原子力科学技術委員会 群分離・核変換技術評価作業部会(第5回) 議事録

1.日時

平成25年10月30日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館18階 研究開発局1会議室

3.出席者

委員

山口主査、澤田委員、田中委員、中島委員、長谷川委員、矢野委員、和気委員

文部科学省

田中研究開発局長、増子原子力課長、西田放射性廃棄物企画室長

オブザーバー

上塚日本原子力研究開発機構理事、大井川日本原子力研究開発機構研究推進室長、櫻井理化学研究所仁科加速器研究センター主任研究員

4.議事録

【山口主査】おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから第5回群分離・核変換技術評価作業部会を開始いたします。本日は御多忙のところ皆様、御出席いただきまして誠にありがとうございます。これより議事に入りたいと思います。本日の議題ですが、お手元の議事次第に書かれておりますとおり、「核分裂生成物の核変換について」、「前回作業部会での指摘事項について」、「群分離・核変換技術に関する中間的な論点のとりまとめ案について」、そして、「その他」です。それでは、まず事務局から出欠の確認と配布資料の確認をお願いいたします。

【西田室長】放射性廃棄物企画室長の西田です。出欠の確認についてですが、本日は藤田委員から欠席の連絡を頂いておりますので8名中7名の委員に出席いただいております。これは、定足数である過半数を満たしております。続きまして、本日の配布資料の確認をさせていただきます。まず、議事次第、座席表、資料1「核分裂生成物の核変換データ取得と戦略」、資料2-1「ADS階層型概念関連技術の研究開発段階」、資料2-2「加速器駆動核変換システムによる分離変換技術の開発ロードマップ」、そして、資料3「中間的な論点のとりまとめ案」になります。また、机上配布として内容的には資料3と同じですけれども、前回(第4回)からの変更点を赤字で記した見え消し版を参考で配らせていただいております。配布資料は以上です。なお、欠落等がありましたら事務局までお知らせいただければと思います。資料については以上です。

【山口主査】よろしいでしょうか。それでは、ただいまから議題に入りたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。今回は、理化学研究所(理研)、日本原子力研究開発機構(原子力機構)、事務局の方から資料を用意していただいております。それぞれ説明していただいた後で、質疑・議論をさせていただきますのでよろしくお願いします。最初に議題の1番目、「核分裂生成物の核変換について」です。本日は、理化学研究所仁科加速器研究センターの櫻井主任研究員にお越しいただいております。それでは、櫻井様、資料1について、説明をよろしくお願いいたします。

