第7期 環境エネルギー科学技術委員会(第8回) 議事録

1.日時

平成27年1月20日(火曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.議題

  1. 中間評価に対する対応について
  2. 平成27年度の環境エネルギー関係予算案等について
  3. 環境エネルギー分野における研究開発の在り方について
  4. その他

4.出席者

委員

安井主査、三村委員(主査代理)、岩船委員、江守委員、河宮委員、杉山委員、関委員、高村委員、館山委員、田中委員、林委員、原澤委員、松橋委員、安岡委員、山地委員、鷲谷委員

文部科学省

田中研究開発局長、磯谷大臣官房審議官、原環境エネルギー課長、木下環境科学技術推進官、山村課長補佐、鏑木課長補佐、西川地球観測推進専門官

オブザーバー

独立行政法人国立環境研究所 住理事長、国立大学法人東京工業大学大学院 小長井教授、国立大学法人東北大学大学院 田路教授

5.議事録

【安井主査】  それでは、ただいまより第7期科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会環境エネルギー科学技術委員会の第8回の会合を開催させていただきます。本日は御多忙中のところ、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 それでは、まず事務局から本日の出席者の確認をお願いいたします。
【山村課長補佐】  松橋先生が今、遅れられているようですけれども、御出席委員が16名ということで、過半数に達しておりますので、委員会は成立となります。
 また、今回、議題1に関しまして、独立行政法人国立環境研究所の住理事長、国立大学法人東京工業大学大学院の小長井先生、国立大学法人東北大学大学院の田路(とうじ)先生にそれぞれ御出席いただいておりますので、あわせて御紹介させていただきます。
 また、事務局に異動がございまして、研究開発局長が田中敏から田中正朗に、環境エネルギー課長が松尾浩道から原克彦に交代しましたので、御報告申し上げます。
【原環境エネルギー課長】  よろしくお願いします。
【山村課長補佐】  以上でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。
 それでは、議事に入ります前に、本日の配付資料の確認をお願いしたいと思います。

(配布資料の確認)

