原子力科学技術委員会 群分離・核変換技術評価作業部会(第8回) 議事録

1.日時

平成27年8月13日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 18階 研究開発局 会議室1

3.出席者

委員

山口主査,長谷川委員,藤田委員,峯委員,矢野委員,和気委員

文部科学省

板倉大臣官房審議官,岡村原子力課長,武田放射性廃棄物企画室長,馬場原子力課長補佐

4.議事録

【山口主査】 皆様,おはようございます。
それでは,定刻になりましたので,ただいまから第8回群分離・核変換技術評価作業部会を開始いたします。
本日は,御多忙のところ御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
これより議事に入りたいと思います。本日の議事でございますが,お手元に議事次第が配ってございます。群分離・核変換技術に係る研究開発の進捗状況について,研究開発の実施主体でございます原子力機構より聴取することとしてございます。
それでは,まず事務局から,定足数の確認と配付資料の確認をお願いいたします。

 

【武田室長】 7月27日付で西田の後任に着任しました武田と申します。よろしくお願いいたします。
まずはじめに,定足数でございますが,本日,中島委員を除く7名中6名の委員の先生方に御出席いただいておりますので,定足数である過半数を満たしております。
続きまして,配付資料の確認をさせていただきます。今お話がありました議事次第の下に6種類の資料がございます。まず,資料1から4までと,参考資料2つでございますが,資料1がA3横紙でございますが,加速器駆動核変換システム(ADS)による分離変換技術開発の進捗状況というものでございます。資料8-2といたしましてADSターゲット試験施設(TEF-T)の検討の進捗状況,資料8-3といたしまして,核変換物理実験施設(TEF-P)の検討の進捗状況,資料8-4といたしまして,群分離及びマイナーアクチノイド(MA)燃料製造/乾式再処理に関する技術開発の進捗状況,参考資料1といたしまして,本作業部会の構成員の名簿,参考資料2といたしまして,運営規則,以上でございます。
資料の欠落等がありましたら,事務局までお知らせいただければと思います。大丈夫でしょうか。
引き続き,本年5月に本作業部会全員の任期が更新されております。主査につきましては,引き続き山口主査が,上位機関である原子力科学技術委員会から御指名されておりますことを御報告を申し上げます。
また,任期が改まりましたので,先ほど御紹介しました参考資料2にございますが,運営規則の第2条第7項というのがございます。これに基づきまして,主査から主査代理の御指名をお願いしたいと思います。

 

【山口主査】 それでは,引き続き主査を務めることになりましたので,どうぞよろしくお願いいたします。
今御紹介ありましたように,運営規則の第2条第7項に,主査代理をあらかじめ指名するということでございます。それで,本日御欠席していらっしゃるのですが,これまでも主査代理を務めていただきました中島委員にお願いしたいと考えてございます。この件につきましては,中島委員御本人にもお話をさせていただいて御内諾を頂いておりますので,私と中島委員,併せてどうぞよろしくお願いいたします。

 

【武田室長】 ありがとうございました。
また,事務局にも人事異動がございましたので,一言御挨拶申し上げます。

 

【板倉審議官】 8月4日付で田口の後任として原子力担当の審議官に着任いたしました板倉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

【岡村原子力課長】 同じく,8月4日付で原子力課長を拝命しました増子の後任でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

【山口主査】 それでは,議題に入りたいと思います。撮影等はございませんね。
それでは,議題の1番目,群分離・核変換技術に係る研究開発の進捗状況でございます。昨年の夏に本件につきまして報告を受けて以降,その後の進捗とともに,平成28年度以降の進め方につきまして原子力機構としてのお考えを聴取することといたします。
ただ,内容が多岐にわたりますので,全体概要をお聞きした後に,TEF-T検討の進捗状況,それから2番目に,TEF-P検討の進捗状況,3番目に,群分離及びMA燃料/乾式再処理に関する技術開発の進捗状況,これら3つの話題に分けて進めたいと思います。
まずはじめに,全体概要と,それからTEF-Tの進捗につきまして,原子力機構から説明していただけますようお願いします。

 

【三浦理事】 4月から原子力科学研究部門を担当している理事の三浦です。御挨拶を先にさせていただいて,御説明させていただきたいと思います。
群分離・核変換技術は,エネルギー基本計画に掲げられた重要な事項だというふうに考えています。幅広い選択肢を持って研究開発するために,共通基盤技術としての分離のための技術,高速炉,加速器を用いた核変換技術が必要であり,今年度からスタートしました第3期中長期計画には,昨年度の作業部会の結果を受けて,これらの研究開発を進めているというところでございます。
原子力科学研究部門では,原子力の基礎基盤研究の維持強化というところに注力していますけれども,加速器を用いた分離・核変換技術開発は,この基礎基盤をベースに成長させるプロジェクトであるというふうに考えています。国内外との連携協力も重要であるというふうに考えています。また,本分野の高レベル放射性廃棄物の減容化,有害度の低減に大きなインパクトをもたらす可能性のある技術研究開発という点では,原子力の人材の確保,育成につなげたいというふうにも考えています。
本日は,群分離・核変換技術開発の進捗状況について報告させていただきますので,今後の研究開発の方針などに関して御指導いただければと思います。よろしくお願いいたします。

 

【齊藤センター長】 続きまして,大強度陽子加速器施設(J-PARC)センターの齊藤から御挨拶申し上げます。J-PARCセンターのセンター長を拝命しております。
J-PARCは御存じのとおり,日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構の2つの機構が建設して運営している施設でございまして,もともとこのJ-PARC建設の動機になったものの一つとしまして,この核変換技術を進めるということをもともと動機として考えております。
これまでこの作業部会ではたくさんの御指摘を頂きまして,それに基づいて我々は検討を続けてまいりましたが,本日はお忙しい中お集まりいただいて,更にまたいろいろ検討いただいて,今後の多くの研究開発に結び付けていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。

 

【前川副ディビジョン長】 それでは,続きまして,群分離・核変換技術開発の進捗状況について御説明いたします。
資料8-1を御覧ください。
まず,この下半分ですが,A3の1枚紙です。下半分にロードマップが示してあります。左側が群分離・核変換燃料及び燃料サイクルのもので,右側がADS開発に係るものです。左半分ですが,大項目としてMA分離,核変換専用MA燃料製造,乾式再処理というのがありまして,ADSにつきましては,炉物理,核データ,プラント,安全・制御,鉛ビスマス共晶合金(LBE)の熱流動・ターゲット,材料,それから加速器というふうになっています。
このロードマップの中で黄色く示してある部分が,現在実施中及び今後の中心部分になっていまして,特に赤字の部分が現在実施中のものになっています。このロードマップは2年前にお示ししたものですが,2年前から現在までで1点だけ更新されたところがありまして,それが資料右半分でありますADSのロードマップのちょうど中央あたりですが,小さな緑の矢印で示してありまして,機器流動試験,赤字で下線が引いてありますが,ここが以前は黒字であったのが,この試験が開始されましたので,赤字になっています。変更点としては以上になります。

概要について御説明いたします。一番上の箱にいきます。平成25年度補正予算及び平成26年度予算で整備した実験設備が,大体昨年度中に完成しております。これらを利用した試験とデータ取得が本格化しています。群分離・燃料サイクル技術開発では,MAと希土類元素,これを一括で分離した後に,今度は相互に分離する工程の検討,また燃料ふるまいコードの整備が進んで,今後は燃料ピンの製造に係る研究開発を行ってまいります。ADS技術開発では,遠隔によるMA燃料取扱いやLBE熱流動に関する要素技術開発で進展がありました。

今後は,先ほど申しました機器流動試験を本格化させていきます。また,TEF-Pについて,新規制基準に沿った安全性検討が進展いたしました。全体としましては技術開発は大体順調であって,今後,工学規模の試験に向けて進めていくということになります。
詳細につきましては,この後の資料8-2から8-4で御説明いたしますので,概要としては以上とさせていただきます。

 