【櫻井主任】御紹介ありがとうございます。理化学研究所の櫻井でございます。今回は、このような機会をお与えいただきまして大変ありがとうございます。私、通常は原子核物理学というのをやっていまして、基礎中の基礎の関係をやっておりますが、御縁があって核分裂生成物に関係するデータを取得するプロジェクトを立ち上げております。今日はそういった状況も含め、「核分裂生成物(FP)の核変換データ取得と戦略」について、お話したいと思います。何分理学系出身でございますので、委員の方々の意に沿わない不適切な発言するかもしれませんが、そのときには何とぞ御指摘いただければと思います。
最初にFP核変換の意義をまとめています。3.11震災以前、それから以降といろいろ社会が変わってきているわけですけども、3.11以降、過去にも増して核廃棄物の処理問題というものが、かなりクローズアップされてきています。私ども核物理の基礎物理をやっているコミュニティも、こういった核変換の問題に取り組まないといけないだろうと、基礎をやっている研究者の意識も大分変わってきてまいりました。それで、地層処分うんぬんというのも国会でも取り上げられていますけれども、地層処分する前になるべく放射能を低減化できるような方法論、技術とかそういったものを開発する必要が出てきたのかなと思っています。マイナーアクチノイド(MA)の方は、後ろにいらっしゃる大井川室長の方でADS(加速器駆動システム)の議論がなされておりますけれども、FPに関してはエネルギーを取り出せないという理由が多分主だと思いますが、ほとんど手つかずにあったというのが個人的な印象です。
3ページにFP核変換データ取得の必要性というのがまとめてありますけれども、核廃棄物中のコンポーネントというのは、長寿命の高発熱性のFPです。先ほど申し上げたように技術開発とか基盤開発等々は、ほとんど進んでおりません。どういう事情からだと推察すると、こういった物質というのは放射性核種でして、標的にしていろいろなデータを取るのは困難であるため、熱中性子の捕獲断面積というデータはあるが、それ以外のデータがほとんどないというのが現状です。こういった基礎データを取得するということは大変重要でして、例えば原子核物理屋が新しい方法論を開発するかもしれないし、そういった契機を生み出す、いいオポチュニティを生み出すのかなと思います。それから核変換システムそのものをデザインするに当たって、こういった基礎データというのは大変大事でして、エネルギー収支や経済性等を算出・検討することに関して、非常に大事になってきます。
次の4ページ目は、この第2回作業部会の資料2-4より抜粋させていただいたものです。先ほど申し上げましたが、核廃棄物の中で長寿命の核分裂生成物というのが主要な成分を占めるというのを再度強調させていただきたいと思います。
次の5ページですけれども、現状、先端の研究基盤施設というのが日本国内で整備され、またされつつあります。例えば、ADSの核変換実験施設というのが非常に現実的になりつつあるとか、京大の原子炉等々でADS研究が成されています。同時に2007年から、理研でRIビームファクトリー(RIBF)というのが稼働しております。この施設は、全ての元素に対して不安定同位元素をビームとして取り出すということができる施設です。こういった日本国内の施設を利用いたしまして様々な分野の研究者が集い、切磋琢磨して核変換技術の開発に取り組むすばらしい時代にあるのかなということです。
6ページが、理研で我々がどういうことをやろうとしているのかというのをお話したいと思います。平成25年度の原子力システム研究開発事業で、「長寿命核分裂廃棄物の変換データとその戦略」という課題を採択していただきました。この研究開発課題というのは、二つの柱からできております。一つは、ストロンチウム(Sr-90)、テクネチウム(Tc-99)、そして、セシウム(Cs-137)、こういったものをビームにして、それで中性子ノックアウト(中性子による核子放出)反応データという世界初となるデータを取得する。世界初のデータを取ることで、これを呼び水にしてオールジャパン体制というのを少しずつ構築していきたいと思っております。中性子ノックアウト反応だけではなく、いろいろなデータを理研では取得できます。こういったデータの取得計画を詰めるのと同時に、工学的にどういう核変換システムがあり得るかというのと技術目標をまとめて、報告書みたいなものを1年半かけて作ってみたいと思っております。こういう二つの柱からこの研究課題というのは成り立っております。
7ページ目に、理研でどういう実験手法でデータを得ることできるかという特徴を述べてあります。ページの下半分のところに実際の核変換の仕組みを説明した図があります。通常、調べたい原子核であるとか、潰したい原子核というのを標的にして、そこに陽子、中性子、そして、光といったビームを浴びせ倒して、核変換をするというのが普通のやり方です。基礎データを取るという意味では、先ほどから申し上げていますように、理研ではありとあらゆる不安定同位元素というのをビームとして取り出すことができます。したがって、下の図でのビームが上の図では標的になります。こういうのを逆反応と言うのですが、長寿命のFPをビームとして取り出し、それで陽子や重水素とか、そういった標的に当てます。それぞれの標的がどういう意味を成しているのかというのが、右の図にあります。長寿命のFPを陽子標的に当てると、これは順方向では陽子ビームをFPにぶち当てる、そういう反応に対応します。重水素を使いますと、重水素というのは中性子と陽子でできていますので、陽子データと組み合わせると中性子のデータが取得できる。それから鉛(Pb)を重たい金属に当てますとPbの周りに仮想光子という、光の雲がPbの周りに飛び交っているという様相が成り立ちまして、そこをFPが通過すると、その光を吸って壊れるという、光を当てたのと似たような現象になり、そういった基礎データが得られます。
8ページ目ですが、実際に理研の方でどうやってデータを取るのかというスケマティックな図をここに提示しております。理研では、超伝導リングサイクロトロン(SRC)というのがありまして、これは世界最高のビーム強度で世界最高のヘビーイオンのハイパワーRIビームというのを出せる加速器です。そこからウラン(U-238)イオンをビームとして取り出してベリリウム標的に当てると核分裂反応が起こります。Uビームは、光のスピードの70%ぐらいで走っていまして、生成された核分裂片というのも光のスピードの60%ぐらいで走っています。走っているFPの下流側に超伝導RIビーム生成分離装置というのがありまして、それでFP生成物をかき集め、分離してそれをビームとして使うことができます。二次標的というのがありますけど、そこに先ほど申し上げた水素・重水素・鉛標的というのを置いて、さらに、その下流にゼロ度スペクトロメータというのがありまして、これで反応生成物を識別することができます。したがって、最初にFP、例えば、ヨウ素(I-129)が欲しいと言っていただければ、理研でビームとして簡単に作れます。それで作ったビームは二次標的に当てて、I-129がI-128になったというのをゼロ度スペクトロメータで識別できます。I-128になったということはニュートロン(中性子)が1個出たというのを実はちゃんと反応チャンネルを押さえることができる。1個中性子が出た反応だけではなく中性子が2個出たとか、陽子が1個出たといったありとあらゆる反応生成チャンネルというのを押さえることができます。一旦データを取ると、解析するのに一苦労という大量のデータが出てきます。こういった大量のデータを基にして、核変換システムというのをデザインすることが重要だと思います。
9ページですけれども、全国的な推進体制構築の必要性というのをここでうたっております。最近のはやりで、理工連携というのがあります。残念ながら理学系と工学系というのが割とどの分野でもそうなのですが、ちょっと距離が離れている。こういった原子力も原子核に関わる基礎から工学、それから応用、産業まで含めて一気通貫で核変換を議論できるようなプラットホームというのをオールジャパン体制で構築できると、非常にすばらしいというふうに考えています。理研でいろいろなデータが出てきますけれども、それ以外にもJ-PARC、京大原子炉などで出てくるいろいろなデータを総合して、加速器を利用した中性子源がいいのか、それとも核融合炉を使った中性子源がいいのかといったいろいろな議論が、多分これから展開すると思うのですけども、いずれにしてもデータがあれば技術的な目標というのを設定できるので、そういうところから始めていきたいと考えております。
最後に課題をまとめています。FP核の核変換関連研究者というのを一堂に集めて、核変換技術開発というものを戦略的に位置づけるということ。それから研究機関や大学等で行われている核変換データ等、基礎基盤研究のネットワーク作りをする必要があるということ。それから、先端研究基盤施設というのが今、既に国内にありますので、そういった施設を大いに利用していろいろなデータを取得する必要があるということ。最後に、強調させていただきたいのは、ADSも含めて、国際的な先導性というのがとっても大事だと思います。日本というのは原爆を落とされて、それから福島の事故も起こし、日本がやるべき核廃棄物に対するセンシティビティーがこれだけ盛り上がっている国はないのかなと思います。こういったバックグラウンドを生かして、社会に本当に役立つようなサイエンスというのを展開していく必要があると思っています。欧米の人たちは、まだFPの例えば中性子ノックアウト反応みたいなデータを理研流のやり方で取れるというのをまだ気づいていません。ですから、非常にいい契機ですので国際的な先導性を高める上でもMAと同時にFPのデータというのも是非よろしくお願いします。以上です。

【山口主査】櫻井様、どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして御意見や質問を伺いたいと思います。長谷川委員、どうぞ。

【長谷川委員】私、核物理は良く知らないのですけれども、3ページのところに良く出てくる中性子ノックアウト反応という言葉は、これは具体的にはどういう反応でしょうか。

【櫻井主任】中性子ノックアウトというのは、反応記号で書きますと(n, 2n)という反応です。中性子を原子核に打ったときに終状態で中性子が二つ出てくる。中性子を原子核に入れて、原子核の中から中性子をたたき出す。だから、反応の始状態では中性子が1個なのですけど、反応を起こしたあと中性子が二つ出てくる反応です。

【長谷川委員】2nだけなのですか。

【櫻井主任】もちろん、3nとか4nとかもあります。

【長谷川委員】全部をまとめていうのですか。

【櫻井主任】そうですね。そうかもしれません。

【長谷川委員】私たちは良く弾性散乱と非弾性散乱という言い方をしているのですけど、ノックアウト反応というのは今、櫻井主任がおっしゃったようにその非弾性散乱を全部含めていうのでしょうか。

【櫻井主任】非弾性というのは、原子核を壊さずに励起状態に持っていくのを非弾性散乱といいます。ノックアウト反応にもいろいろありまして、ちょっと学術的で、専門的な話になります。

【長谷川委員】逆にいうと、それ1個だけの核反応断面積を出すのか。いわゆる中性子の断面積というものをテーブルで見ると、中性子捕獲、(n, 2n)、それから弾性散乱の全てが出ていますよね。その中で、今おっしゃったような(n, 2n)という一つのやつだけをやるというのか。あるいは、その意味が逆にもっと全部を取ろうとしているのか。そういうところをお聞きしたい。

