宇宙開発利用部会(第44回) 議事録

1.日時

平成30年11月29日(木曜日) 16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省 3階2特別会議室

3.議題

  1. 宇宙開発利用部会の活動内容の改定について(活動法施行に伴う調査・安全小委員会の審議内容等の改訂)
  2. 金星探査機「あかつき」(PLANET-C)の定常運用終了とプロジェクト終了審査の結果について
  3. H3ロケットの開発状況について
  4. その他

4.出席者

委員

部会長    白石 隆
部会長代理 青木 節子
臨時委員  井川 陽次郎
臨時委員  芝井 広
臨時委員  白井 恭一
臨時委員  永原 裕子
臨時委員  松尾 亜紀子
臨時委員  安岡 善文
臨時委員  油井 亀美也
臨時委員  横山 広美
臨時委員  吉田 和哉
臨時委員  米本 浩一

文部科学省

研究開発局宇宙開発利用課企画官  有林 浩二
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 佐々木 裕未
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 岡屋 俊一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
宇宙科学研究所
理事補佐 	倉崎 高明
 太陽系科学研究系 教授 中村 正人
第一宇宙技術部門
理事 布野 泰広
H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史

5.議事録

【白石部会長】  それでは,宇宙開発利用部会の第44回の会合を開催したいと思います。
 まず,事務局のほうで人事異動があったとのことですので,御紹介をお願いします。

【事務局(有林)】  山之内の後任で,10月2日付けで宇宙開発利用課の企画官に着任しました有林と申します。本日の事務局を務めます。今後ともよろしくお願いいたします。

【白石部会長】  どうもよろしくお願いします。
 では,最初に,事務局のほうからきょうの会議について事務的な確認をお願いします。

【事務局(有林)】  それでは,本日よろしくお願いいたします。
 宇宙開発利用部会に所属されていらっしゃいます17名の委員のうち,現在12名の先生方に御指出席いただいております。運営規則でございます定足数の過半数を満たしております。
 次に,本日の資料について確認をさせていただきます。お手元に,座席表の次に議事次第を配付させていただいていると思いますけれども,そちらの4.資料というところに,資料44-1-1から資料44-3まで全てで4点の資料がございます。過不足等ございましたら,事務局にお申し付けいただければと思います。
 また,本日予定されております3件目のH3ロケットの開発状況についてでございますが,こちらにつきましては,H3ロケットの打上げ及び国際競争に係る機微情報が含まれている関係で,運営規則第3条の定めにのっとり,当該部分の審議及び議事次第の4.で付しております別添の資料につきましては,非公開とさせていただくことを事務局より提案させていただきたいと思います。
 事務局からの説明は以上でございます。

【白石部会長】  どうもありがとうございました。
 今の事務局の提案についてですが,提案どおり,議題(3)の審議と資料の一部は非公開とすることでいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

(「異議なし」を確認)

