研究開発評価部会(第40回) 議事要旨

1.日時

平成23年8月24日(水曜日)16時~18時25分

2.場所

文部科学省3階1会議室

3.議題

  1. 科学技術振興調整費及び科学技術戦略推進費による実施プロジェクトの評価について
  2. 研究開発評価システムの改革について
  3. 科学技術戦略推進費の採択プロジェクトの選定について
  4. その他

4.出席者

委員

平野部会長、室伏部会長代理、佐藤委員、有信委員、有本委員、伊地知委員、受田委員、大島委員、大隅委員、岡村委員、金子委員、小林委員、諏訪委員、田中委員、東嶋委員、冨山委員、奈良委員、西島委員、福士委員、吉川委員
(各評価作業部会主査等)
阿部プログラムディレクター、福和主査、三村主査、板生主査、角南副主査、山本主査

文部科学省

合田科学技術・学術政策局長、渡辺科学技術・学術政策局次長、常盤科学技術・学術総括官、行松科学技術・学術戦略官(調査・評価担当)、大山科学技術・学術戦略官(調整・システム改革担当)、塩田政策課企画官、村上科学技術・学術戦略官付補佐

5.議事要旨

【平野部会長】  定刻になりましたので、第40回の部会を開かせていただきます。 本日は、議事次第にありますように、3つの議題について審議をいただきます。1番目に科学技術振興調整費及び科学技術戦略推進費による実施プロジェクトの評価について、2番目に研究開発評価システムの改革について、3番目、科学技術戦略推進費の採択プロジェクトの選定について、これらをご審議いただきます。そのうち、3番目の科学技術戦略推進費の採択プロジェクトの選定については、研究開発評価部会運営規則第4条第三号「個別利害に直結する事項に係る案件、または審議の円滑な実施に影響が生じるもの」でありますので、審議2までは公開といたしまして、審議3より非公開とさせていただきます。
 続きまして、配付資料の確認をお願いします。

【村上科学技術・学術戦略官付室長補佐】 本日の資料でございますが、議事次第の裏面にございます配付資料一覧のとおりでございます。資料1-1から1-4までが議題1関係の資料、資料2-1から2-5までが議題2関係の資料、資料3-1から3-4までが議題3関係の資料でございます。そのほか、参考資料としまして研究開発評価の実施概要等について、机上資料としまして、「文科省における研究及び開発に関する評価指針」、「研究開発評価システム改革の方向性について(審議のまとめ)」の小冊子2冊を机上に配付させていただいてございます。資料に欠落等がございましたら、議事の途中でも結構ですので、事務局までお申し出いただければと思います。 

【平野部会長】  それでは、議題1「科学技術振興調整費及び科学技術戦略推進費による実施プロジェクトの評価について」の審議に入ります。
 まず、事務局より資料1-1から1-4について説明をお願いします。

【大山科学技術・学術戦略官】  それでは、お手元の資料1-1から1-4までご説明させていただきます。
 まず資料1-1が、科学技術戦略推進費と科学技術振興調整費の実施プロジェクトの評価のスケジュールでございます。本日8月24日の部会で評価の方法をお決めいただき、9月から作業部会を設置し、10月、11月、12月にかけまして、書面の査読、ヒアリングを実施いたしまして、12月に評価結果の報告書を取りまとめるという予定になってございます。この作業を作業部会で進めていただきました後、年明け1月に研究開発評価部会に対しまして、実際に評価を実施しました作業部会から報告をして、研究開発評価部会において結果の決定をいただきます。それから、追跡評価という、プロジェクトの実施が終わって一定期間たった後の評価についても、結果をご報告させていただきます。最終的には、総合科学技術会議に報告をして、結果を公表するという流れになっております。

 続きまして、お手元の資料1-2をごらんください。科学技術戦略推進費と科学技術振興調整費による実施プロジェクトの評価の進め方についてでございます。科学技術振興調整費が昨年度までで廃止されて、今年度から科学技術戦略推進費が新しく創設されたわけでございます。この両者の違いにつきましては、科学技術戦略推進費のほうが総合科学技術会議の主導性が一層高まっているという面があるわけですが、科学技術振興調整費から科学技術戦略推進費になりまして、制度面でも変わった面、変わらない面があり、評価につきましては、総合科学技術会議の定めました科学技術戦略推進費に関する基本方針の中でも、特段変えるべきといったご指示がなく、文部科学省で個別プロジェクトの評価を行う旨記載されてございますので、基本的には昨年度までの科学技術振興調整費の評価手法を踏襲してございます。

 まず基本的考え方でございますが、科学技術戦略推進費の実施プロジェクトについて、中間評価、事後評価、追跡評価を行うということで、科学技術戦略推進費につきましては総合科学技術会議が各府省の施策を俯瞰して政策を実施するために活用するということでございますので、こういったプログラムの趣旨・目的を踏まえて適切に評価をするということでございます。また、科学技術振興調整費につきましても、これで実施されたプロジェクトも総合科学技術会議の方針に基づいて決定されてきたという経緯がございますので、科学技術戦略推進費に準じて同様の考え方で評価を進めるということでございます。

 評価の目的ですが、すぐれた研究開発を見出し、伸ばし、育てるということ、そして、競争的で開かれた研究開発環境を創出することにより、すぐれた研究開発を効果的・効率的に推進するということでございます。それと同時に、評価の結果を実施プロジェクトの改廃、あるいはプログラムの評価・設計、今後の方針の策定等に反映させて、かつ国民に対する説明責任を果たしていくということが目的でございます。

 評価対象のプロジェクトにつきましては、原則として、科学技術振興調整費、それから科学技術戦略推進費によるすべての実施プロジェクトを対象といたします。ただし書きといたしまして、昨年度まで科学技術振興調整費で実施しておりまして、今年度から文部科学省の補助金という形に模様替えいたしました「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成プログラム」だけは、担当課で別途の評価の場を設けて評価するということになってございます。

