主査 |
山口 彰 |
大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻教授 |
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主査代理 |
澤田 周作 |
日立GE ニュークリア・エナジー株式会社 シニアプロジェクトマネージャー |
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田中 知 |
東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻 教授 |
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中島 健 |
京都大学原子炉実験所 教授 |
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長谷川 晃 |
東北大学大学院工学研究科・量子エネルギー工学専攻教授 |
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藤田 玲子 |
日本原子力学会 副会長 |
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矢野 安重 |
仁科記念財団常務理事、理化学研究所仁科加速器研究センター特別顧問 |
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和気 洋子 |
慶應義塾大学 名誉教授 |
(1) 群分離・核変換技術に関するこれまでの経緯
(2) 群分離・核変換技術に関する国内外の状況
(3) 今後の進め方
(1) 群分離・核変換技術に関する検討の経緯
(2) 群分離・核変換技術に関する開発状況
(1) 群分離・核変換技術に関する施設の検討状況
(2) 群分離・核変換技術に関する人材育成について
(3) 群分離・核変換技術に関する国際協力の状況
(1) 群分離・核変換技術に関する加速器駆動システムの開発ロードマップ
(2) 前回作業部会での指摘事項について
(3 )群分離・核変換技術に関する中間的な論点のとりまとめ素案
(1) 核分裂生成物の核変換について
(2) 前回作業部会での指摘事項について
(3) 群分離・核変換技術に関する中間的な論点のとりまとめ案について
・階層型サイクル概念
商用発電炉サイクルを第一階層とし、第二階層である群分離・核変換サイクルを付加した概念。群分離・核変換サイクルでは、売電を主目的とせず、商用発電炉の使用済燃料から分離した長寿命核種の効率的な核変換を行う。
・核データライブラリ
様々な実験や理論計算に基づき評価された原子核及び核反応に関する物理的データを集約したデータベース。原子核反応の生じる確率を示す反応断面積などに関するデータを、国内ではJENDL として整備している。原子炉の炉心設計、加速器施設の遮蔽設計等に使用する。
・核破砕反応
高エネルギーに加速された陽子等が標的原子核に衝突し、複数の破砕片に分裂させる反応。核破砕反応では破砕片の他に多量の中性子(核破砕中性子)が発生し、それを加速器駆動システムなどの中性子源に利用することができる。
・核分裂生成物(FP: fission product)
ウラン・プルトニウム等の原子核の核分裂によって生じる生成物。核分裂生成物には安定核種、短寿命の放射性核種、長寿命の放射性核種(LLFP: long-lived fission product)が含まれる。
・核変換
広義の核変換は、原子核に何らかの働きかけを行い、異なる元素や異なる同位体に変換すること。群分離・核変換技術においては、長寿命核種を核反応によって短寿命核種あるいは安定核種に変換することを指す。
・核変換実験施設(TEF:Transmutation Experimental Facility)
加速器駆動核変換システムの研究開発を行うことを目的に、日本原子力研究開発機構がJ-PARC に建設を計画している実験施設の名称。施設はADS ターゲット実験施設(TEF-T)と核変換物理実験施設(TEF-P)で構成される。TEF-T では、液体鉛ビスマスの核破砕ターゲットを用いて大強度陽子ビームでの核破砕ターゲットの技術開発及び材料の研究開発を行う。TEF-P は零出力の臨界集合体であり、未臨界炉心及び核変換システムの物理的特性の探索と加速器駆動核変換システムの運転経験蓄積を目的とする。
