平成21年10月6日(木曜日)10時00分~12時00分
文部科学省18階研究開発局第1会議室
田中主査、荒卷委員、国崎委員、小林委員、林委員、室﨑委員
鈴木地震・防災研究課長、南山防災科学技術推進室長 他
【 議題1 推奨されている退避行動の整理と今後の検討方針について 】
【南山防災科学技術推進室長】
それでは、定刻を過ぎましたので、第4回地震防災研究を踏まえた退避行動等に関する作業部会を開催させていただきたいと思います。
本日、委員の先生9名中6名が現在出席でございます。定足を満たしてございます。
続きまして、お手元の資料につきまして確認をお願いいたします。
- 資料の確認 -
事務局からは以上でございます。
【田中主査】
きょうのメインの議題は資料4-3を中心とする推奨されている退避行動の整理と今後の検討課題ということになります。
資料の一番後ろに参考というので事務局のほうでまとめていただいた主な意見というのがございます。ごらんいただいて確認をいただければと思います。前回は、とりあえず今推奨されている行動をいろいろ並べてみて、ある程度グループ化をし、それに対してできるだけいろいろな資料へその環境条件の変化、危険性について評価をしつつ、それと同時に今度は人間社会側のほうをできるだけ定量化できるような話を進めていければというようなご議論だったというふうに思っています。割と幅広く、また単純な結論ではない。一番大きいところとしては、荒卷先生や林先生がおっしゃっていますけれども、考えてもらう材料をきちんと出したほうがいいだろうというふうに考えております。内容はよろしいでしょうか。
それでは、資料4-3のご説明をいただきながら話を進めていきたいというふうに思います。
【富田防災科学技術推進室長補佐】
それでは、資料4-3について説明をさせていただきます。
- 資料4-3の説明 -
【田中主査】
どうもありがとうございました。
きょうはこの方向性の議論と、今後の課題の部分、あるいは整理の仕方に対してのアドバイスをいただければと思いますけれども、大きくは危険の発効基準という視点から検討を進めたいと思います。また、それによって推奨行動がある程度ダイナミックに変わってくると思います。
資料についてご意見はございますでしょうか。
【室﨑委員】
非常にしっかり整理していただき、わかりやすくなったので、おおむねこれでいいのだろうと思いますが、いくつか意見を述べさせていただきます。
1つ目は、全体の行動の優先順位というところで(4)番にかかわることなんですけれども、ここに書いてあるとおり、まずやっぱりみずからの命を守る、みずからの安全を確認して安全確保を図るというのが何よりも最優先であると思います。その中で、あとプラスアルファとしては、自分だけではなくて、小さな子供だとか、お年寄りを守りることが最優先されると思います。次に2番目に、命の確認がされたら、例えば火を消すとか、出口の扉を開けるなどの制御行動を必要に応じて行う。3番目に退避行動を行えばよいと思います。大きなフレームとしては大体そういった流れになると思います。まずは、命の守るということを強調する、大きな流れのスタートは、そこにあるのではないかということが一つ目です。
2つ目は、それとは矛盾しますが、揺れがおさまってから火を消すことは良いのですが、火事の研究をやっていると一番気になることは、例えば、ガスはマイクロメーターで消えていくなどという前提もあるので、揺れがおさまって余裕があったら火を消してくださいという話でよいのですが、仏壇のろうそくなどはやはり消してほしい。ただ、それを言うと、わざわざ仏壇まで消しに行く人がいるから難しい。ろうそくは火を消せと、なかなかそれを言い切れないところがあります。心情としてろうそくや線香を持っていたら、それは消してから机の下にもぐってほしいとか思います。ただそういうごく例外を強調することによって、机の下にもぐれと言ったら、隣の部屋まで行って机の下を探しに行く人もいたりとか、ろうそくの火を消せと言うと、ろうそくが2階にあったら2階まで行って消しに行く人がいたりするので、そこは非常に表現が難しい。これはどうしろという話じゃなくて、例外事項の取り扱いをどうしたら良いのかをよく検討しないといけないと思います。