【安井主査】  ありがとうございました。それでは本日の議題でございますが、お手元の議事次第をごらんいただきますと、1番目が中間評価、2番目が平成27年度の環境エネルギー関係予算、3番目が環境エネルギー分野における研究開発の在り方、その他となっております。2時間のスケジュールで進めてまいりたいと思います。
 それでは、最初の議題1でございますが、「中間評価に対する対応について」ということでございまして、先ほど御紹介いただきました住理事長、小長井教授、田路教授から御報告を頂いた後、御質問あるいはディスカッションをさせていただきたいと思います。
 説明時間は、住理事長と小長井教授は各15分、田路教授は25分という予定になっているようでございますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、その後に質問時間でございますけれども、今の予定では5分ぐらいしか取れておりません。
 それでは、国立環境研究所の住理事長から、気候変動リスク情報創生プログラムの中間評価に対する対応についての御報告をお願いしたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。
【住理事長】  気候変動リスク情報創生プログラムのプログラムディレクターをやっております住でございます。中間評価を受けて、どういうふうに考えたかということを少し御説明したいと思います。
 プログラム全体についての指摘事項なんですが、そこに書いてありますように、やはり1つは、今後、何を具体的にするか、もう少し明確にしてほしいということで、それはそうでしょうと。それから、もともと領域テーマAから領域テーマDまで、全体にリンクを取るようには作ってあったんですが、細かなところが、ちょっと分かりにくいところがあるので、リンクを含めて明らかにしてほしいということと、それから、一般への分かりやすいアウトプットを今後とも進めていきなさいと。これは、皆さん、いつでも言うところで、やはりそういう意味で社会的に情報発信することが大事だろうと思います。
 具体的な対応なんですが、やっぱり再確認をしたのは、冒頭にありますように、リスク情報というものにして出すんだと。気候変動に関するいろんなことがあるんですが、それをリスク情報という形にすることが目的でございます。それを基に、具体的にその情報をどう生かしていくかというところに関しては、別途、気候変動適応研究推進プログラム(RECCA)の後継であるとか適応計画とかいろいろありますが、それに向けて、より使いやすい情報を出していくところを目標としております。
 それから、個別的な目標なんですが、とはいえ、やはり基本的な日本が持っているモデルの精度が悪かったら、どんな絵を描いても何一つ信頼されていませんので、何といってもモデル開発をすることは避けて通れないということだけは強調しておきたいと思います。
 しかも、現在では、どんどん、どんどんグローバリゼーションが進んで、かつ諸外国はというか、「敵」という言葉は使いたくないんですが、競争相手はリソースをどんどんぶち込んできておりますので、競争は激烈になっておりますので、やはりそういう観点で引き続き、今までの我々のモデリンググループのヘリテージを生かしながら、新しく、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書(AR6)があると思いますので、それに向けて我々のモデルの成果を飛躍的に高めていくということはございます。
 それから、リスク評価に関しては、現在それを進めようと思っているんですが、ただ、リスクの評価をする場合でも、自然災害という非常に分かりやすい、ある程度実績のある分野から、生態系みたいに、リスクがあることは分かるんだけど何なのかというように、分野において非常に違ってございますので、それに関する研究対象や時空間などを整理して、その辺のリスクに関する、序列化に関する理論的な取扱いなんかを少し考えていきたいと思っております。
 それから、試みなんですが、やはりリスクをどう考えるかというところで、今現在、一番大きな問題となっておりますのは、非常に確率が小さいんだけど甚大だ、そんなのをどういうふうに扱うんだろう、ということです。だから、しょっちゅう起きて、そこそこの影響が出る類いのものは、いわゆる確率論とかいろんなことで対応できるんですが、ほとんどまれにしか起きないけど、起きたらもう終わりみたいなやつは、諦めるというのは1つの解だと思いますが、そういうことを含めて理論的な枠組みがまだ固まっていませんので、その辺もトライをしてみたいと思います。
 それから、特にこれからのリスク評価に関して言いますと、領域Dというところがございまして、そこは自然災害、水資源、生態系ということを軸に展開しているわけですが、特に水資源、自然災害に関しては長い蓄積もございますし、更にそれにいくための技術的なプロトコルとして、理論的・基盤的にはまだ完全に明らかではないんですが、やはりモデルを使った物理的ダウンスケーリングというのは、それなりに大事なんではないかと思っておりますので、それに関する手法の開発等をやっていこうと思っております。
 また、地球温暖化に伴う極端現象といいますと、常に自然現象としてそういうのがあるではないかということがございまして、実際、台風でも豪雨、何であっても、全然今までと違ったメカニズムで起きるはずがございませんので、当然それは自然の摂理の中で起きてきます。そういうところをきれいに分けていく、説明をしていくためには、どうしても確率的な物の考え方を導入せざるを得ないので、そういう点では、イベント・アトリビューションというのは現在、非常に進められています。それはまだ100%完全に確立した方法論ではないと思いますが、それらに向けて考えていきたいなと考えております。
 それから、分かりやすいアウトプットはそれなりに努力をしていきたいなと思っております。一般の講演会とかニュースレター、メディアの取材対応。特に、豪雨災害等に向けてマスコミ等のニーズが非常に多くございますので、それらに向けては適宜対応しているつもりです。ただ、マスコミは、「これは温暖化のせいですよ」と言ってほしくて、そういう鎌を掛けてくるところがありますので、それは、「いやいや、そこまでは断定できません」と言いながらも、ちらちらと言うという。とにかくマスコミへの対応は、極端なことを言わせよう、言わせようというのがマスコミの傾向ですので、対応しながら考えていきたいと思います。
 あと、少し時間がありますので、各テーマについて行いますと、テーマAに関しては、ベースラインが基本的にはモデル開発なんですが、モデルのパーツ的な部分が並んでいまして、それはどうモデルにつながっていくかというのは、やっている方は自明なんですが、外側から見ると多少、「何、関係あるの?」というところがあったかと思います。いろんな部分のコンポーネントの開発は最後に1つの大きな気候モデルとして統合されていくということに御理解いただければと思います。
 それと、先ほど述べましたように、やはりイベント・アトリビューションとか、気候感度の決定メカニズム、これも何年やっているんだと言われるかもしれないんですが、何年もやるものなんですよ、これは。すぐ決まれば苦労はないんですが、やはりそこは辛抱していただいて、しかしながら、引き続きやっていこうと考えております。
 あと、現実的にはやはりイベント・アトリビューションという、ある意味では自然現象の確率統計事象としての表現、これも突き詰めていくことをやっていきたいと思います。
 テーマBに関しては、特筆するのは、経済シナリオと炭素排出のところの関係をより強化をしてやっていきたいということが特徴だと思います。殊さら、松野さんのz650のシナリオを言うつもりはありませんが、ただ、それに言わせると、日本は余り考えずに安易に海外のシナリオをそのまま使っているから、もうちょっと頭で考えろという御託宣がございましたし、僕もそれはそうだと思いますので、そういう点でシナリオの分野と本当の意味でのシナリオを考えながら、気候予測とリンクをすることをより明確にしていきたいと思います。それは逆に言うと、ほとんど今までやられてこなかったので、これを契機により積極的にやっていくことが必要だろうと思っております。
 領域Cは、ダウンスケーリングそのものを非常にやっておりまして、今までどおりやっていこうと思っております。
 領域Dは基本的には2つの流れがありまして、水資源、水災害、自然災害の分野と、生態系と発展という分野で、現代でのレベルが違いますので、それは明確に分けて意識しながら対応していこうと考えております。それから、よく全体の関係を取りながらやっていきたいと考えております。
 あと、文科省から要望がありまして、IPCC作業部会(ワーキンググループ)1、2、3が手を取り合って、すばらしいシナリオができるようになってほしいねと。そんなもの、外でもできないのに、何で我々のところでできるのかと言っておいたんですが、とはいえ、外から見れば、ばらばらに勝手なことをするんではなくて、それぞれ手に手を取って、とりあえず同じ目的に向かって頑張っていくことが大事だろうと考えております。
 それから、資料にはありませんが、中間評価で言われた中では、フューチャー・アースとステークホルダーとの関係というのは、昔流に言うと、正しい結果さえ出せば、おのずと分かるというのは、それで済む時代ならいいんですが、今はそうではございませんので、やはりステークホルダーとの、手に手を取るかどうかは別として、お互いに対話を通して、何が問題かということもございますので、そういうことは具体的に我々の範疇では、影響評価とインパクトの推定と、でき得れば対応適応策のレベルぐらいのことは考えているんですが、その範囲内でも現実的に生活している人とか現実に住民との対話をしている自治体の人とか、そういうところとの対話は強化をしながらやっていくことを、資料にはまだ書いてありませんが、萌芽的な意味で手探りでそれはやっていきたいなと考えております。
 以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいま御報告いただきましたことに関しまして御質問あるいは御意見等ございましたらば、名札を立てていただければと思いますけれども、いかがでございましょうか。それでは、三村委員、お願いいたします。
【三村主査代理】  最後に言われたリスクアプローチとインパクトという話の中で、このリスク創生では、社会経済シナリオをどれぐらい取り込もうとしているのか、あるいは、それをちゃんと担保するような部分があるのかというのを聞きたいんですけど。というのは、日本の国内で言うと、人口減少社会で、人口の分布も地域の姿もすごく変わると。一方、世界で見ると、アジアやアフリカで非常に大きな人口の増加や都市への集中が考えられている。そうすると、気候シナリオが片方で科学的に与えられても、それの影響を受ける方がどう変わるかによって影響やリスクの姿は相当変わるわけですよね。その辺のことを、どの辺までスコープに最終的に入れようとしているかというのはどうでしょうか。
【住理事長】  三村さんが言われたようなところまでは、まだスコープには入っていません。それは多分、無理だと思います。この2年間でやるのは無理だし、だから、ここで言っているのは、我々がファイナルなリスク情報まで出し得ると思っているのは、洪水とか自然災害とかその分野、あと高潮。要するに、それは物理の範囲内で、かつ水に関わるところというのは一番シンプルな物理的原則に基づいているので、そこぐらいはいくだろうと考えています。それから、その統計的な扱いも、河川の分野では長い歴史がありますので、一応、手なれているとは言いませんけれども、蓄積もあるし、それはできるだろうと。恐らく、シナリオと書いてあるのは、そのもっと前の段階で、例えば、こんなエミッションって線1本引けば、それはいいんですけど、具体的にそれをどうやってやるのかというところは余り議論されないまま、従来はエミッションシナリオを使いながらやっていたところがあると僕は思っていますので、その辺の対話を具体的にすることが第1歩。だから、ここに関しては、シナリオとの対話というのは、ある意味では第1歩と考えていただければと思います。
 三村さんが言われたようなことは非常に重要なんですが、視点が動きますので、いろんな人が入ってきて、ああだ、こうだと言うので、よっぽど整理をして取り組まないと、ほとんど空中分解するおそれがある。しかも、人のことは聞かないという人が集まっていますので、相当大変だと僕は思っております。
【三村主査代理】  分かりました。
【安井主査】  ありがとうございました。林委員、お願いいたします。
【林委員】  今、三村委員のおっしゃったのは、降りかかっていく先の受け手の方ですよね。どっちも人なんですが、原因を作る方の現象ですね。経済が発展して都市化していくと。それによって、いろんな原因があって、例えば、産業がどんどん発達し、それが場合によっては遠いところへ展開していくと。それによりまた物資を運ばなくちゃいけないということがありますよね。その辺のメカニズムを全く考えずに、受け手であったり原因者であったりする、それは人間あるいは経済社会なんですが、そこはいろんな議論がいっぱいあって、ああだ、こうだという話じゃなくて、そこのメカニズムを何らか確かなものを、確からしいものはどこだというのをやる必要があると思うんですけれども、これは最初のスコープにはそんなに入ってなくて、それを超えて難しいというようなことでもあるんですかね。
【住理事長】  それはもともと入ってなくて、あくまでもこれは基本的には物理的な気候システムの将来予測という問題だと考えています。今、林さんが言われたようなお話というのは非常に面白いんですが、いろんなことがあり過ぎまして、それを考えるのはいいんですが、どうするかというのは多分次の問題で、恐らく立ち位置によって非常に違ってくる。将来に関するいろんな部分の動向というのは大分違ってくるのと、もうちょっと言うと、当たった試しはないというのが結構名文句でありまして、1900年に2000年のことなんかほとんど分かってなかったと考えれば、余り考えない方がましだという、詳細に考えても答えは出るだろうかという気が僕はしております。そういう点では、あくまでもこういうリスク情報というのは、僕は、ある程度大ざっぱなもの以上のものは出てこないと思います。信頼できるようなものという観点では。