・加速器駆動システム(ADS: Accelerator-driven System)
陽子加速器を用いて高エネルギー陽子を加速し、未臨界状態の原子炉の中心に設置された核破砕ターゲットに投入することで得られる核破砕中性子を用いて、未臨界炉心を駆動するシステム。炉心が未臨界状態であるため安全余裕を確保しやすく、臨界炉では取り扱うことが困難な多量のマイナーアクチノイドを炉内に装荷し、効率よく核変換することができる。
・ガラス固化体
使用済燃料の再処理で発生する高レベル放射性廃液をガラス状の媒体の中に固定化した廃棄物。ガラス固化体中には、極めて高い放射能を有しかつ長寿命の放射性核種等が含まれる。
・乾式再処理
塩化リチウム、塩化カリウム等の溶融塩や、カドミウム、ビスマス、鉛等の液体金属を溶媒とした水溶液を用いない再処理法の一種。六ヶ所再処理施設で採用されている湿式再処理と比べ、施設を小型化できることから、小規模の核燃料サイクルに適している。また、水溶液を使用しないため臨界に対する安全裕度が大きい、有機溶媒を使用しないため放射線損傷に対する影響が少ない、原理的にPuの単離が困難なため核拡散抵抗性に優れる等の特長がある。
・共分散データ(核データ)
核データライブラリに格納されている、核データの不確かさをあらわすデータ。炉心特性の解析値に含まれる核データ起因誤差の評価等に利用される。
・金属燃料
金属ウランや金属プルトニウムなどにジルコニウムを添加して合金とした原子炉用の燃料。
・群分離
高レベル放射性廃棄物中に含まれる様々な元素を、それぞれの特性に応じて幾つかの元素群に分離すること。群分離した後の各元素群に対して、それぞれの特性に応じた処理処分や有効利用を行う。
・高度化再処理
使用済燃料からウランとプルトニウムを抽出し、その他の放射性核種を廃棄体化する従来再処理に対比し、マイナーアクチノイドや発熱性元素を更に抽出する再処理。
・固溶度
異なる物質が溶け合い均質な固相となっている状態(固溶という)における溶け込む物質の組成の上限を示す指標。
・高速実験炉「常陽」
日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターに設置されている高速実験炉。1977 年に初臨界に達した。高速増殖炉としての増殖性の確認の後、照射炉として高速炉燃料、材料の照射試験を行っている。
・高速増殖炉(FBR)
プルトニウムとウランの混合酸化物などを燃料として使用し、プルトニウムなどの核分裂により発生する高速中性子を、核分裂反応の維持だけでなく、ウラン238 の中性子捕獲反応による新たな核分裂性プルトニウムの生成などにも利用することで、最終的には、使用した燃料よりもさらに多くの燃料を新たに生み出すこと(増殖)を目指した原子炉。
・高速増殖炉(FBR)サイクル
高速増殖炉から取り出される使用済燃料を再処理し、プルトニウム及び未燃焼のウランを回収して新燃料を製造し、再び高速増殖炉で利用する燃料サイクル。ウランからプルトニウムを生成(増殖という)することにより、核燃料の利用効率を大きく向上することを目指している。
・高速炉(FR)
液体金属であるナトリウムなどを冷却材に用いて、中性子を減速させずに臨界を維持する原子炉。高速増殖炉では、ウランを炉心外周に配することで燃料の増殖が可能となる。高速中性子によってマイナーアクチノイドが核変換しやすいため、廃棄物処理(核変換)に適する。
・コールド機器開発
放射性物質を含む試料を用いず、再処理プラント等において用いられる実用規模の機器を、模擬物質を用いて開発すること。
・高レベル放射性廃棄物(HLW)
核燃料を再処理した後に発生するガラス固化体などの高放射性・高発熱の廃棄物。
・最終処分
放射性廃棄物を以降の取扱いが不要な形で処分すること。最終処分は、放射性廃棄物を廃棄物の性状、放射能レベル、核種濃度等により適切に区分し、生活圏からの隔離(処分深さ、生活圏との距離)と放射性物質の封じ込め性能等を考慮し、浅地中トレンチ処分、浅地中ピット処分、余裕深度処分、地層処分の四つの方法に分類して、行われる。
・実液、実廃液
