第8期 環境エネルギー科学技術委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成28年1月5日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省15F特別会議室

3.議題

  1. 気候変動適応研究推進プログラムの事後評価について
  2. 環境エネルギー科学技術をめぐる最近の状況について
  3. 地球環境情報プラットフォーム構築の今後の進め方について
  4. 今後の気候変動研究の在り方について
  5. 今後の環境エネルギー科学技術の研究開発の方向性について
  6. その他

4.出席者

委員

安井主査、高村委員(主査代理)、江守委員、沖委員、奥委員、加藤委員、河宮委員、小長井委員、関委員、関根千津委員、関根泰委員、館山委員、田中委員、手塚委員、花木委員、松橋委員、山地委員、渡辺委員

文部科学省

長野環境エネルギー課長、樋口環境科学技術推進官、小野専門官、田島課長補佐、鏑木課長補佐、西川地球観測推進専門官

オブザーバー

住国立環境研究所理事長

5.議事録

【安井主査】  1月、正月早々、大変な時期にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。それでは、ただいまから第8期の科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 環境エネルギー科学技術委員会の第3回となります会合を開催させていただきます。先ほど申しましたけど、この日程になりましたおかげで、本日、大変出席良好でございまして、よかったのかもしれません。
それでは、出席委員の御報告等を御報告いただきたいと思います。
【田島課長補佐】  現在御出席の委員数が17名、それから田中委員には、お越しいだけるというふうに御連絡を頂いております。
過半数に達しておりますので、委員会は成立となります。
また、本日は議題4におきまして、今後の気候変動研究の在り方について御説明を頂くために、国立環境研究所理事長で気候変動リスク情報創生プログラムのプログラムディレクターを務めていただいております住先生にお越しいただいております。併せて御紹介をいたします。
【安井主査】  ありがとうございました。
それでは、議事に入ります前に、事務局から資料の確認をお願いしたいと思います。
【田島課長補佐】  それでは、資料の確認をさせていただきます。上から順番に、議事次第、座席表、それから資料1から順番にございまして、資料1が、「気候変動適応研究推進プログラム」の事後評価結果(原案)でございます。資料2が、2-1から2-7-2までございますけれども、気候変動の影響への適応計画、それからCOP21、それから気候変動に関する政府間パネル、それから全球地球観測システムに関する動向、それから第5期科学技術基本計画(答申)の概要、それから、総合科学技術・イノベーション会議における戦略協議会等の設置について、それから科学技術予算のポイント、平成28年度環境エネルギー科学技術関係予算案の補足資料となってございます。資料3といたしまして、地球環境情報プラットフォーム構築推進プログラムについての資料を入れてございます。資料4-1、資料4-2で、気候変動リスク情報創生プログラムの4年間のまとめ及び今後の気候変動研究の在り方に関する検討会の設置についての資料を入れてございます。資料5が、今後の環境エネルギー科学技術の研究開発の方向性(論点)(案)とさせていただいております。このほか、参考資料といたしまして、1、2、3、4-1、4-2と入れさせていただいております。
【安井主査】  ありがとうございました。
それでは、議事に入らせていただきます。
本日は、お手元の議事次第をごらんいただきますと、5つの議題がございますが、会議の終了時刻は17時を予定はしておりますが、果たして終わるでしょうか。やや忙しいかもしれません。よろしく御協力、お願いしたいと思います。
それでは、議題(1)でございまして、「気候変動適応研究推進プログラム」の事後評価についてでございます。
議題(1)に関しましては留意事項がございますので、ちょっと御説明を申し上げます。
評価を実施するに当たりましては、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」というものがございまして、それに則(のっと)って、公正で透明な評価を行う必要があります。そういった観点から、原則として利害関係者は評価に加わらないようにすることが条件でございます。その範囲につきましては研究計画・評価分科会で定められておりまして、当委員会もそれに従うことにいたします。
ちなみに、お手元に参考資料3というのが配付されておりまして、3ページ目の4、留意事項の(1)というところに、そのリストが載っております。読み上げますと、評価対象課題に参画していた者、それから被評価者(実施課題の代表者)と親族関係にある者、3番目、利害関係を有すると自ら判断する者、4番目、評価に加わらないことが適当であると、これも多分、自ら判断する者という、その4つでございます。
本事業の参画者は、この委員会にはいらっしゃいませんけれども、ほかに自ら自分が利害関係を有すると判断される方はおられますでしょうか。
なしですね。それでは、結構でございます。
では、本題に戻りまして、この事後評価でございますけれども、8月20日に開催されました第2回の委員会で設置されました事後評価調整グループにて、その事後評価の原案を作成しております。まず事務局から、事後評価調整グループの実施状況等に関しまして、説明をお願いしたいと思います。
【樋口環境科学技術推進官】  事務局の環境エネルギー課の樋口です。よろしくお願いいたします。
この気候変動適応研究推進プログラム(RECCA)の事後評価でございますけれども、8月に事後評価の関係のグループを設置いただきまして、10月27日に会合を開催いたしました。グループのメンバーとしては、高村委員に主査をしていただいて、あと市橋委員、関委員、山地委員、渡辺委員、この5名でございます。RECCAのプログラムディレクターには、自己点検結果をまとめていただきまして、10月27日の会合で報告いただいております。
当日にプログラムディレクターから自己点検結果の内容を発表していただきまして、その後に各委員の先生方に事後評価票を記入いただいたということでございます。それを使いまして、各評価項目に基づいて、事後評価の原案を作成いただいたのが、この資料1という形になってございます。
以上でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。
それでは、事後評価の原案につきまして、事後評価調整グループで主査をお務めいただきました高村委員からの御説明をお願いしたいと思います。お願いします。
【高村主査代理】  ありがとうございます。
それでは、気候変動適応研究推進プログラム(RECCA)の事後評価について、御説明申し上げたいと思います。
先ほど事務局からもありましたように、事後評価の実施方法については、昨年8月の第2回のこの委員会で、参考資料4のとおり実施方法を決定しております。RECCAのプログラムディレクターから提出された自己点検結果報告書と、それから10月27日に実施をいたしましたプログラムディレクターへのヒアリングに基づきまして事後評価調整グループの委員5名、先ほど御紹介ありました市橋委員、関委員、山地委員、渡辺委員で原案を作成しております。この原案を基に、本日、本委員会で事後評価結果(案)を確定をし、研究計画・評価分科会に報告をすることになっています。
それでは、資料1をごらんいただければと思います。
表紙をめくっていただきまして、2ページ目から4ページ目はRECCAの概要でございますので、ここでは御説明はいたしません。
5ページ目からが事後評価票となります。
評価結果の(1)課題の達成状況については、所期の目標を達成したかどうか。設定をしました必要性、有効性、効率性における各評価項目について、その評価基準を満たしたかという観点から評価をしております。
達成状況についてでございますけれども、12のそれぞれの研究課題について、研究者と対象地域の地方自治体などでチームを構成いたしまして、現場の課題に具体的に対応するための研究開発を遂行しております。その結果、気候変動適応策の検討に活用可能な科学的知見が創出され、所期の研究開発目標を達成したと評価をしております。
農業従事者、あるいは漁業従事者等が利用可能なインターフェースを構築するなどして、対象地域の自治体における成果の社会実装が進んだ研究課題も多くございました。
プログラム全体といたしましては、プログラムディレクターの強力なリーダーシップが発揮されまして、当初の想定以上の成果を生んだというふうに評価をしております。特に環境省の環境研究総合推進費S-8と共同で出版をされました書籍『気候変動適応策のデザイン』は多くの地方自治体や企業が気候変動影響リスクに対応する際の手引きとなる性格の書籍となっております。
評価項目の必要性に関してでありますけれども、先進的なダウンスケーリング手法、あるいは観測データの同化技術、気候変動適応シミュレーション技術の開発によって、日本、そして世界が直面をしている気候変動への適応策を立案するための科学的知見を創出することができ、地域レベルでの適応策の検討の科学的基礎となる研究成果を上げることで所期の目的を達成したと評価をしております。
評価項目の有効性についてですけれども、開発された成果を研究対象地域で実証することで技術の有効性を確認しております。更に成果の社会実装も推進されているというふうに思います。
気候変動適応に関する研究水準の大幅なレベル向上、それから適応策の検討への科学的知見の提供、気候変動の影響に強い社会の実現への貢献といった設定した所期の目的を達成したと評価ができると思います。
評価項目の効率性に関してでありますが、当初、個別に12の課題が選定をされておりましたけれども、水、都市、農林漁業の3つの研究領域に分類をしてプログラムを構造化することで、個別課題が有機的に連携をすることができたというふうに評価ができるかと思います。
中間評価の際に指摘がございました点に応える形で、先ほど御紹介いたしました『気候変動適応策のデザイン』の出版、関係機関・自治体等との情報交換の推進によって、「オールジャパン」を意識した効果的な事業となることを目指したということが高く評価できると思います。
ただし、不確実性の評価については、広く、あるいは深く評価ができる水準には、まだ至っていないということも指摘をされております。今後の研究プロジェクトにおいて、その不確実性のより詳細な評価がなされるということが課題として期待をされるということでございます。
企業との連携についても着実に進展をしたというふうに評価をしております。
評価結果の(2)成果について、どのような成果を得たか、それから成果と所期の目標との関係がどうか、波及効果があったかという観点から評価をしております。
学術的成果・人材育成等に関しては、空間的により詳細で精度の高い気候モデルやダウンスケーリング手法を開発したのに加えまして、局所的な気象現象の予測手法を高精度化することで、影響リスク評価の技術開発を中心に、適応研究の進展に貢献したと評価できると思います。
また、ほかのプログラムとの連携等によって、若手を中心とした人材育成が図られました。これらのことから、RECCAが適応研究という研究分野を確立し、日本の適応研究のコミュニティの活性化、人材育成と適応研究のレベル向上に貢献したものと高く評価できると思います。
社会的ニーズに関してでありますが、自治体、地域の団体と連携した研究によって、社会的ニーズを顕在化させ、それを研究目的に取り込むといった双方向の取組、発展的な研究の取組が行われたことが、今回のRECCAの大きな特徴であったというふうに評価をできるかと思います。
RECCAで開発された影響評価モデルは、自治体、あるいは漁業者等が活用可能なシステムに組み込まれて提供されております。例として、岐阜県の多治見市での暑熱対策や、あるいは青森県の漁業予測情報配信システムの事業化など、社会実装レベルまで研究開発を進めたのは大きな成果で、自治体等の期待に十分応えるものであったと評価をすることができます。
ただし、一部の課題について、普遍的な技術の開発に注力をしたこともあって、現場レベルでの問題設定、対象地域との連携、あるいは社会実装に向けた取組が必ずしも十分でなかったと思われるものもございました。
適応策は、地域のニーズ、現場において、そのニーズを踏まえた主体的な取組ということが重要ですので、今後、同種のプログラムにおいては、研究開発と地域、現場との連携をより緊密なものにしていく必要があるというふうに考えます。
アウトリーチ活動についてですけれども、シンポジウムの開催等を通じて、国民への研究成果の発信、対話が積極的に実施されました。特に冒頭に述べました書籍の出版は、RECCAのアウトリーチ活動の集大成で、適応研究を広く周知・共有可能とするものであったと高く評価することができます。