 ありがとうございます。それでは,そのようにさせていただきます。

(1)宇宙開発利用部会の活動内容の改定について

【白石部会長】  それでは,第1の議題ですが,宇宙開発利用部会の活動内容の改定についてでございます。
 これについて,事務局のほうから説明をお願いいたします。

【事務局(有林)】  事務局のほうから議題(1)につきまして,御説明をさせていただきます。
 まず,お手元にございます資料44-1-1と44-1-2を御覧いただきたいと思います。こちらが今回の改訂ですが,今月15日付で宇宙活動法が施行されまして,その中でロケット及び人工衛星等の運用に関しての事前の審査が,これまでロケットの打上げに関しましては当利用部会のもとで行われていたのですが,これらの業務自体が内閣府に移管されましたので,それに伴いこちらの審議事項等を修正させていただく次第でございます。
 まず,44-1-1を御覧いただきたいのですが, 2枚構成になってございまして,2枚目が別添資料で,これまでの審議事項になります。3ページ目の別添の添付資料を御覧いただきたいのですが,今申し上げましたように,こちらの調査事項の2.のJAXAによる安全対策の評価というところで,(1)といたしまして,H-ⅡAロケット,H-ⅡBロケット,イプシロンロケット等の人工衛星の打上げに係る安全対策ということで事前審査をいただいていたところですが,こちらのほうが完全に内閣府に業務移管されましたので,こちらを削除させていただいております。
 内閣府のほうが基本的に打上げに係る安全に対して事前審査を行いますが,一方で文科省としましては,もし仮に重大な事故が起こった場合,内閣府の観点としては安全対策にのっとってそれが適切に行われていたかどうかという形で調査をするわけですが,実際それが、技術的に何が問題であったのか,その問題をいかに解決して,その次につなげていくのかというリカバリーの観点は活動法の範疇にはなりませんので,そこは引き続き当部会で審議いただきたいということを考えております。それを明示する観点から,2ページ目の一番後の重大事故の調査というところにつきまして,事故等の原因,技術課題及びその対策について調査審議をするというところに,これまでは「原因究明とその対策」と書かれていたのですが,技術課題という形で,この部会の位置づけが技術的な部分だということで,明示させていただいております。
 以上が44-1-1の修正になります。
 続きまして,44-1-2でございます。こちらは,部会の審議事項の修正を受けまして,小委員会のほうで行っていた内容の修正ですが,まずは3ページ目の資料34-3-2を御覧いただきたいと思います。
 調査事項が2.というところに書いてございます。2.の(1)で安全対策の評価というところがございますが,こちらの(a)がH-ⅡAロケット,H-ⅡBロケット,イプシロンロケット等による人工衛星等の打上げに係る安全対策の評価となっていましたが,先ほど申し上げましたように,活動法の施行に伴いまして内閣府のほうに移管されるということで,こちらの事項を削除しています。
 また,(b)のHTVにつきましても,これまでは接近,係留,離脱フェーズ,再突入ということでありましたが、内閣府の活動法で,衛星につきましては衛星の宇宙環境への影響について事前審査をする関係で,HTVがISSにアプローチするフェーズと,離脱するフェーズにつきましては,内閣府の事前の審査の対象になります。こちらにつきましては,接近,離脱フェーズ,再突入というところが内閣府に移管されております。
 一方で,係留されているフェーズですが,こちらにつきましては,宇宙空間に影響を及ぼさないということで内閣府の審査対象外になり,引き続きこちらの部会で御審議をいただきたいと考えております。従いまして,(1)にありました安全評価のところは,ロケットの部分と接近,再突入の部分が落ちたわけですが,3ページの(2)の重大事故に係る部分につきましては,引き続き当小委員会のほうで審査をしていただきたいと考えております。
 それを修正したものが1枚目になります。順番につきましては,先ほど申し上げた(1)と(2)がちょっと分量が変わった関係で,(2)のほうを先に持ってきまして,(2)の重大事故を,新しい1枚目の1ページ目の2.調査事項の(1)に「重大事故・不具合等の原因,技術課題及びその対応策」ということで,先ほど申し上げたロケット,衛星,ISSの運用等について重大事故の場合,技術的な部分につきましてはこちらの小委員会において引き続き御検討いただきたいと思っております。また,(2)の安全対策につきましては,先ほど申し上げましたように,ロケットの部分とISSの一部部分がなくなりましたので,それらを除いたものを, (a)の記述でまとめさせていただいています。
 次に,2ページ目に移らせていただきまして,3.に「調査の進め方」ですが、従来の紙では(2)の安全対策の評価のみが書かれていましたが,今回 (1)につきましては,全ての表現を新規でこちらに記載をさせております。具体的には,もし重大事故等が起こった場合には,JAXA等からその原因等について報告を受けるとともに,その原因報告に基づいて今後のロケットや人工衛星等の開発に反映すべき技術課題があれば,そちらについても検討させていただきたいというふうに考えております。
 なお,仮に事故が起こった場合,内閣府の調査委員会とこちらの調査委員会の調査内容が重複する可能性が想定されます。そのような場合には,効率的な審議を行うという意味で,内閣府と適宜協力をしながら進めていくことを考えていますので,その旨4行ほど小さな文字で書かせていただいています。
 以上が審議事項についての資料の修正でございます。

