第8期 環境エネルギー科学技術委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成28年4月11日(月曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 平成28年度研究評価計画について
  2. 文部科学省事業の状況について
  3. 今後の環境エネルギー分野の研究開発について
  4. その他

4.出席者

委員

安井主査、橋本委員(主査代理)、高村委員(主査代理)、市橋委員、江守委員、沖委員、奥委員、加藤委員、河宮委員、小長井委員、関委員、関根千津委員、関根泰委員、館山委員、田中委員、手塚委員、花木委員、松橋委員、山地委員、渡辺委員

文部科学省

藤吉環境エネルギー課長、樋口環境科学技術推進官、小野専門官、田島課長補佐、石橋課長補佐、直井地球観測推進専門官

オブザーバー

木村SI-CATプログラムディレクター、佐藤CRDS上席フェロー、西尾内閣府ディレクター

5.議事録

【安井主査】  皆様、おはようございます。
それでは、ただいまより、第8期になりますが、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の環境エネルギー科学技術委員会と、非常に長くて読みにくいですけれど、その第4回の会合を開催させていただきます。お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
それでは、まず事務局から、本日の出席者の御確認をいただきたいと思います。
【田島課長補佐】  おはようございます。本日の出席でございますけれども、全委員から御出席の御回答をいただいてございまして、奥委員が少し遅れてお見えになるということがございますけれども、奥委員がお見えになりますと、全員、20名おそろいになるという予定でございます。また、本日は議題2の「文部科学省事業の状況について」の御説明をいただくために、筑波大学名誉教授で気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)のプログラムディレクターをお願いしてございます木村先生にお見えいただいております。また、議題3「今後の環境エネルギー分野の研究開発について」において御説明いただくために、内閣府から西尾ディレクター、それから科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)から佐藤上席フェローに御出席いただいておりますので、併せて御紹介を申し上げます。
続きまして、事務局の異動等につきまして御報告を申し上げます。まず、大臣官房審議官(研究開発局担当)の森が異動いたしまして、後任に白間が着任しております。一言、御挨拶申し上げます。
【白間大臣官房審議官】  おはようございます。4月1日付けで審議官を拝命しました、白間と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
【田島課長補佐】  また、環境エネルギー課長、長野が異動いたしまして、後任に藤吉が着任してございます。
【藤吉環境エネルギー課長】  おはようございます。長野の後任で4月1日から参りました、藤吉尚之と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【田島課長補佐】  また、その他の事務局の出席者といたしまして、環境科学技術推進官の樋口、またエネルギー担当の専門官、小野、それから環境関係の課長補佐として、鏑木の後任として石橋、それから地球観測推進専門官として、西川の後任として直井が着任しておりますので、御紹介を申し上げます。以上でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。それでは、議事に入ります前に、資料の確認をしたいと思います。お願いいたします。
【田島課長補佐】  それでは、資料の確認をさせていただきます。本日、議題が1、2、3、4とございますけれども、まず議題1に関連する資料といたしまして、配付資料1-1と1-2をお配りしております。また、議題2の関連といたしまして、配付資料2-1、2-2、また木村先生からの御発表の資料として資料2-3を入れてございます。(3)の議題の関連の資料といたしまして、資料3-1-1、3-1-2、また内閣府からの御説明資料として資料3-2、JSTの方からの御説明の資料として資料3-3、また高村先生からの御説明いただく資料として資料3-4を入れてございます。また、それ以外に参考資料として、1、2-1、2-2、2-3、3-1、3-2、4、5、6と入れてございます。乱丁・落丁等ございましたら事務局にお申し付けいただければと思います。
【安井主査】  よろしゅうございましょうか。それでは議事に入りたいと思います。お手元の議事次第を御覧いただけますでしょうか。3つの議題プラス「その他」となっておりますが、きょう、12時までにこれだけをこなしたいと思いますけれども、ちゃんとした議論といいますか、本当の議題というのは、実を言うと1ぐらいでございまして、あとは状況を皆さん御理解いただくような内容ですから、最初は御意見をいただいて、あとは御質問ということになるかもしれません。
というわけでございまして、最初の議題でございます。議題1は、「平成28年度研究評価計画について」でございます。それでは御説明をお願いします。
【田島課長補佐】  それでは、議題1に関連する資料について御説明させていただきます。
「平成28年度研究評価計画について」でございます。これについては毎年度、御審議をいただきまして、こちらで決定していただいているものになります。まず資料1-1を御覧いただければと思いますけれども、こちらは環境エネルギー課で担当している事業の一覧でございます。この中で、平成28年度に評価をするという事業といたしまして、こちらは緑色に色を付けてございますけれども、昨年度終了した事業、地球環境情報統融合プログラム及び大学発グリーンイノベーション創出事業がございます。こちらにつきまして、本年度、事後評価を行っていただく必要があるということでございます。
また、本年度、3年目を迎える事業というのはございませんので、本年度は中間評価は予定してございません。また、事前評価につきましては、毎年度、夏の概算要求の前に、拡充・新規の要望を予定しているものについては先生方に評価をいただいて、その結果を踏まえて概算要求をするという手続になってございますが、これについては、そのタイミングにまた評価をいただくということになるかと思います。
資料1-2が今年度の研究評価計画の案でございます。資料1-2の内容につきましては、昨年度と比べて大幅に何か変更しているものはございませんけれども、まず評価の目的として、文部科学省の指針に基づき評価をしていただくということでございます。2の評価対象課題としては、(1)事前評価が、平成29年度新規・拡充予算要求課題、(2)の中間評価が該当なし、(3)の事後評価が、地球環境情報統融合プログラムと大学発グリーンイノベーション創出事業でございます。
大学発グリーンイノベーション創出事業につきましては、その中に、環境情報分野と、それからおめくりいただきまして2ページ目に書いておりますが、(イ)植物科学分野という2つの分野がございます。また、(ウ)の先進環境材料分野につきましては、中間評価の際にもナノテクノロジー・材料科学技術委員会にて評価をしていただいておりまして、事後評価につきましても、同様にナノテクノロジー・材料科学技術委員会で評価票を作成いただき、環境エネルギー科学技術委員会にはそれを御報告いただくという手順を事務局としては考えてございます。
評価方法でございますけれども、事前評価につきましては、メール等の手段をもちまして事前評価の課題について先生方に御議論・御指摘をいただきまして、またその結果を取りまとめた事前評価票を、委員会を開いて、最終的には計評分科会に出すものを決めていただくということでございます。事後評価につきましては、昨年、気候変動適応研究推進プログラム(RECCA)でやっていただいたのと同様ですけれども、事後評価の調整グループというのを編成いたしまして、こちらで事後評価の案を作成いただき、それを環境エネルギー科学技術委員会に御報告いただくとともに、更に議論をいただきまして、計評分科会に出す案を作っていただくということでございます。事後評価調整グループの調整につきましては、また後日の会議にて御審議をいただきたいと考えております。
4ポツ、留意事項でございますが、利害関係者の方は評価には参加いただけないということでございます。以上でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。何か御質問若しくは御意見等ございましたらお願いしたいと思いますけれど、いかがでございましょうか。
そうですね。後からまたいろいろ現状等が、報告がありまして、それに基づいて、よくよく考えたらこれがおかしいというのはありですか。あり得るとしたら、例えば、2ページ目にございますような、(ウ)という項目ですけれど、ここの先進環境材料分野は、例のエネルギー・環境イノベーションが関わってくるわけで、きょうも御紹介がありますが、そのときに、こういう取扱いでいいのかどうか等ですけれども。まあ、そうなったら、そうなったまでですかね。それでは一応、現時点ではこれでお認めいただいて、もし問題があるということであれば、後から、場合によりましては戻ってもよろしいかと思います。
それでは、以上で議題1が終了でございまして、それでは次に議題2に入りたいと思います。まさに、最近の状況についての御説明でございます。それでは、これはまず、先ほどございましたように、省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発及び地球環境情報プラットフォームを構築する推進プログラム等は、御存じかもしれませんけれども、新規に開始するということになっております。それから、既に実施しております気候変動アダプテーション絡みの社会実装プログラムの状況について御説明をいただきたいと思います。
それでは、順次、適切に御説明をよろしくお願いいたします。
【小野専門官】  そうしましたら、まず次世代半導体研究開発について御説明を申し上げます。この事業は、平成28年度、今年度から5年間の予定で研究開発を開始するものです。省エネルギー社会の実現のために、基礎基盤研究の課題が多い窒化ガリウムの次世代半導体に関して、実用化に向けた研究開発を一体的に加速する事業となっております。具体的には、結晶を作る研究開発を行う中核拠点と、パワーデバイスを作るための研究開発を行うパワーエレクトロニクスデバイス・システム応用研究開発領域と、それらの結晶とパワーデバイスの評価を行う評価基盤領域の三者が一体となって、産学官が結集した研究開発拠点を構築して、次世代半導体の研究開発を行う事業となっております。
1枚めくっていただきまして、この事業の開始に当たりまして、この研究開発拠点の在り方について検討するために、有識者の方々に検討会で議論していただいております。3ページ目・4ページ目が、その検討会での結果なのですけれども、2030年の次世代半導体の実用化を見据えて、バックキャストで、5年後にどういうことを達成すべきかという議論をしていただいております。具体的には、2030年の目標として、高周波・高出力で小型、軽量なパワーデバイスの実現ということと、パワーデバイスにプラスアルファの機能を融合した革新的なスマートパワーデバイスの実現という2つの目標を掲げまして、2030年にこの目標を達成するために、5年後に達成すべき目標というのを、3ページ目のように、それぞれ掲げております。
1枚めくっていただきまして、また研究開発の目標ということだけではなくて、拠点に必要な機能というのも併せて御議論いただいていまして、基礎研究を行う機能を有していることとか、そういったものは当然として、出口戦略を検討する体制を有していることですとか、知財をきちんと管理する体制を有していることですとか、幾つかの要件を挙げていただいております。
