地震防災研究を踏まえた退避行動等に関する作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成21年8月13日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省18階研究開発局第1会議室

3.議題

  1. 統合型地震応答体感環境について
  2. 阪神・淡路大震災に学ぶ地震時退避行動の可能性と限界性について
  3. 地震発生時に身を守る方法や退避行動の検討に活用できる知見について
  4. 検証の具体的進め方について
  5. その他

4.出席者

委員

田中主査、荒卷委員、国崎委員、小林委員、林委員、福和委員、室﨑委員

文部科学省

鈴木地震・防災研究課長、南山防災科学技術推進室長 他

5.議事録

 【南山防災科学技術推進室長】

 定刻となりましたので地震防災研究を踏まえた退避行動等に関する作業部会、第3回を開催させていただきたいと思っております。本日、荒卷委員につきましては、遅刻という連絡をいただいております。定足数に達してございます。会議に先立ちまして、地震防災研究課長の鈴木よりひと言申し上げたいと思います。

 

【鈴木地震・防災研究課長】

 

 - 課長挨拶 -

 

【南山防災科学技術推進室長】

 続きまして、事務局のほうからお手元の資料の確認をさせていただきたいと思います。

 議事次第の1枚目の下に委員の名簿をつけてございます。ご確認いただければと思います。

 資料3-1、前回議事録案でございます。これにつきましては、既に委員の皆様には紹介済みでございますけれども、もう一度ご確認をお願いしたいと思っております。

 それから、資料3-2でございますが、事務局が用意いたしました地震発生時に身を守る方法や退避行動検討に活用できる知見案(例)ということで、E-ディフェンスの映像からのものでございます。それから、資料3-3でございますが、検証の具体的進め方について(案)、これも事務局でございます。

 それから、その下に横型でございますけれども、参考資料3-1としまして、統合型地震応答体感環境BiCURIについてということであります。それから、参考資料3-2阪神・淡路大震災に学ぶ地震時退避行動の有効性と限界性ということで用意してございます。

 資料は、以上でございます。

 それでは、議事の進行は、田中先生、お願いいたします。

 

【 議題1 統合型地震応答体感環境について 】

 

【田中主査】

 それでは、始めさせていただきたいと思います。

 早速でございますが、議題1として、統合型地震応答体感環境BiCURIについて、これは先生からご紹介いただきたいと思います。

 

【福和委員】

 20分くらいお時間をいただきましたので、BiCURIという啓発用の統合振動体験環境について紹介したいと思います。

 我々は、ハザードマップなどの理解するための情報はよく出しているんですが、それが一般の人たちに納得してもらったりとか、我がことのように思ってもらう、そういうところがちょっと足りないような気がしています。ここで紹介するBiCURIは、納得感と我がこと感みたいなものを持ってもらうようなための道具です。

最初に、お見せするのは、地盤・建物の中での揺れの増幅です。深いところから徐々に地面に近づくにしたがって揺れが増え、さらに建物の中に入ってきて、揺れが増えていきます。

ここに実際の高層建物の揺れの例として、最近話題の長周期の揺れを観測したものを幾つかお持ちしました。これは神戸の地震のとき、大阪にあった建物の地面の揺れと建物の屋上の揺れを示したものです。これは、私どもの大学の中の建物なのですが、直下の地震のような揺れだと、黒の部分が地面の揺れで赤の部分が建物の揺れですが、短周期成分が卓越し継続時間が短く建物と地盤の揺れは余り変わりません。、こういう揺れに対して、長い間揺れる地震動に対しては建物が非常に大きく応答してしまいます。 これは、紀伊半島南東沖地震のときの大阪のあるマンションの揺れなんですけれども、こんなによく揺れてしまいました。こういった波形を見てもあまり実感がわかないので、それを実感がわくように工夫しています。

これは文部科学省の防災研究成果普及事業で作ったものですが、その後愛知県で防災学習システムとして公開しました。今、愛知県下の全世帯のの1割ぐらいで使われている。そこのシステムではどんなことをしているかと言いますと、GIS上で、自分の家を探し、クリックすると、そこでの地盤の揺れを予測してくれます。まず、クリックした場所の地下構造を推定して、その後地盤の揺れを計算します。今計算をしているところです。計算が終わると結果を画面上で、アニメーションの形で表示します。ただ、このような動画では、余り揺れの実感が無いので、右側にある応答波形をダウンロードできるようにし、その波形を体感できるシステムを作ってみました。

それから、もう少し別の形で揺れの伝わり方や建物の揺れ方を見てもらうということで、こんなシステムをつくってみました。これは震源からアスペリティが順番に壊れていって、それぞれのアスペリティからどういうふうにS波やP波が放出されて、それぞれの場所のところで、2階建てから40階建ての建物が、どういうふうに揺れるのかということを見せています。さらに、いつS波が到達するか、緊急地震速報が役に立つかどうか、そういったようなことを見てもらえるようにしました。これのシステムは、建物の応答に切り替えたりとか、波形を見たりとか、オービットを見たりとか、いろなことができるようになっています。これで揺れ方などを見てみると、これは大企業の本社は余り揺れていないけれど、グループ会社の本社がはとてもよく揺れている、あるいは、工場がある場所は揺れが大きいとか、そこに電気を補給している発電所の揺れはこうだとか、一目瞭然に、しかも建物の揺れも含めて把握できます。表現の仕方を少し工夫することでずいぶん説明力が変わってきます。。

ただ、今のものもやはりアニメーションなので、インパクトが足りません。そこで、今度はそれを実際に揺することができる道具をつってみました。実際の揺れをみてもらいます。かつて碧海郡と呼んでいた碧南と刈谷はとても良く揺れています。これに対して、台地の豊田の揺れはそれほどでもありません。この振動台は、先ほどお見せした防災学習システムで計算した結果をすぐにダウンロードして、動かすことができるので、住民が実際に体験するはずの揺れを実際に経験できることになります。ここでは、危ないので、人間は人形にしていますが、リアルな状況が再現されます。

