資料5-2 中間とりまとめに向けた論点整理(案)

1.我が国の今後の国際宇宙ステーション(ISS)計画への参加の在り方(ISSの利用方針も含む)

(1)ISS計画への参加から得られた成果

○ISS参加を通し、全体の約1割強の費用負担で計画全体からの便益(ISS利用権や日本人宇宙飛行士の搭乗権等)を効率的に享受

1)有人・無人宇宙技術の獲得・発展

  • 参加しなければ獲得することが出来なかった様々な宇宙技術(ロボティクス等無人輸送技術、宇宙医学等)を、他極よりも予算・期間いずれも大幅に効率的に獲得
  • 国際協力で行う有人宇宙活動において中核的な役割を担えるレベルに到達

2)宇宙環境の利用による社会的利益

  • 研究成果は、約900件に上る査読付き論文として発表、増加傾向にあり、「きぼう」利用研究が着実に進展
  • 微小重力環境を活用し、地上では得られない研究成果を創出(宇宙医学、タンパク質結晶生成、半導体材料創製、超小型衛星放出技術等)

3)産業の振興

  • 「きぼう」「こうのとり」の開発・運用には多数の日本企業が参画、我が国宇宙産業の各種技術基盤を向上
  • 共通システム運用経費(CSOC)を物資輸送で実施、我が国宇宙産業の基盤維持に寄与
  • 関連製品・技術サービスの海外輸出や有人宇宙技術に関連するスピンオフ製品の販売など成果普及も進展

4)国際プレゼンスの確立

  • 「きぼう」、「こうのとり」の開発と安定運用等により、宇宙先進国としての地位を確立、ISS参加国からの高評価獲得とアジア諸国との協力関係を形成
  • 中国は有人輸送や月面探査において近年著しく伸長する中、我が国の優位性等が相対的に低下、ISSは科学技術外交の重要なツール

5)青少年育成

  • 日本人宇宙飛行士の活躍や最先端宇宙技術が青少年の科学技術への興味や関心を高め、理科離れ対策も含め、科学技術人材の育成に貢献

(2) 今後のISS計画への取り組み方

○「きぼう」は、基礎研究にも活用しつつ、民間利用の拡大などを進めることにより、収穫期として位置づけ

○2020年頃は宇宙を巡る国際情勢が節目となり、アジアの宇宙先進国としての地位の維持にとって重要な時期

○有人宇宙技術は再興することがきわめて困難であることも考慮し、運用継続の考え方を整理 

1)ISS計画への参画を通じて強化すべき技術

  • 「きぼう」「こうのとり」の運用を通して、長期有人オペレーション技術の向上に努めると共に、「国際協働による宇宙探査」を担う人材・運用能力を確保
  • 我が国の強みであり、持続的な探査活動の鍵となりうる有人長期滞在技術(有人滞在技術要素、宇宙医学・健康管理技術、放射線被曝管理技術、高効率・高信頼性の居住環境制御技術など)を強化

2)成果最大化のための「きぼう」利用の方向性

  • これまでの取組みで絞り込んできた微小重力環境を活用できる分野(生命科学研究、創薬研究等)に重点化し、国の戦略的施策に合った課題解決型研究を取り入れ、成果の社会経済への波及を拡大
  • 基礎研究分野枠も確保しつつ、民間利用を拡大
  • 不断のコスト効率化と成果を最大化により、総合的な費用対効果を向上

3)費用対効果向上のためのコスト負担のあり方

  • 宇宙飛行士の安全やISSの信頼性確保に配慮しつつ、コスト効率化に努力
  • CSOC(2016年~2020年)負担は、CSOC全体の合理化や我が国負担額の軽減とともに我が国にとって有利なものとなるよう国際的に調整

2.我が国の国際宇宙探査への参加の在り方

(1)我が国が国際宇宙探査に取り組む意義

1)人類の知的資産の拡大

  • 人類の活動領域の拡大は、生命探求・惑星科学分野の知見等を深化

2)科学技術・イノベーションの発展

  • 我が国が有する最先端の宇宙技術をさらに強化し、新たな技術のブレークスルーを創出

3)産業の振興・社会的利益の創出

  • 過酷な宇宙環境への挑戦は、生命維持、環境・健康管理、究極の省エネルギー等への取組みであり、豊かな国民生活の担保という広義の安全保障に貢献
  • 国際宇宙探査は、宇宙関連産業の育成、技術力の国際的アピールや企業ブランドを向上

4)国際プレゼンスの発揮

  • 中国など新興国が台頭する中で、国際的な宇宙探査への参画は、宇宙先進国としての地位の維持・発展や日米等とのパートナーシップを強化

5)青少年育成

  • 理系人材の創出や夢に挑戦する次世代を輩出

(2) 我が国としての国際宇宙探査の進め方

○国際宇宙探査ロードマップ(GER)を踏まえ、有人火星探査を将来目標としつつ、段階的にプロジェクト化(目標設定、参加国・コスト負担を含む役割分担の調整等)して取り組んでいくことが適当、その際、費用対効果の検証と「ペイ・アズ・ユー・ゴー」原則を遵守

○有人長期滞在技術の開発・実証等はISSを最大限活用するとともに、当面の目標としては、有人探査に必要な共通基盤技術(高精度着陸技術等)の開発・実証を行うため、我が国の強み(無人宇宙輸送やロボティクス技術等)を軸に無人月面探査に参画

○ISS計画の経験等を活用して、国際宇宙探査における枠組みに関して検討の場を設置するなど、主体的に貢献

次回ISEFの我が国開催に向けて、国際宇宙探査の進め方について各国の合意が得られるよう、主体的に国際調整を進めていく

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研究開発局宇宙開発利用課

-- 登録:平成26年07月 --