これらを踏まえまして、5ページ目ですけれども、実際に研究開発を実施する者の公募を行いまして、この5ページ目の体制で研究開発をこれから始めようというところです。具体的には、大阪大学の谷口先生にプログラムディレクターになっていただきまして、結晶創生を行う中核拠点としては、名古屋大学の天野先生を代表とするグループ、またパワーデバイスの研究開発を行うところとしましては、やはり名古屋大学の加地先生を中心としたグループ、また結晶、パワーデバイスの評価を行う領域としては、物質・材料研究機構(NIMS)の小出先生を代表としたグループに、それぞれ実施していただくということにしております。
1枚めくっていただきまして、今後の予定ですけれども、まず5月に公開のシンポジウム、キックオフのシンポジウムを予定しております。詳細は、まだちょっと、ここに記載できるほどにはなっていないのですけれども、追って御連絡を差し上げますので、御興味があられる方は是非、御出席いただければと考えております。
最後に7ページ目ですけれども、この窒化ガリウムの次世代半導体の研究開発に関しては、内閣府及び経済産業省でも関連の事業を行っておりますので、関係府省の合同連絡会議を設置して、情報交換をしながら、連携して研究開発を進めていきたいと考えているところです。以上です。
【樋口環境科学技術推進官】  続きまして、資料2-2に基づきまして、地球環境情報プラットフォーム構築推進プログラムの状況について説明いたします。
プログラムの概要につきましては、これまでも何回か報告させていただいておりますので、簡単にと思っておりますけれども、これまで10年間開発してきておりました「データ統合・解析システム(DIAS)」につきまして、更に発展させまして、社会基盤としてDIASを使っていただけるようにするということで、5年間のプログラムとして認められたというものでございまして、図の1枚目の真ん中でございますけれども、柱としては、1つ目が、地球環境情報プラットフォームの構築ということで、企業様等を含めた新しいユーザーを含めて長期的・安定的に利用されるプラットフォームの運営体制を構築していくというもの。それから2つ目が、地球環境情報プラットフォーム活用のための共通基盤技術開発ということで、ユーザーを拡大する、あとは気候変動の対策に貢献するような共通基盤技術として、プログラム・アプリケーションを開発するというのが中身になってございます。これにつきましては、様々な方に参画していただきまして、最終的には利用料金制度などを整備して、国費に依存しない運営体制を確立していくということも求められてございます。
2枚目でございます。これが公募の内容でございますけれども、先ほど申し上げました、2つ目の、共通基盤技術開発に対応するものとしまして、水課題アプリケーション開発機関(1機関)を6,000万円程度、それからプラットフォーム部分ということで、(2)でございますけれども、1機関3億円程度ということで募集いたしました。公募としましては、2月29日から3月23日まで公募しまして、審査をしまして、最終的には4月7日をもって採択機関を公表してございます。
3ページ目が、そこで採択されました実施体制でございます。文部科学省の下に、プログラムマネジャー(PM)、それからサブPMを置くということと、アドバイザリーボードを置くというのがガバナンスでございます。
それから左側、水課題のアプリケーション開発機関ですけれども、主管機関として東京大学、代表者は小池俊雄教授でございます。そこの下に土木研究所さん、それから日本工営さんに入っていただいて、協力機関としては、東京電力さん、中部電力さんの協力を得ながら、この研究を進めるということで、中身としては、日本全国の河川の流量、それからダムの水位をリアルタイムで予測することが可能になるようなアプリケーションを開発するというのが、水課題アプリケーション開発機関の内容と体制でございます。
右側は、地球環境情報プラットフォーム構築機関でございますけれども、主管機関としては、一般財団法人のリモート・センシング技術センターが代表となっております。ここは、1つ目は企画推進。これはリモート・センシング技術センターが中核地点となるということになっておりまして、事業全体の進捗管理、それから今後のDIASの基幹となるアプリケーションの候補の特定、それから本事業外、水課題アプリケーション等々がここにありますけれども、こういったもの以外に、予算外で経費を用いてDIAS上でアプリケーションを開発する者を探索する。それから、アプリケーションや地球環境情報プラットフォームの利用促進、それから持続可能な運営体制の構築というのを、このリモート・センシング技術センターを中核としてやっていただくと。
それから2つ目が、アプリケーション開発・実装促進でございまして、これは東京大学、京都大学、名古屋大学、国立情報学研究所、それからリモート・センシング技術センターという構成でございます。これの中核は東京大学でございまして、中核の代表となるのは喜連川優教授でございます。中身はアプリケーションの開発支援ということで、アプリケーションに必要なデータの収集・作成をする。それからアプリケーションの実装支援(DIASの維持・管理・運営、それからIT技術の支援)をする。それからアプリケーションの運用支援(プリポスト作業)を行う。アプリケーションの開発を行うための環境構築。それからDIASシステムの高度化のための研究開発。これを、こういった体制でやっていき、全体をまとめていくのがリモート・センシング技術センターと。この体制で採択がされたということでございます。以下はずっと参考でございますので、説明としては以上でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。それでは、続きまして、気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)の研究開発体制並びに進捗の状況につきまして、木村プログラムディレクター(PD)から御報告をいただきたいと思います。お願いします。
【木村SI-CATプログラムディレクター】  気候変動適応技術社会実装プログラムの研究開発体制・進捗状況について御報告いたします。私、このプログラムのプログラムディレクターを仰せつかっております筑波大学の木村です。この資料2-3の1ページ目を御覧ください。これは表紙です。これを1枚めくっていただけますか。資料2-3の2ページ目を御覧ください。
これは背景の説明になりますけれども、気候変動適応に関する最近の計画の作成が相次いでいます。昨年度の8月6日には、農林水産省の気候変動適応計画がまとめられました。また、11月27日には、国土交通省の気候変動適応計画が策定されましたし、同じ日に気候変動の影響への適応計画というのが閣議決定されています。さらに、外務省、経済産業省、環境省は、以前から、攻めの地球温暖化外交戦略ということで、美しい星への行動(ACE)ということをまとめていたのですけれども、これに適応策も組み込むことによって、新しくACE2.0として改訂されたと聞いています。
それで、3ページ目を御覧ください。この一番右上のところに、このプログラムの28年度と27年度の予算が記載されています。読み上げませんけれども、このぐらいの予算で進めていきます。背景については、今、御説明しましたので、省略させていただきます。
その下に、このプログラムの概要がまとめて記載されています。このうち、気候変動の適応策の立案に必要な共通な基盤的なアプリケーション開発の枠があると思うのですけれども、これより右の部分については、この後、もう少し詳しく御説明しますので、ここでは左側の、「概要」と緑であるところのすぐ下のところを御覧ください。
まず気候変動リスク情報創生プログラムとの関係なのですけれども、このプログラムは今年度で終了するプログラムですけれども、日本全国のかなり詳細な気候変動の効果による極端事象等の変化ということを、ダウンスケーリングを実施して予測しています。それから、創生のC課題では、それによる災害等の影響の評価も実施しています。こういった成果についても、SI-CATでは大量の出力等を利用して、SI-CATの中でも適応策として情報を効率よく使おうと計画しています。
それから、後で説明しますけれども、一昨年終了ですか、RECCAが実施されました。これは、いわばSI-CATに先行するプログラムなわけですけれども、このときに自治体と研究者の間でのいろんな情報交換、そのチャンネルができたということ。それから、このRECCAでもいろいろな予測情報、詳細な予測情報がプロダクトとして出ていますので、こういった成果もSI-CATの中に取り込んで社会実装に役立てたいと思います。
そういう意味で、創生から非常に膨大な予測情報が出るということ。それからSI-CATそのものも、場合によっては更に膨大な、詳細な予測情報が作られるということで、数値的な予測情報は非常に巨大な量になります。そのためにDIASを活用して、そこにたくさんの情報をビッグデータとして集める。ただ、そのままだと、例えば自治体などがそれを活用したり、利用したりするというのが非常に難しいので、そこのところを、うまくアプリケーションソフトを作って、自治体の方々にもよく利用できるようなシステムを作り上げたいと考えています。それで、このプログラムは27年度から31年度、一番下に書いてありますけれども、この5年間、実質的に最初の年がちょっと短かったので5年間足らずになりますけれども、この期間に進めていきたいと思います。
次のページ、4ページ目を御覧ください。このプログラムを実施するに当たって配慮したことがあります。それは、昨年の1月14日に、この会議とほとんど同じだと思うのですけれども、今後の地球環境研究の在り方に関する検討会というのが開催されて、これらの問題について、いろんな御意見をいただいています。まずこういった問題では、ステークホルダーとco-designし、社会実装につなげるということが重要であると、最初の4行のところに、まとめると書いてあります。それから、RECCAの問題について、RECCAはSI-CATの先行するプログラムですので、これについてどういう評価があったかというと、地方自治体との連携が必ずしもスムーズではなかった事例があり、その理由は、赤のところにちょっと飛びますけれども、高精度・高解像度データが存在するから何かに使えないかという、一方的な情報提供の姿勢に問題があったのではないかと、割と厳しい意見が付けられています。
RECCAには、これとは別に事後評価が行われています。この事後評価では、温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究(s-8)と共同で作成した『気候変動適応策のデザイン』は、多くの自治体や企業が気候変動の影響とリスクに対応する上で手引となる書籍であるということで、高く評価されていたのですけれども、一方で、研究者と自治体が組んで課題を設定したものの、適応策に関する幅広いニーズを探る仕組みが組まれていなかったことから、社会実装は取組の範囲内にとどまったとされています。さらに、気候変動適応策の検討・選択等において、人文科学や社会科学の研究者との連携が、今後はこれまで以上に必要とされるだろうと指摘されています。
これらの、今までのRECCA、過去の研究の問題点を背景にして、その次の5ページを御覧ください。SI-CATでは幾つかの工夫がされています。まず、この図で目立つのが、左側の、文部科学省から下向きに矢印が出ている「社会実装機関」というのは、このプログラムの特徴です。これはもちろん文部科学省の指示を仰ぎながら、この機関はどういうことをするかというと、ちなみに私、プログラムディレクターもこの機関に所属しています。それから外部有識者で構成しているアドバイザリーの方々も、こちらでそういう意見等を議論していただくという場です。この社会実装機関は、まず自治体を訪問する等して、ニーズの調査あるいはニーズの提供を受けるということが非常に重要な任務です。後でもうちょっと詳しく御説明します。一方で、このプログラムで得られた成果というのを各自治体だとか企業・研究所に普及するための、そういった仕事もこのプログラムがすることになります。
