価指標になるのではないのかなと思いました。
それから、気候変動予測ですが、こちらの方は、ここでもデータベースの数であるとか、入っているデータの量であるとか、利用者数というのが書かれているんですけれども、実務的な観点から言うと、例えば、検討開始をした地方自治体の数というようなものもあろうかと思います。例えばですけれども、民間企業が首都直下型地震に対して、例えば、工場でどういう防災体制を整えるかというときには、ガイドラインが必要なんですね。国の委員会なり専門家のワーキンググループから、向こう何年間にこういうものが起きる確率がこれぐらいあるというような指標を出していただくと、それに基づいて各企業は防災対策なり投資計画なりというのを行うことができます。そうすると、各地方公共団体なり何なりが具体的に、例えば、この地方ではこういう水害がおきうるとか、渇水問題が起きるとか、何が起きるというようなことについて、きちっとガイドラインにまとめていくということが出てくると、そこから実際の適応なり何なりの対策の投資が行われるということになってくるわけなので、そういうものまで結び付く形になってくれると、非常に現実的かつ具体的な実用性が高まるということがあろうかと思います。ですので、是非とも、アウトカムの最終型、この5年間とかいうオーダーでは難しいのかもしれませんけれども、長期にわたって、そういうものも各自治体なり地域なりで設定していくというようなことも想定に入れた計画にされると有意義になるのではないかと思われます。
以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。
ほかに何かございますか。それでは、もう少しお考えいただきたいと思いますが。
こういう文章を書いていてちょっと気になるのは、特に2ページあたりがそうなんですけど、やはり革新的な技術とか革命的なとかという、そういうことがいっぱい出てくるんですけど。恐らく、革新はよく使ったと思いますけど、革命的な云々(うんぬん)というような技術というものをどうやって開発するかという、多分、メソドロジーってないですよね。恐らく。そういうものを何か少し提案がないと、やはりいきなり革命型のものをやりますと書いたって、それは絵空事になるようなところがあって、どうもしっくりこないというか、落ち着かないんですね。例えば、どういうことを書いたらいいのかよく分かりませんけれども、そのあたり何か御提案があるとうれしいな。
例えば、何となく全体的なイメージとか、シナリオとか、あるいは、先ほどお話ではありませんけど、ネットゼロエミッションの意味する社会像みたいな話というのは、最近、しばしば企業の方に言われて講演なんかもしているんですけど、割と簡単なんですよ。ある意味で単純だから。だから、そういうものを目指すもののちょっとした具体像みたいなものを書きつつ、ただし、これは絶対ではないと。常にチェックしながら、新しいものに支援をしていくみたいな、そういうイメージを掲げるみたいなことが1つできないかなという気がしないでもないんですね。
ネットゼロエミッションを実現できるエネルギーなんて本当に限られているから、もう本当に楽なんですよね。もう物理的に限られちゃっているものですから。ですから、そういうようなことが、何か進むべき灯台の火みたいなものをやっぱりどこかに入れておかないから、何となく全体がしっくりこないのかな。そんな気もするんですけどね。
松橋先生、どうですかね。
【松橋委員】  まことにおっしゃるとおりで、CO2、例えば、ゼロエミッションなんて言うと、システムは、自(おの)ずから解が頭の中にあれかあれかあれしかないとか、そういう感じで浮かぶんですね。
ただ、私は今電気におりますので、電力システムの、もう基本的には再生可能か、原子力か、化石燃料を使う場合でも、二酸化炭素回収・貯蓄(CCS)でやるしかないという世界で。ただ、これらをシステムとして組み上げたときに、今、日常業務としてやられている地絡が起きたときへの対応ですとか、あるいは、周波数制御ですとか、電圧の安定化ですとか、こういうものが非常に難しくなることが間違いないので、システムとしては研究課題が山積しているんですよね。要素技術としては、もちろん、個別に蓄電池なり太陽電池なりがもっと進化すれば、全体のコストが安くなるので助かることは間違いないんですが、より本質的に成立するかどうかというのは、システムとしての研究なんだと思うんです。ところが、こういうものがどうしても、例えば、文科省でも経産省でも立てにくいというか、何かあるこういうものを作るんだというのは研究課題として立てやすいんだけど、システム全体として成立するかどうかをちゃんと検証するんだというのを、データを公開しながらやるということは、非常に理解が得られにくくて、安井主査のおっしゃったことにちゃんと答えていないかもしれませんが、こういうものをどうやって文科省なり政府で研究課題を作っていくのかというのも1つの課題なのかなと思います。すみません、ちょっと話がこんがらかって。
【安井主査】  何かこれ以外にちょっとしたそういう要素があって、何となく別のことも考えているなというところが少し見られると、ちょっと落ち着けるかなという感じはするんですよね。だから、その辺の工夫を少ししたいなみたいな感じがあるんですけどね。
山地先生の御意見も伺いたいぐらいですね。
【山地委員】  いや、実はあんまりないですね。基本的には、今までいろんなところで基本計画や何とか戦略というのがあって、それに基づいて本計画の文章を作っているという作業に私には思えて、またここで新たな文章を作っていくと、逆に――私は役人ではないので恐縮な思いで言いますけど、お役人の仕事を増やしているような気がして申し訳ないかなという感じを実は受けていて、黙っていました。
【安井主査】  なるほど。確かに、ここの大目標の1に書かれているというのは、みんな引用が出ていますから、そちらに書かれているわけですよね。そちらでも、多分、具体的にどうやって進めるかということは、実を言うと、あんまり書かれていない。それも具体的にどうやって進めるかというものは、多分、明確なことは誰も書けないんですよね、恐らく。ですから、そこが分かればいいのかなという気はするんですけどね。だから、このままだと、それが、ある答えがあるみたいに見えてしまってしっくりこない。
さて、ほかに。どうぞ。
【奥委員】  これは文科省の研究開発計画ですから、文科省で分かっていればいいということもあるかもしれませんが、やはり国民に向けても文書でもあると思いますので、そういう意味では、もう少し分かりやすい文章表現が必要かなと思います。