軽水炉再処理で発生した高レベル放射性廃棄物を含む溶液(HLLW:High-level liquidwaste)。核分裂生成物、マイナーアクチノイド、再処理で回収しきれなかったウラン、プルトニウムを含む。分離技術のプロセス試験では、HLLW 組成を模擬した模擬廃液を使用した試験を行った上で、実際のHLLW である実廃液を使った試験に移行する必要がある。
・自己照射損傷
物質にアルファ崩壊核種が含まれている場合に、アルファ崩壊の際に結晶格子中の周囲の原子が次々にはじき飛ばされ、格子定数(物質の結晶格子の大きさと形を決める定数)が増加する現象。増加は一定値で飽和する。・照射後試験炉心構造材などから作成した試料を、原子炉や加速器によって陽子・中性子等で照射した後に行う試験。照射に伴う組織の損傷などによる材料の機械的特性などの変化を測定する。炉心構造物の設計・製造等に必要なデータとなる。
・水溶性錯化剤
水溶液中で特定の金属イオンと錯体(金属と非金属の化合物)を形成する試薬。錯体を形成することで目的イオンの抽出挙動が大きく変化することから、処理液中に添加して分離性能を向上させたり、抽出剤だけでは実現不可能な分離性能を発揮させたりするために使用する。
・ゼオライト
ケイ酸アルミニウムを主成分とする鉱物。結晶格子の間に空孔を持ち、その大きさに一致する原子若しくは分子を選択的に取り込む性質がある。
・潜在的有害度(潜在的放射性毒性)
放射性核種の人体への影響は、放射性物質の種類や量によって異なるため、放射性核種が体内に摂取された場合に、内部被ばくによって人体に与えられるダメージをもとにした、放射性物質の仮想的な有害性の指標。対象とする放射性核種の放射能を各々が経口摂取されたときの被ばく線量に換算し、総和を取ることで得られる。
・線量換算係数
1 Bq の放射性核種を経口あるいは吸入により摂取した人の預託実効線量(摂取後50年間(成人の場合)に受ける線量を最初の1年で受けたと仮定して計算される線量で被ばくの影響を評価する指標)。単位はSv/Bq。
・ソフトドナー配位子
HSAB 則におけるソフトなドナーである窒素、硫黄などで金属カチオン(正の電荷を帯びた金属原子又は原子団)に配位する配位子。HSAB 則(Hard and Soft Acids and Bases)とは、イオン結合性、共有結合性に関する尺度を硬い及び軟らかいという表現を使って分類したもので、ソフト性が高いほど共有結合性が高く、ハード性が高いほどイオン結合性が高い。配位子としては、ソフトドナーはソフト金属と、ハードドナーはハード金属と結合しやすい傾向を有する。これを抽出剤として使用すると、希土類元素よりわずかにソフトな特性を有するアメリシウム、キュリウムに選択性を示すことがある。また、水溶液中での錯体形成能力の違いを利用して、希土類元素からアメリシウム、キュリウムを分離するための水溶性錯化剤としての開発も行われている。
・第四世代原子炉(第四世代炉、Generation IV、GEN-IV)
米国エネルギー省が2030 年頃の実用化を目指して提唱した次世代の原子炉概念。第四世代原子炉は、燃料の効率的利用、核廃棄物の最小化、核拡散抵抗性の確保などエネルギー源としての持続可能性、炉心損傷頻度の飛躍的低減や敷地外の緊急時対応の必要性排除など安全性・信頼性の向上、及び他のエネルギー源とも競合できる高い経済性の3項目の目標を満足する必要がある。ナトリウム冷却高速炉など、熱中性子炉と高速炉のそれぞれに三つの形式の原子炉が提案されている。
・窒化物燃料
窒化物からなる核燃料。金属燃料と同等の熱伝導率を有し、金属燃料では均一に混合することが困難なアメリシウムとネプツニウムを広い範囲で固溶できるという特長がある。マイナーアクチノイド核変換のための加速器駆動システム燃料の有力候補である。これまでに実験室規模でのマイナーアクチノイド含有燃料ペレット製造に成功しており、照射試験の実現と工学規模での製造プロセス開発が課題である。
・抽出クロマトグラフ法
円筒であるカラムに吸着体を充填し、吸着体に対する吸着のしやすさの違いを利用した分離法。溶液を供給すると、最も吸着しやすい成分がカラム上部の吸着体に吸着し、その下の吸着体には次に吸着されやすい成分が吸着する、というように上部から順に成分ごとに分かれて吸着される。抽出クロマトグラフ法は、吸着体に抽出剤を含浸させた樹脂を使用することで、抽出剤の選択性を有する吸着体とし、高度な分離を実現させるものである。
・抽出剤
