今後の核融合研究開発の在り方に関わる審議事項について

  第5期においては、トカマク方式、及び学術研究としてのヘリカル方式及びレーザー方式の核融合研究開発の現状と課題や、今後の推進体制の在り方等について審議を行った。第5期の議論を踏まえ、今期は主に「原型炉概念の構築と設計作業」を今後どのように行っていくことが望ましいのか、下記2~9に言及しながら意見交換を行い、それを踏まえて、全体として整合性を持たせた形で、本作業部会として総合的な審議を行うこととする。

  1. 原型炉概念の構築と設計作業
  2. 超伝導コイル用新線材開発
  3. ブランケット開発
  4. ダイバータ開発
  5. 理論・計算機シミュレーション研究
  6. 炉心プラズマ研究
  7. 核融合燃料システム開発と環境安全性評価
  8. 核融合材料開発と規格・基準・信頼性
  9. 加熱・電流駆動システム開発 

(検討に当たっての観点)

  1. これまでの政策、研究開発方針、進捗状況、諸外国の状況等を踏まえ、我が国として原型炉工学設計活動を開始(第四段階に移行)するか否かの判断を行うまでに、第三段階核融合研究開発基本計画の枠内で実施することが必要な研究開発課題及びその実施体制について検討を行う。
  2. 現在国際協力で進められているITER計画やBA活動に対し、今後の両活動を円滑に進めるために、現在までに得られている国内の研究・技術開発成果から取り入れるべきものはないか、また、逆にITER計画やBA活動から得られる成果を、今後の原型炉の研究・技術開発に係わる国内活動に向けてどう効果的に活かしていくのかという観点から、組織体制の在り方や役割分担を含め、成果の相互還流を効率的に進めるための具体策について検討を行う。 

(具体的な検討事例)

1.原型炉概念の構築と設計作業

(1)原型炉概念設計について

  • 原型炉の概念設計において、最も重要な概念は何か。
  • 「一定の経済性」の定義をより明確化する必要性はないか。
  • 原型炉の安全性確保とその概念についてどのように考え、今後いかに安全性及び潜在的リスクを社会的受容性を含め適切に評価し、アピールしていくか。
  • 原型炉概念設計活動での設計作業を通じ、将来のエネルギー利用の多様性も考慮に入れて、設計の幅を示すべきではないか。(発電だけの設計概念で十分なのか。)

(2)BA活動原型炉設計・R&D調整センター活動との接続性について

  • BA活動において構築されるプレ概念設計とR&D実施結果との接続性、継続性について、現時点及びBA活動終了後においてどのように考えるのか。
  • BA活動において構築されるプレ概念設計とR&D実施結果を踏まえて、現時点及びBA活動終了後においてどのように概念設計作業を進め、原型炉工学設計活動に向けた工学R&D項目の絞り込みをどのように考えるのか。

(3)原型炉開発に向けての組織体制、スケジュールについて

  • 原型炉の研究開発を進める上において、既存の組織体制ではどのような点が問題になるのか。また、どのような形でその問題点を解決するのか。
  • 原型炉概念設計活動に携わる人材、組織をどのように構成すべきか。産官学の連携協力体制は今後どのように強化するのか。人材の流動性の確保をどう構築するのか。
  • 原型炉工学設計活動に円滑に入り、同活動を発展させていくために望ましい組織、体制、規模とはどのようなものか。
  • 構築された概念設計は原型炉工学設計活動に円滑に入るためには最低限の工学設計要件を満足する必要があるが、その評価、検証はどのように行うのか。

2.超伝導コイル用新線材開発

(1)Ni3Alなどの新線材の開発と最適な選択について

  • 現在の新線材の経済的な製造に向けた開発状況をどう考えるべきか。
  • 今後、どのような手順や判断基準により、原型炉における要求性能を満たす新線材の選択、開発、性能実証などを行うのか。

(2)高温超伝導材などの新線材の開発と最適な選択について

  • 現在の新線材の開発状況をどう考えるべきか。
  • 原型炉概念設計活動では、どのような手順や判断基準により、原型炉における要求性能を満たす新線材の選択、開発、性能実証などを行うのか。

(3)新線材開発に係る研究機関等における研究協力体制について

  • 新線材開発を促進するために、JAEAやNIFS、及び産業界や関連研究機関との研究協力体制について強化、見直しを図るべき点はないか。

3.ブランケット開発

(1)原型炉の稼働率と遠隔保守性との関係

  • 原型炉用ブランケットを研究開発するにあたり、特に留意すべきことは何か。
  • ブランケットの遠隔保守性が炉の稼働率に大きな影響を与えるが、この遠隔保守性と炉の稼働率の関係について、基本的にどのような考え方に依ることとするのか。