 評価時期と検討事項でございますが、中間評価につきましては、当初、プログラムで定められたタイミングということで、例えば5年物のプロジェクトですと3年目といったようなタイミングでの評価を行います。中間評価では、中間的な成果の価値等について検討を行って、次年度以降の継続の可否や、研究内容の見直しの要否等についてご検討いただきます。事後評価につきましては、プロジェクトの終了年度の翌年度に実施をいたしまして、今後、事後のプロジェクトの選定、制度の見直し、あるいは運用の改善等に反映させていくということをねらいとしております。追跡評価につきましては、実施プロジェクトがすべて終了した後、一定の時間を経過してから、アウトプットから生み出された効果・効用(アウトカム)、あるいは、波及効果(インパクト)といったものを確認して、また事後に生かしていくということをねらっているものでございます。

 評価の方法でございますが、実施プロジェクトに関する分野・領域についての知見をお持ちの専門家の方、あるいはシステム改革や研究開発マネジメントについての知見を有する方々にご評価をいただくということで、研究開発評価部会の下に評価の作業部会を置いて、そちらで具体的な評価を実施していただきます。研究開発評価部会の役割としましては、この評価の作業部会からの報告を踏まえて、総合的な視点で検討を行って、結果を取りまとめていただくということでございます。以下、観点といたしまして、平均的に判断するばかりではなくて、すぐれた点を積極的に取り上げるといったようなこと、また、発展可能性等にも配慮するといったようなこと、被評価者にも意見提出の機会を与えて行うといったようなこと、さらにはアウトリーチといったようなことにも考慮して評価を行うといったことが、記述されてございます。

 評価の観点・基準でございますが、独創性、革新性、先導性、発展性といった科学技術的な観点からの評価のみならず、社会・経済への貢献といった観点からの評価も行うということでございます。

 評価作業部会における評価の進め方でございますが、評価作業部会の委員につきましては、主査を含めまして部会長にご指名いただくということでございます。当然ながら、利害関係者の方がプロジェクトの評価に加わらないように留意するということも記述してございます。

 評価結果の取扱いでございますが、結果につきましては、総合科学技術会議に報告をした上で公表いたします。また、今後のプロジェクトの改廃、プログラムの考え方・方針等に反映させていくということを想定してございます。

 続きまして資料1-3でございますが、資料1-2が評価のあり方の大きな基本方針だったわけでございますが、資料1-3は、23年度の科学技術戦略推進費と科学技術振興調整費の実施プロジェクトの具体の内容、実施のあり方について定めた案でございます。具体的に23年度は、83のプロジェクトについて、中間評価、事後評価を行うということにしてございます。

 評価の実施体制につきましては、文部科学省から事務委託をしております科学技術振興機構(JST)で作業部会を設置・運営して、評価を実施していただくということでございます。具体的には7つの評価の作業部会を置いて実際の評価作業に当たるということで、プログラムの内容に応じて7つの作業部会が設けられる予定になってございます。

 実施方法の大きな流れでございますが、まず、被評価者が成果報告書を作成・提出いたします。これを事務局において確認をします。そして、プログラム・オフィサー(PO)のお一人に主査補佐をお務めいただくわけですが、主査補佐から作業部会の委員に対して説明を行った上で、まず作業部会の委員に書面の査読を行っていただきます。そして、必要な確認事項等を整理して、事務局から被評価者にそれを伝えるという作業がございます。この成果報告書の内容を見た上で、必要であれば、作業部会の委員以外にさらにご専門の方にご意見を求めるために、メールレビューを行う場合もございます。これについては、主査、主査補佐で精査し、やるかやらないかを決定した上で進めるということでございます。

 こういった作業を踏まえまして、評価作業部会におきましては、必要な確認を行った上でヒアリングを行い、評価結果を決定いたします。この結果については、評価作業部会の主査から研究開発評価部会に報告いただき、結果については研究開発評価部会において決定するという流れでございます。

 利害関係の範囲でございますが、実施機関と同一の機関に所属する等といったような基準により、利害関係者についてはご参画いただけないということになってございます。

 資料の5ページ目、6ページ目に、今回の中間・事後評価の対象プロジェクトの一覧がございます。また、資料の7ページ目以降は、それぞ

れのプログラムの中間評価、事後評価ごとの評価の項目、評価の視点が順次列記されてございます。

 それから、部会長にお決めいただきます評価の作業部会の委員の選定基準を記載してございます。それぞれの分野での知見を有する方々にお願いするということでございます。

 最後に、資料1-4でございますが、追跡評価の実施についての案でございます。追跡評価につきましては、大綱的指針、あるいは文科省の評価指針に則って、研究開発プロジェクトの終了後、一定の時間を経過してから、波及効果や副次的効果を把握するために実施すべきとされているものでございます。科学技術振興調整費につきましても、平成17年度から追跡評価の仕組みを導入して、これまでにも幾つか実施しているところでございます。科学技術振興調整費につきましては昨年度で廃止されたところではございますが、科学技術振興調整費で実施したプログラム・プロジェクトの波及効果・副次的効果というものを見ていく、そして今後に生かすということも重要でございますので、引き続き実施するということで考えております。

 そこで、23年度に取り上げるものとして、「産学官連携共同研究の効果的な推進プログラム」を考えてございます。理由でございますが、まず、追跡評価の対象は、平成13年度以降のプログラムにしたいということがございます。これは、13年度以降、第2期の科学技術基本計画を受けまして、科学技術振興調整費において実施するプログラムが、システム改革に資するものが中心になってきたためでございます。さらに、プロジェクトがすべて終了して数年経過しているということ、投入金額がある程度大きくて波及効果等を見るに値するということ、といったような基準でどのプログラムを対象にするかを考えたわけでございますが、「産学官連携共同の効果的な推進プログラム」につきましては、平成14年度にスタートをして平成19年度に全プロジェクトが終了しており、また、企業とマッチングして実施するということから、波及効果を見ていく価値があるだろうということで、こちらを選定したというところでございます。

 実施に当たりましては、プログラムの設計、評価手法に関する改善事項が分析・提案できるように努めるということで、将来の政策・施策の形成、あるいは研究開発マネジメントに生かすことを念頭に置いてございます。

