原子力科学技術委員会 もんじゅ研究計画作業部会(第13回) 議事録

1.日時

平成28年10月25日(火曜日)9時00分~11時00分

2.場所

文部科学省東館15階特別会議室

3.議題

  1. 「もんじゅ」に係る最近の経緯について
  2. これまでに得られた「もんじゅ」の成果について
  3. 「もんじゅ」を再開した場合に獲得が期待される成果について

4.出席者

委員

稲田主査,大島委員,笠原委員,北田委員,永井委員,山口委員

文部科学省

田中研究開発局長,板倉大臣官房審議官(研究開発局担当),岡村原子力課長,髙谷研究開発戦略官(新型炉・原子力人材育成担当),次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官,高橋原子力課課長補佐

オブザーバー

日本原子力研究開発機構
青砥理事/もんじゅ所長,家田もんじゅ運営計画・研究開発センター長,荒井もんじゅ運営計画・研究開発センター計画管理部長

5.議事録

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

定刻となりましたので,第13回もんじゅ研究計画作業部会を開催いたします。本日は,お忙しいところ御出席いただき,誠にありがとうございます。
冒頭の議事進行を務めさせていただきます,文部科学省「もんじゅ」の在り方検討室の次田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
初めに,研究開発局長の田中より一言御挨拶申し上げます。

【田中研究開発局長】

おはようございます。文部科学省研究開発局長の田中でございます。もんじゅ研究計画作業部会の委員の先生方におかれましては,大変お忙しい中,本日の会議に御出席いただき,感謝申し上げます。
この部会では,平成25年9月にもんじゅ研究計画を取りまとめていただきました。それに基づいて,平成26年4月のエネルギー基本計画閣議決定の中で「もんじゅ」についてもきちんとした位置付けをもって進めるということになりました。御承知と思いますが,その前の平成24年12月及び平成25年5月に,当時の保守管理不備に関して原子力規制委員会から日本原子力研究開発機構は保安措置命令を受けて,その改善に向けた努力を続けてきたところです。
ただ,残念ながらこの「もんじゅ」については,昨年11月に原子力規制委員会から文部科学大臣に対して,出力運転を行うに当たって日本原子力研究開発機構に代わる新たな運営主体を特定するようにという勧告が出されたところです。文部科学省では,この勧告を真摯に受け止め,昨年末に有馬朗人先生を座長とする「もんじゅ」の在り方に関する検討会を設けて,本年5月には新たな運営主体が備えるべき要件等について報告書を取りまとめたところです。
しかし,東京電力福島第一原子力発電所事故を契機とした原子力規制委員会の発足,それに伴う新規制基準策定,さらには日仏協力によるアストリッド協力といった,高速炉を巡る諸情勢の変化もあり,9月21日に原子力関係閣僚会議が開催され,その場で改めて,我が国の高速炉開発の司令塔としての高速炉開発会議の設置と,併せて「もんじゅ」の在り方については廃炉を含めた抜本的な見直しを行うこととされ,その取扱いに関する政府方針を高速炉開発の方針と併せて本年中に原子力関係閣僚会議で決定することになりました。
先ほど申し上げました高速炉開発の司令塔としての高速炉開発会議は,我が国の実証炉に向けた今後の高速炉開発の方針について議論する場で,既に10月7日に第1回の会合が開催されました。「もんじゅ」については,運転再開に当たってのコストをこの第1回の場で御紹介させていただきました。詳しい経緯については,後ほど資料に基づいて御説明させていただきます。
本日の作業部会では,高速炉開発会議での議論に資するために,これまでに「もんじゅ」で得られた技術的な成果,あるいは「もんじゅ」を再開した場合に獲得が見込まれる成果について技術的な観点から御議論をお願いいたします。委員の皆様から忌憚(きたん)のない御意見を賜りますようにお願い申し上げます。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

検討会の委員の皆様を着席順で紹介させていただきます。
一般財団法人電力中央研究所原子力技術研究所副所長,稲田文夫委員です。

【稲田主査】

よろしくお願いします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

東京大学大学院情報学環・生産技術研究所教授,大島まり委員です。

【大島委員】

よろしくお願いします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

東京大学大学院工学系研究科教授,笠原直人委員です。

【笠原委員】

よろしくお願いします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

大阪大学大学院工学研究科教授,北田孝典委員です。

【北田委員】

よろしくお願いします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

東北大学金属材料研究所教授,永井康介委員です。

【永井委員】

よろしくお願いします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

東京大学大学院工学系研究科教授,山口彰委員です。

【山口委員】

よろしくお願いします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

本作業部会の委員数は8名ですので,過半数の委員の方に御参加いただいており,定足数を満たしております。
次に,日本原子力研究開発機構より出席している説明者を紹介します。青砥紀身理事,もんじゅ所長。

【青砥理事】

よろしくお願いします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

家田芳明もんじゅ運営計画・研究開発センター長。

【家田センター長】

よろしくお願いします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

荒井眞伸もんじゅ運営計画・研究開発センター計画管理部長。

【荒井部長】

よろしくお願いします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

本作業部会の上部委員会である原子力科学技術委員会の山口主査からの御指名により,稲田委員に本作業部会の主査をお務めいただくこととなりました。稲田委員,どうぞよろしくお願いいたします。

【稲田主査】

電力中央研究所の稲田と申します。本日主査を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

ここからは,稲田主査に議事の進行をお願いいたします。また,稲田主査には,参考資料3にございます原子力科学技術委員会運営規則第2条第7項の規定に基づき,主査代理を御指名いただきますよう,よろしくお願いいたします。

【稲田主査】

はい。それでは,主査代理を指名させていただきます。私としては,山口委員にお願いしたいと考えておりますので,よろしくお願いいたします。

【山口委員】

拝命いたしました。

【稲田主査】

それでは,事務局から資料の確認をお願いします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

資料の確認をさせていただきます。配付資料として,資料1から3,参考資料1から3がございます。もう一つ,本日御欠席の村上委員から本日の作業部会の趣旨を踏まえた御意見を頂きましたので,机上配付させていただいています。
資料の不足等があれば,事務局までお知らせください。

【稲田主査】

ここでまず,今回のもんじゅ研究計画作業部会開催の趣旨について,事務局から説明をお願いします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

本日のもんじゅ研究計画作業部会の開催の趣旨について,御説明します。先ほど局長の田中からも触れさせていただきましたが,9月21日に開催された原子力関係閣僚会議において,我が国の高速炉開発の司令塔となる高速炉開発会議の設置が決定されました。第2回会合が明後日(みょうごにち)の予定ですが,その会議の場で,これまで「もんじゅ」において獲得された成果についての総括を行うとともに,「もんじゅ」を再開させた場合に獲得が見込まれる知見についても報告することになりました。このため,本作業部会において,日本原子力研究開発機構が取りまとめた資料に対して,技術的な観点からの妥当性,過不足等について先生方から御意見を頂きたいと考えています。よろしくお願いします。

【稲田主査】

ありがとうございました。
それでは次に,議題1,「もんじゅ」に係る最近の経緯について,に入ります。初めに,事務局から説明をお願いします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

それでは資料1に基づいて,「もんじゅ」に係る最近の経緯について御説明します。
1ページです。経緯については,先生方御存じの内容と思いますので詳細は割愛しますが,本作業部会においてもんじゅ研究計画を取りまとめいただいた後,平成26年4月に現行のエネルギー基本計画が閣議決定され,そのエネルギー基本計画において,「もんじゅ」の位置付け等が明確にされています。
2ページです。日本原子力研究開発機構は,もんじゅ研究計画が策定される前の平成25年5月に「もんじゅ」の運転再開準備の停止を含む保安措置命令を受けており,その保安措置命令の解除に向けて様々な取組を行い,平成26年12月に日本原子力研究開発機構より原子力規制委員会に措置命令に対する報告書を提出しました。しかしながら,それ以降も保安検査等において各種の違反事項を指摘される状況が続きました。結果として,昨年11月に原子力規制委員会から文部科学大臣に対して,日本原子力研究開発機構に代わって「もんじゅ」の出力運転を安全に行う能力を有すると認められる者を具体的に特定すること等の趣旨を盛り込んだ勧告が発出されました。
3ページ及び4ページですが,原子力規制委員会からの勧告を受けて,昨年12月に文部科学省は,「もんじゅ」の在り方に関する検討会を設置しました。関係者からのヒアリング,視察,様々な議論を行い,今年5月に「もんじゅ」の様々な問題について総括するとともに,新たな「もんじゅ」の運営主体が備えるべき要件について報告書を取りまとめました。その概要が4ページです。残念ながら,現時点において新たな運転主体の特定には至っていません。
次に,5ページです。「もんじゅ」については,「もんじゅ」の在り方に関する検討会における議論と並行して,新規制基準等に対応した場合のコストの試算等の様々な検討を進めてきましたが,政府として我が国の今後の高速炉開発の進め方について改めて確認するため,9月21日に原子力関係閣僚会議が開催され,今後の高速炉開発の進め方を決定しました。この決定の内容は,5ページにありますが,その中で,国内の高速炉開発の司令塔機能を担うものとして新たに高速炉開発会議を設置することが決定されました。
次に,6ページです。原子力関係閣僚会議での決定を踏まえて,10月7日に第1回高速炉開発会議が開催されました。世耕経済産業大臣,松野文部科学大臣,児玉日本原子力研究開発機構理事長,勝野電気事業連合会会長,宮永三菱重工業株式会社社長に御出席いただきました。第1回の高速炉開発会議では,高速炉開発の意義と国際動向について,これまでの高速炉開発の経緯と教訓を議題として協議を実施し,6ページにある4点を確認しました。
その後ろに参考資料として,先日の高速炉開発会議に文部科学省から報告した,「もんじゅ」の運転終了までにかかるコストの試算及び運転再開スケジュール等を添付しています。現時点での試算として,もんじゅ研究計画において整理した5サイクル分の研究内容を実施するまでに16年の期間と,新規制基準への対応及び維持管理等にかかる経費として5,400億円プラスアルファのコストが見込まれるとの報告となっています。
以上です。