このプログラムのもう一つの大きな特徴は、モデル自治体というのを設けたことです。今の図の右下に青色で記載されている部分です。このモデル自治体というのは、県の行政の部分であったり、あるいは県に附属する研究機関、特に環境の研究機関であったり、それらと連携をとった地方大学といった方々が、SI-CATの技術開発機関に直接関与して研究開発ができる。自治体だとか外の研究機関、自治体の研究機関あるいは地方大学が、直接的に技術開発機関に加わって開発研究ができるという制度があります。これによって、技術開発機関と社会実装機関、更にその自治体とが、非常に密接に情報交換をして、社会実装に必要な問題は何なのか、あるいはどうやってその成果を社会実装するかということが、モデル自治体を中心にして、今までのプログラムに比べてかなり迅速あるいは適切に行われるということが期待できます。
6ページ目を御覧ください。これは、これらの機関、社会実装機関、それから実際に研究開発をする技術開発機関の参画機関のリストが記載されています。先ほど御説明しました社会実装機関がその上の部分です。その下の左側と右側に、それぞれ技術開発機関が記載されているのですけれども、技術開発機関は当初の予定では3機関を予定していたのですけれども、海洋研究開発機構が2つの課題を分担することになりましたので、機関の数としては2つ、ただ課題としては3つということになります。
次に7ページ目を御覧ください。これは、このプログラムの目玉の一つであるモデル自治体の一覧です。モデル自治体は、自治体の数にすると全部で10ぐらいあるのですけれども、SI-CATの中では、モデル自治体は7つに区分しています。この図の左の方を見ていただきたいのですけれども、高知工科大学は、自治体で言うと、四国の4県の全てを統括しています。この課題は、このモデル自治体は比較的、影響として関心のあるものが共通しているのです。水資源だとか洪水という水問題が中心です。そういうことで、これを1つに取りまとめて、1つのモデル自治体等の一つというふうにして分類しています。また一方で茨城県は、茨城大学が中心となるモデル自治体と、それから筑波大学が中心になるモデル自治体の両方に関与しています。このように、問題に応じて少しフレキシブルなところを持たせて、より効率化を図っているということになります。
次のスライド、8ページ目になりますけれども、これを御覧ください。このSI-CATでは、具体的な成果目標を定めています。まず、SI-CATにおいて社会実装とは何だという定義を明確にしようとしています。この定義ですけれども、まず、①国や地方自治体が適応策や各種計画を策定する際、これはちょっと省略しますけれども、作成する際、SI-CATアプリが提供する情報、ツール、サービスや本アプリの基となるデータが利用されることというのが1番目の条件です。それから2番目、企業が事業計画の策定や、その他、様々な企業活動を行う際、SI-CATの成果が利用されること。それから3番目なのですけれども、上記の状態が継続すること。つまり、これはSI-CATのプログラムが終了した後も、SI-CATによって得られた情報だとかアプリケーションが継続して利用されることという条件が付いています。そういうことが目標ですけれども、最終的な目標は、SI-CATの成果が確実に社会実装されること。その社会実装にも一応、数値目標を挙げています。個別の目標としては、7自治体以上がSI-CATの成果を基に適応策の検討・策定を行うこととなっています。もちろんこれについても、SI-CATが終了した後についても、その7機関以上のモデル自治体は、その状態が継続されるということが条件になります。これは最終目標を御説明しましたけれども、中間評価までの目標については、SI-CATアプリの仕様だとか、その詳細を決めるということで、それ以外については、まだ明確には定めておりません。
次に、次のページ、9ページを御覧ください。これは、今までお話ししましたSI-CATの特徴を取りまとめたものです。このプログラムの特徴は、技術開発機関で実際に研究をする部分のほかに、(2)の社会実装機関があるということ。これは先ほど御説明しました。それから、同じようにモデル自治体という制度を作ったということ。これが3番目です。これによって、社会実装を確実にするという仕組みになっています。
次のページ、10ページの方に、社会実装機関について更に記載を書いてありますけれども、これは文書としての資料で、後で必要があれば御覧ください。説明するとちょっと時間が長くなりますので、今まで説明したことと余り変わりませんので省略させていただきます。
次に技術開発機関なのですけれども、3つテーマがあります。先ほど申し上げましたように、そのうちの1番目のテーマと2番目のテーマは、同じ研究機関が2つ実施します。順番に説明します。まず1番目の、信頼度の高い近未来予測技術の開発です。近未来というのは、2030年ぐらいを想定していまして、日本全国20キロぐらいの近未来気候予測技術を開発します。狙いは、特にこの中で極端な現象、異常な高温だとか、あるいは豪雨、場合によっては都市型の短時間豪雨といったものが、現在と将来でどう変化するのか。頻度が変化する、あるいはその強さが変化するということを予測します。もともと、たまにしか起こらないことですので、詳細なシミュレーションを行っても、非常に大量な量のシミュレーションを行わないと、その頻度の変化というのが出てこないので、これについてはかなり膨大な計算をして、それを蓄積する。先ほどのようなDIASが必要なような大量の情報を作成します。これらの情報を、これから説明する2番目と3番目の課題へ提供します。
それから、今申しましたように、カオスを含むような、異常に出現頻度の少ない情報を扱いますので、非常に大規模なデータベースから極端現象を抽出するといった作業が必要になります。そのための研究開発も必要ですし、それから、それを今度はどう活用するかといったことの道筋をはっきりさせるということも必要になります。それが2番目のb課題です。
それからc、3番目の課題では、これはちょっとユニークなのですけれども、日本周辺の海域の近未来予測技術を開発します。これは、結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP)で得られている大気海洋結合モデルよりも解像度を高めまして、日本近海の、例えば黒潮だとか親潮だとか対馬暖流といったものが、将来どう変化するのかということについても予測しようというのがcのテーマです。これが課題1の大ざっぱな内容になります。
次のページ、12ページを御覧ください。こちらに、課題2の超高解像度ダウンスケーリング技術開発の概要が記載されています。まず課題1では、もう少し粗い解像度のダウンスケールをしたのですけれども、これに先ほどのアンサンブル関数を、カオスによる低頻度の現象を把握するために、アンサンブルデータを、非常に高い解像度、1キロ解像度で、そういった情報を作ります。それに加えて、そういった大量の情報をうまく利用するようなツールを、「ツール群」とここに書いてありますけれども、それを開発して整備します。それから、先ほども申し上げましたように、局所性・非線形性の強い環境変数については、例えば都市型豪雨ですね。1キロメートルぐらいの高い解像度でダウンスケール技術を開発して、全て力学的なダウンスケールですると非常に大変なので、統計的なダウンスケールとうまく組み合わせたハイブリッド手法を開発して、比較的アンサンブルの数が少なくても、確率的には、ある意味で正確な情報を創出する手段を開発します。
それから、更に小さい空間スケールで問題となるのが、1つは暑熱環境、ヒートアイランドの問題です。それから、沿岸の防災の問題です。特にヒートアイランドの問題については、例えば緑化政策、公園を緑化したり、あるいは屋上を緑化したりということが、実際どこまで効果があるかということを予測する技術が必要です。この場合は、非常に細かいスケールのシミュレーションになりますので、そういうことに目的を絞った技術開発が必要になります。それがbです。
最後に課題3番目、気候変動の影響評価技術の開発に関する研究について御紹介します。これについては、まずaとして、「気候変動に関する分野別影響・適応策評価技術の開発」です。これがaです。自治体レベルにおける気候変動の分野別の影響評価や適応策の検討を科学的に支援する技術を開発します。もうちょっと具体的に言いますと、bの「気候変動に関する総合影響・適応策評価技術とアプリケーション開発」。ダウンスケーリング予測結果、先ほど、課題1に出てくるわけですけれども、大量の情報として出てきますけれども、これを用いて、必要に応じて社会実装機関から提供される社会経済シナリオを考慮した上、数年から10年ぐらい先、2030年ぐらいですね、先ほど申し上げましたけれども、その1キロメートル程度の解像度の、こちらは影響評価モデルですね、これを構築します。それから3番目のcですけれども、自治体における気候変動適応の推進体制の構築及び汎用的な影響・適応策評価技術開発の支援をします。これは、技術開発機関の成果も集めて、可視化ユーティリティー、先ほどから出てくるアプリケーションツールですね。非常に膨大なデータを自治体の人が直接ハンドリングすることができないので、それを分かりやすく、そこから情報を引き出せるようなツールを開発します。特に、この課題では、影響評価という視点に関して焦点を当ててツールを開発するというふうにしています。私からの説明は以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。資料2-1、2-2、2-3の3つについて御説明いただきました。ここで御質問等をいただく時間なのですけれど、5分ほど既にオーバーしておりまして、できれば簡潔にお願いします。
【橋本主査代理】  今、政府全体の中の、特に科学技術政策において一番議論されるのが、各省庁で行われているものをいかにうまく連携させていくかということです。本日3つのプログラムを御説明いただいたけれども、最初の省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発の方は、御説明があった当初の考えに従って、今後も経済産業省と内閣府との連携をしっかり進めていただきたいと思います。あとの2つの方については特にその言及がなかったのですが、いずれも随分、他省庁でやっている研究と関係があると思います。例えば両方とも非常に関係があるものとして、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の中島プログラムディレクター(PD)がやっている防災・減災に関わるプロジェクトがあります。特にSIPの中島さんのところは、いかにデータプラットフォームを共通化していくかということが非常に大きな課題として、各省庁をしっかりまとめるようにということ、常々そういうことが議題になっているわけですけれども、それと今の2つの話は両方とも非常に関連があるのではないかなと思います。更に後から内閣府西尾さんから御説明があると思うのですが、4月から始まった第5期の基本計画を受けて、今、総合戦略を策定していますが、その中でもいろいろなデータを使えるようなプラットフォームを作ることを、非常に重要だと位置づける方向にあります。今のお話を伺うと、両方ともそこに非常に関係があると思います。それで、ほかの省庁は分かりませんけれど、単純に考えると環境省等も関連あるプログラムがあると思うのですが、その辺との連携の進め方はどのようにやっているのでしょうか。
【安井主査】  どなたがお答え……。
【橋本主査代理】  これは文部科学省に伺った方がいいのではないでしょうか。
【安井主査】  そうですか。それでは。
【樋口環境科学技術推進官】  それでは、事務局の方から説明させていただければと思います。
この地球環境情報プラットフォーム構築推進プログラムはDIASを核としたものでございまして、SI-CATもそうなのですけれども、科学技術イノベーション総合戦略イノベーション戦略2015におきましては、地球環境情報プラットフォームというのを11のうちの一つの中に位置づけられておりまして、その中で、例えばデータなどは、DIASは自分でデータをとる機能は持っておりませんので、各省庁さんから提供していただいてということがございますので、そういったところで連携を進めていきたいと思いますし、防災の関係ですと、ほかのところということになるかと思いますけれども、こういったところも横との連携も進めていきたいと思っております。