(2)原型炉用ブランケット開発に対する基本姿勢について

  • 同じ固体増殖・水冷却方式でも、原型炉用ブランケットでは、中性子負荷や熱負荷、発生するトリチウム量などがITERのテストブランケットモジュール(TBM)と相当異なる。原型炉用ブランケット開発に向けて、TBMのみでは不足となるブランケット構造内における反応の分析や対策、及びその機能検証について、どのような考え方で今後進めるべきか。
  • 高温化を含むブランケットシステムとしての技術的成立性や健全性について、原型炉概念設計活動においてどこまで総合的に見通し、原型炉工学設計活動に向けた工学R&D項目をどの程度厳選できるか。

(3)先進的なブランケット開発に対する考え方について

  • 固体増殖・水冷却のブランケット開発と並行して、液体ブランケットモジュール等先進的なブランケットモジュールの開発等については、どのような考え方により研究開発を進めるべきか。

4.ダイバータa

(1)ダイバータについての基本概念を原型炉概念設計活動においてどう構築するか。

(2)原型炉概念設計活動において第一壁材・冷却材の選定をどこまで行うのか。

  • 選定にあたり、特に留意すべきことは何か。
  • 選定基準はどのように設定すべきか。

(3)ダイバータプラズマの制御方式について

  • 原型炉に適用可能なダイバータプラズマの制御方式は原型炉概念設計活動で見通せるのか。
  • 炉心プラズマとダイバータプラズマの整合性をどうとるべきか。

(4)ダイバータシステムの試験について

  • ダイバータシステムの中性子照射試験や熱負荷試験は原型炉概念設計活動でどこまで実施できるのか。

(5)遠隔保守性

  • ブランケット同様、ダイバータの遠隔保守性は炉の稼働率に大きな影響を与える。この遠隔保守性と炉の稼働率の関係について、基本的にどのような考え方に依ることとするのか。

5.理論・計算機シミュレーション研究

(1)理論・シミュレーションによる予測手段の確保について

  • 原型炉の設計開発に必要不可欠な理論・シミュレーションによる予測手段を具体的にどのように確保すべきか。
  • 予測精度の向上のために必要なコードの開発はいかなるものか。

(2)デジタルデザイン技術を用いた工学設計について

  • デジタルデザイン技術をどのような形で工学設計に適用して効率化を図るべきか。

6.炉心プラズマ研究

(1)原型炉工学設計活動に向けて必要な研究項目は何か。また、炉心プラズマの物理の体系化を図るために、今後、進めるべきことは何か。

(2)核融合科学研究所や大学等からの知見及びJAEAからの研究開発成果の提供と活用について

  • プラズマ物理に係る学理をより効果的に原型炉の研究開発に反映させるためにはどうすべきか。

(3)ITERで実現する燃焼プラズマとJT-60SAで達成する高圧力定常プラズマの統一的な物理的理解をどのように行い、原型炉で要求されるプラズマ性能に対する予測精度をどこまで確保できるのか。

(4)JT-60SA及びITERへの参画を通じて行う若手研究者・技術者の育成は、どのような仕組みで実現させるのか。

7.核融合燃料システム開発と環境安全性評価

(1)リチウムの抽出・確保の方策について

  • リチウム同位体の回収効率を高めるために、どのような技術的見通しを得る必要があるか。
  • 国の元素戦略におけるリチウムの位置付けについて、どのような主張をすべきか。

(2)燃料供給シナリオをどう最適化するのか。生成、分離、供給と言ったトリチウムサイクルをどう構築するのか。

(3)生成から回収までのトリチウムの潜在的リスク評価、環境安全手法をどのように確立するか。

(4)トリチウムのインベントリを考慮した材料の開発目標をどう設定するか。

(5)トリチウムの環境動態、生態内の挙動についてどのように評価し、説明すべきか。

8.核融合材料開発と規格・基準・信頼性

(1)安全性研究と安全基準の策定について

  • 核融合固有の安全性の特徴に依拠した規格、基準の策定は今後どのように進めるべきか。その際、原型炉概念設計活動で実施する内容と規模はどのようなものか。また、それに続く原型炉工学設計活動で実施する内容と規模について、どこまで絞り込めるか。
  • 基準策定のためのデータベース等の整備はどのように進めるのか。
  • 安全規制にかかる体制の整備や人材育成についてはどのようにすべきか。
  • 日本の国際的なデファクトスタンダード化戦略はどうあるべきか。

(2)材料開発

  • 核融合炉の材料開発の戦略は、どのように策定するのか。
  • 材料開発に必要なIFMIFに対する、我が国の考え方を明確化すべきではないか。

9.加熱・電流駆動システム開発

(1)原型炉に向けた加熱・電流駆動機器の工学的・技術的基盤・体制の確立をどう図るのか。

(2)連続運転を可能とする高効率の加熱・電流駆動機器の実現をどう図るのか。

(3)保守、メンテナンスの方法はどうあるべきか。

お問合せ先

研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

小野
電話番号:03-6734-4163
ファクシミリ番号:03-6734-4164

(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当))