【佐々研究主幹】 それでは,続きまして,資料8-2に基づきまして,ADSターゲット試験施設【TEF-T】検討の進捗状況を御説明いたします。
2ページ目には,本日お話しする内容のポイントを図示させていただいております。1つは,核破砕ターゲット・一次冷却系,いわゆるターゲットシステムについての検討の状況,それとLBEを流動させる際の計測制御技術について,それとターゲットの遠隔保守について,それともう一つ,これはこの場でも御説明させていただきますが,核物質防護対応ということで,こちらは後ほどTEF-Pの御説明の方でもう少し詳しく御紹介いたします。最近,核物質防護に対する規制が明確化してきたこと,それとともに,それの厳格な遵守が特に求められているという中から,十数年前に我々が選定したサイトの中で,原子炉施設のその要件を満たしつつ,このターゲット施設を併設するという上で,この施設の建屋の形状,構造というのを大幅に見直さざるを得なくなってまいりました。そこで,今,建屋の構造や形状につきまして再検討を行っているというところでございます。
それでは,引き続きまして,3ページ以降につきまして御説明いたします。
3ページにつきましては,ADS技術における他分野との連携として,この施設を作ることでどのような波及効果があるか,あるいはこれまでの技術がどのように生かされているのかというのを簡単に取りまとめさせていただいたものです。原子力機構は,原子力の総合研究開発機関といたしまして,高速炉の研究開発を行うとともに,加速器中性子源を持つという,世界的にも極めて珍しい研究機関になっております。その特長を生かしまして,これまでに蓄積された技術やその情報を集積して,この実験施設の設計に最大限活用して進めさせていただいているところです。
1つは,ナトリウム冷却高速炉の技術としまして,このターゲットの概念図の右側に記載させていただいておりますが,連続式の液位計や電磁ポンプ,それから耐放射線性のケーブル,あるいは流体金属を液体に保つためのヒーター,それから超音波の流量計や高温機器,こういうものにつきましては,高速炉で開発された技術を積極的に取り入れて進めさせていただいております。
また,併せて既存の核破砕中性子源,水銀を用いた核破砕ターゲットからの技術としまして,遠隔操作により着脱できるフランジや,遠隔保守そのものの技術,それから陽子ビームに対する診断技術やターゲットの破損の検知方法,こういうものにつきましては,核破砕ターゲットの技術を取り入れてきております。
また,こちらの施設を作った上で得られる知見としましては,将来的には,鋼材の腐食に関する特性,特に様々な粒子が照射される場においての液体金属のふるまい,あるいはそれに対する接触しているものの鋼材のふるまい,こういうものに対する知見が得られる。あるいは,酸素濃度制御や純度管理,特にこの純度管理につきましては,核破砕ターゲット自身が照射されて様々な不純物が蓄積していく環境の中での純度管理,こういうものにつきまして他分野にも波及していくようないろんな知見が得られるであろうということを期待して,研究開発を進めさせていただいております。
4ページ目以降で,これまでに得られた知見について幾つかハイライト的に御紹介させていただきたいと考えております。
一つ,一番大きなものが,超音波によるLBEの流量計測になります。これは,既存のループ,小型のループですが,これを用いまして試験を続けてまいりました。温度が350度までしか上げられない非常に小型のものですけれども,こちらを用いまして長期の測定試験を実施しております。今年の2月からつい先日まで行っておりました。計画停止を一度含みますけれども,全体として3,000時間超の連続測定で,非常に安定した信号出力が得られております。従来ヨーロッパでは,このタイプの測定器は数十時間しかもたないというふうに言われていましたが,原子力機構の高速炉の技術を応用しまして,数千時間あるいはそれ以上,狙いとしては5,000時間,J-PARCの1年間の運転期間,全期間を一つのユニットで計測し切ることができるという見通しが得られております。
出力特性試験において,ポンプ出力に対する良好な追従性,これは右下のグラフを御覧いただきたいのですが,0.36 m/secが定格で今動かしている数字ですが,1,000時間のところで一旦計画停止をしております。そこからの再起動の際に,ポンプ出力を徐々に上げて,そのポンプ出力からの理論値とこの流量計の指示値の比較を行っております。ここで非常によい追従性がというのも併せて得られているということで,最大値だけではなく,途中の数値も正確に測れるということも計測してございます。
誤差として,ここに示されているエラーバーは,音波を計測しますので,その最大値,最小値を示していており,誤差とは厳密にいうと違うものなのですけれども,測定自身の誤差としては,統計的にはほぼ指示値の1%以内におさまるということになります。この1%の流量の変動がどれだけの影響を及ぼすかと,流量だけで見ますと,核破砕ターゲットの一番温度の高い位置での温度変化,1度程度に相当するということで,この程度のものであれば計測システムとしては十分な精度を持つであろうというところで,性能的にも機能的にも寿命的にもほぼ十分なものができたというふうに考えてございます。
今後の展開ですけれども,超音波による計測技術を更に高めるということで,今使っているものは,左の写真にございますように,配管の中にプローブを差し込んで,LBEと接液して使うタイプですが,これをLBEの配管の外から測る,つまり,LBEに直接触れない状態で測れるというタイプのものを開発して,より流量計の安全性や保守性を高めるような,そのようなタイプのものを今後は試験していこうというふうに考えてございます。
次に,5ページ目ですが,もう一つ大きな課題でありました酸素濃度制御について御説明いたします。
こちらも,先ほど流量計測を行っておりました低温の小型ループ,こちらを用いて試験を進めてまいりました。同じく2月から7月の中で試験を行っております。

こちらも計画停止が入りましたが,3,000時間超の連続運転で酸素濃度を一定範囲内に制御可能な装置概念というのを構築いたしました。 右の図がそのときのトレンドを一部抜き出したものになります。これはマニュアル操作でやっておりますので,最大の振れ幅で制御するようなことをしておりますが,酸素濃度にしまして10-7%から10-5%,この範囲内に系統内の酸素濃度を制御できたというのがお分かりいただけるかと思います。この-5乗から-7乗という範囲は,J-PARCのこの施設に対する専門家の諮問委員会がございますけれども,そちらから,この範囲内に制御することを目指すべしというふうに指摘された範囲をあらわしておりまして,この中で的確に制御されているということがお分かりいただけると思います。
併せまして,高感度かつセンサー破損時にLBEが漏えいしないタイプの大気開放型の酸素センサーというものも開発いたしました。これは左の写真ですけれども,左の写真の左側に見えている乳白色の部分,こちらがジルコニアのセラミックでできたセンサーの有感部分になります。破損しやすいものですが,こちらが一番感度がよいということで使っております。右側の金属部分の一番太い部分の右端に穴があいているのが御覧いただけるかと思いますけれども,こちらが大気と解放されている状態,つまり大気中の酸素をリファレンスとして酸素濃度を測るという,非常に感度としてはいい方法になりますが,1つ大きな問題として,ジルコニアのセンサーがもし破損した場合に,その大気開放部分を通じてLBEが漏れてくるおそれがある,これを防ぎつつ,なおかつ精度よく保つために大気解放にしておきたいというところで,この太くなっている部分の中に少し工夫をいたしまして,もしジルコニアの部分が破損しましても,ここの穴から出てくるまでの間にLBEが融点以下に下がって凍結する,こういうタイプのものを使いまして,仮に破損しても放射性物質を含むLBEが外には出てこない構造,こういうものを両立したセンサー,これを開発いたしました。
こちらのセンサーと同タイプのものを使って今後は試験を進めていくということを考えてございます。また,制御幅につきましても,今後は人的にやるのではなくて,シーケンサーを使ってもっと細かい幅で,細かく制御ができるようにしていくことを目指そうというふうに考えております。最終的には,酸素濃度制御による機器・配管系の腐食対策,これを実証するというのを今後は目指していきたいというふうに考えてございます。
6ページですが,ターゲットモックアップループ試験を御紹介させていただきます。
こちらのループは,前々年度にこちらの作業部会で研究開発を推進すべしという御意見を頂いた後に,大型の試験装置の開発に着手いたしましたが,今年の3月,ようやくそれを設置いたしました。まず,運転温度250度で循環運転を実施いたしまして,ループの健全性について確認をしてございます。
左側の写真がループの一部の部分が写った写真です。非常に大型のループで,2階建てになってございますけれども,2階の床部分まで約2 m50 cmから3 m近くございます。その上に黄色い手すりがございますが,手すりの支柱の右から2本目と3本目の間に金属の円筒形のようなものが御覧いただけますが,こちらが核破砕ターゲットの試験体になっております。これを装着したループの循環試験,これを行いました。
今のところ250度で,流量としては右の図にございますけれども,順次容量を上げていきまして,定格の120 リットル(L)/分,非常に大きな流量のものになりますけれども,こちらを安定して流すことができることを実証いたしました。もちろん,LBEの漏えいはない状態です。これを,通常の場合でいくと約100 Lを切る,80数 Lで流すのが定格になりますので,ポンプの性能としては十分なものが得られているというふうに考えてございます。

今後につきましては,非照射下での安定循環運転技術を確立するというところで,酸素濃度制御をまずやるというところが一つになりますが,もう一つは,LBE温度が400度超で非等温,つまり熱交換器を用いまして高温部と低温部を作った状態でこれを5,000時間運転する,こういうことを目指す試験を進めていきたいというふうに考えてございます。
7ページ目ですが,ターゲットシステムの検討ということで,施設の根幹になります核破砕ターゲットのシステム,こちらの設計も併せて実施してございます。

既存のJ-PARCの水銀ターゲットの例をもとにしまして,台車搭載型のターゲットシステム,この具体化を進めているところでございます。
この中で特に問題になっておりますのが,遠隔操作によるメンテナンスになります。ターゲット自体,右の写真にございますこのターゲット,先ほどのモックアップループに設置したターゲット,保温材を外した状態のものになりますけれども,こちらを毎年交換するに当たってどのような手順で進めていくのがよいのかというのを検討してございます。そのときには,特に遠隔操作可能な予熱設備ですね,これはパッケージヒーターと呼ばれる「もんじゅ」などで採用されている,保温材とヒーターが一体型で一度に外せるタイプのヒーター,これを使うということと,これのメンテナンス性を遠隔操作でやるというのを実証していくということ,それからLBEの漏えい検知や,こちらの部会でも御指摘いただきましたが,破損検知,こちらに対する機能やセンサーの開発,これも併せて進めていきたい。
それとともに,遠隔操作を行う際にマニピュレータを使いますけれども,どのようなマニピュレータをどういう形で配置するとどういうふうにターゲットが交換できるのかという具体的な作業手順,こちらをより詳細に詰めていきながら,ターゲットシステムのレイアウトを決めていきたいというふうに考えてございます。現状も少しその配置概念,遠隔操作を意識した配置概念を取り入れておりますが,より具体的に,特に1年置きに交換するターゲットの交換手順について詳細化を進めていこうというふうに考えてございます。
最後に,2枚もの,8ページ,9ページに,まとめのかわりに課題への対応状況という表を御紹介させていただきたいと思います。これは昨年度にもお示しいたしましたが,それの年度目標を改定したもので,それとともに達成率がどこまで進んだかというのを,現状の達成率をお見せしているものになります。
一つは,高温でのLBEループの運転ということで,平成28年度には最高温度500度で運転するというのをまず目指すということを目標にしたいと考えております。ようやくループが完成いたしましたので,順次温度を上げていく,温度差を付けていくという作業を進めていきたいというふうに考えてございます。このときには,他国の知見,特にロシアにつきましては,昨年度も御指摘いただきましたが,鉛冷却炉ですね,通常のLBEよりも高い温度で運転される鉛冷却炉の技術を彼らは持っておりますので,その辺の技術も採用しながら,聴取しながら進めていきたいというふうに考えてございます。
次に,鋼材の腐食につきましては,酸素センサーが完成したということで,これはほぼ目標とするところが達成できたというふうに考えてございます。先ほど申しましたとおり,350度での運転では実証できておりますが,実は酸素濃度に関しましては温度が高いところよりも低いところの方が計測や制御は難しいものでして,温度が高いところで実証できれば,ほぼこれに関しては照射前のR&Dとしてはクリアになるだろうというふうに考えております。これにつきましては,モックアップループを使って順次実証していくというところを目指しております。
流量計測につきましても,現状でほぼ十分な性能が得られておりますが,これをより安全なものに更新していく,改良していくというところをもう少し進めさせていただきたいというふうに考えてございます。

9ページ目の遠隔操作というところで,こちらにつきましてパッケージヒーター等の実証等はある程度進んでおりますが,遠隔操作による,特に配管の切断と再接続の技術,この辺を今,改めて検討を進めているというところになってございます。溶接装置の遠隔操作への適用性などを順次進めていくことを計画しております。
それから,不純物管理につきましては,モックアップループを用いまして不純物のフィルター,これの試験を進めていくというところで,ある程度のめどが付くであろうというふうに考えてございます。
また,高放射線場での運転につきましても,J-PARCの水銀ターゲットと連携しまして,耐放射線性の確認をするとともに,ターゲットシステムの設計に合わせて,遮蔽構造を持った機器の据付け手順,そういうものも併せて検討を進めていくということを考えてございます。
TEF-Tにつきましては,以上でございます。