3つ目は、これはかなり重要かもしれませんけれども、家が倒れてきて、層破壊、それで圧死をするというような家が壊れて下敷きになるような事態が起きることの少しそういうイメージと、別紙1などで、場合によっては家そのものが壊れて、圧死の危険性があり得ることから頑丈な机の下に入り込む、という理由をつけ加えていただいたら行動の目的がはっきりするのではないかと思います。
細かなところを言い過ぎたかもしれませんけれども、おおむね全体は、時間とそれから危険、リスクとの関係で行動を決めていく、考えていくというシナリオはこれで良いと思います。
【荒卷委員】
今の火災の関連のご指摘は、先生がおっしゃるとおりで、例外的な部分について検討いただければと思います。一方で、先ほどマイコンメーターの話がありましたけれども、ガスの器具の元栓を閉めるという行為はもうマイコンメーターがほとんど100%普及している状況ですので、この行為というのはもう必要ないと思います。当然火に対する注意点として、例外的なところの火を消していくというようなコメント書けばよいと思います。
それと、別紙の2の関係ですが、これはどうなるかなという部分ですけれども、緊急地震速報のあり・なしというところで、現状においてはまだ精度の問題や到達時間の関係でいろいろな問題が取りざたされていると思います。その中で現在の状況で言及することが本当に必要なのかなと思います。というのも、8月か、9月に全くの誤報がありましたが、私は身構え、妻は動けなくなってしまったという状況でした。本当にびっくりしてしまったようです。まだ精度がもっとよくなれば期待もできますが、過度に国民が期待している部分がある中で、これの表現についてご検討いただければと思います。
【田中主査】
ありがとうございます。
緊急地震速報は研究課題とも絡んでおりますけれども、全く触れないのも難しいですね。
【福和委員】
退避という言葉をどう使うかということが少し気になっています。今の事務局の説明だと、地震が起きた瞬間の対応行動というところにターゲットが絞られていますが、「退避」という言葉は、少し長い時間の行動パターンという印象を持ちます。退避という言葉の定義を最初にしておいたほうが誤解を招かないと思います。ここでは、ほとんど地震が起きた揺れの間の最中プラスアルファぐらいまでが主として議論されるので誤解の無いようにすることが必要だと思います。
それから2点目ですが、大きな家具のそばに身を寄せるというのは、間違えると一番危険な状態となります。イメージ力をきちんと身につけることのほうが大事かもしれません。
3点目ですが、ここで考えている現象は、どちらかというと激しい揺れではなく、その手前の揺れぐらいをイメージしたフローになっていると思っています。兵庫県南部地震のときのコンビニの映像がよく流れますが、あのコンビニの映像は地面の揺れですから、上階ではあの揺れの数倍の揺れになります。そうなったときには、多分全く動けなくて、何もできないという答えになります。ここで議論しているのは、人間が行動できるぐらいの揺れの中でこういう対処行動をしましょうという、その前提条件を明示する必要がある気がいたしました。
それから、最後に、緊急地震速報についての取り扱いについては、もう少し前向きでもいいかなと個人的には思っています。緊急地震速報をよりよくしていくという立場で言うと、もしもそれがこういうような形になったとしたら、こういうふうに活用できますよという、「もしも」付きで整理をすることはいいかなと感じています。そのときに、今のテレビで放送されるような限定された情報しかないときには、震度もわからないし、猶予時間もわからないので、安全な場所に移動するという答えしかないのですが、揺れの強さとか、あるいは猶予タイムのような付加情報がついたら、ここの対処方法ははるかにメニューがふえていきます。その可能性はここでは指摘しておいたほうが、文科省で実施するプロジェクトがより有意義に生かしていけると思っております。
【小林委員】
資料中に学校と一枠で書かれていますが、本当に学校はさまざまな状況がありますので、それぞれの学校がオリジナルの退避行動について取り組んでいかなきゃいけないなということを感じました。
また、学校はあわせて避難場所であります。ですから、防災拠点でもあるのですが、その前提となる耐震化進んでおりません。100%のところもありますけれども、まだ実際的には100%でないので、耐震化が図られている学校と図られていない学校ではやはり対応が違うと思われます。やはり防災拠点である学校の耐震化は急務であると感じました。
