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宇宙開発利用部会(第5回) 議事録

1.日時

平成24年10月25日(木曜日)15時~18時

2.場所

文部科学省 16階 特別会議室

3.議題

  1. H-ⅡAロケット22号機の安全確保について
  2. 文部科学省における宇宙分野の推進方策について(輸送技術、国際宇宙ステーション計画に係る議論 等)
  3. その他

4.出席者

委員

委員(部会長代理) 柘植 綾夫
臨時委員 青木 節子
臨時委員 井上 一
臨時委員 服部 重彦

文部科学省

大臣官房審議官(研究開発局担当) 大竹 暁
研究開発局宇宙開発利用課長 柳 孝
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹内 英
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長	村上 尚久

【有識者】
有人宇宙システム株式会社 常務取締役 前村 孝志
株式会社IHIエアロスペース 元社長 浅井 達郎
東京大学 名誉教授 壽榮松 宏仁

【説明者】
独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 宇宙輸送ミッション本部 鹿児島宇宙センター 射場技術開発室長 川上 道生

【オブザーバ】
独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事 遠藤 守
 理事 長谷川 義幸
 執行役 奈良 人司

5.議事録

【柘植部会長代理】  それでは、定刻になりましたので、科学技術・学術審議会、研究計画・評価分科会、宇宙開発利用部会の第5回会合を開催いたします。
 まず、事務局から本日の会議に関する事務的な確認をお願いいたします。

【竹内企画官】  それでは、まず本日の会議の成立について御報告いたします。
 本日時点で宇宙開発利用部会には6名の先生方に御所属いただいております。本日は4名の先生方に御出席いただいておりますので、科学技術・学術審議会令の第8条第1項に定める定足数の要件を満足しております。よって、本日の会議が成立していることを御報告いたします。
 次に、本日の資料の確認をさせていただきます。お手元に、資料5-1から5-2-5まで、加えて参考5-1の資料をお配りさせていただいております。
 それから、「文部科学省における宇宙分野の推進方策について」の中間取りまとめの冊子をメインテーブルの方にはお配りさせていただいております。
 過不足等がありましたが、お知らせいただけると幸いです。
 以上です。
 本日、大垣部会長は御都合により欠席されておりますので、柘植部会長代理に議事進行をお願いいたします。

(1)H-ⅡAロケット22号機の安全確保について

【柘植部会長代理】  大垣部会長の代理として議事を進行させていただきます。
 一つ目の議題は、「H-ⅡAロケット22号機の安全確保について」であります。これについて、JAXAから報告を願います。

JAXA(川上室長)から資料5-1に基づき、説明があった。

【柘植部会長代理】  ありがとうございます。
 ただいまの報告につきまして、御意見、御質問がありましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。
 私から事務局に質問がございます。ロケットの打上げに係る安全対策の妥当性を確認するということは、本宇宙開発利用部会の調査審議事項の一つであると理解しておりますけれども、ただいま報告のありました22号機の安全対策については、どのように取り扱う予定であるかということを説明願えますか。

【竹内企画官】  部会長代理が御指摘のように、ロケットの打上げに係る安全対策の妥当性を確認するということは、宇宙開発利用部会の調査審議事項の一つとして、研究計画・評価分科会から付託を受けております。その具体的かつ専門的な調査検討につきましては、部会の下に設置いただきました調査・安全小委員会で議論いただくということを、7月19日の宇宙開発利用部会で決定いただいているところでございます。
 その際に、ロケットの安全対策の議論につきましては、個別に毎回付託するという形ではなくて、包括的にこのようなものは調査・安全小委員会で検討いただくということになっております。これを踏まえまして、小委員会では、明日26日に22号機の打上げに係る安全対策を確認する検討、調査審議を開催するという予定になっておりまして、そこで安全対策についてしっかり措置がとられていることが確認できた場合には、その内容が部会に報告として上がってきて、部会として御確認をいただくという手順になっております。

【柘植部会長代理】  ありがとうございます。
 ぜひ調査・安全小委員会で厳に検討するようにお伝え願います。

【竹内企画官】  承知いたしました。

【柘植部会長代理】  ほかに何かございますか。
 それでは、この議題はここまでにさせていただきます。ありがとうございました。

(2)文部科学省における宇宙分野の推進方策について(輸送技術、国際宇宙ステーション計画に係る議論 等)

【柘植部会長代理】  二つ目の議題は、「文部科学省における宇宙分野の推進方策について」であります。前回に引き続きまして、本日も推進方策についての議論を進めていきたいと思います。具体的には「宇宙を支える」に関しまして、輸送技術及び国際宇宙ステーションなどについて議論をお願いいたします。
 議論の進め方ですが、最初に事務局から検討状況を説明してもらいまして、次に有識者からのお話を伺った後に、具体的な議論をお願いできればと思います。
 それでは、輸送技術について、事務局から検討状況の説明をお願いいたします。

事務局(柳課長)から資料5-2-1に基づき、説明があった。

【柘植部会長代理】  ありがとうございます。
 今の事務局説明への御意見につきましては、後ほどまとめてお願いしたいと思います。
 引き続きまして、有識者お二人から御意見を伺いたいと思います。お一人目は、有人宇宙システム株式会社の前村孝志常務取締役です。前村取締役は液体ロケットの開発経験を多くお持ちでいらっしゃいます。
 それでは、前村取締役には10分程度でお話しをお願いいたします。