 

【山口主査】 どうもありがとうございました。
ただいま進捗状況の概要と,それからTEF-Tの御説明がございましたので,これから御議論いただきたいと思います。質問,コメント,ございましたら,よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
1つ質問させてください。酸素濃度制御の話で,低温中での制御が重要というお話をされましたが,腐食速度の温度依存性といいますか,温度によってどう変わるのかというところのデータは取られているのでしょうか。

 

【佐々研究主幹】 これは,実は今回紹介しなかったのですけれども,大型のループをもう1基作っております。こちらは,最高温度で500度超を目指したタイプで,ターゲットシステムとは全くコンセプトが違いますので,設計も全く違った形で進めておりますけれども,こちらにはT91というクロム系の金属も併せて使って,高温に耐えるような設計をしたループがございまして,そちらで酸素濃度を調整しながら,様々な試験片を入れた腐食試験を行っていくということを別途計画してございます。 

 

【山口主査】 それでデータを出すと。

 

【佐々研究主幹】 そちらでデータを順次出していこうというふうに考えております。

 

【山口主査】 何かございますか。どうぞ,矢野委員,お願いいたします。

 

【矢野委員】 幾つかあるのですけれども,ここに流量計とそれから酸素濃度センサーがありましたよね。これって,こういう写真のようにジョイントで接続するというつもりで今作っていますか。

 

【佐々研究主幹】 流量計につきましては,こういうセットアップがどうしても必要になります。このタイプですと,このセンサー間の距離も非常に重要になります。そこでの音響の反射を見ますので,正確に距離がはかれていないと校正ができないことになってしまいます。それですので,機械ではできないと思っています。ですので……。

 

【矢野委員】 振動しますよね。

 

【佐々研究主幹】 振動は,はい,振動はこちらのループでも……。

 

【矢野委員】 どっちにしても,こういうセンサーをジョイントというか,こういう締め方で,確かにメンテだとかいろいろ便利なのでしょうけれども,こういうものは長時間安定して動くのですか。動くというか……。

 

【佐々研究主幹】 まさにそのための試験がこれでして,3,000時間は十分機能している,特に劣化したとか,駄目になってきているような兆候も一切見られていません。

 

【矢野委員】 溶接は嫌なわけですね。

 

【佐々研究主幹】 これは溶接しないタイプになっています。溶接自体を嫌っているわけではなくて,ターゲットの交換に関しては,むしろ溶接しないともたないだろうというふうに考えておりますので,溶接自体を嫌っているわけではありません。ただ,こちらのセンサーに関しては,実際にセットアップはやっぱり手でやらないといけないので,ある程度ユニット化したものを取り付けていく,その中では非接触でやる方がより安全性が高いだろうというところで,ちょっと違ったものにしていこうというふうに考えております。
酸素センサーも同じで,セラミックを使っていますので壊れるということも十分考えられます。ですので,壊れてもいいように複数を同時に設置しておくということと併せて,それをセットアップしたものを遠隔でインストールできるように,設計は今進めているところです。

 

【矢野委員】 3ページの他分野との連携ですけれども,「もんじゅ」があって,J-PARCのこの水銀の中性子源がありますけれども,ここでどういう故障とか事故があって,それはもう二度と起こらないようにこう工夫されるのであるという,何か主張があるといいのですけどね。

 

【佐々研究主幹】 ああ,なるほど,はい。その辺のところは,J-PARCでも少し製造上の問題などが発生した部分が出たとか,そういうところがございました。その辺で,そういうものは随時聴取しておりまして,こういうタイプの製造工法はよろしくないねとか,そういうところは入れながら設計は進めているところであります。

 

【矢野委員】 以上です。ありがとうございます。

 

【山口主査】 今の御指摘は,こういう技術開発の成果を活用していくということだけではなくて,運転経験とかそういうものも踏まえて反映してくださいという趣旨だと思いますので,是非よろしくお願いします。

 

【佐々研究主幹】 はい,分かりました。

 

【山口主査】 ほかに,いかがでしょうか。藤田委員。

 

【藤田委員】 今の矢野先生のに関連して,4ページ目と5ページ目の超音波流量計と酸素濃度センサーの大きさってどのくらいでしょうか?,目盛りがついていないので。

 

【佐々研究主幹】 申し訳ありません。この酸素センサーは,大体長さ的にはこのぐらいのものです,太さも。センサーのクオーツ自体は……。

 

【山口主査】 議事録を作るので,数字で……。

 

【佐々研究主幹】 分かりました。センサーの結晶自体は,数 cm角の円筒形をしたものです。酸素センサーにつきましては,このセンサーのジルコニウムの部分が10 数 cmのもの,太さにして,一番太い部分で数 cmのものです。

 

【藤田委員】 特に超音波を使う方ですけれども,非接触に変えられますよね。今はどぶ漬けということですか。

 

【佐々研究主幹】 今は,クオーツの前にステンレス製の導波管を接続して,その導波管がLBEに接触しております。

 

【藤田委員】 結構,非接触とどぶ漬けって全然,大きく性能も違ってくるので,それは例えば,もうちょっと過去の他の分野の開発経験を参考にして非接触を開発されているのでしょうか。中の導体によっても全然違うので,非接触を開発される際は,やっぱり別のところで非接触とどぶ漬けとの性能評価による検討をされてからの方が,いきなりされることはないのかもしれませんけれども,全然違う数値になる可能性があると思います。

 

【佐々研究主幹】 これももうほとんどが高速炉の技術です。やはりナトリウムでは実施しております。当然,LBEの違いというのは,現在のものをやる段階で,物性の違いは全部サーベイした上で校正したものを使っています。今,モックアップループの方にもこちらで流量計測した結果が出てございますが,これが今,接触タイプのものです。これのデータをもとにして,非接触タイプと比較していくということを進めていこうという準備をしています。

 

【山口主査】 これは,将来はどちらかをオプションで選択するという趣旨ですか,それとも非接触を目指しますか。

 

【佐々研究主幹】 非接触メーンで行きたいとは思っていますが,ただ,あれもやはりセンサーの取り付けぐあいをどのぐらいデリケートに決められるかというのが遠隔で実際試してみないと,「もんじゅ」はそこまで遠隔というのが必要なかったですが,こちらはターゲットでもうループそのものが非常に放射化してしまうので,遠隔にせざるを得ない。そこで非接触を本当に取り扱えるかというのは,ちょっと実地で試してみてからでないと駄目だなと思っています。ですから,そこ次第で,ただ,どちらにしても計測はできます。

 

【山口主査】 それでは,長谷川委員,どうぞ。

 

【長谷川委員】 4ページですが,今のループで流量試験の際,この流れの状態というのは,乱流の状態になっていますか。

 

【佐々研究主幹】 かなりの乱流です。

 

【長谷川委員】 そうすると,配管の中の温度差というのは,径方向の温度差ってさほどないのですか。

 

【佐々研究主幹】 径方向の温度差は,当然ですけれども,ある程度の分布を持つことにはなります。そちらも一応,シミュレーションの中では想定して,ターゲットの中のシミュレーションはやっております。

 

【長谷川委員】 私は超音波の流量計測は知らないのですけれども,温度によって音速はどのくらい変わるのですか。

 

【佐々研究主幹】 すみません,ちょっとそこのデータは,今私の手元には……。

 

【長谷川委員】 そういうのを全部やって……。

 

【佐々研究主幹】 それは,計測系の方で全部校正したものの出力が得られるようにはプログラムしてございます。

 

【長谷川委員】 それは温度がどこにある,どんなふうな温度分布をしているから,流量はどのくらいというのを全部やらないといけないですね。

 

【佐々研究主幹】 そうですね,はい。

 

【長谷川委員】 最終的にできる配管の大きさがどのくらい,まあ実際に試験をやる際はこのぐらい小さければ,温度分布も小さいし,測定しやすいでしょうけれども,実際にスケールアップしたときに,流量の変化というか,それから温度の変化って中に入ってくることは当然想定されるわけですね。それを,今おっしゃった,私はこの非接触でというところが,きちんとその大きさの中におさまる,はかり得るのかというところがちょっと懸念されるところかなとは思ったのですけれども。

 

【佐々研究主幹】 その辺については,それを知りたいというところでまず試験をするというところはございますけれども,実はこれをやる前に超音波で流速計を作っていました。要は,まさに今おっしゃっている,配管の中で速度がどういう分布をしているのかというのを知るための測定器というのも併せて開発しておりまして,そちらも知見を持った者が今これを担当しております。ですので,それを反映した形で,平均の流量ですね,こちらは量ですので,もっとグロスの値になるわけですが,そういうものがきちんと測れるというところも検討するようにしてございます。
もう一つは,今このモックアップループですけれども,配管は65Aのサイズで作っています。実機は少しサイズを下げまして,40Aぐらいを今,想定しています。

 

【山口主査】 実機は小さいんですか。

 

【佐々研究主幹】 そうです。ですので,こちらできちんと測れれば,実機では十分行けるというふうに考えております。

 

【長谷川委員】 それから,もう一つ,今の流れの問題ですけれども,配管中で流れが変則的に変わるところといいますか,ある程度考えなきゃいけないですね。

 

【佐々研究主幹】 はい。

 

【長谷川委員】 特に,流れ加速型腐食(FAC)ですね,軽水炉で破損があったFACとか,特にこれは重たい液体ですので,そういうもの,変な曲がり方をするところが,通常の流れでは全く,腐食性とか減肉の問題がなくても,曲がったところとか,そういうものの解析はどのくらいやられているのか,そこをちょっと教えてください。 

 

【佐々研究主幹】 なかなかこの解析については難しいところがございます。特に,エロージョンの話になると,やはり物理モデルを立てるのは非常に難しくて,実地のこういうものについてどんなことが起きるのかというところから推測せざるを得ないところがあります。我々,実はこれを作る前に4基,ループは持っています。1号基,2号基に関しては,新しい装置を入れる際に解体をいたしました。そこで,まさに御心配されているようなところ,狭隘部(きょうあいぶ)ですとか急に流れの向きが変わるようなところ,ここについては部材を今,保管してございます。時間を見て,どんなことが起きているかというのを分解してチェックしてみようというふうには考えているところです。その辺を見ながら,実機でどんなことが起きるかというのを予測していこうかというふうに考えております。

 

【長谷川委員】 これはループ全体としては,こっちに送り出す方があって,こちらに発熱部分があって,途中でまざったりとかあるいは分岐したりというのはあるのですか。

 