【櫻井主任】まず、原子力システムの研究課題で一応うたっているのは(n, 2n)ですけど、
同時に(n, 3n)とか(n, np)、あとは水素標的でもデータを取りますので(p, pn)とか(p, 2p)、ありとあらゆるデータを取れてしまいます。

【長谷川委員】申し訳ないのですけど、中性子ノックアウト反応という言葉は今日初めて聞きました。いわゆる原子核工学の教科書に載っていないような言葉ではないかと思います。例えば、中性子捕獲というと皆がすぐ分かるし、ガンマ線吸収もすぐ分かる。中性子ノックアウト反応って、なんだろうと思ったものですから。そこのところは。

【櫻井主任】(n,2n)反応、若しくは(n, 3n)も含めた反応になります。

【長谷川委員】逆にいうと、(n, 2n)だけをやることで、それだけを取り出すことで核変換の大幅に何か変えられるというのがあるのか。あるいは核変換全体であれば、むしろ(n, 2n)や(n, 3n)、いろいろあるわけですけど、全部を取るということの方が包括的ではないかと思います。逆にいうと、もう少し言葉が、工夫があった方がいいのではないかなと思いました。

【櫻井主任】分かりました。ありがとうございます。

【矢野委員】ちょっといいですか。櫻井主任を補足しますけど、ここで(n, 2n)反応だけの話としてありますけど、標的核破砕反応とか、もっとダイナミックに核を壊す反応まで、ありとあらゆる開いている反応チャンネルのクロスセクション(反応断面積)を測定する必要があります。ですから(n, 2n)反応は、そのうちの一つの話ですよね。

【櫻井主任】解析するのに一番ささっとデータが出てきて、論文にできるという意味で中性子(n, 2n)反応というのをシンボリックに出させてもらっています。そのあとで、矢野委員がおっしゃったような、いろいろなデータが出ていますので、シンボリックに(n, 2n)反応というのをここで書かせていただいているだけです。おっしゃるようにありとあらゆるデータが取れると明記した方がいいのかもしれません。

【長谷川委員】核反応の断面積全てと言った方が何かすごく分かりやすいように思えます。

【櫻井主任】分かりました。ありがとうございます。

【長谷川委員】それから、もう一つは、核反応の断面積というのは取った人、機関、そして場所によって桁一つとか二つ違うのは当たり前です。一桁の中にデータが収まっている方が精度良いという世界だと私は認識しているのですけれども、この方法でいうと、今までのものに比べて具体的にどのくらいデータの精度が上がるのでしょうか。

【櫻井主任】これは精度という意味では、かなり良いです。大体、こういった断面積の絶対値測定をするときに我々の標準では最悪、誤差の大きさというのは20%ぐらいです。

【長谷川委員】この方法では。

【櫻井主任】ええ。それは最悪のケースで、頑張ると10%とか5%まで低減できるのですけど、普通に測定して20%は軽くいく、そういう精度が得られます。

【長谷川委員】断面積を測定している人に申し訳ないのだけど、それぞれの人が自分のデータはこの精度で一番正しいと皆さんはおっしゃっていると思うのですけども、具体的に逆反応を使ってこれだけのものに収まったとかというような何かそういうのがないと結局一桁、二桁違うと工学的な経済性にすごく効いてくる。それでほかのものに比べると、これだけ精度の正確さも違いますというのがすごく必要なのかなと思います。何かそれをデモンストレーションするようなものがあると、すごくいいなと思います。

【櫻井主任】ありがとうございます。若干説明させていただくと、8ページの絵で、RIビーム、不安定核の原子核をビームとして取り出すのですが、我々は単位時間あたりにビームが何個きたかというのを精度良く、1個1個測定しています。まず、断面積を出すときにビーム強度はどれだけだったかを正確に押さえておく。それから標的の厚さを測ればいいので、これも正確に押さえられる。反応チャンネルというのも粒子の識別をしますので、例えば標的のFPが止まっていると、そこに中性子を打ったときに反応生成物が何だったかというのを調べるのはすごく大変です。しかし、我々の場合は反応生成物が元気良く実験室系を走っていますので粒子の識別ができるのです。だから、正確に入り口と出口を1対1で完全にマッピングできるというところがポイントです。

【山口主査】ありがとうございます。私もこの8ページのコンセプトというのは非常に魅力的で、先ほど長谷川委員が言われるように、データがスペクトルのような形で得られて、定量性はどうなのかなという同じ疑問を少し思ったところです。それは、今日の御主旨とは違うのかもしれないのですけど、是非、そういうものも含めて研究のアウトプットとして提供いただくと、もっと皆さんに魅力的に映るのではないかと思います。

【櫻井主任】いろいろ応援のお言葉を頂いて、ありがとうございます。

【山口主査】中島委員、どうぞ。

【中島委員】この研究の位置づけで最初のところにも書いてありますけども、最終的には当然FPを核変換して、長寿命のものを短寿命にしたいとあります。多分、最終的にはそういうシステムをつくるということになるのでしょう。ここでは、まずはその前に、元々の核変換を評価するための反応断面積データがないということで、基礎的なデータを取って、いろんな反応が起きる。その中で、どういう反応が使えるかというのを選んで、それに対してどういうことをやれば効率的に消滅できるか。そういった最初にベースとなるデータを取るということだと。

【櫻井主任】はい、そうです。

【中島委員】了解しました。これはむしろ大井川室長に聞いた方がいいのかもしれませんけど、海外で長寿命核分裂生成物(LLFP)の核変換なり、あるいは廃棄物からの毒性低減というのをどういうふうに考えられているのか、もし分かれば教えていただきたいと思います。

【山口主査】櫻井主任から何かお答えありますか。

【櫻井主任】基本的に欧米の方、まずアメリカの方ではほとんど進んでいないと思います。ヨーロッパの方でもこのFPに関連する話は聞いたことがないです。もちろんADS絡みのお話は聞くことが多いのですけど。

【中島委員】例えば、コストとベネフィットの関係で余裕があればやるというのは日本も同じかもしれないのですけども、これは何かあるのでしょうか。

【山口主査】最初に櫻井主任から、エネルギーが取り出せないからではないかと申されていました。多分何となくLLFPの核変換は少し難しいと、頭から諦めているようなところがあるように思えます。仮に、実現性があるのに、今まで手がついていなかったというのは、先ほどの理由で後回しになっているということが考えられます。そういう話があるのでしたら非常に今、核変換の一環として御提案のようなものをやっぱり考えてみる価値はあるのかなと思いながら聞いておりました。海外の現状について、大井川室長から何か補足はありますでしょうか。