【前村氏】  お手元の資料5-2-2で説明させていただきます。
 「宇宙輸送技術に関する提言」ということでまとめております。4項目書いてございます。特に2番と3番で、現状のH-ⅡA、H-ⅡBの現状分析と課題及びそれを踏まえて今後どうするかというようなことを中心にお話しさせていただきたいと思います。また、参考資料を11ページ以降に添付しておりますので、それを適宜御参照いただきたいと思います。
 まず、一つ目の輸送システムを保持する意義ですが、これは先ほどの柳課長のお話ともかなり重なるところはあるわけですけれども、人類が宇宙にアクセスできる唯一の手段はロケットですから、我が国が宇宙活動を実現するための大前提であると思います。ともすれば、「あって当たり前」のことがその重要性が忘れ去られることも多々あると思いますが、特に輸送系はそういった項目になるのではないかと思います。
 また、1番目の最後に「目に見える国力」と書いておりますけれども、最近、H-ⅡA、H-ⅡBはお約束した日時に打ち上げられるということが大変多くなってまいりました。種子島のロケットの見学者も大変増えておりまして、21号機では韓国の衛星も打ち上げましたけれども、海外のメディアも衆目する中できちんと打ち上げられるということは、まさに日本の目に見える国力ではないかと思います。しかし、こういったものをただ維持していればいいかというとそうではなくて、開発なくして技術の維持は困難であると思います。先ほど柳課長もいろいろおっしゃっておられましたけれども、技術レベルの維持というものは運用のみでは難しいということがございます。定期的な改善プログラムによって保持されるものであると思います。
 「他山の石とすべき事項」と書いておりますけれども、V字チャート、これはシステムエンジニアリングの基本で、システム要求から検証計画等の一連のループです。こういったことを継続しているものとしては、全く分野は違いますけれども、伊勢神宮で20年ごとに改良している例などがあると思います。ところが現在、MRJ、国産リージョナルジェットを開発しておりますけれども、これは50年の空白がございます。ドアとか主翼、フラップといった単品をつくっていても、システム全体としてまとめるという経験に空白がありますと、開発の苦しみがあるということです。
 次のページは、N-Ⅰからの我が国のロケットの開発事例ですけれども、幸いにして開発と運用がマッチングしながら行うことができていました。ただし、よく見ますと、H-Ⅱがシステムを最初から開発した事例でございまして、H-ⅡA、H-ⅡBは部分改良でございます。従いまして、本当に開発をした経験者というのは1980年代半ばの時代の人たちでして、私とか、ここにおられるJAXAの遠藤理事とか、そういった年代になってきています。既に、もう開発から30年たっているということですので、伊勢神宮の20年、MRJの50年、その間にあるということで非常に危機的な状況になりつつあるという認識でございます。
 次の第2項では、H-ⅡA、H-ⅡBの現状認識と分析ということで書かせていただきました。まず、一般関係者の認識としましては、打上げ成功率が上がったとか、世界トップレベルの信頼性になったとか、しかし円高で商業受注はできないとか、そういったことだと思います。一方、私も昨年まで打上執行責任者を務めていましたので、その関係から申し上げますと、実際にやっている人間にとりましては、機体、設備とも改善の項目はまだまだたくさんあると思います。さらに、打上げの成功を継続させるということは人に依存しています。要するに失敗しないために一生懸命やっているのであって、成功させるためにやっているのではないということです。詳しくは、後ほど御説明させていただきたいと思います。
 それから、現在、H-ⅡAは13号機から民間に移管されておりますけれども、これのプラス面とマイナス面をまとめてみました。結果的に打上げ成功率は向上しております。これは数がこなれてきたということもございますけれども、お約束した日時に打ち上げるという率も上がってきております。また、プライム会社と関連会社との間で情報共有の一体化といったこともプラス効果になっております。これは民間の責任感が向上したということもございます。
 一方、マイナス面としましては、JAXAさんは国の宇宙技術推進の中核機関ですけれども、民間移管することによって現場からどうしても離れざるを得ないということで、今後の基幹ロケットの開発がスタートしたときに、JAXAさんの技術者の現場離れ、要するに感覚が離れているというか、そういったところが懸念されると思います。それから、H-ⅡAは民間に移管されているということで、私は「輸送系は国家基幹技術である」と考えておりますけれども、その意識が希薄化してしまって、民間がやればいいのではないかという意見も出てくるのではないかと懸念しています。
 次のページですが、H-ⅡA、H-ⅡBの成功率は95.5%を超えましたけれども、果たして技術は確立したのかというと、私は「イエス」とは言えないと思います。H-ⅡA、H-ⅡBロケットは安心して打ち上げられません、失敗しないために一生懸命努力しているということでございます。また、例えば冗長系が不十分であるとか、衛星の搭載環境が悪いとか、世界レベルから見ても後塵を拝しているところがございます。
 また、「連続成功は人海戦術に依存」と書きましたが、これは、H-Ⅱの開発コンセプトが、種子島からGTO(静止トランスファ軌道)に4トン級の衛星を国産ロケットで打ち上げるといったコンセプトで開発され、H-ⅡAはそれを引き継いでコストを半分にするという経緯で開発されたことによります。当時は、設計余裕を持たせるとか冗長系を持たせるといったことは、コスト削減に相反することでしたので、開発コストをミニマムにするということを最優先にして設計が行われていました。ところが、今度で22号機になりますけれども、これほどの数を打ち上げることはまず想定していなかったと思います。つまり、量産打上げロケットの運用ということは頭になかったと思います。従って、開発当時の知見、経験が不足しているロケットをいまだ運用しているということであると考えておりますので、コスト的にも現状以上の改善は困難なのではないかと思います。
 また、成功継続は、今、H-ⅡA7号機からH-ⅡB3機を含めて18連勝でございます。世の中の連勝というものは永遠に続くわけではありません。いつかは止まります。失敗しないノウハウを三菱重工業はかなりつかんでおりますので、しばらくは失敗しないと思いますけれども、いつかはこの連勝は止まります。この連勝が止まったときにどう対処できるようにしておくのかということを、今から考えておかないといけないと思います。
 ではどうするかということで、第3項で「H-Ⅲ(仮称)」と書かせていただきましたけれども、これは何もオーソライズされているわけではないので、(仮称)H-Ⅲと書いておりますが、世界で圧倒的競争力を有する輸送系を日本独自で開発する必要があると思います。具体的には、コストをH-ⅡAの2分の1以下にする、あるいは、1000回打って1回しか失敗しない信頼性をつくる、そしてまた、有人ミッションに効率的に対応できるようにあらかじめ考えながら設計をするというようなことです。
 そのためには、今のH-ⅡA、H-ⅡBで学んだこと、また、HTV(宇宙ステーション補給機)は既に有人対応仕様になっておりますからそこで学んだことをすべて活用して、余裕を持たせる、冗長系を持たせるよう設計する、また、効率的に発展できるようなモジュラー設計を考える、あるいは、大量生産を考えた運用重視の設計をする、そういったことを考えていく必要があると思います。先ほど柳課長のお話にもありましたように、先進国でも輸送系は段階的に定期的に開発を継続しているということでございます。
 そういったことをしますと、輸送系のコストが下がって、世界で競争力が持てるようになります。競争力が持てるということは、商業衛星の受注も必ずできるようになり、そうしますと、国の支出も減るということで、うまく双方がパッケージで回っていくのではないかと思います。また、(仮称)H-Ⅲをつくるということは、将来の有人輸送等への発展性も考えられるということでございます。
 次に第4項の中長期的な方向性ですが、1番目は、今お話ししました(仮称)H-Ⅲの話です。これは、今後の国際協働宇宙探査等いろいろ話が出ておりますけれども、こういった場に出て行くときに発言力を持つということからも、輸送系を持つ必要があると思います。
 2番目に「有人輸送系の実現に向けて」と書いておりますけれども、有人輸送系をいつやるかという議論は多分にあると思いますが、これを目標とすることで技術レベルが最先端に引き上がっていくと思いますので、いつかはやる、そのために今から必要な技術は実証していく、盛り込んでいくという考え方が必要ではないかと思います。
 あといろいろ書いてございますけれども、御参照いただきたいと思います。
 それから、参考資料をざっと御説明したいと思います。H-ⅡAが安心して打ち上げられないと申しましたけれども、理由は二つございます。一つは、開発仕様と運用仕様がほぼイコールである、すなわち余裕がない設計になっているということです。これは当時のコストダウン最優先の方針からこうなっております。また、冗長系も、一部にはございますけれども、十分に採用されておりません。そういったことで安心して打ち上げられないということでございます。
 次は、私が打上執行責任者をやっていた時代のものですが、打上げ前になるといろいろ気になって人海戦術でここに記載したたぐいの項目を調べていたわけですけれども、これは失敗しないための方策であって、打上げを成功するための方策ではないということでございます。
 次の「次期輸送システムの目指す道」ですが、左側がH-ⅡAですが、それの成功に至る道は狭いです。ちょっと踏み外せば失敗します。この道を、余裕を持たせて一歩踏み外しても失敗しないような設計にしていくという模式的な絵でございます。
 次は、先進国輸送系の開発事例です。
 最後に、これは一案ですけれども、将来の有人輸送系の実現に向けては、輸送系を今からきっちりと最先端の技術に持っていくことが必要であるといったシナリオの案でございます。
 以上でございます。

【柘植部会長代理】  ありがとうございます。
 引き続きまして、お二人目の有識者の御意見を伺いたいと思います。
 IHIエアロスペースの社長をお務めになられた浅井達郎氏でございます。浅井氏は、固体ロケットの開発経験を多くお持ちでいらっしゃいます。
 それでは、浅井さん、よろしくお願いします。

【浅井氏】  浅井でございます。私、3年ほど前に引退しまして、田舎で隠居生活を送っております。あまりきれいなスライドではないかもしれませんが、せっかくの機会ですので、固体ロケットに関する私見ということで述べさせていただきたいと思います。
 よく言われる話でけれども、固体ロケットは、1955年のペンシルロケットに始まって、それ以来日本の自主技術として発展してきました。その五十数年にわたる発展プロセスの中で、各種の科学ミッション、ハレー彗星探査とか「はやぶさ」等というようなプログラムを通じて、宇宙とは関係のない一般の人々にも宇宙に対する共感とか、あるいは「夢と希望」とよく言っておりましたけれども、そういうようなものを与えられたのではないかと思っております。
 私がロケット開発に携わるようになったのが1968年でしたが、そのころはまだ日本の人工衛星は打ち上がっていませんで、失敗続きで大変悪戦苦闘していた時代でした。1970年に初めて、私の先輩が「たんせい」という人工衛星を打ち上げて、会社を挙げて喜んでいたというのが当時の状況でした。私が多少ともかかわったのがM-3SⅡ型のハレー彗星打上げミッションでしたが、これも時間的には大変厳しい開発でした。そのころ、「ハレー彗星は待ってくれない」というせりふがありまして、何としてもこの日までに開発を終了して打ち上げなければいけないということで、宇宙科学研究所の先生方と私どもで総力挙げて取り組んだことを覚えております。「はやぶさ」については最近非常に話題になっていたことですので、皆さんも御存じと思います。そういうようなプロセスを通じて、一般の方々に「夢と希望」を与えられたし、あるいは、宇宙開発ということでは国際社会の中でも一目置かれるような存在になり得たと思っております。
 私は、そのように固体ロケットの技術の開発に邁進してきたわけですけれども、ある時点でふと立ち止まって周りを見渡したときに、固体ロケットというのは世界で見ると戦略技術という部分に分類されるということで、おいそれと売ったり買ったりできるような技術ではない、それから、獲得した固体ロケットによる衛星打上げ技術というのは、こういうことができる国は世界でも数少ない、当時4カ国ぐらいしかないと言っておりましたけれども、そういうような技術力を我が国はこの五十数年の開発を通じて獲得してきたのだと思っています。
 この開発のプロセスの中で、初めのころは失敗もいろいろありましたし、そうは言っても「夢と希望」で頑張れと言われていた時代が続いていたわけですけれども、いつごろからか投資に対するリターンはどうするんだというような、外圧というのは変かもしれませんが、議論が巻き起こってまいりまして、今もその延長上にあると理解しております。そういう中で、固体ロケット産業をどうするんだということをいろいろ考えたりしたわけですが、現時点でもまだ言えることは、一番下に書いておりますように、日本の固体ロケット産業は大変小規模であるということで、自立できるほどには成熟していないというのが、残念ながら現状であると思っております。
 では、固体ロケットの使い方はどうしたらいいのだろうかというと、これは先ほどからいろいろ出ておりましたけれども、大型ロケットで小型衛星を打ち上げるという、言わば10トントレーラーの運用の仕方のような議論と私はよく言っているのですが、大型の輸送手段として国の基幹ロケットというものが一つは必要でしょうということに加えて、それを補完するような意味で、宇宙開発における小型衛星の打上げ手段として、固体ロケットを使った小型ロケットがいいのではないかと思っています。
 基幹ロケットと小型ロケットのラインアップで衛星打上げに柔軟に対応できるというものが、これからの打上げ手段における政府のあり方としてはよろしいのではないかと思っています。そのときには、小型ロケットの役割は、先ほど申し上げましたように、小回りのきく配送用小型トラック、宅配便みたいなものという、そういう運用の仕方ができれば、基幹ロケットの補完ということで使い勝手のいいロケットになるのではないかと思っております。
 そんなときに想定する小型ロケットが打ち上げる衛星のサイズということでありますが、今、イプシロンロケットは低軌道で1トンクラスということで進められていますけれども、せいぜい低軌道で2トンクラスぐらいまで、極軌道ですと1トンぐらいまでが小型ロケットで打ち上げる衛星サイズではないかと思っております。
 また、先ほどの産業として自立できないかという問いへの回答になるわけですけれども、小型衛星の商業打上げ市場はまだ極めて未成熟であると思っています。ですから、小型ロケットの商業打上げを主力として産業として自立しなさいと言われると、「それは難しいですよ」と現時点では言わざるを得ないと思います。その関係で言えば、小型科学衛星というものが、小型ロケットのアンカーテナントの一つとして、安定的に需要があるということが大変大事なことだと思っています。
 次に固体ロケットのよさというのを考えてみました。固体ロケットというのはかなりシンプルな構造で、比較的安価に開発できるということがございますので、新しいロケットを安価、短期間で開発できるということがメリットであると思っています。私が経験したものでも、例えばM-Vは公称5年間で開発したということになっていたと思いますし、あれだけの大きなものをそのくらいの期間で開発できるようになったということだと思います。5年から10年あればフルモデルチェンジのサイクルでロケットが開発・運用できるということです。ここで大事なことは若手の技術者が開発体験を積むということで、これは皆さんも先ほどから言っておられるとおりです。
 そういった開発体験を積む中で小さな失敗ということはよくあります。私は、中程度の失敗まで経験しましたけれども、とにかくそういう失敗経験を積むことは大変大事なことで、そういうプロセスを通じて技術屋というのは育っていくわけですし、それが本人にとっても大変な財産になるし、それがまた社会にとっても非常に大きな財産になるのではないかと思っています。そういう開発体験の場を与え続けるということからも、小型ロケットの有用性というのはあるのではないかと思います。
 もう一つは、比較的小回りのきく実験機と言えると思いますので、各種実証試験の場として、行く行くは基幹ロケットに応用しようというような新技術のフライト実証をこういう小型ロケットを使ってできると思いますので、技術実証の場として使うということも大変有効だという観点からも、固体ロケットを開発・運用するうえでの利点かなと思っています。
 次に生産基盤という話をさせていただきたいと思います。ロケットを開発・運用、製造するということになりますと、技術基盤というものが必要でありますけれども、それを支える生産基盤、産業基盤というものも必要になるわけです。そういう生産基盤の維持には、もちろん産業ですから、生産量が必要ということが当然の議論になると思います。そこで、今はどうなっているかというと、国内の固体ロケットユーザーというのは宇宙分野と防衛分野の二つです。そのうち、固体燃料ということを考えてみますと、生産量の80%が宇宙分野で、残り20%が防衛用途ということになります。言い換えれば宇宙分野、それもSRB-A(固体ロケットブースター)が現在の固体燃料の生産量を支えているわけで、これはそのまま日本の固体燃料の生産基盤を支えているということになります。従って、生産基盤という点では、宇宙用と防衛用はそう違った分野というわけでもありませんので、宇宙で培われたいろいろな技術あるいは生産基盤というものは、我が国の安全保障にも広い意味では貢献していると考えていいのではないかと思います。
 そういう生産量の確保は産業としては大事だということになりますと、イプシロンをこれから開発して飛ばすということになりますが、この打上げ機数を確保するというのは再び大変大事なことだと思っていまして、先ほども申し上げましたけれども、安定的な打上げユーザーとしての小型の観測衛星をぜひ継続的に飛ばしていただきたいと思います。
 もう一つは、そうは言ってもということで、打上げ手段と小型衛星をパッケージとして海外展開ができたらいいのではないかと思います。特に新興国が考える小型衛星というものが幾つか候補としてはあるようにも聞いておりますので、そういうものと打上げ手段がパッケージで実現できていったら、固体ロケットの将来も明るくなるのではないかと思っております。
 以上です。