細かい部分については、学校自体がもっと具体的に検討しなければならないと考えています。
【国崎委員】
ことばの使い方の部分ですが、先ほど福和先生からも大きな家具に身を寄せるというお話がありましたが、私は日ごろから「安全な空間に身を寄せる」という言葉を使っています。「安全な空間」はどこなのかというのは、何も物が置いていない廊下や丈夫なテーブルなど、それぞれ適切な場所を探していくことが必要かと思っております。
その中で、頑丈な机やテーブルが、どのようなものであるのかが問題になります。しかし、頑丈なテーブルに対する評価・規格・基準はありません。作業部会の議論にもあるように、それぞれの環境に応じた退避行動の判断と行動を個人に求めていくことになるかと思いますが、個人が「安全な空間」を追求していくときに、退避行動の整理を減災につなげていくための、なにが安全であるのかを示すことのできる評価実験が必要かと思います。
【鈴木地震・防災研究課長】
この別紙1は、今の表現方法だと、誤解を生むよくない部分があると思います。そういう点では、例えばテーブルのお話のように、こういうものだったらここまで大丈夫というのがデータ的に収集ができましたら、そういうものをつけて発表し、それぞれのご自宅で、うちにあるテーブルだとこれはだめだなとか判断してもらえればと思います。また、安全な場所を自宅の中で探したときには、ここが安全ではないかと事前に考えていただいて、地震時にはそこに避難しようとか、ころがって行こうとか、それぞれの方に考えていただければと思います。そういう意味ではちょっと大げさでしたけれども、支援ツールの作成といった整理の仕方で遠い先かもしれませんが、できるところから実施できれば思っております。
【福和委員】
まずクライテリアのことですが、例えば家具が倒れるか、それとも滑るかというようなクライテリアのことについては、それなりに力学的に明解な答えがあります。倒れるというときは、揺れの振動数や家具の大きさに応じて、ある周期よりも短い周期のときにはこういう速度で倒れますとか、それよりも長い周期のときにはこういう加速度で倒れますなどが示されています。家具の大きさによって、速度で決まるところと加速度で決まるというところがあるというのは、力学の世界で明確に説明され、震度というよりは、物理的なクライテリアで決められます。それから、滑るか倒れるかということも、これは家具底面の摩擦係数と転倒の条件により決められていて、その辺りは明らかになっています。
それから人間行動については、振動如限度というものがあり、環境振動という快適性の観点からの見た人間行動について、建築の世界で沢山の研究があります。しかし、人間がきちんと行動できるかどうかというレベルのところについては、そういうことを再現できる振動台がないので、人間行動に関する資料はほとんどありません。その分野はこれから皆で調べていかないといけないと思います。揺れの中で人間はどこまでできるのかということの研究の意義は大きいと考えています。
【室﨑委員】
激し振動の中で2階から1階に降りてきた人がいたりしますので、人間を一つのモデルにすることは非常に難しい。
【福和委員】
あと、主人公別にものを見るというような研究はあまりなされていません。国崎先生がおっしゃるような子供の話もそうですし、例えば聾唖の方とか、目の見えない方とか、お年寄りとかという、主人公別の視点というのをここにもう一個入れたおいたほうが良いのではないかという印象は持ちました。
【林委員】
福和先生の今のご意見はないものねだりに近い。何の蓄積もないところで、いきなりそんな先へ進んだものを考えることは難しい。やはり着実に進めるというのがここのスタンスじゃないかと思います。
4点ほど意見があります。
第1点は、動けないことを対象外にするは良くないと思います。動けないというのは一つの状態なので、むしろそこに一番危険が発生するわけだから、どこまでいったら動けなくなるかということを、あるいは動けないとはどういうことなのかということをもう少し調べる必要があると思います。動けないから何もしないというのではなくて、むしろ動けないということをよく考え、その後ろにあるさまざまな環境条件を事前に安全なほうへ動かしておかないと、それが退避行動だというふうに結論をする意味でも大変重要なポイントになるので対象外にするというのはぜひやめてほしいというのが1点目です。