【大井川室長】海外では、我々と同じく、I-129とTc-99を核変換の対象として考えているのですけれども、工学的な核変換システムとしての検討が進んでいるわけではないと思います。

【山口主査】そういう状況だそうです。田中委員、どうぞ。

【田中委員】今のお話に関係しますが、東京大学でも、櫻井主任からお話を聞いたりして理学部の先生と勉強会を始めています。エネルギーを発生しないようなケースにおいては、どんなシステムで核変換システムを作るのか、実際に組んだときにどういうふうなシステムでどのくらいの核変換率があるのかという廃棄物屋さんからの情報と、実際につくれるかどうかとか、そのときどんなデータが足りないかなど、正に、櫻井主任がおっしゃったような関係する人たちが集まってのプラットホームで、どういうデータが欲しいのか、どういう施設があるか、そのデータはどうだといったようなことを言い合う場はないのかなと思いました。

【山口主査】ありがとうございます。正にそのとおりだと思います。

【和気委員】理工学の連携が話題になっている中で、やはり、ある意味で国際社会が共通して直面する課題にどの国がどんな形で関わっていくかという大きな戦略の中で核変換技術を評価していかないといけないと思います。櫻井主任のお話の中に連携という言葉が、理工という枠組みではありますけども、連携の重要性を恐らく認識して、強調しておられるのだと思います。特に日本における国際的な先導性を戦略的に指向するのであれば、早い段階からアジアやほかの国の若手研究者をどう巻き込んでいくかというところをもっと長期戦略の中で位置づけられてオールジャパンよりは、むしろアジア、アジアの若手の研究者をいかに巻き込むかというようなところを是非お考えいただくような方向で、これからプロジェクトを進めていただきたいなと思います。

【櫻井主任】実は9ページで、真ん中のオレンジ色のところに北大という大学名を挙げています。北大では核データのアジアネットワークを構築されておりまして、既に中国・韓国、あとベトナムの方々とお付き合いがあります。私も彼らが主催したワークショップに出席して、理研ではこういうデータが出てくるから一緒に研究しませんかみたいな話をしています。こういった新しいプログラムが理研で走りますと、良い呼び水となりますので、理研に限らず、原子力機構さんとかいろいろなところでアジアを意識してやるというのはとてもいいお考えだと思います。ありがとうございます。

【山口主査】今の点、田中委員の原子力科学技術委員会で、こういう公募研究の改正について少し議論になっていました。正にここで櫻井主任が採択された研究とかで、こういう国の共同的資金が国内でクローズするのではなくて、やっぱりもう少し国際的な視点で推進していったらいいのではないかというふうに思いました。

【田中委員】このような意見が出て、具体的にどうしていくのかというのが急務なところとなっています。一つの例として、我が国がLLFPの核変換についてデータも取り、またそれをシステムとして検討するというような総合的な枠になっていけばいいのかについて、原子力科学技術委員会等で現実的にどうすればよいかを同時に考えていかないといけないと思いました。

【山口主査】ありがとうございます。では、矢野委員。

【矢野委員】FPの話ですけど、1年間100万kWの原発を動かすとFPが120 kgぐらい物量としては出るのではないかと聞いています。それを高エネルギー中性子で破砕してしまうことを考えます。破砕すれば寿命の短いものなります。このときの消滅速度というのはクロスセクションとビームの量から決まり、どれぐらい強力な高エネルギー中性子発生用の加速器が必要かを見積もるときに、破砕反応断面積が全部分かっていないといけない。ところが、例えばCs-137とかI-129とかのそういったデータはありません。そこでまず、日本に現存する加速器施設をできるだけ使って、これを測っていくことを考えるわけです。その次に、工学的なところでの費用対効果の目安ですが、例えば100万kWの原子力発電所だとすると、100万kWの10分の1の100 MWの電力ぐらいで先ほどの量のFPを1年間かけて10分の1以下に潰せればいいのではないか。また、この原子力発電所の建設費が1兆円くらいかかるとすると、1,000億円ぐらいで加速器ができればまずはいいのかなと思います。ADSのところに、ちょっと戻りますけど、今、30%の加速効率(ビーム電力/運転電力)がないといけないといいます。これは今の技術で達成できるというのではなくて、これぐらいないと収支が合わないという30%です。私、加速器の専門家ですけども、この性能の加速器は現存しませんので、非常に難しい発明をしないと、こんな加速器はつくれません。でも、すごく良いチャレンジングなテーマなので、必ずやり遂げるでしょう。そういう最低限必要な、どれぐらいの加速効率が必要なのかを見積もるためにも、断面積のデータがないといけない。一番大事なことは、我が国はJ-PARC(原子力機構)、RIBF(理研)だとかKUCA(京大)であるとかを既に持っていて、それらを総動員すればこの問題に対応できるということだと思います。もうちょっと言いますと、FPの話とはそれますが、我々のRIBFで、例えばキュリウム(Cm)とかアメリシウム(Am)もウランのように加速できます。つまりCmやAmをニュートロン(中性子)でたたいた場合、何が起こるかのエレメンタリープロセスを逆反応で測っていくことは実はできるのですけど、技術的にはどうやって微弱なビームを加速するかという問題を解く必要があります。これによってエレメンタリープロセスのデータの取得ができますから、それとJ-PARCが今度つくることになる核変換物理実験施設(TEF-P)でバルクに対してデータを取り、これを両方合わせれば、正にエレメンタリープロセスからバルクで何が起こるかまで、全て我が国で測ることができるようになるということをちょっと強調しておきたいと思います。

【山口主査】多分その技術の側とか施設の側には、テクノロジーあるいはニーズの側といった少し多面的な目で見ながら全体の仕上がり具合とか、性能要求を評価していくとゴールに段々収束してくる。正に今日御指摘のあった、そういう連携というような形でしか多分そういうものの見方はできないのではないかなと思います。どうもありがとうございました。非常に参考になる御意見だったと思います。ほかには、よろしいでしょうか。非常に良い議論ができたと思います。櫻井主任、どうもありがとうございました。

