平成22年2月10日(水曜日)10時00分~12時00分
文部科学省18階研究開発局第1会議室
田中主査、荒卷委員、国崎委員、小林委員、林委員、室﨑委員
鈴木地震・防災研究課長、南山防災科学技術推進室長 他
【南山防災科学技術推進室長】
それでは、定刻を過ぎましたので、第5回地震防災研究を踏まえた退避行動等に関する作業部会を開催させていただきたいと思います。
本日、委員の先生9名中6名が現在出席でございます。定足を満たしてございます。
続きまして、お手元の資料につきまして確認をお願いいたします。
- 資料の確認 -
事務局からは以上でございます。
【田中主査】
前回の作業部会で、先生方から作業部会で審議、検討する資料を紹介いただきました。それらの文献を事務局に集めていただき資料5-4を中心に取りまとめていただいています。まず、前回の会議でおおむねご了承いただきましたこれまでの推奨行動をまとめた資料をもとに、個々の推奨行動を検証することになっていますが、まず調査結果を事務局のほうからご説明いただき、ご意見、あるいは追加すべきことをご指摘いただければと思います。ご説明お願いします。
【富田防災科学技術推進室長補佐】
- 資料5-3の説明 -
【田中主査】
これまでの推奨行動をとる原因であったり、あるいは逆に、行動がとれない原因になる環境変化を5-4を中心に書いていただいています。前提となる目的関数となりますので、ここを少なくともフィックスして作業を進めなければなりません。
大きくは4つに分かれた推奨行動はご報告いただいていてますが、このまま検討を進めてもよろしいでしょうか。
【室﨑委員】
命を守ることやその後の近隣の助け合いも、火が消えることが前提となっていますが、例えばマイコンメーターなどがあれば消さないでいいわけです。また、火を消そうとすることによってほかの行動がうまくいかないこともあります。火を消さなくて良いことが強く出過ぎているように思います。注意深くこの図を出す必要があると思います。放置すると大火事になるということと、マイコンメーターができたことの相互のウエートづけに注意して、どう解釈されてしまうのか。ちょっとそういう危惧があります。
【国崎委員】
火を消すという行動についてですが、被害を軽減するために必要な行動であることは間違いないのですが、火を消さないと火事になるという事由ばかりではないことにも着目すべきだと思います。過去の震災の出火原因を調べれば退避行動に足りない視点があるように思います。例えば、阪神・淡路大震災をきっかけに、水道蛇口が、それまで上から下にレバーを下げると水が出るものが、逆向きになりました。多くのものが落ちて排水口をふさぎ、さらに蛇口にも物が落下して水が出しっ放し状態になりました。シンクに落下したものに当たって水が飛び散り水浸しになったそうです。そして、通電の際コンセントに水がかかったことが原因で電気火災になったという事例を聞いています。
このように災害時には多様な出火原因がありますので、過去の震災でなぜ火災が出たのかという調査結果からも退避行動に反映させる必要があると思います。
【鈴木地震・防災研究課長】
今の資料は、これまでの推奨行動で、現在のものは変わってきているという認識はあるのですが、まだ残っている行動例を整理して、資料5の中で今のようなご議論をいただければと思います。
【田中主査】
ここで取り上げる行動については、どこかで優先順位を考えておかないといけないのでということですね。
【荒卷委員】
その視点からでは、3「デマやうわさに惑わされない」と4「近隣の助け合い」というのは、時系列的に考えると逆なんじゃないかなと思いますがいかがでしょうか。
【富田防災科学技術推進室長補佐】
3・4のカテゴリーは明確な順序がないのではないと思われます。建物被害が発生した時から近隣の助け合いは必要ですし、デマやうわさが始まるタイミングも明らかではありません。3・4の順序については、もう少し検討の余地があります。
【荒卷委員】
この10カ条の中でも「デマで動くな、正しい情報で行動」というのは最後になっていますし、横浜でも地震三原則の中でもデマというのは入れづらい。ですから、その場に合った安全という部分で命を守る。それから素早い消火という部分で火を消す。次に近隣の助け合いという部分になっているはずです。そのあたりを参考にすればよいかと思います。
【林委員】
退避行動とは何かとのスタートラインもなく議論をしていましたが、グラウンドを整えるために内容を照査すると、消防を中心にとっさの推奨行動の事例が、東京消防庁がこれまでに作成した10カ条をもとに、さまざまなバリエーションで、事後の行動が入り、うわさやデマ等の要素が入ってきています。基本の枠組みを整理してみようということで帰納法的に整理をしてみたら、いくつかの発見がありました。2ページ目の火を消すという部分ですが、火を消す中にちゃんと身の安全の確保というのが埋め込まれています。あとは時間的に後に行うものだと考えれば、1と2というのがとりあえず対象すべきだろうと思います。2は大きな枠組みではあるけれども、その中に1が埋まっている。やはり一番とっさの行動ということでいえば、身を守るとことなので、1がいろんな場面の中で詳細に議論されているということだと思います。
本日の資料はきれいに整理されて見やすくなり、ほとんどが物理的なパラメータで話ができるようになっている。唯一そうでないのが、心理と書いてある部分で、心の問題になっているんですけれども、それ以外はある意味で物理的に操作、観察ができるようになっており、体系的な整理が可能かと考えています。
また、心理に関わる部分を図中のこの位置に置いたんですけれども、性質が違うというので、ブルーの左側にくくり出してピンクにつなげても良いかと思いもあります。ですから、またそれについては後で、配置については提案をしたいと思います。
それから、火災についていろいろご議論ありましたけれども、僕は首都直下地震ということを考えれば、決して火災というのは侮ってはいけないと思います。マイコンメーターがあるから環6と環7の間には火災が出ないとはとても思えません。あの地域が燃えることがいろんな意味で被害の大きさを左右する大変な重要なことで、消防力では間に合いませんので、一人一人の心構えが重要です。これまでの伝統や経験を無くしてしまうのは、もったいないようには個人的には思います。