 地震の例でもいいんですけど、1,000年に1回大津波が来るという以上のことが出せたのかということだと僕は思います。その辺のところは、いろいろ解釈の議論があるんですが、余りサイエンスによらないで自分の頭で考えろと僕は言いたいんです。サイエンスの出せることは、ある幅のことなんですよ。だから、このままほうっておいたら暑くなるよとか、そういうことは言えますが、ああだ、こうだ、細かいことは、それは政治とか経済とか人文社会とか社会科学の人のテリトリーだと僕は思っていますが。
【林委員】  そこは今回やらないと。
【住理事長】  やらない。
【林委員】  そこが、科学で全くできないわけではないと思いまして、そこはここに組み込まれてないと、こういう意味ですね。
【住理事長】  はい。それは科学が働くことはあるとしても、科学が全部決められるわけではないし、もっと大きなファクターがあると僕は思っています。
【林委員】  住さんがおっしゃっている科学というのは、非常に狭い範囲の科学をおっしゃっているわけですかね。
【住理事長】  うん、狭い範囲というか、ここに集まっている人たちがやっているような科学ではないと思います。
【林委員】  はい、分かりました。
【安井主査】  ありがとうございました。館山委員、お願いします。
【館山委員】  私の方は、技術的なところで伺いたいと思っているんですが、最初のモデリングのところで、何年もやっているのかという話を住先生、おっしゃっていたんですけれども、確かに、このプロジェクト、第3期ぐらいの形で、ずっとつないでいて、本当にいつ終わるのかなというような印象が確かにあります。
 一方、エネルギーの分野では、最近、ロードマップというか、ある程度年限を区切って、ここまで行けというのを無理やりでも書かせられるというか、そういうことで国民に説明するところもありますので、この分野も多分、ロードマップとして、ここまで行ったら、ある程度社会に広く還元できるというような道筋を、サイエンスの方の立場で見せられないのかなというのがあるんですけれども、それはどうお考えでしょうか。
【住理事長】  やはりいろんな意味でモデル開発というのは、「いっちょ終わり」というものではないんですね。常に、まだまだ不十分な部分がありますので、継続的に改良を進めていくことが必要だと思っております。それは現在のレベルでは、こういう形でプロジェクト化してやるしか道がないというのが1つ。だから、いろんな形があると思うんですが、日本としては、明らかにこういうモデル開発が進んだのは、計算機開発と軌を一にして進んできたので、そういう点で計算機リソースのことを考えながらやっていくという観点でやってきております。だから、下駄(げた)があれば十分だからモデルは要らないと言う人もいるんですが、実際は、そういう継続的な努力の中で、例えば気象庁がやっている短時間の予報精度なんか確かに上がっているんですよ。昔の天気予報に比べれば、今の天気予報なんて、格段の差ぐらい上がっていると僕は思っています。そのくらい進歩しているんで、そういう形で日々、成果の還元はされていくだろうと思っております。
【安井主査】  ありがとうございました。ちょっと時間が押していますので、松橋委員、簡単に。
【松橋委員】  さっきの話の流れ、非常に興味深いところなんですが、住先生の専門に近い気候モデルとその影響、気象の影響の方とですね、人文社会というか、我々エンジニアリングの方の排出の方の流れがあるんですね。リスクマネジメントで考えたときに、地球全体のリスクを避けるためにエミッションをどれだけ抑えるべきかという流れになると、我々のエンジニアリングの方で考えないといけないんですが、どちらかというと、住先生の気候モデル及び自然現象の影響をいかに正確に幅を持って出していただけるか。それを基に、リスクマネジメントの大原則を基に、我々の方でどの程度にエミッションを抑えるべきか、こういう流れで考えるのが自然であり正当なんですね。
 ところが、今のIPCCなんかで出ている議論は、例えば、1つに2度という目標があって、それはどうもいろいろ見てみると、リスクマネジメントの大原則をやや逸脱した論理で流れていると。なおかつ、不確実性の幅を考えた場合に、リスクマネジメントというのは、最悪の場合に何が起こるか考えて、それを避けると。最悪のシナリオを避けるというのが大原則なんですが、幅が大き過ぎるために、そういう論理手順でやると、エミッションを禁止的に下げないといけない。それによって逆に、我々人類の経済的な破局を招くようなシナリオを作らないといけなくなる。それでは駄目なので、住先生の方で、不確実性の幅が狭い、精度の高いものを作っていただければ、我々の方でも、人類にとってフィージブルなリスクマネジメントのシナリオができるので、是非その幅を狭める努力を期待するわけなんですが。
【住理事長】  それは、やってないわけじゃないです。日夜、みんな努力してやっているわけで、可能性はあるとは僕は思っているんですが、やはりリソースが要る。だから、やっぱり金は掛かるんですよ。単純に言って、安い金で物すごいゴールデン・インフォメーションを手に入れようというのは甘い。だから、ちゃんとした情報を取りたければリソースは必要。明らかに、今、ネクストフェーズというのは、雲とかをもっと分解したようなモデルをやれば、ある程度のブレークスルーがあるのは確かなんですが、ロングタームに関して言うと、それよりも別の不確定要素も結構多いので、その辺のバランスを取りながらやっています。
 エミッションの削減等のところは、全部こちら側の問題に押し付けられて、おまえらがちゃんとしないから削減が決まらないんだと言われるのはちょっと論外でありまして、欲のままいろいろ交渉しながらやっているからだけの話だと思いますけど、人間は欲の塊だから、それは悪くはないわけで、当然なんですよ。だけど、例えば、物すごい金をぶち込んでやったからといって、現在のばらつきがあした突然、0.1度の精度に収まるかと、そんなうそをついたら、子供でもそんなのうそだと分かりますので、やはりそうはいかない。それはやっぱり自然というものは、本来そういうものかもしれないところはありますので、それを理解していただいた上で、皆さんのエミッションをどうするかというところも含めて考えていただければと思います。だから、2度は確かにポリティカル・アジェンダですよ。我々、何もそういうことは言っているわけじゃありませんので。
【安井主査】  ありがとうございました。
 それでは、次に行かせていただきたいと思います。続きまして、東京工業大学大学院理工学研究科、小長井先生から、革新的エネルギー研究開発拠点形成の御発表を頂きたいと思います。お願いいたします。
【小長井教授】  それでは、資料1-2をごらんいただければと思います。革新的エネルギー研究開発拠点形成の研究総括の小長井でございます。昨年、夏の中間評価時に先生方からいろいろな御意見を頂きまして、これからそういった御意見を基に、確実に成果を上げていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 2ページ目からごらんいただければと思いますが、まず、私どもが中間評価に対してどのように対応したかという話をさせていただく前に、事業の概要を述べさせていただければと思っております。
 2ページ目に事業の概要が出ておりますが、この事業は平成24年度から5年計画ということでございます。研究テーマは、一言で言うと、シリコンのナノワイヤー太陽電池というものでございます。
 1つ大きな特徴は、これは省庁連携になっておりまして、経済産業省、独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)が福島県の郡山に新しく再生可能エネルギー研究開発の拠点、建物を造りまして、文科省サイドは1,000平米の場所を借りまして、そこでこの研究を実施するということでございます。産総研の研究では、今、福島再生可能エネルギー研究所(FREA)と呼んでいるわけですが、これが完成したのは、昨年4月でございます。平成24年、平成25年度はまだ建物がございませんでしたものですから、チームメンバーのところでそれぞれ研究を行っておりまして、基本的には、この予算で購入したもの、雇用している者は、全部、今、FREAの建物におります。平成26年度に購入したものは、直接そこに入れるというようなことでございます。
 私どもが今狙っておりますのは、シリコンの太陽電池の変換効率を、今まで25%だったのを30%にしたいということですけれども、これはそんな単純な話ではございませんので、もうかなり理論限界を超えているところですので、非常に大きなブレークスルーをもたらすようなことをしたいということであります。ということがございまして、いろんな人間を入れております。ケミストリーの者からフィジックス、半導体の専門家から結晶成長の専門家からデバイスに関わる者、あるいはシステムに関わる者まで、こういう者を雇用いたしまして、今、研究を実施しているところです。実際に事業を運営するに当たりましては、独立行政法人科学技術振興機構(JST)が全面的に支援してくださっているということでございます。
 3ページ目をごらんいただきますと、研究の概要が書いてございます。左の下に従来のシリコン太陽電池の変換効率の推移が出ておりますけれども、この15年間、ほとんど変換効率は上がっておりません。これは、シリコンという材料が持つ性質でほぼ変換効率が限界に来ているということでありまして、これを打ち破るために、私どもは、右側に書いてございますように、積層型、タンデムというのですけれども、そういう新しいシリコン太陽電池を作っていこうということです。
 特に、量子効果を使いまして、同じシリコンではありますけれども、禁制帯幅が1.6とか1.7エレクトロンボルトという高いものを作りまして、2種類の太陽電池を積層して効率を上げるということです。これ、タンデム構造を作るというのは、効率を上げるためのよく知られた手段でございますけれども、特にワイヤー型のシリコンの太陽電池を作るというのは、ここが大変画期的といいますか、誰もチャレンジしたことがないところでございまして、そういう意味では、雇用している者全員が一丸となってやっているわけです。
 この研究期間終了までに、従来にないシリコンの変換効率、太陽電池の変換効率、30%を実現したいというのが大きな目的です。それにあわせて、これからシリコン太陽電池の産業界の動向を見ますと、10年くらい先まではシリコンを薄くしていくところで決着がついていくだろうと思っておりますけれども、その先のところが、大変未知数でございます。それに対して、このプロジェクトでは超薄型のシリコンの太陽電池を作っていきたいと思っておりまして、併せて検討しているところでございます。
 右の下の絵にございますような太陽電池を作るときには、性能を上げるには、やはりシリコンの結晶自体がよくなければいけませんので、1つのテーマとしては、とびきり質が高いシリコンを作るということをしてございます。それから、メーンのところはナノワイヤー、あるいはナノウォールを作るものでございます。これについては、研究開発当初、今まで既成の報告がございませんので、皆さんが持っているアイデアをそれぞれ生かしていこうということで、いろんなことを試しておりますが、後でお話し申し上げますように、これからはだんだん絞っていって、デバイスとして形になるようなものに集中していきたいと思っているわけです。
 ということで、次を見ていただければと思いますが、4ページ目です。4ページ目は事業実施体制でございまして、私が研究総括で、私は今現在、月に2回くらい郡山へ出向いていろいろ打合せをしているところですが、現地といいますか、郡山には常駐で、私の補佐を1人置いておりますが、市川というのは、かつて企業で薄膜太陽電池の生産に関わっていたり研究所長を経験したりしている者でございまして、そういう意味では、学あるいは産という両方の観点から私の補佐としていろいろやっていただいております。
 今、チームを3つに分けておりまして、結晶成長するチーム、チーム1ですね。それから、チーム2、ここは、最初どういう方法がいいということが分かりませんでしたから、いろいろ細かくテーマによって分けてございますけれども、ワイヤーを作るのでもエッチングする方法、あるいは成長させる方法、いろいろ試しております。これをこれから絞っていこうという、そういうことでございます。チーム3は、実際に太陽電池を作って、変換効率が高いところを見せていかなければいけないわけですけれども、この事業の特徴としては、学だけではなくて、実際に今、製造に関わっている、企業にもかなり入っていただいているということでございます。例えば、3-4のカネカとか、3-5のパナソニックというのが入っておりますし、この中に見えませんが、3-1のところには三菱電機が入っているということで、全く別のプロセスで生産に持っていくのは難しいわけですので、現に生産しているこういう企業が入っていますと、整合性を取りながら持っていけるのではないかと思っております。
 引き続きまして5ページでございますが、中間評価のときにもいろいろ御意見を頂いております。それをまず御紹介して、それから、今どんなふうに取り組んでいるかということですけれども、まず、5ページの(1)、マル1です。課題間連携や進捗評価をしっかりと実施していることをアピールしてください、こういうことでございます。先ほど、4ページのところで、チームを大変小さく分けてしまったということもありまして、各チームが好き勝手にやっているのではないかと思われたところもあるかと思いますけれども、これはあくまでも予算的に積み上げるためにやっていたわけでございまして、実際には私が研究総括として全体を統括して、横の連携がつながるようにしてございます。それは後で、もう一回紹介させていただきます。
 次の6ページのところですけれども、(2)の研究開発の方向性ということでございます。事業終了後の実用化も見据えて、特に以下のことに着目して改善してくださいということでございますけれども、マル2として、有望と考えられるナノワイヤーあるいはナノウォールの形成技術を特定して絞り込みを行うという御意見を頂いております。それから、マル3として、集光等も含めた太陽光発電のシステム化による経済性の向上や量産化によるコストダウンの方策について検討してほしいということでございます。それから、4番目として、事業終了後に産総研や企業への橋渡し、これの具体策をもうちょっと考えた方がいいのではないかということでございます。