 この対象になっておりますプログラムにつきましては、全プロジェクトで76ございまして、資料の4ページ目以降に実際に対象になりますプロジェクトの一覧、それから、スタート時の平成14年度の公募要領も後ろに添付させていただいてございます。プログラムの概要は、産学官の共同研究を効果的に進めようということで、大学、独法等の研究開発シーズと民間企業のニーズをマッチングさせて、マッチングファンド方式で実施したものでございます。3年間のプロジェクト実施期間ということで実施をしたものでございます。

 追跡評価の方法でございますが、このあたりは特にご意見をちょうだいできればと思っておりますが、評価のやり方、あるいは加味すべき観点等につきましては、指標として、成果の発展状況や活用状況ですとか、この研究開発成果がもたらした科学技術的あるいは社会・経済的な効果・効用、波及効果といったものを分析していこうとしております。手順といたしましては、ヒアリング調査ですとか、あるいは研究代表者、これにかかわった教職員、外部評価委員会等に参画された外部の有識者といった方へのアンケート・インタビュー等を想定しております。その後の展開状況としましては、例えば他のプログラムを獲得して実施した、そういった状況等も把握するといったことですとか、あるいは、アンケート・インタビューの相手としては、マッチングの相手方だった企業の状況も把握するといったようなやり方もあるのではないかというようなことで、今、検討を進めているところでございます。

 実施につきましては、JSTのプログラム・オフィサーに実施していただくことになっております。スケジュールといたしましては、8月中に進め方を決定した上で、秋に実際のアンケート等の調査を行い、12月までに追跡評価の報告書を作成して、1月に部会にご報告できるようにという流れで考えてございます。

 以上でございます。

【平野部会長】  ありがとうございました。
 ただいま事務局から説明がありました内容について、ご質問、ご意見があったら、お伺いしたいと思います。いかがでしょうか。

【有信委員】  追跡評価の件に関してですが、これは産学連携で実施した結果の追跡調査ということで、多分、評価をする側は追跡ということなのでかなり事業化が進んでいるという見込みで評価をされると思うのですが、実際に産業サイドの視点からすると、産学連携とはいえ、大学と共同で実施した部分では、実際の費用的に考えると、いわば製品化できるかどうかというレベルに達しているかどうかの実証になると思います。完全に事業化をしようと思うとおそらく研究段階の10倍ぐらいの費用がかかるというのが、多分、企業での事業化の常識なものですから、その辺がどのフェーズにあるかということを、よく見ながら評価をしていただければと思います。

【大山科学技術・学術戦略官】  わかりました。

【平野部会長】  ありがとうございます。評価の際には、今ご指摘があったようなところをきちっと加味して評価をしていただきたいということでございます。
 そのほか、いかがでしょうか。

【岡村委員】  今の件にも関係しますが、追跡評価に関して、必ずしも継続的な事業化に向けて取り組みがなされてないかもしれないのですが、例えば、知的財産の取り扱いがどうなっているのか、この産学連携のプログラムが終わった後に、大学だけではなくパートナーとなった企業側にも聞けるのであれば、その成果を発展させるような展開に進んでいるのか、また、実際、製品につながってなくても進捗があるのかといった点も、あわせて聞いていただければと思います。

【平野部会長】  ありがとうございます。大変重要なご指摘だと思っておりますので、ぜひこの点についても加えておいていただきたいです。

【田中委員】  私も追跡評価についてですが、今年度はちょっと間に合わないと思いますが、むしろ今後に向けてということでご提案というか、コメントなんですけれども、中間評価、事後評価についてはかなり分野ごとに評価のポイントが出ているわけですが、追跡評価の対象になるべきプロジェクトについても採択時点で評価のポイントをおおむね決めておいて、いろんな分野があるわけですが、共通して追跡評価で評価するような事項というのはあらかじめ示しておいたほうが、その後、情報収集等がしやすいと思うんですね。実は、追跡評価というのは終了後数年たってから実施するものですから、参加された方は異動されているわけなんですね。後でその関係者を呼んでヒアリングなりアンケートはなかなか難しいということもありますので、事前にある程度評価項目を設けておいて、責任者の方にはそれをフォローしていただくということと、終了後も主要な方を中心として連絡がとれるような体制をとっておくということも必要かと思います。今年は間に合わないと思いますが、今後それを意識して評価をされるといいのではないかと思います。

【平野部会長】  ありがとうございます。今のご指摘については、今回は間に合わないということでありますが、ぜひこういうプログラムを動かすときにあらかじめ皆さんにお伝えをしておいて、ポイントとして示しておいてほしいということであります。
 そのほか、いかがですか。

【室伏部会長代理】  今の委員の方々のご意見に賛成です。こういったプログラムは、期間が終わってそのままこれで終わりという形で、後の目配りが足りないということが結構あると思います。あらかじめ、事後評価ではこういったことが必要ですよということを示しておいて、それに対して常に目配りしながら、プログラムの実施がムダにならないように、国民の税金からいただいたお金を有効に使っていく、そういう意識もぜひ喚起していただけたらと思います。

【平野部会長】  ありがとうございます。
 そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、大変貴重なご意見をいただきましたので、今回の追跡評価においてその点を加えて評価をいただきたいということと、同時に、今後このプログラムの採択あるいは評価をするようなときにも、ぜひあらかじめその評価指標、あるいは事項をきちっとお伝えして動かしていただきたいということでございます。そのような内容について、ここで必要なところを加えさせていただきます。ありがとうございました。

 それでは、次に議題の2、研究開発評価システムの改革についての審議に入りたいと思います。

 ご存じのように、去る8月19日に第4期の科学技術基本計画が閣議決定されております。現在、総合科学技術会議の評価専門調査会において、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」の見直しに向けた議論が進められております。新たな大綱的指針が策定されますと、それに基づいて、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」についても見直しが必要となってまいります。この見直しについては、この部会においてご検討いただくということになります。
 今日は、次回以降の本格的な検討開始に向けまして、研究開発評価システムの改革についての現状をご報告いただき、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」の見直しの方向性について、意見交換をしたいと思います。
 それでは、まず事務局から説明をお願いします。