【田中主査】
近隣やとっさの救出、デマも今回の検討対象外ですので、時系列での議論ではないというご理解・整理をしていただいたほうがいいように思います。
【田中主査】
それでは、とりあえずここで私たちのワーキングとして検討対象とする推奨行動をフィックスし、これから行動の分析による要因について議論を進めていきたいと思います。
それでは、次に5-4の説明をお願いします。
【富田防災科学技術推進室長補佐】
- 資料5-4-1の説明 -
【国崎委員】
今のご説明の中で1つ質問があります。現在、環境対策としても推進されていることもあり、太陽光のパネルを設置する家が増えています。ところで、屋根上のパネルの重さを鑑みて、耐震構造の再計算というのは必要ないんでしょうか。
太陽光パネルを設置するときに家電量販店に頼みますとどこの方角につければ良いとか、屋根の形状からどれだけパネルを設置できるのかという提案ばかりで、具体的にパネルの総重量にかかる建物への負荷についての話がありません。ところがハウスメーカーに依頼をすると、そういう構造計算の必要性についての話がでてきます。依頼先によって建物への影響についての対応が異なるのですが、実際に建物へのの影響はいかがでしょうか。環境を重視するあまり耐震についての関心が忘れ去られているということではないでしょうか。太陽光パネルと建物への負荷について調査ががなされているかどうか、教えてください。
【事務局】
建物の構造計算を進める際には、設計を行うための荷重を設定します。建物の建設後でも物をのせることができるように荷重を予め見込んでいれば、耐震性能上は、問題はありませんが、設定がない場合には当然不適切な状態となります。建築主には、建物を適正な状態に維持する義務がありますので、屋根の上に太陽光パネルが載せられることによる構造上の検討は、しかるべきところに建築主が依頼する必要があります。
また、建設後の屋根上の荷重の追加が見込まれていない建物でも倒壊しないのは、設計荷重の中に積雪荷重と呼ばれるものがあり、東京あたりでは概ね30cm相当の重量が設定されていることから、その重量内での余力があるためです。したがって、太陽光パネルの重量を構造設計上考慮されていない状態で、雪が30cm程度つもったばあいには、過荷重の状態となり地震時でなくても障害が生じる可能性があります。
【国崎委員】
太陽光パネルは、屋根の一部に載せられますが、片寄りの影響はないのですか。
【事務局】
その点については、調査します。
【室﨑委員】
ハウジングメーカーなら太陽パネルを設置する位置を設計上考慮していると思いますが、後で設置する場合には、適切な検討がなされないのではないかと危惧されていると言うことだと思います。
【田中主査】
事務局の方で調べてください。
続いて、資料5-4-2を説明してください。
【富田防災科学技術推進室長補佐】
- 資料5-4-2の説明 -
【田中主査】
ありがとうございました。室内の環境変化と人間の行動の可能性、そして、実際の負傷とどう関係があるのかということをお伺いいたしました。
今回の検討では、この部分が中核的なベースになると思います。これに加えて、他の視点や追加すべき資料があればご紹介いただければと思います。
報告書作成に向けてまとめ方についても、ご示唆をいただければと思います。
【室﨑委員】
最終的には5-4-1の環境変化と5-4-2の人間の行動を組合せにより5-4-3のところで示されているようにケガをしたり亡くなったりするということだと思います。建物のほうの制御と人間のほうの制御という2つの大きな変数で説明しようとされていますが、その観点からは、5-4-3に関する研究が少なく思います。単に2階や1階やという程度のことが研究でしか出てこないのかという印象です。
例えば、家具の配置のところでは、大きな家具が倒れると人が亡くなり、小さな家具や長持だんす、座敷机の横に寝ている人は助かったとか、あるいはベッドのすき間に落ち込んだ人が助かったとか。人間行動の視点からは、起き上がってたんすをとめようとしたり、何らか行動した人はうまく助かっているケースが多い。子供や家族をかばって亡くなったり、けがした人もいますが、何か積極的行動をした人が多く助かっているのと、守ってもらった人は助かっていたりする。まさに人をかばうという人間の行動が、たんすの倒れるのを押さえようとする行動などに現れ、行動とけがと関係がもうちょっと見えてくるといいとおもいますが、その周辺のデータが少ないように思います。
【田中主査】
5-4-3は、突然最後に起こされた章のためデータの量が少ないのは仕方ないと思います。ある意味では推奨行動の妥当性の一つの評価も行わねばなりませんので、ご指摘のとおりかと思っております。
【鈴木地震・防災研究課長】
まとまった調査結果があれば、作業がはかどると思うのですが。
【室﨑委員】
そういう視点で研究はされてこなかったと思います。どのような退避行動をすべきかという視点から、行動と環境を調査する研究が行われたんでしょうけれども、それ自体がまだクリアにならず、建物の壊れ方、家具の倒れ方を必死に研究していると思います。この時点では、そういった視点を持った人が、研究者が少なかったような気はします。
【田中主査】
一つの発想として、けがと死亡の位置づけがあります。阪神大震災のときも亡くなられた方のことをいろいろ調べようとしても、やはり最後は死者から話は聞き取れないという一つの問題がありました。そのため負傷と死亡は別だとして、負傷してもよいから助かるほうがよいという考え方もあれば、負傷者を減らせば死亡者も減るというとらえ方があり、スタンスを決めるのか、提起するのはわかりませんけれども、その点が少しひっかかるとこだなという考えています。
【室﨑委員】
亡くなった人はなかなかわからないですね。負傷した人は、後でどうしてけがしたかと聞けますが。
【田中主査】
亡くなった方は死亡原因ぐらいですよね。窒息なのかとか圧死なのかとか。