【佐々研究主幹】 基本的にはループは非常に単純なワンウェイのループになっております。一部,二重管になっていて,外側が冷たくて中は熱いみたいなところはありますが,そこの熱交換はほんのわずかなものです。

 

【長谷川委員】 途中で冷たいやつと熱いやつが合流するとか……。

 

【佐々研究主幹】 基本的にはそういうことはないようにしてあります。

 

【山口主査】 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ,和気委員。

 

【和気委員】 4ページと5ページのところで,既存ループあるいは既存設備の実験ということですが,今後の展開においても,この既存のループあるいは既存設備を通じた実験を続けていくというふうに読めばいいのでしょうか。あるいは,しかるべき時期には何らかの新規設備投資なりが必要だという前提で理解すればよいのでしょうか。その場合の大まかなイメージを教えていただきたいのですけれども。

 

【佐々研究主幹】 新規の設備投資につきましては,大きなものにつきましては,前々年度の議論いただいた後に整備したもの,大きいものが2基,今お話ししたモックアップループと,先ほど山口先生から御質問がありました高温の腐食試験ループ,こちらが今年の3月に完成しました。高温腐食試験ループにつきましては,若干改造するところが残っているところではありますが,大型の機器という点では,その2つを活用していこうというふうに考えています。ただし,やはり物が大きいですので,小回りのきく試験というのも別途やりたいところがありますので,既存の小型の350度までしか上げられないようなループにつきましては,そういう細かい試験に生かしていこうかというふうに考えています。

 

【山口主査】 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ,峯委員。

 

【峯委員】 4ページと5ページですが,4ページの超音波式流量計に関しては,私はずっと高速炉の設計に関与していたので,うち自身が超音波流量計は開発していなかったのですが,いろいろ話は聞いていましたが,「もんじゅ」は二次系に取り付けることで開発したと。あと,実用化検討では,一次系に取り付けるということで,かなりモックアップとかもされたと思うのですけれども,かなり口径は大きなもので,相当条件は違うと思うのですが,両者とも加速度超音波のセンサー自身の耐熱性が非常に厳しいということで,500度の配管に取り付ける場合には,ホーンの中に埋め込むとどうしてももたないということで,ステンレスの導波管を介してホーンの外に付けざるを得ないと。そのときに導波管がすき間というのですかね,圧着程度であると減衰してしまうので,がっちり溶接をして減衰をしないように導波管を接続するというような構造だったと思いますが,その外側に導波管に加速度センサーを付けて,そこでも接続方法とかが問題になる,かなり開発要素があったと思うのですが,ただ,加速度センサー自身はメンテ,交換をしないといけないので,そこも考えないといけないと。今回はこれ,高速炉でいうと一次系に近いですかね,遠隔でやるということなので。

 

【佐々研究主幹】 一次系,はい,そのとおりです。

 

【峯委員】 一次系の実用化検討の成果をどうこちらに変更していくかということになるかなと思うのですが。

 

【佐々研究主幹】 実はその当時にナトリウム用の装置を作っていた方に,直接これの開発は当たっていただいています。ですので,課題は十分御理解いただいた上で,実は詳細は言えないところもありまして,なかなか難しいのですが。

 

【峯委員】 そういう意味では,ちょっと,これは母管ですよね,この太いところは。これが配管なのですか。

 

【佐々研究主幹】 これから屈曲させて出してきています。この配管は上から見ると「π」のような形になっていまして,「π」の両端に……。

 

【峯委員】 センサーはここの,ぽこっとついているということなんですか。

 

【佐々研究主幹】 導波管がこの中に両側から差し込まれている状態です。センサー自身はここの,写真に見えている一番外側の,少し太くなっている部分がセンサーで,コネクターで導波管にくっついている。

 

【峯委員】 導波管自身がフランジか何かで,この中まで突っ込まれているということなのですか。

 

【佐々研究主幹】 はい,フィッティングを介して,LBEの配管の中に入っているのが今の状態です。 

 

【峯委員】 ああ,それで接触,導波管が中に突っ込まれていて,バウンダリーが溶接ではなくで,導波管がずっと出ている。

 

【佐々研究主幹】 そうです,はい。

 

【峯委員】 そうすると,バウンダリーは溶接ではなくて,フランジ構造になっているというような……。

 

【佐々研究主幹】 今は,はい,フランジというか,いわゆるフィッティングになります。

 

【峯委員】 放射性液体のバウンダリーの部分をどうするかという問題なのかなと思うのですけれども。それから,導波管自身は中空じゃなくて太い棒なのですね。

 

【佐々研究主幹】 そうです,ステンレスの中実の棒です。

 

【峯委員】 それを突っ込まないと,やはり検出性能が出ないということですか。

 

【佐々研究主幹】 突っ込めば十分な精度が出るというのは間違いない。やはり……。

 

【峯委員】 高速炉では突っ込んでいなかったと思うのですが。

 

【佐々研究主幹】 そこで,まずは精度がいいものというか,確実に測れるもので計測をしたというのが,最初のステップとしてはこの結果です。これで測れるというのを,まずは我々も欲しかったので,中に入れたタイプでやりましたが,次のステップとして,まさにおっしゃっているような,外からはめて使うタイプ,しかもそれを遠隔操作でできるようなタイプというのを……。

 

【峯委員】 導波管は,もう付けたら着脱しないという前提で設計するしかないと思うのですが。

 

【佐々研究主幹】 はい。

 

【峯委員】 そのバウンダリーの部分ですからね,LBEも放射化するとかなり漏えいとかあれですから,そうするともう溶接しかないと思うのですけれども,そうしたときの,そういう細径の40パイで本当に計測性能が出るかというところですかね。

 

【佐々研究主幹】 そこの部分に関しても,実は内面の処理もきちんとしておかないといけないと,内面と外面も非常にきれいにしておかないといけないというので,ちょっと通常の配管の部分とはしつらえが違うものになるというふうに考えています。今,その部分も含めて開発を進めているところです。

 

【峯委員】 分かりましたが,その中も相当開発課題がありそうですよね,直感的には思いますけれども,高速炉で開発したやつそのままでは行かないということですよね。その辺はちょっと……。

 

【佐々研究主幹】 その辺を含めてちょっとR&Dを進めたいなというふうには思っています。もしこの接触式でしかできないという場合には,もう接触式のセンサーを全部組み上げたものを一体で交換するような,そんな仕組みにするしかないかなというふうには考えています。これを遠隔操作では多分できないというのは,我々も十分承知しております。

 

【峯委員】 今の開発のところで一番重要なところは,LBEのバウンダリーですよね,クローズしている。そこの取付け部分の健全性というか,漏えいとか,遠隔で着脱するというところも,そこも含めてどうするかというところが相当設計のポイントだと思います。

 

【佐々研究主幹】 はい。

 

【峯委員】 それから,5ページのところの酸素濃度センサーで,ちょっとこの写真で気になったんですが,右に小さな穴があいている部分で外気,空気と導通がされていると。

 

【佐々研究主幹】 そうです,はい。

 

 【峯委員】 まず,ずっと使っているうちに,ここはごみとかほこりで詰まるというのはよくあるので,こういう構造で大丈夫だろうかなというのと,空気の酸素と比較されるということなんですが,こういうクローズした空間での酸素濃度というのは,外気と導通しているからといって一定に保持できるのかなというのがちょっと気になったのですが,ずっとこういう小さな穴で,だんだん知らないうちに目詰まりしてしまっていると,何だか分からない状況になってくる……。

 

【佐々研究主幹】 幸いに今の我々の状況では,そういう目詰まり等は今起きていなくて,この穴は2 mmぐらいのものですので,確かに何かの拍子に詰まることはあるかもしれませんが,その辺は経験を積みながら,ちょっと対策をとっていこうかなというふうには考えています。今のところ,こちらからの酸素供給が問題となってセンサーが異常な信号動作をする等,そういうところは今のところは見えていません。

 

【峯委員】 あと,ジルコニアのこの酸素濃度センサーで-7乗とか-5乗という話ですが,このセンサー自身が本当に指示値として確かかどうかという意味での校正ですか,そういう意味では,LBEをサンプリングして分析することもされているんですか。

 

【佐々研究主幹】 なかなかこれの校正は,どうすればいいのかというのが難しくて,サンプリングしましても,サンプリングの途中でもうどんどん酸化が始まってしまいますので,非常に難しい。一番やりやすい方法としては,表面に酸化膜が相当量形成されている状態,これがその温度での酸素が飽和している状態だというふうに見なして,その飽和状態での酸素量と,この計測器の指示値とを比較して校正をするという方法が一番やりやすいというか,そういう形で今,校正は見ています。

 

【峯委員】 ナトリウムループだと,サンプリング管にナトリウムを詰めて,断面を幾つか切って,ばらつきはありますけれども,そういうことはしていますけれども,LBEは難しいですか。

 

【佐々研究主幹】 同じ方法はとれるとは思います。もう一つは,これは去年御指摘いただきましたが,中でどんな分布をしているかというのも,シミュレーションも併せる等,そういう形で見ようとは思っています。今のところは飽和点を基準とした測定というので校正をしているというところで,国外でも大体そのやり方が主流になっています。

 

【山口主査】 よろしいでしょうか。では,長谷川委員。

 

【長谷川委員】 確認させてほしいのですが,3ページの,例えばこの装置を置いてある部屋は,例えば窒素ガスで満たすとかそういうことにはしていないですね,大気がそのまま入るという。

 

【佐々研究主幹】 負圧維持はしております。いわゆる,セルでして,不活性ガスにはしていない。

 

【長谷川委員】 火災の問題とかを考えたら,初めから全部そういうガスに置換しておいた方が火災の問題が余りないのではないですか。

 

【佐々研究主幹】 なるほど。

 

【長谷川委員】 わざわざ大気,それにここは全部遠隔操作ですよね。

 

【佐々研究主幹】 遠隔操作です。

 

【長谷川委員】 人は入らないのですね。

 

【佐々研究主幹】 ええ,遠隔作業時には入らないですが,今の水銀ターゲットのシステムでも,やはり人が介在した方がやりやすいものもあります。それと,セルのボリュームが非常に大きいですので,負圧維持でいけるものであればガス置換はしないでいきたいという,そういう点もあります。

 

【長谷川委員】 要するに,費用的な問題で全部不活性ガスにはしないという,結論からするとそういう……。

 

【佐々研究主幹】 一言で言ってしまうと,費用的な問題も大きいです。

 

【藤田委員】 ホットセル工法にしないといけなくなる?