ただし、RECCAでは、全国あまねく自治体の適応の幅広いニーズを探る仕組みという形にはなっておりませんでしたので、社会実装は各課題の取組の範囲内にとどまっております。そういう意味では、後継事業において、こうした地域・分野を横断した幅広い社会ニーズを集約して研究開発に反映させる仕組みというものの構築が必要かと思います。
最後、評価結果の(3)のところでございますけれども、今後の展望について、研究結果を踏まえた今後の展望、そして予測される効果・効用といった観点から評価をしております。
RECCAの成果の活用につきましては、創出された将来予測情報や構築されたシステム等が対象地域の自治体等々に引き継がれて、今後も活用されていく見込みであります。
他方、日本のみならず、適応策を必要としている諸外国においても、このRECCAの成果が積極的に活用されるように努め、国際貢献を進めていく必要があると考えます。
今後の研究開発の展望としては、昨年11月に閣議決定をされました「気候変動の影響への適応計画」を受けて、適応研究に関する科学的知見が国民各層に認知をされ、活用されていくことが期待をされています。
気候変動の影響や、その重要性・緊急性は多岐にわたっておりますので、今後は適応策を体系的に分類・整理をして、これに基づいた個々の研究課題の位置付けを明確にすることによって、より効果的・効率的な適応研究の推進が望まれます。その際には、人文科学、社会科学の研究者との連携が、これまで以上に必要とされると思います。
また、今後は特定の地域・課題にとどまらず、全国の自治体等における適応策の検討・策定に汎用的に生かされるような、信頼度が高い気候変動予測技術、あるいは影響に対する適応策の効果の評価などを可能とする技術の開発などが着実に実施をされるとともに、研究者と自治体等が一体となった技術開発の推進、その成果の社会実装の確実な実現に貢献することが期待されると思います。これらの点については、既に平成27年度から開始をしております気候変動適応技術社会実装プログラムに引き継がれていくことを期待しております。
研究成果の活用と継続性について、今後の事業においては、国民各層に対するデータ、情報の公開、手法の普及など、開発された事業が地域の気候変動適応策の立案・実施に実際に利用可能となるような条件・環境を作る取組が必要であると考えます。さらに、開発されたシステムの維持・管理、さらに、育成された人材の散逸を防ぐような取組も必要であります。
最後に、5人の事後評価調整グループの議論で、評価に当たって課題として指摘されましたのは、必ずしも結果として社会実装に直結をしないような、しかし必要な基盤的な研究開発を、特に社会実装の観点からどういうふうに評価をするかという点であります。これについては、課題の指摘として評価票に記載をしております。
グループの議論、評価については以上でございます。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
【安井主査】  ありがとうございました。
それでは、何か御質問、あるいは御意見等ございましたらば、札を立てていただければと思いますけれども、どなたかございますでしょうか。
はい。それじゃ、どうぞ。
【江守委員】  ありがとうございます。
このRECCAの研究対象としている影響や適応の時間的なスケールについて、どう設定されていたか、あるいはその適切性等について、何かもし御議論があったかどうか伺いたいと思います。
と申しますのは、影響を既に起こっているという観点からいうと、幾つかの影響については、もう既に、それに対する対応というのが必要になってくると。一方で、もう少し長い、数十年の時間スケールで見ると、数十年間、シナリオ的に将来を予測して、それで想定される新たな変化に備えていくということをどうデザインするかというのは1つの適応研究になってくるかと思うんですけれども、その辺をどう設定するかによって、随分考え方が違ってくるんだと思うんですよね。そのあたりが、どうここでカバーされていたのかというのがちょっと気になりました。
何で気になったかというと、僕、課題の選定のときに参加させていただいたんですけれども、そのときの自分の考えとしては、データ同化というのが、このプログラムの中にどういう位置付けで入っているのかというのが、いま一つ理解できないで参加していました。今となってみると、そのデータ同化で非常に気象の日々のスケールの予測を高度化する。これは僕が当時、頭の中にあったのは、もうちょっと長い時間、スケールの、数十年先のシナリオ的な意味での影響に備える適応デザインというのが、ちょっと先入観としてあったものですから、日々の予測のデータ同化というのが、適応研究として、頭の中で位置付けられなかったんですけれども、よく考えてみると、それも既に起こっている、あるいは将来更に深刻化する日々の変動に対して対応するための技術開発だという位置付けというのはあるのかなという、そこがずっと、このプログラムに関して自分の中でひっかかっていたものですから、もし、そのような観点で何か御議論ありましたら、教えていただきたいと思います。
【安井主査】  お答えがあれば、お願いします。
【高村主査代理】  ありがとうございます。
事後評価調整グループの先生方から、もしフォローアップをしていただければ大変有り難いと思いますけれども、特にこの事後評価調整グループの会合の中では、時間的スケールの点について、直接的な議論はしていなかったかと思います。
私の理解としては、RECCAは最終的に、やはり社会実装という具体的な着地点というものが見えるというのが1つのプログラムの目的であったかと思いますので、時間スケールとしては比較的短期のものだと思いますけれども、しかしながら、それを支える様々な技術というものの開発というのは、やはり長期的なスパンの軸を持った研究でなければならないと。これが先ほど言いました、社会実装の観点から、そうしたスケールの長いものをどう評価するかというところを、1つの評価の側(がわ)の課題として、これは逆に言いますと、課題設定の側(がわ)の課題でもあると思いますけれども、残しているという点でもあろうかと思います。
直接的なお答えは、冒頭のところで、議論は直接なかったということでありますけれども、コメントをさせていただきます。
以上です。
【安井主査】  山地委員、お願いします。
【山地委員】  私も事後評価調整グループの構成員の一人だったんですが、適応の研究というのはインパクト評価で、予測の研究と裏腹というか不可分なんですね。今回、地方自治体と連携して、実際の社会実装というんですけど、そこまで我が国で適応の緊急性があるかというと、多分そうではない。むしろ私は国際展開の方が大事だろうと思って、その点では、やっぱりインパクト評価なんですね。研究内容としてはね。そこをむしろ強く見て、高く評価したと。社会実装の方を国内でだけ見てやると、なかなか厳しい評価になるかなと思ったんですが、そのあたりの議論を事後評価調整グループの中でもちゃんとやって、しかし、そこはちょっと、この課題設定の課題だという認識をしたということです。
お答えになっているかどうか分かりませんけれども。
【江守委員】  参考になりました。ありがとうございます。
【安井主査】  ありがとうございました。
はい、どうぞ。
【西川地球観測推進専門官】  事務局の西川でございます。
事務局の方から補足させていただきます。江守委員は御承知かと思いますが、RECCAの12課題の中には、遠い将来を対象としたものと、近くの将来を対象としたものと、幾つか時間スケールが異なった課題が混在しています。特に近いところでは、例えば、東北地方のヤマセの予測などでは、既に現在起こっているヤマセが来年どうなるかというようなところも含めた将来予測や、データ同化を進めております。それは、将来同じような現象が起こったときに、即時に対応ができるように技術開発をしておこうという観点もあったと承知しております。
【安井主査】  ありがとうございました。
ほかはよろしゅうございましょうか。沖委員、どうぞ。
【沖委員】  江守委員のと同じなんですが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)ワーキンググループ1的な、気温や雪や雨がどう変わるか、それに伴って洪水がどう変わるかというのはやられたようなんですが、具体的な適応策として、どういうものがあって、どれがどのぐらい効果的かというのが、まさに適応策の立案だと思うんですけれども、そういう研究がなされたのかどうか。あるいは自治体レベルで適応策の立案というのは、実際、12自治体が関係したと思うんですけれども、具体的に何か実際に打ち立てられたというのが100点だとしたときに、現在検討中で来春出ますとか、あるいは委員会はできて、今まで緩和策だけだった地球温暖化対策に適応策というのも入ったとかというのが60点だと、どのぐらいの自治体がどのぐらいまでやられたかというのを教えてください。
【安井主査】  なるほど。どうしましょうか。少々時間が足らなくなってきましたので、後でまとめてお答えいただくことにします。
それでは、花木委員から、お願いします。
【花木委員】  この評価については賛成いたします。それを申し上げた上で、少しお伺いしたいことがあります。
それは、先ほどから話題になっている社会実装、あるいは人文科学、社会科学との連携をどういうふうに考えるかということであります。誰も社会実装の研究をする、人文科学・社会との連携をするということは反対しない。そういった連携の必要性はいつも言われるわけですが、具体的に、どのように進んでいるかということが、いつも見えない、そういう感じがしているんですね。いわゆる超学際的な研究というのが必要だという前に、人文科学・社会科学との連携というのは、どういうものか。
先ほど高村委員がおっしゃったように、着地点として社会実装を設定している。その中には人文科学・社会科学との連携があるということなんですが、将来の着地点はそうなんだけど、少しはそちらに向けて進む具体的なステップが見えたのか、やはりこれは次の課題への持ち越しになるのか、そのあたりは特に社会科学者でおられます高村委員の感想、あるいは御意見を伺いたいと思っています。
【安井主査】  ありがとうございました。
松橋委員、お願いします。
【松橋委員】  私は沖委員の御質問と関連するんですが、特に分かりやすいものとして、暑熱環境の中で、熱中症などですね。これは今日でも起こっておりますし、ますます温暖化が進んでいけば、そのリスクが大きくなると思うんですが、それの社会実装としては、実際に自治体レベルであれば、例えば、非常に暑くなりそうな予報が立っているときに、野外での活動を規制するなど、そういうことが社会実装の事例としてあり得ると思うんですが、そういったことは研究ないしは社会実装例としてはあったんでしょうかという質問です。
【安井主査】  質問はこれまでにさせていただいて、何かお答えがあれば、お願いしたいと思います。
【高村主査代理】  事務局からフォローしていただこうと思います。
私自身が先ほど御報告をした中でも申し上げましたけれども、やはりそれぞれの課題がそれぞれ自治体を見付けて、そこで話し合いながら、研究開発の課題を遂行されていて、その程度というのは、かなりばらばらであろうかと思います。
どういう形で自治体、あるいは事業者等とマッチングをして、どこまで進めることができたかという点は、やはり課題によって、かなりまちまちで、かつ、これは花木委員などの御質問に答えることになるかと思いますが、包括的な、ある分野の自治体の適応計画を立案して実施をするという、そういう次元から評価をすれば、まだ、そこにはやはり至っていないんだと思います。それが、そういう意味では、今後の課題であろうかと思いますけれども、そのためには、恐らく、これも報告いたしましたけれども、自治体の適応ニーズがどこにあるのかということから研究課題を組み立て直すような、研究プログラム自身の課題もあると思います。ただし、RECCAで出てきた、様々な適応に関連する技術というのが、そのシーズとなっていく。そうした成果を生んだと。しかも、文部科学省のプログラムの中で出てきた最初の取組であったというところで、高い評価をしております。
点数を言いませんでしたが、申し訳ありません。
【安井主査】  ほか、よろしいですか。
【西川地球観測推進専門官】  事務局から、時間もありませんので、簡単に補足させていただきます。
自治体の適応策が実際に作られたかどうかという点においては、先ほど高村委員の御報告にもありましたとおり、岐阜県の多治見市で、ドライミストの散布といった具体的な事業にも結び付いていますし、また、高知県の産業振興計画の中で、RECCAの成果が引用されるといった成果が出ております。
ただし、当初から12の課題を設定してやっているということで、なかなか自治体のニーズをくみながらという制度設計にはなっていなかったという反省を踏まえて、今年度から新しい気候変動適応技術社会実装プログラムを立ち上げたという状況でございます。
【安井主査】  何か追加があれば、短めにお願いします。
【江守委員】  RECCAをやられた方から伺ったんですけれども、自治体と話をして、環境部の職員など研究所の人と話をするところまでは、すぐ行くんだけど、その先、本体というか、自治体全体の意思決定レベルのところと意思疎通するのというのは難しかったみたいな話を聞きました。そういうことを、今回やった人たちが学習するプロセスというのがあって、それが多分、重要だったと思うんですよね。それが、次のプログラムに生かされていくということが大事かなと思いました。