【行松科学技術・学術戦略官】  評価担当戦略官の行松です。お手元の資料2-1から2-5に基づきまして、ご説明をさせていただきます。

 まず、資料2-1をごらん下さい。資料のタイトルにもございますけれども、「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」改定作業の流れについてご説明いたします。 国の研究開発評価は、表の左側でございますが、内閣総理大臣が定めます「国の研究開発評価に関する大綱的指針」に基づき行われておりまして、この大綱的指針は国の研究開発評価について基本的な方針を示すものであり、各府省はこの大綱的指針に沿って、府省ごとに研究開発評価の実施に関する事項について具体的な方針を定めるということになってございます。

 現行の大綱的指針は、平成20年6月の研究開発力強化法の制定に対応しておりまして、より実効性の高い研究開発評価の実施推進を図るということで、平成20年10月に改定をされてございます。文科省におきましては、本部会において、大綱的指針の改定内容を踏まえた文科省評価指針の見直しの検討というものが行われまして、平成21年2月に現在の文科省評価指針に改定がなされました。

 さらにこの後、研究評価部会、現在の研究開発評価部会ですけれども、この下に研究開発評価システム改革検討作業部会というものが設けられ、主査は平野先生にお願いをしていたわけでございますが、作業部会において、「評価システム改革の課題とその改善方策について」、「第4期科学技術基本計画に盛り込まれるべき方策について」ということで検討を行っていただきまして、本日、机上の配付資料としてお配りしておりますが、平成21年8月に「研究開発評価システム改革の方向性について(審議のまとめ)」をおまとめいただいたところでございます。この「審議のまとめ」につきましては、科学技術・学術審議会の基本計画特別委員会を経て、第4期の科学技術基本計画に向けた議論に反映されたということになってございます。

 また、東日本大震災を受けて見直しが行われておりました第4期科学技術基本計画でございますが、先週8月19日に閣議決定されまして、総合科学技術会議ではこれに先んじまして第4期科学技術基本計画を踏まえた大綱的指針の見直しの検討というものを行っております。資料左側の黄色い網かけの部分でございますが、総合科学技術会議の評価専門調査会で本年9月までに、まずは検討項目の整理を行って、その後、年度末をめどに大綱的指針の中間まとめを行うという予定になってございます。

 文部科学省の研究開発評価指針をめぐる状況につきましては現在このようになってございまして、大綱的指針見直しの状況を踏まえながら、この右側のオレンジ色の部分でございますけれども、この研究開発評価部会におきまして「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」の改定に向けた検討を開始させていただきたいということで、その1回目として本日の議題とさせていただいているところでございます。

 これが、これまでの流れ、それから今後の流れでございます。

 続きまして、資料2-2でございます。ここに、第4期科学技術基本計画のうち、研究開発評価システムに関する記載部分を抜粋してございます。第4期基本計画の基本方針でございますが、実効性のある科学技術イノベーション政策を推進するために、PDCAサイクルの実効性の確保として研究開発評価が重要な役割を担っているということでありますとか、研究開発評価システムの改善及び充実のための推進方策として、ハイリスク研究や新興・融合領域の研究が積極的に評価されるよう、多様な評価基準や項目を設定する。あるいは評価の重複や過剰な負担を避けるための合理化・効率化を進めること、さらには評価専門人材の育成と確保といったものが、この第4期の基本計画に掲げられているところでございます。

 続きまして、資料2-3をごらんいただければと思います。この資料では、先ほど申し上げました総合科学技術会議の評価専門調査会のワーキンググループにおきまして、大綱的指針の見直しに向けた研究開発評価システムの充実に向けた検討項目及び論点ということでまとめられているものでございます。このワーキンググループは専門調査会の大綱的指針の見直しに向けた第一段階ということで設けられたもので、検討項目に関する検討が現在進められているものでございます。文科省の評価指針の検討の方向性にも今後大きく影響するということで、本日、資料としてお配りさせていただきました。

 内容を簡単に申し上げますと、検討の基本的スタンスということで、第4期基本計画の基本的な方向であります、科学技術イノベーション政策の一体的な展開、また、PDCAサイクルの構築に対応した研究開発評価システムのあり方の検討、さらに、研究開発課題、研究者の業績、研究開発機関、研究開発施策といった評価対象のうち、政策体系に直結する研究開発施策及び研究開発課題に焦点を当てて検討をするということになってございます。その上で、検討項目の柱を大きく3つに区分をしてございます。

 まず1つ目でございますが、政策体系に対応した体系的・効率的な評価システムということでございます。このシステムでございますけれども、政策体系の関係の明確化による効率的な評価システムの構築、プログラム評価の拡大による目標の明確化といったところを検討項目として挙げております。

 2つ目でございますが、連続性・一貫性のある評価プロセスということで、事前評価、中間評価、さらに、終了時評価、追跡評価ということで、事前評価を強化し、技術の実用化・普及までを念頭に置いた出口戦略の明確化や、事前評価から中間評価、終了時評価までの一貫性のある評価プロセスの構築ということで、ハイリスク研究や学際・分野別融合研究、そういった新しい領域を開発・開拓する研究を促す評価指標の設定の必要性、さらに出口戦略を検証していく上での追跡評価の重要性などを、検討項目として挙げているものでございます。

 3つ目でございますけれども、評価結果を次の行動に生かす仕組みということで、評価結果の活用方法や活用に当たっての責任主体の明確化などを挙げてございます。

 総合科学技術会議におきましては、このような項目を中心に、今後具体的な検討がなされる予定であるやに聞いております。

 次に、資料2-4でございますけれども、そういった今までの流れを受けまして、文科省の指針に盛り込むべき研究開発評価システムの改革に係る検討項目についてということで、事務局においてたたき台として案をまとめたものでございます。これにつきましては、資料2-2の第4期の基本計画、それから今申し上げました資料2-3の総合科学技術会議における検討項目を考慮しながら、机上資料の「審議のまとめ」の内容を最大限活用した形で資料を作成いたしました。この「審議のまとめ」につきましては、今日の研究開発評価システムをめぐる課題や改善方策について、かなり幅広く議論を行っていただいており、第4期基本計画に盛り込まれるべき方策をまとめたものであるということと、報告からまだ2年ほどしか経過しておらず、評価をめぐる今日の状況、さらに問題意識などは現在もなお継続しているというふうに考えられることなどから、この「審議のまとめ」をできるだけ活用しながら、さらに新たな問題点・課題などを追加する形で検討を行っていければと思ってございます。