【白石部会長】  どうもありがとうございました。
これは,ここの設置についてまだ案でしょうが,平成30年11月29日改定となっているので,認められればきょうから効力を発揮するということですね。

【事務局(有林)】  はい。

【白石部会長】  有効期限は来年の2月14日までですか,そういう理解でよろしいですね。

【事務局(有林)】  はい,おっしゃるとおりです。

【白石部会長】  この提案について,いかがでしょうか。
 はい,どうぞ。

【芝井委員】  重大事故かどうかの定義に関してなんですが,今の34-3-2を見ますと,例えば「第三者損害の発生,ロケットの指令破壊等」というふうに従来は書いてあったのですが,新しい文章のほうにはその説明も書いてないような気がしますが,重大かどうかの定義は明確になっているのでしょうか。

【事務局(有林)】  重大事故の定義につきましては,所定の軌道への衛星投入の失敗,またはロケットの指令破壊や推力の停止,またはそれに伴う第三者損害等の発生ということで一応考えてございます。

【芝井委員】  明文化はされているのですか。

【事務局(有林)】 今御指摘の点につきましては明示するという観点で,御指摘の点を踏まえまして定義を追加する形で修正をさせていただければと思います。

【白石部会長】  これを修正するということですか。

【事務局(有林)】  はい,こちらのほうにつきまして,従来の9月9日付のほうで,重大な事故につきましては,第三者損害発生とロケットの指令破壊というふうに例示が書いてありましたので,そちらを追加させていただきます。

【白石部会長】  それでよろしいですか。
 ほかに何かございますか。どうぞ,青木委員。

【青木部会長代理】  ありがとうございます。
 係留の始点と終点と言いますか,係留の定義はどのようになっているのでしょうか。係留だけが本小委員会のほうに残るということからの質問です。

【事務局(有林)】  そこのところにつきましては,恐らくつながってハッチが開いてからだと思っているのですが,実際にこちらで審議いただくときに,現実的には係留よりも前のフェーズの情報もないと審議ができないと考えておりますので,我々としては,HTVにつきましては,打上げから全ての流れを一応説明した上で,ハッチが開いてから閉じるまでの部分を,中身として御審議いただきたいと考えております。

【白石部会長】  それでよろしいですか。

【青木会長代理】  ありがとうございます。

【白石部会長】  ほかに何かございますか。はい,どうぞ。

【米本委員】  そもそも宇宙活動法というのは,商業用ロケットを打ち上げるために作られた法律と考えていましたので, H-ⅡA,H-ⅡBやイプシロンロケットもそれに該当するので,内閣府に移管ということなのでしょうか。

【事務局(有林)】 今後まさに民間のサービスが増えまして,現在JAXA又はMHIだけで実施しているようなところに,様々なプレイヤーが今後生じてくるだろうということで,全ての可能性のあり得る人たちに対してもしっかりと審査ができるようにという形での法制としております。その法制ができたことで,これまでのJAXAとかMHI等につきましても,全てまとめて同じ許可を受けるというような形になっております。
 ただ,活動法では,一般のこれから参入する方が受ける事前許可の手続と,既にもう打上げの実績を持っているJAXA等が受ける審査手続については,後者のほうが簡略化できるようなスキームになっています。枠組みとしては全て同じ枠組みで実施するのですが,これまでやっていた事業者とこれから参入する事業者については,審査の軽重がつけられるというふうな仕組みになっています。

【米本委員】  これまでJAXAが策定してきたロケットの安全性基準等の一連の設計基準は内閣府に移管されるのですか。

【事務局(有林)】  そういう意味で,内閣府で審査基準をつくるときには当然,JAXAも含めた専門家の方で基準をつくるというような形で法制化されておりますので,そこにつきましては,これまでのノウハウも引き継がれた上で,基準が作成されているという状況になっております。