【安井主査】  どうぞ。
【西川地球観測推進専門官】  ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりで、RECCAで学んだことを踏まえまして、後継の気候変動適応技術社会実装プログラムでは、実際に自治体の県庁本体の方もモデル自治体として参画していただくような仕組みを作って進めております。
【安井主査】  余り時間がありませんので、先へ参らせていただきたいと思います。いずれにしても最初の研究ということで、それなりの成果があって、政府から出てきました適応計画の文書も出ておりますが、あれにもかなりのインプットがあったのではないかと思っております。
結論ですが、きょうの御意見を、この文書に反映するかどうかは事務局と検討させていただきまして、私の責任で、変えるところは変えさせていただきたいと思います。
この評価結果につきましては、3月1日に研究計画・評価分科会がございまして、私から御報告を申し上げるという予定になっておりまして、まだ若干の時間的な余裕がございますので、そうさせていただきたいと思います。
以上、ありがとうございました。
それでは、次の議題でございまして、次は環境エネルギー科学技術をめぐる最近の状況についてということでございます。事務局からの御説明を頂いて、それから若干の御質問、御意見等頂きたいと思います。お願いします。
【樋口環境科学技術推進官】  事務局の樋口です。前半部分を御説明させていただきます。
まず、資料2-1を御覧いただければと思います。これは「気候変動の影響への適応計画について」という資料でございます。
この計画は、気候変動の影響への適応を計画的かつ総合的に進めるために政府として初めて策定されたものでございまして、昨年の11月27日に閣議決定をされてございます。これは決定されたものが英語に翻訳をされまして、COP21にも提出をされていると、そういうようなものでございます。
この基本的考え方が第1部にまとめられておりまして、目指すべき社会の姿として、気候変動の影響への適応策を推進するということで、被害を最小化、あるいは回避をしまして、迅速に回復できる、安全・安心で持続可能な社会を構築するというような話でございます。
あとは基本戦略が5つぐらいありまして、対象期間としては、21世紀末までの長期的な展望を意識しつつ、今後おおむね10年間における基本的な方向を示されております。
基本的な進め方としては、観測・監視、予測、それから気候変動影響評価、それから適応策への検討実施、それから進捗状況の把握ということでサイクルを回していくと。そのおおむね5年程度を目途に影響評価を実施して、必要に応じて計画の見直しを行うというようなところでございます。
分野別の施策が第2部にまとめられておりまして、分野として、農業、森林・林業、水産業みたいな話、それから水、生態系、それから自然災害・沿岸域、健康、産業・経済活動、国民生活・都市生活、これはインフラみたいな話かと思いますけれども、そういったものが挙がっております。
基盤的・国際的施策というのが第3部にまとめられています。
裏を見ていただくと、ここに文部科学省の関係は、大体この第3部のところでございますので、どういう取組があるかというのも書いてございますけれども、観測・監視のところでは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による温室効果ガス等の衛星観測や、海洋研究開発機構(JAMSTEC)による海洋観測などがあります。
観測データは、下の調査・研究のところで、気候変動リスク情報創生プログラムで気候変動予測があったり、影響評価をやったりというようなことがございます。
この観測データ、それから予測データを用いて、気候リスク情報等の共有と提供というところに貢献をしておりまして、ここにデータ統合・解析システム(DIAS)のような話が出てまいります。
地域での適応の推進に関しては、気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)において、今、地方自治体の適応策策定に資する情報を提供するための技術開発をやっていたり、国際的な施策としては、これは気候変動リスク情報創生プログラムの前身事業、21世紀気候変動予測革新プログラムにおいて開発されました日本の気候モデルMIROCが、IPCCの報告書で引用数世界1位を記録したり、こういったようなことが文部科学省の関連の取組でございます。
続きまして、資料2-2でございますけれども、これは国際動向でございますけれども、COP21が11月30日から12月13日、これはフランスのパリにおいて開催をされました。一番大きなパリ協定の採択ということでございます。これは御案内のように、京都議定書に代わる2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みということで、京都議定書は先進国が排出削減義務を負うという枠組みだったわけですけれども、これは全ての国が参加する公平な合意ということで、これが歴史的な合意ということになっております。これについては、初めに首脳会合が開催されておりまして、これに安倍総理が出席をして、幾つかの表明をしております。
ページをちょっとおめくりいただきますと、最後、5ページ目、これが安倍総理が表明をしたものでございますが、美しい星への行動2.0、いわゆるACE2.0というものでして、理念としては、途上国支援とイノベーションからなる2つの貢献ということで、途上国支援につきましては、我が国の途上国支援額を2020年までに、官民合わせて年間約1兆3,000億円、現在の1.3倍にするという話、それから、もう一つの柱のイノベーションにつきましては、革新的なエネルギー・環境技術の開発強化に向けて、「エネルギー・環境イノベーション戦略」を策定する。それから二国間クレジット制度(JCM)を通じてすぐれた低炭素技術の普及を推進、こういったものを表明してございます。
最初の1ページ目の資料に戻りますけれども、パリ協定に盛り込まれた要素としては、世界共通の長期目標として2度目標が設定されるとともに、1.5度に抑える努力を追求するということが言及されてございます。主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出をしまして、更新をすると。それから、全ての国が共通かつ柔軟な方法で実施状況を報告し、レビューを受ける。適応の長期目標の設定、各国の適応計画プロセスや行動の実施、適応報告書の提出と定期的更新、それからイノベーションの重要性の位置付け、それから5年ごとに世界全体の実施状況を確認する仕組み、それから先進国が資金の提供を継続するだけでなく、途上国も自主的に資金を提供すると、それから我が国提案のJCMも含めた市場メカニズムの活用を位置付けると、こういったことがパリ協定の要素という形になってございます。
続きまして、資料2-3。これはIPCCの最近の動向ということでございますけれども、10月にクロアチアにおきまして、第42回の総会が開催されました。ここでは大きな点は第6次評価報告書(AR6)の作成に向けた新体制が発足したということで、次回は今年の4月、ケニアで開催をされる予定で、特別報告書等に関する議論が行われる見込みというふうになっております。
新体制でございますけれども、議長としては、韓国のホーセン・リー氏、前の副議長が当選しております。副議長としては、コー・バレット氏というアメリカの方、それからブラジルのテルマ・クルグ氏、それからマリのヨウバ・ソコマ氏という形になっております。ワーキンググループ1、2、3、それからインベントリー・タスクフォースも、それぞれ共同議長、それから副議長が決まっておりまして、日本からはインベントリー・タスクフォースの共同議長として地球環境戦略研究機関 上席研究員である田辺氏が当選しております。
あと文部科学省の関係でいきますと、ワーキンググループ1の自然科学的根拠のところが、かなり深く関わってくるわけですけれども、ここはフランスのデルモット氏という方、それから中国のツァイ氏が共同議長として当選しまして、副議長が7人というような形になっております。
IPCCの方は以上でございます。
資料2-4に行っていただきまして、これ、国際のもう一つの動向でございますが、全球地球観測システム (GEOSS)の最近の動向でございます。
2015年11月にGEOSSを推進する政府間の枠組みでございますGEOの閣僚級会合が2015年11月にメキシコシティにおいて開催されました。このGEOSSの10年実施計画というのが2005年から運用されていたわけですけれども、その後継としてGEO戦略計画2016-2025というのを承認する閣僚宣言として、メキシコシティ宣言というのが採択をされております。我が国からは冨岡文部科学副大臣ほかが参加をしまして、この戦略につきましては、我が国の今後10年の地球観測の実施方針、これは8月に観測部会でまとめていただいたものでございますけれども、これと同じ方向性にあると。それから、あと課題解決のための地球観測に取り組むことが重要であるということを強調して、この閣僚級宣言を承認してございます。
この戦略計画ですけれども、ビジョン・ミッションについては特に変更はございませんが、人類の利益のための意思決定や行動が、調整された包括的かつ持続的な地球観測及び情報に基づいて行われる将来を実現するためGEOSSの構築等を行うと。
社会利益分野として、これは8つの社会利益分野をこうやって特定をしておりまして、生物多様性・生態系、それから災害、それからエネルギー・鉱物資源管理、食料安全保障・持続可能な農業、インフラ・交通管理、公衆衛生、それから持続可能な都市開発、水資源管理。それから横断的な分野として気候変動というのを定めております。
データに関する原則の施行として、データ共有原則、それからデータ管理原則、これは既に決定されているものですけれども、これを施行すると。
それからステークホルダーとの連携。これは新しい戦略計画の柱になっておりまして、GEOの招集力、コンビーニングパワーというふうに言ってますけれども、これを活用して、国連機関、それから条約、それから地球観測の実施コミュニティ、それから民間セクターとのステークホルダーと連携するということにしております。
あと、このGEOの戦略計画では、3年ごとのワークプログラムを策定したり、各タスクの進捗状況を確認したりというようなことを行うプログラム委員会というのを設置することになっていまして、そこにはこういうステークホルダーの方々にも参加をしてもらうと、そういうような枠組みができたというのが新しい報告でございます。
以上です。
【田島課長補佐】  続きまして、資料2-5、2-6、2-7につきまして、御説明をさせていただきます。
資料2-5は、第5期の科学技術基本計画に関する動きでございます。
科学技術基本計画は5年に1度改定をしてございますけれども、今回、第5期の科学技術基本計画に向けまして、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)で答申が出されたところでございます。総合科学技術会議が総合科学技術・イノベーション会議に名称が変更されましてから初めての計画ということになっております。
概要でございますけれども、基本的な考え方といたしまして、これまでの科学技術基本計画、4期分20年の実績といたしまして、研究開発環境が整備されてきた一方で、基盤的な力が弱体化しており、論文の質・量ともに国際的な地位が低下しているという危機感が表明をされております。このような状況を踏まえ、基本的な方針といたしまして、先を見通し、戦略的に手を打っていくということとともに、どのような変化にも的確に対応できる多様性と柔軟性を重視しております。
また、国際的に開かれたイノベーションシステムの中で、競争・協調し、各主体が持つ力を最大限発揮できる仕組みを人文社会科学、自然科学のあらゆる分野の参画の下で構築をしていくという方針となっております。
第2章が今回の計画で特に特徴的な部分でございますけれども、未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組ということで、世界に先駆けた超スマート社会の実現というものを掲げております。これにつきましては、具体的にはサイバー空間とフィジカル空間が高度に融合した超スマート社会というものを未来の姿として共有し、その実現に向けた一連の取組をSociety5.0としております。何が5.0かというと、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く5番目の社会ということで5.0ということだそうでございますが、こういうものとして更に進化させつつ強力に推進をしていくということを掲げております。
具体的な取組といたしまして、サービスや事業のシステム化、またシステム間の連携・協調というものを念頭に、共通的なプラットフォームを構築していくということを掲げてございます。