溶媒抽出法や抽出クロマトグラフ法で用いられる、溶液中の特定成分を取り出すための試薬。PUREX 法では抽出剤としてTBP(リン酸トリブチル)が用いられており、使用済燃料を溶解した硝酸溶液から、n-ドデカン溶媒で希釈したTBP でウランやプルトニウムを抽出する。
・超伝導加速器
超伝導体で作った加速空洞を極低温まで冷却し、超伝導状態にして粒子ビームを高効率に加速する方式を用いた加速器。加速器駆動システムで必要とする大電流陽子ビームを高効率に得るために必要となる。
・電解法
溶液中のイオンを分離する方法の一つ。金属の選鉱・精錬に用いられている。溶液中に二つの電極を挿入し、通電することにより、イオンが還元され陰極(カソード)表面に析出する。定電流電解法では基本的に標準酸化還元電位の貴なイオン(イオン化傾向が低いイオン)が優先的に析出するので、他元素イオンから分離することができる。
・電解残渣
陽極で使用済燃料を溶解し、陰極で目的物質を回収する溶融塩電解において、陽極に残存する物質。マイナーアクチノイド核変換のための燃料サイクルにおける再処理では、超ウラン元素(TRU:Transuranic)の回収率を向上させるため、電解残渣に含まれるTRU の大部分を回収して再利用する必要がある。
・鉛ビスマス(Pb-Bi)
加速器駆動システムのターゲット及び冷却材として注目されている合金。鉛とビスマスは、いずれも重い核であり、陽子による核破砕反応で発生する中性数が多く、しかも、陽子数が魔法数(原子核が特に安定になる陽子と中性子の個数)82 及びその近傍の83 であるため中性捕獲反応断面積が小さく、核破砕中性子ターゲット材としても、冷却材としても優れた核的性質を持っている。また、鉛とビスマスはいずれも金属であるため熱伝導率が高く、各々を44.5%と55.5%で合金とすると、低融点(125℃)、高沸点(1670℃)の共晶合金を作るため、冷却材としての優れた熱的性質も有している。
・ハイブリッド型抽出剤
アクチノイドを強く捕捉できる酸素ドナーと、アクチノイドとランタノイドを分離できる窒素ドナーを組み合わせた抽出剤。ピリジンアミド(PDA)等がある。
・発電用高速炉利用型核変換技術
発電用高速炉(FBR・FR)を使用してマイナーアクチノイドの核変換を行う核変換システムの概念。マイナーアクチノイドを全ての燃料に均質に混ぜる均質サイクル概念と、核変換用ターゲット燃料を炉内・炉心外周部に装荷した非均質サイクル概念がある。
・白金族元素
ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金の6 元素の総称。代表的な貴金属で、酸・アルカリに侵されにくく、また、融点が高く、比重が大きい。これら6 元素のうち、前者3 元素は高レベル放射性廃棄物中に含まれる。
・ビーム窓(陽子ビーム窓)
加速器駆動システムにおいて陽子加速器の加速管内部と核破砕ターゲットの境界をなす構造機器。陽子ビームはビームダクト終端部に位置する本機器を通過して核破砕ターゲットに入射するため、陽子ビームによる発熱、ビームの変動に伴う熱衝撃、冷却材である鉛ビスマスによる静圧と腐食、陽子ビーム及び炉心からの中性子による照射損傷などに耐える設計が要求される。加速器駆動システム特有の構造機器であり、重要な開発課題である。なお、欧州では冷却材の自由界面を加速器との真空境界とする「窓なし」のシステム概念の研究開発も行われている。
・フィードストック
使用済燃料の再処理で発生したマイナーアクチノイド(MA)及びランタノイド元素(Ln)などの核分裂生成物を含んだ廃液から、MA を分離回収して得られた溶液を用いて調製するMA 試料。フィードストック試料は複数のMA 元素及び不純物のLn 元素を含み、その組成は廃液組成及び分離プロセスに依存する。
・フローシート試験
ミキサーセトラや遠心抽出器などの抽出機器を多段で使用する複雑な分離プロセスにおいて、溶液や抽出溶媒の流量比、供給段などの条件を決めたもの(フローシートという)を確証するための試験。
・不活性母材
超ウラン元素を含む燃料の濃度を調整するために用いられる核反応しにくい材料。希釈材ともいう。炉の核的及び熱的の制約から、核分裂性核種を他の元素で希釈する必要がある。窒化物燃料の場合は、不活性母材の第一候補として、窒化ジルコニウムの研究開発が進められている。
・ホット試験、コールド試験