【稲田主査】

ありがとうございました。ただいまの説明について,御意見,御質問があればお願いします。
いかがでしょうか。特にないでしょうか。ありがとうございました。
それでは次に,議題2,これまでに得られた「もんじゅ」の成果について,に入ります。初めに,日本原子力研究開発機構から説明をお願いします。

【家田センター長】

それでは,資料2に沿って御説明します。 1ページです。これは高速炉の実用化に向けたこれまでの研究開発で,「もんじゅ」に限らず,その他の研究開発も含めて書いています。一番下に書いてある基盤技術開発,基礎研究,あるいは「常陽」,その次の「もんじゅ」,それから,「もんじゅ」と車の両輪の形で進めている高速増殖炉サイクル実用化研究開発,FaCT(ファクト)と呼んでいますが,そういう研究開発の成果を実証技術の確立につなげていくということです。国際協力も当然進めていますし,今後の研究開発も進めていくと,そういうことを書いています。
左上に「成果の反映度」ということでまとめていますが,「常陽」,「もんじゅ」については,「もんじゅ」も設計・建設は済んでいるので,その技術については,次に造る炉の設計に反映可能なところまで既に来ているということです。ただ,「もんじゅ」については,40パーセント出力試験は実施しましたが,まだその先は動かしていませんので,設計・建設の検証については,既に一部反映可能なものはあるが,まだこれからの部分があるということです。それから,運転・保守技術などを運転再開後に取得していく必要があるということです。一方,高速増殖炉サイクル実用化研究開発については,5年間のフェーズ1がおおむね終了したところで東京電力福島第一原子力発電所事故があって中断していますが,その段階で実用高速炉の概念を創出し,次の炉の概念設計の準備は完了しているという段階まで至っているということです。
2ページです。この資料では「もんじゅ」で得られた成果について説明しますが,それを最初に概括的に見ていただくために書いた資料が2ページです。上半分に,平成4年までの「もんじゅ」設計・建設から始まり,運転をして,平成7年12月にナトリウム漏えい事故,その後,平成22年にもう一度立ち上げて性能試験を再開し,炉内中継装置落下。現在運転再開を目指して準備中ということで,こういうトラブルを含めて種々の成果が得られてきています。
下に、概括的に成果について少し書いています。「もんじゅ」については,純国産技術で設計・製作・建設をこれまで進めてきており,システムとしての成立性を初めて確認していますし,40パーセント出力までの機能・性能を確認しています。建設段階においては,種々の技術を開発しながら進め,次期炉あるいは軽水炉などへ活用できるような多くの技術,あるいは国の指針類の整備にも寄与しています。それから,上に書いてある事故,トラブルについても,これを克服していったということでいろいろな知見が得られています。これら一連のことについて,知的財産の蓄積,人材の育成等も進んでおり,更に改良,改善を進めて,次期炉につなげていくというところです。
3ページです。今回まとめた資料について少し説明を書いています。平成25年9月にこの作業部会でもんじゅ研究計画を策定いただきました。そのときには,その段階までの実績を踏まえて,炉心・燃料,機器・システム,ナトリウム取扱い,プラント運転・保守,安全機能確認・評価といった分野ごとの計画を定めていただきましたが,今回は,それを更に遡ったところを含めて,どこまで「もんじゅ」の成果が上がっているのかということを整理したものがこの資料2です。
それと,小さな字で書いているのは,この平成25年に研究計画を策定いただいた後については,いろいろと立ち上げができなかったということでそれほど計画が進んでいる部分はありませんが,保全プログラムの作成とか,新規制基準対応の中で重大事故関連の取組などについて一部成果が上がっているという状況です。
今回再度,過去も振り返って成果を概括するということで,そのまとめ方として,下にA,B,C,D,Eと開発プロセスに沿った形で,設計・製作・建設段階,試運転・運転,運転・保守のそれぞれの管理,トラブルの対応,それから,新規制基準とか保守管理上の不備といった新たな取組あるいは必要になった取組から何が得られたかという整理をしたということです。
それから,別紙です。これについては,概要を資料2に書いていますので,一々説明はしませんが,1ページ目がA,B,CのうちのAの設計・製作・建設段階のもので,分野ごと,炉心・燃料,機器・システムという区分で,左側に今までに取得された成果,右側に未取得で今後取っていく必要がある成果と整理しました。順次,次のページからB,試運転・運転を通じてと,そういう整理になっています。
中身一つ一つは見ませんが,設計・製作・建設については当然おおむねその成果は得られていますが,炉心・燃料については,「もんじゅ」の設置許可が下ろされたときに,まずは低燃焼度からスタートして,それでデータを取って次の段階という形になるので,燃料の高燃焼度のところは未取得ということです。
2ページからの試運転・運転については,試運転で40パーセントの性能試験まで実施しましたが,それ以降はまだ進んでいないということで,取れた成果もたくさんありますが,今後取っていかなければならない成果もたくさんあるということを見ていただけると思います。
5ページから,運転管理・保守管理で取得する成果ですが,これも今後取っていかなければいけない成果,それから,20年間で,炉を立ち上げた期間は短いものの,いろいろな管理をしてきて得られた成果があります。
8ページはトラブル対応ということで,トラブルからもいろいろな成果が得られたということを書いていますが,通常,プラントは初期トラブルを経験して知見を得ていくものですから,そういうところは未取得となります。
それから,9ページ,10ページについては,新たな取組ということで,新規制基準対応,保守管理上の不備の対応で得られてきているもの,今後やらなければならないこと,それで得られる知見を整理しています。
そういう整理に基づいて,資料2の4ページに,別紙に書いた内容を図的に示しました。緑色で塗られた部分が既に取得した成果です。白の部分が今後取得する必要のある成果で,緑から白のグラデーションが掛かっているところは,その項目は一部取られているが今後取っていく部分もあるということです。それから,赤枠を付けたものは,当初の「もんじゅ」の役割に付加的な役割として出てきたものを挙げています。右の方でいうと,廃棄物の減容,有害度の低減といったもので,左の方では,東京電力福島第一原子力発電所事故の後の新規制基準対応とか,保守管理上の不備で更に保全計画をしっかりしていくということから出てきた取組が含まれています。
Aの設計・製作・建設を見ていただきますと,当然ほとんど緑になっていますが,先ほども説明したように,燃焼度のところでまだ一部残っている部分があります。右側のB,これは40パーセントの性能試験までですから,取れた部分もあるが,これから取っていく部分もかなりあるということがこの図でも見ていただけると思います。Cの運転管理・保守管理では,これも当然取れていない部分があるということです。Dについては,先ほど説明したようにトラブル経験で得たところ,今後の初期トラブル等で得ていく部分があります。それから,左の真ん中のE新たな取組について,当然取れたところ,取れていないところがあるということです。
この図の中で星印を付けている部分について,次のページから13ページまで,その中身について説明したシートを付けています。全部ではなくて,星の付いたものを例示的に説明します。
5ページと6ページについては,炉心設計手法に関わる項目です。これは設計・製作・建設に関わる部分,それから,試運転等で得ていく成果ということです。5ページは,「もんじゅ」のために作られた炉心設計手法についての内容です。6ページは,更にそれを発展させて,次期炉に向けたより精度の高いシステム評価手法を開発していく,その中で「もんじゅ」のデータが役立っていく,そういう役立った成果です。
5ページです。右側に書いてあるように,平成6年から7年の性能試験のデータに基づいて,炉心設計手法で得られた解析値と実際に得た数値との差を示しています。右上,黄色い枠の中にグラフで,必要な精度に十分収まる解析値が得られたということを実際に取ったデータで示しています。右下は,増殖比の設計値に対して,実際に箔(はく)放射化法で得られた増殖比の評価でかなり近い数値が得られているということです。そして,左下に書いたように,臨界実験を「もんじゅ」の体系で実際に行って,それで炉心設計手法を組み立て,仕上げてきた,そういう炉心設計手法が有効に働いて設計ができたという成果です。
6ページです。同じように,次期炉に向けた炉心設計を含めたより精度の高い手法について,ここでも右側に解析に必要な精度と実測値との比較を示しています。しかも,アメリシウムが入った高速炉炉心とその体系で行った解析値と平成22年の性能試験のデータを比較した結果ですが,よい精度で作られているということです。こういう手法を今後,次期炉に展開し,炉心設計,炉心管理の合理化を実現していくということです。
7ページです。これも高速炉にとって非常に重要な課題である高温構造設計手法です。軽水炉よりも温度が高い,温度差が大きいということから高温構造設計手法を作り上げていく必要がありますが,これは「もんじゅ」の設計段階からかなり力を入れて,いろいろな実験をしながらしっかりした高温構造設計手法を作り上げました。作り上げたものにより,左の真ん中に書いてあるように,合理的な構造設計をすることができ,より高い安全性,経済性を実現することができたということです。
これについては,当時の動力炉・核燃料開発事業団,核燃料サイクル開発機構,それから,日本原子力研究開発機構とつながっていますが,事業者側で作ったそういう基準を当時の規制側である科学技術庁に指針化していただいたということです。現在は,民間規定を作って,それを規制側が取り入れ,規制に使っていくということになっており,それにのっとって機械学会の規格にしていくということを更に進めています。そういうものは次期炉にもつながっていきますし,さらに,これは日本で世界に先駆けて行った部分もあるので,米国の規格にも反映する方向で進められているということです。
