宇宙開発利用部会 宇宙科学小委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成25年7月2日(火曜日)14時30分~16時45分

2.場所

中央合同庁舎第7号館西館(金融庁)9階共用会議室-3(905B)

3.議題

  1. 宇宙科学研究の推進方策について
  2. 宇宙科学ロードマップについて
  3. その他

4.出席者

委員

主査 井上 一
主査代理 永原 裕子
専門委員 秋山 演亮
専門委員 磯部 洋明
専門委員 小川 博之
臨時委員 川合 眞紀
専門委員 北野 和宏
専門委員 久保田 孝
専門委員 高薮 縁
臨時委員 瀧澤 美奈子
専門委員 常田 佐久
専門委員 永田 晴紀
専門委員 野崎 光昭
専門委員 秦 重義
臨時委員 藤井 孝藏
専門委員 山田 亨
臨時委員 横山 広美
専門委員 吉田 哲也
専門委員 渡邊 誠一郎

文部科学省

大臣官房審議官(研究開発局担当) 鬼澤 佳弘
研究開発局宇宙開発利用課長 柳 孝
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹内 英

5.議事録

【井上主査】  それでは定刻になりましたので、ただいまより、宇宙開発利用部会宇宙科学小委員会の第3回会合を開催いたします。本日は、新たに宇宙分野も担当されることになった鬼澤審議官も出席されておられますので、一言、御挨拶をお願いできればと思います。

【鬼澤審議官】  研究開発局担当審議官の鬼澤と申します。先月から宇宙分野も担当することになりました。新参者でございますけれども、どうぞ、御指導をよろしくお願い申し上げます。この会議には本日初めて出席させていただくわけですけれども、4月から宇宙科学研究の適切な推進のための具体的な取組について、いろいろと幅広く御議論を頂いていると伺っております。具体的には、宇宙科学コミュニティが世界のトップサイエンスセンターとして機能するための方策、学術研究の視点から宇宙科学コミュニティを更に発展させていくための諸課題、大学・大学院における人材育成など、大変重要な課題について多角的な観点から御議論いただいていると思っております。今年は、新たな宇宙基本計画の元年とでも言うべき時期でもありますので、まずは平成26年度の概算要求を当面のスケジュールとして急いで対応すべきもの、特に財政的な措置を必要とするものについての提言を中間的におまとめいただければと考えているところでございますが、その一方で、中期的な検討課題も見据えながら御議論をしていただけなければいけない点もございますので、その辺を切り分けながら今後の御審議をしていただければと思っております。次回の会合、おおむね1か月後を予定させていただいておりますけれども、そこで中間的な取りまとめをさせていただければと考えてございますので、是非それに向かって、皆様の自由かっ達な御議論を本日もお願いできればと思っております。よろしくお願い申し上げます。

【井上主査】  ありがとうございました。引き続き、事務局の方からお願いいたします。

【竹内企画官】  本日の会議の事務連絡として、2点報告させていただきます。1点目は本日の会議の成立についてです。本日は、宇宙科学小委員会に御所属いただいている19名の委員の全員に御出席いただいておりますので、運営規則に定める過半数の定足数を満足しており、本日の会議は成立しております。2点目は本日の資料です。議事次第にお示ししているとおりお配りしておりますが、過不足がございましたら事務局までお申しつけいただけると幸いです。以上でございます。

(1)宇宙科学研究の推進方策について

【井上主査】  それでは議事に入りたいと思います。一つ目の議題は前々回及び前回に引き続きまして「宇宙科学研究の推進方策について」でございます。ISAS(宇宙科学研究所)では、宇宙科学小員会での議論等を踏まえて宇宙科学研究の今後について検討されていると伺っていますので、本日はまず、ISASの現在の考え方について、ISAS所長でもいらっしゃる常田委員から説明をお願いしたいと思います。

常田委員から、資料3-1-1に基づき説明があった。

【井上主査】  ありがとうございました。今の御説明についていろいろと御意見を頂きたいところではありますけれども、この後の「推進方策の中間取りまとめ」の中で御議論いただければと思いますので、この段階では御説明についての事実確認という観点での御質問があればお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 よろしければ、この後の議論の中でいろいろ聞いていただくことにしまして、ここからは、宇宙科学研究を適切に推進するための方策の中間取りまとめに向けて御議論いただければと思います。今回、委員の皆様には中間取りまとめに盛り込む事項について御提案を頂いています。それらの頂いた御意見と、これまでの会議の議論を基にまとめた論点メモについて、事務局から説明をお願いします。

事務局(竹内企画官)から、資料3-1-2、資料3-1-3及び資料3-1-4に基づき説明があった。

【井上主査】  ありがとうございました。それでは、ただいまの説明を踏まえて、自由な御議論をお願いしたいと思います。

【高薮専門委員】  大変恐縮ですが、1時間くらいで退席させていただかなければなりませんので、中間取りまとめに関して一つだけ意見を述べさせていただきます。常田委員のお話にもありましたように、宇宙科学というのは、最近は一般の方にもわくわく感を頂いておりますが、単に面白い分野というだけではなく、将来的に人間のブレークスルーのためにも重要なものだと考えております。この小委員会に出席させていただいて、宇宙科学のことをいろいろと聞かせていただいたわけですけれども、今回の宇宙科学研究の推進方策の中間取りまとめに関しまして一つだけ気掛かりなことがございます。実は、昨年の12月にまとめられた「文部科学省における宇宙分野の推進方策」を見せていただいたのですが、地球観測分野は定義としては宇宙科学とは別になっていて、この小委員会での議論の中に入ってないということは分かるのですけれども、一般に宇宙科学と申しますと、地球観測も含んでしまうと感じてしまうこともあります。実際、資料3-1-4の御意見の中の3ページに、地球観測も含めて広義に扱いましょうと言っていただいている議論もあるわけですけれども、実は、ちょっとだけ触れていただくということが、逆に一般の方やいろいろな場面において誤解を受けてしまうことがあることを危惧しております。ですので、中間取りまとめにおいては、取りまとめが宇宙分野のサイエンスについて述べるということを明確にしていただければと思っております。その理由は、私たちの方も応用的に確立したところもありますが、シビアにサイエンスをやらなければならない部分もあるわけで、例えば地球温暖化などのいろいろな現実の問題に直面しておりますので非常にシビアに定量化をしております。その際にサイエンスは重要になってきますので、それは別途の場所で議論していただきたいと述べたいと思います。協力的でないというように誤解していただきたくはないのですけれども。逆に、井上主査が1回目におっしゃったように、技術的・工学的側面では、宇宙を利用した観測は重要な共通部分を持っておりますので、コミュニケーションとかインタラクションという部分において連携する体制を作っていただきたいと思います。今回、私が地球観測の面からここに呼んでいただいたことも一つの機会だと思いますが、地球観測のサイエンスは別途議論していただいて、その上で連携を図っていくということを中間取りまとめのところで明確にしていただければと思います。

【井上主査】  ただいまの御意見について、御意見はございませんか。

【渡邊専門委員】  惑星科学、特に固体惑星では、リモートセンシングという意味において地球観測とよく似た部分があって、実際に惑星科学研究者の中にも、地球と月のリモートセンシングを両方ともやって、同じような画像解析をしながら論文を書いている方もいます。高薮委員の御発言の意図はよく分かるのですが、一方で今後の大きな流れを考えていくには、宇宙技術という共通基盤もそうですし、今申し上げた観測機器としての関連性もありますので、広い土俵での議論ということがどうしても必要になるのではないかと思います。