 これについて今検討しているところを御紹介いたしますと、まず7ページの課題間連携ですが、これは先ほど、ちょっと申し上げたように、私の説明がそのとき悪くて誤解が生じたのかもしれませんが、これは非常にきっちりやっております。具体的に申し上げると、例えば、私が郡山に出向いて、丸1日掛けて全員集めて、かなり真剣なディスカッションをしております。特にナノワイヤー形成チームは、デバイスを作ったことがない方が多いので、そういう観点ではデバイスなんかできませんよということをかなりはっきり申し上げておるということで、正直申し上げて、この辺についてはうまくいっていると思います。もちろん全体でやりますと1日掛かってしまいますから、そんなことばっかりやっていると実験が進みませんので、チームごとに更に検討を進めているわけでございます。
 8ページは、更に細かく今の課題間連携等々について書いたものでございますけれども、これは話が細かくなりますので、ちゃんと連携はやっていると御理解いただければ有り難いと思います。
 9ページのところ、テーマの絞り込み。これについては、大変貴重な御意見を頂いたと思っております。とにかく最初、先ほどちょっと申し上げましたように、ナノワイヤーとかナノウォールをどのように作っていくかということについては全く未知数でありまして、今まで量子効果が現れるようなところまでやったチームはないわけです。そういうことがあって、今考えられる方法、あらゆるやつをみんなで知恵を持ち合っていこうということで始めております。最初は各研究機関でやって、今は郡山で集中的にやっているわけでございますけれども、デバイス化を考えますと、そろそろ、やはりこれはちょっと難しいというのも出てきておりますので、それは絞っていきたいと思います。
 例えば、ワイヤーがきれいに結晶成長しても、どうしてもそこに入る不純物が避けられないという場合には、なかなか太陽電池としての特性は望めませんので、それはデバイスグループとしっかり話して、整理・統合していきたいと思っています。これは、私1人の意見でそれをやるわけではございませんので、一応、私どもは事業運営委員会有識者会合というようなものを作っておりまして、これは太陽電池の専門家の集団でございますけれども、彼らの意見を聞きながら、あるいはチームリーダーの御意向も聞きながら、研究総括として、今、考えているところでございます。
 これからの進め方については9ページの後半のところに書いてございますけれども、あす、郡山に行って、実は木曜日にかなりシビアな会議をやることになっていまして、それを基にして事業運営委員会をやって、次年度に向けて、どういうふうに研究グループを統合していくか、デバイスに集中していくかということを考えて、次年度計画に入れていきたいと考えています。
 それから、10ページ目のところに経済性のことが書いてございます。私がこれを提案させていただいたときには、もちろん経済的にも勝算があると思ってやっているわけですけれども、やはり数値として何か出ないと心配だということがありますので、今、簡単に、これはまだ第1次試算くらいのものですけれども、計算した結果を示しております。
 ポイントは、やはりこういった複雑な構造を作ると、太陽電池の製造プロセス自体は、最初は非常に高いものになります。それを使って、キロワット/アワーコストを下げるには、私は低倍率集光というのを提案してございます。低倍率集光というのは、例えば、10倍に集光するということです。集光器自体は今、大変安くできますので、それによって多少セルは高くても低倍率集光でキロワット/アワーコストを下げていくわけです。これは今、アメリカの有力な企業、サンパワーという会社もございますけれども、そういう会社でも、かなり優先順位が高いところに来ておりまして、これからどんどん出てくると思います。
 それから、もう一つ、更に効率を飛躍的に上げるために、今、波長スプリッティング方式というのを考案しておりまして、これについても将来のコストの見通しを計算してございます。具体的なものは11ページに書いてありますけれども、やはりいろいろ仮定を置かないとできませんので、仮定を置いておりますが、先ほどちょっと申し上げたように、集光を10倍にするということ、それから、1軸追尾しますと発電量が2割増えますので、そういうことを考えております。それから、低倍率集光しますと、モジュールの大きさが細長いものになりますので、例えば、そこで3割製造コストが上がるとかというようなことを含めて、11ページのコスト計算をしているわけですが、これは今、郡山のチームの中に企業サイドの方がおられますので、そういう方を中心にして御議論いただいているということで、これはかなり堅い線で書いていると思います。ただ、一番不確定要素があるのは、ワイヤーの太陽電池そのものを作るところでありますけれども、逆に、ここに書いてあるくらい安くできないと使いにくいということにはなるかと思います。
 11ページの下を見ていただきますと、比較の対象は、普通の平板型のシリコンの太陽電池、効率が20%のもの。それから、その右側に書いてあるのは10倍集光のシリコンの太陽光発電システム、これも変換効率20%で、この真ん中のものは、今、かなり市場に出てきております。私どもは、これの効率を30%にして、更に10倍集光するというような観点でございまして、キロワット/アワーコスト、これはかなりたくさん作ったときの話でございますけれども、平板型で11.4円でしたら、10倍集光だけですと9.2円、波長スプリッティングですと効率が更に上がりますから8円くらいになるという、こういうものを今、計算してございまして、だんだん実用化研究にいくときは、これを1つの目標として製造コストを下げていきたいということでございます。
 12ページにその内訳を書いてございますけれども、ちょっと複雑になりますので省略させていただいて、もう一つ、13ページのFREAとか企業への橋渡し、ここが、今までできておりませんでしたので、前回の評価委員会を基に、これからしっかりと取り組んでいきたいということでございます。今まで、どっちかというと国際発信ということが気になっていたので、そういう活動をよくやっていたわけでございますけれども、これからは地元企業にいかに技術を伝えていくかということが重要だと思っております。そういうことで、福島県のハイテクプラザとか郡山市の産業創出課と連携して、これからはこっちから成果を持っていって売り込むというようなことを考えています。それから、産総研自体が今やっておりますコンソーシアムへ加わらせていただくとか、昨年の12月に私も発表しておりますけれども、福島復興再生可能エネルギー産業フェア、これはかなり大勢の人が来ますので、こういう場に我々が作った現物を持っていって、もう少し細かく、易しく技術を紹介して興味を持っていただきたいと思っています。
 14ページは、このワイヤーの太陽電池というのは最後まで産業化できないわけではなくて、各所に大変重要な要素技術がありまして、そこからでも最初は実用化へ持っていけると思っています。その中で一番近いと思っているのはシリコンの結晶成長のところで、今、Noncontact Crucible Methodという大変すぐれた方法を開発中でございます。これが一番早くいけると思いますので、今後、産総研で実証してもらうとか、あるいは、地元企業に関心を持ってもらうとか、そういった方向に持っていきたいと考えています。
 時間がかなり過ぎてしまっておりますので、少し途中を省略して、15ページの最後の「FREAや企業等への橋渡しの具体策」というこの絵で、もう一度御確認いただければと思いますけれども、今、5年計画でやっておりますが、基礎基盤的なものでもすぐに実用化に持っていきそうなところ、シリコンの結晶成長技術がまず実用化に移されるであろうと思っています。要素技術として、そのほか、光閉じ込め技術とか、そういうものが早めに実用化研究の方へ持っていけると思います。実際には、ナノワイヤー太陽電池として実用化できるのは2020年以降だと思いますけれども、その間、応用研究、実用化研究、こういうものにだんだんスケールアップしていって、最終的に物にしていきたいということでございます。そのためには、福島県のネットワーク、JSTのネットワーク、こういうあらゆるものを使ってアピールしていきたいということでございます。
 ちょっと時間が長くなってしまったようですが、これで終わらせていただきます。
【安井主査】  ありがとうございました。ただいまの御報告に対しまして、御質問、御意見のある方は札を立てていただければと思いますが、いかがでございましょうか。どうぞ。
【館山委員】  小長井先生、ありがとうございました。私も物性系の研究者なものですから、ナノワイヤー、やっぱりかなり作るのが難しいんじゃないか、そういう問題があるんじゃないかということで、でも、先生の努力で有望化されたとは言われていますけれども、やはり既存のシリコンの市場がたくさんあって、このナノワイヤーというのは、それを凌駕して、完全に置き換えるような技術とお考えなのか、あるいは……。
【小長井教授】  これは、置き換わるのではなくて、先ほど、ちょっと絵で示したように、既存の太陽電池の上にこれを乗せるわけなのですね。要は、今の既存の太陽電池だけでは、25、26%は絶対いかないです。それが30%までいくにはどうしたらいいかということで、うまく既存のシリコンの太陽電池とワイヤーのものを重ねていくわけです。ですから、メーカーさんからすれば、ある程度下地のものが、しっかりしたものができていれば、こちらを今度は作って重ねていくことになりますので、比較的入りやすいと。全然違う材料でやりますと全く違うプロセスになりますので、それは難しいのですけれども、こういうものであれば、比較的整合性は取れていけるのではないかと思っています。
【安井主査】  ありがとうございました。
 ほか、よろしゅうございましょうか。それでは、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、最後になりますけれども、東北大学大学院環境科学研究科、田路先生から、東北復興のためのクリーンエネルギー研究開発推進の中間評価に対しまして御説明を頂きたいと思います。お願いいたします。
【田路教授】  よろしくお願い申し上げます。資料ですが、昨年の中間評価の御指摘を踏まえまして作成させていただきました。本日は、本プロジェクトの計画見直しを中心に報告させていただきます。
 ここで添付としました、ライフサイクルアセスメント(LCA)につきましては、検討途中ということで、参考資料という形で取り扱わせていただいております。
 本プロジェクトは、波力、潮流発電の開発と被災地への実装と運用という日本で初めての実証実験を負う課題1、それから、微細藻類を仙台市の下水を用いて培養する、下水処理に必要なエネルギーを削減しながら油を生産するという日本初の試みを目指す課題2。そして、課題3は、地域の小規模に生産された様々な未利用の再生可能エネルギーを既存電力システムと融合し、かつ移動体が人を運ぶだけではなくて電力移動も行う。すなわち、電力の需要と供給を担うという世界初めての、移動体を含んだエネルギー管理システムを開発し、石巻市や大崎市を含む地域に実装することを目的としております。これにより、平時においては再生可能エネルギーを無駄なく効率よく活用し、非常時には人を迅速に避難させつつ、電力が必要な場所に移動体が電気を運ぶということができます。このようなシステムは、被災地が望む安心・安全のまちづくりに直接貢献できるものと考えております。以上が本プロジェクトの大きな目的でございます。
 では、研究計画を見直しした検討結果を、資料に沿って御説明させていただきます。
 資料の左カラムは中間評価で御指摘いただいた事項でございます。右のカラムは見直し内容になっております。
 資料1-3の1ページ、プロジェクト全体についてから御説明申し上げます。本プロジェクトは、復興に資するプロジェクトと位置付けております。単なる研究開発ではなく、被災地と連携をし、大学が有するシーズを具体的な形で、被災地に合った形で実装していく、こういう必要があるわけです。そのため、当初2年間、各課題の先生方は、大学が有する様々なシーズを実装するためのブラッシュアップに注力されたものと思います。そのため、中間評価で課題間の連携、シナジー効果が十分でないという御指摘を頂いたものと考えます。御指摘を踏まえまして、課題間の連携や活用できる技術については積極的に導入を図ろうと。例といたしましては、課題1、課題2で発電した電力を貯蔵、分配するために課題3で開発したシステムを応用・連携していく。このように、全体観のある取組に持っていきたいと考えております。
 マネジメント体制につきましては、これまで中核機関が中心的な役割を果たしつつ、各課題代表、関連自治体等による運営委員会を設けまして、各課題の進捗管理や諸問題の解決に向けた取組を行ってまいりました。また、研究開発の評価、助言を行うため、外部有識者、課題代表、自治体代表、関係省庁による事業推進委員会を設けまして、事業を進めてまいりました。今回の事業見直しにおきましては、各課題並びにプロジェクト全体の事業の合理化を図る、それから、ロードマップを今回作成させていただきまして、研究開発のゴールを明確にしたところでございます。
 さらに、Plan、Do、Check、Actサイクルを中心とする研究開発マネジメント体制を進め、これまでのマネジメント体制に加え、課題間のシナジー効果をより一層高め、また、法規制や社会実装などの解決しなければいけない諸問題を迅速に処理するため、中核機関に研究代表、課題代表等による総合企画室というのを設けさせていただきまして、マネジメント体制の強化を図ることといたしました。また、事業の評価・助言を一層強化する観点から、事業推進委員会の開催を年数回以上行って強化していきたいと思っております。
 事業全体の費用対効果につきましては、協力企業が事業化を進める上で必要な技術面での連携・協力を行うとともに、費用対効果についても十分検討を進めている段階でございます。