8ページです。そういう手法,基準を作って高温構造設計は進めてきましたが,高速炉は,出口温度が高いということから大きな熱応力が発生するので,それを緩和して健全性を保つ必要性があり,それが可能な設計を進める必要があります。そういう大きな熱過渡変化が生じたときにそれを設計上どう担保するかということで,解析によって信頼性を確認しますが,熱過渡条件をどう設定するかという手法も含めて開発を進めてきました。大きな熱応力が発生する部分については,右側に書いているように,熱応力を緩和する方策,「もんじゅ」の場合は原子炉容器を2液位制御という方法でしっかり信頼性,構造健全性を担保していくという設計を行っています。こういった一連の手法,技術については,次期炉にも役立っていくものと考えています。
9ページです。これは建設・製作段階の話です。特徴的なところでは,三菱重工業株式会社の二見工場は「もんじゅ」のために造られたようなところもあり,そこで種々の大型機器を作るための技術を開発してきました。写真にあるように,大型部材の高精度機械加工,高品質溶接というようなことを実現していくために,「もんじゅ」の原子炉容器,内径7メートル,板厚50ミリですが,そういうものを一体型でそのまま作っていくという技術を仕上げていきました。これについては,次期炉あるいはその他軽水炉,さらには国際熱核融合実験炉のコイルといった大型の機器を製作・据え付けていく技術を「もんじゅ」の建設・製作の段階で開発し,成果として仕上げていったということです。
10ページは,試運転・運転を通じて取得する成果です。40パーセント出力運転までを実施していますが,取得済みの成果として,40パーセントまでは発電運転を行うことができたということで,ループ型の発電システムの成立性を日本で初めて確認したということが言えます。運転実績は書いてあるとおりで,発電量も1億キロワット時です。今後,当然100パーセント出力を達成して,更に設計手法等の妥当性を検証していくことが必要ですが,40パーセントまでの成果は得られているということです。いずれにしても,世界で最も厳しい規制と言われている我が国の規制体系下でいかに運転管理,保守管理していくか,それを次期炉につなげていくことが非常に重要なことで,「もんじゅ」でそういう知見を得ていくことが重要だと考えています。
11ページは,トラブルを通じて得られた成果です。トラブルは当然よろしくないことですが,そこからもたくさんの成果が得られているということです。左側に流れを書いていますが,これは床ライナの腐食に関連する,ナトリウムが漏えいしたときに,漏えいしたナトリウムの腐食効果について,基礎的に腐食原因を究明し,床ライナがどのような影響を受けるのかということの評価手法を整備し,それに基づいて,ナトリウム漏えい対策設備をどうしたらよいか,「もんじゅ」の場合は既に設置済みですので,それをいかに改善するかという検討をしたものです。
右側の「もんじゅ」のナトリウム漏えい対策の図で,事故前の概念から,右側にそれを改善した概念を描いています。赤色で書いているものは,ナトリウム漏えいをいかに早く検出するかということ,青色で書いているものは,漏えいをいかに抑制するかということ,緑色で書いているものは,影響を緩和するということで,そういう対策を種々施していったというのが一つの成果です。
12ページは,炉内中継装置落下の復旧工事から得られた成果です。高速炉の場合は,軽水炉と違って原子炉容器のふたを取り払うことができないので,不活性雰囲気を保ったままで補修工事をするということです。液面の上には高温のアルゴンガスがあり,そこには下のナトリウムから出てくるナトリウムの蒸気があるという雰囲気の下でどういう状況かを観察し,改造していくということが必要でした。
この例で書いているのは,その状況をまず観察するため,観察する装置もモックアップの試験装置を作り,それで作り上げたものを実際に「もんじゅ」の実機に入れました。右側ですが,炉内中継装置を落としたときにその衝撃で上部と下部の継ぎの部分に8ミリ程度のすき間ができましたが,それを観測装置で調べて,そういう状況であれば,どのようにして取り出し,交換すればよいかと,そういう補修に役立てる技術の成果が上げられたということで書いています。
13ページです。これも同じく炉内中継装置落下の補修に関することです。不活性雰囲気を保ったままで交換する必要があるということで,「プラバッグ」という塩化ビニルシートで覆って,その中のガスの雰囲気を制御しながらいろいろな作業をしていくということです。そのような大型の機器を実際に交換することは将来もいろいろと出てくると考えられるので,そういう補修技術を一つ仕上げたというのが大きな成果です。
以上が,4ページにあった主な成果の例示ですが,14ページからは,「もんじゅ」から派生した関連成果をまとめたものです。
14ページです。左側には,「もんじゅ」の開発のステップ,設計基準を作って,設計・製作・建設,試運転して,運転・保守してと,あとはそれ以降付加されたものと,そういう行為が進んできて,その一部については部分的なところまで進んでいますが,そういう各段階でいろいろな活動をしていく中で関連する成果も生み出しているというのを描いた図で,右側に関連成果を書いています。
当然「もんじゅ」を動かすためには燃料が必要ですので,燃料供給技術。これは世界でトップクラスと言ってよいと考えています。先ほども説明しましたが,大型機器を製作していくという技術については,軽水炉,国際熱核融合実験炉への反映も紹介しましたが,そういういろいろなところに発展する製作技術の革新です。知的財産ということでは,膨大な知的財産が蓄積しており,それは世界にも発信しているということ。人材育成・教育ということでは,「もんじゅ」の従業員自体の育成・教育も必要ですが,種々の施設を使って,「もんじゅ」以外,国内外の人たちの育成・教育にも役立たせていただいています。それから,当然そういう開発の中で研究開発のインフラを整備しているので,それは将来的にも使っていけるものです。海外協力も進めていますし,地域振興でもいろいろな成果が上がっているということです。それらについて,次のページから説明します。
15ページは,プルトニウム第三開発室という,私どもの東海の核燃料サイクル工学研究所にある施設の燃料製造技術です。遠隔自動化がかなり進んだ,世界的にもトップクラスの燃料製造技術と言えると考えています。
16ページは,知的財産の蓄積ということです。上側に,設計関連図書,いろいろな原図,あるいは研究開発関連図書も膨大な数があります。右側の機器故障等のデータを蓄積中で,これも非常に重要なものです。今後も高速炉の開発を進めていく中で,どういうところにどのぐらいの頻度でどういう故障が生じるかというデータを積み上げていくというのは非常に重要なことです。これはもともと米国からスタートしたものを引き継いで,そこに「もんじゅ」のデータなどを積み上げていっているもので,そういう高速増殖炉の機器信頼性データベースを作り上げています。これもいろいろな保修実績等から積み上げてきています。品質マネジメントシステムにおける不適合管理というのも,ある意味で非常に重要な知見の蓄積です。そういうものを含めて世界にも発信するということで,こういう発表もしているということです。
17ページです。人材育成・教育。特にナトリウム取扱いの訓練とか,高速炉のシミュレータ,「もんじゅ」のシミュレータを使った訓練等に,国内外から研修生を受け入れています。上に国内の実績を書きましたが,大学及び高等専門学校の方々,規制当局の方々,あるいは地域の技術者,企業の方々に研修に来ていただいており,シミュレータとかナトリウム取扱いとかに関する研修をさせていただいています。下半分は,海外からの研修生の受入れです。これは広く書いています。一番下のナトリウム取扱研修には,韓国の原子力研究所からも私どもの施設に来て研修を受けていただいている実績です。
18ページは,高速炉関係の研究開発インフラです。安全性強化,廃棄物減容・有害度低減,成果の取りまとめと書いてありますが,いろいろな開発を進める中でインフラも当然必要になってくるので,整備したものは次へつなげていくことが可能ということで挙げさせていただきました。
19ページです。これは高速炉サイクル技術に係る日本の海外協力ということです。お互いに切磋琢磨(せっさたくま)しながら高速炉の開発を進めていくということで,国際協力も当然行っています。上の三つは多国間協力で,下が二国間あるいは三国間の協力です。特に今は,安全技術の国際標準化ということで,安全に関する国際標準の規格を作っていくところが重要で,そこは日本が主導して進めている協力と言えると思います。
20ページです。高速炉サイクル技術に関する日本の海外協力ということで,開発の拠点ということです。上は,「もんじゅ」が特に動いていたときが多いのですが,その後もフランスからは学生の受入れをしています。それから,真ん中は,国際会議を開催していろいろな国から来ていただいているという実績を書きました。
21ページです。地域振興ということで,特に「もんじゅ」のある敦賀地区については,地域とともに開発を進めるという考えの下進めています。左上は,特許等を利用して,成果を展開していく事業について書いています。右上は,逆に日本原子力研究開発機構が抱える研究課題について,地域の企業から御提案いただいて,それで解決につなげていくという取組です。また,下の技術交流あるいは技術相談,オープンセミナーというようなことも進めています。
22ページは,最後,まとめです。「もんじゅ」について,純国産技術で設計・製作・建設を進めて,40パーセント出力の性能試験まで行って,発電システムの成立性を日本で初めて確認したということです。また,建設段階では,大型機器製造技術等の多くの技術を開発しています。3番目ですが,技術開発成果に基づいて指針とか基準に仕上げてきているものがあり,一部は米国の規格にも反映中であるということです。4番目,トラブルから得られた成果も大きなところがありますし,有形無形の財産として知的財産の蓄積,人材の育成等に貢献してきたということです。
説明は以上です。