資料をおめくりいただきまして、第3章、経済・社会的課題への対応でございます。特に環境エネルギー関係につきましては、こちらの経済・社会的課題への対応の中で、持続的な成長と地域社会の自律的な発展の中の課題であるエネルギーの安定的確保とエネルギー利用の効率化、また地球規模課題への対応と世界の発展への貢献に関する課題として、地球規模の気候変動への対応というものが具体的に書かれておりまして、これに対応する形で研究開発を進めていくということが、今後5年間、重要になってくるという形になってございます。
第4章は、科学技術イノベーションの基盤的な力の強化ということで、人材養成や学術研究の振興、競争的資金の改革や大学の運営費交付金の改革が記載をされてございます。
第5章では、イノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築ということで、オープンイノベーションの推進、産学官の連携等が記載をされてございます。
第3章の具体的な記述につきましては、その後ろに、関係部分の抜粋といたしまして、文書もお付けをさせていただいておりますので、御参照いただければと思います。
続きまして、資料2-6でございますけれども、総合科学技術・イノベーション会議における戦略協議会等の設置についてでございます。
この戦略協議会等と申しますのは、総合科学技術・イノベーション会議の下に設置されております重要課題専門調査会の中で毎年度、科学技術・イノベーション総合戦略というものの策定の原案を作っていくために協議会を設置しているものでございます。
おめくりいただきまして、3ページ目をごらんいただきますと体制図がございまして、特に環境エネルギー関係という意味では、エネルギー戦略協議会、それから環境ワーキンググループというものが設置されております。これにつきましては、昨年度も同様に設置をされておりまして、こちらで議論された結果を踏まえて、科学技術・イノベーション総合戦略2015を昨年度は策定をしていったと。今年についても、それとまた似たような形で進めていくという形になる見通しでございます。
また、今年は新しく、この図の一番右端のところですけれども、エネルギー・環境イノベーション戦略策定ワーキンググループというものが新たに設置をされております。これにつきましては、この図の下の注釈の最後のポツでございますが、地球温暖化対策推進本部及びCOP21における総理指示に対応するエネルギー・環境イノベーション戦略策定ワーキンググループを設置するということになっております。これは先ほど樋口推進官から御説明をさせていただきましたCOP21における日本からの貢献、途上国支援とイノベーションということで2本柱でございましたけれども、そのイノベーションの柱の方に対応するために、具体的にどういうことをやっていくかということを検討するためのワーキンググループという形になってございます。
更におめくりいただきますと、こちらのワーキンググループで議論をされている内容の御紹介でございますけれども、1回目のワーキンググループの資料を抜粋してつけさせていただいております。5ページ目に、長期的視野に立った、抜本的な排出削減の技術戦略策定ということで、背景を記載されておりまして、6ページ目をおめくりいただきますと、戦略の対象となる排出削減技術の特定(評価軸)ということで、革新性があり、2050年を見据えた長期的視野に立って実用化を目指す技術、また、日本や世界に普及させた場合に温室効果ガス削減ポテンシャルが十分に大きいと見込まれる技術、また、日本発の、又は日本が優位性を発揮し得る新規性の高い技術。技術の汎用性/地域適合性については、日本以外の海外で有効な技術も対象とするという評価案が示されました。
7ページ目に、具体的な例といたしまして、次世代地熱発電、次世代太陽光発電等からなる9つの技術候補の例が挙げられておりまして、これは1回目の会議の資料でございますので、これを1つのたたき台として、今年の春までに戦略の策定を進めていくという形で内閣府の方で作業を進めているという状況になってございます。これにつきましては、文部科学省も関係省として参画をいたしまして、政府全体の戦略の策定に積極的に参加をしていくという方針でございます。
続きまして、資料2-7-1、2-7-2でございますけれども、政府予算案が決定されましたので、これにつきましての御説明でございます。
資料2-7-1は、文部科学省における科学技術予算のポイントにつきまして、全体の資料をお付けしてございます。
御説明につきましては、資料2-7-2の、平成28年度環境エネルギー科学技術関係予算案(補足資料)に基づきまして、御説明をさせていただきたいと思います。
こちらの資料をおめくりいただきまして、まず3ページ目でございますけれども、8月の委員会で事前評価をしていただきました省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発、これにつきましては、来年度、新規の予算案でございますけれども、10億円を計上してございます。
事業の概要といたしましては、窒化ガリウム等の次世代半導体の実用化に向けた研究開発を加速するため、結晶創製の研究開発を中核の拠点としつつ、パワーエレクトロニクスデバイスに関する研究開発領域及び評価基盤に関する研究開発領域を相互に連携をさせながら、産学官が結集したオールジャパンでの研究開発拠点を構築していくという事業でございます。
続きまして、4ページ目でございますけれども、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業先端的低炭素化技術開発(ALCA)でございます。こちらにつきましては、平成28年度予算案額といたしまして52億5,100万円を計上してございます。
それから、その次でございますけれども、5ページ目、東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト、これにつきましては、平成27年度までは復興特別会計で実施をしていたものを、平成28年度のみ一般会計で実施をするというものでございます。平成28年度が5年間のプロジェクトの最終年度ということになっておりまして、全体の予算案額といたしまして、5億7,800万円となってございます。
続きまして、6ページ目でございますけれども、JSTの低炭素社会実現のための社会シナリオ研究事業、これにつきましては、平成28年度予算案は2億5,200万円となってございます。
それから、7ページ目、こちらにつきましても8月の事前評価をしていただきましたDIASの新しいプログラムということで、地球環境情報プラットフォーム構築推進プログラムでございます。これにつきましては、来年度から新しい体制でDIASの展開を図っていくということでございますけれども、予算案の額といたしまして4億円を計上してございます。
それから、8ページ目でございますけれども、気候変動リスク情報創生プログラム、これは平成28年度が5年間のプロジェクトの最終年度でございますが、予算案としては6億円を計上してございます。
また、9ページ目、気候変動適応技術社会実装プログラム、これにつきましては2年目ということで、28年度の予算案額は5億1,700万円となってございます。
それから、10ページ目はGEOSSに関する政府の拠出金で、これは前年同額となっております。
それから、11ページ目は、「フューチャー・アース」構想の推進ということで、これは JSTの戦略的創造研究推進事業 社会技術研究開発の中で行ってございますけれども、平成28年度の予算が1億2,800万円となってございます。
予算の概要については以上でございます。
【安井主査】  以上でございます。ありがとうございました。
それでは、余り時間もないんですけど、何か御質問が特にあれば頂きたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。はい、どうぞ。
【江守委員】  最近いろいろなところで伺うようにしているんですけど、イノベーションという言葉が、僕が分かってないだけかもしれないんですが、僕の懸念としては、日本ではイノベーションという言葉が革新的技術開発という漢字の熟語にかなり置き換えられて理解されているケースが多くて、それは何かイノベーションという言葉がもともと持っている意味の一部でしかないんじゃないかということをたまに感じるものですから、今回のお話のCSTIのところと、パリ協定のところにイノベーションという言葉が出てきましたけれども、場所によっては、より幅広い意味で使っているようにも見えますけれども、場所によっては革新的技術開発という言葉を片仮名で書いているつもりで使っているようにも見えるんですけれども、何をお聞きしたらいいのか分かりませんが、文部科学省では、イノベーションという言葉をどういう意味で使ってらっしゃるのでしょうか。
【安井主査】  私が答えるのがいいか分からないけども、例えば、JSTやCSTIあたりでは、要するに、シュンペーター流と言われているイノベーションの定義が一応基礎だと言われております。それは技術が基礎になっている場合が多いけれども、それによって社会全体にわたって影響が及んで、要するに、携帯電話みたいなものでもって、昔の公衆電話が消えてしまうみたいな、こんなものをイノベーションと呼んでいるということだと思います。だから、技術が全くなしで起きるのかと言われると、どうなのかよく分からないけれど、それだけではなくて、社会全体が変わるということを意味しているはずです。多分、CSTIもみんなそうだと思いますよ。CSTIも、みんなそういう考えだと思います。
この議論をすると長いんで、やめましょう。
【田島課長補佐】  一応、イノベーションの定義につきまして、第4期の現行の科学技術基本計画の本体の方にも定義が記載をされておったと思います。
【安井主査】  書かれているんだ。
【田島課長補佐】  本日、資料として配布をしているわけではありませんが、内容としては、今、安井主査から御説明のあったような広い意味で使われているということになっておりますけれども、文章中に、どの程度統一性がとられているのかという問題があるという御指摘かと思いまして、それについては一つ一つ精査を私の方でしているわけではないので、そこまでは、ちょっと申し上げにくいところではございます。
【江守委員】  僕はやっぱり文脈によって、非常に社会の変化というところが忘れられて、革新的な技術を開発すればいいんだというふうにとられがちな文脈があるように思うので、そこをちょっと気を付けて見ていきたいなと思っております。
【安井主査】  おっしゃるとおりで、その持ち場持ち場によって、自分に都合のよい発言というのはいつでもあるものですから、そういうものだと思っているしかないのかなという気がします。
何かございますか。
河宮委員、お願いします。
【河宮委員】  ありがとうございます。具体的な質問を短く。
途中で途上国支援という話が何度か強調されたんですが、これを実際に進めようと思うと、結構、役所間の役割分担の話などが出てきてややこしいとは思いますが、今後、文部科学省省、あるいは環境エネルギー課単独の事業として実施をしていくという可能性はあるんでしょうか。それでもやっぱり連携を保っていくということになるんでしょうか。
【樋口環境科学技術推進官】  今の段階で、やっていくかやっていかないかについては、なかなか申し上げにくいんですけれども、少なくとも来年の予算に入っているものの中では余りないのかもしれないなと思います。恐らく、実際に積み上がっている支援みたいな話というのは、かなりODAみたいな部分というのが念頭に置かれている話だろうとは思いますけど、文部科学省として何ができるかというのは、ちょっと考えてはいきたいと思います。
【河宮委員】  ありがとうございます。
【長野委員】  補足です。
【安井主査】  どうぞ。
【長野委員】  ACE2.0で挙げられております途上国支援につきましては、この金額を見ていただければ分かりますように、相当大きな1兆3,000億円ということなんですけれども、かなりの部分、円借款でありまして、プラス政府開発援助(ODA)の一部ということで金額は積み上げられているというふうに外務省から説明を受けております。
一般的な途上国支援という意味では、今、科学技術外交という文脈の中でも、私どもも環境エネルギー課の事業ではございませんけれども、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)といった事業がございますので、例えば、そういったものを活用するなど、いろんな形があり得るのではないかというふうに考えてございます。
【安井主査】  それでは、沖委員、どうぞ。
【沖委員】  GEO戦略計画2016-2025が、決まりましたというところで、8つの社会利益分野というのが挙げられていて、いずれも非常に大事だと思うんですが、大事であるが故に、例えば、生物多様性、生態系ですと、もう「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム(IPBES)があり、あるいは生物多様性条約(CBD)があり、災害は国際防災戦略(ISDR)など、それぞれもう老舗の国際機関が所管している中で、GEOとそれらの機関との関係を、どう仕切って、うまく連携する仕組みになっているのか。特に懸念しますのは、例えば、ここにあります食料安全保障、農業ですと、国際連合食糧農業機関(FAO)が非常に広範囲なデータベースを持ってサービスをしているわけですね。それに対してGEOというのが、どういう付加価値を持つというふうな仕分で話が付いているのか教えてください。