【室﨑委員】
建物構造などの環境の持っているファクターがはるかに強いので、壊れなければ助かる可能性は高くなる。でも幾ら的確な行動しても、一瞬のうちに壊れたらどうにもならず、あるいは家具も的確に固定していれば助かります。まさに行動の自由、行動の持っている可能性などの非常に限られた世界だから、それを広げるためには家具の固定がまず前提であって、その中でうまく助かった人は行動をとっておらず、一生懸命に適切な行動しているのに家が一瞬にして壊れて人が死ぬこともあります。
これは危険因子とか後の議論になるかもしれませんけれども、環境条件と人間行動のかかわり合いの中でいうと環境要因が非常に高い。それはもう当然のことで、耐震補強をやるという前提の上での行動では、やっぱり命なり守れるよという論になるんじゃないかなと思います。
【荒卷委員】
資料の中に1985年前後以降の建物での死者はなかった、という部分がありますが、一概に建築年度では区切れないと思います。1981年であれば明確に、それ以前の建物被害が多くてそれ以降は被害がないよと言えると思いますが、基本的に負傷者・死亡者は建物の関係と、建物内の家具の配置だとか固定状況によって出ると思います。ですから、1985年以降の建物での死者はなかったと、この印象が強くなってしまっています。
耐震基準を満たしていても、死者があったのかと、建物被害があったんじゃないかという誤解を生じてしまうと思います。適切に家具配置をされていれば被害というのは、多少けがはあったとしても死者というのは出にくいと思います。
【林委員】
以前西宮で、建物の壊れ方と死者の発生の関係を調べました。死者の85%は建物の層破壊により発生しているんです。2階建ての1階部分がつぶれていると、この言っているポイントはおおよそあっていると思います。あとは、それ以外でも死にますので、建物被害とは関係なしに15%ぐらいは亡くなります。だけど、一番に被害者を減らせる原因からいえば環境要因とおっしゃるように、建物の層破壊です。どのぐらい亡くなるかと言えば、私達のものでいくと25%ですよ。層破壊したからといって全部が死んでいるわけではなくて、層破壊の建物の中で亡くなられている死亡の発生率はおよそ25%です。
【室﨑委員】
良い数値だと思います。家を4分割すると、2階が2つ、1階が2つ、北と南になります。倒れるとき方向性があって、層破壊するときは一瞬に倒れるので、同じ1階でも4分の1の部分の人が一番危険な状態になります。同じ1階でも、空が見える人と乗りかからん人に別れるので、4分割すると25%というのは、なかなかいい数字ですよね。要するに4分の1危険なところがあるということですね。
【林委員】
あわせて全部を調査してみたときに、やはり築年というのはきいていると思います。建って10年の建物というのは、白アリの影響だったりするんですけれども、構造の柱の強さがどんどん落ちていっている。層破壊をしなければ、あとは建物被害というのは関係ないというふうに考えていただくと、ここの結論というのはある程度妥当だろうと思います。考えつかない問題だから、きちんと論文にしております。
【室﨑委員】
この生田氏の研究結果が1985年前後以降の人はなかったという結果だということだと思います。これは2つあって、基準法が厳しくなったことと老朽化の問題が重なり合って、単にきれいに1980年という基準じゃなく、1985年ぐらいのとか、築10年だったら基準もちゃんと守っているし劣化もそんなにしていないという、両方が重なり合って新しいものほど安全だという結論ではないでしょうか。
この研究者は木造の建物だけ調べています。新しいマンションで死んでいる人もいますが、木造建物の層破壊で身体上にのしかかって亡くなっている人が結構多いので、多分結果としてこういう結論になっている。
【林委員】
僕は、基本的には家具では死なない、はりでは死ぬと理解しているほうが正しいと思います。家具の転倒は、負傷には結びつきますけれども、即生死にまで拡大して考えるのは全体のバランスから説明しづらい。層破壊で85%を説明しますので。層破壊を起こさないようにする、あるいは層破壊の中で荷重がかかる側にいないようにする。だから、一番費用のかからない耐震、命を守る方法は2階に寝ることだと言われます。しかし、実際のプラクティスとしては、2階に寝ることは勧められませんでした。火災の救出を考慮したり、階段を踏み外すことがかなり多いですから。トイレがちゃんと2階にあって、2階にずっと寝ていられるというのが理想的な住環境です。
【室﨑委員】
でも、火事のことを考慮すると2階に寝ることはよくありません。
【林委員】
確率の問題に帰着します。神戸に地震が起こるとは、専門家ですら余り強くは思っていなかったことも事実なので、2000年前の地震をだれも覚えていなかったのも事実ですから、確率論的に考えれば火災で対応すべきです。ならば1階に寝てなきゃいけない。それは特に高齢者の場合にそうです。そういったことにつながっていることは事実だと思います。
【田中主査】
表現の問題で、1985年前後以降の建物では建築の倒壊による死者はなかったと書いてくれればいいということだと思います。
【荒卷委員】
表の下の文章中のところを読んでくると、よくも建物倒壊とは関係のない家具などの全身打撲が4人と書いてあります。ですから、その部分を考慮すると先生がお示しになった表記のほうがよりよいと思います。
【田中主査】
その表の中身は問題ないと思います。
【林委員】
その後の被害想定でも層破壊を使っていないように見えます。全壊プラス半壊の2分の1のデータで、そのインパクトを考えようとしていますが、最新の知見をふまえない怠慢だと思っています。特に木造で死んでいる場合には、層破壊で5%出れば、ほぼ決定的なはずです。そういう見方をしていない。
【室﨑委員】
その85%という数値の内容については、異議があって、家具の転倒だけで亡くなっている人はかなりいるという見解です。データの問題もあるでしょうし、データがどう使われて数値に現れると言うことかと思います。
【林委員】