【稲田主査】

ありがとうございました。ただいまの説明について,御意見,御質問等ありましたらお願いします。
北田委員,お願いします。

【北田委員】

少し細かいことになりますが,5ページです。過去の,20年以上前の性能試験の試験データに基づく設計評価例として例示されていますが,確認させていただきたいのは,20年ほど前の試験ということで当然20年前に解析をされたものもあると思いますが,解析されたときから20年たっているので,当然解析も高度化してきているのではないかと思います。当時の測定データを踏まえて今の設計の高度化に役立っているところはあるのかどうか,20年前と現在とでは設計精度的に大きく変わってきているところがあるのかどうかということを確認させていただければと思います。

【荒井部長】

荒井から説明させていただきます。先ほど家田が説明したように,5ページは,非常に律儀に,昔行った設計手法に測定したデータを当てはめて,昔の設計が正しかったかどうかを確認したものです。今,御質問があった,その後いろいろ改善されている,精度が上がっている,向上しているだろうというものが,次の6ページで,最新の炉心設計手法として左の下側に書いた手法です。当然,核データライブラリも新しくなりますし,炉心計算についても,20年前は1次元で計算していたところが,3次元の拡散を入れたりなどでモデルを改良しています。その改良の手法が正しい結果を出しているかということについて,「もんじゅ」の実機を使って検証したというのが6ページになります。したがって,当然精度は上がっており,3次元なので,細かく見られるようになっているところもあります。

【北田委員】

反映されているということでよろしいですか。

【荒井部長】

はい。

【稲田主査】

ありがとうございました。
ほかに何かございますか。
笠原委員,お願いします。

【笠原委員】

意見というか感想なのですが,家田センター長が最後に22ページでまとめを言われたとき,1,2,3,4と四つの成果の中で,殊の外,4番のトラブル対応のところを少し遠慮ぎみに話された気がしましたが,技術的な観点から原型炉の役割ということを考えると,新型の原子炉のような巨大で複雑なシステムを作るときに,あらかじめ全部想定するということは無理ですから,気付いていないことがないか洗い出すというのがもともと原型炉の非常に大事な役割だったわけです。そう考えると,この4番というのは大きな原型炉の成果ではないかなと感じます。もう少しここを強調されてもよいのかなと思います。印象ですが。

【家田センター長】

ありがとうございます。私どもも,事故自体は自慢できる話ではありませんが,当然プラントを動かしていく上で初期トラブルもあります。それをいかに克服して,そこからいかに知見を得ていくかということが非常に重要だということは我々も認識しているところで,是非今後とも動かしたいと考えている理由の一つと考えています。

【笠原委員】

そうですね。これで十分かというと,4ページの全体のテーマの整理の中でも,Dのところは,3のトラブル経験はまだ白色の部分が多くて,十分に経験を積んだかというと,正直なところ,まだそうではないかもしれないですね。

【荒井部長】

はい。やはりトラブル経験については,平成25年にもんじゅ研究計画を作っていただいたときにも御議論いただいたように,バスタブカーブといい,運転した初期に大きく出て,それからしばらく落ち着きますが,その後はランダム的に故障する時期があり,さらには15年,20年とたつと経年的にトラブルが出てくる。そういうフェーズで何が起こるか,高速炉の発電システムがどういうものを持っているのか,潜めているのかというのをしっかりと取っていきなさいというのが前回まとめていただいた研究計画の一つの柱と思っています。ありがとうございます。

【笠原委員】

バスタブカーブというのは,もう原理が分かっているものでも初期故障として起こるものですね。それに加えて,新型の新しい技術を開発するときには,あらかじめ人間が全部考え尽くせないこともあるのではないかと。それを出し尽くすという,少し違う意味も含まれています。

【家田センター長】

ありがとうございます。

【稲田主査】

それでは,永井委員,よろしくお願いします。

【永井委員】

二つほど御指摘させていただければと思います。一つは,13ページに書いてある「常陽」のことです。実験炉として大洗にある「常陽」から最終的に「もんじゅ」につながっているわけですが,そこの技術的なトランスファーが多くあって,今のこれだけの成果になってきているということだと思います。それで,やはり,成果の取りまとめではありますが,これは単にまとめではなくて,今後どうするかという議論のための成果のまとめということなので,いかに「常陽」の知見が「もんじゅ」の開発,成果につながったかということももう少し書いていただけると,これまでの技術開発の流れがよく分かるのではないかと思いました。これが1点です。
それからもう一つ,少し難しいのですが,人材育成です。やはり大学の人間としては少しこのことを申し上げなければいけないかと思います。14ページに書かれているように,いろいろ訓練,シミュレータ,それから,研修生と,確かにそれはそうですが,長期間運転できなかったことによるネガティブな人材育成の側面もやはりあると思います。やはり運転しての経験が一番の人材育成ですので,それはもちろんできなかったという結果があった上でのことなのでこれはどうしようもないというのはよく分かりますが,これを表に出されて人材育成に貢献したと言われると,第三者的に見ると若干違和感を抱くということを指摘させていただきたいと思います。これは,大事なこと,長期的なことですので。以上2点です。

【家田センター長】

ありがとうございます。「常陽」からのつながりのところについては,おっしゃるとおり,「常陽」からつながって原型炉,それからその先というふうにつながっていくものと考えています。今回は「もんじゅ」に特化して成果はどうかということを説明する形になっていたため,その辺りが抜けていたと思いますので,何かの機会にということにさせていただきたいと思います。
それから,人材育成についてはおっしゃるとおりで,いかに動かして苦労するかというところから成果が上がっていくものだと考えます。かなり長期間止まっていることもあり,私ども「もんじゅ」を動かしている人間も,過去のことを知っている人間がかなり減ってきていることもあるので,そこをいかに人材育成して技術継承していくかというのが重要だと考えています。
例えば新規制基準対応というのがありますが,それについても,過去の設計を知っているシニアの人間と若い技術者とペアを組ませて,そういう中でしっかり技術継承していこうというふうに我々考えてやってきたところでもあります。そういう意味では,余り停滞している時間が長いとそういう継承が難しくなってくるというところも一面ではあるので,おっしゃるように,いかに次のこと次のことということでテーマを,机上検討ということではなくて,実際にプラントに役立つ形で技術を継承していくということは非常に重要だと思います。おっしゃるとおりだと思います。

【稲田主査】

ありがとうございました。
大島委員,お願いします。

【大島委員】

2点あります。1点目ですが,最初のところと,あと,最後のまとめのところです。文言的な問題なのかとは思いますが,ループ型高速炉発電システムの成立性を日本で初めて確認ということですが,この成立性というものの定義が少し分かりにくくて。この成立性を確認するために技術的な課題が幾つかあると思います。それを克服することによってこれを確認されたということだと思いますが,それが少し分かりにくいのと,そのために,例えば4ページから個別のところをAからEのカテゴリーで分けていただいて,これらに対しての成果ということで御説明いただきましたが,その関係付けが,個別のものと,あと,やはり原型炉としてこれが,1番に書いてあるいわゆる成立との関係が少し分かりにくかったのかなというのが1点目です。
あと,これも多分難しいことだとは思いますが,このたびのこの研究成果というのは,恐らくここ20年の成果の総まとめという位置付けだと思いますが,そのときに二つほど時間的なチェックポイントがあるという印象を受けています。それが前回の性能試験の平成6年と,炉心確認試験の平成22年だと思いますが,個別の成果のいわゆるタイムラインがどの時点の成果かということが少し分かりにくくて,例えば5ページで示していただいたのは平成6年から7年で,6ページで示されたのは平成22年の試験データということですが,例えば9ページの機器システムの大型機器の製作,これはいつの時点かというのがよく書かれていません。
これを申し上げるのは,恐らく1番目の御質問にもありましたが,やはり時間とともに技術は進歩していくので,それをフィードバックを掛けながら最新の技術としてアップデートされるということだと思いますが,そこがどういう形で技術の発展がされてきて成果に結び付いてきているかということです。なかなか全てに対して言えるものではないと思いますが,それが多分これからということで,例えば10年前のものが,これからに生かされるものなのか,それとも,それがやはり進化していっている過程としてあるということであれば,それが次にもつながるという絵も見えてくるかと思うので,そこら辺も少し整理していただけると,今の成果とこれからということにもつなげることができるのではないかと思いました。以上です。