 検討項目でございますけれども、大きく4つに区分をいたしました。1つ目は、研究開発評価システムの階層構造に対応した評価システムの明確化というものでございます。ここでは、政策、施策、プログラム・制度、さらに研究開発課題に関する課題ということで、上位階層を実施する手段として下位の階層が実施されるという構造におきましては、評価基準は上位階層との関係からおのずと策定されるけれども、現状では階層間の関係が明確になっていない場合もある。評価基準が抽象的・一般的であったり、評価基準が評価対象の活動内容自体から逆に策定されたりということで、評価活動が形式化・自己目的化しているといったような指摘をしてございます。

 さらに、2つ目でございますけれども、研究開発の性格に応じた多様な評価基準や項目の設定ということで、ここでは評価基準の項目の設定に関する課題をまとめてございます。まずその1つ目に、ハイリスク研究や学際・分野融合研究を促すような評価基準が必要であるということで、ハイリスク研究や学際・分野融合研究につきましては、新たな研究領域を開拓するものであるけれども、促進する基盤が未成熟であり、かつ評価基準も不明確であることから、既存の分野に比べて過度に低く評価される傾向があって、評価の実施自体を自己目的化するのではなくて、挑戦の芽を摘むことなく、その可能性を見出し、支援を行っていく評価基準の設定の必要性ということが書かれてございます。

 あとはタイトルだけご紹介していきますと、2番目として、基礎研究からイノベーション創出に至るまでの広範で多様な研究開発の性格を考慮する。これは、現時点での評価方法・評価基準がプログラムや制度の目的によって変わるべきであるけれども、それが適正に行われていないといったようなことが指摘をしてございます。3番目として、国民に夢を与える、次世代の人材育成、アウトリーチ、そういった多様な評価項目を設定するということ。4番目として、追跡評価のあり方として、追跡評価の役割が非常に重要であること。さらに、5番目として、国際競争や協調の観点など、世界的な視点での評価の重要性といったことを検討項目として挙げてございます。

 検討項目の3つ目といたしまして、評価の重複や過剰な負担の回避のための合理化・効率化の推進ということで、研究開発課題の特性や規模に応じた評価の簡素化というものを1つ目に挙げておりますし、事後評価のあり方に関する検討も重要であるということも挙げてございます。

 最後に、4つ目として、評価に関わる専門人材の育成ということで、評価者が質・量ともに不十分であって、一部の者に過重な負担がかかっているといったこと。また、評価を担当する事務職員がジョブローテーションなどによる異動などで経験・知識が蓄積されにくいといったこと、人材に係る体制整備が進んでいないこと、あるいは、競争的資金制度において重要な役割を担うPD・POについて、制度によって権限と責任が明確でないといったこと。そういったことをこの評価に関わる専門人材の育成の検討課題として挙げてございます。

 これは事務局としてまとめた案でございますので、このほかにも検討課題として重要である項目等について、ご意見を頂ければと思います。

 最後に、A3の資料2-5でございます。これは先ほどの資料2-2から2-3、それから机上資料2の「審議のまとめ」、それぞれの検討項目のつながりや関連性を示すために表でまとめたものでございます。今、資料2-4で申し上げました4つの柱に対応するものを一番左側に振って、対応がわかるようにしてございます。この表からもうかがえますけれども、第4期、それから総合科学技術会議が検討項目として考えている事項につきましては、追跡評価に関する項目など一部分を除きまして、この「審議のまとめ」におきましてほぼ一通りの検討がなされているということでございます。さらに、一番右の欄の「審議のまとめ」の中の括弧の中、これは「審議のまとめ」の冊子の記載箇所のページを示してございます。

 長くなりましたけれども、以上が本日お配りさせていただいた資料の説明ということでございます。本日は、総合科学技術会議における検討状況を踏まえまして、今後、文部科学省における研究開発評価指針におきましてどういった検討が必要かといったことのご意見を賜りまして、次回以降の見直しの審議に引き継いでいきたいと考えてございますので、よろしくお願いいたします。

【平野部会長】  ありがとうございました。
 ただいま説明をしていただきましたが、特に本日は、事務局が今説明をしてくれました資料2-4に基づきまして、この検討項目(案)についてのご意見や、そのほかにもさらに検討が必要な項目や課題がありましたらご意見をいただいて、次回以降の検討の参考にしたいと、考えております。質問も含めまして、ご意見等賜れば幸いでございます。よろしくお願いします。

 【有信委員】  3点申し述べたいと思いますが、最初に、各階層間で整合性のとれた評価の観点・基準の設定というところです。第4期の科学技術基本計画は社会的課題を解決するためのイノベーションの創出というのが大きなテーマになっていると聞いています。そういう意味では、個々具体的な科学技術政策が従来のような個別の領域設定で、その領域に入るか、入らないかというような安易な視点、安易というのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、比較的単純な指標で振り分けられるということはないと思いますけれども、階層については質的にかなり突っ込んだ検討をしないと、あまり安易にこの領域に入る・入らないという分け方で、あるいはこの段階に入る・入らないというような判断で分けないような評価の心構えというか、その指針をどこかに記載していただいたほうがいいような気がします。

 それから第2点、これはコメントですが、ハイリスク研究や学際・分野融合研究というところに関してですが、ハイリスクという点に関しては、日本の企業が国際会計基準を導入したときに資本コストという考え方が導入されました。これは、将来の事業化に至るときにどれぐらいのリスクがあるか、リスクが大きいほど将来のリターンが大きいという考え方で、それを現在価値に置き直すという考え方です。これを応用して、研究開発テーマについて、研究開発テーマのリスクを考慮した現在価値を評価するというやり方もかなり研究されてきていると思いますので、例えばこのような指標を参考指標として具体的に示すということをやれば、リスクに関して、主観的な評価だけではなくて、ある程度客観的な指標のようなものも示せる可能性があるので、この点については少し検討をしていただけないかと思います。