【櫻井主任】今日はどうもありがとうございました。

【山口主査】続きまして、議題の2番目「前回の作業部会での指摘事項について」です。資料2-1と2-2をあわせて、原子力機構から説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【大井川室長】それでは資料に従いまして、前回も説明いたしました資料からの改訂箇所について説明させていただきます。
まず、資料2-1「ADS階層型概念関連技術の研究開発段階(改訂版)」の3ページです。オレンジ色で書いてあるところが今回の修正点です。前回、トレーサ試験等について明確にしておいた方がいいのではないかという御指摘を頂きました。そこで、上から2段目のところに注記をつけております。また、あとで説明しますロードマップとの文言の整合性と、対応が分かりやすくなるようにということで、その点を加えております。溶媒リサイクル技術や二次廃棄物の処理の箇所、それから、上から4段目の工学規模試験。赤で書いてありますけども、これがどこを指すのか不明確なところがありましたので、模擬物質工学規模試験(コールド)と分かりやすくしております。それからロードマップとの対応ということで、プロセス総合実証試験という文言をロードマップと合わせるように変えております。
4ページですけれども、こちらもロードマップの文言と整合する修正がメインになっています。
5ページについても、ロードマップとの整合性をとっております。以上が、この技術成熟度(TRL)の修正でADSの方は修正しておりません。
続きまして、ロードマップの方を若干修正しておりますので資料2-2について御説明させていただきます。2ページ目ですが、真ん中のあたりにあります、核変換専用MA燃料製造の製造プロセス・プラントの黄色くなっている、今の資料でいいますと装置概念・プラント概念・フィードストック乾式再処理回収物試験とある部分についてです。これは前回では、装置概念・プラント概念というのがフィードストック試験よりも下の方に書いてあったのですけども、これをTRLの方と合わせるようにして順番を変えております。それから一番右、乾式再処理の廃棄物のところですけれども、模擬物質工学規模試験は現在実施中の項目ということで赤字にしております。これはTRLの方に合わせています。
3ページですが、左から二つ目の項目にありますMA核データのところに下線部が引いてあります。これはMAサンプル照射というところになります。これは、前回は既に終了というところにあったのですけども、御指摘もあり、これから長期にわたって継続していくということで赤字に修正して、こちらの四角の方に移しております。それから右から三つ目のLBE熱流動・ターゲットの項目におきまして、ビーム窓モックアップ(MEGAPIE)というところが前回は終了済みで、一番上の四角の中に入っていたのですけれど、やはり段階が違うということで、四角を分けて明確にしています。以上が、前回の資料からの修正点です。

【山口主査】ありがとうございました。前回、特にロードマップとこの技術リストの整合性について幾つか御指摘を頂いていました。その主旨は、需要が違ったりすると、それぞれ非常に見通しが悪いということも御指摘だったと思います。それでは、今の修正等について何か御指摘、お気づきの点はありますでしょうか。よろしいですか。

【澤田委員】よろしいですか。

【山口主査】どうぞ、澤田委員。

【澤田委員】ADSの件でちょっと気になったのですけども、例えば資料2-1の7ページです。最初にADS概念の検討があって、そのあと開発が進んで装置概念とかそういったものの研究開発が進むと思います。この概念の検討のところで、例えば、運用とか保守とか、窓をどうやって交換するかというようなときに、多分いろいろと装置としてどんなものにしなければいけないのかというところが出てきて、それは設計で解決できるものもあれば研究開発しなければいけないものもあると思います。そういったもうちょっと概念の検討を深めて、特に装置という観点でどんなところに研究開発要素があるのかというところが、きちんと見通せられていればいいのですけど、その辺はどうなっているのか。あるいは、今度もうちょっと検討していくということであれば、それはそれで良いとは思うのですけど、どういった状況なのでしょうか。

【山口主査】では、お答えいただけますか。

【大井川室長】はい。資料2-1、7ページです。構造というのが、左から二つ目にありまして、その原理実証段階にADS用機器要素技術開発、それからその下に実験炉級ADS用機器開発という項目があります。こういうところで今、御指摘ありましたような工学的なところはやっていくのかなと思っています。実機のADSに関して、どういうことが必要になるか。例えば、燃料の交換、ビーム窓の交換等の簡単な検討というのは既にやっているのですが、これからMYRRHA計画に参加することで、実際のプラントに関してのこういう知見、経験とかを積んでいくというのは非常に重要と思っているところです。

【山口主査】よろしいでしょうか。ほかには。どうぞ、田中委員。

【田中委員】構造というと人によって、ちょっと受け止め方が違うかなと思います。もう少し全体を意味するような名称の方がいいと思います。

【山口主査】システムですね。

【田中委員】そう、システム構造とか。

【山口主査】そうですね。構造というと非常にメタルみたいなもので捉えられますから、もう少し広い意味で捉えられると良いかと思います。

【大井川室長】そうですね。システムということで捉えて問題ないと思います。

【山口主査】それでは、よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。では、続きまして議題の3番目、「群分離・変換技術に関する中間的な論点のとりまとめ案について」です。前回いろいろ貴重な御指摘を頂きましたので、アップデートをしていただいています。資料3を事務局から説明していただいて、それから議論に入りたいと思います。では、お願いします。