【米本委員】  しかし,書類だけ移管されても不十分で,人的な組織が内閣府に組織されないと設計や安全審査等が機能しないのではないですか。

【事務局(有林)】  そこにつきましては,内閣府とも事務的にこれまでのやりとり等共有させていただいておりますし,また,内閣府でも有識者をしっかりと組織しまして審議が行われているものと思っております。先生の御懸念の点につきましては,こちらのほうから内閣府事務局には伝えたいと思いますが,今の法的な枠組みとしては,内閣府においてしっかりと十分な審査ができる体制というものは,我々としても構築されていると理解しています。

【米本委員】  内閣府の中に新しい組織ができて,文部科学省等から人的な異動を行う形で宇宙活動法に対応していくという理解でよろしいでしょうか。

【事務局(有林)】  そういう意味で,内閣府につきましては,活動法自体が15日に施行されておりますが,既にその活動法の施行に先立って,まさに許可をするための基準等の作成がされております。宇宙政策委員会の下に基準をつくるための委員会を設置しまして,そちらのほうでもう既に許可する基準は,これまでのものも踏まえた上で審議が行われ,体制として確立されているというところでございます。
 ただ,先ほど申し上げましたように,審査をする観点が,内閣府の場合ですと,活動法にあります安全性の確保と,宇宙環境への問題が生じないかどうかというところが一番の問題になっていますので,例えば指令破壊をした場合に,その指令破壊が計画どおりに行われていれば,活動法上は手続どおりされたということになるわけです。一方でここの小委員会の立場としては,それはなぜ計画どおりに打ち上がらなかったのかという技術的な部分を見ていただきたいと考えております。今までこちらの利用部会のほうでやっていた審査の内容が,全く同じ観点で内閣府が審査をしようとしているわけではなく,内閣府は活動法の中の安全対策等に従って,新しい考え方に従って審査を行う体制になっています。

【米本委員】  釈然としないのは,重大な事故だけ文部科学省が対応するように審議を振られても,その開発の過程で安全性をどう評価したかということに関与してないとわからないと考えるからです。それから,先ほど質問があったように係留の前後関係で,所掌が内閣府なのか文部科学省なのかを微妙に切り分けることができるのか理解できません。

【事務局(有林)】  前者のほうにつきましては,実際に事故が起こった場合には,しっかりと事前の説明も含めて,こちらから先生方のほうに情報を共有させていただくように努めさせていただきたいと思います。
 また,係留等につきましては,御指摘もっともだと思いますので,そこは先ほど青木部会長代理からも御指摘ございましたように,切り分けの難しさ等もございますので,一連の流れの中で見ていただくというような形をとらせていただければと考えています。

【白石部会長】  よろしいですか。正直言って今の議論というのは多分我々のこの委員会の権限を超える議論なので,ここで何を決めても,法律ができてしまうとどうしようもないところはございます。

【米本委員】  私の質問の意図は,法律ができても,それをどう具体的に施行運用するかということに対する疑問点のつもりです。

【白石部会長】  そこの所掌の分担というのはもう既に政府として決めたわけですよね。ですから,それを私は申し上げているのですが。必ずしも納得できるかどうか,これは別な話ですが,部会長として申し上げますと,残念ながら我々の所掌の外の話になるだろうということです。
 よろしいですか。
 はい,どうぞ。

【米本委員】  私の発言を議事録に残していただければ結構です。

【白石部会長】  それは重要ということでですか。

【米本委員】  正しいやり方ができてないのではないかという発言を議事録に残していただければと思った次第です。

【白石部会長】  じゃ,そこはそういうことでよろしくお願いいたします。
 ほかに何かございますか。
 では,この新しい宇宙開発利用部会の調査審議のあり方につきましては,今の提案どおりでよろしいでしょうか。

(「異議なし」を確認)

 どうもありがとうございます。
 それでは,議事録の作成は注意をして,よろしくお願いいたします。

(2)金星探査機「あかつき」(PLANET-C)の定常運用終了とプロジェクト終了審査の結果について

【白石部会長】  次は,2つ目の議題,金星探査機「あかつき」(PLANET-C)の定常運用終了とプロジェクト終了審査の結果についてでございます。
 JAXAは,プロジェクト活動結果等について経営的視点から確認し,プロジェクト終了後,妥当性を判断するためにプロジェクト終了審査を実施いたしました。宇宙開発利用部会では,JAXAが実施した評価結果について報告をいただき,調査審議を行うこととなっております。今回はこのプロジェクト終了時に実施する事後評価についてでございます。
 これについて,JAXAから説明をお願いします。