 

【佐々研究主幹】 そうです,セルが非常に大型になりますし,バウンダリーを作るのも非常に大変になりますので……。

 

【長谷川委員】 分かりました。

 

【山口主査】 ほかにはいかがでしょうか。
では,どうもありがとうございました。
ちょっと気になったのが,先ほどの長谷川先生が御指摘のところの高温,低温,ミキシングするところはないかというお話がありましたよね。ないように心がけているとはいえ,熱交換器もあるし,液体金属では相当苦労している問題なので,それは踏まえて検討していただいたらいいかなと。

 

【佐々研究主幹】 分かりました。

 

【山口主査】 もう一つ,峯委員がおっしゃったので,要は冷却材バウンダリーをどこに採るのかという話ですよね。冷却材バウンダリーを,貫通する部分の安全評価上の考え方をどうするか,それは多分,今まで余り検討のあれになかったかもしれないですが,少し意識しておかれた方がいいかなと思いますので。

 

【佐々研究主幹】 ありがとうございます。

 

【峯委員】 結局,あれですよね,ターゲットも着脱,先ほどちょっと溶接ともおっしゃいましたけど,どうするかですね,着脱は必ず出てくるところで……。

 

【佐々研究主幹】 実はここの話はちょっとまだ検討が浅くて,今回は控えさせていただいたのですが,非常に深刻だと思っています。特に温度を上げるということが非常に大きな負担になりますので,その辺を踏まえた上でどうするのがいいかというのは,もう少し検討させていただきたいと思います。

 

【峯委員】 結局,「もんじゅ」でもフランジのバルブも全部リップシール溶接という,全部溶接して,何かのときにはそれを切断してやるということをせざるを得ない,一次系はですね。

 

【佐々研究主幹】 ええ,フランジを使えば同じことになるというのは分かってはおります。そうせざるを得ないのも体感してきております。

 

【山口主査】 是非よろしくお願いしたいと思います。

 

【佐々研究主幹】 はい。

 

【山口主査】 それでは,どうもありがとうございました。
続きまして,TEF-Pの方に移りたいと思います。
TEF-Pは資料8-3の資料で,説明をお願いいたします。

 

【辻本リーダー】 それでは,TEF-P検討の進捗状況について,御説明させていただきます。
2ページ目ですけれども,TEF-Pにつきましては,要素技術開発,それから施設概念検討,この2つについて御説明させていただきます。
TEF-Pは,もともと原子力科学研究所にあります板状燃料を使った高速炉被ばく臨界実験装置(FCA)という既存の施設をベースにしておりまして,最も違う点は,ピン状のMA燃料を使うという部分になっております。したがいまして,要素技術開発は,このピン状のMA燃料を取り扱う施設,装置についての検討を中心に行っております。それから,施設概念検討に関しましては,新規制基準に対応いたしました施設・装置の概念検討を実施しているところであります。

それでは,各要素技術開発の現状について御説明させていただきます。
まず,3ページ目ですけれども,MA燃料の自動装塡装置,試験装置というものを昨年度整備いたしました。この装置を使いまして,実際に線量の高いMA燃料を模擬したピンを遠隔で装塡,それから取り出しできるということを確認しております。
まず,ステップ1から4までありますけれども,ステップ1で,カメラを用いまして装塡する部分を撮影いたしまして,必要な場合は位置補正を行います。それから,燃料ピンが,模擬燃料ピンですけれども,6本入りましたカートリッジを装塡試験装置に取り込みまして,実際の装塡装置まで移動,それからピンを1本ずつ所定の位置に入れるということを一連の動作でできるということを確認しております。この試験装置を用いた試験結果を実際の装置の設計に反映していきたいというふうに考えているところであります。また,この試験で得られました知見を反映いたしまして,改良していくということも考えているところであります。
それから,4ページ目ですけれども,MA燃料識別試験装置ということで,遠隔で取り扱う関係から,これらの装置につきましては目視で識別が困難であります。したがいまして,これも自動で識別するということを考えております。また,今までFCAで使っておりました板状燃料につきましても今まで目視で識別しておりましたが,これもできれば一緒に自動で識別するということを考えております。
そこで,まずMA燃料ピンの表面に2 mm角の二次元バーコードを刻印しまして試験を行いました。その結果,このピンが回ってしまうと場所によっては読み取れないということがありまして,これを改良するために,もっと小さな0.2×1 mmという非常に小さな二次元バーコードを燃料ピンの4方向に刻印することによって,これで完全に識別することが可能だという結果を得ております。
また,ここには示しておりませんが,板状燃料に関しましても様々な変動,これは板状燃料は識別するためにいろんな色を塗っていますけれども,このバックグラウンドの色によって読み込みエラーが起きないようなノウハウを得ておりまして,これらについても識別可能な見込みを得ております。 実際,この装置に関しましては,上の自動装塡装置と組み合わせて実機で扱うことを想定してありますので,この装置をもとに,試験結果をもとにしまして,実機の設計を進めていきたいというふうに考えているところです。

次に,5ページですけれども,MA燃料は非常に発熱量が高いということで,これを適切に冷却することが必要になってきます。そこで,集合体1本分の模擬した集合体を製作しまして,その中にヒーターを埋め込んだ燃料ピンを設置しまして,そこを強制冷却するという試験を行いました。このヒーターの発熱は最大10ワットまででして,その間で可変,出力を変更できるような仕様になっております。
試験結果を右のグラフに示しておりますけれども,様々なピンの出力に応じまして試験した結果,かなり解析で予測した精度と実験結果は非常によく合っているということが得られましたので,TEF-Pの設計に向けて非常に有用なデータが得られたというふうに考えております。 今後は,今回行いました試験は反射体部分も全て一様なピンで模擬しておりますけれども,反射体部分をブロックで模擬したような試験を今後行っていくということを考えております。
それから,6ページですけれども,TEF-Pで使いますMA燃料に関しましては,経年化しましたMOX粉末からアメリシウム(Am)とプルトニウム(Pu】を取り出しまして,それをもとに燃料ピンを製作するということを考えております。現在,原料となる粉末を取り出す工程,それから粉末から燃料ピンに加工する工程の概念検討を行っておりまして,必要な基礎データの収集を今後していこうというふうに考えているところです。
次に,TEF-Pの概念検討ということで,冒頭に申し上げましたように,このTEF-Pに関しましては新たな規制基準に対応した施設ということで検討を進めております。TEF-Pを建設する予定の原子力科学研究所につきましては,設計地震動(Ss)と,それから津波遡上高さというものが評価されております。
Ssに関しましては約900ガル,それから津波遡上最大高さは約13 mということで評価されております。この津波遡上高さが最大13 mになる地点がこのTEFを建設する予定地ということになっておりまして,遡上してきた津波の影響を抑えるために,人工的な岩盤を設置しまして敷地をかさ上げするということを現在考えております。東京湾平均海面(TP)8.8あるいはTP18まで人工岩盤を設けて敷地をかさ上げした場合,980ガルの地震動に関しても地盤安定性を満足できるという結果を得ております。
今年度は,この敷地に対しまして大深度のボーリング調査を行いまして,この敷地の直下に活断層等がないということを確認したいというふうに考えております。
次に,8ページがこの施設の耐震重要度分類ということの検討の結果となります。耐震重要度分類を検討する場合には,原子炉の安全を担保する上で重要な基本機能である停止,冷却,閉じ込め,この全ての機能が喪失した場合を想定しまして,敷地境界での一般公衆への幾つか被ばく線量を評価する必要があります。
まず,停止機能の喪失ですけれども,この装置につきましては,最大出力500ワット程度と非常に低出力のものになっておりますので,仮に停止機能が喪失して運転が継続した場合でも,これによるFPの蓄積や崩壊熱等は無視できるというふうに考えております。
次に,冷却機能の喪失ですけれども,発熱量の大きいMA含有燃料を扱う関係から,冷却は必要ですけれども,これが仮にとまった場合でも最大温度は400度を下回るという結果を得ております。
それから,閉じ込め機能の喪失に関しましても,想定しております年間積算出力の2倍を想定した場合でも,一般公衆の被ばく線量は5 mSvを下回るという結果を得ております。
これらの結果から,TEF-Pに関しましては,今のところ耐震クラスはBクラスで検討できるという見込みを得ているところであります。

次に,9ページですけれども,先ほど申しましたように,燃料の冷却がとまった場合の最大温度は400度というふうに申しました。その際でも燃料の健全性が確保できるということを検討する必要があります。ここで考えなくてはならないのは,TRU核種のα崩壊で生成されるヘリウムの蓄積になります。この炉は低出力ですので,FPの蓄積等は考える必要がありませんが,このように燃料中に生成されるヘリウムが製造後30年たって,仮に全量,すき間に放出されたという条件で,許容限界温度というものを検討しました。
その場合,まず被覆管の厚さをパラメーターにいたしまして被覆管にかかる内圧を評価したところ,例えば1.0 mmの被覆管厚さであれば600度の温度によっても約120 MPaという応力がかかることが分かりました。これに対しまして,想定しております材料の破裂試験結果を文献で調べましたところ,例えば100から200 MPaでは破裂温度は900度から1,000度という文献の結果が得られておりますので,ほぼ400度であれば被覆管の破裂の心配はないという見込みでおります。
ただし,この文献での調査結果は,加熱温度が1秒当たり5度というかなり大きなものになっております。一方で,TEF-Pは解析の結果では1秒当たり約0.04度と,この文献の結果よりも100分の1程度遅い加熱条件となっております。材料に関しましては,加熱速度が低いほど厳しいということが分かっておりますので,今年度はこの加熱条件に合わせた被覆管材料の破裂試験を実施する予定であります。
それから,10ページがこの施設における核セキュリティー上の概念検討の結果であります。原子力機構の中に,核物質防護の専門家も含めましてこの検討チームを立ち上げまして,IAEAの最新ガイドラインの要求を満たすような敷地検討を行いました。これに関しましては,関係機関との協議を行いまして,ほぼこのコンセプトで大丈夫ということを得ております。余り詳しい図は,核セキュリティーの観点から載せるわけにはいかないのですけれども,このTEF-Tには大分その影響を与えていますけれども,何とかTEF-T,TEF-Pともに敷地内におさまるような概念を構築することができております。
最後になりますけれども,国内外との研究協力ということで,炉物理・核データに関しましては,まず国内機関といたしまして,京都大学原子炉実験所と共同でADSを模擬した実験を行うことを計画しております。京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)は今,新規制基準の適合性確認を行っている最中でありまして,これが終わり次第,ADSを模擬した実験を行うことを考えております。
それから,国際協力といたしまして,OECD/NEAの専門家会合で,MAの積分実験データを国際的に収集するという計画を検討しておりまして,MA核種の反応率測定ですとか,試料の照射実験について国際的に共同実験を行うことを今検討している最中であります。こうしたデータは,ADSのみならず高速炉でのMA核変換にも非常に有用なデータだというふうに考えております。
平成28年度以降ですけれども,要素技術開発に関しましては,これまで用いた試験装置を用いた試験を継続するとともに,試験結果を用いた装置改良あるいは装置設計の反映を行っていきたいというふうに考えております。
また,TEF-Pに関しましては,今年度,大深度ボーリングを行った後に,平成28年度はグリッドボーリングを行って,敷地の安全性等を確認したいというふうに考えているところです。
TEF-Pに関しましては,まだ安全性に関するデータを収集中のところはありますけれども,得られたデータに関しましては,学協会等の意見聴取の場を設定いたしまして,外部からの意見も参考にして,概念検討を進めていきたいというふうに考えております。
以上で説明を終わらせていただきます。