【西田室長】それでは、資料3の「群分離・核変換技術評価について(中間的な論点のとりまとめ案)」について御説明します。参考資料として、前回の第4回にお示しした案からの変更点を見え消しにしたものをお配りしておりますので、それをベースに変わった部分を中心に御説明したいと考えております。
参考資料の3ページのところで、平成21年度の分離変換技術検討会(原子力委員会)での報告書を説明しておりますが、この中で高速炉サイクルとの関係という記述がありますので、そこを少し明確に書いております。具体的には、「加速器を用いた核変換技術は、高速増殖炉サイクルによるMAの均質リサイクルが所定の性能目標を満足することができないと判断されたとき、あるいは、加速器を用いた核変換技術が技術的成立性や開発に係る費用対効果の点で勝っていると判断されたときには、開発対象として採用が検討される可能性があるとされる」という検討会報告書の中に書いてあります文言を記載しております。
続きまして、4ページの下の方、「2.群分離・核変換技術の導入効果と将来のイメージ」のところです。まず、ADSが日本の電力システムの中でどれぐらいの効果があるかということにつきまして、以前は「40 GWeの軽水炉群で生じるMAを0.27 GWeのADS 4基」という記載をしていたのですけども、実用レベルの「0.27 GWeのADS 1基で、10 GWeの軽水炉群で1年間に生じるMAを核変換可能」という言い方に直しております。また、その下の方ですけれども、この導入シナリオにつきまして、「今後の我が国における原子力政策の方向性が明確になっていく過程で、導入シナリオ等を再検討する必要があるとともに」という文言を追加しております。
続きまして、6ページです。理研の櫻井主任から御説明いただいたFP核変換の研究開発の状況ということで、御説明いただいた資料等を参考にして記述の追加をしております。具体的には、「長寿命FPについては、核変換に関連する基盤開発・技術開発がほとんど進んでいない状況にある。放射性核種を同位体分離して単一核種の十分な厚さの標的にすることが困難であり、これまで中性子ノックアウト、ここの文言については先ほど御指摘いただきましたけれども、中性子捕獲、γ線吸収などの核変換に関連した反応断面積データはほとんど得られていない。これらの基礎データは、合理的な核変換法を生み出す契機になるとともに、核変換システムのエネルギー収支、経済性などを算出及び検討するのに重要となる。」と、ここは現在のFP核変換の研究開発状況ということで、このような文言を追加しております。
それから7ページの下、「1.国際協力状況」の最初の丸、高レベル放射性廃棄物の処理処分の問題について「必然的に使用済燃料処理の工程を含むことになる」というような文言が入っておりましたけれども、国によっては直接処分ということを検討していることもあるということで、ここを削除しております。
8ページの「2.工学実証に向けた国際協力での取組」、MYRRHAについての説明のところです。最初の丸の下の方で、MYRRHAでは「通常のMOXを用いるため、核変換を実際に行う施設ではない」という記載でしたが、「核変換専用の照射施設ではない」と、より正確な言い方に修正をしております。
それから、9ページの上から二つ目の丸、MYRRHAの研究開発については我が国からMYRRHAに参加をするだけでなく、我が国の研究開発に海外からも参画していただくという双方向の国際協力という形をきちんと記載した方がいいのではないかということで、「本技術の研究開発に当たっては、海外の研究開発との連携や我が国の研究開発への海外からの参画等を積極的に進め」という文言を追加しております。また、こうした研究開発を通じまして、我が国だけでやった場合の費用と比較して研究開発コストの低減を図るべきであるというようなことも書いております。またMYRRHAの建設費用負担10%というのは、ベルギーとの間で何らかの議論が進んでいるわけではないため、この部分は削除しております。
続きまして、10ページについては、核変換実験施設を進めていくに当たり、「研究開発に係る課題の達成状況等についてレビューを行っていく必要がある」。実際に、費用として220億円程度の建設を今後目指していくわけですけれども、その前には、きちんとレビューを行っていく必要があるということで文言を追加しております。そして、またMYRRHA計画については先ほど少し修正しましたように、「我が国の取組と相互の国際協力について調整を進める」と追加しております。
続きまして、11ページで、上から二つ目の丸、MA高含有窒化物燃料のところです。これは、前回の作業部会の中でMAの調達について御指摘がありました。これにつきましては、まだ現在Am以外の調達については、まだ課題があるというふうに聞いておりますので、明確に「MAの調達、MA燃料製造設備の整備」といったものについて課題があるということを文章の中でも明示しております。また、今の箇所から二つ下のところですけれども、「研究開発の活性化」という記載から「研究開発の効率的推進」という表現に直しております。また同ページの下の方、全体の評価のところですが、これは前回の作業部会の中で高速炉との関係や今回の群分離・核変換技術の位置づけについて、きちんと明示をした方がいいという御指摘を頂きましたので、この中でそうした書きぶりを追加しております。具体的には、「原子力利用に伴う高レベル放射性廃棄物の処理・処分については、国内的にも、国際的にも重要な社会的・技術的な課題である。将来の原子力政策や技術の不確かさに対して、有望と考えられる技術的なオプションを提示し、将来における選択肢の広がりと柔軟性を保証するべく最大限の努力を払うことが大切である。我が国には、群分離・核変換技術のポテンシャルや人材、関連の研究開発インフラが蓄積されており、課題の解決に向けて着実に進めていくことが求められる。」ということを冒頭に書いております。
それから、12ページの上から二つ目の丸、高速炉との関係については、「高速炉サイクルによる核変換技術は、既に原理実証段階にあり、より実用化に近いが、将来の政策的柔軟性への対応を可能とするための技術的オプションとしての成立性を判断するためには、加速器駆動型の核変換技術についても、原理実証段階に移行し、効率性、経済性、また廃棄物の減容効果等に係るデータ・知見を蓄積していくことが必要である。」と文言を追加しております。その下の丸のところにつきましては、「研究開発の活性化」を「研究開発の効率的推進」という形に直しております。また、同じページ、「2.ロードマップ」の二つ目の丸では、ロードマップの中でどういう部分でチェック・アンド・レビューをしていくかというのを明確にすべしという御指摘を前回の作業部会で頂いていますので、それを踏まえた書きぶりとしております。ここでは、ロードマップの推進について「高速炉サイクルによる核変換技術等、ほかの分野も含めた研究開発の進捗状況を踏まえつつ、適切なタイミングで実施について判断されるべきである。」と前回書いておりますけれども、加えまして、「その際には、それまでの研究開発の達成状況を確認するための適切な判断基準を設けることが必要であり、今後の研究開発では、そのような判断に資するデータの取得等を中心に進めることが望まれる。また、将来、我が国の原子力発電システムへの群分離・核変換技術の本格導入を検討する段階において、発電用高速炉利用型の均質サイクル概念と、ADSによる階層型サイクル概念について、技術的成立性、費用対効果、社会受容性等の観点からの比較評価を行うことが必要となると考えられるため、その際の判断基準も考慮した研究開発を進めるべきである。さらに、研究開発を進めるにおいては、ビーム窓なし概念等の新たな概念を含めて最新の知見を活用するとともに、技術的要件と社会的な要請を絶えず見直し、リスク管理を含んだ適切なプロジェクト管理を行うべきである。」ということを追加しております。それから図のロードマップは、原子力機構から説明いただいたロードマップ(最新版)に差し替える予定でおります。
続きまして、14ページ、「Ⅴ.基礎基盤研究の推進と人材育成」の部分についてです。ユーザーコミュニティの中で、TEF-Pについての取組も記載すべきという御指摘を頂いておりますので、「TEF-T及びTEF-Pについては、実験提案を広く国内外から募集する取組がなされている。TEF-Pについては学会の関連する部会で横断的に実験施設のあるべき姿を検討する活動が行われている。世界的にも貴重な高速中性子系臨界実験装置として、大学あるいは産業界を含むより多くの研究者が参画できるような取組の検討を今後も継続していくべきである。」という書きぶりに修正をしております。また、同ページの「2.基礎基盤研究の充実と人材育成」については、「原子力機構を中心に、連携を強化する必要がある。この際、長期の開発期間を必要とすることを踏まえ、核データや基礎物性等の基礎基盤研究の充実を図るとともに」というような形で、より具体的に書いております。
最後に、15ページ、「Ⅵ.引き続き検討が必要な事項」においては、「J-PARCの核変換実験施設については、次のステージに向けて進むことが適当と考えるが、今度、施設整備計画の策定等に当たっては、前提となる成果の達成状況、技術的実現性、規制等への対応に係る検討等、段階に応じて進捗状況をチェックすることが必要である。」と、チェック項目についてより具体的に記載しております。また、先ほど櫻井主任より説明がありましたFPの取組については、その下の丸のところに、第4回の作業部会資料にも書かせていただいておりますが、「FPの核変換技術を含めた技術的進歩や全国的な推進体制の構築について、今後、広く検討することが重要である。」とFPについても言及しております。第4回からの変更点は以上です。