2つ目は、個人の能力についてですが、基本的には運動能力と認知の能力、この2つの能力をある程度考慮する必要があると思います。例えば、加齢が進めば基本的には筋力が落ちるから、同じ揺れでも耐えられないとか、転んでしまうとか、いろいろなことがあるでしょうし、それから認識の力がある程度低くなれば、結局何が安全につながるかがわからなくなってしまう。ですから、何が安全につながるかを認識するというのは、後の退避行動の選択にもかかわるものなので、やはり計測することができる認識の能力と運動の能力の2つをパラメーターに置いたように個人の能力を考えて行けばよいのではないでしょうか。ゼロベースからのスタートですので、一般の人を対象とするところからスタートし、スペシャルニーズに移行するような本来の順序は踏むべきだと思います。
3番目の別紙2にある学校と職場の位置づけですけれども、やはり置く場所からいえば、中心的に考える屋内だろうと思います。集客施設と学校・職場の違いは、やはりそこに居合わせるメンバーがある程度固定し、人間関係のネットワークがちゃんと成立していて、コミュニケーションができるというような事情があります。そういう意味でいえば、自宅の次に多くの人がほぼ日常的にいるような室内空間というような位置づけにしておいたらどうかと思います。
4番目は、退避行動の中に何を含むか、定義が必要であると思います。それは退避行動の中身はこうだ、という定義をしっかりしていただくことで、我々が目指していることを示せると思います。それが発展して人間の退避行動全般を扱えるフレームを持ちたい。しかし、とりあえず強い揺れに対する部分を中心的に見ているという意味からいって、退避行動の中で命を守るということから始まるのであれば、そこだけ妙に何か大和言葉にしないで、この中でぜひ一連の用語を定義するように、それぞれに言葉を与えて、それ全体を退避行動と呼ぶと言った定義が必要ではないかと思います。
また、実際に言葉を定義しても、言葉だけでは上滑りしますから、「丈夫な家具」の「丈夫」とは、イメージなので実際の実例と言葉の対応関係をビジュアルに、あるいはわかりやすくすると定義が実体化すると思います。
【室﨑委員】
一つ目は、学校や職場の扱いですが、滞在時間が圧倒的に長いので、重要度の観点から学校でどうすべきか、職場でどうすべきかというようなことはもう少し優先度を上げる必要がある。学校で基本的な地震時の行動の方針を作っておく必要があるので、家、学校と職場を並べて、フローを考えてみる必要があるかなと思います。
二つ目は、やはり単に退避行動を推奨するだけはなく、危険の発効基準というのは重要であるので、ここをどうやって限りなくゼロにしていくかという取り組み、予防、環境改善を一方では提示する必要があると思います。環境改善と退避行動というのを総合的にとらえるという形でやっぱり国民の方にきちっと訴えるというところが一つキーポイントになると思いますので、対比で並べて示すのは良いと思います。
【鈴木地震・防災研究課長】
今の事前の準備の部分は、個人ごとで具体的にお考えいただくというときの材料として、資料にあるようなイメージが出やすいものを入れました。退避行動の定義としてそこまで入れるかどうかは別にして、国民の皆さんの命を失うことが減るとか、けがをするということが減るということが大目的ですので、うまく貢献できるようなものを考えていくことであると思っています。
それから、家や学校以外にも広いスコープで検討したい気持ちはありますが、3月という期限がありますので、資料の整理上どこまで検討が進むかは、これからの進捗によることになります。しかし、この研究は3月で終わるということではなくて、多くの方にご協力いただきながら連携して、もう少し長い期間で研究をしなければならないと思います。そういう視点では、最初にその考えられる範囲というか、そこのスコープとしては広げて、順番に整理をさせていただければと思います。
【林委員】
学校・職場を重点的に検討して欲しいと言ってはいますが、検討対象を増やして欲しいとは言っていません。基本的には自分の命を守ればよいと思っています。自宅はどうしても財産保全や火事の話として気になるでしょうけれども、学校・職場では、基本的には自分の命を守れば良いと思う。ただ、この中で環境条件以降のところに新しく項目をそんなに立てなくても良いと思っています。学校だとか職場とか、いっぱい課題はありますけれども、作業部会での検討対象と次元が違うので、ここでは基本的には生命身体の安全を確保するという観点だけに絞って、学校・職場を見ていけば良いと思っています。
