第7期 環境エネルギー科学技術委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成25年6月19日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省3階第1特別会議室

3.議題

  1. 平成25年度環境エネルギー科学技術委員会における中間評価の実施について
  2. 環境・エネルギー領域における取組について
  3. その他

4.出席者

委員

安井主査、三村委員(主査代理)、岩船委員、江守委員、奥委員、河宮委員、杉山委員、館山委員、田中委員、林委員、原澤委員、松橋委員、安岡委員、山地委員、鷲谷委員

文部科学省

篠崎環境エネルギー課長、清浦環境科学技術推進官、鏑木課長補佐、畑山地球観測推進専門官

オブザーバー

理化学研究所 環境資源科学研究センター 篠崎一雄 センター長、理化学研究所 創発物性科学研究センター 川﨑 雅司 副センター長

5.議事録

【安井主査】  それでは、ただいまより第7期科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会環境エネルギー科学技術委員会の第2回会合を開催させていただきたいと思います。本日はお忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 まず、事務局側から本日の出席者の確認についてお願いしたいと思います。お願いします。

【鏑木課長補佐】  環境エネルギー課で課長補佐をしております鏑木と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは、委員の方の出席状況につきまして御報告いたします。本日、15名の委員の方の出席を賜っており、過半数に達しているため委員会は成立しております。また、本日は理化学研究所のグリーンイノベーションに関する取組について紹介していただくため、理化学研究所の篠崎センター長と川﨑副センター長にもお越しいただいております。
 なお、本委員会は委員会運営規則により公開とさせていただきたいと思っております。
 以上でございます。

【安井主査】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして議事に入ります前に本日の資料の確認をお願いしたいと思います。お願いします。

(配布資料の確認)

【安井主査】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、前回御欠席でございました江守委員と奥委員と鷲谷委員の3名の委員の自己紹介をお願いしたいと思います。 それでは、江守委員からお願いいたします。

【江守委員】  独立行政法人国立環境研究所の江守でございます。よろしくお願いいたします。僕は専門分野としては、元々は気象学で気候のモデリング、シミュレーションで地球温暖化の予測、モデルの評価とか開発、そういったことを行ってきまして、今、9月に発表されますIPCCの第5次評価報告書のワーキンググループ1でモデルの評価に関する章のリードオーサーをしました。それからあとIPCCのワーキンググループ横断のデータとかシナリオの利用のタスクグループに随分何年かかかわっておりまして、いろいろクロスワーキンググループのことをその過程で学ばせていただきました。
 それから、最近、WCRP(World Climate Research Program)のWorking group on Regional Climateというもののメンバーで、もう少し気候のことを、関わることになったのですが、本人の興味といたしましては、最近はもう気候モデリングを離れましてというか、現場を卒業しましてフラフラと何か違うことを考えることを始めています。一つには、ここ2007、8、9年の温暖化ブーム以来、いろいろなことを経験しまして、一つには温暖化懐疑論論争にいろいろと巻き込まれまして、いろいろ議論した結果、非常に一般化して言うと、世の中に質の高いエヴィデンスの情報が共有されるというのは非常に難しいなということを実感しました。そのために何かできないかと思っています。もう一つは温暖化の政策論争をはたから眺めていまして、いわゆる環境重視派と経済重視派みたいな二項対立を乗り越えるのは非常に難しいなと思っていまして、それについても自分なりに何か取り組めないかと思っています。
 それから、その間に科学技術社会論という分野に少し興味を持ちまして、科学と社会の関係について自分なりに勉強しながらいろいろ考えているところです。もちろん、そうこうしているうちに3.11が起きましたので、そのリスクということに関して、今言ったいろいろなことを絡めながら自分なりに興味を持って考えようとしておりまして、そういうものをいろいろとあわせて、今、環境省の環境研究総合推進費という予算で、グローバルな気候変動の問題をリスク管理の問題として捉えたときにどんなことが言えるかというような観点で大勢の研究者の皆さんと協力して研究をしているところです。どうぞよろしくお願いします。

【安井主査】  ありがとうございました。
 奥委員、お願いいたします。

【奥委員】  首都大学東京の奥と申します。どうぞよろしくお願いいたします。前期に引き続いて2期目の委員を務めさせていただきます。専門は、元々は行政法がバックグラウンドなのですけれども、今は環境法及び環境法政策の分野を専門としております。数少ない社会科学系の委員の一人ということになろうかと思います。環境関係では、ほかに例えば環境省の地球温暖化防止活動推進事業の委員会のメンバーであったり、フロン対策関連の委員会がございまして、そちらのメンバーであったりいたしまして、あとは国土交通省関連でロードプライシングの検討会といったようなところに顔を出しております。あとは自治体レベルでの環境審議会の委員、これは複数の自治体で務めさせていただいております。あと、環境影響評価審査会といったような委員会ですね。自治体関連の仕事が結構多くございます。
 あとは、環境分野ではございませんけれども、外部評価ですとか、内閣府の市場化テストですとか、そういったところのお仕事もさせていただいております。一生懸命務めさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【安井主査】  ありがとうございました。
 鷲谷委員、お願いいたします。

【鷲谷委員】  東京大学の鷲谷です。専門は生態学ですが、保全生態学といいまして生物多様性の保全、持続可能な利用などの社会的な目標に貢献するような応用分野の研究を主にしております。生物多様性の保全や自然再生などに関する研究を幅広く扱っているのですけれども、いろいろな分類群の生物について言及、日本では余りないような自然史の研究室にもなっています。しばらく前からほかの分野の方や地域の方と共同で研究や実践することの面白さを覚えてしまいまして、今、多様なテーマの中でも特に力を入れているのは情報科学の先生や地域や市民の方と一緒に参加型の生物多様性モニタリングのプログラムを開発したり、それを実際に動かしてみてデータをどういうふうに活用していくかというようなことまで含めた統合的な研究を行っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【安井主査】  ありがとうございました。
 それでは、議事に移りたいと思いますが、本日でございますが、お手元の議事次第を御覧いただきますと、一応、その他を含めて三つ議題がございます。最初の議事は中間評価の実施でございます。それから、2番目でございますが、特別に御出席の理化学研究所からの2人の御説明と、その後、質疑応答をさせていただきまして、それから、最近の情勢というようなことで事務局から御説明を頂いた上で総合討論といいますか、全体的なお話を頂くようなことになるかと思いますので、多分、時間としては、そこは30分から40分ぐらいあるのではないかと思いますので、何かございましたら是非積極的に御発言を頂きたいと思います。
 それでは、最初の議題の1でございますが、平成25年度環境エネルギー科学技術委員会における中間評価の実施について、この委員会のノルマでございますので、これを決めなければいけないということでございます。それでは、事務局からの御説明、お願いいたします。

【鏑木課長補佐】  それでは、御説明いたします。本件につきましては、前回の4月26日の第1回委員会におきまして、大学発グリーンイノベーション創出事業グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス事業と地球環境情報統融合プログラム(DIAS)の事業につきまして中間評価を実施することになるということで決定をしていただいたというところでございます。グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス事業のうちの植物科学分野について一つと、同じく環境情報分野及び地球環境情報統融合プログラムについて一つ、二つの中間評価調整グループにおいて研究代表者等からのヒアリングをとおして、中間評価の原案を作成するということにしております。グループのメンバーにつきましては、この当委員会の中から安井主査と御相談をいたしまして別紙1と別紙2のとおりで実施したいと思っています。
 中間評価の原案につきまして、次回の第3回委員会におきまして委員の皆様にお諮りをいたしまして、この委員会としての評価ということで進めてまいりたいと考えております。なお、ほかに二つ、中間評価をすべき課題がございますが、それにつきましては、それぞれ担当する委員会が別でございますので、それぞれの委員会でまた行うということで考えております。それから、参考までにそれぞれの事業のポンチ絵を付けておりますので、御覧いただければと思います。非常に簡単でございますが、以上でございます。

【安井主査】  ありがとうございました。
 それでは、誠に恐縮ながら、その二つの中間評価調整グループということでございますが、原澤先生と三村先生に主査となっていただきますが、よろしくお願いしたいと思います。何か御質問等ございますでしょうか。もし何かこの中身について御意見があれば、あるいは中間評価調整グループに対して伝言があれば後の方でまた言っていただけるという時間がございますので、そのときにでもお願いをしたいと思います。とりあえず、この委員にお願いをするというのが議題でございます。それでは、よろしくお願い申し上げます。
 次の議題に入らせていただきたいと思います。次の議題は、環境・エネルギー領域における様々な取組についてということでございまして、最初には御紹介いただきましたように理化学研究所で取り組まれておりますグリーンイノベーション絡みのその活動に関しまして御説明を頂きたいと思います。それでは、まずは事務局から御説明をお願いいたします。

【鏑木課長補佐】  それでは、理化学研究所の方から御説明いただく前に簡単に御紹介を申し上げたいと思います。当委員会で環境・エネルギーの領域に関するいろいろな事項を扱っております。その中におきましてグリーンイノベーションの関係で、理化学研究所の方にいろいろなお仕事をしていただいているわけですけれども、この4月から環境資源科学研究センター、それから、創発物性科学研究センターという二つの組織が新たに発足しております。この機会にこの両センターの概要について御紹介をするということにいたしまして、お2人の方にお越しいただいたということでございます。
 それでは、篠崎センター長の方からよろしくお願いいたします。