【家田センター長】

まとめのところと2ページの,成立性を初めて確認というところは,短い中でどう表現するかということで少し丁寧でない部分があります。当然,成立性を完全に確認するためには,100パーセントの性能試験とか運転を進めて完全に成立性を確認できたということが言えると思いますが,ここで書いているのは,少なくとも発電まではできたので,発電ができるというところまでは分かりましたと,そのことを書かせていただきました。表現として正しかったかどうかというのはありますが,そういう意味合いで書いたものです。
それから,それぞれの成果がどの時点で得られたものかということで,そこも少し丁寧に書き切れていないところがあってこのような形になっています。単純に炉心・燃料とか機器・システムという区分けだけではなく,A,B,C,D,Eという区分けをしたのは,そういうところをお見せしたかったものです。Bの試運転・運転の中には,性能試験の平成6年から7年に実施したものと平成22年に実施したものがあります。5ページ,6ページはその辺区分けして書いていますが,そうではない書き方になっている部分もあります。これだけの容量で御説明するという中で,そこは区分けが少しはっきりしていなかったところは申し訳ないと考えています。
それから,製造技術の話は,実際に建設・製造したときの技術についてです。当然どの技術についても次の炉に向けて研究開発が進んでいるので,その進展していく中で「もんじゅ」の平成22年の性能試験で得られたデータを基に,先ほど5ページ,6ページのところで説明しましたが,新しくなった技術について当てはめてみてどうかという確認をしたりして進めているのが事実です。その辺の,どう仕分してどう説明するか少し難しいところもあり,そういう整理になっているということです。

【青砥理事】

少しだけ補足をさせてください。まず成立という意味ですけが,基本的に一つのプラントですから,設計する,それに対する設計評価法が要る,その評価法が妥当であったかという確認が要る,それぞれの設備を造るという段階がある,それぞれの設備がある機能をきちんと提供したか,出したかという確認が要る,そういったものをポイントポイントで潰しながら行っていくことが40パーセントの性能試験の中で行われた。今,家田が申し上げたとおり,最終的にプラント全体として発電することができるというところまでは確認した。なお,当然ながら,家田が言ったように,100パーセントはまだやってないだろうという視点ではそのとおりですが,それぞれの設備が設計どおりの機能をある程度発揮した。そのことは確認できている。流量的には100パーセント流量のところでの確認結果もあるので,基本的な機能要求については確認できたという意味でこの成立といった定義をしていると考えています。

【大島委員】

ありがとうございます。

【稲田主査】

ありがとうございます。この成立性のところは特にここの場では一番重要な論点かなと思っています。恐らくは,まず設備を造って,40パーセント出力までは運転し,そこまでのところは一応成立性を確認しました。発電もしました。その先,何ができていないのかというのは,恐らくはこの次の議題のところで議論されるということと理解しておりますが,それでよろしいですね。

【家田センター長】

はい。

【稲田主査】

大島委員,よろしいでしょうか。

【大島委員】

はい。

【稲田主査】

それでは,ほかに何かありますでしょうか。

【山口主査代理】

よろしいですか。

【稲田主査】

はい。

【山口主査代理】

いろいろこれまでの成果の説明があって,それで,幾つか質問させていただきます。「もんじゅ」と実用化研究開発が車の両輪であるという説明がありました。それはそのとおりだと思いますが,しかし,両者には本質的な違いがあるわけで,実用化研究開発は飽くまで研究であって,いろいろな部分的な試験などを含めて机上で行っていると。一方,「もんじゅ」は実際のプラントがあって動いているという,その違いは非常に本質的であると思います。
それで,まず一つ目の質問は,本日説明いただいた資料は,「もんじゅ」を中心とした研究開発ということで,やはり将来の高速炉の実用化に向けた部分をカバーされた内容になっていると思いますが,まず「もんじゅ」があったからこそという成果を少しクリアにして御説明いただければというのが1点目です。
それからもう一つ,同じく高速炉の実用化という視点では,平成25年のこの作業部会の中で,私から,やはり「もんじゅ」の役割としてナレッジマネジメントが非常に重要だという話をして,報告書にも書いていただきました。本日もそういった話がありますが,こういった成果をやはり次の実証炉にどうやって継承していくかという話は非常に重要で,外国でもこういう長期にわたるプロジェクトの中で悩んでいるところだと思います。具体的なこういう成果を今,日本原子力研究開発機構としてナレッジマネジメント,その中にはいろいろな要素があって,技術とか,運転経験とか,人材とか,あるいは施設のようなインフラとか,いろいろなものがあると思いますが,そういうものをどのように体系的に取り組んでおられるのかというのをお聞きしたいのが2点目です。
あともう1点。この成果の中で,どちらかというと設計・製作といった面中心に説明いただきましたが,この前の報告書の中で,「もんじゅ」の役割ということで,ここでも説明があったとおりで,高速増殖炉としての成果の取りまとめ,これは増殖炉としてきちんと性能が出せて発電できるかということ。それから,廃棄物の有害度の低減とか減容化ということ。それから,高速炉としての安全性の強化があって,これも前回の議論のときに,「もんじゅ」あればこそ安全性の問題に対してきちんと取り組めるのだという議論をしたと記憶しています。 そういう意味では,実は「もんじゅ」の設計の段階で,こういう運転経験の少ないプラントに対して安全性をどう考えるのかということで,極めて先進的だったと思いますが,シビアアクシデントに対する評価とか取組を相当議論してやられていて,今ようやく軽水炉で規制基準の中で書かれたリスク評価なども相当早期に取り組んでいると。それが結果的には,現在国際原子力機関や第4世代原子力システムに関する国際フォーラムで行われている国際的な安全設計クライテリアとかに長い目で見ればつながっているものだと思います。そういうところは,「もんじゅ」の成果として,今の時代的には極めて重要なものだと思いますが,そういうものについては成果としてどう見ていらっしゃるのか。あるいは,ここでおっしゃる研究開発成果というものが,定義というか枠組みを別のもののようにとられていらっしゃるのかもしれませんが,その部分に対するお考えをお聞きしたいというのが3点目です。以上,お願いします。

【家田センター長】

最後におっしゃったところからですが,確かに「もんじゅ」については,設置許可の段階からシビアアクシデントを5項事象として扱ってきており,それが終わった後に,設置許可を受けてからも,日本の軽水炉に先駆けて確率論的リスク評価を実際にレベル2と言えるところまで仕上げてきたというようなところがあります。そこについて例示としては挙げられてはいませんが,確かにおっしゃるとおり非常に重要な成果と言えると思いますし,それについては今も新規制基準対応等で更に発展させているところです。
それから,最初におっしゃった,「もんじゅ」と高速増殖炉サイクル実用化研究開発は両輪ということだけれども本質的な違いがあってということで,ある意味では車の両輪ということを言われてきたと考えています。「もんじゅ」で実際に動かして,それから,性能を実際上げてきて,次期炉につなげていく部分と,「もんじゅ」よりも更に経済性等を上げていくために,机上プラスコールド試験で革新技術を開発していく部分と。そういう意味で両輪と考えられるのかと思います。
それから,「もんじゅ」があったからこその部分をクリアにしてというところです。おおむね「もんじゅ」があったからこその成果をまとめたつもりです。「もんじゅ」のデータを使って高速増殖炉サイクル実用化研究開発等で開発されてきた評価手法を確認したりというところも多少混ざっていますので,「もんじゅ」であったからこそというところがクリアでないと聞こえたかもしれませんが,基本的には「もんじゅ」関係のところでまとめたと考えています。
それから,ナレッジマネジメントについては,回答がなかなか簡単ではありませんが,体系的というか,先ほども申しましたが,実際に「もんじゅ」の設計段階に関わった人たちが徐々に引退していくという状況の中でどうつないでいくかというところで,実際に人材育成という意味では,先ほど申しましたように,シニアの人間と若い人間で,なるべく技術的に苦労する仕事を一緒にさせてつないでいく,発展させていくと,そういう対応をとっているところです。
補足ありますか。