例えば、3ページに何度も出てきますが、温室効果ガスの抜本的な排出削減のための明確な課題解決のための研究開発、「ための」「ための」ってダブルで続いていて、結局、何のためなのかよく分からなくなってしまうような、こういう文章ですね。ここでは「明確な課題解決のための」という表現と、下の方へ行きますと、「明確なターゲット」というような表現も出てきまして、これは同じことを意味するのか、違うことを意味するのか、ここの整理も必要だと思うんですね。むしろ、明確なターゲットを持った温室効果ガスの抜本的な排出削減に資する研究開発ということを全体としては多分おっしゃりたいんだと思うので、なので、そういうふうに、もう少しちゃんと意味内容が明確に伝わるような表現をしていただきたいということがあります。
同様に、5ページの一番下の方に出てくる文章もそうなんですけれども、赤線で引いてある部分、社会課題の解決等への一層の貢献を通じたユーザーの拡大のため水課題云々(うんぬん)というふうにありますが、ここのところも、結局は、ユーザーのニーズを踏まえた、ユーザーが課題として捉えているテーマに関する社会基盤技術を開発することによって、更にユーザー拡大を図るということを多分おっしゃりたいんだろうと思うので、そういうふうな表現を、日本語としてやはりきちんと意味内容が伝わるような表現をしっかりしていただくということが、それをお願いしたいと思います。
あと、やたらと、行政文書に多いんですけれども、「等」が多いんですよね。「等」で逃げてしまっていて、本当はもう言い切っていいような部分についても、「等」が付いているところが多々ありますので、そこはもう少し言い切るといいますか、すっきりとさせていただきたいなと思います。
すみません、以上です。
【安井主査】  これの取扱いでございますけど、もう御紹介いただいておりますように、最終的には来年の1月ぐらいだっけ。
【亀田課長補佐】  2月頃の決定が予定されています。
【安井主査】  2月か。というのがエンドでございまして、それまでに、しかし、ゲートがあるものですから、そうゆっくりもやっていられないんですけど。何かございましたら、是非、その御指摘を頂きたいと。とりあえず次の関しては、24日って、いつ文章ができるのかな。もう作らなきゃいけないね。できるだけ早くということでございましょうかね。もし何かございましたら、事務局にまたメール等で御連絡を頂きたいと思う次第でございます。
ということで、大体時間がオーバーぎみですね。ということで、これを終えてしまいたいと思います。
以上、議題(2)でございますけれども、議題(3)からは、我々のルーティンのになりますので、御発表いただきました先生方、大変ありがとうございました。
それでは、議題(3)に入りたいと思います。平成28年度の事後評価の進め方についてという議題でございます。前々回、第4回の本委員会におきまして、「平成28年度の研究評価計画等について」(参考資料4)、それは御承認いただいているもののうち、事後評価の進め方につきまして、当委員会で審議するというものでございます。
それでは、事務局から、資料6につきましての御説明を簡単に頂きたいと思います。お願いします。
【亀田課長補佐】  では、資料6について御説明させていただきます。
今、主査からお話がありましたとおり、事後評価につきましては、4月に策定されました参考資料4に、何の事後評価を行うかということと、どのように行うかということがもう定まっておりますので、その確認という意味が多うございます。
資料6でございます。事後評価対象課題として、地球環境情報統融合プログラム(平成23~27年度実施事業)及び大学発グリーンイノベーション創出事業、その2つについて事後評価を行うこととなっております。
そのうち、大学発グリーンイノベーション創出事業ですが、ページをおめくりいただきまして、2ページ目、先進環境材料分野につきましては、ナノテクノロジーの方の委員会において事後評価票を作成して、また本委員会にも御報告を頂く予定としております。
そのまま2ページ目ですけれども、2ポツ、事後評価調整グループについてでございます。メンバーについては、4月の段階では定まっておりませんでしたが、事務局において個別に御連絡・御調整差し上げて、3ページ目にある構成員の方々、委員の方々に、事後評価調整グループとして構成させていただきたいというふうに案として提示させていただいております。
お戻りいただきまして、3、事後評価の実施についてでございます。こちらについても、4月の段階でもう既に定まっておりますので、御確認いただければと思いますけれども、(1)、まずは自己評価をしていただくということ。その後、(2)に移りまして、事後評価調整グループによって、その自己評価を踏まえた事後評価結果の原案を作成する。その後に、環境エネルギー科学技術委員会における評価を行って、親会であります研究計画・評価分科会へ報告すると、そういった流れになっております。
事務局からの説明は、以上でございます。
【安井主査】  ということでございますが、こういった形で事後評価を実施したいというふうに次は言いたいのでございますが、その前に御質問あるいは御意見等ございましたら、何かお願いいたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
よろしゅうございましょうか。
私は存じ上げないんですけど、あそこに出ております人の名前につきましては、既に了承されているということでよろしいですか。
それでは、それはよろしいということで、お願いをしたいと思います。
それ以外に何か御意見があれば承りますが、よろしゅうございましょうか。
それでは、御承認いただいたことにさせていただきまして、このような形で進めさせていただきたいと思います。
それでは、議題(4)でございますが、平成28年度概算要求に係る事前評価についてということでございまして、ここから非公開になると思います。それでは、この後取り上げる議題でございますが、これから非公開になってしまうので、もしここで、公開の席で何か御意見があれば委員から頂いて、もしなければ、非公開に切り替えて進めたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。
それでは、一応ここから非公開ということにさせていただきたいと思います。では、傍聴者の方の退席をお願いいたします。