前者は、放射性物質を含む試料を用いた試験。これに対し、後者はホット試験に先立ち、その手順の確認、プロセスの模擬試験などとして、放射性物質を用いずに行う試験。
・マイナーアクチノイド(MA: minor actinide)
アクチノイド系列の元素のうち、使用済燃料に含まれるウラン及びプルトニウム以外の元素。主にネプツニウム、アメリシウム、キュリウムの3 元素を指す。原子炉中のウランやプルトニウムに対し、量が1/10 程度であることからマイナーアクチノイドと呼ばれる。
・マイナーアクチノイド(MA)均質リサイクル
発電用高速炉利用型の項を参照。
・陽極技術
高温冶金技術で用いられる陽極に関する技術。高温冶金技術に基づく乾式再処理法では、溶融塩電解において陽極で使用済燃料を溶解し、陰極で目的物質を回収する。先行技術である金属燃料の溶融塩電解とは異なる化学形の燃料を用いる不活性母材含有窒化物燃料の溶融塩電解においては、効率的に陽極溶解を行うことが可能な電極の開発及び陽極残渣の処理に関する技術開発が必要である。
・陽子加速器
陽子を、電場を用いて加速する装置。電場の種類により、バンデグラーフ型加速器のような静電加速器、サイクロトロン、シンクロトロン、リニアックなどのような高周波加速器がある。静電加速器では、数MeV 程度が加速の上限であるが、高周波加速器はそれ以上のエネルギーへの加速が可能であり、シンクロトロンではCERN のLarge Hadron Collider のように数TeV までの加速ができる施設もある。
・溶媒リサイクル
溶媒抽出法で用いる溶媒を再利用する技術。溶媒抽出法による分離プロセスでは、抽出剤を含む有機相によって処理対象の廃液から目的成分を有機相に抽出し、次のステップにおいて有機相から水相に逆抽出することで分離を達成する。逆抽出後の有機相は、分離プロセスの最初に戻して再利用することが一般的である。この溶媒のリサイクルは、廃棄物低減化の観点と利用している抽出剤が高価であることから実施されるが、抽出剤は放射線等によって分解することから、その分解生成物等を除去して精製する必要がある。
・ランタノイド
原子番号57 から71、すなわちランタンからルテチウムまでの15 元素の総称。高レベル廃棄物中に多く含まれ、マイナーアクチノイドであるアメリシウムやキュリウムと類似の化学的性質を有する。
・リニアック
線形加速器。サイクロトロンと同様に連続ビーム運転が可能であるが、サイクロトロンよりも強いビーム収束力が得られるため大電流の加速に適する。超伝導化することにより高いエネルギー効率が得られる。
アルファベット順
・4 群群分離
旧日本原子力研究所で開発された、濃縮高レベル廃液を四つの群、すなわち、「超ウラン元素群」、「テクネシウム-白金族元素群」、「ストロンチウム-セシウム群」、「その他の元素群」に分離するプロセス。超ウラン元素群は希土類群とともにDIDPA 抽出剤で溶媒抽出した後、DTPA 抽出剤による逆抽出により超ウラン元素群のみ回収し、希土類群はその他元素群に分別する。DIDPA 抽出剤による溶媒抽出で生じたラフィネートから、ギ酸によりテクネシウム-白金族元素群を沈殿させ回収する。この沈殿物を除いた溶液を無機イオン交換体カラムに通し、ストロンチウム-セシウム群を吸着回収する。この通過液と、先にDTPA 逆抽出で生じた希土類群とを合わせてその他の元素群とする。
・ADS
加速器駆動核変換システムの項を参照。
・EUROTRANS
2005 年 4 月から2010 年3 月の期間に実施された、加速器駆動システムによる核変換システムの検討を行うプロジェクトの名称。欧州連合を中心とする15 か国(ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、スペイン、ベルギー、ブルガリア、ポルトガル、オランダ、チェコ、スイス、ポーランド、オーストリア、スウェーデン、日本)の 30 機関(研究機関や私企業)と 17 の大学が参加した。日本からは日本原子力研究開発機構が 2007 年 4 月から参加した。
・FaCT
「高速増殖炉サイクルの実用化研究開発」の略。高速増殖炉サイクルの実用化を目指した研究開発プログラムで、平成18 年度より実施されている。
・FBR
高速増殖炉の項を参照。
・FFAG(Fixed Field Alternating Gradient)陽子加速器