これは、地盤の深いところから浅いところまで、どういうふうに揺れが変化してくるかということを再現したものです。柏崎刈羽原子力発電所の深さ180メートルのところから地表までの揺れを実際に振動台で再現しました。それを縦に並べてみると、見事に揺れ方の差というのが理解できます。これが話題になった1号機の大きな揺れです。次は、建物の揺れです。これもまた防災学習システムの中で、実現したものでございますけれども、建物の特徴を入れると、自動的に建物の応答解析モデルを作成します。簡単のためにちょっといい加減なモデル化はしていますけれども、先ほど計算した地盤の揺れを使って、実際にこの建物の応答計算をその場で実施するようなシステムです。簡略すぎる計算かもしれませんが、それっぽく見せることでリアリティが増します。ここには、家具が倒れる様子があります。実際に自分の部屋で家具が倒れるということがわかります。これは住民の自分の家そのものですから、自分の家が壊れるとか、家具が倒れるということを知ることになります。この後、下のボタンをクリックすると、耐震の勉強をするホームページとか、耐震診断を申し込むホームページにジャンプします。

やはり建物の実際の揺れを見てもらったほうが、体感できるということで、豊田と碧南の地盤の揺れ、それに、碧南の揺れについては、平屋の建物と2階建ての建物と5階建ての建物、10階建て、20階建て、40階建ての揺れを見てもらいます。過去の地震のときは、平屋がほとんどで、多くの人が良い地盤に住んでいましたから、1回前の地震で多くの住民が経験したのはこの揺れになります。この揺れと現代社会で経験する揺れとの差を見て下さい。文科省のこの場所も20階くらいですから、こう揺れるというイメージをつかめます。この振動台は、大きな振幅の揺れを再現できるので、ある程度の建物の揺れまでは再現できます。これで建物の揺れみたいなものをつくって、すぐ簡単に揺らすことができます。

これは先日の駿河湾地震の揺れです。榛原とか焼津とか清水について、それぞれの建物の中ではどう揺れかどうかということを示しています。例えば、この間の地震の揺れは0.5秒の揺れの成分が多かったので、0.5秒で揺れやすい建物ですと、中の人はこういう揺れを経験したことになります。これが多分建物の中でみんなが経験した揺れです。このぐらいの揺れだったら建物は壊れるはずがないということが感覚的にわかるんじゃないかなと思います。地面が、一番よく揺れたところで、このぐらいの揺れですね。この程度の揺れでは、建物は壊れないし、今のような周期であれば、建物がグワンと揺れないので、多分壊れないだろうというような感覚を持てると思います。このようなことは波形を見ていても分かりません。今のようなものをつなげることで見えてくることが沢山あります。

今度は、それを家具の固定などの室内対策につなげる必要があります。これはある住宅メーカーと一緒に実験をしたものです。突っ張り棒が余り効かない映像とか、フローリングの床ですと、低い家具は走り回るという映像とか、こういった映像をE-ディフェンスと同じように蓄積することが大事です。私どもでは、そうした映像も含めて、ホームページに掲載しています。

こんなホームページをつくっています。家具の転倒防止動画集みたいなものをつくっています。ここにあるようないろいろな家具の転倒防止の仕方に対して、さまざまな家具の実験をやっています。これは、学術的に行うというよりは、とにかく具体的な事例を整理して提供して、家具固定の対策に導こうとするものです。住民にこういう固定の仕方をすると、こういう効果があることを実際に映像で見てもらうことで理解してもらおうとしています。たとえば、大型テレビの映像を見てみましょう。震度7の揺れのときのテレビの映像が流れます。テレビは相当きっちりと固定してあるんですけれども、震度7ぐらいの揺れになると、こういう石膏ボードだとベルトが外れてしまうことが分かります。いろいろな実験の映像とそれからシミュレーション、地理情報システム、それを組み合わせるようなことをすることで、みんなが見に来て、防災対策をチェックができるようなホームページができてきます。

次に、実際に揺れを体感させる道具のBiCURIというのはどうしてつくってきたかの経緯を失明します。最初は、超高層の揺れを再現できる道具がなかったので、台車の両側で綱を引っ張って、長周期の大きな揺れを再現しました。私は右側で引っ張っているんですけれども、このように実験しました。後ろにバーチャルの映像を置いたんですけど、映像が止まっているので、リアリティが不足していました。そこで、これはまずいなと思って、これを少しリアルにしていこうというふうに考えて、何年かがかりでBiCURIをつくりました。

2軸でよく揺れる震動台をつくって、その後ろに大型のスクリーンを置いて、そのスクリーンのところにすごく小さなミニチュアの模型実験した映像をスクリーンに拡大投影して、その投影画面を振動台と連動して動かしたりしています。実際に、ノートPCがこのぐらいの大きさで、このぐらいの小さな模型で、2種類の大きさのものをつくったんですが、いろいろな部屋や、家具もリアルにつくりました。小さな震動台で普通に揺すると、あまりおもしろくなくて、全然リアリティがないんですが、これを拡大するとややリアルになります。でも動きが速すぎます。私たちは食傷模型を使って振動実験をするときに、縮尺率に応じた相似則というようなことを考えます。例えば、今の実験映像を2分の1のスピードで再現したり、4分の1のスピードで再現すると、徐々にリアルに見えるようになります。模型の縮尺率のルートでとったスピードのスローモーションにすればいいということが分かっています。今回は、20分1の模型実験をしましたから、大体、4分の1ぐらいのスピードでスローモーション再生をして、もとの大きさに戻すと、チャチな実験が結構リアリティをもって再現されます。