【篠崎センター長】  理化学研究所の環境資源科学研究センター長の篠崎です。よろしくお願いします。御紹介ありましたように理化学研究所の第3期中期計画に入って新しく大きく改組された部分があるのですけれども、特にグリーンイノベーションに関して二つのセンターが始まったということは一つの大きな方向性だと思います。私の方は環境資源科学研究センターの方を御紹介したいと思います。資料2-1の最初の方をお開きください。それから、パンフレット、理化学研究所全体と環境資源科学研究センターのパンフレットがありますので、それを後ほど見ていただければいいと思いますけれども、この環境資源科学研究センターは、キーワードの環境とか資源、あるいは食糧などに関する研究を推進し持続的な社会を目指そうということで、植物科学、それから、ケミカルバイオロジー、化学という三つの領域で異分野連携をしながら研究成果の産業利用を視野に入れた研究をしようということで始まりました。
 2ページ目を見てください。これにありますように生物学と化学がもたらすグリーンイノベーションということで、野依理事長、人類の存続のための、生存のための研究をちゃんと理研もすべきだということで、今回、資源の循環的な創出と利活用ということで、このセンターを始めたわけです。この生物学と化学ということなので、特に植物科学、微生物科学、あるいはケミカルバイオロジー、それから、化学などを融合しようということで、ここにありますように生物機能の多様性、化学的多様性の理解を更に進めて、それを実際に活用していくということがこのセンターのミッションであります。最終的には下にありますように資源・エネルギー循環型の持続的社会を実現するという方向性で研究開発を進めたいと。これは10年間の時限のセンターとして始まっています。
 3ページ目に全体の概要が書いてありますけれども、まず、この上の半分はこれまでの研究をベースにした企画をどう立てたかということですけれども、一つは植物科学研究センター、これは横浜にありますけれども、基礎科学では非常にレベルの高いセンターでありますし、そこには世界的なメタボローム、つまり代謝の網羅的な解析の基盤もあります。それから、和光の方にはケミカルバイオロジー、ケミカルバンク、天然化合物バンクを要するケミカルバイオロジー研究領域。それから、独自の触媒を開発している触媒化学研究領域があって、この三つを融合させて新たなセンターを発足させました。
 異分野連携なのでいろいろ議論したわけですけれども、下にありますように資源の循環的創出・活用を実現するには、こういった融合分野を開拓して、更に産業連携に持っていくというスキームが必要だろうということです。基本的にはバイオを一つのベースにして、バイオリファイナリーということで生物と化学の力を融合させる。持続的生産に結びつけるということです。キーワードをここに四つ書いてありますけれども、炭素、窒素など、それから、金属元素の循環的利活用技術の研究開発、最後の四つ目は基盤研究ということで、後で少し説明しますけれども、基本的にはCO2の資源化、あるいは省資源、あるいは金属などの資源回収などの課題を取り上げようということです。
 次の4ページ、これが炭素の循環的利活用技術の研究開発という内容になりますけれども、4ページを御覧ください。ここは基本的にはCO2の資源化というキーワードでくくれるかと思います。この研究開発の概要を少し見ていただきますと、植物科学の方からのアプローチとしては、光合成機能強化技術の研究開発ということで、光合成、あるいは光合成に関わる代謝機能を向上させていろいろな物質生産、有用物質生産を向上させる。それから、2番目の二酸化炭素、酸素の資源化技術の研究開発、これは触媒化学の方で二酸化炭素からカーボハイドレート等を触媒的に合成する、あるいはクリーン酸化で酸素を使った酸化を進める。三つ目は生物機能と化学の融合によって代謝のエンジニアリングと、それから、化学的な変換で有用な新しい化合物を作り出すということを考えています。
 次の窒素などの循環的利活用技術、これは5ページですけれども、これは一つは省エネルギーに関わることですけれども、窒素からアンモニアを省エネルギーで合成する。ハーバーボッシュ法が有名な反応としてありますけれども、これは非常にエネルギーを必要とする反応なので、より有効な触媒を作って、それで省エネルギーでアンモニアを合成する。これに関しましては侯研究グループで非常に活性の高い触媒が見つかりまして、現在、「Science」に論文が印刷中になっています。それからもう一つの植物側ですけれども、研究開発の概要の方を見ていただきますと、ローインプットで高成長を可能にする有用植物の研究開発ということで、これは肥料を余り必要としない、あるいは窒素とかリンの使用を最小限にして生産性を維持できるような作物を開発するということで、省エネルギー、あるいは省資源に貢献するということになります。
 次、金属ですけれども、6ページを御覧ください。金属に関しましてはレアメタルなどの稀少金属の利用というのは非常に重要になっています。これらの回収、あるいは普遍金属で同じような機能を持った新しい触媒ができないかということで、研究開発を検討しています。この研究開発概要ですけれども、上の方は触媒化学からですけれども、普遍的な遷移金属元素などを使って有用な触媒を開発する。それからもう一つは生物機能を使った資源回収・環境浄化技術ということで、これまでコケで鉛の回収とか、同じように金の回収とかできていますので、こういった生物機能を使った資源回収も検討するということで進めています。
 それから、7ページ目は理研の特徴である研究基盤ですけれども、一つは代謝の産物の網羅的な解析を進めているメタボローム解析基盤が世界的にも有数な基盤です。それと、和光の天然化合物バンクをうまく統合し、新たな有用な生理活性物質を探索する、あるいはそれらを作る代謝ネットワークを解明する等で利用するということを考えています。それからもう一つは、いろいろな生理活性物が見つかるわけですけれども、それの機能を実際に決めて有用な生理活性物質を探索しようというプラットフォームも作っています。
 組織ですけれども、8ページです。先ほど言いましたように植物科学、ケミカルバイオロジー、触媒化学の融合ということで、それぞれの専門の分野の研究チーム、ユニット、グループで25ありますけれども、これらを集約して炭素、窒素、金属、あるいは基盤などのプログラムでプロジェクト制を方向付けていこうと。写真がありますけれども、植物科学から4名のグループディレクター、ケミカルバイオロジーから2名、ケミストリーから2名ということで8名のコアメンバーで運営するということです。この中にバイオマス工学とか、創薬基盤も連携部門としてセンターに入っています。
 運営に関しては予算をどう配分するかというのは非常に重要ですけれども、とりあえずコア研究、世界的にもレベルの高いコア研究をきちんと維持して成果を上げながら、この9ページですけれども、コア研究で成果を上げながら先ほどの融合研究を推進して異分野連携での成果を上げていく。最終的にグリーンイノベーションですので、産業連携とかオープンイノベーションのスキームをきちっと作って、これは社会創成事業という新しい事業が理研で始まっていますけれども、そういったスキームを使って産業連携、あるいは国際連携を進めていくことを考えております。
 10ページ、これは今後の展望ですけれども、現在、新たに取り組もうとしているのはTPPに関わりますけれども、強い農業、あるいは持続的食糧生産という植物科学の得意分野になります。2番目の研究開発の成果のイメージ、二つ目にありますけれども、二つ考えていまして、一つは強い農業のための高品質で豊富な健康成分を有するような農作物を作り出すという課題になります。もう一つは、持続的農業生産に関わるということで、ゲノム育種などを利用して環境変動と環境ストレスに強い作物、あるいは耐病性の農作物、更に植物工場に適した農産物を創出する。それから、低窒素、低コストの効率的な農業を実現するということで、基礎から応用に向けての連携をしながらプロジェクトを進めようと考えています。
 以下、参考はこれまでの研究成果、これに関わる研究成果ですけれども、12ページ、13ページにまとめてあります。植物から言いますと、低窒素で生育するための新しい植物ができたとか、あるいは甘草の有効成分を作る酵素を見付けて、それを使って酵母にグリチルレチン酸を作らせることに成功しました。先ほど言いましたコケで鉛を回収できますけれども、同時に金も回収できるということで、これはDOWAと協力しています。オーキシンの生合成の主要な経路が分かり、その成果は植物の生育の向上、あるいは増産につながるということです。化学の方も多様な触媒を開発していまして、希土類の10の触媒の組合せで精密な共重合を作る方法を開発し、さらに水素貯蔵の材料の合成と構造解析にも成功しました。それから、ケミカルバイオロジーでは抗生物質に関わることが多いですけれども、生合成の機序を解明しました。さらに新たな機能を持つ小分子化合物を探索したという成果が上がっております。
 以上です。