 本事業の終了後につきましては、各課題が提案する事業終了後の計画につきまして、総合企画室会議及び運営会議で協議し、最適な事業終了後のアクションプランの計画を現在進めております。また、運営委員会は各自治体の考えや意向を尊重しながら、本事業で社会実装したシステムの継続的な運用を可能にするための方策というのも検討しております。これが全体でございます。
 次は、2から4ページをごらんいただけますでしょうか。課題1の三陸海岸へ導入可能な波力等の海洋再生可能エネルギーの研究開発の見直しでございます。3ページの写真は、現在、実装を進めております実験装置でございます。波力発電では、平成27年度、来年度でございますが、久慈市に設置いたしまして、また、潮流発電は東北復興に貢献するため、潮流発電装置を塩釜市の地元企業を使うということで組み立てた後に、平成26年度の11月に寒風沢水道に設置し、発電した電力は地元漁業組合の冷凍冷蔵庫に供給する。まさに地産地消するという計画で、日本初の潮流発電の発電事例となります。この潮流発電を設置する塩釜市は、復興のシンボル、漁業振興、観光資源、環境教育教材、こういうことで活用していく。本事業終了後も、本装置を継続的利用するための課題について今現在検討しているところでございます。
 波力発電、潮流発電ともに、今後のビジネスに向けての独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業とも協力して、大規模化、出力としましては、100キロワット程度を目指し、協力企業と実用化を進めております。潮流発電の供給ポテンシャル評価につきましては、平成26年度からNEDO新規事業が開始されている段階でございます。復興につきましては、2ページ目の下に示しました4つの観点から復興に貢献いたします。海洋エネルギー発電事例、日本初の系統連系というところ、それから、公共性の高いプロジェクトの事例である、発電技術・ノウハウの地元企業への移転、新ビジネス展開への支援、こういうものが挙げられると思います。
 では、課題2でございます。課題2につきましては、5ページ、6ページ、そして、先ほど言いました、この補足資料をごらんいただけますでしょうか。課題2は、微細藻類のエネルギー利用に関する研究開発でございます。本課題は、仙台市の下水を利用して、微細藻類により炭化水素を生産するプロジェクトです。下水を培養に利用することにより、処理水等での減容が図られます。この処理に必要な電力及び重油等の燃料の費用が削減できること、あわせて、藻類により石油系の液体燃料が生産できるというのが、これまでになかった特徴でございます。
 中間評価では、早々にLCAを行うことという御指摘を受けました。我々は可能な限り、現在の技術開発のためのラボスケールでの実験条件によるシステムのデータを用いてのLCAを行いました。そして、実用化に向けての課題の抽出を目指しているわけでございます。本プロジェクトでは、下水の1次処理水を用いて光合成を行う微細藻類Bの培養を行い、2.5トンの培養槽で年間27回の培養が可能であり、67.5トンの処理水が減容できる。そして、汚泥を可溶化し、その有機物で藻類Aの培養を行います。30リットルの培養槽3基で9.1トン相当の汚泥が減容できる。現在のラボスケールで行われている各工程のエネルギー消費量、液体燃料生産量を測定し、LCAのためのデータとしたところ、A藻の培養基の減菌、温度管理、撹拌(かくはん)等に多量の電力量が必要となることが分かりました。B藻の培養においても投入電力量を削減する必要がある、こういう問題点が分かりました。
 そこで、Aの培養につきましては、電気による減菌、温度管理、撹拌(かくはん)を避け、通気による撹拌(かくはん)のみを行う新型のバイオ槽の開発を本プロジェクト期間中に目指すとしました。B藻の培養につきましては、面積を10倍すると撹拌(かくはん)のエネルギーは2倍以下に下げられることから、スケールメリットによる改善効果が見込めることが分かりました。本プロジェクトで目指す上記の改善では、実用化を目指した電力収支がプラスになるレベルにはまだ至りませんが、将来的に培養株の品質改良や培養基の改良により改善できるレベルまで到達できるものと判断しております。復興への貢献は、下水を有効活用した仙台市の地産地消エネルギー源として発展させていきたいと思っております。
 次に、課題3の「再生可能エネルギーを中心とし、人・車等のモビリティ(移動体)の視点を加えた都市の総合的なエネルギー管理システムを構築するための研究開発」。7ページから12ページをごらんいただけますでしょうか。
 課題3は、被災地域の有する未利用の再生可能エネルギーを開発するという課題、それと、地域内でそれらを利用するシステム開発、これに大きく分けられると思います。これまでは、シーズを地域に当てはめた発電、そして、それらにエネルギーマネジメントシステムを導入して、電気自動車を介したオフグリッドでの電力融通を可能にし、最終年度までに複数の再生可能エネルギーの電源とする地域全体を管理するシステムを目的にしておりました。中間評価での御指摘の課題は、内容を精査し、モビリティを含む統合マネジメントシステムに対する必要に応じて、各小課題の開発項目は精査させていただきました。特にバイオマス発酵につきましては、これまで達成した地域に根差したバイオマス回収、エネルギー化、地域への供給という循環を生かし、次のステップである電気自動車(EV)への電力供給を実現させることに集中し、鳴子温泉におけるエネルギースポットへの電力供給を目指します。
 地中熱利用につきましては、見直しをした結果、今年度で関連設備の整備は終了いたしますので、継続的な基礎データの収集のみといたします。しかし、この課題につきましては、既に本成果が農業ハウス等の熱源として導入されるための新しい地域プロジェクトとしてスタートすることが決まっているということでございます。
 バイナリー発電等で進められている温泉熱は、大崎市における未利用の有望な地域エネルギーでございます。市も本技術の実用化を期待し、大崎市内の温泉地域への導入促進を目指しており、市内の温泉業者もその成果を待ち望んでいるところでございます。蒸気発電等の部分も、出力が小さいながらもエネルギースポット内での利用、更にEVステーションの電源としての利用を目指しております。
 本システムの社会実装のために、既に地元温泉経営者を含むコンソーシアムが結成されておりまして、大崎市とともに、本事業終了後の受皿としての運営を担う特定非営利活動法人(NPO法人)の設立も間近であるということでございます。
 こうした受皿組織と協力しながら、バイナリー発電もバイオマスと同様、エネルギースポットへの電力供給及びEVへの電力供給を行います。これらを大崎市は再生可能エネルギー復興公園として、地元住民のみならず、観光客へ継続的に公開し、再生可能エネルギーを平時、非常時を問わずに活用するシステム、これを大崎モデルとして発信していきたいと思っておられます。
 これまで、本課題はバックキャスティング手法により、モビリティを含むエネルギーマネジメントの最終ゴールを念頭に置きながら課題設定を行ってまいりました。しかし、中間評価における指摘を踏まえまして、まずは課題内連携及び開発項目の連携を明確にし、モビリティを含むエネルギーマネジメントシステムの構築という課題3の最終ゴールをイメージできる形に再編成させていただきました。個別課題における実施内容を精査し、各課題の重要項目を選定した上で、平成26年度後半、もう既に課題をモビリティ関連技術開発、エネルギーマネジメントシステム(EMS)と地域エネルギー関連技術開発、更に最終ゴールであるエネルギー・モビリティ統合マネジメントシステムの創出というように、着実に成果がゴールを目指すように、7ページの下の図のグループのような形で再編をさせていただきました。
 課題3は、石巻市及び大崎市の低炭素かつ省エネルギーまちづくりに貢献する、それから、復興により被災地が次世代のエネルギーシステムを導入できるモデルタウンとして世界に発信すること、被災地住民が安心・安全、そして住民が希望の持てる生活をできる魅力あるまちづくりの一助になることを念頭に事業計画を構築しております。
 本課題の目的を明確にするため、事業終了後の社会実装を、8ページの図1のように想定し、その構築に必要なEMSの創出、モビリティ関連技術、EMSと地域エネルギー関連技術、この3つに分けまして、それらの成果をどのように実装されるかについて具体的に示させていただきました。
 図1は、これまで課題3の事業で設置したエネルギースポット、赤の印でございます。それから、平成27年度、28年度に設置を予定しているスポットが青、さらに、公共的に利用可能なEVステーションが緑で示されております。エネルギースポット構築の基本的な考えは、その地域における再生可能エネルギーを効率的に活用し、その地域の産業に貢献できるモビリティを含むエネルギーマネジメントシステムの実現でございます。よって、最終ゴールが見えるように開発項目も精査し、既に御指摘を受けてから、平成27年の後半より、その方向で事業を進めている段階でございます。
 本課題で構築するモビリティを含む統合マネジメントシステムは、モビリティの運行情報を含み、平時、非常時の両方で最適なエネルギー情報を提供する機能も有しております。平時からエネルギーに関する知識を身に付けられる機能も有します。さらに、各エネルギースポット周辺の二酸化炭素(CO2)排出等の環境情報も表示する機能を有する。そして、平時、非常時に対応できるEMSを連動できるEV運転システムの開発と統合システムの見える化システムの開発の成果を、この成果はこの被災地のみならず、他の地方自治体へ展開していきたいと思っております。モビリティ関連技術開発、この項目に含まれる開発項目で特に先進的な部分は、人間行動パターンを組み込んだモビリティを含むEMS統合システムであることです。最適なモビリティ運行とエネルギー利用の最適を図ることができるわけです。EMSと地域エネルギー関連技術開発では、地域に根差した再生可能エネルギーを活用したEMSの構築が目的です。モビリティと連携を図るためのエネルギースポットの開発を有します。具体的には、大崎市及び大崎市で展開可能な再生可能エネルギー開発も含め、エネルギーマネジメントシステムを構築してまいります。これまでエネルギー資源を持たない地域が、地域特有のエネルギーを確保できることは、地域の産業にとって大きなアドバンテージになるものと考えます。モビリティを含むEMSの構築は、被災地に新しい息吹を吹き込むことができるわけです。大都会から離れ自然の中で暮らす人々が全く異次元の電力システムと出会うことにより、人々の交流の促進、住民の高齢化の進む被災地域に手軽かつ安価に利用できる交通手段の提供は、復興の活力の源になるものと考えます。
 また、東北地域は地熱も含め、木質、畜産バイオの宝庫でもございます。しかしながら、小規模のため、通常の電力システムの連携が全く行われていないのが現状です。今回設置するモビリティを含むEMSによって、未利用エネルギーを利用可能なエネルギーにする。まさに地域の住民がエネルギーを作り、それを活用する生活というエネルギーの地産地消モデルとなると思います。この概念は、大企業を中心とするエネルギー産業の在り方を変え、新たな地域の小規模エネルギーを中心とする新産業の萌芽につながるものとも確信いたします。東日本大震災後の原子力発電の停止に伴う電力行動と固定価格買取制度(FIT)の導入による再生可能エネルギーの普及により、単なる固定用蓄電池とは異なるモビリティを含むEMSは、先の固定用蓄電池を活用したシステムに比べ費用対効果も高く、ますます需要が急増するものと考えます。
 11ページの図及び12ページの図にロードマップを示しました。11ページの図は、実際実装していった場所の写真でございます。平成26年度の事業において、バイオマス、地中熱、温泉熱を含むエネルギー開発事業はほぼ終了いたします。そのため、平成27年度は、利用可能になったバイオマス、温泉熱を活用して生産した電力を利用するための地域エネルギーマネジメントシステムの開発を行います。このEMSは、モビリティの運行管理情報を含め、電力管理とモビリティ管理を統合的に行う最先端のEMSでございます。このような管理システムの開発とともに、モビリティとEMSの接点となるエネルギースポットを開発し、石巻市と大崎市を結ぶ幹線道路に設置いたします。
 EVステーションの設置におきましては、本研究で開発した地域エネルギーであるバイオマスや温泉熱を利用して、電力を生産する場所にも当然設置いたします。また、既存の民間のステーションも含め、石巻市と大崎市に約30か所のEVステーションが設置される予定でございます。これによって、両市間の人的交流が一層活発になるものと考えます。石巻市、大崎市という両市にまたがるエネルギーモビリティマネジメントシステムの構築、運用が平成28年度までに達成したい目標でございます。
 また、幹線道路に設置するエネルギースポットにつきましては、試作品が完成した段階で設置協力者を募集し、社会実装を進める。モビリティ統合マネジメントシステムの事業終了後の継続運用につきましては、大崎市、石巻市の協力を得まして、NPO法人が管理運用を行う方向で検討が進んでおります。
 具体的には、大崎市に設置したシステムにつきましては、大崎市と東北大が協力いたしまして、NPO法人スパッと鳴子温泉自然エネルギーが運営を予定しておりますし、石巻に設置したシステムにつきましては、NPO法人日本カーシェアリング協会が運営を予定しております。
 最後の直流デバイスにつきましては、最近は海外品を使っておりますので、できれば地元企業として、1つの新しい製品として開発をする。特に直流スイッチに限定して継続運用する。これができましたら、先ほどのマネジメントシステム、EVステーション等で使っていくことを考えております。