【安井主査】  難しいね。
【樋口環境科学技術推進官】  なかなか難しい質問を頂いております。
食料安全保障の関係では、GEOの中で一番大きなものとしては、全球農業モニタリング(GEOGLAM)というのが走っておりまして、これは衛星データなんかを使って収量予測をするというようなタスクでございますけれども、これはいわゆる食料機関とも連携をしながらやっているということで、ある種相互補完的なところがあるのかなというふうに思います。
それ以外の部分というのは、まだ十分にやっている機関とうまく連携できていないものなどというのもあると思います。そういった点が、ステークホルダーとの連携が大事だということが、今回の新しい戦略計画で明確にうたわれたということにもつながってきていると思いますので、そういったことをGEOの枠組みでも、よりほかのGEOと、生物多様性は、それをやっているようなプラットフォームなど、気候変動もそうだと思いますけれども、そういうところとの連携というのももっとやっていくと、そういうような意識があるということかと思います。
【安井主査】
さて、大体これで10分遅れぐらいですので、ちょっと先に行かせていただいてよろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは、次の議題(3)でございますが、地球環境情報プラットフォーム構築の今後の進め方について御説明いただいて、若干の御質問を頂きたいと思います。お願いします。
【樋口環境科学技術推進官】  それでは、資料3に基づいて、地球環境情報プラットフォーム構築推進プログラムについて、今後の進め方の説明をさせていただきます。
これは予算のところでも説明がありましたけれども、来年度としては、予算としては4億というのが政府予算案の段階として計上されております。
この実施内容でございますけれども、この概要のところ、真ん中のところにございますけれども、28年から32年の5年間で、気候変動適応・緩和等に貢献する社会基盤としてDIASを発展的に展開するということで、1つ目が、地球環境情報プラットフォームを構築すると。すなわち企業等の新規ユーザーを含めて長期的・安定的に利用されるプラットフォームの運営体制を構築すると。2つ目が、このプラットフォーム活用のための共通基盤技術の開発ということで、ユーザー拡大、それから気候変動適応・緩和に貢献する共通基盤技術として、プログラム、アプリケーションの開発を行うというものでございます。これについても期待される効果としては、地球環境予測情報等を用いた適用緩和の社会課題の解決で世界をリードするということでございまして、地球環境の研究者に加えて、企業等も含めた国内外の多くのユーザーが長期的にプラットフォームを有効に利活用すると。それから、共通基盤技術を基にして、産学官による自由な発想により、様々な社会課題解決に資する成果が出てくると。それから、利用料金制度の整備、それから利用ユーザーの増加に伴い、国費のみに依存しない運営体制を確立すると、こういったことが期待されるものでございます。
続きまして、次のページですけれども、この今後のDIASの事業設計ということで、文部科学省では地球環境の研究者に加えて、企業等も含めた国内外の多くのユーザーが長期的に利活用可能なプラットフォームの運営体制、それからユーザー拡大、気候変動適応策・緩和策等に貢献する共通基盤技術の開発内容、これについて検討するために、検討会を設けて議論を行いました。これまで準備会合含めて4回を開催しております。
メンバーにつきましては、この下に挙がっているような方々とともに検討を進めました。
ここでまとまった内容を簡単に御説明させていただきます。
次のページに行きますけれども、1つ目のDIASを利用したアプリケーションの開発・実装。先ほどの1枚目でいくとマル2の方になるわけですけれども、これにつきましては、DIASのアプリケーション開発に関する現状を考慮しまして、DIASが提供するリアルタイムデータ、それから解析機能を駆使するということによりまして、将来の状況を予測可能な情報を創出すると。それから、その予測情報を広く社会の役に立てるためのアプリケーションを大学、企業との合同で開発するというようなことを考えております。
平成28年度のアプリケーション開発課題としては、優先的に実施するものとして、1つ目が水課題でございます。これは防災やエネルギーに対応するアプリケーションでございまして、Xレインを利用するようなものを想定をしております。これは高精度な河川・ダム水位予測に基づいて、洪水対策、それから水力発電システムに貢献するということを考えています。
その他、課題ということで、可能性調査ということですけれども、エネルギーの課題に対応するアプリケーションで、ひまわり8号を利用する予定ですけれども、高精度な日射量を予測しまして、これに基づいて、太陽光発電需給調整に貢献するということでございます。
そのほか、今後のDIASの基幹アプリケーションになり得るアプリケーションの開発についても検討していきたいと思います。これらを想定しているユーザーとしては、地方自治体や企業、それから海外の諸国というようなことになります。
続きまして4ページ目ですけれども、DIASのプラットフォーム構築の部分ですけれども、ユーザーが自発的にDIASを利用して、アプリケーションの開発を行いたいと思うようなプラットフォーム、これを構築するということに向けまして、3つの取組を書いてあります。1つ目は、リアルタイムデータを用いたアプリケーションの開発の促進ということでして、リアルタイムデータを用いたアプリケーションを収集したりですとか、アイデアコンテストみたいなものを開催したりとか、データのオープン・フリー化の促進をするといったことが、ここには含まれております。
それから、2つ目が、アプリケーション開発を促進するリアルタイムデータ等の拡充ということでして、人流、物流、交通情報のようなリアルタイムデータ、それから第6期結合モデル相互比較計画(CMIP6)のような利用頻度が高い大容量データ、それから分野別のソリューションに必要な社会経済データを入れたり、作ったりということをやっていくということでございます。
3つ目は、アプリケーション開発の促進に向けたDIASのシステム高度化の開発です。中身としては、DIASシステム、これはハード、それからデータ、アプリケーションがありますけれども、これを維持したり運営したりということ、それからユーザーフレンドリーなインターフェースを開発する、それからデータ形式の変換機能の開発・実装を行うと、この3つでございます。
3つが、利用料収入を得る仕組みでございますけれども、文部科学省から、これは委託事業になりますので、委託をしまして、アプリケーション開発する者というのは大学、企業等にございます。これにつきまして、エンドユーザー側にアプリケーションを利用していただくと、それに対して利用料を頂くと、そのユーザーから徴収するアプリケーション利用料のうち、一定割合をDIASの利用料という形で設定をしまして、DIASの維持、それから運転・拡充経費の一部に充てると、こういったことを利用料収入として考えてございます。
6ページ目、これがプログラムの実施体制でございますけれども、実施体制につきましては、事前評価のときにも少し説明をさせていただきましたが、それを更に深めたというような形でございます。プロジェクトマネジャー、それからアドバイザリーボードを置いて、進捗管理、ファシリテートをしていきますけれども、その下に幾つかのチームを置いていきます。左からいきますけれども、アプリケーション開発チーム、これはアプリケーションの実装に向けて、予測精度の向上、それとローカリゼーション、それからアプリケーションの信頼性向上といった研究開発を行います。これは基本的には企業と大学みたいなところで、ある程度、社会実装をするプレーヤーが見えている場合は、こういうようなチームでできるんじゃないかということです。
次はIT技術開発チームでして、DIAS上でアプリケーションが動くように、アプリケーション開発チームを支援するなど、アプリケーション開発促進に向けたDIASシステムの高度化を行うということです。
次が開発促進チーム。これはリアルタイムデータを用いたアプリケーションの開発の促進、それから、アプリケーション開発を促進するリアルタイムデータの拡充をすると。それから実装支援チーム、アプリケーションのドキュメント作成、プリポスト作業、ユーザーサポート、エラー対応。それから営業チームということで、ユーザー探索、商用利用調整、それから仕様の検討等です。この最後の3つは、基本的にはユーザー開拓をしていくということにして、その開発をやっていくということで、この最初のアプリケーション開発チームとは、ちょっと違うような位置付けがあるというようなことでございます。
これが今後のDIASの進め方ということで、検討会で議論をしまして、今後、進めていこうというふうに考えている内容でございます。
以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。
何か御質問、御意見等ございましたらお願いします。松橋委員、どうぞ。
【松橋委員】  今の5ページ目の利用料のところは、以前に議論した記憶があって、大変斬新なものだと思います。国が関係している、いろいろなデータベースやモデルというのがあって、一般にはお金は取らないのだけれど使い勝手が悪い場合や、思わぬ制約がある場合が多くて、こういうふうに公明正大に利用料をちゃんと取っていくと、そして公的機関とか大学とか研究者が広く、あるいは企業も含めて利用できるようにするというのは、とてもいいことだと思うんですが、予算上、この利用料というのは、どういうふうに処理されるのか。文部科学省の方にバックしていくんではなくて、開発者の所得になるのか、それとも研究費の補?になるのか、そのあたりを教えていただければと思います。
【安井主査】  なるほど。いかがでしょうか。
【樋口環境科学技術推進官】  なかなか、ちょっとそれは難しい問題なんですけれども、そのままいくと文部科学省などに入ってくるような形になると、要は、歳入みたいな予算みたいなのを組まないといけない形になります。それだと、そもそもDIASにそのまま使うということはできないと思いますので、そこまで行かないというようなことになるんだろうと思います。
基本的には、DIASといいますか、地球環境情報プラットフォームみたいなのを、かなり広く捉えて、多分、実際、委託でやる部分と、あとは、それぞれここで出てきた金でやる部分みたいなのをある程度切り分けるなど、そういうような形で、実質的にはスケールアップをしてやっていくと。そういうようなことで、DIASの運営の仕方を変えていくというのが1つの方策かなというふうには考えています。この辺は、実際にどういうふうにやっていくかというのは、もう少し詰めていく必要はあるかと思います。
【松橋委員】  我々も、いろんなモデルやデータベース開発していて、広く世の中に使っていただきたいというのがいっぱいありますので、うまく文科省の方で公明正大な仕組みを作っていただいて、ほかの分野でも適用できるようにしていただくと。というのは、我々はお金をもうけるという意思は全くなくて、ただ持続的にモデル開発やデータベースを開発していくために、これが例えば研究費の一部として、また、何というか、リサイクルできるというか、そういうことをお役所の方できちんと作っていただけると非常に有り難いんですね。今まではJSTでも文部科学省でも1円でもお金をもらうことはできないという、そういうことで、ものすごく研究や社会実装につながるところがやりづらい。実証実験もやりづらいので、課金1つできないなどということがあるので、うまいこと、そこの仕組みを作っていただけると、後に続く者も非常にやりやすくなると思いますので、是非よろしくお願いいたします。
【安井主査】  どうぞ。
【長野委員】  ちょっと補足なんですけれども、この検討会で有識者の方々とも御議論させていただいて、利用料収入の考え方の方向性を現時点でまとめたところなんですけれども、来年度からすぐにこうなりますと言っているわけではございませんで、これからプロジェクトを始めた段階、プログラムも新しいプログラムを始める段階で、更にもう少し詰めて、どういったお金のやりとりがいいのかということを具体化していくというようなことになっていくと思います。
その際の参考になりますのは、例えば、データの世界ではなかなかないんですけれども、国の資金が関係しているものとしては、機器の利用ですね。そういったものでは課金をしているケースも国の事業でもございますし、それから権利という関係では、例えば、特許権ですね。特許の実施料収入の考え方というのも、委託で行われた事業についてはあると。そういった、ちょっと観点は違いますけれども、ほかのいろんな例とも見合わせながら、少しこのプロジェクトで試行的に始めることができればというふうなことも考えてございます。
【安井主査】  ありがとうございました。
館山委員、どうぞ。