【川﨑副センター長】  それでは、引き続きまして創発物性科学研究センターの狙いとアクティビティについて御紹介します。我々のセンター、創発物性の創発という言葉ですが、これは個々の要素の総和からは予想もできないような性質や機能、そういうものが全体として現れる、そういうことを指す言葉でありまして、我々が対象とするのは、例えば電子であったり、分子であったりするのですが、そういうものの集合体を用いて新しい機能、それをエネルギーに活用していこうというのが狙いです。
 2ページ目を御覧ください。これは我々が成し遂げたい第3のエネルギー革命を御紹介しているわけですが、御存じのとおり第1のエネルギー革命というのは産業革命の際に蒸気のエネルギーを機械、力学エネルギーに変えて、それで、右の図にありますようなファラデーが発見した電磁誘導で発電をする。これが第1のエネルギー革命で、人類の文明が飛躍的に発展したわけです。第2のエネルギー革命は、それを木炭や石油を燃やすのではなくて、核のエネルギー、質量とエネルギーは同一であるというE=mc2(二乗)、これを使って熱を出して力学エネルギーから電気を得る。ただし、この第2のエネルギー革命でも古典的な電磁誘導を使って電気を発生するということについては変わりありません。我々が成し遂げたいのは第3のものでありまして、固体中の電子というのが量子力学的な電磁誘導を生み出す、そういう創発的な現象を使って飛躍的なエネルギーの利用、あるいはエネルギーの生成、捕獲というものに飛躍的な発展を生み出したいというのが我々センターの狙いです。
 次のスライド、3ページを御覧ください。我々の研究センターの目標としては、上の囲いにありますとおり、(1)(2)(3)にあります物性物理学、強相関物性物理学と(2)の超分子機能化学、(3)の量子情報エレクトロニクス、これが3本柱の部門になっていまして、これらをシナジー効果を発生させながら、環境調和型持続社会に実現する革命的な新しい成果を出していきたい。具体的に狙っているエネルギー機能というのは、下の二つに書いてありますが、環境調和型超高能率エネルギー収集・変換ということで、例えば光のエネルギーを電気に変える、熱のエネルギーを電気に変えるというふうなエネルギー変換技術、あるいは環境資源に低負荷のナノ化学の反応場を用いてエネルギーと物質の変換を行う、こんなようなことを考えています。
 下の方では、超低エネルギー消費エレクトロニクスと書いてありますけれども、これは従来のシリコンテクノロジーの効率を上げてスマートフォンの電池を長持ちさせるという話ではなくて、物理原理の革命的な新しいことを生み出していって、そのシリコンテクノロジーに代わるような種を生み出したいと考えています。そこでは(ローマ数字1)(ローマ数字2)(ローマ数字3)と書いてありますけれども、電子の集団としての層、フェーズの変化を使った太陽電池、あるいは不揮発性メモリ、ロジック。(ローマ数字2)にありますように原理的にエネルギーをほとんど消費しないような情報の伝送、そういうものを可能にする新しいスピントロニクス。(ローマ数字3)にありますような分子技術を使った新しいエネルギー変換、このようなものを考えております。
 4ページ目を御覧ください。これが我々センターで考えておりますコンセプト、コンセプチャルなポンチ絵になりますが、左上と右下の青がインプットでありまして、真ん中で研究をして右上と左下のギザギザの付いたのがアウトカムということになっています。創発機能の新原理、環境調和型の機能設計、こういうものを先ほど御紹介した三つの部門、そのシナジー効果を使って様々な研究にアタックして超高効率エネルギー捕獲・貯蔵、左の超低消費電力エレクトロニクスに結びつけていこうというのが我々の狙いです。
 次のページを御覧ください。ここから三つの各部門について御紹介します。一つ目が強相関物理部門、強相関の相関というのは電子と電子はお互いに反発する。それが強烈に起こるというのが強相関でありまして、個々の要素の電子では創造できないような集団的な物理現象がこの強相関物理というものです。ここではエネルギー機能の交差相関応答とありますが、この交差相関というのは例えば電圧をかければ電流が流れるだとか、熱を掛ければ物が熱くなるというのは、これは自明な関係の刺激と応答の関係になるわけですけれども、例えばそのポンチ絵の一番下の左に書いてありますように、電圧を掛けたら磁石が反対を向く。右下にありますように光を当てたら電気が出る。右上にありますように熱を掛けたら電気が出る。このような非自明な交差した相関、刺激と応答の相関を使うというのが我々の主眼です。
 それに加えて左上の図にありますエネルギーロスのないエレクトロニクス、これは物理学で言うトポロジーを使った新しい原理を用いたスピントロニクス、このある種の物質の端、この場合ではエッジ、あるいは表面、そういうところにほとんどエネルギー消費をしないようなスピンの流れというのが生み出せる、こういうものが今最もホットなトピックスになっているわけですけれども、これで情報処理をしようということを考えています。
 次のスライドを御覧ください。6番です。ここでは超分子化学部門ですが、例えばバルクヘテロ接合の太陽電池というのはP型とN型を混ぜて、その界面を利用するということですが、我々はむしろ、個々の要素である分子に機能を植え付けて、それを集合させることによって集合体を作って新しいデバイス機能を出していこうということになっております。
 例えば右上の例では分子自身の中にP型とN型の接合を作って、それを自己集合させる。このようなことを考えています。それで光をエネルギーに、あるいは左下の例でいきますと、光を当てると機械エネルギーが生み出せる。右下の例ですと99%まで水でできた固体の水というのがうまくデンドリマーを使うとできる。これというのは形を変えることができ、千切ってもまた自己修復するというような作用を持つようなものです。こういうものを使ったエネルギー機能をデザインしていこうとしています。
 次のスライド、7番を御覧ください。ここでは量子情報エレクトロニクス部門では、安全で省エネルギーな情報処理というものを考えております。量子情報という、普通のデジタルというのはゼロと1で情報を処理するわけですけれども、ゼロと1を複素数でくっつけてやりますと、これは量子情報というもので、非常に低消費で、ある種の計算を非常に高速にできるということになっているわけですけれども、これは例えばパスワードを解読する暗号情報処理だとか、ビッグデータをどうやって効率的に処理するか、こういうことで非常に必要な技術になっています。
 これに関しては世界のトップの研究者を我々のセンターにスカウトしてきて、強力に推進していくつもりです。例えば超伝導に含まれる磁束、あるいは半導体のドットに含まれる電子のスピンが上を向いているか、下を向いているか、こういうものを使う技術が左の二つです。右上はスピンの上と下というのは光の偏光で右回りと左回りに相当していますけれども、そのスピンの情報を光にカップリングさせて、光でスピン情報を飛ばすということにも成功しており、これを量子中継に用いようということを考えております。
 次のスライドを御覧ください。8ページ目ですけれども、シナジー効果を出すということで、研究分野としても、あるいは組織の作り方としても工夫をしているわけですけれども、ここでは研究分野融合プロジェクトということで、下に五つの丸が出ております。メーンでは熱を電気に変える熱電効果というものに関していろいろなシナジー効果を出しながら研究をやっており、最近では有機物を使った熱電効果等の研究もやっております。その五つの丸のうちの二つ、スピン流というのと、それから、電場で磁石を引っくり返す、これに関してもやっぱり低消費エネルギーで情報処理ができるということですが、このスピン流を使うと、今度は情報処理、量子情報に関連した研究も可能だということで、この辺も来年度の概算要求に強化を狙った、そういう仕組みを考えたいと考えているところです。
 次のスライドを御覧ください。9ページ、もちろん理化学研究所でやる研究ではありますが、その出口というのを意識するということ、余りこれまでは理化学研究所はそういうことを意識するという研究がなかったかもしれませんけれども、我々のところでは垂直連携、水平連携ですか、産業界とも密にコンタクトをとりながら、イノベーションのニーズというものに意識して、それでイノベーションのシーズをここから出していく。そのときのトランスファーとして是非産業界の若手の研究者の方に理化学研究所に入り込んでいただいて共同研究をするというスキームを今現在やっております。
 これまで実はセンター長の十倉と一緒に産業技術研究所、昔の工技院のJRCATというアトムテクノロジーの時代からこういうことを私も一緒にやってきているわけですけれども、いろいろな産業界の方からは、バブルのときにやった中央研究所の機能を、基礎研究部門を我々の研究所、あるいは研究室で是非やってほしいということで、プレコンペティティブなステージで切磋琢磨するような、そういうのをやっており、民間の企業研究者の人材育成にも寄与したいと考えております。
 次の10ページ目を御覧ください。これは科学技術立国100年の計というのは何といっても若手人材の育成でありまして、それにも積極的に取り組みたいというのがこの絵になっております。中央にありますブルーのCEMSというのが我々の研究センターですが、青の四角のPIというのが研究主催者になるわけですが、そこには赤にプログラムULというのがありますが、これは30代前半を想定した若手研究者、独立の研究室を持ってもらうのですが、非常に上手にメンタリングを施しながら成長を促す、こういうふうなこと、拡大図が右下に書いてありますけれども、特任准教授クラスですか、そういう人に例えば1期5年ぐらい在籍してもらってポスドクを指導しながら研究をしてもらって、5年たったらどこかの大教授としてテニュアポストをとってもらう、こういうふうなことを考えており、女性だとか、外国人というのも積極的にこういうところで取り組んでいこうとしています。
 それで、左と右に赤字で理研丸丸大学連携研究室とありますが、これは現在、清華大学、それから、インドのインディアンサイエンスと計画中でありまして、更に日本では東京大学で、これは最先端、ファーストプロジェクトを使った社会連携講座というのが現在走っております。これを続けていこうと考えております。この社会連携講座では、3年間で延べ11名の30代前半の教員を採用して、もう既に6名が著名大学のPIとして転出しております。一番成功した例は、助教で採用したのが3年後に東北大学金属材料研究所の教授、35歳の教授としてスカウトされました。こういうものを強力に推進して外国に負けない若手人材育成、そういうものにまい進したいと思っています。
 11ページ目を御覧ください。これは我々のセンターを中心として、既にMOUを結んだ協力関係にある海外の著名研究機関です。
 12ページ目を御覧ください。これが我がセンターが持っております約30名のPIのリストであります。三つの部門に外国人が今3名おります。その一番右側に統合物性科学研究プログラムとありますが、これが30代前半を考慮したユニットリーダーというものを現在選考中、公募して選考中でありまして、ちょうど今コアメンバー会議で、その人事のアップルーブをとっている最中で、近々始動するということになっております。
 次の13ページ目を御覧ください。これが来年度の概算要求にも関連した研究に関して、最近出た研究成果の一例ですけれども、左上は有機物と酸化物の界面を使って、わずか1ボルトを掛けるだけで金属と絶縁体が切り替わるという成果がNature紙に報告されています。右側は新しい原理を用いた熱電材料の設計に関して第1原理計算と実験を組み合わせて非常にいいものができ出しているという成果です。左下はトポロジカル絶縁体というトポロジーという性質の違うものの表面にはエネルギーの散逸がほとんどない、スピン流が流れるということを言いましたけれども、これをゼロ磁場でも可能にする。要するにゼロ磁場で量子ホール効果を出すというものすごい新しい状態を実現しつつある。右側は、これは量子中継に関連した半導体中の量子ドットに逃げたたった1個の電子のスピンの上と下というのを光の右偏光、左偏光に強結合でカップリングさせて、それを光で飛ばすということに成功した例でございます。
 次の14ページを御覧ください。これが今後の展望と書いてありますが、今、文部科学省の方と調整をしながら取り組んでおります概算要求にも関連した研究題目で、上の方は先ほど来申し上げています量子情報エレクトロニクスによる次世代通信ネットワークということで、いろいろな省庁連携というのが大切だということで総務省さんとか、あるいはNECとか、そういうふうな会社とも連携をしながら、その実現を図るような考えを今練っておりますところです。それから、下側は新しい原理による革新的超低消費電力デバイスということで、特に今年はトポロジカルに違うものの界面、あるいはその表面で現れるエネルギー消費なく情報を伝送できる電流、これに力を入れていきたいと考えており、こういうもので原理的に異なる低消費エネルギーエレクトロニクスを実現したいと考えております。
 以上です。

【安井主査】  ありがとうございました。
 という御説明を頂きました。篠崎センター長、川﨑副センター長からの御説明でございますが、何か御質問等頂ければと思いますが、いかがでございましょうか。どうぞ。

【館山委員】  物質・材料研究機構の館山です。川﨑先生とは多分、研究会で何度かお会いしたことがあると思います。理化学研究所は確かに基礎研究として非常にすばらしい方々がたくさんいて、基礎研究の分野では非常にトップランナーだと思うのですけれども、グリーンイノベーションということになりますと、やはり出口寄りとおっしゃっている割には、そんなに例えば太陽電池の効率何%、あるいは熱電変換にしてもZTで幾つというところに行くと、まだ新しいエキゾティックな材料はやっているんですけれども、出口にそんなに近づいているのかなというところが若干感じられるところがあるのですけれども、そこは実際のところ基礎中心でいって、出口にはそんなに、まあ、出口寄りの方を自分の方に呼び込むという形でやるのか、それとももっと出口サイドに寄っていって、もっと貢献するというふうに行きたいのかというのは、どういうポリシーかというところは伺ってもよろしいでしょうか。

【川﨑副センター長】  現在分かっている原理を更に伸ばすという研究スキームではなくて、現在分かっていない研究原理を研究しないと革命的に新しい機能は出ない、そういうスタンスで研究をやっております。ですので、例えばZT、太陽電池の効率といったときに、今分かっている原理のものをもう少し上げるという研究ではない。しかし、ちゃんと出口を見据えて、こういうことが必要ならば原理としてバンド構造はこうでないといけないとか、全く新しい光1粒で電子とホールが複数出るような新しい原理、こういうものを考えていく。それには基礎の学問としての物理の背景というのは深いものを持っていますから、当てずっぽうでやっているわけではございません。そういうふうなスタンスでやりたいと思っています。

【安井主査】  ありがとうございました。
 いや、大学系で材料系というと私が一番近いのかな。そうでもないか。今のお話を伺うと、大学の存在も何か危うくなるようなお話があって、そのあたり本当に全体像としてどのぐらいのところをお考えなのかなという気が、大学に在籍されている方に代わって伺いたいと思いますが、かなり大きな研究費を持って人材を育てるということを多分やらないとちゃんとした人材が育たないという御主張のようにも見えるのですけどね。

【川﨑副センター長】  例えば人材育成でいきますと10ページを御覧いただきたいのですが、ここで説明した人材育成というのは学生ではないんですね。ポスドクでもないのです。ポスドクや学生を指導して一流のPI研究者となる過程で理化学研究所は大きく貢献できる。そういうふうに考えています。大学というのはやっぱり学生を育てるということが第一義で、例えば附置研究所でも大学院生、ポスドクということになろうかと思いますが、私自身も大学にも身を置くのですけれども、個々の研究室の中堅若手研究者がどう育っていくかということに関して、組織立って何かをしようというのは余りない。むしろ、自由にやってもらうということです。それでは多分、超一流のリーダーを育てるのに収率が悪かろうと思っていて、こういうふうな10ページに書いたようなスキームでエリート教育というのを若手人材に対してするというのが非常に有効だと考えております。

【安井主査】  なるほど。どうぞ。

【安岡委員】  これは今お話になった10ページの前の9ページの図に分野を超えて課題解決型の共同研究ということがあります。課題解決ということをどういうふうに理解されているのかなというのをお教えいただきたいのですが。最近、国際的にも今までの基礎研究、ボトムアップ的な研究がやっぱり課題解決に結び付かなかったというかなり強い反省があって、それを組み換えなければいけない、そういう動きがあるわけですけれども、課題解決という場合に何を課題とするか。一番上のレイヤーの課題、それから、更に下に来た課題と幾つかレイヤーがあると思いますが、理化学研究所の場合に民間企業が課題と考えている課題を受け取るというふうには話は聞けなかったんですね。むしろ、それはボトムアップ的に課題を設定されている。将来このことをやれば課題が解決できるだろうというボトムアップ的な姿勢をずっとお持ちになっていらっしゃるのかどうか、そこが少しお伺いしたかったんですけれども。