私のスタンスは、スペキュレーションはしないというのが基本なので、データが言える範囲のことしか言わない。やはり建物、家具の挙動までは言及できない。
【室﨑委員】
林先生の言われるのは、もう一方は検証データのデータでしょう。検証データをどうつくったかというプロセスにもかかわってくることだと思います。全部圧死というふうに書いてある。
【林委員】
死因については言っていません。手法という事実と建物の被害という事実を2つ結び合わせています。
【室﨑委員】
層破壊していてもその中で空間ができていて、家具の倒れ方が負傷・死亡原因かもしれない。層破壊していても層破壊が原因で死亡するのか、層破壊した中の家具の転倒、仏壇が倒れたのが原因なのかというのは、それはまた別だと思います。そこを議論しているわけだと思いますが。
【林委員】
事実として25%しか死んではいませんが。
【室﨑委員】
今度は対策につながっていったときに、家具の転倒はしないでいいのかというところになってしまうと困ります。
【林委員】
それは別に死亡の議論でする必要はなくて、負傷の議論をすればよいと思います。人を死亡とどうつなげるかという話はあるかもしれませんが。
【室﨑委員】
その点については、議論するつもりはないですが、事実としてその部分の認識は違っています。それは扱っているデータが違うということだと思います。
【田中主査】
データの性質の違いや捉え方で、結論が異なってきますので難しいと思います。言えることの一つは層破壊では25%しか死なないのかと安心してしまいました。負傷・死亡のメーンファクターとしてきくものは、これは層破壊であることは事実だと思われます。ただ、それが確率としてどうなっていくのかというところに関しては、確率論でしっかり議論ができないところがやや嫌らしいというところなんだと思います。少なくともなかなか断定が、イチ・ゼロの世界ではないということです。災害は確率論になります。
【室﨑委員】
同じ家の中にいて死ぬ人と死なない人がいるのは当然ですが、同じ部屋に2人が寝ていてもそれは半々ぐらい死んでいて、2人とも死ぬケースは多くありません。そのあたりが今度はメカニズムで家具の配置とか、同じ部屋なのにどうしてどっちかが助かっているかという議論したときには、僕は低い家具の配置が関係していると思う。
【田中主査】
いずれにしても、ここでは両方取り扱わざるを得ないということになると思います。負傷が減れば死者も減ると考えれば。
【室﨑委員】
そういうことかもしれませんし、林先生が言われる家具の問題を負傷の問題で見れば転倒防止が必要とか出てくるのでというのは、それはそのとおりかもしれません。
【田中主査】
今の部分は内容を補強できればと思いますが、震度と揺れの周期の違いも出てくるので大変難しいことだと思いますが、そこはぜひお願いしたいと思います。後の議論と今の議論を絡めた形でもう一度見解をお示しいただければと思います。
次の資料は5-5では、推奨されてきた退避行動の検証というところになるんですけれども、今のデータからいっても、あるいは今の議論を聞いても、なかなかこうだと言い切るのは難しいということ難しいと思います。委員の方々は、報告書の出し方については、概ね同じ考えかと思いますが、ただ文章にした瞬間にとても難しいことになると思います。
資料5-5をご紹介いただき、再度5-4-1から3を振り返って議論をしていただければと思います。
【富田防災科学技術推進室長補佐】
- 資料5-5の説明 -
【田中主査】
ここでご意見を少し簡単に伺い、続いて今後の課題を6で伺えればと思います。とりあえずこういう説明の研究レビューに基づいて評価をする。論文だとここで仮説が出てきそうな気がしますけれども、そういうような段階になっておりますが、いかがでしょうか。
【林委員】
仮説になると思いますが、やはり震度でいえば6弱以上の状況とそれ以下の揺れとで、人の振る舞いは違っているということは明らかになったと思います。6弱以上の揺れになったら基本的には動けない。自分で自分の命を守るというようなところが精いっぱいということになるでしょうけれども、5強以下になると3つの行動が可能となります。火を消すというのを入れれば4つなりますが。
3つとして説明すれば、一つ目は弱者保護で、年寄りとか子供を守ろうとするようなアクションをし、非常に愛他的な行動をとっている。二つ目は財産保全的な行動というようにまとめたい。文献中の火を消したりとかあるいは家具を押さえたりといった行動で、一番印象に残っているのは、釧路沖地震のときに、だるまストーブが倒れそうになるからといって抱えた人がいます。大変なやけどしていますが、財産保全行動として、それは倒れたら出火すると思っているわけだから必死になってとめているという意味でいうと、家具が倒れそうなときも必死になってとめているというのも同じだと考えると財産保全の行動の一つです。三つ目は、避難をするということ。この3つの行動をとるんだというのはわかったかなと思います。そうなると、一つ目のところで明示していませんが、震度6をイメージしながら書いている。
チャート中の1の命を守るという部分の左側のところを見ていくと負傷しないためにと記されています。この裏には震度6以上で動けないという事実と、震度5以下だったら、財産の保全、弱者保護や避難などをしてしまうというのを、人間の側の性質として読み込んではどうでしょう。それと例えば家具の状況だとか、あるいは家の脆弱性だとか、そういうものの組み合わせの中でいろいろと被害が出たり出なかったりというふうな説明になると思います。
このチャートをつくったときには、そこに書いてある言葉を生かしてやりましたので、人の動きの側のダイナミクスみたいなものが明示されていませんけれども、これで震度4以下になると変な言い方ですが揺れを楽しむようなこともあります。かなり以前に、お昼頃に震度4で揺れた学校がありました。震度5のところの子供たちはすごく真剣、震度4になるとサーフィンして遊んでいるみたいなことを言っています。潜在的に危険ですが、やはり何か危ないと思うのは震度5ぐらいからで、震度6にいったら動けない。揺れの強さに応じて人間行動が変化するという点は、余り変わっていないんですけれども、震度5の中でとる行為がこの財産保全と弱者保護と避難だということを明示したのは、前進できたと思います。人間側にそういうメカニズムが、行動性能と環境要因と掛け合わせて、行動がうまくいく場合もあれば失敗する場合もあるし、失敗したら死ぬとか負傷するとかというようなところに結びつくのかという感想を持ちました。