【鈴木地震・防災研究課長】
生命を守るという観点で整理しますが、自宅の視点だけで整理するのではなく、学校の防災の担当者の方によりお考えをいただける整理した資料を作成し、また、人間関係のある職場というものもありますので、時間がかかっても検討ができたらよいと思います。
【小林委員】
地震時において学校の子供たちがどうあるべきかというと、子供たち一人一人が退避の行動を身につけて、みずから考える子供に育たなければいけないと思います。逆に言えば、学校の環境だけ見るのではなくて、全体で人としてどう動くかということが理解されることが大事なのではないかなとは思っています。
【田中主査】
学校も職場も基本原則は一緒なんですが、ただ危険要因がかなりバラエティーに富んでくるので、それを一般論で議論するのはちょっと無意味だと思います。我々大学関係者でも文学部と工学部では対応が違うと思いますのが、そこまで細かな条件に至ったら厳しい。原則はとにかくやれることからやっていくというのが一つの姿だと思います。
その中で一つ、今のお話を伺っていて、いずれここできちんと議論しなければならないのは、退避行動の定義の部分です。ある程度幅を持たせて、ロングレンジを見た中で考えていくべきだという議論もありました。そこの部分をそれぞれどういう言葉を使うか、少しそこは整理したほうがいいという気がします。
もう一つは、やはり震度よりも、速度や加速度が環境要因の発効基準として正確だという議論がある一方で、ここでは全体をどういう形で発効基準というのを整理するのかというのも考えておくほうがいいと思います。最終的には、galというのでよいのか、震度のほうがわかりやすいのか、速度なのか、文科省だからごそっとまとめてしまうという手もあると思います。
【福和委員】
判定基準はちゃんと力学にのっとった判定基準をし、それに基づいて表現するときは何か翻訳して表現するというように切り分ければいいと思います。例えば、じゅうたんと畳とでは摩擦係数が違うとか。予測する側では考えているけれども、表示するときはじゅうたんとか、畳とかという言葉に変えて、大きく分けて示せばよいのではないでしょうか。
いずれにしても最後にまとめるときは悩むと思います。
【林委員】
だから、やっぱり昔の震度6は、本来はあり得ないとんでもない揺れというようなニュアンスだったと思います。だから、ある意味で震度5以下というところが実際の退避できる範囲になるのかなと思います。また、震度5以下で被害が出ないことが大事だと思います。
【田中主査】
そこは発効基準ともあわせて、まとめてしまうということですよね。恐らく最終的な皆さんご意見は、とれるような行動は推奨できないことになるのではないかと考えています。最後は 行動できないから、事前対策の幅を広げるという思いが皆さんに多分共通におありだろうと思います。
あとは、動けないとか、安全とか、丈夫とか、そういう形容詞とかというというのは少しきちんと議論していくべきだと思います。
緊急地震速報については、こういう使い方ができるように努力して欲しいと書くことになるのでしょうか。技術的に無理なものは無理ですけれども。
漏れはないでしょうか。余り細かい例外規定に入ると大変だと思いますけれども。
【国崎委員】
駿河湾の地震では本棚からたくさん物が落ちてきて亡くなったという方がいらっしゃいましたので、家具を固定すれば食器などの中の物が飛び出しやすくなるということがあります。そのような死亡例から家具の固定だけでなく、家具の中身も同時に実施することが望ましいと思います。そこで、戸棚の中の食器類の種類や家庭状況という項目があると思うのですが、(2)のところで、窓等のガラスが割れる以外に、物が飛散して避難に時間がかかることや、飛散することによって転倒してけがをするといった内容が含まれると良いと思います。
さらに、防災では、地震時には火を消しなさいと言うような、昔の常識は今の非常識と言われるような事柄があります。前回の作業部会の中でも述べさせていただきましたが、近未来のインフラ整備を見越して、今ここで議論し、まとまったことが10年経って古い情報とならないような 視点を持つことが必要ではないかと思います。
【室﨑委員】
地震の被害や感じ方は、まさに加速度だとか、周期で決まると思いますが、それを激しいと感じる、感じないとか、震度6の上か下かというくらいで良いのかもしれませんが、一般の人たちに分かるような表現はないのでしょうか。