【川﨑副センター長】  従来の理化学研究所というのは、そういう意識が多かったと思います。ただ、我々も、私自身も橋本先生とも議論をする機会がありまして、例えば企業がシステムを作っている産業界が思っている課題に対して、それをブレークダウンして、それぞれの要素を還元しながら基礎研究のディフィニション(定義)をしていくという、バックストリームで流れていく、そういう考えというのは理解しているつもりです。ただし、民間企業の方とディスカッションをしながらやっていったときに、例えばエレクトロニクスであれば、あるシステムを作りたいときにはAの部品でなかったらBの部品、何でもいい。それで、ある機能をするシステムを作るということもできるのですが、一方で、この分野にはこういう機能があればいいよねという夢のような機能もあるわけですね。
 そうしたときに我々がボトムアップ的に今までやってきた、蓄積した学術をベースとする基礎研究と、そういうものというのを結び付けるということがとても大切であって、やっぱりブレークダウンして必要なものを、好きな基礎研究をやっているのではなくて、こういうことをやりなさいというのもあっていいんだけれども、基礎、しっかりとしたものを企業からブレークダウンした個々の課題にリンク付けをするということができるはずだと考えています。そのスキームがこの9ページに書いてあることで、例えば電気会社の方が低消費エネルギーのメモリを作りたいということを考えていて、いろいろな課題、我々に来るわけですけれども、その中で今まで産業界の方が全く知らないような新しい磁気構造を使ったメモリ機能だとか、我々、そういうシーズを持っているんですね。そういうものを産業界の方と議論しながらブレークスルーを結び付けていく、こういうふうな研究をこの9ページのようなところでやっていきたいと考えています。

【安岡委員】  ありがとうございます。結構難しいだろうと思っていますけれども。

【川﨑副センター長】  ええ、もちろん難しいのは分かっていて、でも、そういうことをやらないと基礎研究のドライビングフォース(原動力)としては十分ではないということは認識しております。

【安岡委員】  そうですね。はい。

【安井主査】  ありがとうございました。
 どうぞ。

【篠崎センター長】  確かに理化学研究所はそういう意味で基礎研究を中心にやってきたので、企業からみて敷居が高いというのが一般的なイメージだとは思うのですが、オープンイノベーションはこれから非常に重要だと思っていて、特に企業のニーズ、それから、企業として基礎的なことでこれから必要なものを考えている課題をうまく調和させるような仕組みをこの中に取り入れていきたいと思います。このような中で企業の若い研究者も育つし、理研の研究者もそういったニーズを見ながら研究ができるという体制を作るというのは非常に重要だと思います。

【安井主査】  杉山委員、どうぞ。

【杉山委員】  電力中央研究所の杉山です。両方についてです。初めに環境資源科学研究センターに1件だけですけれども、「循環的」というキーワードを一貫して用いておられるのですけれども、必ずしも循環させなくても、要は人類が持続可能に暮らせればいいので、上手に捨てるような話もあるのかなと。都市鉱山の話も出ていますけれども、都市鉱山よりはまず先に低品位の資源を開発して使っていくというのが普通は順序としてあったり、あるいはCO2も必ずしも循環させなくても、採掘技術の方が進んできて、今、安く化石燃料が手に入るようになってきているので、出てきたCO2は地中に埋めてしまうとか、海に沈めてしまうとかそういう発想もあって、そういったところまでスコープに入れていただいた方がより研究開発の出口がいろいろできていいのかなと思うのですけれども、循環的というキーワードが一貫して使われているので、それを過剰にそこに縛られて排除するようなことになってしまうと少し心配かなという気がいたしましたので、それが1点です。
 あともう一つ、創発物性科学研究センターも御説明を頂いて、私はこういう試み、非常に重要だと思っていまして、太陽電池もバッテリーも今あるものというのは十分にいいものではない。それから、通信技術、それから計算技術についても、もっとずっと効率のいいものがあった方がいい。それは専ら通信や情報の技術、それ自体の省エネ化ということで今おっしゃっていて、Green of ITとよく言われている部分だと思うんですけれども、それよりもっと大きいのがGreen by ITという方だと思っていて、こういった基礎的な科学技術が進むことで、IT関連の技術のコストが大幅に下がる。それが桁違いに下がると経済全体の効率が非常に高まって、富が生まれていろいろな環境問題に対処できるようになるし、ごくわずかなエネルギーや物質の投入で人類の福祉が向上する。そういったことがあるかと思っています。
 お伺いしたいのは、非常に難しいというか、いろいろな前提を含むのですけれども、こういった基礎的な研究がもたらすであろうマクロな効果、経済への効果とか、世界の福祉への効果といったものの何かしらごく荒っぽい推計のようなものを、でも、ちょっと笑い事っぽいんですけれども、やった方が多分いいと思っています。過去にそういう前例というのは幾つもあって、蒸気機関が発明されたことでこれだけ世の中の福祉がよくなりましたとか、電気が発明されたことでこれだけよくなりましたという話がある。それと類似した議論というのは多分できるはずで、もしそういうブランチを直接お持ちでないのであれば、そういった推計をするような人とどなたか共同なさって、なかなか難しいんですけれども、ただ、どんなに荒っぽくてもいいので、そういう議論は一度はした方がいいのだろうと思います。
 もう一つが、少し長くなるんですけれども、こういった科学技術に関するプログラムというのを国の国際交渉における約束に含めるという考え方が恐らくできるのではないかと思っていて、これはどちらかというと文部科学省に御相談なのかもしれないのですけれども、今、京都議定書の次の議定書、枠組みをどうしようかという国際交渉が進んでいるのですけれども、国内のCO2削減だけ言っていても仕方がないですねと。世界全体で温暖化対策をやるためには、技術開発もしなければいけない。
 その技術開発に対して金額なり、人数なり、研究プログラムなり、そういったものを国が持って、それをコミットしていく、約束していくというような立て付けもあり得ると考えています。そのようにすることで、こういった研究プログラムも政治的な流れで拡大したり、縮小したりするようなことなく、国際的な位置付けが与えられると安定して研究プログラムを維持できるという、そういったメリットがあるかと思いますけれども、こういった活動を国際的なコミットメントにするというような発想があるかどうか。これは文部科学省になるのかもしれないですけれども、お考えをお聞かせ願えればと思います。
【篠崎センター長】  最初の循環的利活用ということですけれども、基本的には豊富にある二酸化炭素とか窒素とか、そういった材料を生物的にうまく固定して、それを利用するということで、環境に負荷をかけないような持続的生産というのを、バイオをベースにして、化学変換も含めてやろうというのがこのセンターの役割で、もちろんいろいろなアプローチがあると思うのです。二酸化炭素の問題にしても、それから、窒素の問題に関しても、一つの切り口として生物学と化学でチャレンジしようということで進めたいと思います。その場合にやはり企業のニーズとか、社会的なニーズというのは重要なので、その部分をうまくセンターの取り組む課題と合わせながらやっていきたいと考えています。

【安井主査】  どうぞ。

【川﨑副センター長】  二つ目のブレークスルーの経済効果みたいなことですが、経済効果みたいなことを自分たちでしたことは実際ありません。ただし、このセンターを設立するに当たってマジック4という掛け声を出したんですけれども、例えば超伝導になる臨界温度が400ケルビンだとか、熱電効果のZTという指標が4だとか、蓄電池の容量だとか、太陽電池の効率、こういうものを4でそろえて、こういうものを実現する。20年、30年先にこういうものを実現するためのブレークスルーを行うのだというロジックでした。例えばZTが2になるといろいろなエアコンだとか、そういうところからコンプレッサーがなくなる可能性があって、プリウスの廃熱をもう1回発電に使えるとか、そういうことになって4になると革命的なことが起こると言われています。その経済効果は存じ上げません。
 また、超伝導の臨界温度ということであれば、液体窒素を超えた25年前にいろいろな試算がされたと思うのですが、25年たってそうなっているかというと、そうなっていないところがあるんですけれども、150Kから四半期変わっていない臨界温度を上げる新しい仕組みというのをいろいろ試しておりまして、そういうものがもし実現するとどうなるかというのはシンクタンクだとか、そういうところは試算ができるのかなと思って、そういうことを少し考えたいと思っています。

【安井主査】  それでは、松橋委員、どうぞ。

【松橋委員】  今、発言された杉山さんと私は割と元々専門が近くて、どっちかというとシステム寄りの人間なものですから、どうしてもアプリケーションの方に目が向いて、じゃあ、経済効果がどうなるのかとか、京都議定書の後にという話になるのですが、恐らく理化学研究所は非常に基礎的な研究とか物理的なブレークスルーとか、そちらをまず第一に考えていらっしゃるので、いきなりそれで経済効果でどうのとか、京都の後のアクティビティベースのそれというのは、私は分かるのだけれども、こちらの理研の研究からは飛びがあり過ぎるので、いきなりそれをつなげてしまうのはちょっと無理があるのかなという気はするんですね。
 ただ、特に前半の環境資源科学研究センターの方のいろいろな研究テーマを拝見していますと、経済効果がどうのこうのというよりこのテーマ自身がいろいろなところでよく拝見するような基礎科学というよりは応用に近いにおいがして、金属の再利用などというと環境研とか、環境省関連の研究所でもかなりされている。法制度も含めて、そちらでされているように思いますし、あと、CO2の炭素の循環利用というのも、いろいろなところでよく目にする技術というか、研究開発ですので、こちらの方はどういうすみ分けがされているのかというのは関心があるといいますか、気になるところではあって、日本全体のマップの中でこの理研のこのセンターのあれがどう位置付けられて、ほかとどうすみ分けされているのかなというところは少し気になるところではありました。

【篠崎センター長】  今回、基盤のことを申し上げましたけれども、理研が個別研究で大学と同じようなことをやっているということではどうしようもないわけで、今回、環境資源科学研究センターはかなりメタボロームとか、それから、フェノームとか、そういった網羅的な解析基盤と、それから、ケミカルバンク、そういったものを利用した割とシステマティックな研究を中心にしてやろうということで、これは大学の研究者とはネットワークを組んでいます。ですから、大学での個別研究という面と、それから、理研での基盤を使った集約的な研究という面で仕分していただければ分かりやすいのではないかと考えています。

【松橋委員】  すみません、ちょっとだけ、むしろ経済産業省とか環境省の研究所との合同の会議とか、文部科学省と経済産業省の合同の会議なんてあったと思いますが、あそこではこういうのはそ上に上っているのでしょうか。それは別ですか。

【篠崎センター長】  バイオマス関係は多分、文部科学省も取り組んでいるし、それからあと経済産業省も取り組んでいます。出口へ向けてのアプローチとかが異なると思います。それから、連携に関してはそれぞれのプログラムでやっているのではないかと思います。

【松橋委員】  分かりました。はい。

【安井主査】  そろそろいいですか、大分時間が過ぎてしまいまして、いろいろ御議論いただきましてありがとうございました。一言だけあれでございますけれども、篠崎センター長のところの3ページ目ですか、それを見せていただくと、オイルリファイナリーからバイオリファイナリーへと書いてあるところが気になって、今、バイオマスというのは本当に評価が悪くて、バイオマスの一つのキーワードがバイオリファイナリーだったものですから、これは取られた方がいいのではないかなという気がしますね。実際、ここに書かれていることは全然バイオリファイナリーではないように思いますね、あの時代に言っていた。