【JAXA(倉崎)】  本日,宇宙研所長の國中理事に別件がございますので,代わりに理事補佐の倉崎が出席させていただいております。
 今,部会長のほうから御説明があったとおりの位置づけでございまして,JAXAとしてこの8月にプロジェクト終了審査を行いましたので,ここで報告させていただくものでございます。
 資料44-2の3ページ目にこれまでの流れが簡単に書いてございますが,事前評価としましては,フェーズAとBの間の計画決定から基本設計に至るところで,この宇宙開発利用部会の前身であります宇宙開発委員会の推進部会に御報告させていただき,評価をいただいた上で運用が進み,フェーズEのところの定常運用が終了しました。JAXAとしてプロジェクト終了審査を行って,この部会の事後評価をいただくという位置づけでございます。
 内容につきましては,当時プロジェクトマネージャーをしておりました中村から,詳細について御説明をさせていただきます。

【JAXA(中村)】  資料44-2に基づき説明を行った。


【白石部会長】  これについて,何かございますでしょうか。
 はい,どうぞ。

【永原委員】  御説明,ありがとうございました。
 まず,本来,科学衛星ということなので,やはり学術的成果を結果の1番に論ずるべきではないかと思うところです。確かに軌道投入の失敗はあったし,その後リカバリーもして,衛星の運用としてはそれなりの成果,それから,JAXAとしてはいい経験を積んだという要素はありますが,科学衛星ですから,学術的成果を第一に述べないわけにはいかない,というのが一点目です。
 次に,軌道投入実験が遅れたことによる影響はリカバリー可能の範囲というのは,何のことかちょっとよくわからないのですが,科学的な成果の重要性としては,従来知られていなかった重力波構造の観測についてもう少し明確に主張されるべきではないかと思います。ただし,重力波という言葉については,一般には宇宙物理で重力波のことしか知られていませんので,ていねいに説明すべきではないかと思います。
 そのことはまとめの2番にかかわってきます。学術的成果や外部評価を受け,その妥当性を認定されたとのことですが,どのような意味なのか,ただ今の御説明との関係においてもクリアでないので,文言をぜひ工夫をいただきたいと思います。

【JAXA(中村)】  では,お答えいたします。
 まず,1番目でございます。きょうの説明は,「あかつき」の定常運用終了とプロジェクト終了審査の結果についてということで,主にこれはJAXAの内部における終了審査,つまり探査機が適切に運用されたかどうかという経営的審査の御報告でございます。永原先生が言われたような科学的審査に関しましては,昨年,所内で審査を行いまして,これは3月に終了しておりますが,そこでは科学的成果を十分に目指して認定されております。
 それから,大気重力波が非常に目を引くということは確かですが,実はもっと大事だと思っておりますのは,やはり大気の三次元運動でございまして,違うほうで違うような流れがある。そして,これらのデータを長いこと捉えて調べていくことによって,角運動量がどの部分がどの部分に三次元的に予想されていることがわかります。そして,熱潮汐波であるとか幾つかの仮説があるわけですが,メカニズム,それらがどのように効いているかということを定量的に評価すること,それが「あかつき」の最初の目標でございますので,そのことについても我々は鋭意論文を用意しておりまして,JAXAとして結果をお見せできれば大変ありがたいと考えております。
 以上です。

【永原委員】  よろしいでしょうか。

【白石部会長】  はい,どうぞ。

【永原委員】  確かにここの審査は終了審査ということかもしれませんが,公開の宇宙開発利用部会ですので,この場で学術の側からきちっと,科学衛星としてこういう成果が出ましたということを明確に述べることは必要なことだと思うわけです。重力波ではなく三次元何とかというお話も,そうであればやはりその点を明確に述べることは必要と思います。特に今後の延長にもかかわってきますので,科学衛星に対する社会的な評価ということは重要な意味を持つのではないかというのが私の申し上げたかった点です。