磁場が時間的に変化しない固定磁場加速方式を用いた加速器。KUCA(京都大学臨界集合体実験装置)において加速器駆動システムの研究開発を行うために、陽子を150MeVまで加速するFFAG 加速器が建設され、供用されている。
・FR
高速炉の項を参照。
・HLW
高レベル放射性廃棄物の項を参照。
・J-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)
日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)とが共同で建設を進める大強度陽子加速器施設群の総称。2008 年にJAEA 東海の原子力科学研究所内に第一期施設が完成した。
・KEKB
高エネルギー加速器研究機構(KEK)に設置されている電子・陽電子衝突加速器。高エネルギー電子と陽電子を二つのリングにそれぞれ蓄積し、その交差点で衝突させて素粒子物理の実験を行う。
・KUCA(Kyoto University Critical Assembly)
京都大学原子炉実験所に設置されている臨界集合体実験装置。1974 年に初臨界に達した。濃縮ウランやトリウムなどの核燃料物質を装荷できる2 台の固体減速架台(ポリエチレンや黒鉛などを減速材として使用)及び1 台の軽水減速架台並びに付設加速器から構成され、高速炉、中速中性子炉、トリウム増殖炉及び加速器駆動システムなどの炉物理研究及び教育訓練に供されている。
・LLFP(Long-lived fission product)
長寿命核分裂生成物。核分裂生成物の中でも半減期が比較的長い放射性核種を指す。
・MA
マイナーアクチノイドの項を参照。
・MEGAPIE
メガワット級鉛ビスマス核破砕ターゲットの国際共同実験。スイス、フランス、ドイツ、ベルギー、イタリア、米国、韓国、日本が参加した。2006 年、スイスPSI(ポールシェラー研究所)の加速器中性子源施設SINQ において、700 kW(580 MeV×1.2 mA)で世界初の液体鉛ビスマス核破砕ターゲットの4 か月間連続運転に成功し、その成立性を実証した。
・MOX
二酸化プルトニウムと二酸化ウランを混合した燃料。プルサーマル燃料と高速炉用酸化物燃料は、それぞれ、数%と20~30%程度のプルトニウムを含むMOX 燃料である。
・MYRRHA
ベルギーの原子力研究機関であるSCK・CEN が中心となって開発を進めている照射試験用加速器駆動システム(ADS)の名称。老朽化した研究炉及び照射炉の代替として建設が計画されている。MYRRHA は出力50-100 MWt の鉛ビスマス冷却型ADS であり、ADS の実証、重金属冷却高速炉の実証、燃料・材料照射、半導体材料製造、医療用アイソトープ製造等を目的とする。建設予定期間は2017-2021 年、建設費は960M€である。
・OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)
原子力発電を安全で環境に調和した経済的なエネルギー源として開発利用することを、加盟諸国政府間の協力によって促進する経済協力開発機構(OECD)傘下の国際機関。
・PSA(Probabilistic Safety Assessment、確率論的安全評価)
原子力施設等で発生し得る事故の発生頻度と発生時の影響を定量評価し、その積である「リスク(危険度)」がどれ程小さいかで安全性の度合いを表現する手法。そのうち、冷却材喪失事故等の起因事象の発生頻度と、その後の安全機能の失敗確率から、事故の発生頻度を評価することをレベル1PSA と呼ぶ。その後は、核分裂生成物等の環境への放出量評価(レベル2PSA)、環境中の放射能移行解析と公衆被ばく評価(レベル3PSA)と続く。
・P-T 導入
群分離・核変換システムを核燃料サイクルに導入すること。P-T は群分離・核変換(Partitioning and Transmutation)の略称である。
・Si 照射
原子炉等で発生させた中性子をシリコン単結晶に照射して半導体化する技術。
・TDdDGA(N,N,N’,N’-テトラドデシル-1,3-オキサペンタンジアミド)
TODGA(テトラオクチルジグリコールアミド)のアルキル基を、オクチル基からドデシル基に置換することで抽出容量を向上させた抽出剤。
・TEF-P
核変換実験施設の項を参照。
・TEF-T
核変換実験施設の項を参照。
研究開発局原子力課放射性廃棄物企画室