【篠崎センター長】  まあ、バイオベースな生産ということで使っています。

【安井主査】  ですから、ここで今御提案されたことはみんな重要性が高いと思いますが、このキーワードを使うと何か昔の古いイメージが残ってしまうような気がするので、何かそんな気がいたしました。というわけで、どうもありがとうございました。
 それでは、次に移らせていただきますけれども、次は幾つか御説明いただきますが、篠崎課長から、文部科学省、経済産業省合同検討会が開かれておりますので、その状況についてお願いをしたいと思います。

【篠崎環境エネルギー課長】  それでは、資料2-2から2-3、2-4、2-5について一通り事務局の方から説明させていただいて、あといろいろ意見交換とか、御議論いただければと思います。
 今日は、最初の議題で既に事業を行っているものについての中間評価をしていただくというような話をさせていただきましたけれども、それとは別にそれぞれ来年度以降、どういうような施策をやらないといけないかということについても、細かい話をどうという話ではありませんけれども、いろいろな方向付けに関係するような国の中の動きがありますので、その辺の紹介をさせていただいて、それを見ながらいろいろ個別に問題提起とか、コメントなど頂きながら、来年度の施策に反映をさせていきたいなと思っています。元々この環境エネルギー科学技術委員会というのは環境とエネルギーという非常に大きな二つの柱があるわけですけれども、その環境、エネルギーの定義というのも結構いろいろ、人によって違いますし、それから、ある意味いろいろな融合分野が増えてきていて、対象とする領域というのもどんどん増えているのではないかと個人的には思っています。したがって、議論が発散するかもしれませんけれども、そういうことも念頭に置いた上でお話をさせていただければと思います。
 資料2-2が、これは科学技術イノベーション総合戦略ということで総合科学技術会議の方が6月7日に閣議決定をしたものです。最初の1枚目に横長のチャートがありますけれども、これが総合戦略の概要の簡略版というものでして、本体そのものは別のところに冊子でとじてあるのがありますけれども、これを一々説明すると大変なので、関係部分だけ抜粋したのが資料2-2だと思っていただければと思います。資料2-2はこのイノベーション総合戦略については、1章、2章、3章、4章と4章立てになっていまして、一番チャートの上のところ、イノベーション立国を目指してというのが第1章で、これはある意味基本的な考え方とか理念みたいなところだと思っています。2章が取り組むべき課題ということで、これは具体的にどんな研究分野だということで、幾つかポイントを挙げてこういうふうに列挙しています。ローマ数字1からローマ数字5まで五つに分かれておりますけれども、この委員会で一番関係しそうなのは、恐らく一番左のクリーンで経済的なエネルギーシステムの実現というところで、ここの辺でいろいろエネルギー関係の話があります。
 それから、明示的には出ていませんけれども、真ん中のローマ数字3.世界に先駆けた次世代インフラの整備というところで、インフラの安全・安心の確保、レジリエントな防災・減災機能の強化というのがありますけれども、この中で例えばいろいろ減災・防災のためにいろいろな環境の研究もやらないといけないとか、そういうことも多少入っていますが、元々この総合戦略というのは産業競争力会議とか、後で説明します再興戦略というのがありまして、どちらかというと今の政権の一番主要な課題である、いわゆる経済の活性化という観点で、それにじかに結び付くようなテーマというのを中心に議論されてきたという経緯がありまして、多少環境関係についてはエネルギー関係に比べると書き方として少し弱いかなという感じがしていますけれども、そういう面もあるということだと思っています。
 それから、右側から二つ目のローマ数字4.地域資源を強みとした地域の再生というのがありますが、これは大きく二つあって、いわゆる地域振興という話と、それから、その振興策の重要なツールとしての農業の振興というのがあります。農業そのものは、ある意味直接ここの委員会のいろいろな議論の場の対象として、今まで余り取り上げられていなかったのではないかと思いますけれども、農業も環境と非常に親和性の高い分野ですし、今の政権の非常に大きなウエートの置き方としての重要なポイントの一つだと思っていますので、そういうところの関連で我々の方でどういうふうに考えていくかというような話があるかと思っています。
 それから、3章を飛ばしまして最後の4章、総合科学技術会議の司令塔機能強化というところですけれども、これは今回のこの総合戦略の、ある意味横断的な事項の目玉なのかなと思われておりまして、そこに3点ほどハイライトされているところがありますけれども、科学技術関係の予算戦略会議の設置をしろとか、これは内閣府主導で政府全体の予算編成の指導をしていくためにそういう場を作れとか、それから、その下に府省横断型のプログラムの創設というのがあります。府省横断というのはどういうことかというと、だんだん設定されるべき問題というのが大きくなってきて、一つの章でくくれなくなってくるような問題というのが多くなってきているので、そういうことを考えると特定の一つの省だけで完結しないような課題が多くなるので、やはり関係省庁を集めてそういうプログラムを作らないと真の問題解決にはならないだろうというような、そういう発想だと思っております。これはこの環境エネルギー分野については非常にそういう意味で言うと関連性が深いのかなと思っておりまして、その辺をしっかりと受け止めないといけないということだと思っています。
 それから、右側にいわゆるFIRSTという大きなプログラムが従前からありますが、これの後継施策、本年度で一応、FIRSTが終了するということになっていますので、その後どうするかというようなことについても、新しいプログラムを創設したらどうかというのがこの総合戦略で位置付けられているというものです。
 1ページめくっていただきまして、右下に緑色でページがありますけれども、3ページです。科学技術イノベーションが重点的に取り組むべき課題ということで、これも抜粋とありますけれども、先ほどのチャートの2章で言ういろいろな、ローマ数字1からローマ数字5まで幾つか重点的な課題ということで明示的に書かれているものがあるわけですけれども、その中のいわゆる柱書きになる課題のテーマのところだけを抜粋したものです。クリーンで経済的なエネルギーシステムという先ほどのローマ数字1が一番上のところで、その次が健康長寿といって、その次の4ページ目に行くとローマ数字3、ローマ数字4、ローマ数字5というふうになりまして、これが全体のこの総合戦略で俯瞰されている重要課題ということで認識されているものです。
 5ページ以降、この中の最初のクリーンで経済的なエネルギーシステムの実現というものを、その総合戦略の当該部分だけを抜粋したものが5ページ以降になっていまして、具体的に先ほどのクリーンで経済的なエネルギーシステムの実現ということで幾つかカテゴリーが出てきたものが7ページの(1)から(8)ということでして、(1)の革新的技術による再生可能エネルギーの供給拡大から、(8)の革新的エネルギー変換・貯蔵・輸送技術の高度化ということで、いわゆる生産、消費、流通のそれぞれのフェーズにおける重点的取組というのを八つテーマを設定しまして、その八つのテーマについての内容が緑数字の7ページからずっと11ページまで続いております。この中には一部もう既に文部科学省、あるいは経済産業省も含めまして関係府省で取り組んでいるものもありますし、これを受けて新しく何か施策として位置付けないといけないようなものというのも出てくるかと思っておりまして、そういうものを一応、府省の名前も明示して、ちゃんとしっかり考えろというようなことの宿題を今頂いているというようなことになっています。
 もう一つが12ページ、世界に先駆けた次世代インフラの整備というところで、13ページを少し御覧いただきたいと思いますけれども、そこから重点的取組でこの次世代インフラのところに幾つかのテーマが設定されております。この分科会の委員会の関係で言うと、恐らく13ページの(2)の自然災害に対する強じんなインフラの実現というところで、ここにありますように最初の2行ですけれども、人工衛星等による地球観測データ及び地理空間情報を用いた観測・分析・予測技術とか、それから、先ほど杉山委員から少し御指摘があった国際交渉という話の観点でいったときの技術開発段階からの国際的枠組み作りとか、2のところに少し書いてありますけれども、そういうことも多少は触れられているということです。
 それから、15ページを少し御覧いただきたいと思いますが、地域資源を強みとした地域の再生というテーマがありまして、その次の16ページに農林水産業と、それから、いわゆる地域発のイノベーション創出ということで、幾つかこの切り口でやります。16ページにゲノム情報を活用した農林水産技術の高度化ということで、これはある意味、先ほど篠崎センター長からお話のあった環境資源科学研究センターの関係の取組も少し関係する部分かと思いますし、それから、この環境エネルギーという切り口とは別に、例えばライフサイエンスとか、全然別の分野の検討課題というのがありまして、この辺はある意味オーバーラップする部分なのかなということもあるかと思います。
 それから、21ページを御覧いただきたいと思いますが、20ページ、21ページで総合科学技術会議の司令塔機能の強化ということで、先ほど申し上げた三つの話が具体的にどういうふうなことを考えているかいうことについて、21ページ、22ページに府省横断型のプログラムの話やFIRST後継施策の新たな展開というような話があります。それから、更に23ページは、こういう新しいプログラムを立案する上での具体的なマネジメントの方法ということで幾つかの提案がありまして、23ページの右下、4のところでプログラムディレクターを通じたプログラム総括とか、それから、24ページに行くとガバニングボードの設置、あるいはその下に事務局体制の強化ということで、いわゆる内閣府の方でしっかりとグリップするためのいろいろなファンディングの、マネジメントの在り方みたいなことについての幾つかの指摘がされているということです。それがこの資料2-2になります。
 資料2-3を少し御覧いただきたいと思いますが、日本再興戦略、これはどちらかというと科学技術というよりは、むしろ従前の成長戦略と言っていたものの名前が変わって、最後の最後で変わったというのがありますけれども、いわゆる経済再生のためにオール政府として何をやらないといけないかということで、これはいわゆる研究開発だけではなくて規制改革とか、いろいろな研究開発以外の政府としての施策をやるべきものというのを基本的に列挙したということで、この再興戦略そのものは研究開発の具体的な話について触れられているものではありませんが、この2-3の1ページを開いていただいて目次というのがありますけれども、ざっと総論から三つのアクションプランというのがありますが、右上のところの3.の科学技術イノベーションの推進というところで、いわゆる横断的な事項としての研究開発を進めていく上での留意点というのが幾つか書いてあります。
 それから、右下に戦略市場創造プランというのがありまして、テーマ2というところでクリーン・経済的なエネルギー需給の実現というのがありまして、これも先ほどの総合戦略と切り口は似ているんですけれども、具体的な記載としてはページをずっとめくっていただいた69ページというところ、抜粋したのがありますけれども、右下に9ページとなっていますが、クリーンで経済的なエネルギーが供給される社会ということで、ここからざっと抜粋した部分をここにお配りしておりますけれども、その後、10ページ、11ページと見ていただくと分かるように、技術開発についても多少触れられていますが、主に例えば環境アセスの話とか、規制緩和の話とか、それから、更に言うとスマートコミュニティの話とか、水素供給のインフラ導入支援とか、そういうふうないろいろな話が網羅的に書かれているという位置付けのものです。それが資料2-2と資料2-3で、これが政府全体としての、いわゆる来年度の施策をやる上でのキーワードになり、重点事項ということで位置付けられているものでして、これをベースに今後概算要求の編成の方向付けがされていくというふうに我々の方では予想しているということです。
 それから、資料2-4が、先ほど少し触れられた方もいらっしゃいましたけれども、特に経済産業省との府省横断プログラムということで、今、経済産業省と文部科学省の方で合同検討会というのを昨年来いろいろと開催し、議論をしてきたものがありまして、それについてざっと簡単にまとめたものです。4.とか5.を見ていただくと分かりますように、一応、5.がこれまでの開催実績で、一昨年の10月からやりまして、昨年の5月に第4回というのをやって、ここで幾つかのプロポーザルをされたということで、それをベースに具体的な25年度の予算要求をさせていただいたということです。
 具体的に今検討会玉としてあるのが3ページ以降、25年度の両省連携テーマ、それから、その次のページが24年度の両省連携テーマということで、2ページ目の1の蓄電池から始まりまして、6の人工光合成というところまで、これは合同検討会が開催される前から始まっているものもありますし、それから、合同検討会で議論されて、より府省連携の程度を強めるようなマネジメントをすることを始めたような1や2のお話とか、幾つかの施策を紹介させていただいているということです。
 5ページ、6ページは、先ほどの総合科学技術会議の総合戦略と全く同じ資料ですので省略をさせていただきます。こういうものを俯瞰しながら、特にエネルギー関係については経済産業省と合同検討の議論なり、検討なりというのを今やらせていただいているということであります。更に資料2-5のフューチャー・アースについて清浦の方から説明いたします。