【高薮専門委員】  はい、よく分かります。大きな流れのところは、私一人では地球観測全般を代表してカバーしきれないということもありますので、もう少し宇宙科学と地球観測とがイーブンな人数で議論ができる場でさせていただくべきではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。

【井上主査】  ほかにいかがでしょうか。私から一言申し上げると、この小委員会での議論の前提は、宇宙科学と呼んでいる枠のお財布の使い方といったようなものですので、先ほど常田委員がおっしゃったように、ある種の競争的な予算を使ってその時々のベストなミッションを選んでいくという環境で物事を進めていく枠組みを宇宙科学というのであれば、現在ある程度見えているものの中には地球観測は入っていない、あるいは、ある程度の期間を見通して議論する場合には地球観測は入ってこないと思います。一方で地球観測と言えば、別の枠での地球観測衛星というものがあって、政策的な部分と合わせてサイエンスの部分が、その枠のお財布の中で議論が行われているわけです。そちらは、文科省の整理としては「宇宙を使う」側として整理されていて、ここでの議論は「宇宙を知る」・「宇宙を支える」側の宇宙科学プログラムについての議論ですので、そういう意味では分けられて議論されていると思います。しかし、まさに渡邊委員がおっしゃったようにそれぞれの観測分野としては、地球大気の観測が金星の大気の理解と重なるとか、地球の陸域観測というものが外の固体惑星の理解とつながるという部分もありますし、宇宙を使っていく技術という意味では共通に考える部分がありますので、そこのところの議論は一緒にやっていくべきだと思います。私としてはそのような整理だと思っております。いかがでしょうか。

【秋山専門委員】  地球観測に関しては私も同意見ですが、最初に川合委員が言われたことで、ここでの議論に含むべきものの中に「きぼう」における各種実験は入れないのですかということがあったと思います。今の枠組みの整理ですと、「きぼう」でやられることはこの小委員会では何も検討されないということになると思うのですが、何も触れないということもどうかと思います。これは一例ですけれども、地球観測や有人の話、こういったものをどこまで含むのかということについては、ある程度やっぱり最初に宣言があっていいように思います。その宣言の中で重要になることは、文科省として宇宙科学に対してどれくらいの予算規模を今後出していくのかということと、その中に含まれるものはこれですよということであって、それが分かりやすい切り分けだと思うのですがいかがでしょうか。

【井上主査】  今の秋山委員の問題提起といいますか、これに対して御意見はいかがでしょうしょうか。

【磯部専門委員】  特に宇宙科学の大学等の研究の強化のところで、これまで宇宙科学が宇宙の利用をけん引してきたとありましたけれども、アストロバイオロジーというような新しい分野からしますと、衛星を使うのか、ロケットを使うのか、ISS(国際宇宙ステーション)を使うのかということは、別にどれでもいいようなところがあるわけです。そういう意味では、予算がどこにあるかという難しい部分はあると思いますし、地球観測についても難しいところはあると思うのですが、全体として宇宙に関連した科学の幅を広げるという点からは、ISSのような、いわゆる宇宙研がやっているところ以外でも科学的なアクティビティをどう最大化していくかという点から議論されるべきかと思います。

【井上主査】  ほかに御意見はいかがでしょうか。

【川合臨時委員】  秋山先生からリコールしていただいたのですけれども、やはり全体像が、分野から離れているものからするとちょっと見えにくいところがあります。宇宙科学全体の議論をしているわけではないと思いますので、ISASとして予算化する守備範囲はどこかということはある程度定義していただいた方が分かりやすい気がします。境目が難しいということは重々承知の上ですけれども、JAXAの中でやっているいろいろなプログラムの中でどういうところで仕分をしているのかということについて、旧大学関連だというだけでは科学的な根拠が乏しい気がしますので、概算要求に出していくのであれば、内容的な考え方が整理されてしかるべきではないかという印象を持ちながらずっと伺っていました。線が引きにくいのであれば、何を担当するとか、もう少し明確にターゲットとする部分を定義された方が議論しやすい感じを受けております。それが1点です。もう1点は、大学を含むコミュニティをまとめるトップサイエンスセンターとしてISASを位置付けるということは意味があると思いますので、そうすると人事的な交流の在り方とか、将来に向けてトップサイエンスセンターに常駐する人たちはどういう人たちであるべきかということを、大学コミュニティも含めて何か新しい考え方が提示できるのではないかと思います。そこに固定した研究センターというだけではなく常に新しさを求めて、それはこの小委員会で検討することであろうと思いますけれども、これをやるぞというロードマップの中でこの辺りの年限にはこういう人たちがトップサイエンスセンターに常駐し、フェーズが変わったら入替えという言い方は変かもしれませんけれども新しい人たちも入ってくるというように、コミュニティ全体でここのポジションを考える位置付けにすると長い時間にわたってトップサイエンスセンターとしての位置付けを保つことができるのではないかという気がします。トップサイエンスセンターが目指す宇宙科学の範囲とトップサイエンスセンターのアクティビティを持続するための仕組みをどう考えるのかという二つが、将来展望において強調されてもいいのではないかと思います。

【井上主査】  ありがとうございました。今、トップサイエンスセンターという言葉を使われましたが、それぞれの方がトップサイエンスセンターという言葉に持つイメージはまだ定まっていないところがあると思います。トップサイエンスセンターに向けてということでは必ずしもないところもあるとは思いますが、まずは最初におっしゃった宇宙科学の範囲というようなものをどういうふうに考えておくかということについて、常田委員は何か御意見がありますでしょうか。

【常田専門委員】  御指摘いただいたとおり、確かにそこは曖昧です。学問としては、例えば私は太陽の研究をしていますけれども、太陽と地球温暖化問題は絡み合っている可能性があると思っています。また、SMILES(超伝導サブミリ波リム放射サウンダ)というISSの搭載装置は、短期間だったのですが、地球の成層圏オゾンの量をものすごい精度で測って成果を上げたミッションで、ボトムアップでそういうミッションが出てくると、突然そういうところに学問が食い込んだりしているというように国境線がファジーな状態だと思います。一方、論点にも出たように、JAXAの利用本部の中で地球観測衛星が大々的に行われていて、そこには学術分野がくっついているという状況もありますので、これをどう整理するかについては簡単に言いにくい状況で、それ自身が議論のターゲットになると思います。何かを定義してしまうということもないわけではないですが、それを入れだすと話が広がりすぎると思います。ここは主査に采配に投げてしまうということもどうかと思いますが、現状はそういうことです。