【橋本主査代理】  今の御説明だけだと今までも同じで、ほかの省庁とデータを交換しながら連携を進めていくということは、今までもそうやって言われているのですが、それでは足りないというのが、今、そういう方向で進めていて、明確になったのではないかと思います。なので、実際にそれらを進めていくための組織体というか、関係省庁の研究者もあわせて、関係省庁の担当の責任者、課長クラスの方がやはりちゃんと出ていただくような、そういう場を設定してしっかりと動かしていただくということをかなり強く要求しているところであります。多分これは、私は内閣府の方の会議に出たら、内閣府の立場では、このプログラムでは足りないと言わざるを得ないのではないかと思います。なので、しっかりと組織体として意識していただき、しっかりとした体制を作っていただく必要があるのではないかなと思います。ちょうど省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発の方がそのようにできているので、それを参考にしていただければなと思いますが。
【田島課長補佐】  若干、補足させていただきますと、DIASにつきましては、昨年の科学技術イノベーション総合戦略2015で、地球環境情報プラットフォームの中核となると位置づけていただいたことも踏まえまして、各省との連絡会は既に設けてございまして、事務的には、特にデータを創出されている機関が中心ではございますけれども、データの、今後、DIASに集めていって、それをまたいい形でそれぞれ利用していただくことができるような、そういうことのための会議を立ち上げてきてはございます。ただ、まだ、今、橋本委員から御指摘のありましたとおり、研究者レベルまでそうコミュニティーが今一緒になっているのかとか、実際それによってどのぐらい、今、見通しが立っているのかというところにつきましては、現在、DIASの体制がやっと固まったという、採択が決まったというところでございますので、今後、非採択機関とも多分、連携をしながら、そこについては、より一層、連携体制を深めていくという形をとっていく必要があると思ってございます。
【橋本主査代理】  最後に、これは大変重要なのですが、例えばSIPの中島プロジェクトは非常に関連があります。ですので、形式的なものではなくて、実際に、もちろんSIPの中島プロジェクトの方にも、そういうことを強く要求を出していきますが、是非進めていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【安井主査】  ありがとうございました。ほかに何かございますか。
それでは、こちらには好都合なので、このあたりで次へ進ませていただきます。
それでは次の議題でございますが、議題3でございます。「今後の環境エネルギー分野の研究開発について」ということで、まず事務局からの御説明をいただきたいと思います。お願いします。
【田島課長補佐】  それでは、資料3-1-1及び3-1-2に基づきまして、事務局よりまず御説明をさせていただきます。
3月1日に開かれました、本会議の親の会議になります科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会におきまして、安井先生に御出席いただいたところでございますけれども、文部科学省としての研究開発計画(仮称)というものを策定するということが決定されてございます。これにつきましては、1月に第5期科学技術基本計画が閣議決定されたことを受けまして、これを踏まえて、文部科学省として今後5年間程度、どういうふうに研究開発をしていくのかということを、研究計画・評価分科会において取りまとめるということが決定されたというものでございます。これにつきまして、第4期あるいは第3期というような、これまでの科学技術基本計画の際にも同様の取りまとめがなされておりまして、例えば第4期の基本計画に基づいた環境エネルギー分野の研究開発につきましては、今回、参考資料の4としてお付けしておりますけれども、環境・エネルギー領域における研究開発方策というものを取りまとめたというものがございます。これの第5期の基本計画を踏まえたものを、文部科学省としてまとめていくということが決まったということでございます。
これの、また体系等につきましては、現在の計評分科会におきまして、ほかの、要はライフとか原子力とか、いろいろな委員会がございますけれども、それの全体の体系をどうするかということについては計評分科会の方で議論されているところでございますが、特に今、環境エネルギー分野につきましては、環境エネルギー科学技術委員会が取りまとめることが想定されますので、そういう前提で作業を本日からスタートさせていただきたいと思っているということでございます。
策定の、まずスケジュールにつきましては、資料3-1-1の2枚目でございますけれども、研究開発計画(案)の検討というのが、「各委員会」と右側に書いておりますけれども、これをやっていく。それが、計評分科会の方では、6月頃に計画骨子の案、それから8月下旬頃に更に計画そのものの案、それから11月頃にも同様に審議して、2月頃までに決定するというようなスケジュールで考えていきたいということでございますので、この計評分科会に適時、安井先生の方から御報告をいただくことになるかと思いますが、その内容をこの委員会の方で考えていくということでございます。
資料3-1-2でございますけれども、特に研究開発計画(仮称)の環境エネルギー分野の検討についてでございます。概要は先ほど御説明したとおりでございます。対象期間としては、ほかの分野も同じですけれども、科学技術基本計画を踏まえ、今後10年程度を見通し、5年程度以内を対象期間とする計画ということでございます。
3の「検討事項」でございますけれども、これについては、現在、計評分科会の事務局をしております企画評価課とも相談して、こういうものでいかがかと思ってございますが、まず研究開発目標といたしまして、科学技術基本計画等の政府全体の動き、また産業界や海外の動向等も踏まえまして、環境エネルギー分野の研究開発について、文部科学省として何を目標に研究を行うべきかということを明らかにするということがまず必要であると考えております。それから2点目、「重点的に実施する研究開発の取組」ということで、文部科学省の役割を踏まえ、具体的にどのような研究開発を重点的に実施するべきかということを明らかにする必要があると考えております。そして3点目、研究開発の推進方策でございますが、研究開発を推進する際に留意すべき推進方策ということで、これは一部、分野横断的に、計評分科会の方でも御議論がなされているところですけれども、例えば、人材育成やオープンサイエンス、産学官連携、異分野連携あるいはステークホルダーとの超学際研究、また府省連携、国際連携といったような事柄が考えられると思ってございます。
2ページ目に付けさせていただいておりますのは、前回、第3回、1月の会議で、これの更に前段階のものとして、今後の研究開発の考え方について事務局からたたき台をお示ししまして、先生方から御意見をいただいたというところでございますが、いただいた御意見を、今回の論点の案に沿った形で改めて記載させていただいたというものでございます。既にいただいた意見ももちろん踏まえさせていただきながら、今回、改めて計評分科会での決定を踏まえた形で、研究開発計画の検討をスタートさせていただきたいと思っておりまして、またそのための検討の参考情報といたしまして、これ以降、内閣府、JST、それから高村先生から御報告をいただきまして、それの情報を踏まえながら今後の検討をしていただきたいと思っているところでございます。事務局からは以上です。
【安井主査】  この議題の3は、個々の質疑応答をいただいた最後に時間がとってあったのですけれど、果たして残るかどうかちょっと怪しいので、どうしましょう。まあ、まとめた方がよろしいかと思いますが。
それでは次に進ませていただいて、ちょっと済みません、短めに。時間を是非残していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは続きまして、次は環境エネルギー分野を取り巻く政府全体の科学技術イノベーション政策に関する最近の状況ということでございまして、内閣府の西尾ディレクターからの御説明をいただきたいと思います。お願いします。
【西尾内閣府ディレクター】  内閣府の西尾でございます。本日は、エネルギー・環境分野の科学技術イノベーション政策について、資料3-2に基づきまして御説明させていただきます。ちょっと短めにさせていただこうと思っています。
1ページめくっていただきますと、1ポツとして、「第5期科学技術基本計画の概要」とございます。本日お話をさせていただきますのは、基本的にはこの第5期科学技術基本計画、1月に閣議決定をいただいてこの4月から開始されたものが、内閣府、総合科学技術・イノベーション会議の活動としての基礎となっているということで御紹介を差し上げます。さらに、この資料の中にもございますけれども、毎年度、科学技術イノベーション総合戦略を2013年度より作っております。ちょうど今、2016年版のところを作り始めているところですけれども、そこに至るまでの議論を、この後で、エネルギー戦略協議会あるいは環境ワーキンググループでの議論を御紹介いたします。さらに、これも申し訳ございません。本日午後に、重要課題専門調査会という、実際の議論をしている親委員会がありまして、そこで正式に物として出てくるものですから、少し前段階の資料での御紹介になりますけれども、「エネルギー・環境イノベーション戦略」を取りまとめてございます。こちらの方を、全体の流れも含めて御紹介させていただきます。
2ページ目、3ページ目になります。ちょっと字が細かくて恐縮ですけれども、科学技術基本計画、もう既に御案内かと思いますけれども、10年先を見通した5年間の科学技術の振興に関する総合的な計画ということで、第5期(平成28年度から32年度)についてスタートしたということでございます。これは一昨年、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)となり、総合科学技術会議からイノベーションを取り込んだ会議体となって初めての計画ということで、科学技術イノベーション政策を強力に推進するという位置づけになっています。本計画は、世界で最もイノベーションに適した国へと導くものと位置づけがされておるところです。
第1章で基本的考え方をお示ししております。現状の認識としましては、ICTの進化等、もう、大変革時代が到来している。もう、ちょっと先のことも読めないような状況にあり、いろいろな変化に対応しなければいけないということが念頭にございます。国内外の課題も増加しておりまして、今回こちらで取り上げていただくエネルギーの制約、あるいは地球規模課題の深刻化といったようなものが現状認識としてございます。
一方、第5期の基本計画、1期から4期まで20年間という実績と課題というものも、しっかりと振り返りをしながらやっていく必要があるだろうということで、我が国の科学技術が大きな存在感を有しているということは、例えばノーベル賞受賞といったようなところで現れている。一方で、近年、論文の質や量といったもので国際的な地位が低下しつつあるのではないかということも現れてきている。基盤的な力の弱体化、産学連携が本格段階に至らないといった、いろいろなものが要因になっていると考えているところでございます。
(3)として、目指すべき国の姿と挙げてございます。基本計画には、持続的な成長と地域社会の自律的発展、国及び国民の安全・安心の確保という中で質の高い生活の実現、地球規模課題への対応と世界の発展への貢献、知の資産の持続的創出といったようなものを国の姿として挙げさせていただいた上で、基本方針としては、先ほど来申し上げていますけれども、先を見通して戦略的に手を打っていく先見性と戦略性、あるいは変化に的確に対応していく多様性と柔軟性を重視していきましょうと。さらに、あらゆる主体が国際的に開かれたイノベーションシステムの中で競争、協調し、各主体の持つ力を最大限発揮できる仕組みを、人文社会科学、自然科学のあらゆる分野の参画の下で構築するということを方針としています。