【館山委員】  私の方は、エネルギーや材料の分野の研究をしているわけなんですけれども、こちらの方でも、今、材料インフォマティクスということで、その研究に携わっております。もちろん、バイオインフォマティクスというのは昔からありまして、ビッグデータや、あるいはこの第5期の科学技術基本計画のSociety5.0においても、多分、IoT等々で、これからこの手の扱いが非常に有効になってくるというか重要になってくると思うので、多分、この地球環境の分野の、これまでの技術の蓄積というのは、実はいろいろなところに売れると言うと変ですけれども、プロバイドできるんではないかと思うので、そういう形でも、何かしらかの、先ほど松橋委員も言ったように、他分野とのコミュニケーションというか、そういう形もDIASの中の種としてあるというのはどうかなというふうに考えたんですけれども、何かそういう方向性はあるのでしょうか。
【安井主査】  事務局からお願いします。
【田島課長補佐】  資料2-7-1をごらんいただきますと、来年度の新規の事業といたしまして、文部科学省として、人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティー統合プロジェクトというのを、これは研究振興局の情報担当の方でスタートすることになっておりまして、これは省庁連携で、経済産業省、総務省とも連携をしながらやっていくということになってございます。
こういうものをやっていくときに、当然、文部科学省内でDIASをはじめとして、マテリアルインフォマティクスも含めて、そういうビッグデータ関係の研究開発で既に手が着いているものもございますので、そういうものと、こういうものとも併せて連携をしながら情報共有を図っていくということは、当然、関係課の中で、現在、考えているというところでございまして、そういうところで、こういう課金の仕組みなんかも含めて、共有が図られていくといいかなというふうには思っています。
【安井主査】  是非、工夫をお願いします。
どうぞ。
【手塚委員】  先ほど松橋委員がおっしゃった、この課金システム、これもたしか私も議論に加わっていたような記憶がありますけれども、大変ユニークなもので、是非、こういう方向でやられたらいいんじゃないかと思うんですが、まだ構想段階ということで、具体化はこれからだっておっしゃったんで、これから検討される中で、具体的なものが見えてくればいいと思います。ただ多分、こういうことをやろうと思うと、どこかで法人組織みたいなものにかませるような必要は出てくるんじゃないのかなという気がするのと、人からお金を頂いてサービスを提供する以上、必ず品質保証しなきゃいけなくなってくるわけです。あるいはデータの機密性等の保護をしなきゃいけなくなってくる。あるいは、海外のエンドユーザーみたいな人が、実際にコンピューターつないで使うようになると、今度、セキュリティーの話みたいなのも出てくるということで、恐らく今想定しているよりもコストが掛かる話になると思うんですね。したがって、最終的に、こういうものを使いよくするということは、よりコストを掛けて、品質がよく、かつ安全、かつ機密性が維持できるようなシステムを提供するというサービスを提供しなきゃいけなくなるんだろうと思いますので、そういう意味で、多分、法人か何か作る必要があるのかなと。その法人の運営費用として、この課金を使うというようなことが、多分、最終的な着地点のような気がいたしますので、是非、そういうような、比較的民間企業的な発想だと思いますけれども、そういう発想で今後の検討を進めていただければいいんじゃないかと思います。
【安井主査】  いろいろありがとうございました。
それでは、次でございます。議題(4)今後の気候変動研究の在り方についてということでございます。
気候変動リスク情報創生プログラムというものが、今、動いておりますけど、来年度で終わるということになっております。現在、文部科学省では検討会を設置いたしまして、今後の気候変動研究の在り方について検討を進めているところでございます。
本日は、気候変動リスク情報創生プログラムの住先生がプログラムディレクターでいらっしゃいますので、お見えいただきまして、その成果を簡単に御説明いただいて、その後、検討会の主査であられます高村委員から、検討状況の御報告を頂きたいと思っております。
それでは、住先生、よろしくお願いします。
【住理事長】  時間が限られていますので、簡単に、お話をしていきたいと思います。
まず、開いていただきますと、2ページは全体構造で、3ページ目が、いわゆる特徴を表しております。テーマA、B、C、Dと4つテーマがありまして、割とシリアルにいくような形に作ってあることと、それから社会的な課題に答えることを目指すこと、それから単一公募課題を組み込むこととなっています。これは発足当初、文部科学省からの指摘で入れているということであります。
まとめて簡単に、テーマAから順番にいきます。
やはり1つ非常に大きいのは、IPCCのAR5及び今後予定されるAR6に向けて、継続的にモデル開発をし、少なくとも断トツで世界一とは言いませんが、相当程度、日本のモデリングは世界では通っていると僕は思いますので、この流れを継続していくことです。いろいろな方にインタビューをしたときに、やっぱり日本のモデリングは、世界的には知名度は非常に高いということです。
それから、特筆すべきことは、イベント・アトリビューションという手法が、理論的基盤は若干危ういところもあるんですが、この何年かの間にそれなりに現実的に適用したところ、ワークしていて、ある意味ではリスク情報が提供できるようになった。いろいろな極端現象に関して、少なくとも温暖化の寄与率によって、例えば、確率が10%増えたなど、そういうことが出せるようになってきたのは非常に大きなことだと思います。それで、それを使ってどうするかというのは今後の課題ですが、そういうことができた。
それから、テーマBですが、やはり地球システムモデル(ESM)の開発を行っておりますし、テーマAと同じようにIPCC 第5次評価報告書(AR5)、第6次評価報告書(AR6)への貢献が非常に大きかったと思います。
それから、単一公募課題の電力中央研究所を軸に、ワーキンググループ1とワーキンググループ3が協同したシナリオ研究を始めた。これは非常に大事だと思います。緩和策もワーキンググループ3の方から気候感度の問題が挙げられますし、ワーキンググループ1の方の言い分もあったりして、これからやっぱりこういうグループ間の連携をして、いろいろやっていくという方向になったのと、シナリオ研究会みたいなものができましたので、そういう形で進んだのは非常に大きなことだろうと思います。
それから、テーマCですが、やっぱりダウンスケーリング手法の開発をやってきている。地域詳細な予測情報の作成という点で、それなりの進展があったということと、やはりこのテーマで僕は非常に大事だと思っているんですが、統計的な手法の研究。特にイベント・アトリビューションでもそうですが、モンテカルロ法みたいに非常に多数例の計算をやって、そこからある種の確率情報を推定するんですが、統計学でいうところの標本平均、標本分散から本当の真の確率分布をどう推定するかみたいなところは、やっぱりいろいろな意味で統計学的な手法がありますので、そういうことをやっていることなど、それから、力学的ダウンスケール以外の、統計的なダウンスケーリング手法の検討というのもありますので、それはやっぱりそれなりに意味があったんではないかと思います。
それから、テーマDというのは、自然災害影響評価で、特に被害最大化シナリオなど、具体的な複数の、特に河川、高潮、台風に伴う、そういう複合的な影響を評価する。それから、生態系サービスをどうするか等含めて、生態系の影響評価にある意味初めて踏み込んだというのが非常に大きなことではないかなと思います。
それから、次のページですが、特に領域間の連携がそれなりに進んできた。特にテーマC/D連携といって、災害被害の推定など、いわゆる影響評価のところでは、やはりどうしても空間情報が必要ですので、ダウンスケーリングをする必要がある。そういうわけで、領域CとDは非常に密接にやってきたと思います。
それから、そこにA/C/Dと書いてありますが、このプログラムの委託予算を使ったものではないですが、プロジェクトの関係者が全員、非常に関与してリスク情報創出のためのデータセットを作りました。これは大ざっぱに言いますと、いわゆる気候変動は確率的な現象だと考えられている一方で、残念ながら観測では、実際に実現するのは1標本しかないわけで、実際、ものすごく幅広い可能性があるわけですが、そういうのをどうやって推定するかというときに、やはりモデルが非常に大事だろうというわけで、非常に多数例の場合を計算して、現在気候と、将来4度上昇したときの気候の現象の確率分布を推定するというデータセットを作りました。これは気象研究所の60キロメッシュモデルを使っているんですが、一応積算して5,400年分の結果があります。これを使うと、なかなかといい結果が出るようになってきましたので、今後のいわゆるリスク情報なり確率情報なりの創出には非常に欠かせないデータセットになるんではないかと読んでおります。名前はd4PDFというんだそうです。
それから、引き続きモデル開発をしたことも成果です。その下に、7ページですね。左側から右に向かって、出口を一応描いてあります。
IPCC AR6とありますが、やはり基本的にIPCCのフレームがあって、そこでアセスメントレポートは、それなりの意味が依然としてあると思います。それは成果の集大成。そこにやっぱりモデル結果を日本として出していくということは引き続き大事だろうと思います。
それから、イベント・アトリビューションなど、いろいろ言いましたけれども、リスク情報というのは、具体的にある程度出せるようになってきた。これをどう使うかというのは、これからの課題でありまして、本当のリスクならば、それは使い道があるんですが、まだそれが本当のリスクかという不確実性の問題、それから、それをどう活用するか等の問題はあろうと思いますが、ただ、そういうことを考える情報の基盤はできてきた。
それから、シナリオ分析が、従来、ワーキンググループ1は他のワーキンググループと離れて取り組んでいて、単なる感度の研究だけやるなど、いろいろあったんですが、割と地道に話合いをしながらやっていくような雰囲気になったのも大きなことかと思います。
それから、資料にd4PDFと書いてあるように、新しいデータセットができました。それを使って、これからどういうふうに具体的に適応策に反映させていくかというのは今後の課題だろうと思っております。
影響評価も、それなりに自然災害と生態系に向けてやってきたわけですが、それを更にいろいろな分野に応用していくというようなことが求められるんではないかと思います。
次のページの8はイベント・アトリビューションの例でして、2010年にロシアですごい猛暑があったんですが、それはちょっと初期値を変えて、ぐるっとモデルを回して計算すると、モデルの予測結果は決まっていなくて、ここにあるぐらいにばらつくと。それを処理すると、9ページのように、いろんな分布をすると。だけど、温暖化がもしなかったら、というのは、温暖化の影響は海面水温に出るというふうに考えて海面水温を引くんですが、そうすると、やっぱり全体がある分布をするんですけど、左側にシフトをする。それで、ある種の猛暑の基準をとって、確率を計算すると、温暖化がなければ0.6%ぐらいの確率が、温暖化によって3.3%ぐらいに増えたということが分かる。3.3%ですから、そう起きないくらいの確率です。それで実際、それほどまだ起きてないのですが、このように、そういう評価はできる。
それから2番目は、ワーキンググループ1と3の連携で、やっぱりその地球システムモデルの中で、特にカーボンサイクルにある程度不確実性がありますので、それが特に緩和策なんかでどう影響するかみたいなことを、一緒に協同しながらやっていくような時代になってきたと思います。
それから、12ページを見ていただければと思いますが、これがd4PDFの成果で、非常に長年の予測をやりますと、これは台風の発生数の分布なんですが、青い色が現在の気候での台風の年間発生数の頻度分布です。割ときれいな正規分布らしいような形をします。黒線が現実に観測された台風の頻度分布でありまして、割とよく合っている。赤い色が4度上昇したときの台風の発生の頻度分布ということで、ある程度、従来言われているように、熱帯低気圧の発生数は減少するとか、それからこれに伴って強い雨が出てくる、増えるとか、強い台風が増えるとか、そういうような評価ができるようになる。
13ページは、これは沖委員のところから借りてきましたが、そういうデータを使いながら、例えば、何年に1度の豪雨が、同じ雨量だと、300年に1回なのが100年に1回になるなど、そういうような確率的な表現で、みんなに訴えることができるというわけです。
それで、その後、テーマDは最大クラス複合災害の影響評価など、いろいろ書いてあります。見ていただければ分かると思いますが、こういう形で具体的に影響評価をできるようになりました。
それから、その次の16ページ、17ページは生態系の影響評価がありまして、生態系の分野には、こういう温暖化影響評価をやるのは余り好まないグループや、生態サービスを金ではかるとは何事かというグループもいるんですが、一応、生態系サービスの劣化等に関するそれなりの影響評価の取組を進めていただけたというふうに思っております。