 復興への貢献、まとめますと、やはり地域が望む安全まちづくりに貢献をしていく。それから、地域の先進性を高める、そして、注目度を上げ、訪問者数の増加による被災地の活性化を図る。例といたしましては、メタン発酵システムはエネルギーツーリズムのコンテンツとして既に稼働しておりまして、全国版のニュース等で紹介されるなど、注目度も高くなっております。システム稼働から、今、まだ数か月でございますけれども、既に報道13件でございます。地方自治体や地元企業への技術移転、これも積極的に進めていきたいと思います。我々の方針というのは、基本的には石巻市、大崎市の復興計画に基づいて、公共施設のEMSの導入からスタートし、最終的には、この両市にまたがる新しいエネルギー・モビリティを含むマネジメントシステムという、地域のマネジメントシステムを構築したいということをもって、平成28年度まで頑張っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【安井主査】  ありがとうございました。ただいま頂きました御報告に関しまして、御質問あるいは御意見ございましたら、お願いしたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。どうぞ。
【山地委員】  幾つか、ちょっと質問を。
 1つは、2番目の課題の藻類のエネルギー利用のLCAですけど、これ、途中だということは分かっているんですけれども、普通、LCAというと、例えば、培養槽、A藻とB藻、2つありますけど、そういうところの使用電力量とか、投入エネルギーだけじゃなくて、設備に投入するエネルギーもカウントすると思うんですよね。それがちゃんとなされているのかということ。
 それから、省エネルギーということで、藻類の方に回す処理水が減ることによって省エネということはカウントされていると思うんですけど、ただ、藻類を育てる方からも最終的に放流水があるわけですから、そこで処理をするんじゃないかと思うんですよね。あるいは、処理しなくて済むのか、そこをはっきりさせてほしい。これが2番目。
 3番目は、私、これの中間評価のところに関わってから、構想は分かるんだけども、リアリティーがすごく遠いなと実は思っていました。きょうもお話を伺ったんですけど、本当にできるんですかというところに疑問があるということなんです。幾つか申し上げると、例えば、8ページの下の方ですけれども、マル9、「先進モビリティにおける人間行動解析システム」。これは、人間行動パターンを、モビリティを含むEMS統合システムに教え込み、最適なモビリティ運行とエネルギー利用の最適化を図る要素技術だというんですけど、書いてはいるけど、これ、できますかね。ものすごく難しいと思うんですよね。つまり、そこを言っていただかないと、本当にこれができるのか、なかなか私は説得力を持って読めないんですよね、書いてはあるけれども。同じようなことは、9ページの「事業全体及び個別課題の双方において費用対効果や事業性について検討が十分でない」というところに対する回答ですけど、「確信する」とか、ここも文章で書いてありますけど、根拠があるのか。例えば、黒字のボールドで書いてあるところの内容の、「固定用蓄電池を活用したシステムに比べ費用対効果も高く、ますます需要が急増するものと考える」。本当に費用対効果が高いんでしょうか。もちろん専用の蓄電池じゃなくて、自動車の蓄電池を使うアイデアもいっぱいやられているわけですけれども、それなら、ここでやっていること、つまり、その下のところにも書いてあるんだけど、バイオマスとか温泉熱を活用した電力を生産するところにEVステーションを置いてというところを想定して、本当に費用対効果が高いのか。やっぱりそこを示さないといけないんですけど、言葉で書いてあるだけにしか私には見えない。
 最後は質問というよりはコメントですけれども、以上です。
【田路教授】  私の答えられるところから答えますと、まず、先ほど言ったモビリティを使うところにつきましては、それは技術的にはもう完成しておりますので、いま日産とかがやられているようなシステムではなくて、実際、これは電力法の問題が絡みますけれども、技術的にはもう完成しています。あとは、社会がどう認知していただけるかということなので、我々としては、こういうのを発信していこうかなと。これは、もう技術的に完成していますので、東北大で見ていただければ。一応、48ボルト直流では双方向性はもうできていますので、あとは、実際の電力システムには、社会に持っていくのはちょっと厳しいんですけど、ある一部のところ、キュービクルがくっついているような1事業者の中ではできる。これは、相手がある話ですので、我々が導入するということはできる。あとは、社会がこれをどう受けていただけるかというのは分かりませんけれども。
 それから、先ほどの、私の理解のところだけで説明させていただきますと、LCAにつきましては、今回、ホットスポットと言われる一番問題の高いところだけを抜き出しておりますので、全てに対して、僕が間違えていたら、LCAをやった先生、回答していただきたいんですが。手を挙げていますので、答えてください。
【随行者(鈴木教授・筑波大学)】  課題2を代表しております筑波大学の鈴木と申します。
 先ほど御説明ありました培養槽については、その製造に関わるエネルギーについては、まだ含めておりませんので、今後含めていく必要があると考えております。
 また、培養に伴う廃棄物といいますか、排水といいますか、そういったものが出るのではないかという御質問ですが、藻類から油を絞った後の残渣(ざんさ)は、A藻と呼ばれる従属栄養性の藻類のえさとして使うように循環させております。また、B藻の培養によって、下水中の窒素、リンが大幅に除去できるということはもう既に分かっておりますので、下水の浄化に貢献することはあってもそこから大幅に廃棄物が出てしまうということは現在考えておりません。
【田路教授】  どうもありがとうございました。
 それから、あと、私が答えるところ、先に答えさせていただきます。世の中にEMS、たくさん売られていますが、事業所向けのEMSというのは余り規格化されておりませんで、かなり高価なものになっている。それに比べますと、今回、パッケージ化をして事業所向けに開発していますので、今回開発したビジネス、実例といたしましては、ここの1つの導入させていただきました保育園でございますけれども、次に作るときに、これをもう1個、今度は自費で導入したいという話が出ていますので、そういう意味では、費用対効果的には、エネルギーマネジメントシステムとしてはかなり効果が高い。世の中の1品作りのものに比べれば大分パッケージ化したような形にできましたので、普及は図れるんではないかなと。この辺は事業化を目指しておりますので、地元企業がそういう展開をしていくというステップになっております。
 あと、先ほどの人間行動につきましては、確かにたくさんの項目の中の1つでございますので、そこは大きい項目ですので、鈴木先生から御紹介いただけますか。
【随行者(鈴木教授・東北大学)】  課題3のモビリティ担当をしています東北大学の鈴木です。
 この人間行動パターンに関してのところは、少し字数が少ないので十分書き切れていませんが、マクロのスケールでの話とミクロスケールでの話というところに大きく分かれます。マクロスケールの話で言いますと、面的なEVの運行に関して言ったときに、今ここでは、これまでの成果では、けいはんなでの利用のデータを入手していまして、そこの中から実際にEVがどの時間帯に充電するのかというようなところを統計的に分析して、将来的にEVが普及していったときに、時空間的にどういうふうにエネルギー需要が生じるのかというところを分析し、そこに対して対応したEMSのマネジメントができるということを、まずは出しています。
 ミクロスケールについては、今現在、人と車の、端的に言えば、EVのエコ運転のパターンというようなものを分析しておりまして、そこに応じて各車両の走行パターンをより最適にしていくためのシステムを開発しているところでございます。
【安井主査】  ありがとうございました。
 何かございますか。それじゃ、お願いします。
【岩船委員】  私も、何度も「エネルギーマネジメント」という言葉が出てきたんですが、何をコントロールするのかと何が目的なのかというのが、何を目的としてマネジメントするのかというのが余り明らかでないような気がしました。それぞれ、もちろん地域のエネルギーを利用するというのは分かるんですが、バイナリー発電ですとか、そういったものも、恐らく規模的にかなり小さいものじゃないかと。そうすると、コントロールするようなレベルではないと思われますし、そもそも、わざわざ電気にする必要があるんだろうかという。もっと熱のシステムをうまく構築してはどうかみたいなことも考えられると思うんですが、正直言って、あくまで、それぞれの点でやることをマネジメントと言ってしまっているような印象がどうしてもするんですけれども、需要とのマッチングですとか規模感みたいなものが全然ないので、これだけでは少し判断し難いんですけれども、そのあたり、大体教えていただけないでしょうか。
【田路教授】  現在進めております、1つは、石巻市では一応太陽光を中心とした連携という形になります。規模的にはそんなに多くはございませんけれども、今回、被災地に対する平時と非常時をうまく使いこなすという今回のモビリティのシステムもありますし、やっぱり震災を経験して、将来的には展開すれば大きくなりますけれども、まずはそういうように、非常時と平時をうまく使い分けるシステムという、これが1つの今回のEMSの目標でもあります。
 それから、それが今度逆に、空間、エネルギーの移動ですね。これがやはり今まで、自分たちだけではなくて、エネルギーを配信できるという、これも含めたようなEMSにしていくというのがあります。大崎市あたりも、今回、やはり予算の関係もございますし、これは展開をしていかなければいけない事業だと思います。それには、やはり大きいものでどんとやるというような世の中ではなくて、絶対量を下げていくというのはこれからの社会だと思いますので、いかに小さいエネルギー、自分が作ったエネルギーに対する愛着感とか、そういうものも含めながら、要は、まさに新しいライフスタイルを作っていくんだというのが今回のEMSの大きい目標、これは私なんかが、このプロジェクトをやっている1つの目標は、やっぱり小さいエネルギーで愛着心があって効率的に使っていく。で、絶対的にライフスタイルの中で、エネルギーを少なくするようなライフスタイルを作っていっていただきたい。そういうことがありますので、そういうことをちゃんと分かっていただくようなエネルギーの見える化であったり、まさにエネルギーの勉強もしながらとか、そういうものも含めるのが目的になってくるかなと思います。
【安井主査】  ありがとうございました。
 何かございますか。かなり遅れぎみなので、よろしゅうございましょうか。
 いろいろ御対応いただいているようで、ありがとうございました。ただ、対応していただいた、その結果に対しても、必ずしも、どうもまだ満足されてないようなところがございますので、是非継続的に努力をお願いしたいと思います。それでは、どうもありがとうございました。両先生、ありがとうございました。
 それでは、次の議題の2に進んでまいりたいと思いますが、平成27年度環境エネルギー関係予算案等についてということで、事務局の御説明からお願いいたします。
【山村課長補佐】  時間も押しておりますので、ポイントだけ簡単に御説明させていただきます。資料2-1-1でございます。こちらは、文部科学省のホームページに公表されている資料の抜粋でございます。本委員会で評価いただいているような事業はどこに位置付けられているとかいうことで御紹介しているという御理解をお願いいたします。
 3ページ目でございます。科学技術予算のポイントとしまして、全体の増減は33億円減の0.3%減というような状況になってございます。おめくりいただきまして、11ページ目、こちら、横のオレンジ色の図になってございますけれども、フューチャー・アース構想の推進というものでございますけれども、後で補足説明資料で説明させていただきますが、こちらは引き続き、社会技術研究開発センター(RISTEX)の方でフューチャー・アース構想を推進するというようなことをやっているということでございます。
 1枚おめくりいただきまして、「クリーンで経済的なエネルギーシステムの実現」ということで、先端的低炭素化技術開発(ALCA)でございますけれども、こちらにつきましては、平成27年度からは、ホワイトバイオテクノロジーによる化成品の合成という、バイオリファイナリーのようなものをやるとなってございます。また別途、これも後ほど御説明させていただきますが、平成26年度補正予算案で4億円強を計上しているところでございます。
 あと、理化学研究所でございますけれども、環境エネルギー関係の予算としましては、真ん中の下ほどにございますけれども、こちらは創発物性センター、環境資源科学センター、両方通じて引き続き推進していくというような状況でございます。
 また1枚おめくりいただきまして、「世界に先駆けた次世代インフラの整備」というような内容になってございます。地球環境問題への対応、大きな柱、この中に位置付けられておりまして、左下でございます。気候変動リスク情報創生プログラム、事前評価を頂きました気候変動適応技術社会実装プログラム、こちらは新規でございます。データ統合・解析システム(DIAS)が最後に入っているというような状況でございます。
 細かい内容につきましては、資料2-1-2の方で引き続き御説明させていただきます。1枚おめくりください。2ページ目でございますけれども、「ホワイトバイオテクノロジーによる次世代化成品創出プロジェクト」ということで、これは主にバイオマスからバイオケミカルの融合により、プラスチックを中心とした化学品を作っていくというようなプロジェクトでございまして、こちらは経済産業省と連携して今後進めていく予定としております。
 下の方に、少し小さいんですけれども、「実用技術化プロジェクト」ということで、この委員会でもたしか御紹介させていただいたかと思いますけれども、平成27年度からは、今まで抽出してきたような画期的な技術シーズというもの、一気にプロジェクト化を進めていくというようなフェーズに進めていきたいと考えてございます。
 1枚おめくりいただきまして、3ページ目です。こちらは、先ほど申し上げた補正予算ということでございまして、経済対策の一環でございますけれども、エネルギーの需給高度化対策ということで、蓄電池、燃料電池、こちら、希少材料とか希少金属フリーでございますけれども、あとは革新的断熱材ですとか軽量・高強度素材等の省エネルギー技術などについても加速してまいりたいと考えております。