 あとはこれ、拡大しても耐えられるような精巧な模型をつくるということが大事です。

 これらを使いながら、さらに始めたのは、単なる写真を撮って、その写真に窓を開けて、窓の向こう側に静止画を置いて、そしてこの写真を、この部屋の予想した揺れで、写真を前後左右上下に動かすというシステム作りです。これは写真を動かすことができるソフトを作り、そこに任意の穴を開けて、裏に静止した写真をおいておくというような、そういうシステムです。そうするとこれは結構リアルに見えます。自分の部屋の写真が揺れるわけですから、我が事と感じるようになります。意外とこれでリアルで、1円もお金をかけなくてもいいバーチャル震動台ができます。これらを全部つなげてみたものが、先ほどのBiCURIという総合振動体感環境です。手前の振動台で実際の揺れを二次元で体感しながら、その後ろ側のところに、自分の部屋の縮小模型の部屋をつくり、そこで小さな実験で実験をした映像を拡大投影し、その投影した映像そのものをそこの部屋の揺れで揺するというような、そういうようなことをしています。そうすると、これはその人が本当に体験する揺れをその人の生活空間の雰囲気を経験しながら揺れるということで、ここまでくれば我がことになって、納得して、防災行動に動いてくれるんだろうということです。実際に、実験した映像なので、ちゃんと家具も倒れています。

これをもう少し進めてみたのがこのシステムです。後ろの映像だけをうまく使っています。名古屋の地図上である場所をクリックすると、そこの場所の揺れで、この地図が動き始めるというようなものです。僕は、地震動予測地図を全部これにすればいいんじゃないかなというふうに思っています。そこの場所の波形でその地図を動かすということをすれば、ハザードマップが動くハザードマップというふうに進化します。

 これは今、正面に見せているので、いまいちですけど、これを床面に投影するような、プロジェクターを使うと、これがバーチャル震動台になりますので、自分の床がこう揺れるんだというふうに思うというようなときに使えます。ホームページで誰もがやれるようにということで、今つくっている最中です。今できているプロトタイプシステムをちょっと見てみましょう。ウェブ上で動いています。実際に、ホームページに飛んでみます。これで、オンとやると、50メートルメッシュのハザードマップが見えます。拡大したり移動したりします。イーモバイルなので、とても遅いからうまくいかないかもしれませんけれども、高さが30メートルぐらいの建物で、周期が1秒ぐらいの建物がここに建っているとしたらということでやると、グーグルアースから地形を読み込んで、そこの地形が立体で見えてきた上に、実際に、30メートルの建物がスクっと立ち上がって、その立ち上がってきた建物がどう揺れるかというのが、今計算されていて、それが今、ファイルからダウンロードされるということをしています。今、通信がとても遅いので、かったるいですが・・・ 今やったものは、一面だけを動かすことをしましたけれども、下の面、床面を前面に、前の見える風景を横に側面の風景をというふうにすると、これで三次元揺れボックスというのがつくれてきます。

 これが高速のインターネットにつながっていると、とてもスムーズに動きます。これで9階の揺れと地上の揺れと両方動かすかどうか、この状態で、動けというと、そうすると下に波形が出てきているんですけれども、それで今計算されたこの場所の揺れで、むしろそこの場所の風景が見えてきているんですけれども、その揺れで、地上とそれから屋上の揺れがこんなふうに、見えてきます。これは今つくっている最中です。先ほどのハザードマップのような、絵そのものを今の揺れで動かすということもできるようにしようと思っていて、実際に、この揺れで外のハザードマップが実際にこれで揺れるということになっています。これの揺れの振幅を調整する機能もあります。それから今の映像の代わりに自分の部屋の映像を自分のPCから使うこともできます。実際の退避行動とか防災行動に結びつけるときには、こういうようなバーチャルなものと実際に自分で動かすものとを組み合わせないと駄目だということで、実際に手で動かすオモチャをいっぱい揃えながら、今のようなGISとか、あるいはシミュレーション技術とかいうものを組み合わせるということをしています。とにかく色々な啓発道具を作っています。それぞれは要素技術としては、個々にも使うことができますし、全部を結びつけると、こういった形で見せることもできます。

 例えば、E-ディフェンスの得られた観測記録をその場で再現が、これだったらできます。実験で得られた観測記録を使って揺れを再現するような仕掛けを例えばE-ディフェンスの入口のホールのところに作れば大変効果的です。プロジェクターで映して、E-ディフェンスではこう入れたんだよということをその場で、実際の映像は止まっていますから、止めたカメラからとった映像プラスそこから得られた加速度波形で動かすことで、乗れなかった人たちも乗れた気分になって帰ることができます。

 これらのシステムの構築目的は、人を防災行動に誘導するために体験してもらうことです。

 以上です。

 

【田中主査】

 ありがとうございました。

 統合型地震応答体感環境BiCURIということでございます。なかなかE-ディフェンスに乗っかっても、いろいろな制約がありますので、難しいのではないかという話がありましたけれども、そのことも含めてのアイデアだと思います。

 何かご質問とかご意見とかございますでしょうか。

 

【室崎委員】

 今のような説明をするとき、そういうツールがないときと、こういうツールを使うときとで、どの程度市民の理解度というのは向上しますか。

 

【福和委員】

 かなり理解度は進みます。

 この場所は、何で動くかという理屈を、地名がこうで、この地名はこういう経緯でつくられて、昔の地図をここに一緒に連動させて、ここはどういうふうに地形改変してきたのか。今日は、お見せしなかったんですが、そういうものも一緒にあわせてお見せすると、なるほどなというふうには思っていただけます。理屈が全部わかってくださるので、そうすると、あとは体験した人は全員耐震診断に動いてくれます。後になると駄目ですけど、その場では必ず申し込んでいただきます。自分の問題だと思ってくださいと説明します。

昔の人の家はこうで、あなたの家は今こうで、同じ場所でも平屋建てと上に住んでいるのとはこんなに違うというのを再現すると、それは本当に効果があります。

 

