原子力科学技術委員会 群分離・核変換技術評価作業部会「核変換実験施設の技術課題進捗に係る見解について」

平成26年9月8日
研究開発局原子力課放射性廃棄物企画室

 本作業部会は,平成25年11月に「群分離・核変換技術評価について(中間的な論点のとりまとめ)」(以下,「中間とりまとめ」)を公表した。その中で「6.引き続き検討が必要な事項」として,「マイナーアクチニド(MA)取扱い施設の整備」,「J-PARCの核変換実験施設」,「群分離・核変換技術」,「国際協力のより一層の活性化」を挙げ,「これらの進捗状況について,必要に応じて報告を受けるとともに,技術評価について,引き続き,調査,検討を行っていく。」としたところ。また,「今後,施設整備計画の策定等に当たっては,前提となる成果の達成状況,運用・保守も含めた技術的実現性,規制等への対応に係る検討等,段階に応じて進捗状況をチェックすることが必要」とした。
 これを受けて,第6回作業部会で「MA取扱い施設の整備」,「J-PARCの核変換実験施設」,「群分離・核変換技術」の課題に係る進捗と今後の見通しについて,第7回作業部会で「国際協力」,「人材育成」の課題に係る進捗状況等について現状報告を受けた。二度の作業部会における委員の間での議論を踏まえ,これら技術課題の評価について検討を行った結果等,本作業部会はJ-PARCの核変換実験施設の技術課題進捗に係る見解を以下のとおりとりまとめる。


記 

 本作業部会は,前回の作業部会で示した課題等に沿って,日本原子力研究開発機構から,技術的実現性,規制等対応に関わる成果や今後検討すべき課題等,進め方の整理も含め報告を受け,審議を行った。 その結果として,核変換実験施設のうち大強度陽子ビームでの核破砕ターゲットの技術開発及び材料の研究開発を行うADSターゲット試験施設(TEF-T),低出力で未臨界炉心の物理的特性探索とADSの運転制御経験蓄積を目指す核変換物理実験施設(TEF-P)のそれぞれへの見解は以下のとおり。 

(1)TEF-Tについて
 TEF-Tにより達成を目指す技術要件である「実機ADS想定温度(500℃)での鉛ビスマス共晶流体(LBE)ループ運転」,「酸素濃度制御による機器・配管系腐食対策」,「遠隔操作設備の基本設計」等のポイントとなる技術課題の解決に向けた進め方が適切であることを確認した。
 また,設計における安全性では,ビーム窓破損時等の主な事故事象想定と影響緩和システムの概念検討の状況を確認した。
 なお,鉛ビスマス共晶流体(LBE)ループの設計に当たっては,欧州のみならず,多くの知見を有すると考えられるロシアの技術情報も注目する必要がある。 

(2)TEF-Pについて
 TEF-P建設に必要な技術課題として,「新規制基準への対応」,「加速器施設と原子炉施設との連結」,「高線量・高発熱のMA燃料を取り扱うための遠隔操作技術」等のポイントとなる技術課題の解決に向けた進め方が適切であることを確認した。
 また,安全性に係る設計については,研究施設として実績のあるFCAの安全設計を確認し,ADSの特殊性を考慮した安全設計の重要性を意識して検証・改善を進めつつある状況を確認した。
 なお,核変換実験施設の安全性検討については,新規制基準の考え方も含め,前例のない施設であることに鑑み,今後,日本原子力研究開発機構に加え,学協会等の客観的意見を取り入れられる形で検討を進めることが望ましい。  

(3)今後の取組について
 本作業部会での報告を踏まえ,核変換実験施設の課題への取組状況は概ね順調であると判断する。また,技術開発に関するロードマップにより技術開発の進捗管理が適切に行われている。よって,引き続き,課題達成に向けた要素技術の研究開発に取り組むとともに,施設の建設に向けた検討に必要な地盤調査や施設の安全設計のための検討等に取り組むことは妥当である。
 今後,核変換実験施設を実際に建設するに当たっての,建設に必要な課題,技術目標等を網羅的に整理し,その達成状況や見込み等を分析した上で,建設に向けたホールドポイントを確認するとともに,取組計画に反映する等の工程管理が必要である。
 また,施設整備に必要な経費については,可能な限りの既存設備の活用等,より効率的かつ効果的なものとなるよう配慮する必要があり,研究開発計画全体を見据えて,そうした観点で精査することが望まれる。
 また,建設された核変換実験施設が円滑に運営されるためには,今回報告を受けた核変換実験施設におけるMA取扱い施設の整備の他,使用される燃料製造に必要な施設,設備について,核変換実験施設と同様に,課題や技術目標を網羅的に整理,分析し,核変換実験施設の整備とあわせて,実現可能な取組計画を策定する必要がある。
 核変換実験施設の建設は,群分離・核変換技術の発展に向けて重要な取組であり,我が国が先行できる研究開発テーマ設定,産学官の連携や人材育成等,積極的な取組が期待される。国際的なネットワークの下で,単に技術情報の交換・収集のみならず,各国がチャレンジングなテーマの下で,協力・連携できるような取組が期待される。
 本作業部会としては,これらの進捗状況について,必要に応じて報告を受けるとともに,技術評価について,引き続き,調査,検討を行っていく。

                                                                           以上

   

 

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