【青砥理事】

今終わったばかりの知財に関しては,16ページに少し書いてありますが,機器故障等のデータを蓄積中と書いてあります。この高速増殖炉機器信頼性データベースというコードですが,これはまだ全く発展途上です。それ以外に今,我々のところで遅ればせながらやろうとしているのは,自分たちが対応した故障データ,ここに書いてある保修票,不適合報告,それから,様々なところで出されるそれらの報告書について,保全計画,保守計画自体も今ようやく作りつつあるところですが,それらを一体化したデータベースを作って,データをそのまま世の中に役立てるように残すという計画をしています。それがまずは,我々が少ないながら運転してきた,そして今,低温停止中ながら実際にはナトリウムは流れている,そういう状態で運転している状態も含めた自分たちの経験を知財化して,データベース化して残しているところです。
ただ,それについては今,IT化を進めている最中ですので,今のままで成果ですとはまだ言えませんが,流れとしてはそのようにしているところで,今その設計が終わったところです。ここに書いてある設計関連図書とかそういったものは,今はばらばらに書類としてあるわけですが,これらを一体化させるということに手を付けているところです。
それから,「もんじゅ」があったからこそというのは,一言で言えば,4ページのAに集約されると思っています。実際に具現化して設計があった,様々な研究開発を実施した,それを「もんじゅ」という一つの形にして,それで,繰り返しになりますが,少なくとも40パーセントまでの性能試験を行い,発電を確認して,これらのものが一体化したプラントとして動くようにできたことを確認したこと,そのことに尽きると思っています。

【山口主査代理】

よろしいですか。

【稲田主査】

はい。

【山口主査代理】

今,私が質問した点は非常に重要だと思っています。「もんじゅ」あればこそというところは,今,青砥所長から少し話がありましたが,実はこういう研究開発をするというのは相当大変なことで,決意をきちんと持たないとできません。私が非常に印象的に思っているのは,アメリカなどでは問題発見・解決プログラムというのが動いていて,要は,実際の運転経験からいろいろな問題を見い出して,それに対応していくというプログラムです。私なんか,「もんじゅ」などは,最初に笠原委員がいろいろトラブル経験という話をされましたが,まさにそういうことが「もんじゅ」あればこそということかなとも思いつつ,実は我々も含めて,こういった原型炉を開発して,それを実用化につなげると。原型炉をどのように安全確保しつつ運転をして,知見を蓄積していくかというのは初めての経験なのですね。ですから,なかなか難しい問題であると思いつつも質問させていただいたのですが,是非広くそういう問題を考えつつ,「もんじゅ」の活用を議論していくことが非常に重要かと思います。以上です。

【青砥理事】

ありがとうございます。今の話で少し意を強くしたのは,遅ればせながらと言いましたが,要は,設計時から今のトラブルを通じたいろいろな故障条件とか,それをどう解決したかといったもののデータベース化はやはり加速させるべきだと思いました。ありがとうございます。

【稲田主査】

山口委員が今,技術継承の話をされましたが,例えば規格基準の話とか,あるいは国際標準の話とかはまさにそういう話なのかなと思っていますので,その辺も強調されてもよいのかと思いました。
それでは,ほかに何か追加で御意見ありますでしょうか。ないようでしたら,次に進めさせていただきます。
次に,議題3,「もんじゅ」を再開した場合に獲得が期待される成果について,に入りたいと思います。初めに,日本原子力研究開発機構から説明をお願いします。

【家田センター長】

では,引き続き,家田から資料3を使って説明をさせていただきます。先ほど説明した別紙の右側の「未取得の成果」のところを少し取りまとめて書いたのが資料3です。私どもが言いたいことは,今までに取られてきた成果というのも非常に多くありますが,今後取得可能,取得していくべき成果もたくさんあるということを説明したいと思います。
1ページです。これも全体を眺めていただくということで,今後の道行きについて,順調に行けばこう進んでいくということを上に書いてあります。まず5サイクルまで運転を実施して,そこで取りまとめて,次を考えていくというのがもんじゅ研究計画の考え方だと思いますが,それに向けていろいろな解決しなければならない,ピンクで示したようなものがあるということで書いています。
期待される成果を総括すると,運転・保守・規制対応等に関するノウハウを獲得する,廃棄物減容・有害度低減に向けての有用なデータを取得する,100パーセントまで実施して,高出力での炉心・燃料の設計検証,機器・システムの健全性確認,ナトリウム取扱技術を進化させていく,運転管理・保守管理手法を確立していく,新規制基準へ適合させていく手法を確立していくということで,これらは次期炉に役立っていくであろうと考えています。
2ページは,先ほどの図と同じものですが,星印の付いているところが違います。このページ以降で具体例について書かれているのが星印の付いたところです。
3ページです。これは資料2にもありましたが,炉心の設計手法に関するものです。右側に「もんじゅ」用に開発された手法から最新の手法につながってきて,それに役立てていくという流れを書いています。今後の成果としては,当然出力上昇試験(100パーセント出力)段階まで実施することにより,炉物理データとして出力特性等が出てくるので,それを解析手法の確認に使っていくということ。それから,本格運転段階では,燃料が燃焼していくので,燃焼特性等の炉物理データを取って,これも手法の確認を進めていくということです。当然,次期炉への展開として,次期炉の炉心の合理的な設計・管理手法の確立に反映していくということになるものです。
4ページは,燃料の健全性の確認です。実際,「もんじゅ」の燃料は今までのところまだほとんど燃えていない状況ですので,燃焼してという話はこれからになっているものです。右側の表で,まずは第1サイクルが終わったところで炉心燃料を取り出して,燃焼初期の照射挙動の確認とか,燃焼初期のアメリシウムの挙動確認ということがあります。次のところ,第4サイクルまでで,最初の許可で得ている64ギガワット日に到達するところで燃料を取り出して,その照射量での健全性を確認する。アメリシウム241の照射挙動を確認するということがあります。ブランケット燃料は5バッチで交換していくことになるので,第5サイクル後に取り出したもので増殖性能を評価するというように進んでいくことになります。
左側にあるように,評価手法の妥当性確認では,外径とか燃料の再分布挙動とか,ここに書いているようなところの妥当性を確認し,設計の妥当性の確認では,燃料の中心最高温度が実際に照射後試験をして溶けていないということを確認するということもありますし,被覆管のひずみを確認するというところで,実際に次期炉の設計基準・設計手法等の整備に反映していくという流れになっています。
5ページです。これはアメリシウムなどを含んだ混合酸化物燃料(MOX燃料)の照射挙動,国際協力で行う包括的アクチニドサイクル国際実証(GACID)プロジェクトを含めて書いています。真ん中の表にありますが,それと併せた形で,第何サイクルまで燃焼したところで取り出して照射後試験をするかということで書いています。M1というのはMOX燃料集合体の照射試験,M2については高次化したプルトニウムのMOX燃料,それから,M3というのはGACIDの先行照射試験ということで,現状ビルドアップしているマイナーアクチニドを含んだMOX燃料,それから,M4に行きますと,これは海外から持ってきたマイナーアクチニド入りの燃料で照射していくことを計画として考えているということです。これは当然,次期炉の燃料設計に反映されていくものです。
6ページは安全の話で,特に高速炉に非常に特徴的な自然循環による崩壊熱除去能力の実証ということです。真ん中のピンクのところに自然循環解析評価手法の開発と書いていますが,上に,いろいろな炉外試験,あるいは「常陽」でも自然循環試験を実施していますので,そういうところから得られたデータ,あるいは下に書いている「もんじゅ」の性能試験のときには,実際に炉心の熱を自然循環で冷やすというところはまだできていません。1次系のポンプをぐるぐる回すことによって,ポンプから発熱させた熱で2次系の自然循環試験を実施したというデータは取れています。
そういうところを反映した自然循環解析評価手法について,右側に書いているように,40パーセント出力,さらには100パーセント出力で,実際に炉を止めて,崩壊熱を自然循環で冷やすという試験をすることによって,実機,今後使っていく自然循環除熱性能,「もんじゅ」自体の性能の実証もありますし,評価手法を検証していくということになります。特に自然循環については,規模が小さい試験装置の中では、ナトリウムが低流量なので熱伝導が支配的になって,なかなか実際のプラントの挙動とは違うような挙動,温度分布がなまされた挙動になってしまうところがあるので,「もんじゅ」のような大きなナトリウムの体系で実施する試験というのは非常に重要,欲しいデータということで,こういうところから確認した手法を次期炉の自然循環解析手法につなげていくということを考えています。
7ページは,運転管理・保守管理を通じて取得する成果ということで,特にナトリウム管理技術(放射性物質の冷却系内移行挙動評価)です。右上に書いてあるように,水素は金属を容易に透過していくということで,水・蒸気系から水素が炉心まで行って,炉心でトリチウムに放射化され,それが系の中にどう拡散していくかというのを評価する必要がありますが,右下に,今までに少し得られたデータと評価した結果をグラフに載せています。
左側の取得済みの成果として,そういうトリチウム,水素の移行挙動を計算するコードを開発していて,それについて性能試験のデータの検証までは実施しているところです。短期間の運転,40パーセント運転でしか得られていないので,今後さらに,性能試験とか本格運転で引き続きこういうデータを取っていって,解析精度の向上を図っていくということです。これによって次期炉のトリチウム,水素の移行挙動の評価手法を検討して,ナトリウム管理技術の高度化に反映していくということになります。
8ページに書いている例は,放射性腐食生成物に関する冷却系内の移行挙動評価です。「もんじゅ」1次冷却系の中で放射性腐食生成物がどういうふうに生成していくのかというような解析,評価をするコードシステムを作っていますが,そのシステムで評価した結果が右のグラフに描いてあります。10年間で徐々に増えていって,飽和していくような傾向があります。それについて下の絵で描いていますが,運転を続けていくとそういうのが増えてきて,実際に1次系配管のいろいろな作業をするときに,作業員の被ばくに影響するということがあるので,これのしっかりした評価をすることが重要になってきます。左側に書いているように,解析コードを作り,「常陽」のデータ等で限られた検証をしているところですが,今後,「もんじゅ」の本格運転でこういうデータをしっかり取ってしっかりした手法にしていき,次期炉のプラントの保守・補修技術の設計に反映するというように進めていく必要があると考えています。
9ページです。これもナトリウム取扱技術に関連するところで,供用期間中検査装置の実機での検証です。この供用期間中検査技術は当然軽水炉と高速炉ではかなり違うところがあり,高温のナトリウムが入った状態で検査するということです。真ん中に三つ書いていますが,原子炉容器回りを検査ロボットで検査する。1次系の主冷却系配管を配管に張り付いたロボットで検査する。それから,蒸気発生器の伝熱管を検査プローブで検査するということです。こういう検査機器については作って,実際に性能試験が始まる前に1度試験を実施していますが,今後供用開始後,「もんじゅ」の放射線が高くなってきた状態の中で高い信頼性が得られるのかということ,厳しい規制体系の中でどんな検査をしていくのかというところを実際に進めていくのが重要なことと考えており,これは当然,次期炉の保全技術の確立に反映されていくということで考えています。
10ページは,定期検査工程の話です。実証炉,実用炉になってくると,定期検査工程がどれだけ短縮できるかというのは,運転の経済性にそのまま利いてくるところです。下に図を描いているように,「もんじゅ」は機器数が多く,また保全計画について,点検間隔等についてまだ合理化,最適化されていないといったいろいろな問題があり,点検期間は実際に積み上げていくと非常に長い期間になってしまいますが,それを右に書いているようないろいろな工夫をして,定期検査を短くしていくということで次期炉の運転経済性を上げていくということが重要です。
当然実証炉向けの設計ではいろいろ定期検査を短くするという検討はなされていますが,そういう定期検査を短くしようとしているいろいろな方策について,本当に実機でうまくできるのか,日本の厳しい規制の中でそういうことが実際にできるのかというところは,実際のプラントで一つ一つ積み上げて,工程短縮できるところを確認していくというのは非常に重要なことだと考えており,繰り返し申しました次期炉の経済性向上に重要と考えているところです。
11ページです。これは保守管理上の不備の対応です。改めてオールジャパン体制等で取り組んできましたが,根本的に保守管理のシステム,保全計画を合理的なものにしていく必要があるということ,それが実際に成果になっていくだろうというものです。左側にループのように描いていますが,保全計画はPDCAを回して良いものに仕上げていくべきものです。下に2番で書いている,これは先ほど青砥が説明した部分の一部分になると思いますが,保守管理システムを構築,整備していくというところで,保守管理業務をシステム化し,実際にPDCAを回しながら,あるいは高速炉「もんじゅ」でどういう劣化メカニズムを考えるべきかというところで,高速炉版の保全計画を最適化していくということで仕上げていく。実際にここで「もんじゅ」で苦労したものが次期炉に役立っていくというふうになると考えています。
12ページです。これも保全プログラムの話です。左側に,保全計画,保全プログラムをどう仕上げていくかという流れが書いてあります。この中でも,先ほど議論があった確率論的リスク評価によって機器の重要度を評価したりというようなことも取り込みながら,劣化モードとか各種の保全データを取り込みながら保全計画を実際によいものに仕上げていくというのが重要です。特に右側に書いてあるように,原型炉,研究開発段階炉の特徴としては,当然軽水炉と異なるプラント仕様ですし,保全対象,保全技術自体が研究開発対象です。もともと原型炉ということで,設計段階で大きな裕度を持っているという状況の中で原型炉,研究開発段階炉の保全はどうあるべきか,必ずしも高速炉に限らず研究開発段階炉について保全はどうあるべきかというところも検討していくべき一つの大きな課題だと考えています。
13ページです。これは重大事故対応についてです。先ほど山口委員から御指摘があったことの部分的なところしか書いてありませんが,もともと5項事象として「もんじゅ」については早くから重大事故について検討しており,あるいは確率論的リスク評価を実際に軽水炉に先駆けて実施するというところで,「もんじゅ」で作り上げてきた解析体系,重大事故の評価手法について,これについてはその後も改良を続けていますが,今後,新規制基準対応について,その評価をして適合性を示していく中では,ここのところをしっかり対応しながら仕上げて次期炉へつなげていくという形になるものです。
14ページです。これも重大事故対応です。重大事故を想定していろいろな運転の手順書を作りますが,重大事故の対応の手順書については,軽水炉と同じような手順もありますが,高速炉特有のものもあり,高速炉特有の重大事故の対応手順を仕上げ,それを実際に運用してみて改善していく。あるいは,新規制基準対応で新たに作らなければならない手順書が幾つかありますが,それを仕上げていくことによって,世界で一番厳しい規制にのっとって,次期炉がそういう重大事故にいかに対応していくかというところの基盤ができていくものだと考えています。
以上,例示させていただきましたが,15ページに書いたように,40パーセント出力運転の途中で中断しているので,残された計画の試験あるいは運転を継続実施していくことによって,運転・保守・規制対応等に関するノウハウを獲得して,あるいは廃棄物減容・有害度低減に向けた照射試験データの取得が期待できるものです。100パーセントまでのデータを取ることで,ここに書いているようなことを実施して,これを次期炉の高度化,安全運転,安全評価,コスト低減につなげていけるだろうと考えています。
説明は以上です。