【田中主査】

 他はいかがですか。

 やってみたいなという気もしますし、気持ち悪いなという気もするし。それでは、また後でのことも含めて、議論にしたいと思います。多分、今のお話の中でも耐震診断は、その場で申し込むと安心感が高いですよね。福和先生のいるところで、耐震診断してくれる人は多分ちゃんとしたスタッフだろうと思います。

 

【福和委員】

 信頼関係があれば大丈夫です。

 

【 議題2 阪神・淡路大震災に学ぶ地震時退避行動の可能性と限界性について 】

 

【田中主査】

 それでは、今度は視点を変えて、室崎先生から、兵庫県南部地震のときの調査研究をもとに、退避行動をどう考えるべきかということで、地震のときの火災がご専門でもあるので、そういうことも含めてご指摘いただければと思います。

 

【室崎委員】

 宿題をやりそこなった生徒の心境なんですけれども。ご趣旨がまだよく理解できないまま、はい、いいですよ、ということで、多分趣旨は、阪神大震災のときの直後の被災者の退避行動のどういうデータがあって、それを探して、それを説明て欲しいという依頼であったと思いますが、一生懸命探したんですけど、要はあまり見つからなかった。ただ、記憶にはこういう調査があったというのが見つからないので、そういう意味で言うと、唯一、実は自分がやったデータもなくて、自分のやったデータで、1つのデータだけはあったので、そのデータをご紹介してするという形になります。今回、阪神・淡路大震災ほかずっと福井地震とか関東大震災直後の市民の行動を手記からずっとそういう話を整理するような作業をしていて、そのときに退避行動という言葉を使っていなくて、今回そこに書いた5つの行動、我が身を守る、護身、愛他、制御、情報、避難など、直後の行動はどういう行動があるのか。退避行動って何かと言うと、自分の身を守る、安全を確保するということと、安全な場所に移動ということが退避行動ですね。関連するあとの3つは、関連する行動と位置づけられるのかなと思います。

 うずくまるとか、上に布団をかぶるとか、しゃがみ込むとか、机の下にもぐるとか、まさに自分の身体を守るということだと思います。また、誰と一緒にいたかということに関係するんですけど、子供の上に覆いかぶさるというというのもすごく多いですね。子供とか奥さんの上に覆いかぶさった。他人を守ろうとする行動です。制御というのは、火を消すとか、家具、倒れてきた家具を押えようとするとか。立ち上がって押さえる。起きていた人のうち、家具を押さえる行動をした人は大体助かっているというパターンがあります。あるいは、窓とか扉を開ける。とりあえず、被害を軽減しようという行動です。

 それから、情報行動は、テレビをつけるとか、ラジオをつけるとかあるんですけど、大体助けを大声で叫ぶとか、周りの様子を見るとか。一番多いのは、周りの様子を見るということです。無事だった人は、やることは周りの様子を見るということです。そういうことすらせずに、もう要するに真っ先に飛び出す、何がなんでも飛び出す。これが高じると、飛び出して車にひかれる。大体この5つぐらいの行動で、それぞれどれが先か、こういう形で一応アンケートをつくったり、いろいろ整理してきたんですが、こういう形で、とりあえず私はこういう形で今回のテーマは直後の行動というのが行われていているので、こういう行動が適切かどうか確認したいと思います。机の下にもぐるという行動がほとんどとれてないんです。ぐっすり寝ていたというところからスタートなんですけど、大半の人は寝てたんですね。6割、7割の人は寝てた。その上に、一瞬のうちに物が倒れ込んできていますので、どう言ったらいいんですか、なかなか行動がとれないんですけど、そういう意味で、建物の状況、揺れ程度だとか、そういういろいろなことで行動のパターンは違ってくるんです。

 1番目は、人間側の条件というのは、それまでどうしていたか、阪神のときは寝ていたか起きていたか決定的に違うんですけれども、起きていても何をしていたか。これは地震じゃないんですけど、パチンコ店でパチンコの玉がどんどん出ていたら、あまり出ないでもう帰ろうとしていたということで、そのときのその行為が生死の分かれ目にもなりえます。与えられた役割というのは、年寄の介護をしていたとか、赤ちゃんのお守をしていたとか、警察官だったとか、いろいろなことです。経験などの属性は、これは教育的な知識もそうだし、いろいろな経験だとか、その人の持っているパーソナリティにもよります。線を引いているのは、阪神のときには決定的にそれでどういう行動をとったかということです。それから、環境側というのは、どういう揺れかという、揺れの大きさで、平然と動いている人と全くしていない人と、まさに揺れの程度とそれから建物、これは阪神の場合は、木造平屋と高層ビル、先ほどの福和先生のお話ですと、上のほうの揺れ方がすごいので、どの階のどこにいたかということです。ここはとるべき行動といっても、置かれている状況によって違いがあって、これは私の言い方にすると臨機応変というか、もぐっていい場合ともぐって悪い場合があるんですね。例えば、震度6程度の地震だったら、机の下にもぐっていけないケースがあって、座敷机みたいに頑丈な机だったらもぐっていいけど、台所の机みたいなものは、震度7のときはもぐってはいけないとか、あるいはその場合、またもう1つ条件がついていて、こんないっぱい条件ついたのを人に要求できるのかなと思うんですけれども、耐震補強をした建物かどうかによっても全然違ってくると。要は、その組合せで、1971年より前で、耐震補強してない建物で、ぼろぼろの机しかなくて、こういう場合は、もぐってはいけませんなんていうことは、こういうことは表現しきれないので、ここはどこかで標準化しないといけないんですが、実は、そういう状況によって行動が違ってくる。建物が安全かどうかで、全然行動が違ってくる。規範行動みたいなもの整理しないといけないのかなと思います。ここまでが、単に僕がちょっと思っていたんです。