【荒卷委員】
先ほどの説明だと資料5-3では、10カ条をベースにした大局的な視点での整理をされていたと思います。今度の資料5-5を見ていくと、10カ条の細部の中身の大きな家具に身を寄せるだとか、あるいは頭の保護という、何か細部にいってしまっていて、ちょっと私の整理がつきません。今後も研究をしていくというリズムで、いきなり細かくなり過ぎちゃったような気がします。10カ条の整理からいくと、わが身と家族の身の安全という部分の表題があって、その中で整理が出てくるんならばいいんですけれども、いきなり丈夫なテーブルといった大きな家具に身を寄せるという行動の細かい中身の検証にいってしまっていると思えますが。
【田中主査】
今のお話は、命を守るという次元と大きな家具に身を寄せるという次元の細かさと言うことでしょうか。
【荒卷委員】
要は、命を守るという部分と5-5の資料の間には、10カ条に該当するような部分がもう少し出てくるのではないかなと思います。確かに5-3では、大きな家具に身を寄せるという行為は、具体的な対応というところで出てはいますが、大きな家具に身を寄せるというのは、私ども市民の方々にご指導しているのは、横浜の場合は丈夫な家具に身を寄せるということで、ただし大前提は家具の固定ですよということを言っているわけです。
ですから、前提も何もなしに検証だけすると、指導実態と合わなくなってしまい混乱を招きます。
【室﨑委員】
先ほどの林先生の4つの行動の整理は大賛成です。基本的にいうと私の分野では、みずからの防護行動、愛他行動、次に財産を守り、2次災害を防ぐ抑止行動、あと避難行動に分類します。直後の行動は大体その4つのカテゴリーで分けることが適切に感じますので、林先生の意見に大賛成です。
その中で、今度は荒卷委員の話が来るんですけれども、防護行動のところで大きな家具というのは誤解を呼ぶということですが、大きな家具が倒れてきたら凶器になることから、むしろ大きな家具のところに、丈夫なテーブル、机、ベッドということが書いてある。机とかベッド、背の低い大きな家具は安全かもしれないけれども、仏壇みたいなものは危険なので一概大きな家具というふうに言えない。だからそれを横浜市では丈夫な家具と言われて、かつちゃんと転倒防止といった言葉の使い方も整理されています。まさにその防護行動の中でいうと、安全な家具もしくは丈夫な家具、机の下に潜れとか、横にいろとか、ベッドの下にいろといったものは全部、安全な家具の横にいろということですよね。ただ、それがここでは大きな家具という言葉になっていて、少しこれは誤解を与えています。そこは少しきちっと整理をしたほうがいい。防護というのは一番重要なポイントだと思います。安全な場所にいようということです、もっと抽象化していくと。安全な場所って何かというと、がっしりとしてかつ凶器にならない家具の横とか、あるいは頑丈な壁とか、そばにいなさいということになります。
そういうふうに、防護行動の中の主要なものについて整理すると結局このチャートに移りますが、そこはちょっと整理すればもう少しわかりやすく見えてくるような気がします。
【田中主査】
大きな家具に身を寄せる、身を隠して頭を保護する、外に飛び出す、といったものをやめたんですけれども、地震を感じて慌てて外へ飛び出さないというオーダーはいいだろうということですね。
【室﨑委員】
そうです。次の愛他行動では、何を議論すべきかが抜けているかもしれません。そうするとつなぎ連子みたいに、年寄りとか赤ちゃん、一緒に逃げようと思ったらおまえも危ないぞという、それは昔の話で今どうかといったらまた別問題ですが。
【林委員】
今でもそうで、奥尻ではそういう人が死んでいます。
【室﨑委員】
だから、そういう意味での愛他行動はどう見るべきか。弱者を守ろうとする、それをしていいのか、して悪いのかという話があるのかもしれない。どういうケースで、どういう考えればよいのか。
【田中主査】
ここでは、大きな家具に身を寄せるといった枠組みにした上で、研究レビューから基本的に行わざるを得ない。例えばその中で、比較的既定因として指摘されていた家具の高さと床面積の検討というようなものがない。あるいはそこをメーンにしないと厳しいという理由が、ご指摘だと私は理解している。そういう書き方で進めればよいかと思います。
【林委員】
安全な家具に身を寄せるに直せばいいと思います。気持ちとしては丈夫な家具なんですが。オレンジに書いてあるものが、具体的には各自治体が中心になって推奨してきたそのものの文言です。それをある程度取りまとめる言葉で大きなという言葉にしていますが、それだったら安全という言葉にすればよいのかと言ったとたんに、安全な家具って何なんだろうということになります。比較的丈夫でかつ固定されているとか、強度が強いとか、そういう意味で安全と決めればよいのではないですか。
【国崎委員】
その安全という言葉の使い方ですが、防災に詳しくない人にとって、安全とか丈夫という言葉について、果たして何が丈夫で安全であるのかわかりにくいようです。具体的に強度や安全性についての指標がいまだ示せないでいます。実際に、私たちは第1回目の作業部会で、学校の学習机が倒れる映像を見ましたが、これまで安全と思われていた学習机が倒れていて、必ずしも安全なものでないことを理解しました。それでは安全な机とは何であるのか、ということが問題になってきます。
この作業部会で何度もでてきますが丈夫なとか、安全な空間とかというのは、どのように定義するのでしょうか。ここで「これが安全である」という指標を示し、推奨することはできないのでしょうか。
【林委員】