 1枚おめくりいただきまして、復興事業につきましては、注意書きで書いてございますけれども、先ほど御発表いただきました小長井先生のプロジェクトなんですけれども、こちらは施設整備が終わりましたので、これ、当初計画でかなり下がるというか、純粋な研究費のみになるということでございますので、一見、減になっておりますけれども、そういった理由によるものだということ。あとは、復興事業全体が、研究開発予算自体、この事業に限らず、かなり厳しい状況になっているということでございます。
 1枚おめくりいただきまして、これは松橋先生の方で研究総括をしていただいている低炭素社会戦略センター(LCS)でございます。前年度とほぼ同じ。さらに、おめくりいただきまして、気候変動リスク情報創生プログラムですが、こちらもほぼ前年度と同額となってございます。
 さらに、おめくりいただきまして、こちらが事前評価を頂きました気候変動適応技術社会実装プログラムでございます。5.8億円ぐらいの新規予算となってございます。こちらは引き続き、プログラムディレクターの選定ですとか公募に向けた準備を事務局でも進めてまいりたいと考えております。
 1枚おめくりいただきまして、DIASでございます。DIASについては平成27年度が最終年度になっておりまして、後ほど江守先生からの御発表があると思うんですけれども、そちらでも話題となっております長期運用体制の移行というものが今後課題になってくるというような理解でございます。
 更に1枚、9ページ目でございます。全球地球観測システム(GEOSS)につきましては、これも前年度と同額の拠出金を出しているということでございます。
 大学発グリーンイノベーション創出事業になりますけれども、最後に御説明させていただきますが、北極分野が抜けております。ですので、環境情報、先進環境材料、植物科学の3分野につきまして、最終年度として事業を実施する予定としてございます。
 最後でございます。フューチャー・アース構想の推進ということで、RISTEXの中の一部の予算としまして、今年は3,000万円増ぐらいの1億3,000万円で対応してまいりたいと考えてございます。
 先ほどの大学発グリーンイノベーション創出事業に関しまして、1件御報告がございます。北極協議会における我が国のプレゼンス向上に資するためということで、新たな国際行動研究の実施や国際連携拠点の増強を図る、そういったことを目的としました北極域研究推進プロジェクトというものを平成27年度から立ち上げる予定となってございます。これに従いまして、大学発グリーンイノベーション創出事業、北極気候変動分野において実施してきた研究課題につきましては、大学発グリーンイノベーション創出事業としての実施は平成26年度で終了になりました。平成27年度からは新規事業の中に移行して、最終年度まで実施するというようなことになってございます。
 北極気候変動分野では、特に気候変動に注目した北極研究や調査観測などを実施してまいりましたが、新しい北極域研究推進プロジェクトでは、北極域における海洋資源開発や北極海航路の利用をめぐる国際動向など、外交的視点も含めて総合的に北極研究を実施する予定と伺っております。このため、北極域研究推進プロジェクトで実施する研究課題に関する進捗管理、評価につきましては、本委員会が所属する研究計画評価分科会ではなく、我が国の海洋の開発に関する総合的かつ基本的な事項を調査・審議する海洋開発分科会において実施することとなりますので、先生方におかれましては御承知おきいただければということで御報告でございます。
 以上でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。
 続いて、もう一つ御説明いただいて、まとめて質疑を頂きたいと思いますが、お願いいたします。
【木下環境科学技術推進官】  それでは、資料2-2に基づきまして、先ほど、中間評価で気候変動リスク情報創生プログラムの中間評価への対応というのがございましたけれども、当然、その研究成果は社会実装につなげるというような視点もありますけれども、国際的にしっかりとしたプレゼンスを発揮していくべきという御指摘も頂いております。その観点で、定期的に各国の関係者と情報交換を行っていることを、簡単に資料2-2で御紹介させていただきたいと思います。
 1つ1つ詳細はお伝えいたしませんけれども、11月末には横浜で気候変動リスク情報創生プログラムとIPCCの関係者とのミーティングを行っております。
 それから、12月の冒頭は気候変動枠組条約第20回締約国会議(COP20)がペルーのリマでございましたけれども、その場でも、3つ目のポツですけれども、ヨーロッパ連合(EU)と共同でのサイドイベントを実施いたしまして、この国際会議に集まった方々との意見交換を実施しております。
 また、1月30日、来週ですけれども、IPCCのワーキンググループ1、2の共同議長が来日の際に、また意見交換会を行う予定にしております。こちらにつきましては、気候変動リスク情報創生プログラム、RECCA、環境省の環境研究総合推進費(S-8)等々の関係者とも合同で実施する予定にしております。
 私からは以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。何か御質問等ございますでしょうか。よろしゅうございますか。はい、どうぞ。
【三村主査代理】  先ほど、きょうの中間報告に対する対応というのを伺ったのは、東北の復興に関する部分だったですかね。いろいろ御意見が出たので、特にエネルギーマネジメントシステムのところは、最後のフェーズで事業化とか社会実装とかいうのがいろいろ言われていて、それがどれだけ現実性があるんですかという話が出ていたんですけれども、この予算を見ますと、前年度よりも相当減っていると。だから、そういうので、最後の非常に重要な段階がちゃんと実現できるかどうか、そういう見通し、あるいは予算が少なくなっても、その目標に向かってきちんと推進するということを確認していただくのが非常に重要なんじゃないかなと私は思います。
【安井主査】  何かありますか。よろしいですか。
【山村課長補佐】  復興事業全体が厳しい中で予算が縮減されたという部分がございますけれども、この中間評価の御指摘事項などを踏まえて、当初の復興に役立つという目的がきちんと達成されるように、これから研究計画の次年度の作業に移りますけれども、確認してまいりたいと思います。
【三村主査代理】  よろしくお願いします。
【安井主査】  さて、それでは、よろしゅうございますか。ちょっと押しておりますので、次の重要な議題に移らせていただきたいと思います。
 3番目でございますが、「環境エネルギー分野における研究開発の在り方について」ということでございまして、江守委員を座長といたします検討会で議論を重ねていただいております。この議論を踏まえまして取りまとめていただきました御意見を、まず江守委員から御報告いただきまして、それから後なんですが、実を言うと、これに関します詳細な議論に関しましては、第8期以降、この期が終わりまして次という意味でございますけれども、そこでまた行わせていただきたいと考えております。したがいまして、本日は御報告の後に比較的短めの、大体10分の質問のお時間を用意させていただいて、それから、次のチャンスということにさせていただきたいと思う次第でございます。済みませんが、ちょっと簡単によろしくお願い申し上げます。
【江守委員】  では、簡単に御説明いたします。今後の地球環境研究の在り方に関する検討会というのを、以前に中間取りまとめというのをここで一度報告させていただいたことがあるんですけれども、それ以降に、また何度か集まりまして、それで引き続き検討を行った、そのときに出た意見の概要をきょうは御説明させていただきます。
 構成員や設置の趣旨は資料3の最後に付いておりますので、必要でしたら後でごらんください。めくっていただきまして、意見のまとめの概要と今後御議論いただきたい事項というのが、この資料全体にわたって書いてあるんですけれども、まず位置付けとしましては、中間取りまとめ以降、基本的に何を議論したかというと、第5期科学技術基本計画に向けた環境科学技術政策の在り方ということです。それから、2番目のポチで、DIASの件ですけれども、前回、中間取りまとめまでも議論しましたけれども、今回は特に長期運用体制に向けた議論を行いました。
 スライド番号で3枚目に行って内容に入らせていただきますけれども、まず、トランスディシプリナリー研究とディシプリナリー研究ということで、フューチャー・アースで、もう皆さん、耳にたこができるぐらい聞いていらっしゃると思いますけれども、持続可能社会に向けて、社会と科学が共同して研究を行っていく上で、まず、トランスディシプリナリー研究が必要なんだという認識が要るということです。そうではあっても、じゃ、ディシプリナリー研究は要らないかというと、そうではない。引き続き、特に観測、予測等の水準向上に必要なディシプリナリー研究は継続して、両方必要で連携していかなくてはいけないと、そういう認識が出てきました。
 めくっていただきまして、その続きですけれども、ステークホルダー、co-design、社会実装といった言葉が、もう何度も聞いていらっしゃるとは思いますけれども、これがもう聞き飽きて、皆さんそれぞれに何となく納得して、何となく進んでしまうのはよくない。ここは何を意味するかということを今後しっかり、第8期のこの委員会で議論していただくことも含めて、我々、考えていく必要があるだろう。co-designに、はいはい、分かった分かったという感じの対応になってしまうのはまずいんじゃないかということが強調されました。
 次に、「環境分野とエネルギー分野の連携」ですけれども、連携は非常に重要であるということは言うまでもないと思いますけれども、例えば、社会経済のモデル、エネルギー経済のモデル、気候変動で言いますと、シナリオを作るようなモデルと気候変動のモデルを連携させるような、そういう研究が必要なのではないかということや、その下に行きますと、もうちょっと個別・技術的な面で、再生可能エネルギーのポテンシャルなどの計算に気候変動予測モデルが重要なのではないかという、そういった認識が示されました。
 次のページの気候変動研究ですけれども、これは基本的には気候変動リスク情報創生プログラム等についてですが、その1番目はAR6というのはどうなるかという今後の議論なんですけれども、それに向けた新たな国際的な動きというのは、気候モデリングの分野では既に始まっていますので、それを見据えて、気候変動リスク情報創生プログラムの後半やその後について検討する必要がある。これは今後引き続き議論していただきたい。
 次は、テーマDの影響評価の部分。これは、先ほど中間評価の御報告の中でも議論がありましたけれども、予測情報データを創出するだけでは十分ではないので、気候変動適応技術社会実装プログラムも含めて、しっかりとco-designで考えていただきたい。これは、先ほど、co-designでやっていますというお話もあったと思います。
 それから、最後に生態系の分野ですけれども、これも度々指摘されますけれども、なかなか生態系の分野が、ほかの物理的な気候のような精度で議論を進めることが難しいという認識があります。これは、炭素循環へのフィードバックや生態系サービスといった分野で、今後、定量的な研究が非常に重要になってくるので、観測も含めて、この部分の推進を引き続き検討していただきたいと思います。
 めくっていただきまして、人材育成ですけれども、まず、トランスディシプリナリー研究が要ると言っているんですけれども、その推進に必要な人材は絶対的に不足しているという認識を持つべきだと思います。その際に、どんな人材像をイメージするのか。これも、何となくしていますと人によって違いますので、ここもしっかり議論して、どういう人材が必要かということ、それに向けた取組が必要である。
 2つ目のポチ、特に具体的には評価の方法ですね。論文本数だけではない、これも昔から言われていることですけれども、特にco-designみたいなことをやったので評価されるということも、今後、具体的に必要になってくるのではないかということです。
 次のDIASの長期運用体制ですけれども、まず、データのオープン化ということに関して様々な意見がありました。DIASの長期運用において、ソリューションというのが1つのキーワードであるようでして、利用者が自分の問題解決に合ったデータの使い方ができる。そのためには、オープンデータ化してユーザーを増やした方がいいという意見と、その下に行きまして、いや、すぐにそういうふうにするのではなくて、DIASにおいて価値のある情報を創出した後にオープン化を考えるべきではないかという意見もありました。
 めくっていただきまして続きですけれども、そうはいっても、完全なオープン化と完全なクローズ化の2択で考える必要はなくて、部分部分、適切に使い分けてもいいんじゃないかということ。それから、必要なデータを集める際に、府省間などの連携が必要なので、これをきっちり他府省にアナウンスをしてデータを集めることが必要ではないか。それから、データを持っているだけでは駄目で、使いやすい形にするとか、情報を創出する能力がある人材というのが、運用機関の中、あるいは外に連携する形で必要ではないか。そのページの一番下が、具体的な機関名として少し挙がっております。
 次のページ、図が描いてあるページの上にはみ出して書いてありますのが、データの提供者と利用者が、特に今後、不特定多数になっていったときに、データのクオリティー・コントロールが非常に重要な問題になる。この点を含めまして、営利事業化によって、課金を取ってリソースを確保して、こういった部分に取り組むことも考えるべきではないかという意見が出ました。イメージ図は、これは別の委員会で議論していただいたものからの引用であります。
 以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。
 ということでございまして、きょうはちょっと予備的に御議論いただこうという、そういう時間しか、といっても、10分ぐらいしかないですかね。そのぐらいでございますが、何かこれに関しまして御意見を頂きたいと思います。じゃ、林委員、お願いいたします。