【福和委員】
そういった表現の方法をつくらねばならないと思います。
【室﨑委員】
そういうことが可能であるのかどうか、難しいと思います。振動台に乗ってみせて、体験し、それで教育されれば、地震の揺れに応じて、大きい地震かどうかみんな判断できて、それに応じた行動ができると思いますが、現在それもわからない人が結構いますよね。
【福和委員】
なかなか揺れをイメージすることは難しい。ここでは今、震度みたいな言葉でマニュアルを出していこうとしています。地震動予測地図をつくっていて、シナリオ型の地震動予測では波形まであるので、表層地盤の増幅のところを計算して揺れを出すのはたやすく、ハザードステーション的なシステムの上に、ここに建物の階に応じた家具の動きをシミュレーションして見せることはできます。将来的にはそういう成果をつなげることが大事です。それができれば揺れ方も含めて、一般の人に見せることができます。
【林委員】
ご指摘のとおりだと思いますが、それを行うためになかったものは何かというと、ユーザーサイドに立ってそういう情報をまとめてお見せするものがなかったと思います。それから震度というのは、今、絶対無二の不磨の大典として言っているわけではなくて、社会にとりあえず渡りがいいかというところで始めるわけで、では今度は実際にもう少し性質に合わせた違うインデックスをつくりましょう、あるいはもう少し推定の精度を上げましょうとかというほうへみんなの努力が集まるような仕掛けになればいいと思います。今までは精度を上げると費用がかかるなと思って、やめてきたというのが本当のところだと思いますが、これから、まずどういうふうに使えるのかとか、役に立つのかとか、少しでも意識や知識が上がるのかというもののプロトタイプを理解をしていただき、それを具現化して、改善するという方向に考えていったほうが良いと思います。
【田中主査】
今年度は発効基準を相当細かく設定していますが、この方向性で良いとおもいますがいかがでしょうか。例えば、蛍光灯や窓ガラス、食器やコップなど、いわゆる屋内の非構造部材プラス装飾家具を対象にしていく。あと他に何か、危険性のあるものでは。さきほど本が出ていましたが。何かこれは押さえておいたほうがいいというのはなかったでしょうか。
【荒卷委員】
内容的にはよくやっていただいていますが、第一線の自治体の職員として、最終的には市民指導をしていく際に、細かくなり過ぎると、指導する上で非常に苦心してしまうことがあります。ですから、最終的な成果物でも提言のまとめ方を気にしています。最終的には支援ツールを提供するということだったと思います。それは理解していますが、その部分で余り細かくなり過ぎてわかりづらくなってしまうと、自治体職員は指導に生かせないという問題が出てきますので、その辺の整合をうまく取れればと考えています。
それと、私は退避行動という部分は応急対策の部分だと思っています。この応急対策での退避行動とは別に、事前対策としての減災行動としての家具の固定だとか、耐震化の問題、あるいは事後対策としての避難行動としての避難生活だとか、生活安定だとかという部分の中で、何か位置づけを明確にしていったほうが、今後いろいろな展開が生まれてくるのではないかと考えています。
【田中主査】
今回できるだけ扱う範囲が広ければと思いますが、加えてこういう整備が必要だとか、そういうものも示せればと思います。前半の部分のご指摘は、自治体にとっては関心を持っている部分でもありますので、まとめる際には我々も配慮した方がよいと思います。
【室﨑委員】
どういうふうに伝えれば、相手にきちんと伝わるかというような部分も配慮していかないといけないと思います。
【田中主査】
ただ、いろいろな危険性があるということをご理解いただくというのは、それだけでもだいぶん違うと思います。
【国崎委員】
地震時において、どのような退避行動をとっても効果のない場合というのはあるのでしょうか。例えば、超高層マンションの防災対策では、5階くらいまでなら事前の有効な対策もありますが、5階から上階だと家具は備え付けのものにしないと転倒してしまうなど。公的機関が示している家具の固定方法は戸建を主とした内容になっているように思います。超高層マンションに住まわれている方は、固定とその効果について情報を得る機会が少ないように思いますので効果的な家具の固定方法について教えてください。