私たちが推奨するのではなく、その現場にいる人が自己判断するべきじゃないですか。どの状態でどうするといったものを作っても、やはり近くの丈夫そうな物に頼らざるを得ない。この中では一番丈夫そうだなどと、どこかの協会で強度を認定しているわけじゃないと思います。自分で命を守るという話で考えると、安全そうなものに身を寄せ、安全そうだと思うことをしている。それはある種の状況に対して自分たちが持っているコントロールの問題であって、それが結果として安全だったか、強度が足りなかったかというのは、それは結果でしかないと思います。そこで身の安全を担保するというのは難しい。
【国崎委員】
例えば、自宅の中で、安全な家具を選びたいという場合に、天板の厚さであったりとか、テーブルの材質であったりとか、そういったところで強度というものははかれないものでしょうか。購入の際に安全の視点で選ぶことが広まらないのは、丈夫・安全という定義や指標があいまいであるからではないかと思います。
【林委員】
人間というのは、すべてを自分でセレクトした空間にいつもいるわけではないと思います。与えられた空間の中でベストソリューションを探すというのが人間だと思います。
【国崎委員】
そのベストソリューションを探すための判断基準は何ですか。
【林委員】
丈夫そうに見えるものと自分で判断するしかないでしょう。
【田中主査】
恐らく林先生がおっしゃっていることが最終的な皆さんの思いではないかと思います。自宅で家具を選ぶ際の視点を示した方が良いと思いますが、それは例えば高さと底面積の関係で決まるかどうかわかりませんけれども、そういう情報はある程度インフォームしたほうがよいと思います。
あともう一つは、6弱以上と5強以下に分けないといけないという議論がありました。この委員会として、林先生の提案は、相当大きな意味を持っていて、6弱以上と5強以下はもうはっきり分けて、6弱は動けない、その中でどうすればいいかという議論と、5強以下の場合に動けてしまう、そのときにどうするのかというところだと思います。
【林委員】
私は首都直下地震防災・減災特別プロジェクトを進めていますが、6弱以上しか被災地と思っていません。5強以下のところは被災地ではないと認識しています。例えば、最大で5強しか出なかった地震では、災対本部開いていない。灯籠がちょっとひっくり返っただけぐらいですよね。去年の静岡の地震でも、壊れたのは東名高速だけみたいですよね。
結局のところ日本にあるいろんなものの性能を見ると、6弱以上になると被害は歴然と出るし、それを被災地というふうに定義してもいいだろうと思います。だから、地震のときの退避行動といったときに、甚大な被害の被災地の問題もあれば、社会の対応が発動されないような自分の努力の中で乗り切っていくべきくらいの規模のイベントでの安全確保も視野に入れるかですね。それが重要なフォーカスの仕方だと思います。私は被災地の中での被害を減らすという方向での思いでいろんなことをお話ししているんですけれども、もっと一般的にいって震度5弱の中のほうが発生頻度ははるかに高い。そこの中でのいろいろな問題があります。
もちろん家具の固定なんてすごく重要になってくると思いますし、それは必須だと思うし、火を消すことも重要だと思うし、そういう行動を推奨することというのは、トレーニングの意味も含めてどういうものが必要なんだということをすり込むという意味でいえば、さっきの被害の抑止行動と愛他行動と避難行動というふうに言っていただいている3つを頭の中に入れてもらう。実際にそれができるかどうかは別の問題です。事後報告でせいぜい終ってしまう。しかし、揺れは必ず何秒かたてば終わるわけですから、その後にその3つのことがすり込まれているかいないかは非常に大きな違いになるだろうなと思います。今のような意識があって、被災地になるのは6弱以上という認識は持っていてもいいと思います。
【荒卷委員】
仕方のない話ですが、その地域が一概に、例えば5強、5弱と言われても、建物によって低層、中層、高層によって全く揺れ方が違います。そうすると被害というのはおのずと5弱の地域であっても差が出る可能性があると思います。
【林委員】
その点は、建築分野の人たちが十分意識していると思います。加速度なり速度なりで見ると震度5と6では10倍以上違うような揺れですから、5と6は圧倒的に質的な違いがあると認識していただいていいと思います。震度5強までは、何事もないかのように社会は動いていく。もちろんちょっとした被害は出ますよ。だからといって、マスコミがトップで取り上げるようなイベントになるかというとそうじゃなくて、もっとマイナーなインシデントというか、事故みたいなものとして処理されていっていると思います。
【室﨑委員】
荒卷委員が指摘されているのは、例えば超高層で40階とか50階で、一番低層では震度4弱とか5弱ぐらいですが、長周期の波が高層部分に伝達して、上のほうでは震度6ぐらいになるよという話があります。基本的には震度の揺れ方に規定されるわけです。
【林委員】
それは東海・東南海・南海地震におけるこの関東平野での揺れです。
【室﨑委員】
人間の最適な行動というのは、その人がいる環境の強さの因子と、それから揺れの因子によって決まると思います。例えば外に飛び出す、飛び出さないでも、昔関東大震災から言われていましたが、ぼろ家に住んでいても庭があって松の木が生えている人はすぐに飛び出せ、不幸にして松の木が生えている庭のない人は、古道具屋に行って、黒檀の頑丈な机を買ってきてその下に家族で4人、頭を突っ込めと書いてあります。すぐ飛び出す人と机の下に潜っている人というのは、その家がぼろ家かどうかで決まる。だから、例えばこの机がいいのかどうかでも揺れを見て、ああこの机は大丈夫だと思う机と、上から巨大なコンクリートのはりが落ちてきたらこんな机じゃどうしてもだめだとかというから、それは揺れによっても違ってきます。
まさに臨機応変でその判断を、本人にちゃんと考えさせるべきかと思います。その環境の中で最適な行動をとれるだけの判断力を養えというのが林先生の述べられたニュアンスですよね。
【鈴木地震・防災研究課長】
論文の中では、安全な場所、すなわち物がないところだと、けがが少ないということが書かれていますが、動ける範囲で丈夫な家具に身を寄せるという行動よりは、物がないところへはって少し動くということの方が良いのでしょうか。