【山口主査】どうもありがとうございました。修正・変更された点について説明いただきました。御意見や質問等、どうでしょうか。どうぞ、矢野委員。

【矢野委員】先ほどの中性子ノックアウトのところですけれども、あまり包括的な表現になっていないので、「これまで核破砕、中性子捕獲、γ線吸収」というふうに、より一般的に核破砕というのがいいのではないかと思います。

【山口主査】よろしいでしょうか。どうぞ、長谷川委員。

【長谷川委員】この素案についてなのですけれども、これはデータを取ってここにはあるというのは、これは全部「原子力機構にある」という主語が隠れているのですか。

【西田室長】はい、そのとおりです。

【長谷川委員】このデータを誰が持っているのだろうかというのを暗黙の了解としてやっているのであるのなら、最初のところに実施者は誰がやるかというのを書くべきではないかと思います。「原子力機構」というのは、今日見たら最後の方に1箇所出ているだけです。だから、この報告書については、今データが原子力機構で取られているところというのはどこかに一文がないと一体誰がデータを取っているのかが分かりにくいです。また、あとのところに電力中央研究所(電中研)はというのが2箇所出てきています。何でここだけ電中研が出てくるのか。突然、電中研と2箇所書いてあるのがちょっと不思議な気がいたしました。それからもう一つは、文章中に出てくる高速炉と高速増殖炉、それから高速炉サイクルと高速増殖炉も含む核燃料サイクルという言葉。要するに高速炉での核変換というのは高速炉でやるのか、高速増殖炉でやるか、あるいは何かその辺、しっかり認識をした上で高速炉と高速増殖炉というのを使い分ける。どちらかに統一する必要があるのではないかと思います。認識として、高速炉サイクルというのは、核燃料サイクルのことでよろしいのでしょうか。

【西田室長】はい、そういう意味です。

【長谷川委員】そうすると、この中に燃料サイクルという言葉があります。ADSの燃料サイクルというのは、高速炉を含んだ核燃料サイクルとは違う意味だと思いますけど、あるいは、同じかもしれません。ちょっと曖昧な言葉があって、どっちかに統一するか、定義をきちんと考えた上で、使い分けるということが必要ではないかなと思いました。

【山口主査】少しその件については、ちょっと丁寧に見ていかないといけないですね。ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。どうぞ、中島委員。

【中島委員】1箇所、言葉尻かもしれませんけども、13ページのところにビーム窓なし概念等の新たな概念をというような記載があります。前の説明では最初ビーム窓なしでやったけども後からビーム窓ありにしたというと何かビーム窓なしというのは別に新たな概念ではないのかなと思います。何かこう書くとちょっと誤解を招くかなと思います。

【山口主査】その他のという表記はどうですかね。どうぞ、田中委員。

【田中委員】前回いろいろ議論したこと、コメントしたことが的確に反映されているかなと思います。ちょっと言葉的なことで何点か申します。先ほど長谷川委員から高速炉とか高速増殖炉とかありましたが、なかなか定義が難しいのですけど、ここではこうするとか書いておけばいいのかなと思いました。それと6ページですが、下から4行目の核変換に関する基盤開発・技術開発とあります。例えば基盤研究という言葉の方が、開発というと技術開発的な感じが出ますので、研究のイメージの方がいいのかなと思いました。それからその次のページ、7ページの上の方ですが、データを取ることが、もちろん合理的な核変換を生み出す契機になるのですが、核変換システムのエネルギー収支、経済性というようなこと書いてしまう前に、核変換技術という言葉を明示した方がいいのかなと思います。ちょっと飛んでいただいて、先ほどLLFPの話のときに櫻井主任から話もあったのですが、国際連携をしっかりやって我が国としても優位性を待つとか、何かそういうふうな記載があってもいいのかなと思いました。以上です。

【山口主査】ありがとうございます。用語の話は今、田中委員から御指摘のようにこういう考え方で使う。例えば、高速炉といっても高速増殖炉といっても、それぞれ理屈があるわけなので。あとは、いかがでしょうか。どうぞ、和気委員。

【和気委員】委員からのお話の中で既に出ているのですけど、11ページ、全体の上の段落のところで、先ほど電中研が2箇所に出てきますが、これは正にどこが主体なのかというのを原子力機構はと、そういうふうにすれば電中研と区別がつくのかなと思います。これは確かに読んでいて、ちょっと違和感があったので直していただけるとして、そのあとのセンテンスなのですけども、韓国・インド・中国等の動向を注視しておく必要があるとあります。これは技術評価として今後生かしていくから注視していく必要があると。つまり注視した結果、どういうことがあるから注視する必要があるのかはきちんと見通しておかないと。恐らく、こういう技術は競争的な部分もあります。ただ、この分野のまだ研究開発の段階では協力や協調の国際共同体としての技術評価というのは、やっぱり重要な視点になると思います。やはり注視するよりは、むしろ新しい国際協力という柔軟な対応に向けて、アジアの国との連携もあり得るのではないかというような視点もここにあっていいのかなと思いました。

【山口主査】ありがとうございます。最後の点は、田中委員からもこういう国際協力の話がありましたけど、ここの11ページですね。二つ上には欧州と連携してという言葉があります。これ欧州と連携に対して、こういう近年、技術開発を積極的に進めている国の情報もちゃんと見て、そういう主旨で、何か動向を注視しておく必要があるというのも少し記載された方がよいと思います。

