田中委員プレゼンテーション資料

「今後求められるリスクコミュニケーションの取り組みについて」

140303-田中幹人

【研究・教育】研究費を投下してリスクコミュニケーション(RC)の可能な社会を涵養するためには?

1. これまでの議論を踏まえた前提:

●RCは現代社会のコミュにおいて必須の「保険」機能。しかし費用対効果は一見良くないことが多い。
 →(公衆衛生と同様)科学の社会的議論が極度に紛糾する前に準備出来ていることが重要。

  • RCの持続可能性は低く、リスクコミュニケータ(RCer)のキャリアパスは狭い。
  • プロジェクトを通じて若手が涵養され、職能を保持できるキャリアパスが確保できることが最重要。
  • RCは分野横断的な性質を持つ:ネットワーク性
  • RCは属人的機能の側面を持つ:ネットワークにおける中心性(ハブ)
  • 新規リスクのみならず既存のリスクも対象に含める必要がある。
  • 「現場」を前提として鍛え上げられた知の必要性。
  • 個別タスクの追求による深化と、他の取り組みとの類似性に基づく機能普遍性が重要。
  • 拠点型の教育プログラムでは既存の枠組み内の教科書知識を持つミニチュア人材しか生み出せない。

2. 方策

  • 「リスク」を扱いつつも「コミュニケーション」を重視した
    多層(地域-全国-国際)・多領域(アクションリサーチ,社会心理,工学,理論…)・多手法(質的-量的…)の
    ネットワーク型研究群を構成することを主目的にする。
    →アーク(弧:弱い紐帯で繋がる関係性)の形成を第一義とし、副次的にノード(人材)の生成を期待。
    →採択される研究群は互いに排他的でバリエーションに富むことが望ましい。
  • アクションリサーチを踏まえた分野横断的リスク(クライシス)研究に研究費を投下
    (申請に際してはリスクを含む自然科学・工学と人文社会学系の協働を条件とする)
  • 媒介者としての若手研究者(PD相当)の複数年度雇用を条件とする。→媒介者だが中心的ハブでもある。
  • プロジェクト研究費の支援を受ける領域全体での、若手主催の「ワークショップ合宿」を必須とする。
    →毎回の「合宿」は領域横断的な課題に取り組み、必ず最後に成果を生み出す。
    (RCer規範の検討,特定事例のサイトビジットを踏まえた提案…)(逆に単年度毎の報告書は負担軽減)
    →将来のロバストなRCerネットワーク構築を期待する。
  • 若手RCerのキャリアパス:リスクマネジメント、URA、研究機関/企業広報、自治体広報、研究者

3. 期待する成果

  • 媒介者となる若手研究者たちは、自身の専門性を獲得しつつも、併走する他のクラスタとの相互作用を通じ、視野が広く、知識・人脈・職能のいずれにおいてもネットワーク性を有するノードとして成長することが期待される。リスクの有事/準有事には、これらの独立した、しかし弱い紐帯を持つRCerが社会の各所から「立場を明示しながら競い合う」ことで社会総体としてのRCが実現されると期待する。
     

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