【柳課長】  事務局の方から余りいろいろなことを言うのも良くないかと思って黙っていたのですが、常田委員からお話があったように、宇宙科学をどこで線を引くかということは余り妥当な議論ではないと考えています。常田委員からのプレゼン資料の2ページにありますけれども、宇宙に関しての最先端を切り拓(ひら)いていくということは、ある意味で宇宙研の仕事だろうと思います。そこにISSは関係するのかしないかということですが、理工学委員会の中にも宇宙環境利用というものがありますので関わり合いはあります。しかし、ISSというプロジェクトに目を向けた場合、それが全て宇宙科学かというとそうではありません。例えば広義の意味での国家安全保障、そういうアメリカとの外交上の問題を踏まえた視点から見たときの関わり合い、それから科学技術の産業活用という観点から見たときの、例えばタンパク質の生成などから製薬につながっていくという期待感、それから宇宙科学分野の学術研究としての要素もあるわけです。そういう意味で、あるところで線を引いて、例えばそれはISSに関わり合いがあるのでISSについては全部この枠で議論しましょうとなるとそれは違うでしょうし、先ほど御指摘のあった地球観測の観点も同様だと思います。地球観測の観点では、地球観測としての学術体系が別にあるわけですが、宇宙科学としても貢献しうるものがあるのではないかという意味では完全に線を引いて排除するものではなく、先ほど渡邊委員からお話があったように、幾つかの側面の中で関わり合いがあるところについて貢献できるところがあれば貢献していけばいいと思いますが、ここで議論したことが地球観測の全てを仕切っているということでは全くないと思っております。そういう意味で、例えば今後宇宙研として宇宙環境利用でもこういう貢献をすべきという部分があればISSや有人についての言及があっても構わないと思いますし、ある意味では、宇宙研は理学・工学の学術的な側面を混ぜ合わせたものであれば何でもできるとも言えますので、線を引いてここが宇宙科学の分野ですと切ることは先ほど常田委員がおっしゃったように非常に難しい中では、今後、宇宙科学として取り組んでいく力点として特に触れたいものがあればそこは入れていただいて構わないと思っています。また、資料3-1-2の1.(2)の二つ目の丸に「人文社会科学など・・・」と書いてありますが、これも人文社会に限らずにもう少し広いイメージで、今まで宇宙研としては取り組んでこなかったけれども宇宙を活用して学術分野でやるという余地も裾野の拡大という意味でありうるのではないかと考えています。ある線を引いて、例えば人文社会は違うとか、ISSは入るとか入らないとか、地球観測は入らないとかといった議論の展開ではなく、宇宙科学として貢献しうるところは言及し、ただしその世界の全てを仕切っているわけではないということだけは明記しておくべきかと思っています。
 もう1点だけ言わせていただくと、この小委員会で御議論をお願いしていることはISASそのものの議論ではなく宇宙科学コミュニティ全体ですので、例えば大学が果たしてきた役割というものもありますので、宇宙研の運営交付金の予算の使い方だけではなく、大学との関係についても是非幅を広げて議論していただければ有り難いと思っております。

【高薮専門委員】  宇宙科学としてどこに線を引くかという議論を始めると、ほとんど果てしなくなってしまいますので、ここでは「中間取りまとめには何を含むか」ということで議論していただいた方がいいかと思います。その場合に、委員のメンバーを考えて、取り扱えるものを定義いただくといいと思います。ただし、重要な点としては、宇宙に係る工学などは多くの共通部分を持っていますので、そういう点はここでの議論が世の中の幅広い分野に役立ってくれる可能性があるという方向で議論していただくのがよろしいのではないかと思います。

【井上主査】  少し、整理させていただきますと、宇宙科学プログラムと呼ばれてこれまで宇宙科学研究所で行われてきたものは、いろいろな分野が競争的であって、科学衛星のAO(Announcement of Opportunity、公募の広報)が出たときにいろいろな分野がそれをとりあう競争的プログラムということが大前提で動いてきたと思います。そういう意味では、本来、応募してくる分野がどういう分野であるかということに境界を置くようなものではなく、宇宙空間を使ってすばらしい科学ができるのであれば、どのような分野であっても提案をしてくるといった筋のものだと思います。しかし、当面、これから5年から10年という中である種の枠組みを議論しなさいと言われると、そこでどういう成果が出せますかという議論になって、そうするとこれまである程度実績のある分野のミッションというものに絞られていく議論になってしまって、常田委員が先ほど整理されましたが、その分野についてのこれまではこうであって将来はこう考えていますというような議論になってくると思います。
 しかし、本来はもっと広く議論すべきで、そこには二つの観点があると思います。一つは、飽くまでいろいろな分野がいろいろな研究をしている中で宇宙空間を使うという部分を切り出して行われていくものが宇宙科学ですから、基本となる議論は、それぞれの分野が地上と宇宙のいろいろな使い方を考える中で、宇宙空間を使うメリットはどういうものがあり、地上を使う場合はどういうメリットがあるという議論になります。使う側としては、自分たちは宇宙空間をこう使いたいので是非使わせてくれという議論がベースにあるわけです。二つ目は、宇宙科学を進める側、マネージする側ですが、こちらはできるだけ広い分野が新しい将来や新しい展開を作っていくことを常に考えて、ここまでですということは決して言うことなく、もっと広い展開になっていくような底辺を広げることを考えるべきだと思います。こういった大きな枠組みの中で、こういうミッションが採択されてこういう予算がいりますということを出していく先は、今は宇宙政策委員会になっていると思いますので、文科省におけるこの小委員会では、底辺を広げるとか宇宙科学を広く展開する枠組みをどう作っていくか、そして、それに対して、それぞれの分野がどういうことをやってもらってどういう展開をして欲しいと考えるか、という趣旨の議論をするべきではないかと私は思っています。
 例えば「きぼう」について、柳課長から国際宇宙ステーションの位置付けにはいろいろなものがあるとお話がありましたけれども、「きぼう」を使った微小重力環境での新しい科学的な芽というものはいろいろと出てきていると思います。私も、十分分かっているわけではありませんが、例えば生命科学と言われる分野では微小重力という環境の下では生命がどういう挙動をするかということについて新しい知見が得られつつあるというようなことを考えると、科学としてはそういうものを大きく展開することを考えるべきだと思います。その時に、宇宙科学という枠組みがそういうものに対してどういうふうに、一緒にやっていく枠組みを作っていくかということを是非考えるべきだと思います。それから、地球観測と言われるところについては、かつては宇宙研においても地球観測のための衛星の提案がなされたこともありました。しかしながら、地球観測分野は地上での観測にかなり大きいウェイトがありますので、宇宙を使うために、宇宙研の研究者が全研究人生を賭けて地球観測衛星を開発するということは、今までの枠組みでは動かなかったわけです。そういう部分が、科学として自分たちのやりたいことをこつこつとやりあげていくということについては、宇宙科学を進める枠組みの中では十分には考えられてきていないと思います。大気球とか観測ロケットという枠組みはありますけれども、必ずしもきめ細かいケアができるものにはなっていないので、そのあたりについて、それぞれの分野が宇宙科学というプログラムの中で自由な発想で新しいものを生みだしていくためにはどういう枠組みを作っていけばいいかということを考えるべきではないかと思います。いかがでしょうか。

【高薮専門委員】  井上先生のおっしゃったことで分からなかった部分があるのですが、地球観測に関しては、広く見れば衛星がなくても研究ができる方もおりますけれども、衛星観測に全人生を投げ打っている科学者もおりまして、実際には、JAXAの地球観測衛星だけに頼っているわけではありません。先ほど常田委員が、日本の機器がNASA(米国航空宇宙局)などに請われて宇宙に上がったことはないとおっしゃったのですけれども、地球観測分野のレーダーについては日本が進んでいる分野でありまして、NICT(独立行政法人情報通信研究機構)が開発したレーダーはNASAに請われて熱帯降雨観測衛星(TRMM)に搭載されていまして、3年のミッション寿命を大幅に越えて15年間くらい飛んでいるのですけれども、それは私たちが簡単に数えても1,500本くらいのピアレビュー論文を出していますし、NASAからは3,000本以上出ていると言われています。これは、日本の技術がサイエンスとして高く評価されたということで、そういう意味では、地球観測の分野でもサイエンスが非常に進んでいるところもあります。私が申し上げたいことは、宇宙科学は広くとらえるべきと私自身も思っておりますし、これからますます連携を図っていきたいと思っていますが、この小委員会で短い時間の中で取りまとめをするに当たって地球観測の分野をちょっとだけ取り込んでいただくと、どうしても大事なところが落ちてしまう危惧がありますので、今回取り扱う分野を定義していただければと、そのような意味で申し上げました。