 ここからが宿題です。

 一生懸命調べたんですけど、福井地震でも、結局手記が無数に出ていて、子供たち、小学校の記録とかあるので、それをすべて綿密に見れば、直後にどうしたか、どう感じたか、どう動いたかというのは、詳細に分析できると思うんですけれども、今回は、被災した私たちの記録というのは一冊しかなかったということと、それから負傷した調査、私はそのとき火災学会の調査団として動いたので、幾つか行動調査をして、1つは、けがをした人たちだけを調べて、どこでどうしてけがをしたか。あとここに書いてないんですけれども、大半の情報は、ここに書いてない、私が300名ほど遺族の方に、ヒアリングをして、どうしてご主人が亡くなったんですかという、そういうヒアリングの中で出てきた話をずっとまとめると、まず今まで従来こうしなければいけないといった行動の中で、必ずしもそのとおりやったのに、命の落としたというのが、そこの1、2、3の3つなんですね。机の下にもぐったというのは、さっきも言ったように、これは淡路島のお医者さんの記録に随分出てくるんですけど、台所の机の下にもぐったんですけれども、机が上からの梁で真っ二つになって、その下にもぐっていた人が死んだと。あるいは、机の下にもぐったんだけれども、これはちょっと勉強不足ですけど、机の脚をもたなかったので、気がついたら、上から物が落ちてきたと。そういうことがあるということだけで、少数事例です。本当は机の下にもぐって助かった人の事例というのは出てないので、いけないことだけ言うのは確率的に言うと、100件あって、98が助かって、2人ぐらいが多分なくなっていた話なので、机の下にいたからもぐっていてはいけないという意味ではないです。

 2番目、火を消す。これは私が聞いたのは1例だけです。これも火を消しに帰るためにご夫婦が2階で寝ていて、奥さんがあの揺れの中、どうして降りたのかよくわかりませんけれども、結論は、下階の台所の前で亡くなっていたと。ご主人は、きっとこれは普段からそういうことを言っていたので、火を消しに行ったんだろうというようなことです。だから、グラッときたら火を消せと言われていたために、これも少数事例というか、本当は火を消す余裕はなかったんじゃないかと思います。従来からあるのは、だるまストーブを消しに行って、やけどしたというのがすごくあるので、グラッと来たら、すぐ火を消せというのは、本当にいいのかどうか。今度は、割合極端に反対側に振れてまして、火を消さないでいいんだという情報があっちこっちで流れ出しているんですけれども、ろうそくの火は消すとか、そこで火を使ったら、消したらいいんじゃないかと思うので、これも火を消せというのは、消すなというので正しいのかどうかもよくわからない。

 3番目、これはみんなそうだったんですけど、神戸の人は意識が低かった、とまた神戸の人に怒られるんですけど、どの程度かよくわからないんですけど、でも家の中にいた人の中には、すぐ飛び出してはいけないと言われてたと答える人がいるんです。揺れがおさまってから逃げろとか。ブロック塀とガラスが降ってくるぞと言われているので、家の中で寝ていたら上から壊れてきて、あとのアンケートでもじっとしていたという人が結構いるんです。じっとしていたって、何もできなかったということもあるけれども、家の中にいろという、揺れがおさまるまで家の中にいろと言われて、家の中にいたら、家が壊れて生き埋めになったということがありました。大体そういうようなことは、事例としては、これは、データがないんですけど、全部少数事例ですので、これを適宜判断することはできないので、少し見直したらどうかという根拠になっている事実としてはそういうことです。

 ただ、ここにもう1つ書いている、適応行動、こうして助かったという話、これも全部、きょうの話はかなりこの辺全部風聞なので申しわけないんですけれども、助かった人の話、たくさんあるんですね。どうして助かったかというと、ベッドに寝ていて、ベッドから下に落ちたと。落ちたために助かったって、これはたくさんあります。それから、長持ち箪笥の横に寝ていて助かった。要は、低い家具の横。淡路島には3人ぐらいいますね。長持ち箪笥、まだそんなものあるのかと思いますけれども、長持ち箪笥の横に寝ていたので助かった。ベッドから落ちて助かった。それから、家具と家具がゴッツンコして、三角形をつくってくれたので、その隙間で助かったっていう人もいました。あと多いのは、立ち上がって、倒れてくる家具にあたり、これでけがした人もいるんですけど、家具が倒れてくるのを押さえようとして頑張ったために、迅速に行動がとれて助かったと。助かった人の記録をとらないといけないんですけど、ただ、そういうデータがあったはずなのにと思って探すんですけど、一般に学会等で刊行されている本にはないですね。結局、助かった人の手記とか談話とか、そういうものでしか拾えないんですけど、何か失敗した例と成功した事例があって、ここでちょっと、今日の課題としては、こういう失敗例があるということです。

 ここからが、具体的なデータで、けがをしたというふうに、これは病院に入った人もいるし、負傷の程度も聞かないといけながんたんですが、けがをした人が、いつけがをしたかということです。揺れている最中にけがをしたというのは、これはもうほとんど上から物が落ちてきて、下敷きになったという人です。あと揺れがおさまってから、あとの行動、これはもう大体慌てて動いて、ガラスで足を切ったとか、そういうことです。けがをしたときは、そこに書いてあるとおりですね。つまり逃げようとしたときに18%、家具が倒れてくるのを何とかしようとしてけがをしたが4%。火の始末は2%です。原因は、取り立てて言うことじゃないですけど、建物の下敷きと家具の下敷きは直後の対応行動とは全く無関係ですね。鋭利物の接触、ガラスで足を切ったという程度ですけど、要するにむやみやたらに、後片付けをしたりして、けがをしている人は多いですね。こういう統計からは机の下にもぐったというデータは全く出てこなかったということです。