【清浦環境科学技術推進官】  それでは、フューチャー・アースにつきましては資料の2-5でございます。簡単に御説明いたします。前回、4月26日の本委員会におきまして、フューチャー・アースに関して検討するための作業部会を置くということを決定いただきました。これを受けまして安岡委員に主査をしていただく形で6月4日に第1回を開催しております。今のところ、あと2回ほど議論をした上でまたこの委員会に結果を御報告させていただくということを考えております。
 それから、委員のメンバーですけれども、その次のページでございます。フューチャー・アースは、その多様なステークホルダーと共同して行うというところを意識しまして、様々な方々が来ております。それから、関係省庁、文部科学省のほかに内閣府、環境省、気象庁、外務省もメーンテーブルに座っていただいておりますが、第1回の議論の際に経済産業省も入るべきという御意見がございまして、第2回からは経済産業省も入っていただくということになっております。
 その次、飛ばしまして学術会議の動きを若干御紹介させていただきますが、チラシがございますけれども、昨日、6月18日、学術会議の方でフューチャー・アースに関するキックオフフォーラムということで、380人ほど来られた非常に大きいフォーラムというのが開催されております。それから、これに先立ちまして、これはクローズドでございますけれども、学術会議の中のフューチャー・アースに関係する分科会の先生方が集まりまして、合同分科会で御議論いただきまして、フューチャー・アースに関する横断的な新しい委員会を設置するということを学術会議の中で合意されたということを御紹介します。
 それから、その次のページ、恐縮です。非常に大部で英文の資料をそのまま付けさせていただいておりますが、昨日、フューチャー・アースの科学委員会に選考された18名の方々というのがフューチャー・アースのホームページに掲載されましたので、それをそのままお付けしております。最後にフューチャー・アース作業部会で主査代理をしていただいております安成先生も選ばれておりますので御紹介させていただきます。
 以上です。

【安井主査】  いろいろと御説明いただきました。フューチャー・アース絡みは後の方にしたいと思いますが、それ以外の部分で何か御質問若しくは御意見等頂ければと思いますが、いかがでございましょうか。どうぞ。

【原澤委員】  いろいろ説明、ありがとうございました。1点、資料2-2で科学技術イノベーション総合戦略が出たということで、第4期の科学技術基本計画との関係を教えていただきたいのが一つと、あと総合科学技術会議の環境エネルギー技術革新計画の改訂を今進めているという話もありましたので、その辺との関係、国として一体としてやっているということだと思うのですけれども、差が分からないのでそこの説明をお願いいたします。

【篠崎環境エネルギー課長】  まず、基本計画の方は、あれは5年物になっているので、まだ引き続き生きているという前提ですけれども、特にこの科学技術イノベーション総合戦略は先ほどの日本再興戦略、あるいは去年で言えば成長戦略なのですけれども、年度ごとに特に予算措置を重点化させるようなものをある意味ハイライトして、そこに重点的に投資しようというような、そういう発想だと思っていますので、ある意味、この科学技術イノベーション総合戦略の本来、上の方に今動いている基本計画というのがあって、それをそれぞれの年のいろいろなメリハリを付けた形で位置付けられているのがこの科学技術イノベーション総合戦略だと思っています。それから、ある意味、政権も基本計画実施中に代わったりするので、その政権のいろいろな意向とか、科学技術政策以外のいろいろなニーズとか、オリエンテーションというのを受けた形で位置付けられているのだと思っています。
 それから、環境エネルギー技術革新計画の改訂については、先般、総合科学技術会議の方でそれをやるということが決まりましたけれども、これについてはむしろ、この科学技術イノベーション総合戦略や日本再興戦略とは別に、もちろんこれも入ると思うのですけれども、今後のいろいろなCOPの国際交渉とか、いろいろなことを念頭に置いて、更に原子力をどうするかとか、そういうものを念頭に置いた上でどういうふうにエネルギー政策なり環境政策を位置付けるかということを早急に取りまとめないといけないということで、急きょ、作業が始まるということですので、こういうものを受けてより環境エネルギーに特化した計画を作っていくのかなと私の方は理解しています。
 その際に多分、エネルギーのところだけでなくて、いわゆる地球環境とか、グローバルイシュー(地球規模課題)をどうするかという話も恐らく切っても切れないような話になると思いますので、その辺をどういうふうに位置付けるかということは、これは関係省とも相談しながら位置付けていきたいと思っていますけれども、まさにその辺が今まで欠けていた議論かなと思っているので、むしろこういうところでいろいろなオリエンテーションを付けていただいたものをそちらの方に入れていくというような作業をこれからやるべきかなと思っています。

【原澤委員】  ありがとうございます。

【安井主査】  では、三村委員。それから、林委員。

【三村主査代理】  今の話にも関係するのですけれども、この科学技術イノベーション総合戦略と、その上にある日本再興戦略というのを見て、文部科学省なり、あるいはこの環境エネルギー科学技術委員会で研究とか、そういう面では何をどこまでやるのかという、その境界のところをどう考えるかというのは重要なのではないかなと思うんです。というのは、実はこの委員会に直接ではないのですけれども、総合科学技術会議で科学技術のイノベーションシステムをどうするかという協議会に出ておりまして、政権が代わって以降、そこでの議論のトーンがものすごい変わったというのを感じています。どういうふうに変わったかというと、研究のステップを非常に概念的に言うと基礎研究とか開発研究みたいなものがあって、それを実証するという、その成果を実証するというのがあって、それを実用したり産業化するというステップがある。
 そのときの議論の中には、産業界の方はもちろんですけれども、ベンチャーキャピタルの人とかも来て、それで何もないところで新しいものを生み出す、そういうリスクマネーというのは政府が投入すべきだと。ところが、芽が出てきたもの、実証に移して、更にそれを産業化するに従って民間のお金がたくさん入ってくるようになる。日本のシステムの中では、実証とか実用化のところで政府が何割リスクを負って、民間が何割リスクを負って、そこのところのつなぎをベンチャーキャピタルなどがどういうふうに担うかとか、そういうシステムが全然ないじゃないか。だから、大学で大学発のベンチャーなどをやるといっても、慣れない人がやるんだからあんまり成果も生まれない。世の中に出すのは、それなりのプロもいるんだから、そういう人に任せたらどうかとか、そういう議論が随分あったんですね。
 そうすると、ここに書いてあること、研究の面で全部実現しようとしても、そこから先は別の人に任せるというところが出てくると思うんですよ。だから、文部科学省がやる研究戦略だとか、あるいはこの場で考えるところというのは、最終的に世の中の価値に結び付けるとか、実用化するとかというところまでやるのか、そうではなくて、どの段階までを考えるのかということをうまく整理しておかないと、この日本再興戦略、その前に乗ってやったら、最後、実用化するところまで全部面倒見なきゃいけないということになると、この委員会の範囲を超えるのではないかなというのが私の印象なのですけれども、そこら辺のことというのは、文部科学省の中では何か議論はあるんですか。

【篠崎環境エネルギー課長】  ありがとうございます。この日本再興戦略そのものは、文部科学省だけではなくて科学技術イノベーション総合戦略もそうですけれども、政府全体でどういうふうに、特に研究開発政策も含めていろいろなことをやらないといけないかということについての、ある意味オリエンテーションだと思っていますけれども、その中で文部科学省がどういう役割を担うかということについては、多分、その部分集合なのだと思っています。
 その部分集合がどこまでの範囲かということについては、これはいわゆる出口を見据えろという科学技術政策の今の非常に大きな議論と、それから、そうは言うものの、やはりちゃんと基礎力を弱くしてはいけないという別の意味の基盤整備みたいな話があって、文部科学省の場合はそれを両方見ながらバランスよくやらないといけないという宿命を負っていて、そのバランスのとり方というのが一番我々にとって頭の痛い問題ですし、一番難しい問題なのかなと思っていますが、一番重要な問題でもあるので、そういう話も多少分野ごとに違うところがありますけれども、基本的な考え方みたいなのは全体のコントロールを見ながら、個別の話をここで特に環境エネルギー環境についていろいろと御提言とか御示唆を頂ければと思います。

【安井主査】  補足でもありませんけれども、経済産業省と文部科学省の合同の検討会があるというのは、そこの境界をうまくぼやかすためにあるようなものなのでね。

【三村主査代理】  まあ、そうなんですね。

【安井主査】  そこをぼやかすというのが結構重要で、ここまでこれ、ここから先はとくっきりしてしまうと、そこでどうしても段差ができるから、それをぼやかすために存在していて、環境省と、それじゃあ、どうするのかというのは、まだ今のところ具体的にないんだけれども、まあ、そのうちそっちも作るのかななんて個人的には思っているんですけれども、いや、文部科学省が何を考えているか、実に無責任な発言ですけれども。
 それでは、林委員、お願いします。