【井上主査】  ありがとうございました。もう一つ、川合委員が2番目におっしゃったことも、今までの議論につながると思います。いわゆるトップサイエンスセンターが作られて、新しい研究分野がそこに置かれるという部分があったとすると、そこには新しい分野の人たちがうまく入って、うまく活躍されて、ある期間たつと戻っていくというようなうまい仕組みを考えるべきという趣旨をおっしゃったと思います。

【川合臨時委員】  私は部外者ですので、ISASにおける宇宙科学の位置付けを正確に把握しているかどうかの自信はないのですけれども、科学者のコミュニティの中心的な研究機関として、底上げも含めて全体のアクティビティの活性化に寄与するという趣旨のものがたくさんございましたので、もし、そうであればCOE(center of excellence、卓越した研究拠点)的な存在なのだろうと理解したわけです。そうだとすると、ISASが長期にわたってコミュニティを含めてのアクティビティを担保する必要があるのではないかと思いましたので、そこに対するコメントです。もしトップサイエンスセンターがISASの今後の在り方とずれているのであれば、宇宙科学コミュニティと置きかえていただいても構わないと思います。

【井上主査】  川合委員の今の御意見について、何かございますか。

【秋山専門委員】  宇宙研だけではなく、広く文部科学省としての意思を示すことが重要だと思います。先ほど井上主査が、予算に関しては宇宙戦略室で議論されると言われましたけれども、私の見方はちょっと違いまして、宇宙戦略室は全体のバランスというものを調整していくと思っています。本来、科学という言葉は、純正科学という意味と、国際競争力の中で科学技術が占めるいわゆるソフトパワーの意味での科学という両方の意味を含んでいるわけですので、まずは文部科学省が強い意思を表明する必要があると思っています。ISASと書いてありますけれども、文部科学省としての宇宙分野ではこういうことをやるべきであるという意思表明が中間取りまとめにはあるべきであって、それがないまま宇宙戦略室に持っていっても向こうの議論の土俵に乗ってしまうだけではないかと思います。そういう意味で、誰が何と言おうが文部科学省は科学技術立国日本としてこれをやるということを、文部科学省の予算とセットで示すべきで、予算とセットで示す部分には何があって、その中で宇宙研がどういう役割をしているのかということがまず示されるべきだと思います。もう一つ、宇宙戦略室ができたことのメリットは、各省庁横断の融合的な衛星開発が実現できるようになったことであって、そこがまさにソフトパワーとしての科学技術に関わってくると思うわけです。先ほど、国際宇宙ステーションはアメリカとの関係との中でと言われましたけれども、この部分は実は文部科学省だけが担うのではなく、政府予算として見るべきところではないですかと言えるところだと思いますので、それはそれで別に用意をして、宇宙戦略室との予算のやり取りの中で交渉すべきだと思います。今は、個別の話で発散すべきではないと思いますのでこれ以上は申しませんが、表明すべきこととして文部科学省としてはこれをやるというコアをちゃんと出していくという議論をまずはすればいいのではないかと思います。

【永原臨時委員】  私も、秋山委員がおっしゃったことでよろしいのではないかと思います。つまり、今の日本の宇宙の基本の枠組みで、これからの日本の宇宙は利用であって従来のように開発ではありませんと明言され、3本の柱の一つとして宇宙科学があります。粛々とフロンティアを切り拓(ひら)いてくださいと言い渡されているわけですから、この中で最大限、宇宙フロンティアを切り拓(ひら)くためには何が必要なのかということを考えるべきだと思います。フロンティア以外の、例えば利用の部分や環境省ですとかほかの皆さんが一所懸命、いろいろな形で宇宙利用を考える中で、文科省のこの小委員会は、何をすることがフロンティアを切り拓(ひら)くために一番必要なのかということを考えるということであろうと思います。先ほど事務局から、宇宙研を中核として宇宙科学を強めるためにはどうしたらいいのか、ただし、それは宇宙研単独ということはありえないとお話がありました。裾野がない頂点はありえないわけですので当たり前なのですが、では、裾野をどうやって強くするのかということが問題になるわけです。裾野と言ってもいろいろなランクがあって、重要なことは、人材育成を含め、大学はどうやったら宇宙分野を強められるのか、それからもっと広い小中学生との関係や現場との関係はどうやったら強められるのかを考えることであろうと思います。非常にプラクティカルには、どこにどのように予算を配分していくのかということがエッセンスですので、そのためにこの小委員会としてはこの部分をもっと強化すべきであるとか、新たにもっとこういうことをやるべきであるということを提言としてまとめていけばよろしいのではないかと思います。

【井上主査】  ほかにはございませんか。

【横山臨時委員】  今の永原委員先生の話にも続いているのですが、少し違った視点で御議論いただきたいと思ったことは、論点メモの2項の人材育成に関する項目の「(1)年代に応じた人材の育成」の項目でございます。今まで、秋山委員や磯部委員のお話を「なるほど」と思いながら伺ってきたのですが、この文章になった途端、私としては強烈な違和感がございました。自分でもその原因が整理できておらず、論点をそれほど整理できていない中で説明申し上げることは大変恐縮ですが、端的に申し上げますと、小中高までの教育と大学以上の教育がここでは一緒くたになっているところに違和感がございます。「教育を行い」ということは大学以上のレベルでは明確に書いてよろしいと思うのですが、小中高レベルに宇宙科学の分野の先生方が直接的な強い教育を行うという表記は、私にとっては少し違和感がございます。もちろん、先生方の御尽力は大変すばらしいものであって、「普及活動をする」であるとか、「接触する機会を増やすという努力をしていく」といった表記は重要だと思いますが、ここの文章にございます「関心を有する層を厚くする」という表記は、これはサイエンスコミュニケーションの研究では「関心をする層イコール支援をする層ではない」ということが明らかになっており、最終的な目標設定の表記として適切か疑問が残ります。

【井上主査】  この点、確かに、そういう意味で捉えられてしまうと意図が違って捉えられる面があるような気がします。

【柳課長】  昨年の12月に取りまとめた推進方策では、今、御指摘いただいたように、小中高については次世代の科学技術を担っていく世代という観点から接触を増やしていく、あるいはより親しくなって欲しいということで丁寧に書いていまして、人材供給の一環という流れでなかったのですが、ここの論点メモでは、かなり省略して書いてしまいましたので、そういう誤解を招いてしまったのだと思います。横山委員の御指摘の点はよく踏まえて、最後に形にするときは注意したいと思います。

【竹内企画官】  補足させていただきますと、「小中学生レベルで宇宙を題材として教育を行い、宇宙や科学技術に関心を有する層を厚くする」というところは、特定の分野に関する内容を教育課程の中に入れ込むということではございません。去年の推進方策の議論を十分に説明していなかった点があるので申し訳ないのですが、小中学生の関心をかき立てるようなイベントを開催してわくわくさせるような取組についてはJAXAも力を入れていますが、高校・大学を対象とした、例えば秋山委員からプレゼンがあったような缶サットのようなもの、これもわくわくさせるというところがあるわけですけれども、小中学生に対する取組と比べるとJAXAからの支援が少ないのではないかという御指摘がありましたので、それを踏まえて書かせていただいたというところです。十分な書きぶりでなかったために御心配が出たかと思いますが、そういうことでございます。