【稲田主査】

ありがとうございました。議論に先立ちまして,本日御欠席の村上委員から事前に御意見を頂戴しており,机上にその資料を配付させていただいています。事務局から紹介をお願いします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

本日の作業部会の趣旨及び日本原子力研究開発機構作成の資料に対して,本日御欠席の村上委員から御意見を提出いただきましたので配付させていただいています。
ポイントをかいつまんで御紹介します。3点ございます。1点目は,今後「もんじゅ」から期待される効果のうち,「もんじゅ」でしか取得できない技術,言ってみれば,もんじゅ研究計画のA1技術,これがどの程度あるのか示してほしいというコメントが一つ。
もう一つは,「もんじゅ」の位置付けは原型炉であるが,実用化の手前の段階にあるプラントとして社会的にはある程度の経済性も期待されているとの前提の下,「もんじゅ」に追加的にかかるコストとしてどの程度が妥当なのかと。5,400億円プラスアルファなのか,それ以上なのか,それ以下なのか,日本原子力研究開発機構の考え方を聞きたい,コストアップ要因,コストダウンの可能性についての検討状況を教えてほしいとのコメントを頂いています。
さらに,これまでにかかった費用に関連して,建設だけでなく生み出された数々の要素技術には原子力産業にとどまらず広く適用されているものがあることや,研究開発や設計・建設を通じて学んだエンジニアたちの多くがその後軽水炉等の別分野において貢献していることから,全てが無駄だったわけではないとの御意見を頂いています。以上です。

【稲田主査】

ありがとうございました。今の村上委員の御意見に対していかがでしょうか。

【荒井部長】

今,2点御質問を頂いたと思いますので,荒井から,回答させていただきます。
まず1点目の,A1のものがどの程度あるのかについてです。冒頭家田が説明したように,もともとあった1から5という技術領域をAからEという開発のプロセスで切り分けているので,どれがA1でどれがA2なのかと整理ができておらず申し訳ありません。ただし,例えば供用期間中検査も,A1に区分されている原子炉容器用と,A2に区分されている蒸気発生器用,これは過去の技術開発においては同時に進めてきていますので,それをまとめて整理しています。したがって,もんじゅ研究計画の中でどのくらいかということについては,もんじゅ研究計画と基本的にその割合は変わっていません。研究計画の49ページ,50ページに区分されているように,おおよそA1が半分程度,A2が残り4割から4割5分程度と認識しています。この御質問について一声でどの程度かと言われれば,今後期待される成果というものはもんじゅ研究計画で定めた成果のものそのものですので,A1に区分されるものは半分程度はあると考えています。
続いて,コストについてです。この5,400億円は資料1で文部科学省が御説明された資料の8ページにありますが,そもそもそれ以上なのかそれ以下なのかについてはまだまだ精査が十分でありません。特に新規制基準対応について,審査期間がどれくらいかかるのか,これがそのまま運転維持費の年数に係ってくるし,また,工事内容がどれくらいかで新規制基準対応費あるいはそれに係る改造期間なども依存してくるので,新規制基準対応についてプラス要因は見込まれるし,場合によってはマイナス側もあろうかと考えています。
あと,維持費については,年間200億として16年で掛け算をしていますが,この維持費については,当然我々としては保全計画を見直し,そして,点検の合理化を目指さねばならないと考えています。したがって,ここは努力指標としてコストダウンを目指していきたいと考えています。
あと,少し蛇足ですが,売電収入を引いていますが,これは幾らで電気を買っていただけるかに依存するので,不確定です。 したがって,現時点ではやはり新規制基準についての設備検討,対応等が未了なので,非常に不確定な部分が多いと考えています。以上です。