それに併せまして、この後、各章で説明をしています未来の産業創造と社会変革、経済・社会的な課題への対応、基盤的な力の強化、人材・知・資金の好循環システムの構築というものを柱として掲げさせていただいているところであります。
科学技術基本計画の推進に当たっての重要事項としては、社会との関係深化、推進機能の強化というものを挙げておりますけれども、この基本計画が5年を総合的に表した計画であるのに対しまして、先ほど御紹介しましたけれども、毎年度、総合戦略というものを策定し、これを両輪として柔軟に政策を運営していこうということで、指標等の設定や達成状況の把握をやっているという状況でございます。
この後、細かくお話をしますと時間が掛かりますので、大まかなキーワードの御紹介をさせていただこうと思います。第2章に、「未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組」、先ほども大変革時代への対応ということで、(1)としては、未来に果敢に挑戦する研究開発と人材の強化を挙げております。今現在、内閣府で実行しておりますImPACTといったようなプログラムの重要性も記載しています。
世界に先駆けた超スマート社会の実現。これをSociety5.0ということで掲げさせていただいております。現在、物作り分野を中心にして、ネットワーク、IoTなどが活用されているという状況で、今後、科学技術の成果をあらゆる分野や領域へ浸透させていくということが必要であろうと。その中で、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合した超スマート社会。一連の取組を、Society5.0ということで、更に深化させつつ強力に推進させていくと。そのためには、サービスや事業のシステム化といったようなものが重要でありまして、それを複数、連携協調させる。そのために必要な共通的なプラットフォームを構築するということが示されております。エネルギーに関しましては、エネルギー全体を含め、エネルギーバリューチェーン、さらに、そこに貢献するということで、最初、2015年版の総合戦略に位置づけました、地球環境情報プラットフォームも位置づけています。
超スマート社会における競争力向上、基盤技術の戦略的強化ということで、超スマート社会サービスプラットフォームに必要となる技術、新たな価値創出のコアとなる強みを有する技術ということで、その強化を図るということをうたってございます。
第3章の、「経済・社会的課題への対応」でございます。こちらの中で、先ほど総合戦略2015では11のシステムを掲げておりましたけれども、こちらでは13の重要政策課題というものを挙げてございます。「持続的な成長と地域社会の自律的な発展」の中に、エネルギーの安定的確保とエネルギー利用の効率化、更に「地球規模課題への対応と世界の発展への貢献」の中に、環境の関係でありますけれども、地球規模の気候変動への対応、生物多様性への対応をうたっています。
第4章には、「科学技術イノベーションの基盤的な力の強化」ということで、先ほどの御説明にもありましたけれども、研究開発の推進方策の中で留意すべきものということでは、例えば人材力の強化で、若手あるいは女性の活躍促進、国際的なネットワーク、知の基盤の強化、資金改革の強化、これは大学の改革と研究資金改革の一体的推進などをうたっております。
第5章に、「イノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築」ということで、オープンイノベーションあるいは国際的な知的財産の戦略的活用を挙げさせていただいております。
残り、いろいろと書いてはございますけれども、最後に対GDP比1%ということで、経済成長を前提とした26兆円という数値的な目標も掲げているというような形になってございます。済みません。長くなりました。
それで、後ろです。2-1、2-2、2-3につきましては、こちらで実施しておりますエネルギー戦略協議会での議論の図になってございます。2-1につきましては、これはもう全体を、生産・流通・消費という各段階で、エネルギーにおいてどのようなものがあるかということで整理したものになっています。左から右に流れていくというものになります。それを支える、あるいは全体を統括するものとして、下に、エネルギープラットフォームあるいはIoTサービスプラットフォームというものを位置づけています。さらに、各個別の段階に共通して用いられるものということで、エネルギー共通技術というものを位置づけています。
それを受けまして、科学技術イノベーション総合戦略2016における取組は、エネルギー、システムオブシステムズということもございます。システムをどのようにして組んでいくのかという観点から、現状で、各省で実行されております施策を中心に項目を並べています。上に運用があって、真ん中に生産・流通・消費という各段階での個別の技術、個別のシステム、最後にエネルギー共通技術ということで、いわゆるコア技術になるものを並べています。その中で組合せをしていくことによって、例えば風力発電、生産から運用というものを通して、次世代蓄電池あるいはエネルギーキャリアといったようなもので、変動型の再生可能エネルギーに適応するためのシステム。あるいはCO2を大量に排出する高効率火力から、CCSあるいはバイオマス、革新的触媒といったようなものを組み合わせた、化石燃料の有効利用、CCUSシステムといったようなものを例示として挙げております。現状、これをまとめていくということで、幾つかのシステムを掲げているところでございます。
2-3、6ページ目を見ていただきますと、それを今回、基本計画の中で掲げられております超スマート社会への対応ということで、物理層のところには、各個別の技術を記載しています。それを、サービス層、これは昨年の科学技術イノベーション総合戦略2015で取り上げておりました、バリューとして何が生まれるのかということを中心に、サービス層のところに記載しています。それをつなげるものとしてサイバー層。エネルギープラットフォーム、さらに、各ほかのシステムにも共通するIoTサービスプラットフォームというものを位置づけて、エネルギーネットワークアーキテクチャーということでの俯瞰(ふかん)図を作って検討の基礎にしているというところです。
その次のページにいっていただきますと、こちらは環境ワーキンググループでの対応になります。地球環境情報プラットフォームの関連要素の俯瞰(ふかん)図ということで、観測からデータ処理、モデリング、予測・推定といったようなもので、どのような価値を生んでいくか、どのようなシステムにつながっていくかということを示した図になっています。一番右側のオレンジの枠が、昨年の総合戦略において記載しておりますシステムの、環境情報プラットフォームにつながるところということで、先ほど橋本先生からも御指摘がありましたけれども、真ん中のところで自然災害に対する強靭(きょうじん)な社会の実現、インフラ維持管理といったようなところが、現状のSIPにもつながるところであろうと考えています。
次のページをめくっていただきまして、8ページ目になります。これは、現在策定中の科学技術イノベーション総合戦略2016における取組を考えていく際にまとめました案となっています。取組の内容としましては、地球環境の観測技術の開発と継続的観測の推進、予測技術等の高度化、統合した情報基盤の構築、気候変動への対応技術の開発という、各段階の取組をシステム化していくということで、最終的に、システムが創出するバリューとして、一番右に黄色で囲っています。そちらのようなものでまとめて、現在、各省との協議もこれから開始されるという状況になっています。
最後になります。済みません。長くなりました。エネルギー・環境イノベーション戦略。これはまだ案になってございますけれども、近々、この「案」が取れた形で、エネルギー・環境イノベーション戦略を御報告させていただくことになります。御承知のように、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定、長期目標としての2度目標、あるいは1.5度に抑える努力を追求するというようなことで、攻めの地球温暖化外交戦略、ACEの話もございましたけれども、その中で、途上国支援と並んでイノベーションが重要であるという、そのイノベーションとして何に着手していくべきであるかということで、首相からの御指示をいただいて、今回の戦略を作っているものになります。国内での温暖化対策としましては、足元から2030年を見た総合戦略としての地球温暖化対策計画、あるいは2030年のエネルギーミックス実現に向けた戦略ということでエネルギー革新戦略というものがまとめられているところ、そこから更に2050年を見据えた革新的技術戦略ということで、先ほどのSociety5.0というものが実現しているということも前提として、更に個別の技術についてもしっかりと取り組んでいこうということでまとめているものです。
全体像としましては、最後のページになります4-2に、概要等を取りまとめています。有望分野の特定ということでは、エネルギーシステム全体を統合するもの、あるいはシステムを構成するコア技術ということで、先ほどのエネルギー戦略協議会での議論も受けた形になっております。省エネルギー、蓄エネルギー、創(そう)エネルギーという、エネルギーに直接関与するもの。それから、CO2固定化・有効利用ということで、CO2に直接関与するものということで、幾つかの事例を挙げさせていただいているところです。SIPで取り組んでいるもので、更に先を見据えたものというようなテーマもございますし、あるいは取組の仕方としては、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)的な取組をしなければいけないというようなものもあろうかと考えています。
もちろん、ここで技術を特定して、これに頑張っていきますという掛け声だけでは何も進みませんので、右側にⅢとして、研究開発体制の強化として、政府の特にCSTIが全体を統括して、各関係省庁の協力を得て、推進する体制というものを構築・強化していこうと。さらに、新たなシーズをどうやって作っていくのか。あるいはそれをどうやって組み上げて育てていくかということで、柔軟に対応できるような体制というものも必要であろうと。さらには、2050年までという非常に長期のものについて取り組むということでありますけれども、ステージゲートを設けてしっかりとステップを踏んでいくということも必要だろうということをうたっております。3ポツとしましては、「産業界の研究開発投資を誘発」と書いていますが、これはもう、政府だけが旗を振っても仕方がないことですので、産業界にもしっかりとコミットしていただくための、ビジョンを共有するとか、実際に出てきた成果をそのまま社会に実装していただくといったようなことが必要だろうと書いています。最後に、国際連携・国際共同開発の推進ということで、直近、G7や秋のICEFといったような場も利用しまして推進を図っていきたい。それを図ることで、イノベーションで世界をリードし、気候変動対策と経済成長を両立するということを目標にということでまとめています。
これらの結果を、現在、科学技術イノベーション総合戦略2016の方にも取り込ませていただいております。若干、環境の方では、例えば生物多様性といったところの取組が弱いのではないかとか、いろんな御指摘もいただいているところ、今後の議論をさせていただきながら、戦略の方にも書き込んでいくということが今後されていくと考えています。済みません。長くなりました。
【安井主査】  ありがとうございました。御議論は後でいただくとして、何か事実確認の御質問だけ1つぐらいいかがですか。特によろしゅうございましょうか。
それでは済みません。それでは次に進ませていただきます。
続きまして、環境・エネルギー分野の俯瞰(ふかん)活動と、主要国の研究開発政策動向から見る国際ベンチマークということでございまして、JSTのCRDSの佐藤上席フェローから御説明をいただきたいと思います。お願いいたします。
【佐藤CRDS上席フェロー】  3月1日付けでCRDSの環境・エネルギーユニットに上席フェローとして着任した佐藤でございます。