【横山臨時委員】  私自身が秋山先生の御活動をどこまで理解できているかについては何とも言えないところがありますが、今、事務局から御説明いただいたことは、本当に、十二分に分かっています。ただ、この書きぶりは非常に誤解を招くものであって、しかも文章というものは、外から見る人にとっては文章しかないわけですから、文章できちんと説明しないと危険であると申し上げているわけです。

【山田専門委員】  場所は同じなのですが、少し違う観点から述べますと、ここでは小中高の話、それから大学院生レベルについて書かれています。「宇宙科学を担う人材の育成について」というテーマであるところに、裾野の問題と社会への還元という論点は書かれているのですが、そもそもの宇宙科学を推進するための人材育成、つまり大学とISASの関係ですとか、企業とISASあるいは大学との交流なども含めて、宇宙科学自体に携わる人材の育成という論点がすっぽりと抜けていて、なぜ裾野と社会への還元だけが強調されているのかという理由がよく分かりません。そういう意味では、この論点メモが全体的にそうなっていて、裾野とか活性化の部分は強調されているのですが、例えば最初に常田委員から説明があったISASあるいは日本の宇宙科学全体としてどういうところに重点を持って全体的に進めていくかという論点はここには書かれていません。それは自明のものとして、その上に付け足すべき論点のみがこのメモに挙げられているのか、これが概算要求まで含めたこの小委員会の策定課題の中心課題として考えられているのかということが分かりませんでしたが、いかがでしょうか。

【秋山専門委員】  机上配布資料の中、過去に私が説明した資料の8ページに、「文部科学省における宇宙分野の推進方策について」の抜粋が書いてありますけれども、横山委員が言われていることは、私は言われるとおりに書かれていると思っています。我々が実際やっている中でも、小中学生や高校生ぐらいまでは、宇宙というよりは各種サイエンスプログラムのような形で、宇宙を利用しつつ科学技術全般に興味を持たせましょうということがかなりやられています。「推進方策について」の中でも、緑色で書いている「1)魅力ある教材としての宇宙の利用」、これが裾野拡大という部分であると思っていますが、しかし、やはりメインは青の「宇宙開発利用をさせる専門人材の育成」として書かれているわけです。9ページの図では、これは私が作った資料なので右上の「D)宇宙関連技術とプロジェクトマネジメントに関するOJT的研修」についての取組は細かく書き込まれていませんが、ここについては、昔は宇宙研が各種プロジェクトを実施していく中でかなり行われていたと思います。例えばM-Vの改良も含めての輸送系や300億円とか500億円のプロジェクトが実施されていて、そこで若者が育っていたという現実がありましたので、それを踏まえての図だと考えています。これまでの議論でその論点は語られていると思いますので、今後中間取りまとめとして文章が出される時には「推進方策について」がたたき台として書かれると思いますので、その時にそこから大きく逸脱しないように我々がチェックできればいいと思っています。

【藤井臨時委員】  先ほど、川合委員が言われたことは1項に関連したことでしたが、それが中途半端なまま、議論が2項の方に移っている気がします。項目ごとに分けて議論した方がいいような気がするのですが、今は2項の(1)を議論するということでよろしいでしょうか。

【井上主査】  時間が必ずしも十分にないということで、一つ一つ議論をやるというよりはいろいろな意見を出していただいてということで進めてきたわけです。

【藤井臨時委員】  1項と2項はかなり色合いが違いますので、そこは分けて議論したいと思った次第です。先ほどは、中途半端で終わっていた気がしますので。

【井上主査】  では、中途半端な部分についての御意見でしょうか。

【藤井臨時委員】  まず、2項の(1)についての話ですが、「宇宙科学を担う人材」と言ってしまうことがよくないと思います。先ほど秋山委員も言われたことですが、宇宙科学には「宇宙科学を担う人材」ではなく、広く科学に対する興味を引き出す題材に使うという要素がすごくあると思うわけです。ですから、タイトルそのものを「宇宙科学を担う人材育成」だけではなく、もう一つ項目を立てても良いと思います。宇宙を使って科学の面白さを伝えるという部分です。うまく書かれれば、横山委員が御指摘されたところもうまく書けるのではないかという印象を持ちます。

【井上主査】  山田委員がおっしゃったことは、今のような宇宙科学を使って科学に興味を持ってもらうという趣旨なくて、実際に宇宙科学を担う人材をどうするかという趣旨だったと思いますが。

【藤井臨時委員】  私は、横山委員の御意見に関する意見のつもりでお話をしました。

【井上主査】  確かに話が交錯して違う論点に移っているわけですね。先ほど山田委員が指摘されて秋山委員がお答えになった部分は、宇宙科学を進めていく上でどういう人材が足りないと思っているかというような論点があってしかるべきということでしたが、これについてはいかがでしょうか。

【山田専門委員】  そのこと自体は、これまでの全体の議論の中ですとか、「推進方策について」の中で全体として書かれているので自明であるということが秋山委員のおっしゃったことであると思うので、それを前提として、それに付け加えてこういうことを議論するという理解であれば、私は了解します。

【井上主査】  山田委員がおっしゃった論点は、もう一つの「(2)宇宙開発利用を支える専門人材の育成」というところに、そのような意識が入っているようにも思います。ただし、一方で、1項の「(1)ISASの活性化方策」、あるいは「(2)大学における宇宙科学力の強化による拠点の創出」というようなところでも、常田委員が説明されたように、今、大きなミッションを動かしていく時に本当に人は足りているのですかという点から、どういう人材を今必要としていますかという論点があるように思います。先ほど川合委員がおっしゃったようなところも関係するような話ですので、そこは確かに重要な考えるべき部分ですので、一つ項目があってしかるべきかもしれませんね。

【秋山専門委員】  私としては、私が若い頃、20年くらい前は、宇宙研ではたくさんのミッションがいろいろと走っていた印象があって、その中で専門人材が育成されていたと思います。宇宙研にいくと、観測ロケットなども含めて、小さなプロジェクトも大きなプロジェクトもたくさんあって、経験を積まれた人材がたくさんいたとわけですが今はそういうところがないということが、皆さんが共有する危機感だと思います。それは、次の宇宙研のロードマップの議論とも関係すると思うのですが、今、宇宙研ではたくさんのプロジェクトが立ち上がっているわけですけれども、予算の裏付けがないところで立ち上がっているので、プロジェクト化されていてもそれが実現されるかどうかよく分からないという中途半端な状態にあって、そのまま10年あるいは20年たちましたという状態になっていると思います。そのあたりが、人材育成の部分でも、ちゃんと500億円プロジェクト、1,000億円プロジェクトを支える人材が育成できていないという危機感につながっているのではないかと思います。そこのところはロードマップと合わせて議論されるといいのかなと思います。

【井上主査】  また1項の議論に戻った感じがありますけれども、皆さんにはいろいろな観点で御意見を言っていただければと思います。それらの御意見を基にある種のたたき台を作って次の回に中間まとめに入るという予定ですので、言っておくべきいろいろなお考えを言っていただいた方が、これからまとめる上では有益だと思います。