【白石部会長】  ほかに何かございますか。
 はい,どうぞ。

【横山委員】  御説明,ありがとうございます。
 軌道投入失敗の際も,プロジェクトマネージャーをはじめとする皆様の御対応が非常に優れていたというふうに拝見しています。メディア等も応援をしており,そういう雰囲気の醸成に非常に成功し,失敗の中でそうした面にも非常に気を払って注意深く運営され,国民の応援を得ていったプロジェクトだと思いまして,そうした対応が非常にすばらしかったという記憶が強く残っております。
 お伺いしたいことは,後ろの参考資料で,きょう御説明されなかったところにあるのですが。例えばASTRO-Hの運用であるとか,「はやぶさ」であるとか,いろんな知見を同時期に蓄えられていて,ISAS内あるいはJAXA内でどういうふうに共有して展開していったのかという点について,もし補足説明があればよろしくお願いしたいと思います。
 以上です。

【白石部会長】  はい,どうぞ。

【JAXA(中村)】  最初の部分に関しましては,大変うれしいお言葉をいただきまして,ありがとうございます。我々は,金星探査機を打ち上げる前からメディアの方々には十分説明をしまして,常に正確な情報を伝えるようにしてまいりましたので,その結果,2010年に失敗したときも,「あきらめるな」という声を皆さんからいただいたと思っております。
 それから,ASTRO-Hの運用異常を踏まえた考察は30ページから37,38,39とございますが,実際にASTRO-Hの失敗があったのは,我々の探査機が定常運用を始めた後に起きておりますので,後追いの考えでしかないのですが,特にASTRO-Hで指摘されたように,たとえばプロジェクトマネージャー1人で全てを決めるのではなく,私の下にプロジェクトサイエンティスト,プロジェクトエンジニアという,サイエンスと工学を分担するマネージャーがおりまして,それらの者たちがさらに下の人間と議論をして,その意見を集約して,どのようにするかということを話し合って決めていく,ある意味では民主的な形をとれたところはよかったのではないかと思っています。
 また,静止行動の姿勢に入ったことに関しましては,実は探査機の設計の当初,最初の1年で非常によく検討するべきことがあったのですが,「ひとみ」はすぐに設計に入ってしまったのが残念だったのですけれども,「あかつき」の場合には,これをプロジェクトエンジニアの石井がしつこいぐらいにこだわりまして,なるべく危険コースに入らない、危険なことになるべく陥らせないで衛星を救うという方法を2年も3年もかけて議論をいたしました。そういった最初の2001年から2004年ぐらいの検討がやはり効果があったのだと思います。
 失敗したことは,「はやぶさ」とか「のぞみ」の失敗を乗り越えて,我々はそれを全部つぶしてやってきたわけで,我々の中では優等生だと思っていたのですが,残念ながら「はやぶさ」でも「のぞみ」でも重力惑星への逆噴射による軌道進入ということはやっていなかったわけで、この部分で我々に油断があったと考えております。つまり,半年間,探査機の推進系をそのままにしておいた場合に塩が吹いてしまうような現象に思い至らなかった。地球のそばであれば1週間もすれば装置を使うわけで,問題が露呈しなかったわけですが,それを半年そのままにしておいたら不具合を起こすということは,惑星探査機のノウハウであろうとは思いますが,そういったところに思いが至らなかったということは我々の反省材料でございます。
 以上でございます。

【白石部会長】  ほかにございますか。
 それでは,まず安岡委員,それから芝井委員。どうぞ。

【安岡委員】  11ページにサクセスクライテリアの表がありまして,サクセスクライテリアは,打上げ前のサクセスクライテリアと,再起動をした後のサクセスクライテリアがあるのですね。再起動投入した後のサクセスクライテリアがここで認められたという記述があるのですが,当初のサクセスクライテリアが,周期が延びたことによる科学的な問題点,観測の問題点ということは,既に以前の利用部会で承認されていると考えてよろしいでしょうか。