【室﨑委員】
能登半島地震で、親子が大きな部屋の真ん中にいたことによって助かったということもあります。壁際は全部壊れているんだけれども、部屋の真ん中で助かったという例もあります。一方で真ん中にいたら上から電器落ちてくることもありますから、安全な場所とは何かというと難しい。さらに安全とは何かと掘り下げることも難しい。そういうことを言い出すとまた切りがないので、ある程度最大公約数的なことを推奨するわけでしょう。言いづらいかもしれないですが。
【林委員】
先程の黒檀の机を買えというのは正しいでしょうね。お金を出しなさい、投資しなさいということではなく、その気持ちなんだと思います。トイレに逃げろという人もいるし。要するに狭い空間にたくさん柱があるところは強度が高いなど。もともとお殿様の地震の間なんていうのは何も置いていないですから、軽い屋根にしていたりしているから。そういう意味で、物がないことは望ましい。柱がたくさんあることは望ましい。それから、かたい丈夫なものであることは望ましいということでしょうか。安全は担保できないと思いますが。確率の問題です。
【田中主査】
何もないというのが、あいまいなのかもしれません。だから、構造的な話で整理をしていくしかなく、それも最後は確率になりますよね。能登の地震の際にトイレに行ったために、揺られて壁にどんとぶつかってけがした人もいるし、落っこっちゃった人もいるし。飛び出して助かっている人もいます。災害による死亡の確率は100万分の1の確率でも都民は10人死んでしまいます。
【国崎委員】
それならば、大きな家具と言わなくても、安全な空間に身を寄せるでいいとおもいますが。
【林委員】
それでいいと思います。
【田中主査】
表現というのを定めて、我々はそういう意味だ、ということでとらえてもらえばよいかと思います。これも検証の対象になります。
最後に資料5-6ですが、これも私たちの大きなアウトプットになると思うんですけれども、何をしていくのかというところとあわせながら全体の議論をいただければと思います。
【富田防災科学技術推進室長補佐】
- 資料5-6の説明 -
【林委員】
今後の課題の部分は、科研費補助金に応募したら、多分落ちてしまうような内容だと思います。だから、どうなんだということになってしまわないように、大きなフレームをつくって、その中の個々の課題としてあげて行くべきだと思います。ここで取り上げた文献を今回レビューしてきましたが、ほとんどが学会報告です。だから論文になっているものは極めて少ない。というのは、今までのこういう研究はそのレベルの研究でしかなくて、論文にならなかったのは、まとめることができないようなものだからだと思います。だから、機能的に整理をしても、やはりなかなか展開というのは見えてこないんじゃないなのかなという気がしています。
もう一つ、将来、ある種の振動台実験との連携を考えると、振動台実験の行き着く先の中に人間のファクターというのをどう組み込むのかという本質論というのは避けて通ることはできないと思います。
ねらうべきだと思っているのは、安全基準の確立を目指したらいいと思います。あるいはそういうものの認証も必要でないかと思います。ISOでも何でも日本を主体で取ってしまい、将来的にはこういう安全基準を認証する世界のセンターができないでしょうか。
首都機能をどう守るかとか、それから防災的にいえば災害対策本部機能であったり、あるいは医療の機能であったり、通信であったりとか、そういう重要な社会のインフラをどう機能を維持させるのかという視点に立った時に、機能維持、事業継続という言葉でとらえるといろんな資産守っていかななくてはならなくなります。そのようなものの中に重要なものとして人という要素は当然あります。人が来られなくなってしまったら事業継続はできない。人が来なくなる理由に、死亡だとか負傷だとか、あるいは自分は大丈夫でも家族が死亡、負傷してしまうと人が来られなくなる。同じようなことで言うと、建物の非構造部材や設備などが対象となると思います。そういったものの安全認証が必要でないかと思います。
安全に対する認証を将来ビジネスに据えるみたいなことをイメージして考えると、やはり人間が、事業継続にとって不可欠な要素であることにすぐに気づきます。事業継続のための人間の安全について、特に屋内型の中で考えると安全認証といったことに展開できます。家具の室内の設定については、高さと底辺との比である程度説明できてしまい、墓石とそんなに変わらないということだと思います。
研究の大きな枠を作ってから、個々の課題を位置付けてから出さないと、単体で関連もないままにそのまま出すとつらいものがある。そうなると世界の認証センターの枠組みを作るという目的で、安全のサーティフィケートを出すことは良いのではないかと思っています。できるかどうか、またビジネスの可能性は要検討ですが、何かを行うときにはそのような枠組みが必要になってくるのではないかと思います。
【室﨑委員】
全体のフレームについていうと、室内環境や建物、人間行動と、負傷もしくは死傷のダメージという3つのフレームで見ていこうとするスタンスは良いかと思います。すべて大切ですけれども重要なこととして、室内の環境と行動、負傷の3つの関係を、もう少し文献研究で深められないかと思います。もし時間があればそれをしっかりやったほうがいいというのが1つです。
2つ目は、調査研究、実験研究が今後どうしても必要になってくるのだろうと思いますが、そのときに揺れの違いによる危険、あるいはリスクとかハザードを実験の中で明らかにするということだろうと思います。
また、建物においては形態と耐震性があると思うですけれども、耐震補強したら非常に安全となり、また家具の転倒対策を施しているのとそうでないものでは、その危険な現象の現れ方が違ってきます。だから、耐震補強の視点からは層破壊の話がメインとなり、高層マンションに見られるRC造共同住宅の大きく揺れるタイプと、低層木造住宅が揺れるタイプでは異なるので、例えば構造形式と耐震性の視点から、ある程度ミックスした幾つかのパターンで少し揺らしてみて、部屋の中でどこがどう危険なのかということを解明すればよいのではないかと思います。