【渡辺専門委員】  1項について意見を言わせていただきます。今までのISASでは、プロジェクトを推進していく中で自然にそれを支える基盤なりが同時に整備できるという、非常に幸せな時代だったと思います。しかし現在、それが徐々にうまくいかなくなっています。とりわけ深刻なことは理学と工学の交流が少なくなってきているということです。理工一体でやってきたという今までのISASの強みが果たして今後も維持されるかどうかが、この「ISASの活性化方策」の中心になるかと思います。一つには、JAXA研究開発本部との連携などの議論が重要になると思います。また、(2)とも関係しますが、この理工一体という部分が「トップサイエンスセンター」と言ってしまうと多少ニュアンスが変わってしまい、理学が中心かという印象になります。私自身は、ISASをより高度化していくという方向性として、トップサイエンスセンターという位置付けには多少違和感もありますので、むしろ理工連携で最先端の宇宙科学を推進していくという形でまとめるべきかと思います。その場合には、大学との連携が非常に重要です。今や宇宙科学ミッションはISASだけでなくいろいろな大学が参加してやっており、大学の中に宇宙理学・工学がそれぞれ強い分野があります。それを全体としてコンソーシアムあるいはネットワークとしてつなぎながら、その中でISASのプロジェクトを走らせていくという構造が大事です。その全体構造がトップサイエンスセンターに当たるもので、理工連携で全体としてのトップを目指していくような構造になるのだと思います。その意味では、ISASの将来計画というよりはコミュニティ全体として、全体のコンソーシアム(あるいはネットワーク)の上にきちんと位置付けていくことが大事だと思います。

【井上主査】  渡邊委員の御意見に対してでもいいですし、ほかに御意見はありませんか。

【瀧澤臨時委員】  今の渡邊先生の話に直接つながるかどうか分かりませんし、私もISASの中のことをよく分かっているわけではありませんので、間違っていたら聞き流していただきたいのですが、先週、私はフィンランドに行ってまいりました。これはなぜかと言うと、世界中の科学ジャーナリストが800人くらい集まって開かれたカンファレンスがありまして、そこで私自身、新鮮な刺激を受けてきたのですが、先ほど常田委員のプレゼンの中で、海外機関との協働ミッションの実施ということが、どちらか言うと予算の制限によって海外に乗り出していく必要があるという文脈で、少し制限要因のように聞こえました。むしろ私が今思っておりますことは、海外との交流を活性化させることで世界のトップサイエンスセンターという位置付けをするというように、もう少し海外に開かれたサイエンスの場所としてのISASという位置付けがあってもいいのかなと思います。この資料3-1-2の1項の「(1)ISASの活性化方策のところの3行目に「ISASの総力結集により組織の活性化を図っていく」という表現がございますけれども、もちろん、これまでのいろいろな経緯を考えると総力を結集して、たとえで言いますと二つの会社が合併して、合併した組織を活性化していくというイメージで言うと総力を結集して活性化ということは当たっていると思いますけれども、逆に海外から見た場合、日本の宇宙分野が海外にどうコントリビューションしていくかということを意識して、世界中から優秀な人材が集い、また若い人が海外に出て行ってそこでマインドセットを磨いていくというような位置付けにしていただくという視点があってもいいのかなと考えております。

【北野専門委員】  常田委員のロードマップの話を大変興味深く伺いました。これまではボトムアップであったところを、今後はボトムアップを尊重しつつもロードマップを作りそれに従って長期視点で大きなプロジェクトをやっていくということ、しかもハイリスク・ハイリターンのミッションについてもリスクをとってでも大きな成果を目指す方向性だと理解しました。これは外から見ると、挑戦的でフロンティアを切り拓(ひら)くという意味で非常にいいことだと思います。反面、ボトムアップではないため意思決定をどうしていくのか、リスクを取るということはうまくいかない場合もあるので、そういうことも全てを含めたコンセンサスをどう取っていくのかがとても大切になります。これからは、極端に言えば理学的に成功できなくても工学的に挑戦的ですごく成果があがったものは価値があるという考え方もありえるでしょうし、人材育成の話で言えば一つのミッションとしてはうまくいかないことがあっても有意義な人材をそのミッションの中でマネジメント術も含めて育てられれば長期的には非常に価値があるという考えもありえるでしょう。ですから、新たなロードマップを作る場合には、そのミッションの価値がどこに置かれているのか、それは理学や工学の成功なのか、あるいはより見えないもの、人材育成とか日本の科学技術の底上とかをも踏まえた「新たな指標」によって、リスクがあっても挑戦的なフラッグシップミッションを成し遂げる道筋ができたら良いと思います。具体的に、そのようなことを行う方策のヒントがあれば、是非伺いたいのですが。

【井上主査】  大変難しい御質問ですが、常田委員、何かございますか。

【常田専門委員】  自分で言っていながら何ですが、トップダウンやボトムアップという言葉が余り独り歩きするとミスリーディングだと思います。誰がトップで誰がボトムかということは、ある局面ではボトムと思っていても実はトップかもしれないということがあるわけで、トップダウンの趣旨は、全く見通しがなしにその場だけのことでミッションを決めていくということではありません。例えば、これが重要な分野だと皆が認識してそれを育てないとミッションが難しいというのであれば、育てるという意味は先ほど私が申し上げたように宇宙研の中にない分野でもあってもこの分野は将来性があるとなると、それは少し影がさしてきた分野を減らしてでも宇宙研の中に取り込んでリーダーに入っていただくというようなことで、そういうことまで含めたトップダウンですのでちょっと注意して使わなくてはいけないなということを北野委員の発言を聞いていて思いました。御質問について強いて言えば、コンセンサスを持ってやるということが大事だと思います。誰かが誰かに指令するとかではなく、この求められているロードマップも特定のミッションを具体的に言うことは必ずしもふさわしくはなく、それはなかなかできないことだと思います。

【井上主査】  ちょっとだけ補足させていただくと、従来の科学衛星のプログラムは、ロードマップを示していくというやり方ではなく、その時点でのベストなものを一つ競争的な環境で選んでいたわけです。しかしそれでは、今、範囲を広げていくことに対応することは難しくなってきているわけです。そのために、いろいろな分野がそれぞれの成果を出すということとは別に、共通的に宇宙を使っていく技術的な分野を積み上げていく役割をする部分ですとか、人材を育てる部分ですとか、恐らくはそのような総合的な考え方でロードマップを示していくことが求められているのだと思います。それが、ある意味でこの小委員会の課題の一つではないかと思います。

【磯部専門委員】  大学での取組について2点申し上げさせていただきます。最初に1項の方で、新しい分野をいかに取り込むかということについて大学では具体的にどのような議論があったかと言いますと、例えばアストロバイオロジーに関係した分野では、火山活動があったときにどこまでの高度まで微生物が舞い上げられるかということに興味を持っている人たちがいます。そうすると、今、ISSでは「たんぽぽ計画」という、そういうものを測る計画がありますけれども、実際にはいろいろな高度で測りたいわけで、ある高度だと気球で測ることもできるのですが、実は今一番知りたいところは気球でも衛星でも行けない中間くらいの高度で、そういうところに先進的な工学で行けるようになればそういうミッションをやりたいという希望があるわけです。そういう生物学の研究者にとっては、宇宙を使ってどういうことができるかということを、ISSや衛星や気球、どういうオプションで何ができるのかを比べるときのコンサルトができるところがあるといいわけです。今、京大はJAXAと大学として連携協定を結んでいますので、それが一種のそういう機能を果たしていると思っていますけれども、JAXA側でも新しい科学をやりたいときに、ISASだけでなくてISS等も含めて窓口になれると言いますかサポートをするシステムがあると、新しい分野に入るときに非常に良いと思います。そういう新しい分野が入ってくる可能性があるということを、ロードマップに反映されるといいのかなと思います。2点目は2項の人材育成の方ですが、大学でやっていることとしては、本当に宇宙科学の研究者になるということと小中高に出前授業をするということの間ぐらいのところに、宇宙開発利用の特に利用の方を支える人材教育というものを、少し意識してやっているということがあります。具体的には、工学部とか経済学部とか防災とかフィールドワークとかの人たちが今後それぞれの分野に進んだときに、宇宙を利用することを一つのオプションとして考えるべき立場になると思われる学生たちがいますので、そういう人たちに宇宙も使えますよというような教育を、京大では試験的に学部レベルでやっています。全学的な授業で、あらゆる学生に宇宙にどういう利用があるかということを説明する授業なのですけれども、いわゆる科学の関心を高めるというレベルの教育とトップレベルの研究者を養成するという人材育成の間に、学部レベルですとそういった利用を開拓するための人材育成がありますので、これは宇宙科学そのものではないのかもしれないですけれども、大学人材育成という意味では文部科学省の担当する範囲かと思いますので、人材育成の在り方の一つとして加えることを検討していただければと思っております。