 もう1つ、別に、直後にどういう行動をしたか、いろいろな行動のうち直後の行動だけ、1万世帯に配布して、4,000世帯から回収できた。これは火事が起きた地域、全部丸焼けになった地域ではなくて、1つの町内会で2件燃えたというようなところに調査して、どこまで火事が影響しているか、よくわからないんですけれども、まず、地震後どうだったから、阪神の特殊性だと思うんですけど、1つは、夜で停電が起きて、真っ暗だった。電気がついてなかったが83%、大きな家具が転倒したというのが76%です。この辺は、さっきのとは状況が違うと思います。誰も家具の転倒防止なんかしてないので、もう8割の家が、箪笥とかが壊れた。ガラスが床に飛散した家が7割近く、それから、扉が開かないが、5割程度です。だから、全くこういう意味で言うと、適切な行動をとれないという状況といえます。それから、この大きな家具の転倒は平均76ですけど、低層部ですと60%ぐらいで、高層群になると85%ぐらいになります。そういう中で、救出されて助かった人たちが2割弱、何とか自分で出た人が45%で、45%のうちの3分の1ぐらいは、窓を破って出るしかなかったと。そういう非常に極めて厳しい状況があって、これからのことを考えるときに、これはもう対策をしていない、最悪の状態なので、そうするとそのときに適切な行動をとれなんていうことはまずほとんどあり得ない。むしろこの行動関係そのものをもっと自由度を高めるというか、いろいろな行動をとれるようにしておかないと思います。さきほど言いました、突然に家が倒れるだけでは、何の推奨行動をしても無意味なので、そこを変えないと話が進まないと思います。それから、動けなかった人は2割です。他方で言うと、動けないか動けるかなんですね。動ける人はどうしたかと言うと、外の様子を見たとか、身支度をしたとか、外に出ようとした人が1割未満です。机の下にもぐったとか、火を消しに行ったというのは極めて少数で1割に満たない。だからもう全く動けなかったか、身支度をしたりとか、要するに被害の程度で、こういう行動が決まってくる。被害が軽微な人は、身支度したり、逃げようとする。大体そういう行動です。

 以上です。

 

【田中主査】

 ありがとうございました。

 なかなか亡くなった方そのものに、直接お話を伺えないというのは最大のネックですね。どういうふうにして、というのはやったんですけど、やはり状況が状況なので、そんなにうまくいかず難しかった。出火というよりも全般での議論をしていただいて、何かご質問なり、コメントなり、皆さんからだしてもらいました。ああいう調査で難しいのは、揺れている最中と直後と、区別が言葉上、問いかけは別でも、答えるほうもなかなか難しい。

 

【室崎委員】

 そうですね。揺れている最中に何をしましたか。揺れた後すぐに何をしましたかと聞かれていますよね。

 

【田中主査】

 揺れが低いほど、きちんと明確に分けてくるんですけど、多分阪神のときはもう何もできなかった状態に等しかったと思います。ある程度、時間軸もこの委員会でどう議論するのか。最初の大体は、林先生や室崎先生のほうから、やや家具の固定、あるいは消火まで含めて、一連のスクリプトの中で、きちんと描いてという議論があったと思うですけれども、その辺の時間の議論はどこかでやったらということだと思います。何かございますでしょうか。

 

【福和委員】

 神戸の地震、よく揺れたところですと、事前の備えをしてくださいということしかないような気がします。一方で、最近、緊急地震速報というのが出てきて、ちゃんと個人契約していると、何秒後にこのぐらいの揺れって、教えてくれます。これは、重要な退避行動の目安になるような気もします。たまたまおとつい、我が家で緊急地震速報がなって、あと何秒後に震度幾つの揺れって、大きな声でアナウンスされました。それなのに、子供たちは誰も動かないんです。何やって居るんだって怒ったら、震度3と聞いた瞬間に、もう大丈夫と思って寝続けていたと反論されてしまいました。例えば、それは震度5といったら、動いたかと子供たちに聞いたんですけど、はいと言われてしまいました。今の時代は、居る場所とか揺れの強さとか猶予時間が分かれば、もう少し、退避行動について色々なメニューがつくれるかもしれないと感じます。緊急地震速報を契約した人を前提にして考えるのか、何も情報がない人を考えるか。緊急地震速報のPの段階、Sの段階、非常に近い場合、遠い場合などなど色々考えることがありそうです。

 

【室崎委員】

 緊急地震速報による行動はすごく意味がある行動と言えるわけだし、どうするかというんだけれども。それからもう1つはやはり家具の転倒防止とか、何もしてなかったら、もうどうにもならないので、事前にいかにして家具の転倒防止だとか、耐震補強をしておけば、そうすると行動の余地が出てきて、そこでいろいろな、机の下にもぐったりする行動の意味がでてくる。そういう事前の何かそういう予防行為みたいなものと重ねづけて、こういう退避行動の推奨をするということが大事だと思います。先ほど言ったように、机の下にもぐれとか、もぐらないでいいのかがややっこしくて、それが全部耐震補強していたら、そんなことを考える必要はないわけですよね。あとは上からガラスが落ちて来たり、鍋が落ちくるのを避けるために机の下にいるという話で、その辺の周辺状況の整理が必要だと思います。

 

【荒卷委員】

 今の室崎先生の視点というのは、まさしくそのとおりだと思っています。

 今回の静岡地震で、まさしく事前の備えが機能したということが言われていますし、その一方で、今回、不適切な行動ということで、阪神・淡路大震災のケースで、家の中にいるという部分が出たんですが、それはそのとおりだと思います。今回、横浜市内で3人の方がけがをしたんですね。そのうちの1人が、磯子区内でございまして、その方は、地震で慌てて、外に出ようとしたと。それで廊下で滑って腰椎骨折になっちゃちった。この方は、70代のお年寄りの方なんです。ですから、外に出なさいというのは非常に逆にいろいろな問題が。

 

【室崎委員】

 外に出ろということを言っているのではなくて、いろいろな事例があることを紹介させていただきました。

 