 それから3番目、「基礎研究からイノベーション創出に至るまでの」と書いてありますけれど、ここの表現が、研究開発が直接的にイノベーションに至るという考え方のところの表現をもう少し丁寧に書いていただきたい。つまり、第4期の科学技術基本計画で課題解決型のイノベーション創出というときに、単純にいわゆる自然科学系だけではなくて社会科学系のものも含めてというスコープが出てきたのは、いわゆる技術革新イコールイノベーションではないとの認識がベースにあります。つまり、イノベーションという次元で考えたときに、それに至るような技術革新を導くべく研究開発を進めるべきであるという、こういう考え方がベースにあるような気がします。したがって、ここをあえて書くとするならば、基礎研究から、例えば技術革新なり、あるいはブレークスルーという言い方をするか、基礎研究はサイエンスでありますから、新しい知見を発見し、あるいは新しい法則を発見するということでありまして、そういう新しい知見・法則をもとにしてさまざまな知見・法則を構造化し融合することによって、新しいブレークスルーを導く。その導かれたブレークスルーが、あるいは技術革新が社会の制度や市場の構造を変えたときに初めてイノベーションと言われるわけで、社会の構造を変えたり市場構造を変えたりというのが社会的課題に合致しているときにそういうことにつながるという構造になっているはずなので、ちょっとくどくどと申し上げましたが、ここの部分の表現はやはり注意深く書いておく必要があると思います。

 以上です。

【平野部会長】  ありがとうございます。特に今ご指摘あった3つの点について必要なところはきちっと丁寧に書き込みをしていくということでありますが、そのほかはいかがでしょうか。

【西島委員】  今のこととも少し関係するのですが、2点気になるのは、ハイリスクという言葉を簡単に使っておりますが、ハイリスクの部分を、「リスクが高すぎて若い優秀な研究者の参加が困難」というのはいつも言われておりますが、なかなか難しいんですね。ですから、例えばこの辺のところは、ベンチャー等への支援とか、育成とか、そういったベンチャー企業に若い人が就職して、そういう人がテーマを持ったときにどう評価するということをもう少し具体的にしないと、これはいつも書いて終わってしまうんじゃないかなというのが、1点気になりました。

 もう1点は、今回のものを見ても、やはりかなり整理しないと、評価される側はかなり負担がふえていると思うのですが、実は、最近は評価する側も結構負担が多くて、私は評価をすることが多いんですけれども、どうして評価する側が疲れるのかというと、結局、目的とかミッションというのがあまりにも出口志向になっていて、とても5年では満たされていないようなものも書かざるを得ない。書かないと採択されないような風潮があるということ。例えば、もっと具体的に言うと、私が担当している薬の分野では、ライフサイエンスにかかわるものは何でも創薬と書かないとだめみたいですけれども、5年で薬がイメージできるようだったら、製薬会社はこんなにたくさん要らないんですね。生命科学を取り扱う大学の先生の最後のミッションは、薬ではなくて、むしろ生命科学の根源とか、それからリスクが高過ぎて企業が取り組めないようなものとか、あるいは患者が非常に少ないレアなものとか、そういうものの解明を5年間で取っかかりをつくって、そこから先、製薬会社が描いていってやるという形ですね。これは、役割分担からすると、初めから薬なんていうことを言っている限りにおいては、非常にコストの高い、ハイリスクでできないところですから、課題選定の段階でぜひ、評価するほうも、される側も疲れないような明確な目的とミッション、そして、その目的やミッションというのは必ずしも出口志向という言葉に惑わされないで、研究とは何かという本質の部分を見据えた、そういう採択テーマができるようなものに改革しないと、ほんとうの意味の改革にならないんじゃないかなという印象を受けています。

【平野部会長】  ありがとうございます。どうぞ。

【冨山委員】  今のお二方の話と重なるポイントになりますが、ハイリスクという観点で、今、ベンチャーの話がありましたけれども、一つ考えておいていただきたいのが、さきほど、産業界でどのようにリスクを評価するかというコメントもありましたけれども、特に、一つの例でベンチャービジネスの評価の観点で言うと、リスクをバリューと見るか、リスクをディスカウント要素と見るかというのは、さきほどのいわゆる財務的な評価方法で言うと、NPV的に見るとディスカウントは評価要素になっちゃうんですね。リスクが大きいほうが資本コストが高くなるので、ディスカウントされていくわけです。ところが、リスク、要するにボラティリティーの大きさをオプション的に見ると、今度、リアルオプションとして見ると、これはプレミアム、要するに価値になるんですよ。ちょっと専門的で難しいですが、財務理論的にはそうなるんです。

 そうすると、典型的にはシリコンバレーベンチャー的な発想で考えると、ディスカウント要素として見る要素と、リスクを価値として評価する分と、どう絡み合わせてどっちで見るかという見方をするわけで、典型的には、最近、映画になった「ソーシャル・ネットワーク」という映画があるのですが、あのときの東海岸の投資家は完全にリスクをディスカウント要素として見るんですね。彼が西海岸にやってきて、パロアルトにやってきて、あのときたしか、クライナー・パーキンスはリスクをバリューとして見るんです。ここに実は見方の交錯するところがあって、要は、ある種、経済学的にはそういう分析手法がいろんな意味で進んできていますので、さっきの有信先生の話と重複しますが、もしそういう要素が盛り込めるのであれば、私も、そういう要素を盛り込むと、わりと論理的に、かつ定量的にそういった議論を持ち込めるような気がするので、くどいようですけれども、今、日本の場合のベンチャーの評価というのが必ずしもうまくいってないのは、DCFは結構普及しているのですが、リアルオプション的にリスクを評価として見るという手法があまり日本のベンチャーキャピタルでは普及していないので、イノベーションを起こすような大きい話ほど逆に価値が低く見られてしまうという、そういうある種のパラドックスが起きている点があるので、そこはもし何らかの形で反映できたらお願いしたいです。