 

【山口主査】 どうもありがとうございました。
それでは,質疑応答に入りたいと思います,御質問,御意見等,よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。長谷川委員,どうぞ。

 

【長谷川委員】 9ページの,ちょっと説明がよく分からなかったのですけれども,昇温温度が小さい方が主応力が大きくなるというのはどういう意味ですか。


【辻本リーダー】 応力は変わらないのですけれども,破裂温度が下がる方向に行くというふうに聞いています。同じ応力でも,昇温温度が低い方が破裂するときの温度が低いというふうに聞いております。

 

【長谷川委員】 というと,破裂するための元々の圧力というのはトレスカ応力ですよね。

 

【辻本リーダー】 はい,そうです。

 

【長谷川委員】 これが,ゆっくりな方が早く破裂するというのは,低温でその圧力が上がるということですよね。そもそも破裂する原因,もともとの駆動力というのは内圧ですね。

 

【辻本リーダー】 はい,そうです,内圧です。

 

【長谷川委員】 これがゆっくり上がった方が内圧が高くなっていくのですね。

 

【辻本リーダー】 いや,内圧は変わらないけれども,材料として強度が維持できなくなるので,破裂する温度が早くなると。

 

【長谷川委員】 ちょっと,ゆっくり上がる,昇温速度がゆっくりな方が先に破裂する,何となくしっくり来ないので,現実にそうなっていると言われると,そうかなというふうになるのですけれども,メカニズムがよく分からなくて,なぜそうなるから,逆に言うと,そうならないようにするためにはどうしたらいいかというのは,メカニズムの方から逆に分析できると思うのですけれども,同じ内圧のものがあって,片方が急激に加熱,急速加熱,片方はゆっくり加熱,だけど,ある温度まで上げると,温度だけのトレンドで行くと,こっちの方が低温でバーストする。

 

【辻本リーダー】 はい。

 

【長谷川委員】 ちょっと,材料からすると物理的なイメージがよくつかめないのですが。

 

【辻本リーダー】 実際,この非常に低速の試験を今回やりますので,実際この5度/secの場合と比較して,実際の試験結果との比較で知見は得られるとは思っています。

 

【長谷川委員】 実際にはそちらが現実に起こり得るのですか。

 

【辻本リーダー】 はい,解析上は非常にゆっくりということになっていますので。

 

【長谷川委員】 より破裂しやすい条件が現実には想定されるということですね。

 

【辻本リーダー】 そうですね,はい。だから,その実際の条件に合わせた試験を今年やろうということで考えています。

 

【長谷川委員】 それは,9ページの右にあるような,これがそもそも同じような目的で取られたのではないですか。

 

【辻本リーダー】 これは,高速炉の1次冷却材流量減少時反応度抑制機能喪失事象(ULOF)事象の場合を想定した試験で取られたものです。

 

【長谷川委員】 その際にゆっくり上げた方で壊れるというのは,同じ条件でそのデータを取ったということですか。

 

【辻本リーダー】 はい,そういうふうに聞いております。これは5度ですけれども,もっと早いものもあってですね。

 

【長谷川委員】 より現実にはシビアな方になるというのであれば,それは確かに取らないといけないなと思いますけれども,そこのところの機構として,何かよくこの説明だけでは分からないと思いまして。

 

【山口主査】 いずれにしても,データを取られる際にはメカニズムも含んで検討されるということになりますが,高速炉の場合というのはULOFがやっぱり関心の的なので,ちょっと違う話になると思いますけれども,メカニズムとかそこも含めてデータをとって解析してください。

 

【辻本リーダー】 はい,分かりました。

 

【山口主査】 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ,矢野委員。

 

【矢野委員】 余り常識がないので,聞きたいのですが,TEF-Pの建物のかさ上げをして,津波がうんぬんという話がありましたですね。

 

【辻本リーダー】 はい。

 

【矢野委員】 これというのは何を満たしていたいのですかね。津波が来て……。

 

【辻本リーダー】 津波が来て,その津波が原子炉建屋内に入らないようにということで考えています。

 

【矢野委員】 それは,ただ単にそれだけですか。

 

【辻本リーダー】 ただ単にというか,そういうことです。

 

【矢野委員】 入らないようにするというのは,入らないような建物にすればいいというわけにはいかないのですか。

 

【辻本リーダー】 水密構造ということですか。

 

【矢野委員】 はい。

 

【辻本リーダー】 どちらが適切かということはありますけれども……。

 

【矢野委員】 どちらが高いか安いか。

 

【辻本リーダー】 はい。どっちが高いか安いか,あるいはどっちが安全をより維持できるかということだと思いますけれども,この施設に関しては,今のところ,敷地をかさ上げした方がいいというふうに考えております。

 

【矢野委員】 それはそれで終わりでして……。

 

【山口主査】 私が言うのもあれですが,ドライサイトという概念が一つありまして,敷地の中に水を入れないと,その上で建屋の水密化とかですね,これは多分,かさ上げというのは,ドライサイトを達成するという趣旨で……。

 

【矢野委員】 いや,これは全然話が違うのですが,何で原子炉というのはああやって上にあるのかなというのが,正直よく分からない。何で地下に作らないのだろうというのが私の中にずっとあるものですからね,それが常識なのだろうとは思いますが……。加速器は地下に作りたがりますからね。

 

【藤田委員】 確かにそうですね。

 

【矢野委員】 いやいや,常識が違うので……。
それから,次のKUCAですけれども,これはもう既に何か実験が始まっているのですか。この施設は,システムというか。

 

【辻本リーダー】 11ページの……。

 

【矢野委員】 ここにちょっと,臨界体というのが。

 

【山口主査】 臨界集合体ですか。

 

【矢野委員】 ええ,KUCA,ネプツニウム(Np)とかAmの話があるところ。

 

【辻本リーダー】 Np,Amの核分裂率の測定は,今までもKUCAでやったことがあります。ただし,こうしたADSを模擬したような体系ではやったことがないです。

 

【矢野委員】 これが始まると言っているのですかね。

 

【辻本リーダー】 はい。実際,KUCAで今まで使ったことないLBEを実験に使ってこういう体系を構築しまして,その場で実験をやるということを考えています。

 

【矢野委員】 これはお金のかかる話なので,一概に言えないのですけれども,プロトンのビームのエナジーを例えば600まで上げたとしますよね。そうすると,J-PARCのTEF-Pの実験とエナジーとしては同じエナジーになりますよね,プロトンエナジーは。

 

【辻本リーダー】 J-PARCは400 MeVです。上げたとすれば,プロトンのエナジーとしては同じになります。ただし,何が違うかというと,KUCAはもともと熱中性子体系で高速中性子体系は構築することができないのです。もともとADSは高速中性子体系と考えていますので,これはあくまでTEF-Pに至るまでの前段階の実験だというふうに我々は考えています。

 

【矢野委員】 なるほど,分かりました。

 

【山口主査】 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ,藤田委員。

 

【藤田委員】 6ページですけれども,今,MA燃料としてはAmとPuの混合酸化物を想定されていますか?

 

【辻本リーダー】 はい。

 

【藤田委員】 ほかのMA燃料というのは今回,作る予定はないということでしょうか?

 

【辻本リーダー】 今のところAm,Puしか考えていないです。理由は幾つかありまして,まず,Am-241に関しては,非常に核データのライブラリごとの差が大きいというのがありまして,主な核データ起因誤差の要因になっているというところがあります。それから,Npに関しましては,ロシアで既にBFSを使った実験がありまして,そこで数10 kg規模のNpを使った実験という実績があります。一方で,Amを kg単位で使った実験というのはないということもありますので,今のところAmをメーンに考えております。

 

【藤田委員】 実際にキュリウム(Cm)は半減期が短いから,やらないということでしょうか?

 

【辻本リーダー】 Cmを使うと,線量とか発熱が非常に高くなって,多分この施設では無理になってしまうので……。

 

【藤田委員】 分かりました。

 

【山口主査】 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。 まだまだこれからというところなので,幾つか御意見,御質問,出ましたけれども,順調に進みますよう,特にあれですよね,最後,長谷川委員から御指摘のあった安全性のところの話は,多分しっかりやらないと非常に大変だと思いますので,よろしく。

 

【辻本リーダー】 はい。

 

【山口主査】 では,どうもありがとうございました。
続きまして,群分離・MA燃料製造技術についてでございます。
こちらは資料8-4の資料で,同じく原子力機構から御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

 