【荒卷委員】

 そうですね。そういった部分で、仮に言うとなれば、非常に難しい部分があるということもあります。それと実は、横浜市内で震度3の地震があると、必ず地震直後に電話アンケートをとるんです。これは横浜市内に18区あるんですけど、18区全体の中で、住宅関係を300対象、それから事業所関係を250対象に電話をすぐかけまして、連絡がつかないところが結構あるんですね。今回も結構つかなかったんですけれども、住宅関係が266、それから事業所関係が137、ついた中で、一番先に何をしましたかという質問をしています。その中で、何もできなかったというのが住宅関係では21件、それから外へ逃げた、時間が時間ですから逃げてない。横浜市内は震度も4でした。様子を見たというのが99でした。それから、身の安全を図ったというのが68、それから、今いるところが安全だと思ったというのが62、気づかなかったというのが11、という状況なんです。ですから、住宅全体の中で3割ぐらいの方は何もできなかったという、様子を見たという状況なんですね。それから、一方で、事業所関係では、地震直後に何かしらの指示をやったかと。あの時間であっても、私のところはコンビナート地域を抱えているものですから、24時間体制をとっている事業所が結構多いですね。その中で確認をとりますと、やはり何もしなかったというのが27あったんです。これは横浜市内です。事業所が137、連絡がとれていますので、その中が27が何もしなかった。それから、火を使っているところもありますので、火の始末をしたというのが10件です。責任者の指示で行動したというのが47件です。そういうデータが、細かいところなんですけど出ておりまして、恐らく各消防本部なり、あるいは防災関係機関は、こういったデータをとっていると思いますので、大きな災害があったところの生かせるデータは、室崎先生がやっていただいたような部分と同様にリンクさせながら生かすべきじゃないかなと思いました。

 以上です。

 

【田中主査】

 揺れによって変ってしまうものですね。

今回、非常に揺れが15秒継続してなかった。卓越周期が0.5秒以下のものがほとんどでしたから、家が壊れるわけがない。それが割とすぐ終わっていますので、あまり敏感に反応してないということがあって、もうちょっと長く続くといろんなことが発生する。なかなか難しい。こういう蓄積がありますので、震度3、4、5、あるいはいろいろなものがあると思います。

 ほかはいかがですか。何かありますか。

 

【 議題3 地震発生時に身を守る方法や退避行動の検討に活用できる知見について 】

 

【田中主査】

 もう後のほうの話に入ってきていますので、また直接のご質問も含めていきたいと思いますけれども、次第の3のほうで、地震発生時に身を守る方法や退避行動の検討に活用できる知見についてということで、前回に議論いただいたものを再整理する形なんですけれども、ちょっと思ったのは、先ほどから人間側だけで決まらなくて、いろいろな環境、周辺状況によって、推奨行動が変わってしまう。あるいは、変わってしまうというのか、あるいは推奨行動をとるためにこういう環境状況を整えてくれというべきなのかもしれないけれども、そういうことも含めて考えると、全体のマップの中で、こういう場面での推奨行動を議論しているというマップをつくることがとても大事だと思います。それと同時に、防災の委員会ですから、やれることからやる。全体が見えないでも、言えることから言うというのも1つの選択だという気がしました。そういう中で、E-ディフェンス、あるいは先ほど横浜の事例、あるいは室崎先生、あるいは福和先生から得られたデータから言えることをこれについてはこうだということを言えることから始めてもよいのかなという気がします。

 では、資料の説明を事務局のほうでご説明お願いします。

 

【富田防災科学技術推進室室長補佐】

 それでは、資料3-2でご説明させていただきます。

 その次の資料3-3のほうでも書いているんですが、今後、事務局のほうでは、まず従来言われております推奨行動につきまして、各家とか学校とか、そういった場合について、本当にそれが正しいのかというのをまずどういったことが言われていて、どういった事実関係があって、したがって、それはこの場合では、こういうふうに適当であるとか、そうではないというふうに今後考えていく予定でございます。

 その中で、推奨行動の適否を考えていく上でのファクトシートといいますか、エビデンス、科学的根拠、あるいは事例とかにつきまして収集していく予定ですが、そのうちの1つとなり得るものの知見案として、これは挙げさせていただいております。

 表題の下に、「E-ディフェンスの映像より」と書いてございますが、前々回、当部会でE-ディフェンスの画像を見ていただいたと思いますが、その画像を我々が見て、一体どういうことが言えるのかというのをまとめたものが、このペーパーでございます。

 ちょっとご説明させていただきますと、すべての建物に共通といたしまして、先ほど福和先生とか室崎先生からございましたように、高層階ほど揺れが大きくなるだろうと。高層階ほど家具や書棚の転倒が顕著である。家具や書棚の扉が開いて、内容物が飛散する。これも高層階ほど高いということでございます。

 木造の場合も、見ていただいた実験例のように、木造家屋では激しい地震動の瞬時の避難は困難。木造家屋では、1階はつぶれやすい。1階より2階のほうが家具が転倒しやすい。耐震化した建物のほうが、家具が転倒しやすい。土壁を用いた建物では、土壁が崩落して視界不良となったり、人体に損傷を与える可能性がある。

 鉄骨造や鉄筋コンクリート造につきましては、コピー機の移動の画像を見ていただいたとおり、これは恐らく長周期とか上層階の話だと思うんですが、キャスター付の機器が激しく動き回る。機器が互いに衝突したり、壁に衝突したりして損傷を与える。教室では、机や椅子が激しく動き、吹っ飛ぶ場合もある。教室に吊るしているテレビの落下、ピアノ等の激突。医療機関ではCTスキャン等大型機器も動く。長周期地震動の場合、ドアが開かなくなる。長周期地震動の場合、廊下等が安全。

 そして、人形実験、最後人形実験が放映されましたけれども、そのときの実験のデータといたしましては、人間の首にかかるのは最大0.2kN、これは55km/hの自動車が衝突する実験で、頸椎損傷の目安となる4kNの1/20、人間の頭が受けた加速度は0.2G。これは脳震盪を起こす約1/40であるということが実験からわかっています。