【藤井臨時委員】  時間も少ないので二つだけ手短に申します。一つ目は1項ですが、(1)がISASの活性化方策ですが、ここはプロジェクトという面だけが書かれています。一方(2)は宇宙科学力の強化と書いてあって、そこは対象が大学になっています。常田委員が言われましたが、やはり宇宙研の中に、若しくは少なくとも場所的に宇宙研のある相模原に基礎力を持った人材を送りこまないといけないと思います。大学で基礎のところをやり、宇宙研はプロジェクトをやればいいというやり方は良くないので、この書きぶりは良くないという印象を持ちました。繰り返しになりますが、(2)は大学の強化でもいいとは思いますが、最初の丸に、そのような人たちは大学にいるのではなくて相模原に来て一緒に仕事をするという形をとる、若しくは宇宙研に異動するというように、これは最初に川合委員が言われたこととも関係しますが、そういう姿を書いていただければと思います。二つ目は同じく1項ですが、宇宙科学予算と言われると、皆さんどうしても宇宙科学プロジェクトのことを考えてしまうような危惧があります。井上主査も最初に言われましたし、私たちもそう思ってやってきたわけですが、宇宙科学は宇宙開発利用全体をリードするものであるにも関わらず、多くの場合、例えば予算を作る時にそういう部分についての配慮が余りイメージされてないわけです。そこを宇宙科学の予算として出していくのか、別の予算として出していくのかは分かりませんけれども、その部分を新たに切り出していくような予算化を目指していただけるといいと思います。宇宙科学を狭く捉えないような形で、科学のプロジェクトだけではない宇宙開発利用全体を支える部分の宇宙科学というものを、しっかり出すような予算化を是非この枠の中で考えていただきたいということです。最初に川合委員が言われたようなことかもしれませんし、ここでこれまで議論してきたようなことかもしれません。

【井上主査】  ありがとうございます。ほかにございますか。

【永原臨時委員】  一つ、全く書かれていないこととして、私は、今の日本の宇宙科学が宇宙研の独壇場であることが、つまり競争的環境にないことが宇宙研を強くしない一つの理由だと思っています。衛星を打ち上げることができるのは宇宙研だけですので、難しいところもありますが、何らかの形である種の競争的環境を作るべきと思います。宇宙研も強くしないといけないし大学も強くしないといけないわけですが、ここに何らかの競争的仕組みが必要であろうと思います。ほかの科学研究は、皆、競争的で、加速器と望遠鏡が競争しているわけですが、宇宙関係は宇宙研の独壇場であって全然競争的ではありませんので、この仕組みを何らかの形で変えて欲しいと思います。日本のファンディングは、いろいろな仕組みがありますので、全く同列にはできませんが、ほかのいろいろな科学、普通のファンダメンタルな科学、あるいは利用の方でもそうではないかと思うのですが、競争的な仕組みをこの中に含めるべきではないかと思っております。

【井上主査】  議論がちょっと長くなりましたので、最後の御意見として永田委員からお願いします。

【永田専門委員】  議論のまとめになればと思って発言いたします。1項の分け方に関してですが、私も、ちょっとこれには違和感があるなと思って見ていましたが、二つに分けて議論すると結構すっきりするのではないかと思います。一つは、今、宇宙研が持っている資産、それは強い研究分野であるとか、研究者であるとか、ものであるとか何でもいいわけですけれども、今、持っている資産を有効に使う方策は何かという議論です。もう一つは、新しく入ってくるあるいは育ってくる資産をどう育てていけばいいのかという議論で、その二つに分ければいいのかなと思います。先ほど、トップダウン、ボトムアップという話がありましたけれども、宇宙研が強い部分を育ていくということは、今ある資産を使ってどういう施策をとっていくかという話ですので、トップダウン的な、大局的な戦略を持って引っ張っていくような話になるでしょうし、これから新しく育てていくことを、より広い分野からどのように取り込んでいくのかということはボトムアップ的な取組になると思いますし、優秀な人材が宇宙研に集まってくるためにはどうしたらいいのかということも2番目の議論の一環になるだろうと思います。ですので、この二つに分けて議論するとすっきりするのかなと思います。(1)の宇宙研と(2)の大学という分け方ではなく、そちらの分け方を検討していただければ有り難いと思います。

【井上主査】  ある意味ではいいまとめをしていただいたかと思います。議論をうまくまとめられてきていませんが、時間もなくなってきましたので、ここで議論の区切りをつけたいと思います。今後の進め方についてですけれども、今回の進め方の中には、中間取りまとめを委員主導でやってくださいという事務局からの話がありましたので、何らかの形で我々の中で、委員の中でたたき台を作って、それをみんなでもむという手順をとらせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。もっと時間がとれれば、更に議論をした方がいいとは思いますが、なかなか時間も限られているようですので、よろしいでしょうか。
 そうすると、どなたかにまずたたき台を作る作業をお願いしないといけないわけですけれども、私としましては、学術会議の地球惑星科学委員会の委員長や物理学委員会天文学・宇宙物理学分科会の委員をされておられて、宇宙研のことも御存じで学術にも広い見識をお持ちの永原委員にたたき台を作っていただけると有り難いと思うのですが、いかがでしょうか。

【永原臨時委員】  今日の議論を聞いているとなかなか難しいかなと思いますけれども、はい、了解いたしました。

【井上主査】  ありがとうございます。委員の皆さんも、たたき台についてはこの次に議論いただくことになると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。それでは永原委員に原案の作成をお願いして、その後、皆さんに御意見を頂くというような、そのあたりの進め方については事務局から連絡がいくことになると思います。何か事務局からありますか。

【竹内企画官】  それでは井上主査からの提案を踏まえまして、今後の進め方につきましてはこのような形になろうかと思います。本日までの御議論の状況、委員の皆様の御予定を勘案しまして次回の会合は8月2日の午後を予定しております。そのような中で、永原委員にまとめていただいくたたき台については、事務局から委員の皆さまに御相談させていただきまして、次回の8月2日の資料を作っていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

【井上主査】  では、そういうように進めたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

【川合臨時委員】  何時からでしょうか。

【柳課長】  各委員の御予定を伺っているところでは、次回は、8月2日の16時以降が御出席いただける人数が多いかなと思っているところですので、16時スタートで18時までくらいで開催させていただければと思っております。正確には、後ほどメールで御相談させていただきたいと思います。