【林委員】  フューチャー・アースのところなんですけど、これはここだけの問題じゃなくて、「co-design」っていきなり出てくるんですが、いきなり出てきてデザインなんかできるわけないと思うんですね。やっぱりその前段階に、今までやっていた、おっしゃったように、観測、予測というのもあるんですが、観測、予測のときに、観測、予測だけじゃなくて、その底流にあるメカニズム・ドローイングといいますか、あるいはエクストラクティングというか、インストラクションというか、そういう段階がきちっと定義されてないと思うんですよ。それがあって、どういうメカニズムで動いているのかというのが分かったときに、それを見てco-designですね、2段階目。しかも、co-designというのは、何でもいいから一緒にやりましょうじゃ駄目なんで、co-design、アチーヴィング・インテグレーテッド・ゴールというか、要するに、ゴールがインテグレートされたゴールじゃないといけないんですね。そこら辺が、フューチャー・アースの運動の中でも余り理解されてないんじゃないかなと思って、そこら辺のところをきちっとやるようなことが出てくるといいなと思っています。
 それから、人材育成なんですが、学術会議の方なんかでも、人材育成のところに私も入ってやっていますけれども、幾つか横断型の、例えば名古屋ですと、診断から治療までという、そういう発想で、縦割りの分野ではなくて、問題の診断をしながら、それが治療までどうつながるかという、そういうトレーニングのコースなんかもできているし、『臨床環境学』という本も出ているんですね。これは、たまたま安成さんたちと一緒にやったりしたんですが、幾つかの大学でそういうのが出てきていると思います。
 以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。
 ほかに何か。どうぞ、河宮委員。
【河宮委員】  ありがとうございます。DIASの長期運用についてなんですけれども、これは基本的に今までの研究プロジェクトとして進行してきたということで、長期運用ともなると、その性格を幾らか変えなければいけないところはあるとは思うんですけれども、その辺について何か議論はあるのかということと、端的に長期運用して何をやるのかというのが少し見えてないところがあるので、それはできれば聞きたいなと思います。
 以上です。
【江守委員】  我々は、それについて決定に向けたような議論をするような役割ではなかったので、いろいろ意見を言ったということにすぎないんですけれども、基本的には、別のDIASの長期運用に関する検討の議論をしていただいた、そのアウトプットを受けて、我々が思ったことを言ったというのが、この資料の7ページ、8ページ、9ページに少し書いてあるということです。
 性格がどのようなものになるかというのは、余りまだ決まってないというのは我々の認識もそのとおりで、その点が7ページに書いてあるようなことですけれども、ここは引き続き御議論が必要ではないかと思います。
【安井主査】  ほかに。
【木下環境科学技術推進官】  事務局から、その点、補足をさせていただきます。
 DIASの長期運用に向けての議論というのは、今現在、DIASは東京大学への委託として実施しておりますけれども、その一環で独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)を中心に検討を進めております。その中で、今、あるべき姿として議論に上がっているのは、先ほど江守先生からもお話がありましたとおり、データをより有益な、何かの意思決定をするのに必要な情報として提供していくという、やはりここに価値が見いだせることが分かってきたと。それをより進めていくべきではないのかと。それも、研究者だけではなくて、一般の方への利用を目指して、今後、長期運用体制では、それを定常的な形として目指すべきではないかという議論をしているというところでございます。
【三村主査代理】  今の話の続きのような話なんですが、5ページの気候変動研究というところの2番目のポチのところに、高精度・高解像の予測情報データを創出するだけでは十分じゃなくて、プログラムの目的を達成するための対応策を検討する必要があるということなんですが、その前の方、別のページに、気候変動にとどまらない環境変化への適応についてどんどんやるべきだというようなことも書いてあった。環境研究総合推進費(S-8)だとかRECCAをやらせていただいて、自治体などで気候変動の適応とか、あるいは、もっと幅広い環境変化に対して柔軟に対応しながら、将来に備えようというような動きはかなり出てきている。そうすると、研究者の側(がわ)というか、文科省がどこまでやるのかというのがかなりあって、実践的には、もう研究者のチームがコンサルタントみたいなことをやって、いろんなノウハウだとか政策立案、地域の状況が違うものに対してどういう政策のパッケージを作ったらいいかというところまで一緒に議論しなきゃいけないような段階の自治体もあるんですね。そうすると、研究者の側(がわ)が、より新しいデータや新しい政策概念を打ち出していくという、そういう役割と、それらを提供して、相談して一緒にやっていくという役割と、両方やらなきゃいけなくなってくる。そこのところまで考えると、例えば、DIASの管理組織というようなものが、そういうコンサルティング機能のようなものも持つのかどうかとか、今はちょっと話題を広げる方向の話をしているんですけど、そういうところまで考えなきゃいけないんじゃないかなというのを実感として思っているんですね。その辺を、いわば文部科学省のプロジェクトや、あるいは、その成果の活用というのをどのところまでやるかというのは非常に重要な今後の検討課題だと思います。
【安井主査】  ありがとうございました。原澤委員、どうぞ。
【原澤委員】  先ほど、林先生からお話があった点なんですけれども、3ページのトランスディシプリナリーの話と、これは第5期の科学技術基本計画の中に多分位置付けをしていこうという話なんですが、過去の基本計画の中には、いわゆる分離融合というような形でインターディシプリナリーというのがあって、なかなかそれもできなかったというのが私の印象なんですけど、更にそれを超えてトランスディシプリナリーに持っていこうというのが、多分、基本計画の中心的な考え方になるのかなというので、そうですかというのが1つの質問です。
 2番目は、人材育成の話というのは、最近、独立行政法人の改革の話があって、利益の最大化じゃなくて、国としての成果の最大化の中に人材育成というのが入っていまして、ここでもやっぱりトランスディシプリナリーな人材の必要性がうたわれているんですけど、それ以前にディシプリナリーの研究者も人材が不足しているような現状にあったりするので、そういう意味で、将来の科学技術の発展を考えると、この人材育成、非常に重要なんですけど、現状として、やはりディシプリナリーによっては人材が不足しているというようなこともあるんではないかと思って、多分その辺は分析をされた上での議論だと思いますが、それで、ここで言う人材育成というのは、どこがやるという、主として大学、いわゆる教育機関というようなお話なのかどうか、今の段階で分かればということでお願いします。
【安井主査】  難しいですね。
【江守委員】  人材育成、余り具体的な議論はなかったんですけれども、あるべき論で終わったようなところがありますけれども、想像すると、恐らく大学というのが1つ、自然なことだと思います。
 それから、戻りまして、インターディシプリナリーも十分にできてないのにトランスディシプリナリーかということは、我々の議論の中でも出ました。であるからこそ、トランスディシプリナリーということを、何となくお題目で分かったり、そういうふうに唱えたりすればいいんでしょみたいなことではなくて、本当に何をやらなくちゃいけないのかということをよく考える必要があるなということを指摘したにとどまっているという感じがしております。
【安井主査】  ありがとうございました。林委員、どうぞ。
【林委員】  10秒で終わります。さっき、観測とか予測とかメカナイズするところが、そこを重視するべきだと言いますが、そこで、きょうの住さんとの議論で、僕、気が付いたんですが、住さんの考え方でいくと、要するに、自然界の観測、予測とかメカナイズをどうするかというのはあって、それは住さんの中の科学なんですが、もう一つはやっぱり社会経済的なこと。もっと具体的に言うと、土地利用が基本だと思うんですが、土地利用というのは自然と社会との接点になっていて、そこで最終的にいろんな被害が出たりとかもしますよね、原因が出たりとか。そこのところの、今度は社会の方のメカナイズするところがどうだというところも、きちっと両輪で位置付けておいてやると、話がかみ合っていくのかなと思いました。
【安井主査】  ありがとうございました。どうぞ、山地委員。
【山地委員】  つまらない、表現上のことなんですけど、9枚目のスライドのところの「営利事業化」という表現がありますけど、これ、多分、意図しているのは、費用を回収するために使用料金を取るというぐらいの意味ですよね。営利事業というと、出すデータの価値で売って、もうけるというイメージがあるので、ちょっと誤解する人が出てくる可能性はあるので、ちょっと表現を変えた方がいいんじゃないかと思います。
【安井主査】  手数料とか。
 ほかに何かございますでしょうか。よろしゅうございますか。この話に関しましては、先ほど申し上げましたように、また次に継続で議論をさせていただくということになるかと思います。
 というわけでございまして、ちょうどいい感じになりましたね。それでは、次、議題4というのがございますけれども、何かございましたっけ。特に、その他ございますか。特になし。事務局側はよろしゅうございましょうか。
 それじゃ、御挨拶を最後に頂くんですが、磯谷審議官、お願いいたします。
【磯谷大臣官房審議官】  ありがとうございます。研究開発局担当、審議官の磯谷でございます。今回の環境エネルギー科学技術委員会、第8回でありますけれども、科学技術・学術審議会の全体の任期が2月14日までということでありまして、実質、今回が最終回でございますので、事務局を代表いたしまして、一言御挨拶申し上げたいと思います。
 この委員会では、環境エネルギー科学技術分野における研究開発について、きょうもそうだったんですが、評価を頂くとともに、我が国における今後のフューチャー・アースの進め方に関する持続可能な地球環境のための研究の進め方についての中間取りまとめ、あるいは、第5期科学技術基本計画につながる環境エネルギー分野における社会実装に向けた研究開発に関する今後の検討の方向性を策定いただくなど、精力的に御審議を頂きました。まことにありがとうございました。
 この委員会の先生方、顔ぶれを見ても、日本の科学技術、環境エネルギーに関して語るにふさわしい方ばかりといいますか、これ以上の人材はいないぐらいの先生方に、本当に御多忙の中、毎回御足労頂きまして、大変充実した審議を頂いたと思っております。とりもなおさずといいますか、やはり我々、政策を考え、実行する立場でありますので、こうした委員会の知的レベルの高さが、環境エネルギー課をはじめとした研究開発局の知的レベルの高さにつながったんじゃないかと思うんですが、まだまだ難しい課題がいっぱいありますので、これが中身だけじゃなくて、実際に実行できるような、そういうことを我々はしていかなきゃいけないんじゃないかと、またきょうもつくづく感じたところでございます。
 先ほど御紹介いただきましたように、現在、第5期の科学技術基本計画に向けての議論が文部科学省でも、野依委員長の下での基本政策委員会の議論も、きょう、中間まとめが出ましたけれども、それから総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)においても、基本計画専門調査会において議論が開始され、1月22日に第2回が行われるというような運びになっております。そういった議論も踏まえて、引き続き第8期の委員会においても、環境エネルギー分野に関する研究開発の推進方策について、そうした第5期科学技術基本計画に向けての議論もにらみながら、引き続き審議をお願いしたいと思っております。
 最後に、各委員の皆様方、これまでの尽力に改めて感謝申し上げますとともに、引き続き環境エネルギー関係、環境とエネルギーという非常に親和性があるようでないような難しい課題、しかし、これは日本あるいは人類にとって避けて通れない課題でありまして、永遠の課題でもありますけれども、引き続き行政の推進に御指導、御支援賜りますよう、お願い申し上げまして、簡単ですが私の御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
【安井主査】  どうもありがとうございました。
 それじゃ、事務局から最後の御連絡を。
【山村課長補佐】  事務連絡でございます。本日の議事録につきましては、後日、事務局よりメールで委員の皆様にお送りさせていただきます。御確認いただきまして、修正等がありましたら御指摘願えればと存じます。最終的には文部科学省のホームページに掲載することで公表させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 また、旅費、委員手当等の書類につきましては、記載内容を御確認の上、お帰りの際に事務局に御提出願えればと思います。
 また、本日の資料につきましてですけれども、机上資料につきましては、冒頭申し上げましたとおり、会議後回収とさせていただいておりますので、机上に置いたままということでよろしくお願いいたします。
 それ以外の資料につきましては、郵送御希望の場合は、お手元の封筒に入れておいていただければ、後ほど事務局よりお送りさせていただきます。
 次回の会合につきましては、第8期に引き続きでの開催を予定してございます。2年間にわたり貴重な意見をありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして、第8回環境エネルギー科学技術委員会を閉会とさせていただきます。本日はまことにありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局環境エネルギー課

メールアドレス:kankyou@mext.go.jp

(研究開発局環境エネルギー課)