【柘植部会長代理】  ありがとうございます。
 事務局説明、それから、お二方の有識者の御意見を伺いました。それを踏まえまして、文部科学省における推進方策を議論していただきたいと思います。有識者のお二人にも御意見を伺う機会もあろうかと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 それでは、御意見を伺いたいと思います。どうぞ。

【服部臨時委員】  本日は、お二人に大変有用なお話をいただきまして、ありがとうございます。
 推進方策として、今回は、「知る」、「支える」、「使う」という三つをカテゴリーとして挙げていますが、その中でも最近は「使う」というところが特にクローズアップされていて、非常に話題になっていますが、私はエンジニアの出身ですので、「支える」という部分でのロケット開発の優先度というものが非常に重いと考えています。
 そこで基本的なこととして、過去のことを少しお聞きいたします。これは決して批判的ではなくて、今後、ブレークスルーするにはどうしたらいいかということを知りたいのでお聞きいたします。物作りというものは、開発して、その改良を重ね、その間次のプロジェクトの構想を練り、基盤技術とか基礎技術というものを積み重ねていくことで、次の新しいステップにいくという流れが一般的だと思います。ところが、JAXAの予算あるいは国の予算に限界があったとは思うのですが、どうしてこのように長い間、二つの改良型のシリーズが維持されるだけで、次のステップための基礎技術の研究が行われなかったのだろうかと思うわけです。できればお二人に、又柳課長にも、国の施策としてどうしてそういうことがとられなかったのかということについて御説明をお願いします。また今後何を変えていけば、改良をやりながら次の世代の輸送技術の研究ができるようになるのか、キーになるのは何かということを簡単で結構ですので、御意見をお願いできればと思います。

【前村氏】  服部委員の御質問は非常に正しい後質問だと思います。私が思うには、日本のロケット開発は、N-Ⅰの時代から米国に追いつき、追い越せとまではいきませんけれども、追いつこうとしていまして、そしてH-Ⅱの時代で、独力で開発輸送機を持てるようにしようということで進んできたと思います。そのH-Ⅱの開発コンセプトは、国産技術で、種子島から静止4トン級の衛星をきちんと打ち上げるというコンセプトでした。それがH-ⅡAまで続いていまして。H-ⅡBはHTVを打ち上げるということで改良開発をしたわけです。
 従って、ここまで我が国が行ってきたことは、世界のロケットの技術レベルに追いつくといことでして、これはLE-7A等ほかのロケットの機器を見ましても、私は追いついていると思います。ただ、次につながる技術になっているかというと、はっきり言ってなっていないと思います。何が必要かと言いますと、私が先ほどの説明で申しましたように、これまでは失敗しないことに一生懸命やっているわけでして、安心して成功を続けられるようにするためには、つまり国際競争力を持つためには、技術レベルを上げることが必要だと思います。そのためには、我が国は既にいっぱい学んだと思っています。H-Ⅱ、H-ⅡAで3回失敗してそこで学んだこと、それを反映して今成功していること、それらを次に生かすために、基幹ロケットの検討をJAXAさんでもやられていますけれども、そこにはいろいろな先進的な技術や、やるべきことがラインアップされていますので、それをこれから基礎的にでも結構ですから、次に進めていくということが重要かなと思います。

【服部臨時委員】  そうすると、JAXAでは次の基盤技術の検討を進めておられると認識されているということですか。

【前村氏】  はい。Lessons Learnedから、今の課題は何で、次にどういう方向に進めるべきかということのは、JAXAさんでしっかりと検討されております。

【浅井氏】  私の経験から見ますと、システムが巨大化しなければ短期間でいろいろなロケットの開発ができていたと思います。ラムダロケットの時代からミューロケットのあたりまでは、それこそ3年に1回というような形で、フルではないにしてもモデルチェンジができていました。ロケットが巨大になって、なおかつ、失敗が許されないプロセス、そういうようなことになってきますと、フルモデルチェンジというのは大変難しいような時代になったと思います。
 これからまた新型ロケットを開発するということになると、その大変さというのは、前に倍して大きくなるのではないかという気がします。技術というものは当然進めなければいけないと私も思いますし、そのために開発の場というものが要るのだと先ほども申し上げましたけれども、そういうフルモデルチェンジをドンとやるという前に、小さな要素の開発、要素のモデルチェンジを進めて、それをフライト実証して実機に適用していくということができれば、少しずつでも物事が進むのではないかなというような感じを持っています。

【服部臨時委員】  そういうサイクルが、うまく回っていない真の理由については、どうでしょうか。

【柳課長】  これまでの宇宙開発、私が二十数年前に宇宙を担当したときから今までの気持ちを、ロケットだけでなく衛星全体も見たときの印象としてまず申し上げます。私は昔、リモセンなどの分野を担当していたことがあるのですが、当時はアメリカが打ち上げたLANDAST(地球観測衛星)が結構飛んでいるところで、MOS(海洋観測衛星)やADEOS(地球観測プラットフォーム技術衛星)をやるということは、アメリカがやっているので日本もこういうことをやりたいというところからきていたと思います。
 ロケットも、先ほど御説明したようにN-Ⅰ、N-Ⅱ、H-Ⅰとアメリカから技術導入してきたわけで、要するに、これまでは追いついていこうという発想でした。今、「宇宙先進国に肩を並べ」と我々も言っていますけれども、どちらかというと、ドライバーズライセンスをとって、ドライバーとして認められましたというところのように思います。中では、最近あまりおもしろい衛星がないねと言っているのですが、今までいろいろやってきたところにはお手本みたいなものがあって、それが日本の技術になってきたということだと思います。
 H-ⅡAも国産技術開発にはこだわっていまして、汎用品は海外のものを使ったりしていますけれども、技術としては国産技術だけでできます。そういうことをH-ⅡAをつくるときにこなしてきて一段階ついたところで、今度は何をやるのか、国際的にある程度肩を並べていて、ライセンスをとってもう一歩出ようというところで、どこまで知恵が出ているのかという段階ではないかと思います。
 今、ロケットについていろいろな議論がされている中で、要素技術開発が重要だということが先ほど浅井先生からありましたけれども、JAXAの中でもいろいろな検討はされています。要素技術開発もやってはいるのですが、なかなか世間にうまく伝わっていませんし、今の時代はコストとの関係がありまして、我々もこの資料をつくる中で情報を集めてみたのですが、まだあまり整理されていないところがあって、今日は試算という形でお出ししましたけれども、タックスペイヤーである国民に対して理解をいただかないと日本の独自性ということは発揮できないところまできていると思います。
 一歩進めるとすると、国費を投入するのは何のためなのか、JAXAがやりたいからやりますではなくて、この先に何があるのかということを、例えばユーザーニーズは何があってどこまで国としてできるのかということを、タックスペイヤーが納得できるような説明をできるように、そのあたりをもうちょっと精査していかないといけないと思います。
 御質問に対しての回答になっていないかもしれませんが、私の認識としては、何が足らないかというと、JAXAの中でもいろいろ細かく動いてはいるのですが、それをシステムとして国民にわかる形でまだうまく提示できていないのではないかと、そんなように考えております。