(2)宇宙科学ロードマップについて

【井上主査】  それでは、2番目の「宇宙科学ロードマップについて」という議題に進みたいと思います。これは既に話に出てきていましたが、宇宙政策委員会の宇宙科学・探査部会において議論がなされており、ISASに対して早急に作成するよう要請が出ていると伺っています。そのようなことへの対応として、ISASにおけるロードマップ策定に向けた状況について常田委員から説明をお願いしたいと思います。

常田委員から、資料3-2に基づき説明があった。

【井上主査】  ありがとうございました。ただいまの御説明に対して御質問、御意見があればお願いします。

【秋山専門委員】  意見ですが、宇宙政策委員会の一番の関心は総枠予算だと思っています。お話されたものは、全て魅力的なミッションであることに疑いはないと思っているわけですけれども、こういうのもやりたい、こういうのもやりたいと言われても予算は限られているわけですので全部できるわけではありませんので、それを文科省や宇宙研が判断せずに出していくと、では宇宙政策委員会で決めていいのですかという議論になってしまうと思います。やるべきことは、予算の裏付けがあって、それに基づいたプロジェクトを出さないといけないと思います。そうでないと、いつまでたっても実現するかどうか分からないという状態が続きますので、予算の裏付けがあってこそのプロジェクトだと思います。ただ、ロードマップと言われていますが、宇宙政策委員会の関心事はロードマップというよりも何年度くらいにどのくらいの規模のプロジェクトがあるのかという話だと思っていますので、今すぐ決めろと言われても、どのミッションが優れているかまではすぐには決められないと思いますので、そういう意味では椅子取りゲーム的に何年に一回はこれくらいの規模のものをやりますという言い方も必要ではないかなと思っています。念頭に置く全体の予算規模はこれくらいで、それに裏付けられたプロジェクトはこれだけあって、そのプロジェクトを活性化するためにプリ・プロジェクトみたいなものが常に競っていて、その選択は我々コミュニティとか文科省がやりますということを明確に示すことが必要だと思います。もう一つは、ほかとの関わりがあるというような、ある意味ではずるい考え方ですけれども、例えば国としてイプシロンロケットのようなものを持つという必要性については、科学とは別の観点でもあるわけですので、利用技術的にこういう技術が必要ですよと話があるのであれば、それに乗っかるのも方法かと思います。私は、イプシロンに関しては明確にイプシロンのユーザーとしての科学を打ちだすべきだと思っていて、イプシロンできるミッションというものをある意味明確に出していくことが重要で、そのためにイプシロンを高度化する必要があればすべきだと思っています。必要性の物差しは科学技術だけではなく、国としてイプシロンを使っていかなくてはいけないわけですので、そのときには明確に我々はユーザーになりますよというように、ほかの部分の人たちのメリットも取り込んでいくことも重要でないかと思います。

【井上主査】  ほかに、ございますか。

【横山臨時委員】  ロードマップを拝見して思ったことは、たくさんの優れたミッションがあるということですが、同じような海外のミッションではどういったミッションがあるのかということを背景として書いていただければ、どういうところに融合する可能性があるのかということが見えてくると思います。例えば加速器の分野では昔の話になりますがSSC(超伝導超大型加速器)という非常に大きな加速器を、日本からも予算を出してインターナショナルプロジェクトにしようという提案があったのですが、アメリカはナショナルプロジェクトとしてでしかやりたくないと断ってきたことがありました。そういう時代があったわけで、SSCはうまくいかなくて途中で頓挫しましたけれども、例えば、今進んでいるリニアコライダーというプロジェクトになると、もともとはジャパン・リニアコライダーという日本のものとしてやっていたのですが、大きすぎてどうにもならないということでインターナショナルになりました。それでも大きすぎてどうなるかわからないのですけれども、そういう経緯もありますので、時代とすればどの国もサイエンス自体の予算は減らされている状況にあるわけですから、相乗りしやすい状態が国際的にはあるのだと思っております。そういう中で、ISASのプロジェクトと国際的なプロジェクトがどういう位置関係にあって、どこがどのように強いという状況にあって、それであればこれは向こうに相乗りした方がいい、あるいはこれはこっちでやった方が国際的にも勝てるというような関係の図式があると、部外者としては非常に助かると思いました。

【井上主査】  ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。私からも一言申し上げてもよろしいでしょうか。ロードマップを出していくということで、先ほど常田委員がまさに所長としての悩みをおっしゃったと思うのですが、宇宙研側としては、先ほどから申し上げているとおり競争的にあがってくるミッションをその場その場で決めていくという基本的な考え方は踏襲するわけでしょうから、その中でこういうふうにやっていきますということについては宇宙研側としては言うことはできないわけです。それが、昔から同じことをやろうとしてうまく言えてこなかったことだろうと思うわけです。先ほど、イプシロンをどう使っていくかとか、あるいは小さいものを工夫してたくさん組み合わせることで新しい局面を切り拓(ひら)いていくという御意見がありましたが、今、予算的な規模が大きくなったことで壁に当たっている部分について、少し違う考え方で新しい輸送系を考えることも含めて、こういう考え方を入れるとこういうやり方でうまく新しいことが拓(ひら)けるというような工夫が求められているのではないかというように感じていますので、そこを考えてもらえるといいなと思います。主査の立場を離れて、意見を言わせてもらいました。

【吉田専門委員】  ロードマップを作るということはメインとなるプロジェクトの方向性をたてることだと思うわけですけれども、これと必ずセットで、小さい計画が次から次へと出てきてその場その場で走るような仕組みを考えておく必要があります。ロードマップに書かれた大きな計画だけということになってしまい、将来の芽を育てる小さなプロジェクトが走らないようでは、宇宙科学の将来は確実になくなってしまいます。これから推進方策を検討する中で、ロードマップに基づいた大型計画、中型計画、小型計画といったものとセットで、小規模のものがその場その場のニーズにしたがって走る仕組みを構築することが必要だと思います。

【山田専門委員】  よしあしがあるかもしれないですが、ロードマップを取りまとめるときにはまずタイムスケールがあって、ここで出ているミッション候補も含めて各分野の中での重点を考えながら、先ほど話があった打上げ機会も含めて取りまとめることになると思います。そのときに、ロードマップという言葉は語弊があるとかトップダウン・ボトムダウンという言葉は語弊があるという話があったのですが、考えるべきことは全体として中心になる枠組みを定めるということであって、例としてはNASAのビヨンド・アインシュタイン計画だとかグレート・オブザーベイトリーズ計画というような枠組みではないかと思います。ただ単にアメリカのまねをするというわけではなく、これまでボトムアップで考えられてきた個々の計画をそういう枠組みに対するビジョンの中で位置付けて、日本のこれまでの実績と今ここに挙がっている各分野の計画にどういう方向性を得られるかというように、それは難しいところだとは思いますがそれをやっていかないといけないのではないかということが私の意見です。

【井上主査】  ほかにはいかがでしょうか。よろしければ大分、時間も過ぎてしまいましたので、この議題の議論はここで閉じさせていただきます。ロードマップの検討を、是非進めていただければと思います。

(3)その他

【井上主査】  それでは「その他」について、事務局からお願いします。

【竹内企画官】  次回会合につきましては8月2日に予定をしておりますので、委員の皆様には、是非よろしくお願いいたします。それから、宇宙開発利用部会運営規則に基づきまして本日の会議資料は公開となりますので、後日文科省のホームページに掲載させていただきます。また、議事録につきましても皆様方に確認をさせていただいた上で、ホームページに掲載させていただくことを考えております。

【井上主査】  ありがとうございました。以上で本日の議事を終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

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