参考資料2 環境エネルギー分野における社会実装に向けた研究開発に関する今後の検討の方向性

科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会
環境エネルギー科学技術委員会
平成26年10月24日

1.国主導による重点的な研究開発プロジェクトにおける位置付けをどのように考えるか。

(1)環境分野

  • 文部科学省では、2002(平成14)年度開始の「人・自然・地球共生プロジェクト」以降、全球規模の気候変動予測技術の高精度化に関する研究開発を一貫して推進し、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第1作業部会(自然科学的根拠)を中心に国際貢献を実施してきたところ。
  • IPCCでは、第5次評価報告書までの国際的な取組により、温暖化の原因は人為起源による増加にあるとほぼ特定された状況にあり、今後に向けた国際的議論においては、「自然科学的根拠」「影響・適応・ぜい弱性」「気候変動の緩和」の3作業部会を横断した取組の必要性が課題として提起されている。
  • さらに、環境省を中心とした「適応計画」策定に向けた動きや、2014(平成26)年9月の国連気候サミットにおいて、安倍総理から人材育成を含む途上国支援を盛り込んだ「適応イニシアティブ」の立ち上げを表明するなど、我が国では気候変動による影響への適応に関する取組が進められている。
  • 上記のように、最近の議論のキーワードは「適応(そのための人材育成や対策支援など途上国支援を含む)」「「自然科学的根拠」「影響・適応・ぜい弱性」「気候変動の緩和」の3分野を横断した取組」と考えられる。
  • また、国際科学会議(ICSU)を中心に、「フューチャー・アース」構想が提唱され、ステークホルダーとの“co-design”を目指す地球環境研究を目指す動きが加速化している。
  • 他方、文部科学省では、第4期科学技術基本計画期間において、特に「気候変動リスク情報創生プログラム」により全球規模のリスク情報を創出し、「気候変動適応研究推進プログラム」によりそれを地域規模で活用し、適応策導入につなげるための基盤技術を開発することに重点を置いた研究開発を先導的に推進してきたところ。
  • これらを踏まえれば、第5期科学技術基本計画期間においては、環境科学技術に関する研究開発プロジェクトは、関係省庁との積極的な連携を強化するとともに、その推進する国際貢献の視点も含めた適応政策への直接的貢献も見据え、ステークホルダーと“co-design”し、社会実装へとつなげるイニシアティブを推進するために必要な科学的知見・技術・人材・システム等の基盤力を構築することを重点とする方向で検討すべきである。
  • このほか、上記の取組を支える意味でも、低炭素化・低環境負荷を実現する環境技術に関する基礎研究や自治体など対策実施者の視点に立った情報提供システムの確立に引き続き取り組む必要があるとともに、社会実装の観点から気候変動にとどまらない地域の環境変化への「適応」へと発展を図ることが必要。

(2)エネルギー分野

  • 「エネルギー基本計画」(平成26年4月11日閣議決定)では、「エネルギー政策の要諦は、安全性(Safety)を前提とした上で、エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一とし、経済効率性の向上(Economic Efficiency)による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合(Environment)を図るため、最大限の取組を行うこと」と指摘している。
  • 第5期科学技術基本計画期間においても、エネルギー科学技術の研究開発プロジェクトの推進にあたっては、要素技術が持つシーズ力のほか、上記の「3E+S」の観点を踏まえてプロジェクト設計を行うことが必要である。
  • また、基礎研究から実用化まで着実につなげるため、文部科学省・経済産業省合同検討会の運営など第4期科学技術基本計画期間における実績を基に、ステークホルダーとの円滑な“co-design”の視点による府省連携による研究開発を強化していくべきである。加えて、物質・材料科学技術やライフサイエンス等のエネルギー科学技術以外の分野の状況を俯瞰しつつ施策の検討を進めていく必要がある。
  • 特に、第4期科学技術基本計画期間で重点的に実施してきた取組のうち、再生可能エネルギーの大量導入や水素社会の実現の中核となる、エネルギー貯蔵・輸送技術(次世代蓄電池、エネルギーキャリア)については引き続き重点的に取り組むべきである。
  • さらに、第4期科学技術基本計画期間において技術シーズ基盤が強化されてきた低炭素化と有用資源の創出を同時に実現するバイオマスを用いた二酸化炭素の資源化技術について、シーズ力やニーズとのマッチングの状況等を踏まえ、重点とする方向でプロジェクト化を検討すべきである。

2.「コア技術(群)」としてどのようなものが考えられるか。

(1)環境分野

  • 「コア技術(群)」として、第4期科学技術基本計画期間における取組を基盤として、1.(1)の重点事項を実現するため、地球観測や防災分野の研究開発と一体となった「気候変動による異常気象・自然災害に関する観測・予測・対策技術」が考えられる。
  • なお、「コア技術(群)」を研究開発プロジェクトとして推進するにあたっては、個別技術の高度化自体を目的とするのではなく、データ統合・解析システム(DIAS)により基盤を形成してきたICT分野や、社会技術と連携し、ステークホルダーとの円滑な“co-design”を実現するシステムの構築を重要な観点とすべきである。

(2)エネルギー分野

  • ビックデータ等のICT分野の急速な普及・発展など、社会・産業における新たな潮流も踏まえ、太陽光発電等の分散型電源や蓄電池等のエネルギー貯蔵設備等を情報ネットワークで接続し、ICT分野や社会技術を含めて取り組むエネルギー需給の制御について、具体化して「コア技術(群)」として位置付ける方向で検討を行うべきである。
  • その際、人間を中心に発想し、エネルギーシステムを考えていくことなどにより、新たな価値(サービス)の創造やエネルギーセキュリティの強化を進めるとともに、“Energy Efficiency”の革新について検討を行うべきである。

3.具体的な研究開発の推進方策の検討

  • 上記の方向性を踏まえ、「コア技術(群)」を中心に、環境分野とエネルギー分野を俯瞰的にとらえ、具体的な研究開発の推進方策について速やかに検討を行うこととする。

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