【福和委員】
超高層だから常に揺れるとは限りません。地震動の揺れ方にもよりますので一概には言い切れません。L字金具では効果がない訳でもなく、きちんとした留め方をしたL字金具だったら大丈夫だと思います。作り付けのものだから大丈夫ということもなく、それらを固定するボルトの固定方法にもよります。ですから、壁の下地材等の条件によって固定する方法を示していき、それらをもとに良い方法というもの教育をしていくことは可能ですが、これだったらいいよ、これだったらだめだということは言い切れないと思います。
【国崎委員】
現在、高層マンションに住まわれている方に何かアドバイスできればと思ったのですが。
【福和委員】
なかなか明解な答えを出すのは難しいと思います。
【国崎委員】
では、そうなると、例えば長周期のような揺れがあった場合には、退避ではなくて、何かにつかまらないといけないということでしょうか。
【福和委員】
だから、冗談混じりに言っていたときがありますが、高層ビルは必ずつかまる場所をつくりましょうという話は申し上げました。つかまる場所がないと吹っ飛ばされますから。
ただ、超高層ビルの場合には、本格的に揺れるまでにはものすごく時間があります。徐々に揺れが大きくなっていきますので、大きく揺れるということを伝えてあげ、そして安全空間に移動しましょうということを伝えてあげれば、十分に時間的なゆとりはあるはずです。一方で、低い建物は揺れ始めたら短時間で大きな揺れになる可能性がありますから、その地震の特性の差を、建物の特性を含めて対策を見せることができるような仕掛けが将来的に見えてくれば、それを通して教育できると思います。
【田中主査】
最後は自分の命を守るために、どれぐらいの余裕があるかというところから、議論を行うことになるかもしれません。
とりあえず資料4-3にかかわる今後の検討方針については、おおむねご了解いただいたということでよろしいでしょうか。では、次に今後の作業に関する依頼について事務局の方から説明をお願いします。
【富田防災科学技術推進室長補佐】
資料4-4について説明をさせていただきます。
- 資料4-4の説明 -
【田中主査】
ご覧いただいて何かございましたらお願いします。全員が全ての項目にこたえられそうにはないですが。
【室﨑委員】
別添2では、自分で分かったことをこの様式を10枚とか、20枚とか作成するのですか。すなわち、一つずつの項目について、一つずつこの様式を完成させるということですか。
【田中主査】
1番については複数枚あり得ますが、(3)についてはそれほど多くはなさそうですが。
あと「PERIL」という言葉の定義を教えてください。
【林委員】
この前「PERIL」という言葉は使わないほうがいいかなと言われたので、「リスク」ぐらいの言葉に戻しておいたほうが良いのではと思っていました。揺れを「ハザード」という言葉にして、さっきのところで使っているのですが、揺れている間にだんだんに危険として顕在化するプロセスがあるはずですので、それだけでものが決まるわけじゃないと思います。そのときに顕在化したものを何か言葉で呼びたいなというのがあります。「リスク」は、何となく全体をリスクみたいなものと考えているので、もう一つ細かい危険現象みたいな言葉を英語で何と言うのかという議論をしているときに、「PERIL」という言葉が出てきたのですが、やはりこの言葉は避けなければいけないのかなと今は思っています。例えば、「危険な現象」のような形の英語にしておいたほうがいいのかなと思いますが、あるいは「デンジャー」だけでもいいのかなというふうな議論していますが、どのような言葉にしようかというのは決まっていません。「PERIL」は何となく否定をされましたけれども、それに代わる言葉は、なかなか決まっていないというのが現状です。ただ、気持ちとしては具体的な危険は何なのかという、危険の現象を明示したい。ですから、いろいろなことで危険が、一つのハザードから議論していくとたくさん分派していくので、その議論をやると収拾がつきません。むしろ考えるべきことは、ある危険に対して、どのような対応をするのかという、顕在化した危険ということをぜひ明示しようと何かキーワード化したかったというのがポイントです。
【田中主査】
要するに具体的、個別的であり、住環境なり、空間条件で、直接私たちに危険を及ぼすようなことというのを具体的に考えていこうということですか?