 それから、同じことですが、イノベーションというのも、お2人の委員からありましたように、社会とか産業構造を根本的に覆すような話になっていくので、イノベーションイコール出口志向イコール次のページにある短期的で実用的な成果になってしまうという、この論理のつながりは、私は少し変な気がしていて、むしろイノベーション志向であればあるほど、短期的な成果というよりは、最終的に世の中をひっくり返しちゃうような世界を目指すべきなので、そこはちょっと言葉の使い方に気をつけないと誤解を生むのかなという感じがしました。

 それから、3つ目は質問ですが、PDCAサイクルの実効性の担保という議論があったと思うんですが、このPDCAって、経営の世界で言うと、もともとは、TQCとか、ああいう世界で出てきた、ある種自律的プロセス管理の手法なんですが、ここで言うPDCAサイクルというのは、基本的には自律的な仕組みを想定しているのか、もうちょっと他律的な仕組みを想定しているのか、自律と他律の組み合わせなのか、その辺は具体的にどういう感じなのか、説明から私はあまりよく理解できなかったのですが、この辺はどうなんでしょうか。要するに、研究開発のプロジェクトマネジャーが自律的にやっていることを基本に考えて、それをある種、評価者が介添えする仕組みとなっているのか、もっと別の仕組みなのか、どういうプロセスを想定されているのでしょうか。

【平野部会長】  それでは、まずご質問に対して先にお聞きし、そのあと、3人のご発言は同じような視点に立っておりますので、これは整理のところで使っていただけると思います。

【村上科学技術・学術戦略官付室長補佐】  PDCAサイクルでございますけれども、現在の大綱的指針におきましては、どちらかといいますと次の研究開発につながる部分、最後の事後評価等でそこが生かせる形で評価が行われているのかといったところが必ずしもはっきり見えてないと言われておりまして、大きな金額を投資してやる研究開発において、その成果がどのようになるのかという活用やつながりといったところをサイクルとして見えるように評価でチェックをして、次の新しい課題につなげたいというところが、今のシステムではなかなかうまく機能していないのではないかと言われていると理解してございます。

【冨山委員】  そういう問題意識はわかっているのですが、問題は、実際のPDCAを回していく主体といいましょうか、遂行していくのが、要は研究開発をしているご当人たちが自律的に回していくところを中心に今おっしゃったようなことを実現しようとしているのか、それとも、PDCAを回すところに関しては、ある種、他者評価というか、客観評価をすることによってそれを回すのか、それはどちらなんでしょうかという、そういう質問です。これはマネジメント上すごく大事なポイントなんですよ、経営的な観点で言うと。あるいは、通常はその組み合わせでやるんですけど、その辺はどういうふうな感じなのかなと。くどいようですけど、世の中、PDCAを回すというお題目はそこらじゅうに漂っているのですが、PDCAがちゃんと回せたら今の国政運営はこうなっていないだろうなんていう感じもちょっとするものですから。

【平野部会長】  どうぞ、有信委員。

【有信委員】  総合科学技術会議の科学技術基本計画の中で言われているPDCAは、いわば政策に関して、きちんと評価を踏まえて政策が改善されて次の政策に結びつくと、こういう意味で多分言われているのだろうと思います。ただ、研究の遂行に関しても、PDCAというのは非常に重要だと思います。おっしゃったように研究をやる主体がみずからチェック・アクションに結びつけて研究開発の内容を改善していく、これは当然の仕組みでありますけれども、今回の評価を例えばどういう形でPDCAという観点で研究開発の遂行に織り込むかというのは、ご指摘のとおり非常に重要なポイントになると思うんですね。つまり、これは評価者の評価によって研究開発の方向性に影響を与えるようなことまでやるかどうか、そういう視点まで入れるかどうかというところを含んでいますので、ここはちょっと慎重といいますか、ただ、逆に言うと評価者が政策的な視点まで含めて評価ができる、つまり、そこまで評価者が育っているという前提であれば、それを含めて他律的に研究開発の内容について改善を求めるというのはあり得ると思いますので、その辺までスコープに入れて責任を持ってやるというふうに理解をしてもいいのではないかというふうに思います。

【冨山委員】  ありがとうございます。

【平野部会長】  以前の指針等の議論のところで、今、有信委員がおっしゃったような形で評価者が評価をしていったとしても、国の政策までにプログラムのよしあしが反映されていないんじゃないかということが一番の論点になっていましたので、政策にまで持っていくときの階層のチェックを必要とするというのが背景にあります。
 そのほか。どうぞ。

【室伏部会長代理】  研究開発の性格に応じた多様な評価基準や項目の設定というところの2ページ目に「国民に夢を与える、次世代の人材育成、アウトリーチ活動など、多様な評価項目を設定する」ということが書いてありますが、これらは特に大事だと思います。今、国民の間に閉塞感が漂っていることを考えても、夢を与えるような研究が採択されて、評価されていくべきだろうと思います。

 特に申し上げたいのは、次世代の人材育成ということです。先ほどからイノベーションを創出するためには…といったようなお話が出ておりますが、これからの社会を担っていくような若い人材を育てていく、それがとても大事なことだと思うのですね。人材がいなければ、イノベーションは創出できませんし、我が国の科学技術の発展は望めないわけですので、人材育成ということに重点を置いて、今後の評価システムの改革に臨んでいくべきではないかと思っています。

 今までのさまざまなプログラムなどを見ておりますと、人材育成についての記述を必要とするものもありますし、中にはほとんどそれが要求されていないものもあります。今まで私が見てきたものでは、人材育成について成果を書いてくださいと要求してあったとしても、例えば何人のうちの1人が助教に採用されたとか、そんな簡単な記述しかないものが多く見られました。人材育成というのは、論文を幾つつくったとか、助教になったとか、こういうポジションを得たとか、それだけのことではないと思うのですね。どんな人材を育てたかということ、あるいは事前にはどんな人材を育てようとしているのかといったことをこれからの評価のシステムの中では重要視していくべきではないかと思っています。そのプログラムがどのような人を育てるか、そして実際にどのような人を育ててきて、事後に継続的な評価の中で、その人たちがどんな人材として世の中のために役立っていっているかといったことも見ていくべきではないかと思います。