その下の17ページは、タケの分布がどのように変化するかを示すムービーがありますが、その絵です。というわけで、それは4年間、着実な成果が出てきていると思います。
現場レベルでは、予算を減らされたので、継続が難しいと言っているかどうか知りませんけど、僕は、少なくとも日本として自前のモデルを持つことは、非常にこれから大事だと思います。そういう点で、今まで地球シミュレータで作ってきたモデルの、そういう資産というのは、やはりこれから維持をすることと、それからd4PDFみたいな新しいデータセットができまして、これは従来、よく言われるんですが、やっぱり非常にきれいな確率分布が得られるようになってきましたし、割と定量的に、そういう確率分布のことが分かるようになりましたので、それに向けて、新しい展開ができていくんではないかと思います。
最後に、やっぱりダウンスケーリングに頼らざるを得ない。具体的に適応策を考えるときに、できればやっぱり細かい情報が要る。そういうところでは、例えば、現在、スーパーコンピューター京を使い、それからポスト京を使うようなことが行われております。地球シミュレータを作ったときから、「おお、計算機を大型にしていけ行けドンドンか」と言われてきたんですが、世の中の流れは、どんな頭がいい人でも、分からないことは分からないんです。コロンブスの卵じゃないけど、多くの人は、起きたことは必ず説明できるんですが、何が起きるかどうかは説明はできないというのが、やっぱり現実だと僕は思いますので、そういう点では、やっぱりこういうことを引き続き日本としてはやっていくのが非常にいいんではないかなと個人的には思っております。
以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。
それでは、続きまして、今後の気候変動研究の在り方に関する検討会の御説明を高村委員からお願いいたします。
【高村主査代理】  資料の4-2をごらんいただければと思います。
現在、今後の気候変動研究の在り方に関する検討会を研究開発局長の私的諮問機関として設置をして、この間、議論を進めております。一番裏側のところに、この間の検討スケジュールについて御紹介がございます。
今、住先生からもありましたように、気候変動リスク情報創生プログラムに至るまで15年にわたって気候変動研究に取り組んできていただいているわけですけれども、現代的なといいましょうか、今後を見通して、更にどのように気候変動の緩和と適応の社会的ニーズ、それに基づく研究のニーズに応えていくかという、気候変動研究の在り方に関して率直に意見を交換して検討する会というふうに理解をしております。
第1回、11月には気候変動リスク情報創生プログラムで実際に研究を行ってくださっている委員の先生方から意見を、報告を頂き、第2回には、本プログラムの先生方に加えて、関連する領域の研究者、それから関係府省庁からも御報告を頂きました。
1枚めくっていただいたところに、検討会の構成員がございます。委員会の中でも、市橋委員、江守委員、沖委員、河宮委員、手塚委員に御参画を頂いております。
資料の3枚目のところに論点とございますけれども、先ほどもう既に申し上げてしまいましたが、今後の日本の気候変動研究の方向性、その中で文部科学省が進める気候変動研究の位置、役割、重点というのがどうあるべきか、ということについて、率直な議論をする検討会でございます。
検討会自身は、先ほど申しました2回を経たのみでございますけれども、この環境エネルギー科学技術委員会でも、是非御意見を頂ければというふうに思っております。
全く個人的なポイントでしかございませんけれども、これまでの議論の中で、例えば、先ほど住先生からもありました、スライドの10にありましたけれども、やはり気候感度が持っている対策に対する意味合いも含めて、気候感度に関する研究の重要性、あるいはイベント・アトリビューション、これはリスク情報、幅広いリスク情報を作り出すという意味で、適応策、あるいは保険などの分野にも適用可能じゃないかといったようなイベント・アトリビューションについての関心。それから、モデルに関して言うと、個別のモデルの高度化と同時に、統合モデルの必要性ということも指摘がございます。特に生態系の影響について、先ほども住先生の方からございましたけれども、委員の中からは、生態系の影響には、やはり地形を考慮したダウンスケーリングなども必要だということもありまして、こうしたモデルの課題点、どういうふうに対応していくかということが1つの大きな議論となっております。
それから、RECCAのところでも議論がございましたけれども、適応策の実施の効果、それから実施をしたことの影響、また、適応のニーズをどうはかっていくかといったような研究課題というのも必要ではないかということが指摘をされています。
さらに、やはり先ほどのモデルを、自前のモデルというところもございましたし、影響評価を、やはりこれから恒常的に行っていくという意味では、こうした研究を恒常的・安定的な体制で行っていくにはどうしたらいいのかといったような指摘も委員からは出ております。そういう意味で、今回のこの検討会、私自身は文部科学省が気候変動プログラムを、一種、研究者と、それを利用するユーザーを含めたデザインを、ここで検討をするという位置付けの解ではないかなというふうに期待をしております。その意味で、この環境エネルギー委員会でも、御意見を頂ければというふうに思っています。
以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。
それでは、何か御質問、あるいは御意見等を頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。
説明が良すぎて、何の質問もないというわけなんですかね。何かございませんか。
どうぞ。
【松橋委員】  住先生に大変感謝いたしますし、すばらしい情報といいますか、アウトプットが出つつあるということを実感しましたし、また、今後、我々がこれを基に、こういった確率的な情報が出てきますと、不確実な情報、確率的なリスクの中で、どういうふうに意思決定をすべきか、という具体的な社会の中での意思決定論に持っていくことができるので、この情報に、我々少し依存と言うとあれですが、頼りにしつつ、具体的な適応なりの対策というものを是非作ってまいりたいと思います。
ちょっと、こういうコメントで恐縮ですけれども、大変感謝いたします。ありがとうございました。
【住理事長】  今まで分かっていることは、高頻度極端事象と書いてあるように、温度に関しては相当程度が予測できる。これはやっぱりやってみても分かりますけど、相当いい。ですが、やっぱり降水は少し難しい。それから台風など、すごく難しいものもあります。
だからやっぱり事象に関しては2つの種類があって、低頻度だが影響が非常に大きい事象と、割と高頻度でそこそこ影響がひどい事象。当然、対策は違うんではないかということがありますので、そういうのを踏まえながら、どう具体的に使っていくかというのは今後の課題だろうというふうに思います。
【安井主査】  ありがとうございました。
ちょっと1つお願いを申し上げたいと思うんですけど。
高村委員が御説明いただいた資料の論点の3ページ目にございますが、そこに書いてある具体的な解決策の提供に重点が移っていくというのは、多分、当然なんだと思うんだけれども、ここが、だから、アダプテーションとジオエンジニアリングになってしまって、それだけでは、ちょっと寂しいなという気がするんですよね。
それで、これから今世紀中にCO2の排出量をゼロにするなんてことを本気でやるとしたら、CO2の排出量をゼロにしたら、一体、それから先、地球がどうなるのっていうのが、どうも、要するに、CO2の吸収源という意味でよく分からない。そのあたりに対して、何かイメージ……。今、これから生態系がどうなるかにもよるし、もちろん海洋吸収もいろいろあるし、いろんなメカニズムがあると思うのだけど、それが一体、今後どうなるかというのが分かってくると、何か夢が持てるのか、やっぱり夢が持てないのか、そのあたりも明らかになってくるかなと常々考えておりますので、できたらアダプテーション、ジオエンジニアリング以外の解決策として、今すぐCO2排出ゼロにしたらどうなるかというのを、いろんな時点から解いていただけると有り難いと思っているのですけど、これって増やす方と違って、減らす方は非常に難しいですよね。
河宮委員、どうぞ。
【河宮委員】  御指摘ありがとうございます。
今おっしゃった論点は、一応、住先生からの報告にも入っていて、協同したシナリオ研究を、資料の4ページ目にありますテーマBでやろうという話であります。
それで、高村委員から御指摘のあった気候感度、地球の温まりやすさですね、それが幾らかという点についても、評価がいろいろ細かいところで、全然不確実性が小さくならないんですが、その不確実性の中でちょっと動かすと、将来の温暖化対策の費用がドンと違ってくるということで、これをどうやって扱ったらいいか。あるいは、地球の温まりやすさだけではなくて、将来にわたっての二酸化炭素の吸収のしやすさですね。それも当然、将来の温暖化対策費用に関わってきますので、そういうところの不確実性があるということを踏まえながら、どう議論を組み立てていくのかと。
やっぱり社会経済分野の人と話すと、不確実性があるのは百も承知で1本に決めてくれという話になるんです。それはできないから、幅を持った議論というのは社会経済分野の方でもできるんじゃないですかという答えを我々はいつもするんですが、いや、それは難しいという話で、今のところは止まっているんですが、それでもやっぱり実際にそういう問題に携わっている研究者と我々気候モデルの人たちが一緒の場で膝突き合わせて、少し眉間にしわを寄せながら議論ができるというようになっただけでも進歩だと思いますので、そういう不確実性のある中で、実際にどういうシナリオを組み立てていくのかというのは、次のプログラムできちんとした議論ができるんじゃないかと私は期待しているところです。
【安井主査】  ありがとうございました。
ほかに何かございますか。よろしゅうございましょうか。
5分遅れに戻りました。
それでは、次でございますが、議題(5)になりますが、今後の環境エネルギー科学技術の研究開発の方向性についてということでございます。
まず、事務局からの御説明を頂きまして、御質問、御意見を頂きたいと思います。お願いします。
【田島課長補佐】  では、資料5を御覧いただければと思います。今後の環境エネルギー科学技術の研究開発の方向性について、論点の案ということでお示しをさせていただいております。
先ほど御説明をさせていただきましたとおり、第5期の科学技術基本計画について、総合科学技術・イノベーション会議の方から答申が出されまして、本年度中に閣議決定をされる見込みとなっております。
この新しい5年の計画を踏まえながら、環境エネルギー科学技術に関して、特にどういうふうに研究開発を進めていくべきかということを改めて検討をする必要があるのではないかということで、本日、議題として上げさせていただいております。
本日は、ちょっと時間が少なくなってございますので、こちらで御議論いただくとともに、この委員会の終わりました後に、個別の先生方全員に、こちらからEメールを送らせていただきまして、改めて御意見を頂きたいというふうに思っております。
現在、我々の方で、これたたき台として作った案でございますけれども、論点として、まず考えられることとしては、1つ目でございますが、気候変動、あるいは地球温暖化という問題を考えますと、現在、2030年、2050年、それから今世紀末というところで1つメルクマールがありまして、ここに向けての温室効果ガスの削減目標というものが、それぞれありますけれども、こういうものも見据えながら、注目すべき社会経済的な状況として、どういうものがあるかというものを考えていく必要があるかと思っております。
例といたしまして、今挙げた地球温暖化による気候変動の世界の持続可能性への影響、またマル2といたしまして、日本国内における東日本大震災後のエネルギー需給システムの変化や、国際的にもシェールガス、あるいは再生可能エネルギーの普及などの様々なエネルギー源の多様化の背景もございます。このような社会経済的背景として、どういうものを特に重視をして、環境エネルギー科学技術の研究開発に反映させる必要があるかというような御意見を頂く必要があるかと思っております。
2つ目といたしまして、世界のこれを踏まえました研究開発の動向として、どういうものがあるかということでございます。今、こちら例として挙げておりますのは、気候変動メカニズムの解明や予測に関する研究開発、あるいは発展途上国等における気候変動適応に貢献するような技術開発、あるいは先ほど若干議論もございましたけれども、ビッグデータを活用した技術の研究開発などもされております。これ以外にも、もちろん様々な技術の研究開発がなされていると思われますので、これにつきまして、先生方の御知見を頂き、諸外国の情勢を見ながら、それを参考にして、日本としても、どういうふうに取り組んでいくべきかということを考える必要があるのではないかというふうに考えております。