3つ目が、人間行動において生理とか心理ということにこだわっているように見えますが、この部分は重要だと判断されているものと理解しています。ここでは心理とか生理とか、どのように捉えようとしているのか。人間の行動の限界を実験的に調べるのか、一体どういう目的で、心理とか生理をここで取り扱うのかを明らかにした方が良いと思います。教育やトレーニングによって人間の能力を高め、冷静な判断ができるように教育をしようとしているのか、もう少し明確にすれば研究計画が見えてくると思いました。
【小林委員】
教育関係者の立場で、何をしていかなければいけないかなと思いながら考えていました。これまでは、ぐらっときたら机の下にという身を隠すという本当にワンパターンの中で教えてきたのではないかと反省しております。
本日もたびたび出てきましたが、キーワードは安全な空間を子供たち自身にどう理解させるかということが大切で、指示を待ってから動くのではなく、いつでもどこでも子供たち自身が安全空間を確保できるような、そういう思考力のある子供たちを育てなければならないと感じました。
それとあわせて、やはり危険因子をどれだけ子供たちが知ることができるのか、学校で訓練したことがどれだけ家庭で生かせるか、ということも大切だと思いました。そのためには、やはり教師自身がもう少し勉強しなければならない。子供を変えるためには教師自身が変わらなければならないと感じました。
そして、やはり防災に関しては日ごろの備えということが大切なことだと思いますので、耐震補強も大事ですけれども、やはり安全第一に考えた校舎づくり、環境整備を行うということと、それから3つの柱でいえばどのような学習をさせていくか、安全の防災に係る学習をどうさせていくか、ということが3つめに挙げられると思います。そのためには、今回の作業部会等で得た情報をどう現場に還元していくかということも大切なことだと思いました。
それから月1回行われている訓練ですが、これはもう確かにマンネリ化してきています。ですから、場や時間や、それから煙体験や起震車の体験もよいのですが、さらに今回のようなデータを見るともっと子供たちに、恐怖心を与えるんつもりはなくても、危険を予測できるような、例えば映像でもよいのですが、何か新しいことに取り組めたら良いと思いました。子供たちがこれから災害に遭うわけですから、防災教育も大切だと改めて思いました。
【国崎委員】
少し詳細な部分の話をしますと、室内の危険因子の挙動に関する研究で、ぜひこれを検討項目に入れてほしいものが2段ベッドの挙動です。恐らくベッドを使用している人は、1日の中で一番長く使う家具ではないかなと思いますし、寝ているというその無防備な状況の中で、地震が発生したときの挙動というものが生命を分けるということもあるかもしれません。
2段ベッドに関しましては、日本の住宅事情で複数子供がいる場合には、部屋数を有効に使うためにも2段ベッドを利用している家庭は非常に多いです。その中で、この2段ベッドが地震時にどのような挙動を示すのかという調査研究が、ほとんど見あたりません。2段ベッドでも、さまざまな形状があります。セパレートで使えるもの、木材のものや鉄パイプのものもあります。まずベッドも含めて物を選ぶときに地震が起きても大丈夫と判断できる材料や判断基準になるような研究が行われればよいと思っています。そして家具にとどまらず、例えば防災グッズに関しましても、やはり多くの会社はベンチャーであるということで、なかなか費用面でも開発費にかけられない。振動実験をたくさんできないという中で、苦しい中でやっております。そこで、選ぶほうは耐震マット一つにしても、テレショップのものからホームセンターのものまで、さまざまなものがある中で、まず安価なものを買ってしまうということがあります。
そういった意味でも、何かしら国が推奨する基準というものがあれば、国民は選択しやすく、強いては生命の安全性が向上されるのではないかと思っております。
以上です。
【荒卷委員】
資料5-4を拝見いたしましたが、大変貴重な資料で、これまでにこのような研究の積み重ねがあったことを知り、研究成果を現場で本当に生かしていかなきゃいけないと思いました。これまでの研究を踏まえて、今後の課題という部分は、この部会での成果物のかなめになってくると思われますが、どうその成果を生かしていくかという部分が非常に重要だと思っています。
現場への情報提供という部分に直結するのかと思われますが、最終的には、各自治体が地域特性に対応できるように、ブラッシュアップしていくところまで提起していかねばならないと思います。せっかくいろんな検討をされても、あるいは調査研究をされていても、それを活かすことができなければ何もならないと思っています。成果を活かすこと、それが自治体の人間として一番課題だと考えています。
【田中主査】
あとこの作業部会は報告だけですか。終了後は何を行うのでしょうか。
【鈴木地震・防災研究課長】
報告書の形でまとめさせていただいて、防災分野の研究開発に関する委員会の方に報告することになっております。それまでに、もうちょっと詰めなければならないところでは、お手伝いいただければと思います。これ以降も一緒に行っていけることもあわせて考えたいと思います。
【田中主査】
本日の審議の中で、気になったことがございましたらご連絡をいただければと思います。細かいところで前提条件は妥当であるか、表現について適切かどうかなど、そういう細かいところから大きなところまで幾つかご連絡いただければと思います。
次の会議が最終回ですので、この報告書案を作成していただき、ご検討いただくということになると思います。
事務局から連絡事項等ありましたらお願いいたします。
【南山防災科学技術推進室長】
次回の作業部会は、3月9日の火曜日になってございます。時間は、10時から12時で、場所はきょうと同じ場所の予定です。事務局からは以上です。
【田中主査】
それでは、以上をもちまして閉会いたします。
以上
研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室