【林委員】  この資料2-2のところで全体をお話しいただいたのですが、結局のところ、社会にとってどういうふうに役に立つかとか、もっと言うとクオリティー・オブ・ライフとか、ウェルビーイングとか、そういうところの仕掛けが全然ないと思うんですね。先ほども経済に対してどういう貢献があるかって話がありましたが、いきなり基礎科学的なところをやっておられるところに要求しても無理なので、これは非常に横断的なんですけれども、それぞれの研究と社会とか、それから、ウェルビーイングのところをつなぐ、その辺の研究そのものが非常に薄いというか、そういうところをやはり文部科学省的にもきちっとやっていかないとばらばらになってしまう。
 私の近いところですと、インフラとの間ぐらいのところを私はやっているんですけれども、別のところで例えば土木学会誌に何か論説を書けと言われたので、今日、原稿を出したところですが、インフラなどでもばらばらに、堤防は堤防、その中の町はまちづくりって別々にやっていて非常に危ないのですが、それだけではなくて、結局、インフラを作ったり、何でもそうですけれども、あるいはエネルギーのことをやったときに、それが最終的に生活とか生産とか、そこに対してどういうふうに結び付くかということをやらないと全然意味がないということなので、是非そこのところをやる必要がある。キーワードとしてはインテグレーションというか、そういうものがあったらどうかと思います。経済産業省などでも、ここにはスマートグリッドってたまたま出ていないんですけれども、スマートグリッドなんて言っているのですが、ハードだけ作ろうというのが非常に強くて、それが一体どう生活にというのが分からない。
 それからもう一つ、やや唐突に聞こえるかもしれませんが、アフリカについてどうして何も言わないのかということですね。私はこのTICADで今年騒いだのとは全く関係なく、やはり非常に重要で、アフリカは日本の生命線ですよね。日本がこれから立ち行くかどうかというのは、アフリカに対して日本がきちっと貢献できるというところができるかどうかなので、TICADはTICADで何か一生懸命やっていてということになるんですけれども、全然こういうところに出てこないというのは一体どうなっているのかなと。それで、ああいう会議の下に何かやろうと思っても無理ですね。これはエネルギーとか環境とかいうところで非常に重要なことがたくさんあると思いますし、まあ、ほかの分野でもあるのですが、あるいは医療とか健康とか、是非そういうところに軸線を作っていく必要があるのではないかと思います。

【安井主査】  ありがとうございました。
 何か、お答えはいいですかね。もしあれば。

【篠崎環境エネルギー課長】  まず、経済成長だけにとどまらないという話は、我々自身もそう思っていまして、そういう方向で議論したいなと思ってはいるのですけれども、今までのこういういろいろな、今回、出された戦略なり、そういうものについてなかなかそうではないところについての議論が進んでいなかったというのは一つ現実としてあるので、それをどうやって我々も今おっしゃったような、先生に御指摘いただいたような話に持っていくかということを、それこそ戦略的に考えたいなというのがあります。
 それから、アフリカについては、答えになるかどうか分かりませんけれども、例えば日本再興戦略の冊子そのもので言うと、例えば87ページ以降が一応国際展開戦略というのが章立てになっていまして、具体的には例えば海外市場獲得のための戦略的取組というところで、90ページにアフリカ地域というのがあってTICAD5の話とか、一応、輸出額や現地法人売上高の3倍比、2011年比3倍を目指すとか、一応、言及はされているんですけれども、他方、あと多分、林委員がおっしゃっているのは、こういう経済の話だけではなくて、もう少し、いわゆるウェルビーイングとか、持続可能な社会作りのための観点からのというお話が多分含まれているのではないかと思うので、そういうところについてなかなかこういうところにまだ見いだせていないというのが事実としてありますので、そういう話も含めて、いわゆる環境の切り口をどういうふうに今後打ち出していくかというようなことについても議論が今後必要なのではないかなと思っています。

【林委員】  ちょっとだけです。自分の研究しているところと少し離れるかもしれませんが、例えばマズローの欲求段階なんてありますよね。例えば津波なんか受けたときには生命が危ないというので一番下の段階。何とかそこで生き延びたら、何とか健康な生活というか、ギリギリのところというのがありますね。それが別に津波を受けなくても、アフリカの場合だと飲み水がないという段階とかありますよね。例えばそういうベンチマークを作りながら、各文部科学省系のこういうのでやっている研究がどこにヒットするか、うまく役に立つのかとか、あるいはやっている最中の中間評価のときにこういうのにできませんかみたいなことを、これは日本向きになりますかとか、あるいはどういう段階の国に役に立つのかということを意識してもらうことによって、さっきのまたいきなりという言い方になりますが、ではなくて、ステップ・バイ・ステップでできるのがたくさんあるのではないかと思うんです。例えばですけどね。

【安井主査】  大変重要な御指摘なんですけれども、やっぱり何となく要素還元型はやるけれども、インテグレーション側はどこも弱いという感じがしますよね。積極的にそれを何とかプロモートするというのはどうやるんですかね。

【林委員】  評価の方式を作っておくということだと思うんですね。どういうテーマが出てきてもどう評価するかという話だと思いますね。いきなりアフリカと言ったって意味が分からないので、アフリカがその中に当然入ってくるというのもですね。

【安井主査】  いろいろと工夫を御議論いただきたいと思いますが、一応、かなりいろいろな、今、4方おられますが、こういって一番向こうに戻ってこういう形で、松橋委員からお願いします。

【松橋委員】  今、御指摘のあった、いわゆるウェルビーイングの評価とか、そういう点なのですが、かなり出口に近い技術の評価であればできると思うんですね。それは文部科学省ですと、手前みそですけれどもJST・LCSの私どもの研究センターでも社会経済のモデルと結び付けてやっておりますし、例えば環境省系ですと各研究所の中にもそういうモデルグループがあり、それから、今日、山地委員、いらっしゃっていますけれども、山地委員のRITEのシステム研究所でもそんなことをやっております。私の興味は、できればそういった出口に近い技術を入れてウェルビーイングがどのぐらい向上するかという、そういう研究をしている研究者同士でモデルなり評価システムを持ち寄って比較をやりたい。
 それは正直、予算の出元は違っているんだけれども、研究者同士であればある程度共通のツールを使っていて、同じように話ができるので、できれば研究者同士で集まって、どこが違って、どういう結果の違いになっているのかというところをお互いにプログラムを広げながらやれば非常にいい発見ができるのではないかということを思っておりまして、JST・LCSは最も歴史が短くて3年半しかたっていないのですけれども、有り難いことに文部科学省は科学技術という観点でやってくれということで、そういう意味ではかなり中立であり難い立ち位置にいるものですから、是非いろいろなところにお声掛けして、まだ正式にはこれからですけれども、そういったことができたらいいなということを一つ考えてございます。
 それから、更に定量ではないウェルビーイング、さっき言われたマズローの5段階とか、最後は自己実現というような非常に哲学的な難しいところへ入っていくわけですが、それに類する定性的な評価、私どもが少しやっているのですが、ここは大変難しい哲学的な分野で、恐らく人文科学とか、そういう先生を入れないとできてこないとは思います。ただ、それとは別に研究の評価という中で、どこに役立っているのかとか、いわゆる研究課題の評価という点ですと、この間、たまたまJST・CRDSの会合に、環境エネルギーの会合に出たときに笠木先生がそういう試みを始めておられましたので、そして、笠木先生は文部科学省と経済産業省の合同の会議にも委員として参加されていますので、これからそういうところを少し皆さんで力を注いでいけば、何かマズローの5段階に一足飛びに行くのは非常に辛いのですが、少なくとも公平な評価に近いものができてくる可能性はあるのではないかと思っております。
 以上です。

【安井主査】  ありがとうございました。
 よろしいですか。それでは、安岡委員、お願いいたします。

【安岡委員】  少し確認です。今の資料2-2の一番頭の総合戦略策定の必要性の文言なのですけれども、これは第1章をまとめられたということなのですが、我が国は人口減少や少子高齢化が進行し、地球環境問題等の難問が山積しているが、最大の課題は経済再生と、こう言い切られていますよね。これは人口減少や少子高齢化の急速な進行や地球環境問題の解決を通して経済の再生を図るというふうに読むような気がします。この戦略を読むと非常にストレートに書かれているんですけれども、何か地球環境の問題や少子高齢化というのは、それはさておき経済再生というふうには書いていないような気もするのですが。いや、確かに気持ちはよく分かるのですけれども、これは後の続き方がミスリードになる可能性があるので、特にフューチャー・アースのところの議論でミスリードになる可能性があるので、これは文部科学省がこういうふうに要約されたんですかね。

【篠崎環境エネルギー課長】  違います。

【安岡委員】  違うんですか。そうすると、本音が出ているということですかね。

【篠崎環境エネルギー課長】  資料2-2の簡略版というところの後に(内閣府作成)と書いてあるのですけれども……。

【安岡委員】  それそのままですね。

【篠崎環境エネルギー課長】  これは概略版なので、ある意味本文を正確にトランスファーしたわけではないと思いますが、本来言いたいことというのは、この冊子そのものの1ページから3ページまでのところに必要性というのがありますので、ここを御参照いただくということだと思います。

【安岡委員】  分かりました。本音が出ているような気がしましたので。

【安井主査】  先ほど予告いたしましたとおり、こちらに一旦戻りまして河宮委員、お願いします。

【河宮委員】  ありがとうございます。JAMSTECの河宮です。本筋の御説明とは少し離れたところなので恐縮なのですが、資料2-3の目次をつらつらと眺めていくと、左下の29ページのすぐ下のところに行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換という項目があるのですけれども、私、この研究業界で仕事を進めていて全く流れは逆だなと感じていて、行き過ぎた労働移動支援型の雇用制度があって、それを何とかしていかなければいけないというので研究者の人たちも、官僚の方々も頑張っていらっしゃるのかなと感じていました。それで、私、世間知らずではあるのですが、多分、一般社会でもそちらの傾向が強いのかなと思っていたのですけれども、これはこの項目についてはどういうことを念頭に置いてこういう項目を立てているのでしょうか。

【篠崎環境エネルギー課長】  すみません、専門外なので正確なお答えができるかどうかは分かりませんが、今問題になっているのは、特に任期付きの雇用の人が今5年以上、今度は採用を延長するということになると、本雇用にしないといけないという話になっていて、本雇用にすると企業の方がいろいろな意味で制約を受けるから、そうしないような方向になってしまっているというところがあって、そうすると、今、任期付きで雇用されている人から、今後あふれてしまうのではないかというような問題がいろいろなところで出ていて、それをどうするかという話がここの話の出発点なのかなと思っています。

【河宮委員】  分かりました。私、時間スケールを勘違いしていたところがあって、その無期雇用化ということそのものが、そのもののことを政策転換と言っているのかなと思っていたんですが、その無期雇用化ということが行き過ぎた雇用維持型という捉え方をしているという。

【安井主査】  多分、違う。

【河宮委員】  違いますか。ここは余り深入りしても本筋ではないので恐縮なのですけれども。

【安井主査】  全く本筋ではないんだけれども、今、産業界が言っているのは、今の日本は今ですら雇用維持が強過ぎる。もっと自由に解雇できるスタイルにしよう、そういう話ですよ。

【河宮委員】  だとしたら、研究業界に従事する者としては余りそこは進めてほしくないなというのは、文部科学省の方々に頑張っていただきたいなと思います。

【清浦環境科学技術推進官】  今の点、少し補足いたしますと、研究者等への労働契約法をめぐる課題というのは別途32ページのところで項目を立てておりまして、個別問題として、そこはちゃんと認知されているということになっております。