CRDSの活動は、基本的に、1枚めくっていただきまして2ページですが、科学技術分野のシンクタンクとしての活動をしています。そのアウトプットは、今、西尾さんが説明されたような、内閣府、文部科学省、それから経済産業省等にお配りしています。それらの部局の活動に成果が反映されてるシンクタンクという機能です。CRDSは、野依センター長の下、6つ、セクションがございます。そのうちの4つが科学技術に関するものでございまして、環境・エネルギー、システム・情報科学、ナノテク・材料、ライフサイエンスのユニットがあります。そのほか科学技術イノベーション政策と海外動向のユニットがあります。環境・エネルギーユニットですが、これは環境・エネルギーだけの研究開発ということではなく、システム情報、ナノテク材料及びライフサイエンスと共同して、いろいろな調査を行っております。
CRDSの活動とアウトプットとしては、当該分野の研究開発動向の俯瞰(ふかん)を行い、それと社会的期待の分析を併せ、その中から浮かび上がる重要テーマに対して年に5から10件程度を深掘り調査し、アウトプットとして報告しています。それらの調査においては、各ユニットが総合的に横断的に行っています。俯瞰(ふかん)報告書及び戦略プロポーザルは、科学技術・イノベーション会議、内閣府、文部科学省、各省庁、それから当然のことながらJSTに出しています。また、国際動向の調査等に関しては調査・分析レポートを、各省庁、それから産業界、アカデミアに出しています。
1枚めくっていただいた4ページは、CRDSの関連プロポーザルの活用状況です。ここに示しますように、SIP、CREST、マテリアルズインフォマティクスなどに展開されています。元素戦略もその1つです。その他JSTの事業、例えばALCAであるとかCREST等に活用されています。これらがCRDSの行う活動の1つの出口となっています。
次に環境エネルギー分野です。エネルギーに関しては、今、西尾ディレクターの方からかなり細かい説明があり、重複する部分がかなりございます。エネルギー需給は、東日本大震災前と後で変わっています。一次エネルギーの分布がかなり変わっています。当然のことながら低炭素燃料ということで天然ガスの導入が図られ、これはガスタービン発電機の燃料として使われています。石炭は、発電量のために増加しています。これらが、原発が停止している影響をカバーしているという形に、一次エネルギーの段階でなっています。一次エネルギーを転換して、運輸等、いろいろなエネルギーとして使用するとともに、発電して電気として使用しています。一次エネルギーはそのように最終的に使われていくわけですが、エネルギーというのは熱力学の法則がございまして、全部を動力にすることが理論的にできません。したがって、いろいろな損失をいかに減らすかということが、発電段階と利用段階とを含めて非常に重要になっています。また、各種産業においても、それらをいかに減らすかということが、先ほど言いました、温暖化ガスの排出を減らすということに関し、最も重要なこととなっています。
6ページに社会的課題から見た研究開発の方向性を示します。1番目は、我が国のカントリーリスクを考慮した資源確保です。2番目は、電力設備の効率向上です。電力設備は非常に大きなエネルギー、すなわち一次エネルギーのかなりの部分を使っていますので、その発電及び送配電の効率向上は極めて重要です。電力設備が、1%効率が上がりますと、現状の太陽光の発電量のかなりを賄えるぐらいのインパクトがありますので、発電効率をいかに上げるかということが非常に重要です。また、原子力問題の解決、それから再生可能エネルギーの利用拡大も重要です。これらの点の研究開発の拡大が必要だと思います。次にエネルギー消費の高効率化・省エネルギーです。1970年ぐらいからのエネルギートレンド及び東日本大震災以降を見てみますと、この省エネルギー、日本の場合、非常にうまくいっており、特に産業分野においては、産業原単位当たりのエネルギー量が1970年の半分になっています。それに比べて現在問題なのは、民生が増えているということで、これからは民生部門やビル部門等の高効率化・省エネルギーが期待されるところです。低位熱・低位エネルギーの有効利用、これも非常に重要です。それから、電力自由化、再生可能エネルギーの拡大を考慮したIoTの活用による、エネルギーネットワークの高度化。これも、先ほどの西尾ディレクターの説明のように、非常に重要な問題です。もう一つ、非常に重要な問題として、「その他」と書いていますが、実はこれはこれらのエネルギー技術を支える基盤技術です。これがかなり、ないがしろにされているのではないかということで、あえてここに基盤技術というものを記載させていただいております。
次のページ、7ページは、エネルギー分野の研究開発の俯瞰(ふかん)図です。先ほどの内閣府西尾ディレクターの説明と、当然のことながら、同じです。エネルギーの供給、エネルギーの利用、エネルギーのネットワークという分野に分類しています。それを更に次の8ページに示します。研究開発領域というように分けます。いろいろな分野に対する、例えば資源開発とか火力とかCCUSのようなものに対する研究開発、それらを支える基盤技術という形で分けています。現在、30の研究開発領域を挙げています。
9ページは、再生可能エネルギーの導入見込み量と、世界のCO2排出量の見込みです。左のところに図が2つあります。上が再生可能エネルギーによる発電電力量で、下が再生可能エネルギーの発電設備容量です。2013年の日本全体の総発電量は、9,400億キロワットアワーです。2050年に再生可能エネルギーによる発電電力量を、最大の高位で7000、低位で5000、中位で6000まで持っていこうというのがCO2削減において極めて重要です。この下の発電設備容量と比べてみますと、これはちょっと単位が違いますので、発電設備容量に時間を掛けて、上の発電電力量との比較になります。1年間は約1万時間、正確には8600時間ですので、掛けますと、自然再生可能エネルギーの場合、設備容量の2割しか発電電力量がないことになります。2050年でもそれしか見込んでいません。これをいかに上げるか、それをいかに有効に使うかということが重要です。特に太陽光においては、2050年でも設備容量の10%程度です。これをいかに上げるか、それからいかに有効に活用していくかということが、かなりの課題ではないかと思います。
9ページの右は、世界のエネルギーについてです。世界的に見て、CO2を減らす一番の要因は省エネルギーです。それから太陽光・風力等の発電になっています。先ほど言いましたように省エネルギーというのは世界的に極めて重要な技術です。今後とも我が国においても非常に重要な研究開発領域であると思います。
次に10ページですが、今、深掘りの方向として、電力ネットワークを取り巻く動向というものを考えています。先ほどの西尾ディレクターの話にもございましたように、将来の電力ネットワークには、たくさんの自然エネルギーが入ってきます。それの一部を需要側が持ちます。先ほど言いましたように、自然エネルギーの場合には自然の状況によって非常にエネルギー変動が大きくなります。それをいかに吸収して電力ネットワークを運営するかが問題です。この研究をきちんとやっておきませんと、現在、行っている電池その他のいろいろなプロジェクトにおいて、どういうことがそれぞれの機器への要求条件であるかわかりません。電池は容量だけではありませんので、瞬間発電量等もかなり問題になります。それから、その変動に対する負荷応答も問題になります。システム的な観点からきちっと検討する必要があるだろうということで、この問題についても検討していきたいと思います。
次に環境分野ですが、11ページ目に示しますが、環境分野の課題として、温暖化、水の問題、生態系、それから大気環境等の問題があります。12ページは、環境分野の俯瞰(ふかん)です。循環型社会に関して、気候変動の影響、環境汚染・健康、それから生態系・生物多様性等の問題があります。それぞれに関する、環境分野の研究開発領域を13ページのように定義して調査をしています。
次に、主要国の研究開発動向です。14ページに示しますように、各国のエネルギー動向等とそれに基づく研究開発動向等を調べていす。例えば米国では、シェール革命によりエネルギー自立が可能な状況になり、輸出が許可され、設備等がこれから整備されるところです。それに関する研究開発、更に自前のクリーンエネルギーへの投資ということが行われています。米国では、基礎研究を含め、DOEが中心で、基礎研究の重要性を明示しております。EU、ドイツなどについても調査をしています。
15ページに、主要国のエネルギー政策ということで、日本をはじめとする各国のエネルギー政策及び、重点領域等を示します。これらを整備して、16ページは単に項目だけしかなくて非常に失礼をいたしますが、このようにまとめる予定です。先ほど言いました重要課題から、各国の動向及び何をしているかということをきちっと調査していきたいと思います。これまで一番下の「その他(基盤技術を含む)」ということについて、各国が、それぞれの国の産業及び、大学等を考慮して、どのような基盤技術をどのように整備しているかということについては、なかなか調査できていません。これが一体どうなっているのかということも含めて、検討していきたいと思っています。これらにつきましては、また後日、報告書等を提出していきたいと思います。以上でございます。どうもありがとうございました。
【安井主査】  ありがとうございました。それでは何か事実確認の短い御質問があればいただきたいと思いますけれど、いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。
それでは次に参ります。次でございますけれども、今後の気候変動研究の在り方に関する検討会というものの報告書が出てきておりますけれども、その検討会の座長であられた高村先生からの御報告をいただきたいと思います。済みません。よろしくお願いします。
【高村主査代理】  安井先生、ありがとうございます。
既に前回の委員会で、こちらの検討会の設置及び提示されている論点等については報告をさせていただいておりますが、その後、検討を重ねまして、3月31日に取りまとめました報告書が、本日、資料3-4としてこちらに提出させていただいております、こちらの報告書ですけれども、この検討会、全5回、かなりインテンシブな議論をさせていただいて、それを取りまとめたものでございます。委員はこの報告書の最後のページに掲載されておりますけれども、こちらの本委員会からも、市橋委員、江守委員、沖委員、そして河宮委員、手塚委員にも参加いただいております。もう一つの特徴と申し上げると、関連府省庁からかなり幅広く今回参加をいただいて、それぞれの府省庁の取組あるいはお考えを率直に交流させていただいて、検討してまとめた結果であるという点でございます。
報告書の取りまとめについては、特に前半のところ、1から3でしょうか。そこでまとめておりますが、文部科学省におけるこれまでの気候変動研究、それから政府において昨年11月に閣議決定されました気候変動の影響への適応計画、それから本年1月に閣議決定されております第5期科学技術基本計画、そして既に何度も言及されておりますけれども、COP21で採択されたパリ協定あるいは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書をはじめとします国際的な気候変動研究の動向等々、これらの国内外の動き、状況をかなり広範に踏まえて、特に創生プログラムに続くポスト創生の在り方も念頭に置くものとして私自身、考えておりましたけれども、文部科学省が今後取り組むべき気候変動研究の在り方について議論を行ってまいりました。
この検討会では、委員のメンバーを見ていただくと分かりますように、創生プログラムをはじめとする気候変動研究の中核を日本で担ってくださっている方々、それから産業界・自治体などのステークホルダー、関係府省庁に参加をいただいております。1ページの最後のところに言及しておりますけれども、今回、研究コミュニティーとステークホルダーが、いわゆる研究プログラムの立案の段階から協働するco-designの考え方、これはフューチャー・アースの理念にあるものでありますけれども、こうした取組の一つでもあるという位置づけだと理解しております。