【JAXA(遠藤)】  今の御質問で、H-ⅡAを開発して、H-ⅡBを開発するだけで他には何もやっていないのかという意味で申し上げると、現状こうやって打上げ成功を続けてくる間には、大きな問題、小さな問題を含めて、いろいろな技術的な課題が次から次に出てきています。それについては信頼性向上という形で継続的に研究開発を行いながら、そのフィードバックをかけて信頼性を維持しています。ですので、前村さんからの御説明にもありましたが、現在のH-ⅡAロケットは、基本的なコンセプトは30年前にH-Ⅱで構想したコンセプトで、現在の信頼性を達成してきたというものです。
 宇宙機やロケットは、コンセプトや設計を大幅に変更すると、すぐには実用できまぜんで、試験的に宇宙で実証していくというプロセスがどうしても必要になります。次期基幹ロケットは、ニーズの大きな見直し等も行いながら大幅なコンセプトの変更をしようとしています。そうしますと、単に部分的な改修ではなくて、大きく取り組む必要があるために、国として、次の世代のロケットはこういうロケットが必要なのかということを十分御議論いただいた上で、着手することが必要であろうと考えています。少なくとも現状のロケットに組み込める範囲での研究開発というか、技術の信頼性の向上は継続して取り組んでいるところでございます。

【青木臨時委員】  前村様にお伺いしたい点が3点あります。一つ目は、(仮称)H-Ⅲロケットの開発に、これには幾つかの選択肢があるのかもしれませんが、どのぐらい開発にお金が必要だとお考えでしょうかということです。二つ目は、スライドの10ページの「(仮称)H-Ⅲは有人輸送系への技術波及も視野に入れ」というところですが、具体的にはどういう技術波及が考えられるのかを教えていただきたいということです。
 三つ目は、そもそもロケットはコストを下げることができないから商業利用に関しては将来がないので、それよりはスペースプレーン型の再使用型の新しいものを考えていかなければいけないということをおっしゃる人もいるわけですが、ロケットのコストは下がらない、商業市場を切り開くことは特に日本ではできないという考え方については、どうお思いになりますでしょうか。

【前村氏】  最初の(仮称)H-Ⅲの開発に幾らかかるのかという御質問でございますけれども、私は既に実務を離れておりますので、実際に試算したことはございませんけれども、H-Ⅱで2,800億円、H-ⅡAで1,900億円程度だったと思います。こういったことから言いますと、先ほど遠藤さんがコンセプトを根本からすっかり変えて新しいロケットにする必要があるとおっしゃっていましたけれども、そうは言っても、こういった過去の国費投入額を超えるということは避けて、この範囲内で開発していく必要があるのではないかなと、個人的には思います。
 それから、有人に対してどういった波及効果があるのかということですけれども、一言で申しますと、信頼性が飛躍的に向上するのではないかと思います。それは、有人という目標をつけた途端に人の命が関わるわけですから、失敗するかしないかという確率は、航空機は10-9だと言われていますけれども、ロケットでそこまでいくかどうかは議論がありますが、少なくとも今の世界レベルの95%では話になりません。私は1000回に1回と申し上げましたけれども、有人を目標にしないと、技術波及効果はあまり得られないのではないかと思います。したがって、有人をやるやらないは別にして、私の意見は、目標にしてそこをにらんで技術波及効果を得るのが得策ではないかなと思います。
 それから、日本は商業ロケットに参入できないので意味がないのではないかという御質問だと思いますけれども、かといって今のH-ⅡA、H-ⅡBをずっとやっていれば輸送系の技術は維持できるかというと、これは全く維持できません。何度も御説明していますように、開発なくして技術の維持はないわけです。では、何で開発をやるんだということになると思いますけれども、それは国家基幹技術であるからこそ国として持たなければいけないと思います。では、次の再使用にいけばいいじゃないかという御意見かと思いますけれども、使い捨てロケットと再使用のロケットの技術のレベルは、階段で言いますと、二、三段上るのと、数十段上るほどの差があるのではないかなと私は考えています。したがって、再使用型の技術を視野に入れて研究開発を行うことは重要ですけれども、無人ロケット、基幹ロケットの技術をまずは追求していくということが重要ではないかなと思います。

【竹内企画官】  今の青木先生のコストの点で補足させていただければと思います。事務局の資料の17ページで、これはJAXAの説明を伺いながらあくまで試算という形でお示ししたものでございますけれども、シナリオ4の開発費を見ていただきますと、1,900億円という試算があります。これはもちろん上下はあるでしょうけれども、全機体ということで、1段エンジン、2段エンジン、それから、1段機体、2段機体の構造をすべて新たに開発して、それから、地上で見ていた点検機能もロケットに積んでしまうことによって関連地上設備の維持費を減らしていくという観点から、地上の開発費に350億円ぐらい積み上げています。そういうふうな積み上げの想定で、今のところ1,900億円という暫定の試算をしているところでございます。
 今の時点なので、振れ幅はあるかもしれませんけれども、事務局で聞いている範囲でこのような資料を用意させていただいているところでございます。

【井上臨時委員】  文部科学省側の説明の論理として、現状、予算を増やしてほしいというようなことを言っていくときには、こういう言い方にならざるを得ないという面は理解できるのですが、自律性を持たそうとするとこうでなければいけないとか、あるいは、技術を維持しようとするならこうでなければいけないというような議論では、もはやもたないのではないかと思います。
 そうではなくて、まさに前村さんもおっしゃったような、ひとつ大きな新しいものをつくるとしたら例えば30年かかるわけですから、30年なら30年先の姿を思い描いて、そういう世界が実現できたら、こんなに効率のいい、国民が潤うものができるという議論が必要だと思います。そのときの視点としては、むしろ人類の課題解決というものだと私は思うのですが、そこから始めてそういう姿を思い描くと、当然、その中に有人ということは視野に入らざるを得なくなって、前村さんおっしゃった(仮称)H-Ⅲを考えていくということが不可欠になると思います。
 有人というものの活動を視野にきちっと入れて、こういう考え方で日本はやっていくということを、しかもそこは外国が国際的にこんな動きをしているからというのではなくて、日本としては宇宙空間を利用していく方向として、こういうものを実現しようと思い描いていて、そのためには日本としてきちっと貢献できるものを持っていかなければいけないというような筋をつくっていかないと、話が進まないのではないかなという気がいたします。
 それから、もう一つは、浅井さんのおっしゃったこととつながるわけですけれども、大きいものをつくるところの技術の継承はもちろん必要になりますけれども、最後は個人個人がある種の失敗を経験し、自分の力で自分の頭で考えて物事を解決していくという、まさに技術者魂みたいなものをつくっていくところが基盤になるべきだと思います。
 衛星では、高校・大学における非常に小さな規模のものから、いろいろと大きなサイズのものも考えられていて、小型科学衛星という規模にまでつながろうとしています。ロケットでも同じことが今起こってきていて、小さなロケットを大学レベルでやって、それをだんだん大きいものにつなげていって、小型の固体ロケットがその上につながっているのだと思います。そこには、技術としての経験を積むという面もありますし、いろいろな技術実証の場として使っていくということは、まさに浅井さんの話のとおりで、そういう観点で小型ロケットのいろいろな使い方を考えるべきだと思います。小回りがきいて、小さいものが必要になったらすぐに宇宙に上げるというように、低軌道に小さいものをたくさん上げていくような考え方に立って、いろいろな利用に対してすぐに対応していくというような考え方のものに使っていくというようなことも、さきほどの30年後という大きな宇宙空間の使い方のイメージの中に組み込んで考えることが第一になるべきだという気がいたします。

【柘植部会長代理】  ありがとうございます。
 私からも2点ほど、意見を申し上げたいと思います。全然違うものですので、順序を切り離して申し上げます。
 1点目は、井上委員がおっしゃった、30年後から見てこれが必要だとバックキャストして説明するということも併せて、私が申し上げたいことは、このままでは、1,000兆円の借金を背負った国が、財務省あるいはタックスペイヤーも含めて、このロケット開発をやらないと駄目だなと思うところまでは、まだ成熟していないということです。私自身は、今日のお三方の説明をお聞きして、本当にこれはやらないと駄目だと思っています。ですので、いかに説得力を持たせるかの議論の中で、固体ロケットも液体ロケットも、30年後の姿を描くときには、日本としての世界でのビジネスというものがなければ説得力がないと思います。
 液体ロケットを考えると、先ほどの御説明にもありましたように、現在の信頼性確保は人海戦術でやっておられるわけですが、本当は10-3ぐらいの信頼性まで持っていかないと駄目なんだということは、商売として本当に成り立っていく一つの動機になると思います。
 あるいは、柳課長が説明した18ページの運用の考察の中にコストの話もあるわけですけれども、シナリオ2、3、4をとらなかったときに、30年後の日本としての世界展開は事業的には望めなくて、今のシナリオ1では国内の需要はあるかもしれないけれども、信頼性や高コストを含めて世界視点から見たら全く商品価値がないということですよね。つまり、18ページで欠けている見方は、商品という形で考えたときにシナリオ1と4と比較すると、ここに出ている数字以上のものを、日本として得るべきチャンスを失うということだと思いますので、さきほど井上委員がおっしゃった30年後の姿も、そういう見方も含めて18ページに示さないと、これだけの赤字大国がこれだけ身銭を切るのかという意見が出てくるのではないかと思います。
 固体ロケットも、先ほどの浅井さんの御説明の最後のところに、小型衛星と組み合わせた海外展開というお話しがありましたが、はっきり言ってそういうものがなければ、30年後の日本のビジネスは成り立たないと思います。マーケットもあるということですので、同じ見方で、固体ロケットにしてもやらなかったときには得べかりきチャンスを失うというマイナス効果と、これをしっかりやっていくと、30年間の中で国の事業として成り立って、結果的に雇用にもつながるという、そういう見方をプラスすると、これだけの赤字大国でもこのロケット開発を進めようというふうになるかなと思います。
 これについてまず何か。