【稲田主査】

ありがとうございました。
それでは,御意見,御質問を受けたいと思いますが,何かありますか。
笠原委員,お願いします。

【笠原委員】

本日冒頭に有馬先生の「もんじゅ」の在り方に関する検討会の成果が紹介され,その中に,ナトリウム冷却高速炉にふさわしい保全の在り方が追求できる業務体制というものがありました。その観点から,今の保全のところ,御説明いただいた資料の12ページです。ここに確率論的安全評価などを使って原型炉の特徴を踏まえた保全を行うと一般的なことは書いてありますが,もうこの段階なので,一般論ではなくてもう少し具体的に示した方がよいのではないかと思います。例えば低圧という高速炉の特徴を使えば,詳細な定期検査ではなくて,連続漏えい監視が有効ということはもう技術的には言われているわけです。そういうことが出てくるのかなと思ったのですが,何か遠慮する理由があるのか,その辺をもしよろしかったらお聞かせいただきたいです。
あともう一つ,関連して,事故対応,安全対応についてですが,もんじゅ研究計画の中でも,アクシデントマネジメント対策は現場,現物がないとなかなかできないということで挙がったと思いますが,これも今回資料に余り出てこなかったのですが,簡単で結構ですので,計画があれば御紹介いただけますでしょうか。

【荒井部長】

保全については,御紹介は時間の関係で省かせていただきましたが,12ページの右下に保全重要度の設定の考え方,研究開発段階炉の場合の保全重要度の設定というのはこういうやり方もあるのではないかということを日本原子力研究開発機構で報告書としてまとめて提案したものを御紹介させていただいていますが,今,笠原委員がお話しされた,低圧系を踏まえた連続漏えい監視を重視したアイデア,これは先日原子力学会の秋の大会でも新型炉部会で取りまとめて御提案いただいたところです。そういう方向も視野に入れつつ,一方で現行の保全プログラムがあるので,これを外部のいろいろな知見を踏まえて着実に改善していくところです。まだ改善に至るところまで来ていないので,今回の資料には入れませんでした。
アクシデントマネジメントについては,14ページは実はシビアアクシデントマネジメント策の一つとして,本来は今後やるべきことを載せるのがよいのでしょうが,新規制基準対応でどういう設備を設置するのかというのがまだ明確になっていないので,今ある手順として,これは東京電力福島第一原子力発電所事故が起きた直後に緊急安全対策で整った全交流電源喪失時の運用手順書を一例として紹介させていただきました。ただし,これを実際には今は現場で運転員とか保守員が訓練をしながら,その時間も計りながら改善しているところです。アクシデントマネジメント策というのは,現場でどのようなものが対応できるのかということを訓練などを通して改善していくこと、これがまさに「もんじゅ」の仕事だと考えています。以上です。

【笠原委員】

感想だけですが,「もんじゅ」の在り方に関する検討会の高速炉にふさわしい保全の在り方が追求できる業務体制というのは,そこをもっと加速しろという言葉ではないかと,私はそのように思っています。以上です。

【稲田主査】

ありがとうございました。もう1件あればお受けしたいと思いますが,いかがでしょうか。
永井委員,お願いします。

【永井委員】

短く一つだけ。ここに書かれているのは,期待される成果ですが,先ほどコストの話などもいろいろ出てきました。タイムスケジュールが何もここには入っていないのですね。それはたしか3年前までで十何回行ったもんじゅ研究計画作業部会でもいろいろ議論があったと思うので,できればそれも反映した上で,どのくらいでこれができるのか,物によって違うと思いますが,そこも反映していただければと思います。

【稲田主査】

日本原子力研究開発機構,何かありますでしょうか。

【荒井部長】

研究計画の中では5サイクルまでにどのくらいかということを決めていただいていました。先ほどの5,400億については,文部科学省の資料で恐縮ですが,最後のシートに,100パーセント出力を踏まえて第5サイクルまでトータルでこれから準備,工事も含めると16年間という数字があるので,今の御質問にお答えするとすれば,改良工事が何年かかるかというのもありますが,運転を再開してから第5サイクルまでこのくらいの期間を要するというのが答えになろうかと思います。

【稲田主査】

よろしいでしょうか。ありがとうございました。
もう1点,よろしければ。

【山口主査代理】

本日いろいろお話を伺って,非常にたくさんの成果が紹介されて,今後に向けての見通しも示されているのだと思います。それで,実はもんじゅ研究計画を作ったときというのは,エネルギー基本計画ができる半年前で,平成25年9月であったと思います。それからエネルギー基本計画の中で3EプラスSということが改めて書かれて,それで,今,「もんじゅ」を振り返ってみると,「もんじゅ」の研究の目的を踏まえれば,高レベル廃棄物の減容等を入れ込めば,まさに3EプラスSを実現するプロジェクトなのだなということを改めて感じました。
ただ,もう一つ,前の報告書のときに前提条件を二つ書いています。一つは保全プログラムの話,もう一つは新規制基準の話。実はここのところが少しも進展してないなというのをこの3年間感じます。では,どこに問題があるのかということを考えると,やはり保全プログラムも規制基準も,それから,本日シビアアクシデントマネジメントの話もありましたが,高速炉に適したそういうものはどこなのかという議論がやはり進んでないのだなということを改めて感じました。
本日最初に田中局長から,技術的な視点から評価をしてというお話を頂きましたので,今の点を踏まえて考えてみると,技術的な視点ということで,先ほどの3EプラスSということを踏まえた高速炉の意義を考えた上で,やはりその周りの制度上の問題が空回りしているようにも思います。その中で,本日の議論でも再三出てきたところは,やはり軽水炉と大分違うのだと。であるとすれば,新型炉,高速炉に適したそのような保全プログラムとか規制基準とか,そういうものをもう少し真摯に捉えて追求していくべきではないかということを改めて感じました。以上です。

【稲田主査】

ありがとうございました。何か上手にまとめていただいたように思います。
それでは,最後,まとめに入りたいと思います。本日は,基本的には,日本原子力研究開発機構から,これまでに「もんじゅ」で得られた成果と,それから,「もんじゅ」を再開した場合に獲得が期待される成果について御報告いただきました。また,これらについて委員の皆様からいろいろな御意見を頂いたということです。主査として本日の議論を整理させていただくと,次のとおりになるのではないかと思っております。
まず,「もんじゅ」を中心とした高速炉開発に関する研究開発成果や,「もんじゅ」の運転を通じて取得可能な高速炉関連技術の内容についてはおおむね妥当であるという合意がなされたのではないかと思っております。特にこれまでの成果について申しますと,まず1番目として,国内技術に基づいて設計・製作及び建設がなされたこと,40パーセント出力運転まで行われているということは,我が国の高速炉発電システムに係る設計手法や製作技術の基盤を確立し,高速増殖原型炉の発電プラントシステムを成立させるための基盤技術を獲得したという点では重要な成果であったであろうと思います。
それから2番目として,実証炉以降の将来炉においても適用可能な新たな保守,修繕技術あるいは安全技術が獲得されたということです。また,様々なトラブル,事故によって稼働時間が短かったということは残念なことではありますが,これらトラブルへの対応等により,将来炉につながる数多くの成果,知見を獲得できたのではないかと思います。
それから3番目に,高速炉に係る安全基準に関する国内外の議論に対しても,「もんじゅ」で得た重要なデータ,知見が生かされているということです。
これらのことが得られた成果として挙げられるのではないかと考えている次第です。
また,「もんじゅ」が再開された場合には,「もんじゅ」の運転・保守を通じた将来炉に活用可能な新たな知見,ノウハウを獲得できるであろうということ,加えて将来炉の稼働率向上に資する高燃焼度燃料や保守・点検技術等の技術の獲得,廃棄物減容や有害度低減に向けての有用なデータの獲得,高速炉に係る安全基準に関する国際的な議論への貢献が見込まれるので,これらはいずれも将来炉の実現に向けて重要なものと言えるのではないかということです。
一方で,「もんじゅ」については,新規制基準の反映等により,運転再開までに従前の想定を大幅に上回る時間とコストがかかる見込みであるということも分かってきました。このため,今後我が国の高速炉開発の方針に係る議論に当たっては,これらを踏まえた検討が行われる必要があるのではないかということです。
今申し上げたような点を本作業部会の所見として取りまとめたいと思います。また,本日ほかにもたくさん貴重な御意見がございましたので,その辺追加修正をさせていただいて,改めて所見案について委員の皆様に電子メール等を用いてお諮りさせていただいた上で,最終的に私に御一任いただければと思っておりますが,いかがでしょうか。

【委員一同】

異議なし。

【稲田主査】

ありがとうございました。そのように進めさせていただきます。
本日予定されている議題は以上です。事務局より事務連絡があれば,お願いします。

【次田「もんじゅ」の在り方検討室企画官】

稲田主査,どうもありがとうございました。
事務局から事務連絡させていただきます。本日の作業部会の議事録については,事務局で作成させていただいた後,委員の先生方に照会させていただき,その後に公表させていただきます。

【稲田主査】

それでは,以上で本日の検討会を閉会といたします。ありがとうございました。

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研究開発局原子力課核燃料サイクル室

(研究開発局原子力課核燃料サイクル室)