こうした議論の結果を踏まえまして、今後の取組の必要性として、まずこの報告書でいきますと11ページにあります、4の「今後の取組の必要性」のところにまず3つ、緩和策への貢献、適応策への貢献、そして基盤的モデルの開発という3つの柱を整理しております。その上で、今後のより具体的な気候変動研究の方向性について、取り組むべき、できるだけ具体的な研究開発課題として、これが報告書で参りますと13ページの5に当たります「今後の気候変動研究の方向性」のところに、3つの柱で取りまとめております。
1つ目の柱が、不確実性の低減をする、炭素循環・気候感度等に関する取組であります。こちらは、報告書の13ページのところを見ていただきますと分かりますけれども、具体的な例えば研究課題といたしまして、やはり炭素循環等も考慮した気候感度等の評価の精度を上げていくことの重要性。そのために、陸域生態系や雲の振る舞い、あるいは海洋の熱吸収過程の不確実性低減等々に焦点を当てること、あるいは窒素・二酸化炭素以外の温室効果ガス、エアロゾル等の不確実性低減の重要性も指摘しております。あわせて、ティッピング・エレメントの評価ということもまた望ましいといいましょうか、最良の科学に基づいた政策決定という点は非常に重要だということも指摘されております。そのための氷床モデル、陸面過程モデル等の開発の必要性を指摘しております。そして、13ページの最後のところですけれども、やはり、より現実的な緩和策の検討に資するという意味では、Earth System Modelと、それから従来、個別的に行われてきた社会経済モデル、排出シナリオ等々の統合シナリオの分析も行う必要があるということを指摘しております。
2つ目の柱でございますけれども、統合的予測・影響評価に関する取組でございます。こちらは、1つはハザード評価はもちろんですが、それに加えて脆弱(ぜいじゃく)性と暴露も考慮した影響評価、そのためのモデルの統合による統合的予測の取組ということを重視しております。ハザード評価については、こちらに詳細を書いてございますけれども、やはり、より高精度かつ現実性の高い影響評価の基盤として、高精度な気候予測情報を提供していくこと。そのための気候モデルの高度化、さらには過去の現象の把握も含めた、過去の気候変動再現データを活用していくといった点が、議論の中で強調されております。そして、気候モデルの高度化については、とりわけ関心の高い台風あるいは梅雨等々の影響については、やはり高解像度化というのが必要であるということも、また指摘しております。影響評価については、先ほどのハザードのみならず、脆弱(ぜいじゃく)性と暴露も考慮し、かつ社会的な要素を取り込んだ評価というのが非常に重要だと指摘しております。IAVモデル及び要素モデルについて、そのモデル構築に必要な様々な取組というのを行うべきであるといった点をこちらでは指摘しております。さらに、それは同時に炭素循環の把握等を含む緩和策の検討にも資することを付記しております。
3つ目の柱が、基盤的モデル開発でございますけれども、やはり、これら第1、第2の柱を行っていくためにも、15ページの中段に書いておりますけれども、雲・降水等々のプロセスの高度化、予測システム・大気海洋系結合過程等の改良、効率的なモデル開発等々に向けた気候モデル群の共通化などの課題がございます。それから近年、注目されています過去事象の要因分析(イベント・アトリビューション)等々の取組の強化も重要であるということを指摘しております。後半のところで、それを支えるデータ同化技術の高度化、更に観測分野との連携、過去の気候変動を再現することの必要性ということも指摘しております。
最後のところに、これらの研究開発において留意すべき点として、IPCC等への対応、途上国への情報提供などを軸とした戦略的な国際対応、そして不確実性の下でのリスク情報発信あるいは対話の方法、対話ということについて付しました社会への発信とユーザーとの対話、そして関係府省庁との連携ということを挙げております。
以上が報告書の極めてかいつまんだ概要でございますけれども、特に私、検討会において、2つの点について重要な議論があったと思っております。それは、今御紹介した中にも申し上げましたけれども、やはり最良の科学を踏まえて持続的に長期目標を達成していくパリ協定の合意や、あるいは政府適応計画で、今後ほぼ5年ごとに、すぐ評価を行って、見直しを行っていくといったことに典型的に表れておりますように、やはり政策的な、あるいは社会的な要請としては、気候感度等の不確実性の低減をはじめとする気候変動の科学的なメカニズムの解明、予測技術の開発、そして、より精度の高い影響予測、リスク情報の創出が、今まで以上に重要になっているという点であります。まさに論点としても、この検討会でございました、どのように他府省と連携していくか、その中で文部科学省がどういう役割を担うのかという点について議論してまいりましたけれども、やはり文部科学省として気候変動研究を、先ほど申し上げた観点から、更に一層、取組を強化することが必要であると思っております。今回の報告書は、そういう意味では、単なるこれまでの気候変動プログラムの延長ということではなくて、まさにこうした新しい政策要請、社会要請に応えて、気候変動研究の水準を大きく引き上げるために何が必要な研究課題なのかということを、皆様の御協力で同定できたと思っております。
2つ目の点は、やはり、いろいろ大きな議論になりました不確実性というのが1つのキーワードでございました。どうしても、やはり気候変動の科学メカニズムをはじめとして不確実性が伴ってまいりますけれども、しかし、その低減を図りながら、かつそうした不確実性を伴うものとして、その情報をより効果的に政策的な意思決定あるいは社会に発信していくかということ、そして対話を促進していくかということが、改めて課題として認識されたと理解しております。
実に多岐にわたる議論がございましたので、足りない点は参加いただきました委員の先生方にも補足をいただきたいと思っておりますけれども、改めて委員の皆様、そしてこの議論は大変、取りまとめるのに事務局が苦労なさっておりまして、ある意味では、非常に闊達(かったつ)な議論をうまくまとめていただきました事務局に改めてお礼を申し上げたいと思います。それで、是非今後の気候変動研究、そして新たなプログラムの立案に生かしていただきたいと思っております。以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。同じく何か事実の確認的な御質問があればいただきたいと思いますけれど、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。
それでは、ありがとうございました。3つの御発表をいただきまして、それでこれから実を言いますと、この議題は、最初にございましたように、研究開発計画というものを、ここの委員会の責任で作っていく。それに関しまして、文書、資料3-1-2というものが出ておりますけれども、こういった形にのっとった形で作っていってよろしいものか。今、いろいろと情報をインプットいただきましたけれど、それを考えたとき、これで十分なのかといった御議論をいただければと思う次第でございます。
例えば個人的には、資料3-1-2の1ページ目、対象期間。これは今まで大体こういうふうにやってきているのですけれど、今後の10年程度を見通すと言いながら、先ほどの3つの発表はみんな視点が長くて、2050年まで大体入っているのですけれど、我々としては、何かそれをここに書かなくていいのかとか、そういうようなことはあり得るかと。見通すのは無理かもしれませんけれど、視野に入れるのはどうかとか、何かそういうことがあり得るのかどうかなどといった御議論がいただけるかななどと思っておりますけれど、何か皆様、御意見等ございましたらお願いしたいと思います。いかがでございましょう。
それでは沖先生、どうぞ。
【沖委員】  今の資料3-1-1では余り書き込まれていないのですが、先ほど紹介があった3-2の科学技術イノベーション戦略の方では、人材力の強化とか、その辺が非常に書かれていて、やはり研究というのは、投資も必要ですけれども、人をいかに継続的に育てていくかというのが非常に重要だと承知しております。そういう意味では、一般的に科学技術の発展のために人材をどう育成するべきかだけではなくて、例えば環境エネルギー分野、エネルギー環境分野に関して、今の研究者なり教育・研究体制としてこういうところが欠けているのではないかといった点を是非議論して、何らかインプットすればいいのではないかと思います。意見でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。松橋委員、お願いします。
【松橋委員】  安井先生がおっしゃった点について言いますと、やはり特にエネルギーの分野というのは、ある技術を研究して、実現して、本当に社会に入るというのは、物すごい長い時間が掛かりますので、例えば核融合の研究をこれまで何年やってきて、あと何年やるのだろうかということを考えますと、数十年から100年近く掛かるものもあるということですから、そこを見据えて、この対象期間というところも、ある程度考えないといけないのだろうと思います。もちろんこれは、今後10年の間に実現するという意味ではなかろうと思いますし、今後10年の研究開発計画という具体的なところなのでしょうと解釈はいたします。それで、実現するのは、2030年、40年、あるいは50年ということも当然あるのだろうと思いますが、もし安井先生のお言葉に応じて申し上げるならば、もうちょっとそこが分かるように表現した方がいいのかなとも思います。以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。核融合は多分、我々のテリトリーにはないのです。ほかに原子力委員会、何でしたっけ、正式名称は忘れましたけれど、東大に移ってこられた山口先生が座長をおやりになっている委員会があって、そこが多分、何か書くと思いますし、核融合で言えば、最近、何か小規模な、ITER的な、巨大でないやつが結構話題になっているので、多分、そんなことを含めてこられるかどか分かりませんけれど。さて、ほかに何か御意見はございませんでしょうか。どうぞ。
【江守委員】  ありがとうございます。資料3-2の、ちょっとイノベーションについてまた教えていただきたいのですけれども、これは素人目で拝見すると、国の科学技術イノベーションの方向性として、シーズを同定して、そこに産官学のコンソーシアムを作ってロードマップを書いて進めていくというところは、強力に推進されている感じがするのですけれども、シーズが湧いてくるところというか、まだ何かやったらできそうなことをやるというよりも、本当に誰も考えていなかったようなことを発想する、アイデアを発想するようなところというのをどうするのだろうというのは、素人目に気になるところでありまして、それで、3ページの第5章(2)に、「新規事業に挑戦する中小・ベンチャー企業の創出強化」というところが書いてあって、恐らくこういうところで、そういう点についても考えていられるのかなという感じはするのですけれども、恐らく、そういう本当に新しい発想をするところでは、すごく失敗、起業リスクが高いのだと思うんです。試してみて、うまくいかなかったということが非常にたくさんあった中で、非常に少数例として、すごくいいアイデアが生まれてくるという、そういう、何というか、起業環境とか投資環境というのが、よく、これは素人目でというか、素人として耳にすることですけれども、アメリカはそうだけれども、日本では余りそういうふうになかなかならないということをよく聞くのですけれども、今回の戦略ではそういったところがどれぐらい意識されているかというのが、もしお分かりになりましたら教えていただきたいなと思いました。
【安井主査】  ではお願いします。
【西尾内閣府ディレクター】  ありがとうございます。ただいまの御指摘、非常に重要なところかなと思っております。私の資料の最後に、先ほどちょっと説明をはしょっておりますけれども、ローマ数字の3「研究開発体制の強化」の2ポツですね。「新たなシーズの創出と戦略への位置づけ」ということで、ここで掲げているものは、あくまでも今、これから取り組めるのではないかというところを例示させていただいたにすぎません。今、御指摘がありましたように、新たな着眼点で、あるいは全く別なところからシーズが生まれてくるということを期待するものでもあります。ですので、それを創出するための仕組みというものを、何ができるかということについて、今、議論あるいは各省とのお話もさせていただく前段階というところでございます。