【安井主査】  それでは、田中委員、お願いします。

【田中委員】  少し産業側の立場で今までの話についてコメントさせていただきますと、2030年に実現できることというのは、かなりの部分は企業がそれを事業化して、それで利益を得て社会に還元するということになると思うのですけれども、化学会社は特に時間がかかり過ぎるのかもしれませんが、実際に今というか、30年に実現しそうなビジネスを、新しい技術をやろうとしますと、15年ぐらいかかる可能性がありまして、文部科学省がターゲットとするものと経済産業省がターゲットとするものというのは時間軸が違ってしかるべきではないかなと。それで、例えば文部科学省と経済産業省の連携ということを考えても、文部科学省での基礎的なところで10年ぐらい研究した中、そういうテーマが10個あって、1個ぐらい生き残ったやつを経済産業省が拾って事業化する。そんなようなシステムが必要なのではないかなというような感じがします。
 府省連携で、今、文部科学省と経済産業省が一緒にやっているテーマがあると思うのですけれども、我々から見るとコンセプトが少し、経済産業省のコンセプトは経済産業省であると思いますし、文部科学省のコンセプトもあると思いますし、そのものに対して私が持っているイメージからすると、それをミックスしてやるというのはなかなか本当は考え方として中途半端になってしまうのではないかなというような気がしております。また、産業側も今の労働の賃金のお話もありましたけれども、だんだんやっぱり競争が激しくなって基礎研究に投資できるお金が少なくなっているというのもまた事実でございまして、先ほどの川﨑先生がおっしゃったように、企業で昔はやれていた基礎的な部分が大学なり研究所で支えていただくという必要は日本全体としてあるのではないかなという気はしています。
 今、そういう中でかなりベンチャーが医薬だけではなくて、ベンチャーが見いだしたものをさらっていって、そこから先をやるというスタイルがだんだん費用と効率の面から増えてきているのがありまして、そうした場合に日本の中からそういうベンチャー的なものからさらおうと思ってもほとんどないというのがまた現状でございまして、その辺に対してどう日本としてやっていくのかということもまた一つ、2030年ということを考えたときに必要ではないかなと思います。
 以上です。

【安井主査】  ありがとうございました。
 経済産業省と文部科学省の話なのですけれども、今までだと割合とそこで切れていたものですから、ここから文部科学省、基礎側からこちらに行くときにどうしてもうまく移行ができなかったものですから、少なくとも両側をウォッチするシステムを作ろうという感じだとお考えいただいた方がいいと思うんですね。ですから、どこかで渡すんですけれども、こういうものは全部、今までだと同じ階段のところで全部渡していたんですけれども、それを場合によっては早く渡すとか、そういううまくつなげるという、そういう考え方だとお考えいただいた方がいいかなという気がします。
 それでは、山地委員、お願いします。

【山地委員】  この2-2から2-4のところ、5も含めて、こういうふうになっているんだという御説明だと思って聞いていたのですが、何を申し上げていいかよく分からなかったんですけれども、ただ、いろいろ議論を聞いていると、第4期の科学技術基本計画、あれは2011年ですか、作って、また今回、政権交代もあり、この科学技術イノベーション総合戦略ができる。それから、今後、さっき少し話が出た環境エネルギー技術革新計画をまたCOP対応などで作る。そういうことはある意味、政策として必要なことですけれども、私が見ているのは今後の政策展開において人、物、金を付けるときに、その根拠となるキーワードが入っているかどうか。そういうところかなというぐらいに実は思っていまして、そういう点から見れば、現状、この中で特に困ることはないのではないかなというのが非常に率直に言った感想です。そのあたりは多分、お役所の方がきちんと見ているという結果だと思いますけれども。
 しかし、二つぐらい具体的なことを言うと、これは2030年に通用すべき我が国経済社会の姿というのを念頭に科学技術イノベーションの戦略を書いているわけだけれども、当然、科学技術の場合はほかの政策よりはタイムスパンは長いですね。そこの意識はきちんと持っておかないといけないというのが一つです。だからといって、じゃあ、この科学技術に関する計画、政策を立てたときに目標年を明記してやれとまでは言いませんけれども、ただ、そのタイムスパンの違いというのはいつも考えておかないと重要なものが落ちていく。現状、それが起こっているというふうにも思えません。
 もう一つ具体的なところは、第4章の司令塔機能強化というところで、これはいいと思っているんですけれども、なかなか政治の方も政府の方も難しらしくてパチッと出てこないのですが、ここのを読むと何かまたプログラム、革新的研究開発支援プログラムを作って、プログラムディレクターを置いてという話になっているんですね。それが本当に内閣府の総合科学技術会議としての機能を果たせるものかどうかというもののチェックが要るし、それからもう一つ、先ほど松橋委員のおっしゃったこととも関係するんだけれども、シンクタンク機能の強化というのも書いてあるんだけれども、しかし、これもいろいろなところに実はあるわけですね。
 文部科学省系のものもあれば、経済産業省系ものも、環境省もありと。また内閣府に総合科学技術政策のシンクタンクを作るんですかとなると、やっぱりそういうことをやる人材ってそんなに多くはいないわけで、非常に忙しくなって薄くなってしまうわけですよね。そこにはスクラップ・アンド・ビルドとは言わないけれども、統合とか、そういうものがないと、言っていることを聞くともっともなのだけれども、現状のことを考えるとやっぱりもっと厳しい対応をしなければいけないと思うんですね。そういうことも少しお考えになっていった方がいいのではないか。
 以上です。

【安井主査】  ありがとうございました。

【篠崎環境エネルギー課長】  多分、これを作っていく議論でいろいろやっていたのが、まさにおっしゃるような御指摘でして、書いたことは書いたことで誰も否定するようなものではないんでしょうけれども、やろうとするときの副作用みたいなのが当然あるわけで、それをどうするかということが一番問題だというのは、事務的にいろいろ議論する中でも浮かび上がってきていたことです。それから、それは別に今回に限らず、昨年も一昨年も多分同じような議論があったと思っています。それをどういうふうにカバーするかというところまで余り議論せずに超えてきてしまっているというところもありますから、まさに実際にこれを実現する上で今のような問題をしっかりと意識しながら具体的な詳細設計をしていく必要があるのかなと思っています。

【安井主査】  ありがとうございました。
 それでは、フューチャー・アースにつきまして鷲谷委員からお願いします。

【鷲谷委員】  フューチャー・アースに関する御説明とこの資料を見せていただいて分からないことがございますので質問をさせていただきたいのですけれども、地球規模のフューチャー・アースの取組はかなり明瞭な形をとっていて、科学委員会ももう名簿が出ています。我が国でも作業部会を作って検討していらっしゃるということなのですけれども、地球規模の取組と我が国の取組の関係といいますか、我が国がどういうふうに貢献するのかという設計に関して基本的なお考えを伺えればと思うのですけれども、サイエンスコミュニティのメンバーの専門分野の構成を見てみますと、作業部会と微妙にというか、かなり違う面もあるような気がするんですね。そういうようなことも含めて今考えていらっしゃることを伺えればと思います。

【安井主査】  難しいね。どうぞ。

【清浦環境科学技術推進官】  まず、作業部会の方なのですが、学術会議の方の動きと二人三脚で進むということも考えておりまして、実は学術会議の方の委員会というのが、いわばフューチャー・アースの科学委員会に相対するようなものかなというようなことで考えておりました。むしろ、文部科学省で設置しました作業部会の方は、その国際的な学術の流れとしてフューチャー・アースという動きがあって、そのときに政府としてはどういうふうに取り組むべきか、その政府側の取組について議論するというのをそれぞれフィードバックしながら進めていった方がいいのではないか。
 そういう意味では、作業部会の方は、いわゆるステークホルダーが入っております。フューチャー・アースの方で今発表されました科学委員会の方はステークホルダーが入っておりません。これはサイエンティストの集まりです。フューチャー・アースの本部の方は、そのステークホルダーのグループというのはまたエンゲージメントコミッティとの混合ということになっておりまして、その意味では別にそごがあるべきではないと考えております。

【鷲谷委員】  分かりました。

【安井主査】  なかなかまだ決まっているというよりも、そもそもResearch for global sustainabilityなものですから、かなりいろいろな、本当に多様な面があってどうやって動くのかよく分かっていないようなところがありますので、是非ウォッチをしていただければと思いますが、江守委員はきのう出ておられて何かございましたら。

【江守委員】  きのうはなぜか司会を仰せつかりまして、おとなしく司会をしていました。せっかく振っていただいたので少し感想を申し上げたいと思うのですけれども、昨日いらっしゃった方もいらっしゃるかと思いますけれども、1時から6時までほとんど休みなしで発表とパネルディスカッションがありまして、ほとんどの発表でトランスディシプリナリーとか、そういうステークホルダー・エンゲージメントとか、そういうフューチャー・アースのキーワードが出てきて、こんなに何回もそんな言葉を聞かされるところに大勢集まった会議をできたというのは一つ意義だったのかなと思いますけれども、それは別の見方をすれば、何かそういうお題目を何回も聞かされて言葉を覚えたという、頭で何となく分かったというところを僕らはまだなかなか、今回では全然脱していないだろうと思いました。
 それで、僕自身は一押しのハイライトの発表が、僕自身が強くお願いしたのですけれども、大阪大学の小林傳司さんという科学技術社会論の方に科学技術社会論の立場からフューチャー・アースに関わる概念の解説をしていただきました。これは僕がフューチャー・アースのいろいろなドキュメントを見たときに散らばっている言葉が、僕が科学技術社会論のいろいろなところで学んだ言葉が散りばめられている感じがしていて、それを何となく読んで分かった気になった人は多いと思うのですけれども、その欧米の連中がそういうふうに考えているに至る思想的な流れというか、そういうものにちゃんと詳しく今までフォローしていた人に入ってもらって一緒に議論しないと、我々はその概念の表面ヅラだけ分かったような気になって、この問題、欧米の連中についていくような形になるとよくないなとすごく思っています。
 小林さんが発表の中でおっしゃった言葉で、これはOSの入れ替えであるということをおっしゃったんですね。ステークホルダー・エンゲージメントをして、それで問題解決型で、そのステークホルダーと一緒に研究をデザインしてやって、実際にその社会をどう変えるかというところにつなげていくということは、今までの研究者のマインドとは全然そのモードが違う。それを我々はともすると今持っているOSの上にトランスディシプリナリーとか、ステークホルダー何とかというソフトウェアをインストールして無理やり走らせようとしてしまうのではないか。本当に我々はOSの入れ替えをする覚悟があるのかどうかというのがこのフューチャー・アースという話には問われている気がしていて、そういう議論というのは、多分、まだまだこれから本当に始まるのだろうと思っています。
 以上です。

【安井主査】  大変分かりやすい御説明、ありがとうございました。
 ということで、少し時間がオーバーしてしまいまして申し訳ございません。一応、御意見を頂いたように思いますので、最後に入りたいと思います。議題のその他はなかったということでございますが、事務局側から今日何か、今日の議事録のコメントというか、アナウンスをお願いしたいと思います。

【鏑木課長補佐】  それでは、事務的なことを二、三申し上げたいと思います。本日の議事録につきましては、後日、事務局よりメールで委員の皆様にお送りいたします。修正等があれば御指摘いただきたいと思います。最終的には文部科学省のホームページに掲載することで公表させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それから、2点目ですが、旅費、委員手当の確認についての1枚若しくは2枚の紙が皆様のお手元にお配りしてあると思いますので、御確認いただきましてお帰りの際に事務局の方に御提出をお願いいたします。
 それから、3番目です。次回の会合についてでございますが、8月2日(金曜日)午後3時から5時を予定しておりますのでよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【安井主査】  ありがとうございました。
 それでは、本日、閉会とさせていただきます。次回もまたよろしくお願い申し上げます。本日は大変ありがとうございました。

── 了 ──

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