【JAXA(中村)】  はい,宇宙開発委員会で事前に評価をしていただいておりました。それから,この失敗した後にも,2011年に宇宙開発委員会で原因と将来どうするかということが議論されております。

【安岡委員】  そうすると,これは文科省さんにお伺いしたほうがいいのか,部会長の白石先生にお伺いしたほうがいいのか,ちょっとわかりませんが,ここでの審議はあくまでも終了審査,つまり再投入した後の審査をすればいいということですか。

【白石部会長】  そうです,そういうことです。
 はい,どうぞ。

【芝井委員】  長い間どうも御苦労さまでした。科学的なことに関して期待も込めて少しコメントがあります。
 これは大気の運動に関してかなりユニークで新しいデータを取得されているのですが,ここから学術的知見を出そうとした場合に,コンピュータシミュレーションなどがとても重要ではないかというふうに思います。実際,地球大気はスーパーコンピュータを使ってすごく細かい研究ができますけれども,惑星気象学の分野でも世界的にはそういう研究は随分進んできていると思います。私の聞く範囲によりますと,日本では残念ながらその分野の研究者があまり多くないと聞いておりまして,「あかつき」の知見を生かして学術的知見を導くという意味では,そちらに力を入れていく必要があるのではないかと,ちょっと部外者なので的外れかもしれませんが,思っております。
 それから,もしそういうことができますと,太陽系ではない遠くの惑星でも大気の観測はもう数十例出てきておりますので、この金星あるいは木星の大気の知見というものが,将来的にはそういう遠方の惑星に生かされるのではないかという期待があります。ぜひそこまで見て御検討を進められれば良いのではないかと思います。
 以上です。

【JAXA(中村)】  芝井先生,ありがたい御提言ありがとうございます。
 まず1番目に関しましては,確かに惑星の大気のシミュレーション等は,実証的にそれが正しいかどうかということがわからなかったために,あまり世界的にもやられていなかったのですが,近年,慶応大学とか神戸大学,それから理研等において,そういったシミュレーションが,具体的にはAFESという名前のシミュレータが動き始めまして,それらの研究者がだんだんと増えてきて裾野を広げています。さらにはデータ同化の手法を取り入れまして,この金星で,データ数は少ないのですが,金星の大気の中で角運動量がどのように分解されて,輸送されているかということが明らかになってきつつあります。
 それから,2番目のほかの惑星ですね。確かに芝井先生が言われるとおりで,大気の運動を調べますと,実はスーパーローテーションしている大気と,スーパーローテーションしない大気では,温度の分布にかなりの違いがあると考えられているわけですね。実際に惑星の大気のデータを調べますと,この惑星はどうも地球型じゃなくて,スーパーローテーションしているのではないかと言われる惑星が幾つも見つかっておりますので,そういった研究ももう既に始まっているということで,これからの研究の発展に期待を持っております。
 以上です。

【白石部会長】  ほかに何かございますか。

【米本委員】  もう一点質問があります。

【白石部会長】  はい,どうぞ。

【米本委員】  この衛星計画,観測計画の当初の目的が再投入後の時点で変わってきたことについて,科学的に当初求めたかったものと,再投入した後に求めたいもの,それまでに得られたものという形で,先ほどの永原先生の質問に通じるところがあるのですが,このような形で皆さんにご説明いただきたいと思います。

【JAXA(中村)】  非常に端的に言ってしまいますと,今まで金星大気がそういうふうにスーパーローテーションするということに対しては二つの仮説が唱えられていたのです。一つ目はギーラッシュメカニズムと申しまして,金星本体の角運動量を赤道域で大気に渡して,それらが中低緯度で拡散されるためにたまり込んでいくというメカニズムが一つです。
 二つ目は,熱潮汐波による加速でございまして,これは太陽の直下点で金星大気が温められるために,金星と大気が東向きに温められる部分が動いていくわけです。そうしますと,そこから大気重力波が上下に発生いたしまして,地面とのインタラクションによりまして,その角運動量をくみ上げるというメカニズムです。どちらが正しいかということを調べたかったのです。
 そして,今回の観測によって我々はその二つのメカニズムのどちらがどのぐらい効いているのかということに対して,これは論文を書いている最中ですので,発表できないのですけれども,確かに手がかりを得ているということで,最初の2001年の目的は2018年になって十分に実現しているというふうに私は考えております。