(公開部分終了・傍聴者退席)

(非公開部分終了)

さて、それでは、以上で、ちょっと時間は遅れぎみでございますけれども、これで終わりにしたいと思いますが、今後の日程等につきまして、御説明をお願いします。
【亀田課長補佐】  まず、本日の議事録でございますが、後日、事務局よりメールで委員の皆様にお送りさせていただきますので、御確認いただければと思います。最終的には、文部科学省のホームページに掲載をし公表するという段取りになっております。
また、旅費・手当等の書類につきましては、御確認いただきまして、お帰りの際に事務局に御提出いただければと思います。
また、本日の資料ですが、机上に置いておいていただければ、後日、郵送させていただきます。
また、最後に、次回の委員会ですけれども、11月1日火曜日を予定しておりますけれども、また詳細につきましては、追って御連絡をさせていただきます。
以上でございます。
【安井主査】  先ほど連絡がありまして、14時から16時というメールが皆様のところに届いているはずでございます。ひとつよろしくお願い申し上げます。
というわけでございまして、以上をもちまして、第6回の環境エネルギー科学技術委員会を閉会といたします。どうもありがとうございました。


── 了 ──


お問合せ先

研究開発局環境エネルギー課

メールアドレス:kankyou@mext.go.jp

(研究開発局環境エネルギー課)