【森田副センター長】 森田から御説明申し上げます。
2ページ目でございます。群分離技術,MA燃料製造/乾式再処理技術の取り組み状況ということで,まず群分離技術に関しましては,基本的な目標は,高レベル廃液から溶媒抽出法でMA分離プロセスを作るということで,これは再処理技術の知見を活用できるということであります。
その方法ですが,具体的にはMAと希土類元素(RE)の一括回収と,両者の相互分離の2段階分離とすると。最初の一括回収に関しましては,テトラドデシルジグリコールアミド(TDdDGA)原子力機構という抽出剤を用いる方法で,連続抽出のトレーサー試験を行って,確立プロセスを作るめどができております。次は実廃液試験と考えております。
今回,特に御報告申し上げますが,相互分離工程では,新しい抽出剤が必要であったということでありますが,ヘキサオクチルニトリロ三酢酸トリアミド(HONTA)という抽出剤が非常に有効であるということを見いだしまして,トレーサー試験を開始したところでございます。これを更に加速したいと考えております。
それから,2つ目,MA燃料製造/乾式再処理技術開発ですが,高濃度のMAを添加して効率的に核変換できる専用の燃料サイクルシステム技術を確立するということが目標であります。燃料としては窒化物を現状,選択しておりまして,これは高含有のMAが可能であるということ,熱特性がすぐれているということによります。MA燃料の再処理に関しましては,溶融塩/液体金属を用いた乾式法を選択しておりまして,これは高濃度のMAの取扱いができるということによります。
燃料に関しては,窒化物の燃料ペレット作製の基本技術を確立しまして,今後は照射試験を目指して,遠隔操作による燃料ピン製造技術の検討,製作を進めていきたいというふうに思っております。それから,燃料に関して,いわゆる熱特性データ取得に加えて,機械特性データ取得を開始しまして,これらのデータを用いて燃料ふるまい解析コードに反映をしていくということでございます。
乾式再処理では,溶融塩電解及び電解回収物の再窒化について,PuやAmを用いた実験室規模試験によって技術的な成立性を確認しております。さらに,工学化に向けて,工学規模のコールド試験の機器を開発しております。模擬試料による実験室規模を準備しております。 次のページ,3ページですが,ほかの分野でもありましたが,他分野との連携でございます。
群分離技術に関しましては,MAを分離する技術ということでは,高速炉による均質型概念と共通技術でございます。ということで,我々原子力基礎工学研究センターと次世代高速炉サイクル研究開発センターと連携しまして,我々の方では基盤的な抽出剤の開発ですとか溶媒,こういったものの知見を生かしてもらう,それから次世代高速炉の方では,遠心抽出器とプロセス機器の開発に非常に知見がございますし,プラント概念検討,工学的知見には多くのものを有しておりますので,これらをお互いやりとりして,最近特に,合同技術検討会ということで技術的な検討をざっくばらんにやる会も作っております。
さらに,基盤的なところでは,量子ビーム応用研究センターですとか,機構外,大学等との連携で抽出剤の錯体構造,抽出メカニズムの理解,こういったことで抽出剤の改良につなげていきたい,それから放射線分解挙動,これから検討を進めていく上での基盤を連携してやっていきたいと,そういう状況が今できております。
それから,国際協力では,日米民生原子力研究開発協力の作業部会(CNWG)への参加,それから日仏協力における活動の具体化を考えております。
燃料製造開発技術に関しましては,高速炉均質型概念と補完関係ということで,我々は窒化物・高含有MA燃料ということで考えておりますが,酸化物・低MA含有の燃料と補完し合って,更に燃料の取扱い技術や工学技術に関しましては高速炉燃料の方での技術開発が進んでおりますので,こういった知見も利用させてもらいながら進めていくというふうに考えています。
窒化物燃料の乾式再処理に関しましては,先行している金属燃料の再処理の知見を活用していくということで,電中研や米国との情報交換を行っております。
それでは,具体的に技術開発の状況でございます。
群分離に関しましては,中間取りまとめの指摘として,MAをランタノイドとともに抽出する工程以外の開発段階が低い,これはつまり,先ほど御説明しました第2段階の相互分離プロセスの開発段階が低いということでございますが,これに関して今回,かなり進展がございました。それから,中間的な論点の取りまとめのもう一つは,トレーサー量を超える濃度のMA溶液によるデータ取得が必要,実廃液試験が必要ということでございました。
これまでの成果としまして,第1段階の一括回収プロセスに関しましては,TDdDGAという抽出剤で,条件の最適化も進めまして,模擬高レベル廃液からAmをほぼ完全に回収するということに成功しております。

それから,第2段階の相互分離プロセスでは,HONTAという抽出剤を見いだしたということで,右側の図,水色の枠の中に構造がございますが,アミドが3つついた構造であります。分配比の硝酸濃度依存性の図が中央にございますが,Am,Cmの分配比が,硝酸濃度0.1 mol/L 程度のところで希土類元素と差があるということで,ここで分離ができるということを見いだしたということでございます。このHONTAという抽出剤は,試験条件にも書きましたとおり,ドデカンに溶解し,なおかつ硝酸系で他の試薬,錯形成剤等を使わずに分離できるという大きな利点がございます。硝酸濃度0.1 mol/Lというのは低いとも言えるのですが,第1段階の一括回収プロセスでの逆抽出,対象がREとMAですが,これを低い硝酸濃度の溶液で行いますので,その溶液を直接使うことができるということでございます。

現在の状況ですが,この相互分離プロセスに関しましては,MAトレーサーを使った連続抽出試験を始めたところでございます。
今後の展開として,一括回収プロセスに関しては実廃液試験を今年度中に実施する予定,それから相互分離プロセスに関しましては,来年度に実廃液試験を行いたいというふうに考えております。この結果,MA試料の回収にもトライしようと。それから,実廃液試験が必要なのは間違いないのですが,やはり実廃液試験では得られる情報に限りがあるということで,より詳細な検討を行うために,高濃度のMAを用いた,今はトレーサー量のMAでの実験ですが,高濃度のMAを用いた実験を行う必要があるということで,このために重遮蔽グローブボックスを整備したいという,そういう計画を持っております。こういったことで,平成31年度までにこのMA分離プロセスの主工程を確立したいということ,そういう計画でございます。
次,5ページ,MA燃料製造/乾式再処理技術の1番目ですが,左側の枠,燃料ふるまいコードを作るということ,そういう目標でございます。これに関して,軽水炉の燃料ふるまいコード,FEMAXI-7というものを窒化物燃料用に改良するということを進めておりまして,とりあえずの試計算ができる段階まで行っております。例えば,中央の図ですが,これは燃焼度が上がるにつれてペレット中心温度が下がるという現象をシミュレーションした結果でございます。こういったことを踏まえ,今後としましては,更に物性データを取得して,これをコードに反映していくということ,それと既存の照射試験データが少しございますので,これと比較して,モデルの改良なりのことを進めていきたいというふうに思っております。
右側ですが,原理実証段階に移行するためということで,MAの調達,燃料製造設備の整備,実用燃料ピンの設計を行うということでございますが,これまで工学規模の燃料製造法の開発に向けたコールドの模擬試験を実施しておりまして,こういったことも踏まえ,燃料ピンの設計検討を進めているということでございます。現在の状況として,粉末の飛散を防止できるゾルゲル法による酸化物/炭素混合物の製造,これは酸化物から窒化物に炭素熱還元で行う,そのための原料ということになるわけですが,こういう試験を行っているということでございます。燃料ピン,照射に向け,ピンの製造を行う必要があるということで,軽水炉燃料棒の挙動を参考に調査中でございます。こういったことを踏まえ,実用の燃料ピン設計を進めていきたいというふうに考えております。
次,6ページですが,相当量のMAを使用する物性測定やサンプル照射試験等を効率的に進めるということで,熱物性測定装置に加えまして,新たに機械物性測定装置を整備しました。中央にある写真でございます。こういうことで測定を進めており,データベースの作成に向け,他機関との連携も含めて検討を進めているということでございます。今後の展開として,更に熱物性や機械物性のデータベースを拡充するとともに,微細組織構造のデータの取得も進めていきたいということでございます。
その例としましては,6ページの右上にあります熱物性測定結果の例ということで,時間がたつにつれ熱伝導率が下がっている様子がございますが,これは自己照射損傷の影響でございまして,こういったことをよりメカニズムとして分かるためには微細組織構造のデータ取得を必要とするということでございます。
こういったことも含め,サンプル照射試験に向け準備をしていきたいということでございます。
7ページ目が,最後でございますが,乾式再処理に関する状況でございます。窒化物の乾式再処理の工学化に向けてということで,機器開発とそれからMAを用いた試験の実施ということでございます。これまでの成果といたしまして,処理速度の向上を目指した電解装置あるいは電解回収物再窒化装置の考案・製作を行っております。中央の絵で,上の方が電解装置の試験装置の絵で,中央のものが電解回収物の再窒化装置でございます。こういった装置で,データ取得を進めるとともに,工学機器の大きさを検討するということで,発熱を考慮に入れた概略評価を行っております。今の実験を進めるとともに,こういったこと,得られたデータをもとに,装置あるいはプロセスの改良,最適化を進めていきたいというふうに思っております。
右側でございますが,中間的な論点の取りまとめの指摘事項として,連携をしっかり行うようにということでございます。金属燃料の乾式再処理で実績のある電力中央研究所さんと共同研究を行っており,情報交換も実施しております。日米の原子力開発協力,CNWGでは,高速炉分野の一部分として情報交換,意見交換を行っております。これを更に継続し,更に研究開発に活用していきたいというふうに考えております。
以上でございます。

 

【山口主査】 ありがとうございました。
それでは,ただいま御説明いただいた点,御質問などありましたら,どうぞお願いいたします。藤田委員,どうぞ。

 

【藤田委員】 3ページ目の2番目,MA燃料製造技術のところですけれども,これは一応,ADSの方は高速炉の酸化物をメーンにしていますけれども,窒化物って結構,金属の物性に近いですよね。

 

【森田副センター長】 はい。

 

【藤田委員】 もちろん,下の方で,乾式再処理での挙動も同じような形になるのかもしれないですけれども,金属燃料とも情報交換をされた方がいいかなと,されているのかもしれませんけれども,それは。


【森田副センター長】 はい,一部は情報交換しておりますけれども,より……。


【藤田委員】 それから,4ページ目ですけれども,原子力機構さんは非常に新しい抽出剤を開発する能力を,世界でもすばらしい能力を持っていると思うのですけれども,全く全然違う抽出剤が出てきて,それというのはやっぱり,ここに直接じゃなくてもいいのですけれども,ほかの抽出剤との比較評価をしたデータベースが欲しいです。定性的にこのHONTAがいいと言われても,例えばCyanexと比べてどうかとか,ほかの相互分離の抽出剤というのは世界中で報告されているのに,いきなりHONTAが出てきて,いいですと言われても,何がいいかを説明していただいた方が良い。いろいろな物性も比較して,これがいいですよということを入れていただきたいと思います。

 

【森田副センター長】 説明が不十分でありましたが,様々な観点を考慮して……。

 

【藤田委員】 そうですね,定量的な何か分かるデータベースがちょっと欲しいと思います。
それから,もう一つは,私自身がこういう分野の開発をする際に,やっぱり今ですと新しい抽出剤の開発も,いきなり,最初は模擬廃液でするのですけれども,次にある程度の,模擬のものを使ってするのではなくて,非常に少量でいいので,実廃液とか実物を使ったスルー試験をしてみて,多少量を多くしないと,後で量を多くしたときにトラブルがあったりしますよね。ですから,予備研究の中に,この場合ですと,実廃液を使った一括回収,相互分離というものが,トレーサーでスルーしてやっておかれた上で,次の割と量の多い,模擬で構わないのですけど,そういう研究開発のステップをされた方が良いと思います。例えばFaCTでされた,いわゆる晶析で,少量で実廃液を使っていれば,Puにセシウム(Cs)が,晶析の中に溶け込むというようなことが最初の時点で分かったと思います。全部大きなスケールで試験をしてしまって,最後になってから,PuとCsが一緒に晶析の中に入って,このプロセスはそこが課題でしたというどんでん返しがあったので,私はその点をとても心配していて,いいものだったら,最初のこの,もうトレーサー若しくは基礎試験のところでスルーしておかれた方が,後での手戻りがない,それをちょっと感じたのですけれども,そこはしていらっしゃるのでしょうか? 