それから、3つ目でございますけれども、このような状況も踏まえながら、今後、我が国として、どのような研究開発を推進するべきなのかという具体的な技術課題でございます。
こちらの例といたしましては、高精度な気候変動予測モデル、あるいは緩和策、適応策に利用されるような情報プラットフォーム、あるいは省エネにつながる次世代パワーエレクトロニクスという、このあたりは特に来年度予算で、既にある程度、こちらとして施策を立てているものを具体的な例として挙げておりますけれども、これ以外に、どういうようなものが重要となっていくのかということも御意見を頂きたいというふうに考えてございます。
4.でございますけれども、研究開発の推進方策といたしまして、技術課題が特定されたとしても、それをどういうふうに具体的に研究開発を進めていくのかということもあわせて、よく考える必要があるのではないかということで、例えば、例として、1つ目が技術評価をどういうふうに行うのか、その革新性、あるいはインパクト、それから定量的な成果の目標や指標をどういうふうに考えるべきか。あるいは2つ目として、国際協力、あるいは国際競争をどういうふうに行っていくべきか。3番目として、産学官連携や知財戦略など技術の実用化に向けて、どういう道筋を考えていくべきか。4つ目といたしまして、先ほど来、御議論になっておりますけれども、社会科学、あるいは人文学の知見というものをどういうふうに取り込んでいくのか、またステークホルダーとどのように連携をしていくべきなのか。それから、5番目といたしまして、それぞれの技術課題の特徴に応じた研究費の配分の仕方として、例えば、拠点を形成する、あるいはチームで研究をするなど、いろいろな研究の仕方があると思いますので、このようなことも考えていく必要があるのではないかというふうに思っております。
この1、2、3、4につきましては、この柱自体もたたき台でございますので、これ以外にも、特に観点として重要な観点があるのではないかという御意見もあるかと思いますし、これをそれぞれの観点につきまして、具体的にどういうことを重視すべきだと思うというような御意見もあるかと思いますので、そのあたりを忌憚(きたん)なく御意見を頂きまして、また本日、時間が足りない分につきましては、冒頭申し上げましたとおり、後ほど電子メールで送らせていただくものに回答いただくという形で意見を頂ければというふうに考えております。
以上でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。
とりあえず、きょうは、したがって何か芽出しぐらいでよろしいのかと思いますけれども、何か御意見等ございましたら、お願いしたいと思いますが。
はい、どうぞ。
【山地委員】  これ、一般的なタイトルですけど、文部科学省としてということでいいんですか。
【田島課長補佐】  基本的な考え方としては、文部科学省として、どういうふうに最終的にやっていくかということを考えていくためのことですけれども、1.から順番に考えていきますと、1.が文部科学省だけに係ることということでもないのかなというふうに思っておりまして、最終的には3や4につきましては、かなり具体的なものを事務局としては想定をしてございます。
【山地委員】  といっても、例えば、3の具体的な例というと、やっぱりオーバーラップは避けてほしいですよね。各省間。それから、評価にしても、どちらかというとばらばらよりも、政府としてのユニファイドの評価が欲しい。これは私のコメントですけど、それを申し上げたい。
【安井主査】  ありがとうございました。
ほかに。沖委員、どうぞ。
【沖委員】  すいません。時間が足りない中で、何回もしゃべって申し訳ないんですが。
【安井主査】  大丈夫です。まだ。
【沖委員】  1つ、大枠のスコープとして、「我が国の」というのを余り狭い範囲で捉えないで、情けは人のためならずなので、やはりグローバル化した社会経済状況の下では、日本だけがもうけるわけにはいかなくて、世界全体の底上げというのが、販路もできるし、買ってもらえるしということで、やっぱり世界全体の経済の底上げ、あるいは競争力。世界に対して競争力を持つんだけれども、そちらも述べてくれないと、日本だけが幸せになれないというような認識を、是非書き込んでいただきたいなと思うことと、持続性といったときに、環境分野で生まれたことなので、環境の持続性のことばかりを考えますが、社会の持続性、そして経済の持続的な発展と開発といったものを三位一体で考えるような、トリプルボトムラインなど、ああいうものをやはり意識して、全体の環境エネルギーを考えるというのが、まず大事かなと思います。
それから、先ほどの気候変動リスク情報創生プログラムのときにも申し上げましたが、地球観測・予測といったときに、温暖化の予測というのも確かに大事なんですが、温暖化の適応策として、アーリーウォーニング、早期警戒警報というのが、やはり、お金をそんなに掛けないで被害を減らせるんじゃないかと期待されますので、予測といったときに、50年後、100年後だけじゃなくて、あした、あるいは半年後といったところを目指すというのも、是非ちょっと視野に入れていただければと思います。
それから、これは私よりは詳しい方ももっといらっしゃると思いますが、やはりパリ合意を受けたときに、江守委員は嫌いかもしれません。イノベーションというか、今の技術では、なかなか簡単には達成できなくて、みんながものすごくイノベーションに期待していると。そうすると、そこはやはり、誰がどういうふうに本当に実現していくかというのが、これも明らかな競争なので、そこを、今、山地委員がおっしゃった、うまく分担してやっていくというのも、誰の目にも明らかですので、そこを是非、どうすれば環境エネルギー課として一番効率よく貢献できるかを出していただきたいと思います。
以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。
ほかに何か。きょう段階でおっしゃっていただきたいこと、何かございますか。
後でメールが来るときには、もう少しバウンダリーコンディションを狭くしていただいた方がいいかもしれないので、余りぼんやりしていると、やっぱりかえって答えにくいという感じもないではないですね。
【河宮委員】  すいません、いいですか。
【安井主査】  はい、どうぞ。
【河宮委員】  今の沖委員の論点と、あと先ほどの安井委員の御指摘に関することなんですけれども、それこそ二酸化炭素をどれぐらい減らしたらどういう地球環境かというのは大事な話ではあるんですけれども、どうしても話がグローバルにしかなり得ないというところがあって、非常に省庁というか、役所で研究資金を出すときの論理の組立てと整合しづらいところがあります。いろんなところで闘ってらっしゃる役人の方々には常々敬意を持っているんですけれども、やっぱりそこのところはちょっと常々不満を持っているところがあります。ありますけれども、やっぱりこれから、これだけ問題がグローバル化してきて、対策というのを考えるときに、本当に地球全体でシステムを、経済システムや、環境と一体化したシステムを何というか知りませんけれども、そういうものをどうデザインしていくかというのは、やっぱり国際的な議論になってくると思うので、そういうグランドデザインに対する日本の貢献という視点も多分に概念的なものになって、研究資金の獲得には役立たないかもしれないんですけれども、論点として入れていただけると、やっぱり格が上がるというか、そういう効果はあるんじゃないかな思っています。そういう方面で創生の研究も少し進んできたところもあって、これからどんどん推し進めていきたいとも思っているところなので、御一考いただければ幸いです。
【安井主査】  ありがとうございました。
ほかに何か。はい、どうぞ。
【小長井委員】  同じような観点なんですけど、国際協力をやるときは、やっぱり世界的に見て著名な研究者をいかに入れていくかというのは一番重要になると思うんですけど、今まで予算を見ると、なかなか海外に持ち出せないというのがあったかと思うんですね。例えばPIとして呼んできて、給料を2倍、3倍払っておいて、それはありでしょうけど、必ずしもそういうのってうまくいくわけじゃなくて、やっぱり分野ごとに、世界でもこういうところというのは決まったところがあるので、そういうところをうまく巻き込んでいくときに、予算をどういうふうにそこを付けられるかということは、やっぱり制限として効いてくるんじゃないかなと思うんですね。
昔は、例えば、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を始め、文部科学省もいろいろ、予算が向こうに付けられるものもあったかと思うんですけど、基本的には向こうは向こうで探しなさいと。うまくマッチングファンドみたいな形になれば動いたと思うんですけど、そこら辺の予算の使い方ですね。そこら辺のバウンダリーコンディションがもうちょっとよくなると、非常にプロジェクトとして組みやすくなってくるだろうと思いますけど。
【安井主査】  ありがとうございました。
どうぞ。
【手塚委員】  この4のマル4に、社会科学・人文学の知見の取り込みって、先ほどからそういう意見が幾つか出ていたと思っているのですけども、特に適応の世界をやり始めると、まず不確実な現象に対して何か対策をとっていかなきゃいけないということになってくるわけですね。
ところが全部政府のお金でやるんだったら、まだいいんですけれども、基本的に、大々的にこれを展開しよう、あるいは途上国も含めて展開しようなんていったときには、民間資金を使わなきゃいけなくなってくる。じゃあ、その不確実な現象で、一旦事が起きたときに、もしかしたら物すごく大きな被害を回避できるかもしれないというような現象のもの、あるいは、もしかしたらお金を掛けても実は無駄になるかもしれないというようなものに、どうやってファイナンスをするかという議論がこの裏で同時に検討されていかないと、技術ができても、多分、社会実装のところで全部公的資金を使っていたんじゃ止まってしまうリスクがあります。なので、同時並行で、そういう不確実な現象に対して、ある確率的なベネフィットが出てくるようなものに、どうやって民間資金も導入し、どうやって投資を促進するかという問題を考える必要があります。それでそれを社会全体に広めることそのものがイノベーションだとすると、そうしたイノベーションにどうやってつなげるかという意味での社会科学、あるいは経済学や政治学も動員が必要になってくるのではないかと思います。是非御検討いただければと思います。
【安井主査】  ありがとうございました。
ほかに何かございますか。どうぞ。
【江守委員】  さっき沖さんが、僕はイノベーションって嫌いなのかもしれないとおっしゃったのは、言わなくてもよかったんですけど、ちょっと気になって、今の手塚さんの御発言と関係するんで、やっぱり申し上げますけど、僕は別にイノベーションはすごくなくちゃいけないと思っていて、それが多分、狭い意味で解釈されるのが、ちょっと気になるということで、僕もイノベーションには、今回すごく、僕なりに、分からないなりに注目してCOP21は見ていて、その中で、皆さん、御存じだと思いますけれども、ミッション・イノベーションというのと、ブレークスルー・エナジー・コーリションというのが、ビル・ゲイツなどが出てきて宣言されて、国がお金を出して開発を進めるというところと、まさに今、手塚さんがおっしゃった投資。民間資金が、リスクマネーが投資が起こって、それが社会に広がっていくところを、きちんと投資をするというところに関して、ブレークスルー・エナジー・コーリションというところで、まさにそういう宣言がなされたんだというふうに思っていますので、言ってみれば社会の方が先に進んで、そういう現象が起き始めているなというふうに思いながら、僕はそれを非常に肯定的に見ています。
【安井主査】  ちょうど時間的には、なぜか今終わると非常にいい感じなんですけど、どうしましょうか。終わりますか。
途中で時間をなぜか挽回(ばんかい)できまして、大体終了予定時間になってまいりました。
それでは、最後に事務局からの御連絡事項を頂いて、それで終わりましょう。お願いします。
【田島課長補佐】  本日の議事録につきましては、後日、事務局より電子メールで委員の皆様にお送りをさせていただきます。御確認いただきまして、御修正があれば、御指摘をいただければと思います。最終的には文部科学省のウェブサイトに掲載をすることで公表させていただきます。
また、本日、旅費、委員手当等の書類につきまして御確認いただき、お帰りの際に事務局に御提出をいただければと思います。
お配りした資料につきましては、机上に置いておいていただければ、後日、郵送をさせていただきます。
次回の会合は、3月2日水曜日の10時から12時を予定しております。場所等の詳細につきましては、追って御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。
【安井主査】  それでは、これをもちまして、第3回でございます、環境エネルギー科学技術委員会を閉会とさせていただきます。ありがとうございました。
どうも御協力ありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局環境エネルギー課

メールアドレス:kankyou@mext.go.jp

(研究開発局環境エネルギー課)