【大竹審議官】  我々もどうしようか考えて今日のプレゼンになっているわけで、私も座長と同じでやるべきだと思うからやっているのですが、時々こういうところにいて居心地が悪くなるのは、皆さんやろうと思っているから、そうでない人の考え、そうでない人はどう受け取るかというところが欠落することがあるように思います。私は、そうでない人はどう考えるだろうと思うと途端に悲しくなってくるわけです。
 とは言いつつ、そういう観点で申し上げるので、決してすべてを否定するわけではありません。まず私は、役所側としてはずっと説明不足のところがあったことは明らかだと思います。どういうことかというと、国産技術の確立ということでN-Ⅰから始めて技術を持ってきて、30年40年かけてH-ⅡAまで到達したという歴史があるわけですが、「国産技術を獲得すればいいんだろう」、「できたね」、「終わり」という感じで、技術の本質を社会にちゃんと普及してこなかったところがあると思っています。
 例を挙げると先輩を揶揄することになるかもしれないのですが、あえて世の中に対して失敗した例を挙げるとすると、「世界一になればいいんだ」ということを前面に押し出したプロジェクトがありました。あれは世界一になることが目的ではありません。しかし、そうすると世の中に受け入れられやすいからという理由で、それだけを前面に出したわけです。それの本質を、事業仕分けのところで「それはどうなんですか」と問われたときに、プロパガンダと内実の考え方が違っていたので、我が役所としてはひどい目に遭ったことがあります。役所としてもそういうワンフレーズポリティクスのやり方をしたほうがわかりやすい反面、そういうことも起こったわけですので、そういうところが足りなかったということは反省しています。
 ただ、我が役所だけではなくて、今この社会の中でそういう理解の仕方をしたがる人が多いと思います。これは輸送系と書いてあるとおり輸送手段のわけですが、例えば、皆さん御承知のとおり、東京の中のタクシーを見ると、二つある会社の一つのタクシーは30年ぐらい前に走っていたクルマをそのまま同じ型で、1台100万円以下でつくっているわけです。タクシー会社の人に聞いたら「卸すときは100万円以下ですよ」と言っていましたが、それを40万キロメートル走らせるということをやっているわけで、これがまさにコストが下がるモデルです。こういうことをロケットにイメージしている人が大多数じゃないかと思います。
 それに対して新幹線はどうかというと、速度を上げるとか技術開発をしているわけです。700系の次にN700系が出て、N700系の次にまた新しいものを検討するということをやっています。あれが輸送系のあるべき姿であると全然理解されていないということは、我々もJAXAも含めて考えていかなければいけないと思います。そういうことをきちんと説明していかないと、開発なくして技術の維持は困難であるということが世の中で共感されないと思います。
 それから、自分自身でずっと思っていたことがたまたま今朝の朝日新聞に出ていたのですが、有人の話がありました。それはまさに前村さんのお話にあった信頼性の話でして、有人に対応するためにということで10-3と言っていただいたと思うのですが、我々宇宙の側に立っていると、有人は夢だからやりたいと思うからその値は是だと思うわけですが、日本の社会は果たして受け入れるでしょうか。100%でないものが当たり前のこととして受け入れられていないから、金曜日になるとこの辺りで「100%じゃなかったじゃないか」と言う人がたくさんいるのだと思います。そういう社会だということを踏まえないと、そこは技術の理屈だけではいかないということがあると思います。
 そういう意味では、部会長代理がおっしゃったとおり、一般の方の視線で考えないといけないと思いますが、井上先生がおっしゃった30年後どうなるかということは、私も考えるべきだと思います。今お金がかからないことだけを考えると、新しいロケットは要らない、必要なときにはどこかに打ち上げてもらえばいいという議論も出てきかねないわけです。それに対して、要らないとならないようにするためにどうするかについて、今日の資料をつくる前に議論をしています。今日は、新しい輸送系の対象は公的需要が最初だろうということで、公的需要だけでバランスをとるとどうかという資料をお出ししていますが、もう一歩、こうした場合に1機当たりの在り方が外国に対して競争力があるということを言わなければいけないと思います。
 例えば20年間、公的需要で20機とか30機打つだけなのか、それともそれに加えて、他の需要をとってこられて機数が倍になるのかでは、日本の経済にとっても宇宙産業にとっても大いに違いがあると思いますので、そういう部分を分析する資料はいずれつくらなければならないと考えています。今日はまず、公的需要ということでバランスさせています。ここは宇宙開発利用部会ですから利用しようと思ってやっているわけですけれども、これが属しているのは科学技術・学術審議会で、もっと大きい世界です。科学技術・学術審議会は文科省の組織ですから、社会に対して何かをしていって、社会との関係をとらなければならないわけです。今日の議論は、ある意味ではインナーであれば非常にありがたい気持ちいい話ですが、もう一枚突破しなければならないものがあるので、ぜひ関係者の方にも御一緒に知恵を出していっていただきたいと思っています。
 座長が御指摘になったビジネスとしてどうあるかということについては、今は答えがないので、努力はしますけれども、我々の知恵だけでは無理なのです。ただ、改めるところは改めながら社会に訴えていかなければならないと思っていますので、その訴え方をぜひ御一緒に考えていただきたいと考えています。

【井上臨時委員】  私は、30年後の姿として夢みたいなことを言えと言ったつもりではありません。むしろ17ページのシナリオについて言えば、シナリオ4は、このまま進めようとしても、多分認められないような種類のものになってしまうだろうと思います。そういう意味で言うと、私としては、むしろシナリオ2のような地道なものをそこに含めて進めていくということになるような気がします。予算のかけ方としては、現状の基盤技術維持という部分にある割合をきちんと置いていかなければいけないと思います。ただ、そのときにもっと先を見て、ある割合はシナリオ4につながるような新しいものを必ず入れていくことが必要だと思います。
 それから有人ということですが、30年後に大々的にいろいろな人たちが飛び回っているということを言っているのではなくて、今の宇宙ステーションのような規模の、日本としてきちっと培ってきた有人技術の先に、30年後にはこういう堅実な使い方をするということをきちんと言って、そこに日本がはっきりした貢献をしていくのであれば、行き帰りを担うだけの技術を日本としてきちんとつくっていきたいと、それは言っていくべきだと思います。何も大きなことを言おうと言っているのではなくて、考えられるしっかりしたシナリオを見せましょうということです。それは一朝一夕には難しいですけれども、今何らかの格好でそれをつくって出さないと駄目なのではないかと思います。

【柘植部会長代理】  どうぞ。

【服部臨時委員】  大竹審議官の言われることに反論しているわけではないですし、この困難さというのは十分理解していて申し上げるわけですけれども、大きなプロジェクトをこういう財政難のときにやる場合に常に考えるべきことは、大きなことで政治を動かす、財務省を動かすぐらいの意気込みでやらないと始まらないということだと思います。ロケットは国の基幹技術であるし安全保障の技術なわけですから。御存じのように、防衛庁主導で開発したP-X(次期固定翼哨戒機)とC-X(次期輸送機)色々難題もありましたが開発に成功し量産のレベルまで来ています。これはスタートする際に色々議論や、困難さがあったと思いますが、それらを跳ねのけてものすごく大きなバリアを越えたわけです。最初にどうやってスタートしたかということを、ぜひ事務局で調べて参考にしてほしいと思います。
 お話しにありましたように、ロケット、飛行機の技術者がいなくて、そんな中で失敗もしみなさん大変な苦労をされてきました。その中で、MRJを開発しようというときには、三菱さんは非常に大きな決断をされたと思いますが、そこには国が本当の後押しをされたということがあると思います。もちろん飛行機とロケットは違うかもしれませんが、ぜひ一歩越える、もちろん井上先生が言われるようにステージを踏みながら進めなければいけないわけですけれども、それプラス、彼らがどうやって最初の一歩を越えたということを学びながら議論してはどうかと思います。
 非常に重要な基幹技術であり安全保障の技術ですから、何とか知恵を絞れればいいなと思います。私自身もまだ勉強中ですが、何とか堅実にやらなければいけないと思いますし、財政も厳しいということも全部わかりながらも、ロケットを持たなかったらどうなるかということは恐らく100%皆さん同感だと思いますし、ゴールも大体イメージがあると思いますので、最初の一歩をどうやって出して行くかということをぜひ検討したいと思います。

【柘植部会長代理】  ありがとうございます。
 今の話を一言で言うのは難しいとは思いますが、運用コストも維持費も含めてコストが安くなるという話だけではなく、それから、これは国家安全保障のキー技術だという話も当然必要なわけですけれども、もう一つ、もしこのロケット開発をしないときにはどうなるかということを分析して欲しいと思います。それは当然、国家安全保障の問題もありますが、今の日本が持っている大きな赤字に対して、国際競争力という面でなくなっていくというマイナスのもの、やらなかったときに失うべきものというような視点も入れると、かなりきちっとした主張ができるのではないかなと思っております。
 もう一点だけ。私、科学技術・学術審議会で人材委員会の主査も担当していますので、この場は文部科学省の科学技術・学術審議会としての推進方策というカテゴリーにも入るという認識でお話ししますと、宇宙の推進方策を打ち出していくときには、科学技術の次の世代を担う人材の育成にいかにこれを使っていくかという方策も抱き合わせで盛り込むべきであると思います。別な言い方をしますと、科学技術・学術審議会の方針の中で、社会的課題の解決に資する人材をいかに育成するかという野依イニシアチブがありますが、私は、宇宙の推進方策の中にもそれに応えていくことの視野も欠かしてならないと思います。具体的に言うと、今、中央教育審議会の答申にも出ていますように、高等教育、特に大学院教育の実質化ということがあります。今までJAXAさんも含めてそれには随分貢献されていますが、もう一歩、大学が行っている教育、つまりJAXAさんが大学と一緒にやっている教育に加えて、大学が自らのカリキュラムを組んでやっている中に、こういう推進方策をいかにビルトインしていくかという視点がもう一歩、これは大学側の問題でもあるわけですけれども、そういう視点が要るのではないかと思います。
 それから、それをやっていきますと、既にJAXAさんもおやりになっていますけれども、初等中等教育に生かしていくという面ももう一歩、教育の側がやってくれるという渡し方を工夫できるのではないかと思います。そういう視点で、推進方策をまとめる中で教育に生かしていくということが、宇宙開発だけではなく、総合工学としての人材を育成するという非常に重要な、貴重なプラットフォームであるということだと思います。
 文部科学省の縦割りからすると、この場は教育の議論ではないという論理があることは十分承知していますが、今、日本が直面している科学技術によって社会価値、経済価値を生み出して、世界に売り出していくしか生きていく場はないということを考えますと、それを支える教育は不可分になっているということを私はずっと主張しております。宇宙というものは教育に生かせる場だということも、この推進方策の中にぜひとも入れていただきたいと思います。さきほどからのお金の話の支え棒にはならない意見かもしれませんが、そういうことを2点目として申しあげておきたいと思います。