 

【森田副センター長】 まず,トレーサー試験のMA以外の部分に関しては,もう実液と同じような組成及び濃度の溶液を使った試験を行っています。 

 

【藤田委員】 それはスルーでしていらっしゃる?

 

【森田副センター長】 はい,今,連続試験を始めたところです。MAは,ですが,取扱量の制限があって,またトレーサー量しかないのですが,それを補うために重遮へいグローブボックスで試験をやりたいというふうに考えています。
一方,実廃液の試験ですが,実廃液の連続抽出試験を今年度に行おうとしておりますが,その前にバッチの試験を,やっぱりセルでないとできないのですが,少量の数 mLの実廃液を用いて……。

 

【藤田委員】 少量のものをきちんとやられる?

 

【森田副センター長】 ええ,実際に接触させるような試験を,その連続試験に先立ってやることにしております。

 

【藤田委員】 それをちょっとこの中に入れておいていただくと,安心なのですが。

 

【森田副センター長】 はい,考えてやっているつもりではありますが,すみません,説明が不十分だったかもしれません。

 

【山口主査】 よろしいでしょうか。

 

【藤田委員】 もう一つ,すみません。最後のページの,電解精製した再窒化は,液体カドミウム(Cd)の中に窒素ガスを吹き込んでいるのでしょうか?

 

【森田副センター長】 Cd合金を加熱しつつ窒素を吹き込んで,そこで反応させて,Cdは金属になった後に蒸留,揮発して冷やして採るという……。

 

【藤田委員】Cdは回収するのですね。

 

【森田副センター長】 はい。

 

【山口主査】 ありがとうございます。
先ほどの藤田さんの御指摘で,これまでの成果と検討の現況と今後の展開という形で整理されていますよね。少しそれの中が,全般的にやった項目がぽんぽんと並んでいる感じがして,もう少し狙いのようなところを含めていただけると,多分,専門でない方も大分分かってくると思いますので,少し工夫していただいて,あと,もしできましたら,今の藤田委員の御指摘なんかは,次回でもよろしいかと思うのですが,それらを含めて考慮した形で,ちょっと御回答なり,資料の中に入れていただくようにお願いできますか。

 

【森田副センター長】 はい,分かりました。

 

【山口主査】 いかがでしょうか,ほかに。どうぞ,長谷川委員。

 

【長谷川委員】 このAm,Puを結構使ってピンを作るという,これはJAEAさんの現有施設そのままでできる話ですか。

 

【森田副センター長】 TEF-P用の燃料という意味ですか。

 

【長谷川委員】 はい。

 

【森田副センター長】 いや,今の施設ではできないです。新たな施設を作る必要があります。

 

【長谷川委員】 それについてはまだ何か,機構さんとして,そういうのを新たに作るとなると,また結構大変な話で,それはこれが終わって,実際に施設建設が結構あるなというときに,その話が出てくると。

 

【森田副センター長】 燃料製造施設の概念的な検討は進めております。それも,高速炉の方と,あと,非常に経験のあるPu燃料センター,こちらと合同でやって,まだ概念だけの段階ですが,検討は進めております。

 

【長谷川委員】 実際作るとなると,これはまたでかい,特にこういうものを大量に使うというと,きっと高価な施設になるでしょうね。

 

【森田副センター長】 はい,実際の高レベル廃液なり使用済燃料ではないので,まだその分は楽だとは思いますが,やはりAmを大量に使うという意味では,セル構造が必要だというふうには考えております。

 

【長谷川委員】 AmとPuを大量に使うという,何かそれだけでもリスクが高い気がするのですが,結構大変な施設として,あとは割と,ウランだけならまだともかく,AmとPuをたくさん使って何かやろうというのは,ちょっと慎重に情報を出していかないといけない。

 

【森田副センター長】 はい,核物質防護の問題もあるかもしれませんが,ただ,高速炉の技術開発の経験も使っていけるはずですので,慎重には進めますが,大きなハードルはないというふうには我々は思っております。

 

【長谷川委員】 予算だけの問題と。

 

【長谷川委員】 技術的な問題よりは,そちらの方の問題があると。

 

【森田副センター長】 ええ,まだお認めいただいているものではございませんので,はい。

 

【長谷川委員】 それから,もう一つは,6ページ目で,熱物性測定の結果の例で,窒化物の自己照射損傷で熱伝導率が低下しますよね。

 

【森田副センター長】 はい。

 

【長谷川委員】 1,000時間,大体1年で2割とか落ちている。仮にこういう性質があると,作って,作り置きして,実際に使うのには最低2,000時間ぐらいたってからでないと使えないようにしないと,作ってからの時期によってみんな物性値が違う……。

 

【森田副センター長】 ええ。

 

【長谷川委員】 そういうのでは,大丈夫なのか,あるいはむしろ熱物性の測定から,熱伝導率というのは,私の感覚からいえば高い物性値だと思うのですけれども,やはり全体の均一性のことを考えると,作ってから2,000時間ですから,1年半か2年ぐらい置いたものを実際に使うとか,そういう何か使い方の戦略はどうですか。

 

【森田副センター長】 まず,当然ながら,低くなっても大丈夫な条件で設計するということは間違いない。窒化物の特徴として,熱伝導率がそもそも絶対値が高いというのが,酸化物に比べてありますので,いわゆるコールドフューエルコンセプトといいまして,中心温度をそう高くせずに使えるというふうに考えております。ただ,やっぱり燃料のふるまいを解析するにはこういったような様々なデータが必要だということ,そういうふうに考えているというところでございます。

 

【山口主査】 ほかには何か。どうぞ,峯委員。

 

【峯委員】 この資料8-4の資料は,窒化物燃料の製造に対する研究,御説明でしたが,TEF-Pで装荷する燃料はMOX,酸化物燃料,そのお話は資料8-3の,この前の資料で1枚目に出ているだけですか。

 

【森田副センター長】 はい。

 

【峯委員】 最初のA3のロードマップで見ると,確かにこの資料8-4の資料は左半分のロードマップに向けた御説明ですが,ADSに装荷するAm入りのMOX燃料も,かなりな量の機能を入れるのですか,数 kgとか。

 

【森田副センター長】 Amで20 kg,30 kgのオーダーで。

 

【峯委員】 世界的にもそういうことをやった例はまだないと思いますが,2025年のTEF-Pに向けたAm入りMOX燃料製造の,前の資料で御説明のあったロードマップをもうちょっと詳細化して,ここ10年ぐらいのターゲットは,こちらの方がヘビーな課題じゃないかなと思います。

 

【森田副センター長】 TEF-Pが稼働する最初の段階では,Puを使った系で,MAはしばらく入れないという想定であります。MAを入れるのが,ちょっと今,数字が正確じゃないかもしれないですけれども,2030年ころとか,早くてもそういう時期です。

 

【峯委員】 ロードマップはそのぐらいに引かれていますね,MA調達というふうな。

 

【森田副センター長】 はい。

 

【峯委員】 でも,これは早いですよね。こちらの窒化物燃料はもっと遅いのではないですか。

 

【森田副センター長】 はい。

 

【峯委員】 2040年とか50年とか,基礎研究からずっとやられて。

 

【森田副センター長】 はい,そのとおりです。ですが,先ほどもちょっと申し上げましたが,やはり酸化物燃料ですので,現在の技術の延長線上にあるという,遮蔽の問題とかいろいろございますが……。

 

【峯委員】 であれば,例えばMOXの酸化物燃料は原子力機構の高速炉部隊がメーンでやられるのであれば,それはそれで分かるのですが,包括的アクチニドサイクル国際実証(GACID)計画というのをフランスとか日米,あれもまだペレットレベルしか実用化されていないのですが, それをこれからやる。
Amをかなり大量に集めて抽出するというのは,これから結構大変だと思うのですけれども,もうちょっとそちらの方のロードマップもしっかりやられた方がいいのかなという気がします。

 

【森田副センター長】 検討はしております。

 

【山口主査】 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
先ほど,施設の話もありましたし,前にたしか,既存の施設をどう使っていくかとか,あるいは新しい施設,どういうものがいつごろ必要かとか,そういうのも含めてやっぱり見ないと,こちらの燃料製造とか分離の話とかは,なかなか全体が広いスコープなもので,ちょっと今,長谷川委員や峯委員から御指摘があった部分とか,あるいは藤田委員から御指摘があった部分とか,もう少し全体像が,先ほどのロードマップがあるわけですけど,全体のスケジュール感と,それから技術的なハードルと,それから施設のアベイラビリティーと,その先には予算をどうするかという話が出てくると思うのです。ちょっとそういう資料も1枚入っているといいかなと思いますので,ちょっと工夫してみていただけないでしょうか。

 

【森田副センター長】 はい。

 

【山口主査】 特によろしいでしょうか,そのほか。
では,どうもありがとうございました。こちらも是非順調に進みますよう祈っております。
それでは,以上で,本日の資料は全て説明いただきまして,予定しておりました議題が終了になります。理事の方から,全般を通じてでもコメントなどございますか。特によろしいでしょうか。
では,事務局の方から連絡事項がありましたら,お願いします。

 

【武田室長】 本日はどうもありがとうございました。次回は,昨年も御報告いただきましたが,藤田先生から革新的研究開発プログラム(ImPACT)プロジェクトの進捗状況について御説明いただくというのに加えまして,本日の御議論を踏まえまして,本分野の進め方というような形で御議論いただきたいと思ってございます。また,日程等につきましては事務局から御連絡させていただきますので,よろしくお願いします。
事務局からは以上です。

 

【山口主査】 それでは,以上をもちまして,第8回の群分離・核変換技術評価作業部会を終了いたします。どうもありがとうございました。

 

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研究開発局原子力課放射性廃棄物企画室

(研究開発局原子力課放射性廃棄物企画室)