 以上です。

【平野部会長】  ありがとうございます。有本委員。

【有本委員】  3点ほどご検討をお願いしたい。いずれもこの評価部会あるいは評価の指針づくりからはちょっと枠を超えるような話かもしれませんが、少し指摘しておきたい。

 1番目は、総合技術会議は、第4期科学技術基本計画は第3期までとは違うんだということを強く出しているわけです。従来の分野重視、ディシプリンベースというか、ディシプリンオリエンテッドから、イノベーションといいましょうか、課題解決、あるいはイシュードリブンという言い方もされているようです。それなら、評価というのは今までのやり方をどう変えるのか。総合科学技術会議の文章を見ても、いろんなところに埋め込まれているんだろうけれども、15年間やってきたことと今からやろうとしていることは、評価についてどう変えるのか十分に表に出ていない。きちっと総論的なところでメッセージを出すべきと考える。

 2番目は、「現場の研究者が、個人やグループの成果を重視するあまり、次世代の若者の教育・育成への配慮を失っている可能性がある」とまで書いてあります。これを事後評価の段階で行うよりも、まずやるべきは、競争的資金の制度をつくるときに、その目的において人材育成の観点も必ず入れた上で事前事後評価をやる、という具合に、全体的に制度設計を検討しないと、変わらないのではないか。競争的資金はこの10年間ぐらい増加して来たが、制度を含めて総点検し、上流側のシステムの制度設計や運用のところも変えた上で、評価についても人材育成の視点をきちっと組み入れるという一貫性がとられるべきと、私は思います。

 最後は、PD、PO制度の改革です。ここ数年、PD、PO制度というものを一生懸命取り入れた。これも今、総点検の時期を迎えている。PD・POは訓練ができてないとか、イノベーションの長いプロセスの中でそれぞれのファンディングのプログラムがどういうポジショニングがあるんだということが十分認識しないで、PD・POが運用しているんじゃないかという批判も強い。

 それから、かつては総合科学技術会議は年に一、二回必ず、政府のPD・POを全部集めて、協議会のようなものをやっていたんだけれども、それも今はやってないのではないか。全然そういう意欲が薄れて、文章だけになっているというのはおかしいと思っています。この部会の範囲をかなり逸脱しているかもわかりませんが、よろしく検討お願いしたいと思います。

【平野部会長】  ありがとうございます。部会の部会長がそこまで言うのはちょっと越権になるのですが、私自身も個人的には少し近いような思いがありました。この部会で指針を決める際の議論の受け皿はどこにあるのかという懸念は、資料をこれまで読んできた上で思っておりましたが、とはいえ、総合科学技術会議自身のほうの、また、そのもとにある評価専門調査会のほうの意向を事務局として聞いてもらいながら、部会として総合科学技術会議の意向を超えるわけにはいきませんが、ただ、現場的に動かす部会としては非常に重要な位置づけがありますから、そのときには私どもが必要なところを決めていいんじゃないでしょうか、そのくらいの気持ちを持っています。時間が限られていますから十分な議論ができませんが、大変重要な内容を先ほど指摘いただいたことに含んでおりますので、今後、この部会として指針立てをしていくための基になるような検討項目をきちっと議論をして詰めていきたいと考えております。ぜひ、本日ご意見をいただけなかった方は事務局へご意見をお寄せいただき、あるいはご提言を頂いた方はもう少しかみ砕いて事務局にご連絡いただいて、次回から議論を深めていきたい。現場として動くところの部会としては、我が国の将来も考えた上で、しっかりといい評価をしていかなきゃいけないと考えていますので、総合科学技術会議が意向を酌んで動いてくれるかどうかは別にして、ここの部会として持てる責任は大いに果たしていきたいと考えております。ぜひご提言を事務局のほうに寄せていただき、次回から議論を進めたいと考えております。よろしくお願いします。

 それでは、今から議題3「科学技術戦略推進費の採択プロジェクトの選定について」審議いただきます。

 これより、この部会を非公開といたします。傍聴いただきました方、ありがとうございます。

 なお、科学技術戦略推進費に係る議題でありますので、文部科学省から科学技術戦略推進費の事務委託を受けております科学技術振興機構の関係職員については、陪席をしていただきます。

(傍聴者退席)

○議題3 科学技術戦略推進費の採択プロジェクトの選定について

 事務局より資料3-1~3-4に基づき説明が行われた後、採択候補プロジェクトを取りまとめたJSTの阿部プログラム・ディレクターより、PD・PO会議についての状況報告が行われた。続いて、各作業部会の主査より審査の経緯・結果の概要を報告した後、審議が行われた。

 審議の結果、各作業部会の審査結果については、本部会における採択プロジェクトとして了承された。

 なお、本審査結果については、総合科学技術会議へ報告されるとともに、提案者に対する審査結果の通知については、審査要領に基づき、本部会でプロジェクト実施に当たっての条件等が付されたものについてはその旨の通知を行うことされた。

【平野部会長】 本日予定した議題は以上でございますが、事務局のほうから連絡事項等、よろしくお願いします。

【村上科学技術・学術戦略官付室長補佐】  事務局から、3点ほどご連絡させていただきます。まず、今回の議事録でございますが、案を作成後に各委員の先生方にご確認いただいた後、ホームページにて公表をさせていただきます。

 次回の部会でございますが、来年1月ごろに開催を予定してございます。日程については、改めて調整をさせていただきます。

 最後に、本日の配付資料でございますが、審査の秘匿性を保つという観点から、資料3-1から3-4につきましてはお持ち帰りいただけませんので、机上に置いていただければと思います。そのほかの資料につきましては、机上に置いていただければ、後日郵送させていただきます。事務局からは、以上でございます。

【平野部会長】  どうもありがとうございます。次回は来年1月の予定だということでございます。遅くまで熱心なご議論をいただきまして、ありがとうございます。また、JSTの関係の方々、ありがとうございます。
 それでは、これでこの部会を終了いたします。

 

―― 了 ――

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調査・評価担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(調査・評価担当))