【井上臨時委員】  全く柘植部会長代理のおっしゃるとおりだと思います。教育という面と、もう一つは先ほど言った30年というスパンのある種の理念というか長期的な計画を、それをどこが考えて責任を持って実行していくかいうと、最後の予算的な措置などは官の側にあるわけですし、実行はJAXAが大きい役割を果たすわけですけれども、大きな流れを見ていくというところはどこかと考えていくと、長期的な観点で教育を行って人材を出していくというところも含めて見ていけるところは、やはり大学だと思います。総合工学とおっしゃいましたが、総合宇宙工学というようなことだと思うのですが、大学がそういう議論にしっかり噛んで、そこが、大きな流れをこのようにしたらどうですかと、しっかりした提案をしていくべきではないかという気がします。

【大竹審議官】  今の人材の件は承りました。今日は、個別の技術的なアスペクトをまず出しておりますが、中間取りまとめでは人材についても強調しておりますので、今後は人材の件も忘れずに議論したいと思います。
 私はいつもここでは先生方の叱られ役なのですが、おっしゃるとおり、P-X、C-Xの話もよく調べたいと思います。ただ一つだけ、ちょっと状況が違いますのは、防衛省のP-X、C-Xはフロントラインで世の中に対して訴えかける立場にありますが、宇宙は今、体制が変わりましたので、我々は直接ではなくて、もう一つレイヤーを越えなければならないということがあります。そこの議論の中には、技術開発ばかりやっていたから産業が駄目なんだということを声高におっしゃる方がいるようです。では、どうすればいいのかという対案はないのですが、そう言われていることに対して、我々は技術オタクではありませんということをちゃんと言っていかなければいけないと思っています。そうすると、この推進方策の中ではそういう議論に対してもう一歩上の議論とする必要があります。30年後というのは、「30年後の日本の国の像があった上で」ということが重要なことですけれども、それがなかなか統一的に書けない中で、宇宙は社会との関係でどうあるべきかということを、我々のほうで稚拙でも良いので案をつくって投げかけていかないと、もう一つのレイヤーを越えないと思います。財務省も、それから政治家の方々も宇宙産業志向の方が多いわけですので、その辺の殻を破る努力をしたいと思います。
 そういう思いで言いにくいことを申し上げたので、我々の努力が足りないことはよく理解しておりますので、ぜひそこは御理解ください。

【柘植部会長代理】  予定の時間がまいりましたので、この議題については一区切りをつけたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 前村様、浅井様、どうもありがとうございました。
 5分ほどリフレッシュタイムをとりたいと思います。16:時50分に再開したいと思います。

(休憩)

【柘植部会長代理】  それでは、再開したいと思います。
 次は、ISS(国際宇宙ステーション)について議論をお願いいたします。
 まずは事務局から検討状況の説明をお願いいたします。

事務局(村上室長)から資料5-2-4に基づき、説明があった。

【柘植部会長代理】  ありがとうございます。
 引き続きまして、有識者からの御意見を伺いたいと思います。東京大学名誉教授の壽榮松宏仁先生でございます。先生は、ISSの日本の「きぼう」を利用する実験について多くの見識をお持ちでいらっしゃいますので、お話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

【壽榮松氏】  御紹介いただきまして、どうもありがとうございます。私は、「きぼう」利用推進委員会の委員として、10年ほどサポートをしている一人です。私は2001年に東京大学理学部・理学系研究科を退官しまして、その後、SPring-8(大型放射光施設)で理化学研究所の責任者を少しやっておりました。現在は何もやっておりません。そういうバックグラウンドで、この問題については少し外部ではありますが、事情が分かっているかなという気がいたします。私の話は、ISSの利用の仕方について、どういう分野に使われるかという問題と、今後どういう方針で利用を拡大していくかというところに焦点を絞って、利用者側の立場としてお話ししたいと思っています。
 ISS、「きぼう」だけに限らず宇宙ステーションの使い道の問題ですが、非常に広い分野で使われるということをまずお話ししたいと思います。今までの宇宙科学、地球科学の利用ということのほかに、物質科学、材料科学、それから、生命科学、医学、そのほか社会科学とか人文科学等への展開もこれから考えていく必要があるのではないかと思います。
 現在、物質科学と宇宙医学については、私の個人的な感じでは、手さぐりの状況から漸く利用の段階にきたのではないかと思います。今後はターゲットを絞ったプロジェクトに移行すべきではないかという気がしております。宇宙科学も地球科学もそういう状況にあると思います。一方、生命科学と環境科学については、まだまだISSの使い方として手さぐりを続けていく必要かあるのではないかという気がしております。
 次に、それぞれの分野について、我々「きぼう」推進利用委員会でまとめていますが、この図は、生命科学の分野でどういうことがあるかということを示しております。一つ目は、微小重力下における生命科学をどういうふうに新しい視点から見るかということですが、ここに書きましたとおり微小重力環境で生命体がどういうふうに応答するかという問題です。現在、非常に進展していることは、重力センサーです。植物はなぜ地上に種をまいたら立ち上がっていくのか、動物は重力にどういう反応をするのか、こういう問題は最近非常に進歩しておりまして、分子生物学的なレベルで、どういうセンサーが働いているかということについてまで分かりつつあります。これはまだ宇宙実験はほとんど行われていないのですが、非常に重要な分野であろうと思います。純粋な生命科学の問題として、重力センサーの問題は大きいと思います。
 二つ目は、今までも行われているのですが、放射線生物学及びその他の種々のストレスがどのように生命に影響を及ぼすかという問題です。それから、三つ目に環境モニタリングと書きましたが、宇宙船の中での状況、例えば微生物がどれほどいるかということに関するモニタリングはほとんどなされておりません。私、素人目から見ていても非常に心配な状況です。ISSは閉鎖空間ですから、何か感染的な問題が起こりますと、一発で駄目になる恐れがあります。そういう問題に関する基礎的なデータが、まだ集められていない、少なくとも日本は集めていないわけですので、それは非常に重要な問題だと思います。
 次のページは生命医学の問題ですが、これは既に大分進んでいますし、皆さんも多分御存じの部分があるかと思いますが、骨の減少とか、それに対応する対策、それから筋萎縮の問題などです。こういう問題は既によく知られている現象で、それに対応するにはどういう対策をするかという研究が進められています。それから、血液とか循環器系の問題についても研究が行われています。それからもう一つは、これから先のことになるかもしれませんが、もっと一般的な精神面も含めた対応能力が人間の中でどうつくられていくかという研究は、それに対する対策をどうするかという問題まで含めて、特にこれから日本が「有人」――その呼び方自身にはちょっと問題があるかもしれませんが――、少なくとも既に「きぼう」に何人かの人を送っているわけですので、その人たちの健康を守る上でも非常に重要な問題であろうと思います。
 次のページは、物質科学の分野です。これには非常に広い分野があるわけですが、特徴的なことを三つ挙げています。1番目は、結晶成長とか新材料合成、それから、熱物性計測です。ここには、3000℃ぐらいの金属とか酸化物、ガラスのようなものの液体を空中に浮かせて、表面張力とか粘性などの基本的な物性を計測するというものです。ここで大事なことは、壁がありませんので、高純度のまま計測できるという特徴があります。高純度材料の物性値を計測して、それを地上に活かしていくということです。それから、これは既に行われていますが、先ほどお話がありました高品質のタンパク質結晶です。これは非常に効率高く、いい結晶ができることがわかっておりまして、これとSPring-8を使ったプログラムが進んでいます。これは創薬の関係者も含めて関心があるところだと思います。
 2番目は、重要なところとして、これはまだほとんどやられていないのですが、燃焼科学というものを私は挙げています。下に写真がありますが、無重力ですから、対流はございません。ですから、非常に純粋で理想的な状態で燃焼が行われるわけです。燃料の粒(液滴)を並べておいて、どんなふうに燃焼が伝播しているかという実験を行うわけです。この写真は、落下実験とか航空機実験など微小重力下でやった結果です。非常に明瞭なことは、対流がないものですから、燃焼それ自身を非常にクリアな、原理的な理論と対応させて調べることができるということです。
 後でお話ししますけれども、例えばそれの一つの利用の方法として、今、燃焼学会の人たちが非常に熱心に、酸素燃焼によるグリーンエコのシステムを考えておられます。これは最後にお話ししたいと思いますが、このための基礎データをとるためにISSは極めて重要だという提案であります。
 次に、ISSの利用の方法について、私の提案を二つないし三つ、考えてみました。一つ目は、「きぼう」を共用の実験室として扱う方法で、文科省の方々がよくおっしゃっていますが、プラットフォーム化という問題です。ISSを自由に皆さんに使っていただいて、そこでの成果を地上に持って帰ってくるということで、先ほど言いましたタンパク質の結晶化というのはまさしくこれです。ただし、そこに丸1、丸2と書いてありますが、一つは実験請負という方法です。これは、ユーザーは設備をつくらずに、サンプルだけ持ってきて、欲しいデータをいただくという、委託・受託型の研究方法です。もう一つは、従来型で、研究者が自らISSの中に装置を持ち込んで実験、研究をやる方法で、これは既に課題を公募してやっておられます。これら以外にもう少し裾野を広げるやり方としては、計測の受託とか、新規材料の合成とか、先ほど言いましたタンパク質の結晶化の受託のようなことを、JAXAか、JAXA以外の機関がやられるということが一つあるのではないかと思います。
 これは既にネタがありまして、例えば、先ほど言いました浮遊実験ではタービンブレードの材料の物性値を調べるというようなこと、それから、製鉄のプロセスを、こういう浮遊炉の中で小さなシステムをつくって、純粋な形でいろいろなデータをとるということが行われようとしています。この他、これからJAXAの方で検討されており、生命系の方々が今是非利用したいと考えておられるのはマウス実験のような問題です。
 以上が、プラットフォーム型としてISSを皆さんに提供するというやり方ですけれども、もう一つプロジェクト型という方法があります。これは、ISSを言わば宇宙でのラボとして使いながら、メインの研究は地上でやるというものです。地上で技術開発をやって、そのうちのコアのテクノロジーに関して宇宙で実験を行うというものです。これはかなり限られたケースかもしれませんが、当たると非常におもしろいというか、波及効果のものすごく大きいものです。
 その例が、先ほど言いました酸素燃焼、オキシフューエルプロジェクトです。これは、燃焼自身の基礎データは宇宙で取得します。しかし、実際の作業、例えば火力発電プラント自身は地上にありますから、ISSで得られたデータを地上のデータにどうシミュレートしていくかという問題については、地上で取り組みます。そうすると、初めから地上でやればいいのではないかという意見もあるのですが、地上では現象が非常に複雑になってしまいます。というのは、対流のない理想的な状態、即ち宇宙で実験することで基本的なデータをとって、それに地上での対流の効果を足し合わせシミュレートしていく訳です。現象を足し合わせることは可能なわけですが、逆に、複雑な対流の中での燃焼を全部ひっくるめた現象からそれぞれの基礎プロセスを抽出するのは非常に難しいと思うからです。そういう意味では分離した現象を加算する方がはるかに分かりやすいし、経費は少なくて済むだろうという気がします。
 最後のページが、今お話ししました酸素燃焼システムの例です。地上での新規産業を見越して技術開発として宇宙ラボで何をやるかという戦略的利用の例で、宇宙ラボで取得した燃焼原理を地上での燃焼技術に移していって、それをプラントとか主要の産業に移していくというように、これは一つのモデルになるのではないかと思って考えたケースです。 
 2ページ戻って、これからのISSの使い方としては、地上産業のコアの部分、基礎的な部分を宇宙でやると非常に効率が高くなるというようなターゲットを探して、大きなプロジェクトを組んで進めていくという方法が、今後始まっていくべきことではないかと思います。それだけのデータがぼちぼち集まりつつあるということがお話ししたかったことです。
 もう一つ、文科省のほうから若手育成の問題が重要だというお話がありましたが、私もそれには非常に強い関心があります。特に宇宙環境利用の分野というのは、一番初めにお示ししたように、生命科学から物質科学、環境科学と非常に広い分野にわたっているわけですので、若手の人たちにとっては、教育上メジャーなフィールドはそれぞれのフィールドを持って、そこにスペースサイエンスとかスペーステクノロジーを合体したような教育システムになっていなければならないだろうという気がしています。
 この若い人たちにモチベーションを与える方法ですが、私の印象ではスペースサイエンス&テクノロジーに対しては、非常にたくさんの方が興味を持っておられると思います。単に宇宙というと、日本では「ユニバース」と「スペース」が一緒になってしまっているわけですけれども、この二つははちゃんと分けて考えるべきだと思っています。ただ、「スペース」に代わる良い日本語がないものですから私も苦労しているのですが、少なくともスペースサイエンスについて非常に強いモチベーションを持っている人たちがいます。この人たちに、JAXAを中心としたウェブとかホームページで啓蒙する必要があるのですが、もう一つの問題は、前のセクションでお話がありました大学教育の問題があると思います。ここには書いていませんが、総合研究大学院大学という、今の宇宙科学研究所が中心になっている教育システムはドクターを中心とした教育になっているのですが、このやり方はもうぼちほぢ変えるべきではないかという気がしています。
 「中間取りまとめ」の参考の35ページに、ISAS(宇宙科学研究所)が中心になった大学院生受入れという表があります。これを見ていただきますと、非常に多くの学生がこれに関与しているように見えます。修士課程に23年度受け入れた学生数は169人、博士課程が113人ですので、この数がそのままこの分野の専門家になるとすれば、これは十分な数であると思います。ただ、問題は、クオリティと言っては何ですが、モチベーションも含めてこの実体がどうかという問題です。
 私は10年も前に大学を辞めていますので現在の状況は分からないのですが、ここに書かれています東京大学の学際講座とか連携大学院とかいう問題は、その当時とあまり変わっていないのではないかと思います。これの一番大きな問題は、それぞれの大学の教育プログラムの中で(宇宙関係の研究機関の)指導教官が出かけて教育を行ってやっているのですが、「宇宙科学コース」という纏まったものではないということです。特にマスターコースの教育、現在既に大学の制度はマスターコースが一番基本的な、その道の専門の教育を与えるコースになっているはずなのですが、宇宙科学に関しては残念ながらこれだけの院生に対する教育体制になっていないと思います。少なくともマスターコースの宇宙科学プロパーな教育システムを整備するということが、非常に重要な根幹にかかわる問題だと思います。
 小・中学校における啓蒙教育の問題もありますけれども、結局、大学及び大学院で高等専門教育をどう受けるかという問題、それから、どういうふうに与えるかという問題、そこのシステムについては十分考えるべきだと思います。10年前はこういうシステムだったわけですけれども、もう既に総合大学院大学制度も十何年になるわけですから、そのときの状況からかなり各分野が成長していますので、もう一度この大学院制度のシステムは考えるべきではないかという印象を持っています。
 ちょっと長くなりましたが、以上です。