【林委員】
危険でも良いとは思います。日本語としては問題ないと思いますが、適切な横文字がないものかと考えています。「PERIL」は、やっぱりちょっと考え直した方が良いかと思っています。この前まではこれで良いと思っていましたが、今ちょっと気持ちがなえつつありますけれども。
【田中主査】
先ほどの資料の説明で、1番の方では「PERIL」を生み出すような環境条件、具体的に危険な内容を示して、その定量化方法を考える。それが定量化できなくても、何か危険性の存在を示せればよいかと思います。さきほどの精度についてもそういうことですよね。それから、 阪神の地震の映像からだけでもいろいろと読み取れると思います。NHKの の映像でも、布団はかぶっていた。おなかをさらすのは怖いので、それだけでも違うと思います。
【室﨑委員】
あそこまで揺れると動けなくなります。
【林委員】
先も長くないから寝ていたというお年寄りもいました。
【田中主査】
ところで、②ではどんなことを書けばいいかがよく分からないのですが。
【福和委員】
この資料全体についてだとちょっと話が大きいですから、具体的に何を書けばよいですか。
【富田防災科学技術推進室長補佐】
(1)の②では、先ほど紹介しました論文にありましたような被害の関数や基準等をお書きいただければと思います。
これは危険なところと人が体験する困難な状況のところが②に対応する部分です。また、この危険が発効するところの関数とか、あるいは人が体験する困難な状況に陥るところの危険度を示す関数があると思いますので、何か既往の研究でのそういったものの対応がありましたらお示しいただければと思います。
【福和委員】
例えば、家具が倒れる転倒条件式のようなものを書けばよいですか。他に建物が壊れる条件など。
【室﨑委員】
あと今後の研究課題というか、作業の課題を明らかにして、これから検討しないといけないものを書けばいいわけですね。
【福和委員】
分かっている式も書くし、分かっていない定量化手法等は今後の課題である、という書き方で良いですね。
【福和委員】
周期と地震の揺れ方との間の関係が出ますので、直下で起きるような揺れと、遠いところからのゆったりした揺れの2つを記述する必要があるかもしれません。
【鈴木地震・防災研究課長】
先ほど指摘のありました「安全な場所」というもののイメージをお示しいただけないでしょうか。大きな家具に身を寄せるのが安全かどうか、何もない部屋でないと安全ではないのかなどなど、文章にすることはできますが、イメージを喚起できるような物はないでしょうか。
【林委員】
彦根城に地震のときに逃げ込む部屋があります。4畳半ぐらいの東屋で、屋根が軽くて、家具が置いてありません。囲炉裏みたいなものもあって、何かあったらそこへ逃げるようになっています。部屋の名前は忘れましたが、結局はそれが一番良くて、当時のテクノロジーとマテリアルで考えたら、一番安全であったものが、現在でも安全であったと言うことだと思います。
そうすると、命を守るためにつぶれないように、つぶれても軽く、何も物が落ちてこないような空間に逃げることが良いことになるのでしょうか。昔の庶民だと家に何もなくて良かったのですが、豊かになると物が増えて、危険が増えてきたのだと思います。それからプライバシーが問われてドアが頑丈になるとか、窓に金網が入るとか、だんだんに別の要素でイノベーション進み、それは地震対策という観点に立つとむしろネガティブというような流れのように思います。
【鈴木地震・防災研究課長】
例えば、部屋の真ん中に避難するのが良いのか、隅が良いのか。これまでは柱がに囲まれているトイレが良いと言われていました。そういったことが今後の検討の中で出てくるのではないかと思います。
【福和委員】
昔の木造家屋だったらトイレはいいですけれども、今は構造上必ずしも良いとは言えません。部屋の真ん中で上から落ちる物がなければそれで良いと思います。
【室﨑委員】
イメージを示す絵を描いて示すと本当はわかりやすいでしょう。だから、やっぱり頑丈な 机の下にもぐれというと、昔は座敷机をイメージしていたと思いますが、今は状況が変わっています。また、絶対壊れない壁のそばにいれば良いとも言われましたが、壊れない壁を判断するのもなかなか難しい。
【田中主査】
それは危険の発効と見比べながら見るとわかってくるのではないでしょうか。
多分何もない部屋というのはぜいたく過ぎますので、うちの中でどれだけリスクが減っていくかということでしか議論はできないと思います。
【田中主査】
それでは、事務局からの依頼の締切りは10月30日ということになっておりますのでよろしくお願いします。それでは、本日の検討はここまでにしたいと思います。
【 議題2 その他 】
【南山防災科学技術推進室長】
事務局の方からですが、次回の委員会は、来年の1月ごろまた省内の会議室で開催いたしますが、詳細についてはメール等にてお知らせいたします。
それでは本日の会議を終了いたします。
以上
研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室