内閣府的には、ImPACTのようにハイリスクでハイインパクトと。決してハイリターンとは言わないというところがありますけれども、そういったものを、例えばプログラムとして作っていく方向性はないかとか、あるいは今、現状で文部科学省さんもそうですし、環境省さん、経済産業省さんと、関連するところとの議論をさせていただこうとしておりますけれども、やはりシーズを作っていくための制度を作って運用していくところ、あるいはシーズとして出来上がりつつあるものを例えば受け取って実行するところという、各段階、役割といったようなものを、各省といろいろと連携を深めていくということが、これから重要ではないかなということで、そちらのアクションを、ちょうど、本日の午後には本部の方も専門調査会から提示をさせていただき、それらをベースに議論をさせていただこうと考えているところです。そういった意味で、投資の方までといきますと、3ポツの方になるかと思いますけれども、一応、そこのところの意識は非常に強く打ち出させていただきたいと考えています。
【安井主査】  ありがとうございました。どうぞ。
【橋本主査代理】  作成に関わっていますので補足します。今の資料の2ページ目、3ページ目の見開きを御覧いただくと、今回、最初の「基本的考え方」の(3)の「目指すべき国の姿」の4に「知の資産の持続的創出」があります。これは、4項目の一つに明確に、その新たな知を生むためのことの重要性を記載しているのです。それで、具体的にはその下の4章の「科学技術イノベーションの基盤的な力の強化」の中に、「知の基盤の強化」ということで、これが、いわゆる応用研究と基礎研究で、応用研究あるいは出口に偏っているのではないかという批判が第4期のときにあったわけですけれども、第5期はそれを明確に、両方からいくのだということを示しているわけです。
それで、併せてベンチャーなどの、新たなものから産業につなげるというベンチャーの重要性等々は、第5章の(2)の「新規事業に挑戦する中小・ベンチャー企業の創出強化」と、そこに大学発ベンチャーの促進と書いていますけれど、それは第7章の「科学技術イノベーションの推進機能の強化」というところの最初に「抜本的な大学改革と機能強化」とありますが、この中の1つの非常に大きなものがベンチャー創出環境、ベンチャーが繰り返しトライできるようなシステムを作っていくとか、そういうことが書かれています。そういう意味で、今回の第5期に関しては、かなりそこの部分については出口と同じぐらいの意味で、出口から見たのと同じぐらいに新たなシーズを作り出し、そのシーズから新たなイノベーションを起こすということを意識的に書かれているというものになっています。
【江守委員】  ありがとうございます。
【安井主査】  ありがとうございました。ほかにどなたか御意見はございませんでしょうか。どうぞ。もしあれでしたから、名札を立てていただけると有り難いです。どうぞ。
【河宮委員】  ありがとうございます。海洋研究開発機構の河宮です。
先ほどのSI-CATの説明のときに感じたことなので、ちょっと蒸し返すようで恐縮なのですけれども、SI-CATは適応策のためのニーズの把握に基づきながら技術開発を進めるということで、あるべき姿になってきているなと感じるのですが、問題としては、ニーズの把握で、その把握した後、どういう技術開発が必要かということをちゃんと把握するための時間というのが結構掛かると思うんです。それが分かってきた頃には、技術開発も同時にスタートしてしまっていますので、なかなかに柔軟になれないほど大掛かりになってしまっているということがあり得るのではないかなと思います。その辺は多分、中間評価に対する対応などでうまくやっていくのだろうなと期待はしますけれども、ただ、そういう問題もあって、ちょっと制度的に未成熟な部分もあるかなと感じながら聞いておりましたので、いや、今後の検討において、そういう視点というのは入ってきた方がいいのかなと思いました。以上です。
【安井主査】  何かお返事等がございますか。
【樋口環境科学技術推進官】  それはちょっと簡単にSI-CATの仕組みでございますけれども、一応、SI-CATでちょっと工夫をしております点を紹介させていただければと思います。
最初の段階から、モデル自治体みたいな形での自治体、関心のありそうな自治体さんを公募しまして、それで技術開発機関として一緒になって研究開発をやっていただけるような取組をやっているという点は、これまでに比べて、研究開発をやってから自治体にというところではなくて、かなりインタラクティブな仕組みを導入しているというのは工夫している点かなと思いますし、社会実装機関の方でも、自治体さんと連携しながら、どういう社会シナリオがあるのかというのは、研究開発などもやりながら、これも、かなりインタラクティブに研究開発に役立っていくというようなプログラムの組み方にしておりますので、それだけ時間が掛かるという点もございますけれども、うまくニーズが技術開発にもしっかりつながるような形での運用というのを、これから気を付けていきたいと思っております。
【安井主査】  ありがとうございました。ほかに何か御意見全般、あるいはきょうの御発表に関する御質問でも結構でございますが。どうぞ。
【手塚委員】  産業界の代表の委員という意味で、ほかに余りいないと思いますので、コメントだけさせていただきます。2点あるのですけれども、1つは、大変すばらしい、非常に必要とされている技術を今後開発していくための、かなり長期の視点の計画を立てられるということで、是非、推進していただきたいという期待も込めてなのですけれども、一方で、この分野、環境エネルギー、特にパリ協定以後の世界では、恐らく非常に大きな注目を集めて、世界で一斉にいろいろなところでこういう活動が同時並行で起きて、競争関係も厳しくなってくると思うのですが、このテーマで予算を立てると非常に取りやすいといった要因も一方であるかと思います。先ほどもちょっと出ていましたけれども、同様のテーマあるいは同様の分野が省庁間で並立的にというか冗長な形で進んでいくようなことも、まま出てくる可能性があるのではないかと。そういう意味で、民間の発想からしますと、できるだけこれは効率性を考えていただいて、省庁間で連携いただき、重複部分がないような形で、公的資金を有効に利用していただくということを考えるのが重要かと思います。加えて、先ほどDIASの方では、最終的な形で課金制度まで考える、つまり、民間資金も導入していって、持続的なシステム維持に充てていくというのがありましたけれども、SI-CATの中に若干書いてありましたけれども、最終的に使われるようになってきた段階で、きちんとそこでキャッシュが回っていくような仕組みも当初から考えながらやっていくというのが重要ではないかというのが1点です。
2点目は、今回の研究開発計画で出てくる技術というのは、恐らくいずれも今後、必要とされる技術だと思うのですけれども、インベンションとイノベーションは違いまして、イノベーションというのは、つまり、どんなに画期的な技術ができたとしましても、それが実際に使われなければ意味がないわけです。そうしますと、社会実装のところが非常に重要になってきて、これは最終的には公的資金あるいは政府が投資を行うわけではなくて、民間が様々な技術に投資を行って、それが社会の隅々まで行き渡る。LED電球などはそういうものだと思いますけれども、こういうところまでつなげないといけないわけですけれども、その中で多分2つ大きな問題があります。1つが、先ほど高村先生から御説明いただいた、「今後の気候研究に関する研究会」の中でもいろいろ議論したのですが、不確実性の低減です。つまり実際に民間の資金がそこに投資されるというのは、ある程度、投資が回収できるという見込みがないものにお金はいかないわけですから、様々な気候研究、あるいは一番大きなところで言うと気候感度という一番大きなファクター、これもいまだに非常に大きな不確実性があるわけですから、現実に2度目標を満たすために一体CO2を何ppmにするべきかというところで、とても大きな幅があるわけです。ここがある程度、収れんしていくような方向に、科学技術の知見が高まっていく必要がある。もう少しピンポイント的に言いますと、リスクがより具体的に見えるようになってくる必要があって、これはいわゆる影響研究の方になります。先ほども、データのメッシュを1キロメッシュにして膨大なデータをという話がありましたけれども、実際に企業が活動を行っていく向上の地域なり、ロジスティクスなり何なりに、どういう影響が来るかということは、ある程度きちんと見えてくる。そうした情報がある程度の確度で出てくることによって初めて、起きてからではなくて予見的な投資が行われるということになると思いますので、この分野はできるだけ公的なお金を使って、不確実性の低減のための研究なりデータベースの構築なりを引き続きやっていただければと思います。
一方で、この不確実性というのは、多分、ゼロになるということはないと思いますので、その中で、ある幅のある、不確実性のある将来の絵姿の中から、どういう意思決定を行うべきか、ということが問われてくるわけです。あるいはノー・リグレット・ストラテジーというものです。やった結果、全部が無駄にはならない投資。そういう、無駄にならないような投資というのは、どういうものがあるのかといったことも含めた、つまり使い方に関する研究、あるいはノウハウというか、そういうものもあわせて、この気候変動研究の中の分野に位置づけていただいて、知見を広めていただくということが、今後10年という意味では重要ではないかと思います。以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。どうぞ。
【西尾内閣府ディレクター】  済みません。コメントだったということではありますけれども、1つだけ。内閣府としては、今、総合戦略をまとめさせていただいている中で、これを基に各省からの施策を提示いただいて、それを、ヒアリングも通じて、重複であったり目標の設定であったりといったようなところについてサジェスチョンをさせていただく、アクションプランということをやってございます。そちらの方に、是非、積極的に各省の方からもアプローチをいただいて、その場でまた議論をするというところを内閣府の方では設定していきたいなと考えております。以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。これで終われると大変ハッピーな時間なのですけれど。よろしゅうございますか。
それでは大変、御議論いただきまして、ありがとうございました。また、御発表いただきました皆様方、ありがとうございました。
予定時間でございますので、これで、まず事務局からの御連絡をお願いします。
【田島課長補佐】  それでは事務局から御連絡をさせていただきます。本日の議事録は、後日、事務局よりメールで委員の皆様にお送りさせていただきますので、御確認いただき、修正等あれば御指摘をいただければと思います。最終的には文部科学省のホームページに掲載することで公表させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
また、旅費・委員手当などの書類につきましては、御確認いただき、お帰りの際に事務局に御提出をお願いいたします。また、本日お配りした資料につきましては、大部でございますので、机上に置いておいていただければ、後日郵送させていただきます。
また、次回の会合につきましては6月を予定してございます。詳細等につきましては、追って御連絡させていただきます。本年は、研究開発計画取りまとめのために、昨年よりは高頻度に会議を開催させていただくことになるかと思いますので、御協力いただきたいと思います。以上です。よろしくお願いいたします。
【安井主査】  よろしくお願いいたします。
それでは、これをもちまして、第4回の環境エネルギー科学技術委員会を閉会いたします。どうもありがとうございました。

── 了 ──


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