【柘植部会長代理】  ありがとうございます。
 事務局、それから、壽榮松先生のお話を伺いまして、ぜひともISSについての議論をお願いしたいと思います。どこからでも結構でございますので、よろしくお願いします。

【井上臨時委員】  まず、最後に壽榮松先生がおっしゃった宇宙科学研究所で行われている大学院教育で、いわゆるスペースを使っていくことへの関わり方みたいなことを教える実地教育とでも言うべきことについては、現場で大学院生たちが宇宙空間を使ったいろいろな活動にかかわっていくという実体験の場所は提供できていると思いますし、それを学問として、ある種の体系化された学問という形で教える部分については、総合研究大学院大学については宇宙科学研究所にそういうコースができていて、そこでそういう教育が行われています。
 ただ、東大とかほかの大学との連携のなかで、マスターでの講義であるとかゼミであるとかは、大学に依拠した部分になっていることはおっしゃるとおりですが、工学的な意味での体系的なものは、各大学の宇宙工学と連携していて、ある種同じような感じのものがつくられていますので、かなりその辺は連携がとれているのではないかと思います。ただ、宇宙環境利用という観点に限ると、おっしゃるように、実際にそれを使っていくモチベーションを学生たちが持って、どういうふうに使っていけばいいかということを教えるというようなところはまだ不十分かと思います。
 それに関係するのですが、宇宙ステーションの一つの大事な役割は、まさにここに書かれている「高い閾値の除去」であると思います。今後、宇宙ステーションなり宇宙を使ったいろいろなものが広がっていくためには、地上で行われていることのある部分を宇宙で比較的手軽に行うことができるということがものすごく重要だと思います。宇宙でしかできない科学についてはこれまで随分進んできたと思うのですが、メインは地上でいろいろなことが行われている分野で、その一部を例えばマイクログラビティという環境に切り出してピュアな実験をするというように、比較的簡単に地上での実験の延長としてISSを使えるようになるということが、ものすごく大事だと思います。宇宙ステーションはぜひそういう方向でいろいろなものに使われていくことが考えられるべきだと思います。
 それから、もう一つは、工学的な意味で宇宙空間を使っていく動きとしては、軌道間輸送ということもありますし、新しく衛星を打ち出すということもあるかと思います。そのような宇宙空間の使い方の可能性を導くために宇宙ステーションを使っていくということが、これからどんどん広げられるべきと思います。その部分の答えはすぐ出ないのですが、いろいろ欠けている価値がどうだと言われることに対しては、これは将来こんなことができるようにするための投資という言い方にならざるを得ないかもしれませんけれども、宇宙ステーションというのはその点でも大きな役割を果たしていくべきだと思います。

【柘植部会長代理】  ほかに御意見は。どうぞ。

【服部臨時委員】  私は井上先生と違って産業界の人間なので、やはり結果を早くと考えます。ただ、毎年400億円を使う理由を産業への貢献という観点から考えると、いつも出てくる説明はタンパクの結晶合成というものしか見えてないという現状があるわけですので、それほど簡単なものではないのかなとも思いますし、あるいは、今、井上先生が言われたように、地上での現象との相関をとりながら進めるということも、非常に大事なことかもしれません。
 壽榮松先生に、SPring-8に関係されておられたという観点でお聞きするのですが、SPring-8もかなりのお金を注ぎ込みました。現実にその利用価値、アプリケーションはどこにあるかということについては、明確な方向がでないまま進んだとも聞いています。あるいは、コンピュータの「京」にしても、バイオでの応用とか言われましたが、一部分の目的だけがクローズアップされた中で設置されたように思います。
 しかし、今、SPring-8を見ると、かなり応用範囲は広がっていると思います。そういう点から考えて、大きな基盤技術のISS、あるいはSPring-8、あるいは「京」、当初は批判もあったようですが結果的には最先端技術として応用分野が拡大しているのではないでしょうか。SPring-8はかなり今認知されていると思いますが、御経験からの御意見をお聞かせいただければと思います。