【田中委員】注視するだけではなくて、どうするのかという一歩出たことを書かないといけないのかなと思います。特に中国・韓国、それを更に進めていってアジアでの多国間管理。我々としても連携しつつその中で、書き方が難しいのだけれども、中心的な役割をするとか、そんな具合の記載もあっていいのかなと思います。

【山口主査】一つは連携の可能性を模索するという話と、その中でリーダーシップを発揮するような方向性を示してほしいと、その2点ということで、よろしいですかね。そのために中国とかインドとかの情報、状況をちゃんと情報収集しておくべし、そういう趣旨でしょうか。ありがとうございます。ほかには。どうぞ、澤田委員。

【澤田委員】12ページの今回追加いただいた一番下の箇所です。発電用高速炉利用型の均質サイクル概念というところですが、非均質サイクルというのは当然あるのですが、2009年の原子力委員会の報告書では非均質サイクルはまだ検討は進んでいないということであったのですが、多分これを比較する頃には、もうちょっと進んでいるはずですので、高速炉利用型と比較するとしておけばいいと思います。

【山口主査】利用型のサイクル概念の方が良くないですか。

【澤田委員】そうですね。

【矢野委員】均質だけとってしまうというのはどうですか。

【澤田委員】そうですね。むしろ階層型サイクル概念と比較するという意味ですから利用型のサイクル概念ですか。そうですね。

【山口主査】ほかには、いかがでしょうか。一つ、小さなことですが、3~4ページにかけて、原子力委員会の報告書が引用されているのですが、新たに追加された文言は、加速器を用いた核変換技術の概念が技術的あるいは費用対効果、そういった場合で、勝っている場合には可能性があるというのが追加された文章ですよね。それから元々書かれていた文章は、性能目標を満たして実用化できれば自由度の増大が期待されるとのことですので、その二つをつなげる接続詞が今、一方でとありますが、しっくりこないところがあります。ここは一回切って、「又は」、「また」、とか「とともに」とかが良いと思います。

【中島委員】これ、引用であれば、やっぱりかぎ括弧を記載した方がいいと思います。

【山口主査】そうですね。引用部分は括弧で記載願います。そのほかには、どうでしょうか。どうぞ、長谷川委員。

【長谷川委員】先ほどの11ページ、電中研のところですけど、高速炉用金属燃料の話が出てくるのですけど、いきなり金属燃料の再処理技術開発ということだけしか出てきていないのです。もう製造することはできている、高速炉もその燃料を使用するとか、最初の前提条件のところがない。金属燃料は、再処理をするためだけにやっているのか、あるいは、ほかのところで使っていないじゃないかという考えもあるので、そこの全体としてそういう金属燃料を使った高速炉という概念があってというのがどこかにないと、何かいきなりぽんと金属燃料の再処理の話だけ出てくるのは何かちょっと、何でここだけ使われているのだろうと逆に電中研の方が思われる気がします。その辺はどうでしょうか。

【山口主査】ここは、これまで高速炉サイクルという技術開発の中で、燃料にせよ、再処理技術にせよ、多様なオプションとしてのフィージリビティを見てきたわけです。その中の一つとして、金属燃料乾式再処理というような形で、むしろそこはそうやってフィージビリティとしていろいろ研究してきた成果がこのMA変換の場合、分離回収技術に使える。むしろ、今までやってきた技術の成果がこういう形で使っていけるという文脈で書かれる方が、この報告書としては良いかなと思います。

【長谷川委員】あまり拡散しても困るので、そこだけ変なふうに取って使われるのは、やっている人にとっては不本意ではないかと思います。

【山口主査】その辺は、FaCTの評価と少し関係するところがあるかと思うのですが、むしろ、この報告書の主旨は群分離・核変換技術の評価ということですので、金属燃料高速炉の話をあまりここで書くよりも、むしろ、いろいろこれまでやってきた活動がこういう形で使えるという主旨を書いていただいた方がいいかと思います。田中委員、どうぞ。

【田中委員】すみません。さっきの均質型燃料のところで、今思いついたのですけども、多分この報告書、中国とか韓国の方を見ていくときに、また海外がどう見るかというような観点を考えると、ターゲット燃料とか、そういうのを考えてくると核不拡散とか核セキュリティという問題を我々は随分意識しているということをどこかに書いておいた方がいいのかなと思います。そのターゲット燃料はもちろん核変換はいいのだけれども、あるターゲットでやると、核拡散・セキュリティの問題が出てきます。ものすごく注意しながらやっているということも書いておいた方が海外から見たときには、日本はそういうこと考えてやっているのだなということでいいのかなと思います。

【山口主査】具体的には、原子力開発の課題と今後の取組で書く。本文の中では、なかなか唐突な感じがしますので。だから、今後の取組の中の原則として核不拡散というものに対して重視してやっていくと、そういう形の項目をどこかに書き込むか、または、新たに項目を起こすか。

【田中委員】そうですね。米国で見たときに日米交渉もありますので、日本はこういうことを注意してやっているというメッセージも重要だと思います。

【山口主査】田中委員の御指摘は、むしろ1項目、丸を一つ書くぐらいの方がいいということですかね。その文案は御検討いただけますか。ほかには、いかがでしょう。よろしいでしょうか。それでは、どうもいろいろ御議論ありがとうございました。大分、今日は文言も含めて随分精査されたと思いますので、最終的な報告書の作成に向けて事務局の方でよろしくお願いいたします。それでは、以上で本日予定しておりました議題は終了となります。それでは、事務局から連絡をお願いします。

【田中委員】すみません。どういうふうに修正するかというのは山口委員に任せてよろしいのでしょうか。

【山口主査】その辺、事務局から御説明いただけますか。

【西田室長】ありがとうございます。ただいま頂きました御意見も踏まえまして、報告書の修正等をさせていただきたいと思います。修正案につきましては、後ほどお送りさせていただき、御確認をしていただきたいと思います。最終的なとりまとめにつきましては、山口主査に御一任をお願いできればと考えております。また今回の議事録につきましては、出来次第メールで御相談させていただきたいと思います。事務局からは以上です。

【山口主査】今、御質問の点、主査一任という提案がありましたけども、今日のところ、概ね御了解いただいたと理解しております。主査一任ということで、よろしいでしょうか。はい、ありがとうございます。それでは、中間とりまとめの件は事務局と私の方で相談して、とりまとめさせていただきます。それでは以上をもちまして、第5回群分離・核変換技術評価の作業部会を終了いたします。では、どうもありがとうございました。

―了―

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(研究開発局原子力課放射性廃棄物企画室)