【白石部会長】  ほかに何かございますか。
 もしなければ,この本来の審議であります金星探査機「あかつき」(PLANET-C)の定常運用終了とプロジェクト終了審査の結果について,御了承い
ただくということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」を確認)

 どうもありがとうございます。

(4)その他

【白石部会長】  それでは,次でございますが,次は議題の一部が非公開となりますので,よろしくお願いします。
 それでは,議題の(3)につきましては,事務局のほうからまず連絡ございますので,よろしくお願いします。

【事務局(有林)】  本会運営規則に基づきまして,本日の非公開の会議資料以外につきましては,公開になりますので,後日文科省のホームページにて掲載させていただきたいと思います。また,議事録につきましても,公開となりますので,委員の皆様にこの後御確認させていただいた後,文科省のホームページにて掲載させていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 事務連絡は以上です。

(3)H3ロケットの開発状況について

【白石部会長】  それでは,3つ目の議題に入ります。議題は,H3ロケットの開発状況についてでございます。
 これについて,実機型燃焼試験結果等を含めて,JAXAのほうから御説明をお願いします。

【JAXA(布野)】  JAXAの布野でございます。
 資料は44-3でございます。
 H3ロケットの開発状況でございますけれども,本年1月に,当利用部会に対して,詳細設計結果及び製作・試験フェーズへの移行の御報告をしましたが,本日は,その後の状況といたしまして,継続的に実施しておりますLE-9の燃焼試験,今年度新たに実施しましたSRB-3の燃焼試験,それから,タンクとエンジンを組み合わせた推進系の試験として今計画をしておりますBFT試験の準備状況等を含めて進捗状況についてプロマネから御報告します。

【JAXA(岡田)】 資料44-3に基づき説明を行った。 


【白石部会長】  どうもありがとうございました。
 今の説明について,何か御意見等ございますか。
 はい,どうぞ。

【米本委員】  厚肉タンクステージ試験を省略して,実タンクを用いて試験を実施するのはリスクがあるのでしょうか。

【JAXA(岡田)】  ステージ燃焼試験の目的は、基本的には実機のタンクを用いたステージ燃焼試験で検証が可能と思われます。したがいまして,一発で実機のタンクを使って試験をする判断ができれば、そうしてもいいと思います。具体的には2019年の後半にCFTとありますけども,これは2段と書いてないですが,2段CFTです。2段に関しては直接に実機タンクによるCFTを行います。やはり1段に関しては,エンジンそのものは新規設計ですし,推進系統の全体的な整合であるとか,リスクはそれなりにあると思いますので,我々の判断として段階的にBFTを行った上で,実機タンクによる1段CFTは2020年に射場で実施します。

【米本委員】  タンクの構造設計自体は,今まで長い経験がありますので,コスト低減という意図でいきなり実機タンクによる試験も可能ではないかと思った次第です。

【JAXA(布野)】  BFTでもタンクと配管とかエンジンの引き回しとか,要は確認しないといけないところに関しましては,実際のものと合わせる,もしくは,1段のタンクの道具の形状は合わせるとか,確認すべきところはBFTでも確認します。そういう推進系の確認をするということが目的ですので,タンクは実機のタンクでなくても,確認すべき道具の形状とか配管の引き回しとかが,きちんと模擬されていれば,まずは第一段階の試験としてはできるということでございます。

【白石部会長】  よろしいですか。ほかに何かございますか。
 もしなければ,ここからはH3ロケットの国際競争力に係る情報が含まれることになりますので,非公開に移りたいと思います。
 プレスの方及び一般傍聴者の方々は御退席をお願いします。


(傍聴者・報道関係者 退室)


以上


(説明者については敬称略)

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課