【壽榮松氏】  先ほど言いましたように、私は2001年にSPring-8に行ったのですが、その当時は施設利用に対する批判がありました。結局、取り組んだことと言えば、産業利用と言われる部分をどういうふうに広げるかという問題です。それには文科省の方々にもいろいろなケースで手助けいただいたわけですけれども、結局先ほど言いましたように、請負事業のようなものに取り組みました。初めて利用する人々には、敷居が非常に高いものですから、ユーザーには、「まずはサンプルだけ持ってきてください、そうすれば測ります」と広報する、 あるいは、計測については、こちらからもたくさんの援助をして、ユーザーの求めておられる成果や、ユーザーの抱える問題に対してどう解決するかという技術的な、放射光を使うための技術的なアドバイスもして、かつ実験もかなり手伝うということも行いました。
 初めのころの産業利用は、全体の利用の数%ぐらいだったのですが、幾つか支援プログラムをつくった結果、現在は全体の25%ぐらいになっていると思います。そういう努力を10年ぐらい継続したために、今おっしゃられましたように産業界の方々にも、SPring-8の性能を評価いただいて、あそこでやった実験は間違いないんだという定評と言いますか、かなり評判がよくなっていると思います。しかし、それには、SPring-8のスタッフが非常に努力したことは事実です。
 ですから、産業界の方々が要望されている内容をSPring-8側が聞きながら支援する訳ですから、スタッフの配置なども関係するわけですので、そういうスタッフの配置とすることもかなり工夫して、徐々にやってきたと私は思っています。そこには、例えばスタッフの人件費の問題とか細かいことはいっぱいあるのですが、文科省をはじめとして、その部分については非常に評価していただいたしサポートしていただいたので、伸びていったのだと思います。
 世界に三つ大きな放射光施設があるのですが、他のところの産業利用は、多分10%にも達していないです。アメリカでも10%もいっていないです。でも、日本の施設は二十数%になっています。そういう意味ではこれは役に立った施設だと思います。ただコストに見合う成果があるかどうかについては、外部の方が決めることで、言及いたしません。

【服部臨時委員】  つまり、事務局が言うようには、費用対効果というものはそれほど簡単に測れるものではないということですよね。そう言っても理解してもらえない人達もいるとは思いますが、私はSPring-8が一つのいい例だと思いますので、そういう展開の仕方の中で、ISSの基盤技術は日本で非常に代えがたい技術であるというシナリオとして書いていくのが重要かなと思いました。

【柘植部会長代理】  今の話の延長ですが、私はもう少しにじり寄りたいと思います。にじり寄りたいというのは、科学技術・学術審議会の中でいつも議論になることは、基礎研究は、その定義からも何の役に立つかわからないけれども知りたいということが基礎研究であり、それに対して「目的基礎」という言葉もあって、ピュアサイエンスからするとそれは応用であって応用研究だという意見もありますが、「目的基礎」という考え方があります。
 このISSの利用拡大という話は、ピュアサイエンスをやっているという話と、目的を持った基礎、それは応用だということかもしれませんが、どちらであるかをISS利用拡大でもはっきりまず宣言して、それで投資する価値があるかないかということを、片方は純学術的な場で生き残るかどうかというディベート合戦で、もう一つのほうは、仮説ではあるものの社会的な価値につながる道をきちっと描いているかということで、それぞれを評価して、投資する価値があるかどうかを考えるようにしてはどうかと思います。
 その中で、今のSPring-8には私も関与しましたし、スーパーコンピュータも、私は非常に残念な思いもしました。今は創薬の分野でスーパーコンピュータは必要ですし、SPring-8はリチウムイオン電池のその場分析のために不可欠ということで、まさに目的基礎に不可欠になっています。ですので、ISSを利用するという話は、どちらのことをしているかということを、この方策の中できちっと議論すべきだと思います。
 私は、今取り組んでおられる様々な、ライフサイエンスに対するものも、燃焼にしても、科学者や研究者がどれだけ本気になっているのかと聞きたいと思います。山中伸弥さんは本気になったから達成できたわけですし、しかもあれは目的を持った基礎研究だったわけです。そこのところはタックスペイヤーに対して説明責任があると思います。せっかくのいい機会だから基礎研究をやりたいとか、仮説だけれども社会貢献につながるとか、その程度の「いい加減」というとものすごい反撃があるかもしれませんが、厳しく言えば命をかけているかということぐらいのチェックあるいは説明が必要なのではないかと思います。そうしない限り年間400億円のものに対して、基礎研究重視という話だけでは、タックスペイヤーに対してあまりにも申し訳ないと思います。そこのところは、利用方策についてもうワンランク、ファインメッシュで説明ができるようにしてもらわないといけないなと思います。

【井上臨時委員】  今の御意見はある部分は理解できますが、私は、SPring-8というのは非常にいい例だと思うのですが、おっしゃったような利用の成果が出てきた理由は、まさにSPring-8を使って自分の研究をやりたい人たちがそこに乗り込んで、自分の研究のためにあれをいいものにしようとして動かして、その上に利用が生まれきて、その上に今のリチウム電池があるのだと、私は思います。
 ISSも同じで、まず、宇宙ステーションを使ってこんなことをやってみたい、あんなことをやってみたいと思う人たちが一生懸命やる部分がないと駄目で、そこは何かができればこういうものができるという利用に引っ張られるものではないと思います。それにリソースとして大きなものをかける必要があるというわけではないのですが、そこがまずベースにあることが重要です。その上で、いろいろな利用の課題に応えていくために、本当に大変なことは、閾値を下げるための人を充実させることだと思います。
 さっきのSPring-8も、いろいろな人たちが動くようになって、ようやくうまく動くようになったと思いますので、そのような利用者のために装置を適切に動かす人たちを充実させることが、宇宙ステーションの利用が拡大するためにはものすごく大事なことだと思います。

【壽榮松氏】  一言だけ柘植先生のお話に補足しますと、SPring-8での産業利用は、今は25%ぐらいだと思いますが、あとの75%は、少なくとも半分以上の利用は、大学や研究所の研究者です。彼らはかなり基礎的なことをやっているわけです。そこから出てきた成果を、これはイオン電池に使えるとか、これは燃料電池に使えるとかを考えて、そのパスを拓いているわけで、初めに基礎科学のメインボディのところをつくらないと発展は望めないと思います。  残念ながら、まだISSはその段階に来ていないと思います。純粋な科学研究、ここでいう従来型の研究で、タネになるような原理ができているとは、私にはまだ思えないです。そういう研究を続けながら、もう一つの目的オリエンテッドな研究も行うということは当然必要だと思いますので、説明図の下の「宇宙ラボ型」を書いたわけです。だけど、まだ下のものだけでいくというわけにはなかなかいきませんし、今の段階では両方を見ながら進めていくのがいいのではないかという気がしています。

【柘植部会長代理】  見方としては、先生の見方、あるいは服部委員のおっしゃったことと同じですが、私は、地上でピュアサイエンスを伸ばし、そこからとんでもない目的基礎、応用が出てくるという話と同じペースで、研究者も科学者も考えていいのだろうかと思っています。もっと真剣味が求められていると思うのですが、そこがこの話だけでは伝わってきません。いい場を与えられているから研究しましょうというぐらいの、「安易」という言葉をあえて使いますが、そういうふうに流されていないかという観点で、我々としてもそこまで踏み込んでしっかりやってくれているということの確証が欲しいということであります。

【井上臨時委員】  少なくとも私は宇宙空間を使ってサイエンスをやるという立場できた者ですけれども、正直なことを言うと、宇宙ステーションというのは、おっしゃるとおり、今やこういうものが与えられたので、それをどういうふうに使えるかという発想で考えてきたところがありました。だだ、お話しにもありましたように、生命科学とか物質科学のある部分には、これだったら非常におもしろいことができると研究者が本気で思い出すようなことが生まれつつあるところだと思います。ですから、今や、ISSを使って山中先生のようなものをやってみようと思う人が生まれつつある状況だと思います。

【服部臨時委員】  生まれつつある状況まで来ていると言えるのですか。

【井上臨時委員】  と思います、こうやれば何とかできるということは見え始めていると思います。

【柘植部会長代理】  それを、科学技術・学術審議会のこの場でも、それから、政治家とか当事者判断をしてくれる責任者たちも実感して、「そうだな」と言ってもらって、第二のノーベル賞をもらおうというところまで応援してもらえるところまで持っていかないといけないということですね。
 時間がまいりました。打ち切らざるを得ないのですが、貴重な議論ができたと思います。
 壽榮松先生、お忙しいところ大変ありがとうございました。
 それでは、きょうの議論はフルスペクトルの議論だったと思いますが、推進方策の最終の取りまとめに向けて、事務局で今日の議論を整理していただいて作業を進めていただきたいと思います。
 最後に、事務局から「その他」ということで、何かございますか。

(3)その他

【竹内企画官】  それでは、最後に会議資料と議事録の公開について御説明いたします。
 宇宙開発利用部会の運営規則第3条に基づきまして、資料は公開となります。後日、文部科学省のホームページで公開ということになります。
 それから、同規則4条に基づきまして、議事録も公開という予定になっておりますので、後日、先生方に確認をさせていただいた上で公開という手続になろうかと思います。
 以上でございます。

【柘植部会長代理】  順序が逆になりましたけれども、柳課長、きょうの締めくくりとして決意表明でもいいですから、一言お願いします。

【柳課長】  本日は貴重なお話をいろいろ聞かせていただきまして、ありがとうございます。我々はまだまだ勉強途上でありまして、データも不十分なところがあります。先ほど柘植部会長代理からフルスペクトルという話があったのですが、幅広い視点がある中でどういうふうな結論に持っていくのかについて、中でも議論をずっとしているところです。その意味では、我々としてもシャープにどの方向でいくかということがまだ出ていない状況でありますけれども、今日いただいた話、それから、これまでいただいた話を含めて、我々として方向性が明確になるようなものをつくり上げていきたいなと思っております。
 今後とも御指導いただければと思います。本日はどうもありがとうございました。

【柘植部会長代理】  それでは、本日の議事は終了いたします。どうもお疲れさまでした

【柳課長】  どうもありがとうございました。

(説明者・オブザーバについては敬称略)

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