 今、こういった知見、これはすべてではないんですが、映像から読み取るのでも、これほどのことが大体わかってくるであろうと。もう少し詳細にどれほどの家具がどれぐらいの距離を動くかとか、あとダミーの動きからどれぐらい動けるかというのもしっかり読み取ることによって、もう少しこの知見が増えていくと。ある意味、このペーパーを今後増やしていくというふうにして、ファクトシートを固めていき、また増やしていくというふうな予定でいるところでございます。

 以上です。

 

【田中主査】

 この件については、何かご質問なり。

 

【福和委員】

ファクトと言われちゃったので、そうじゃない場合もあるかなと思いますので少しだけいいですか。

 まず、上から2番目の転倒に加えて、家具の移動について。それから、木造の場合の4番目ですが、耐震化した建物のほうが家具が転倒しやすいというのは、これは本当かどうかがちょっと疑わしい気がします。それから、鉄骨造の下の2つですが、これは長周期地震動の場合ということをつけるかどうかというのは議論の余地があります。ドアが開かなくなるというのは、結局、そこに層間変形角がどれだけになるかで、長周期かどうかにはよらないと思います。 廊下が安全ということは、多分廊下に何もなければ安全ということで、長周期じゃなくても安全です。それから、一番下の、人形の頭が受けた加速度は0.2Gというのは、長周期のときの実験結果だからです。基本的に建物の応答というのは、速度が保存されるんです。速度が保存されるので、長周期のときは、周期が長いから、加速度は小さくなって、長周期の実験結果だから、200ガルに収まっているけれども、もしもこれが短周期の場合だと、何千ガルという数字になります。もう一つ問題なのは、人形実験は、人形そのものがちゃんと行動しなくて立っているだけだから、実際の人間は制震構造というか、自分で踏ん張ったりして剛性を変えたりとか、免震させたりするので、床が2Gであったとしても、ひょっとしたら頭は2Gにならないかもしれない。その辺は研究テーマかもしれないなと思いました。

 以上です。

 

【田中主査】

 高層階ほど揺れが大きくなると言っちゃっていいんですか。

 

【福和委員】

 これは、揺れの振幅ですよね。だから、変位振幅というか、揺れというのはたくさんあるから。揺れの強さは加速度、速度、変位で異なります。

 

【国崎委員】

 2つ質問があります。

 すべての建物に共通というところで、高層階とありますが、一般的に示す高層階というものは何階以上の建物であるのでしょうか。そして、建物全体の高さが階層別の揺れの被害に影響するのでしょうか。つまり、同じ10階でも建物が20階中の10階と10階中の10階で同じ揺れ・被害であるのかということをお聞きしたいと思います。それが1つめの質問です。

 2つ目は、「ドアが開かなくなる」の部分について、これは玄関ドアを示しているのでしょうか。それとも室内のドアを示しているのでしょうか。室内には、押し引きタイプもあれば、折れ戸や引き戸もあるわけで、どのようなタイプについての結果であるのかを詳しく明記されると良いと思いました。

 以上です。

 

【田中主査】 

 それはわかる範囲でというか、特定するのは難しそうな気がしたけれども。多分、そのドアは、玄関ドアのことです。

 

【富田防災科学技術推進室室長補佐】

 玄関のドアと部屋も画像にありましたように、例えば、どこかの実験だったと思うんですけれども、3階建てくらいのやつでも、長周期でドアが開かなくなった、部屋のドアが開かなくなった事例がありましたので、両方だと思うんですが、部屋を開けておく必要もありますし、玄関もその通りだと思います。室内ですと折れ戸か引き戸とか、オフィス内のそこにあるようなドアというイメージですね。

 

【林委員】

 4つありますが、数字が入って、ある程度量的な判断をしようとしているのが4番目だけですね。逆に言うと1番から3番というのは極めて定性的なことで、しかもこれは自然現象ですよね。こんなもの実はE-ディフェンスの映像を見なくたって、多分福和先生にちゃんと真面目にいってよと言ったら、全部、数式を書いてくれるはずなんですよ。それを知見っていうかというか、ちょっとそれは子供だましというか、本末転倒しているんじゃないかなと思います。もともと物理現象なんだから、そういう物理現象がどこまでどうなるとか、そういうのがビジュアルにどう見えるか。あくまでもE-ディフェンスの映像というのは、デモンストレーションであったり、ビジュアライゼーションなんじゃないかなと。ここで書かれているのは、世の中全く知らなかったことがビジュアルを通して、これだけわかりましたって、こんなもの、お前、いい加減なことを言うなっていう世界に多分なっちゃうと思う。しかも人形実験って、これは基本的には、交通事故のあのポショーンというのと同じようなイメージなんですけれども、だから何なんだって。やっぱり人間の持っているジョイントのシステムとか、自分を制御する力を考えたら、これだけの数字が何かを決定的に決めるということにはならないんじゃないかなと思います。だから、ある意味ではちょうどこの委員会全体の半分ぐらいのところに来ていて、何を目指すかということもある意味では考え直してもいいのかもしれないけれども、あまりにもE-ディフェンスにこだわりすぎていることは、何かこう、角を止めて牛を殺しかねないような、この上からずっと並べているものが知見だと言われてしまったときに、2つの意味で失礼だと思う。

 1つは、今までちゃんと物理的なそれぞれニュートン力学の下で研究してきた人たちの成果は、全く無視されている。それから、任意ということで、人間の退避行動みたいなことの側の知見にこれをされてしまうこと自体もある意味では、ある種の無関係さを持っていて、これでやったんだと言われて、アリバイに使われてしまっても、あまり貢献はしないという気はするんですよ。だから、E-ディフェンスというのは、ある種のビジュアライゼーション装置として、ここの場合の中で位置づけて、議論していく必要というのがあるんじゃないかなという気がすごくします。

 

【鈴木地震・防災研究課長】

 ここでお出しした資料は、いろいろ場合分けを行い委員の先生方からご意見をいただいて、推奨行動と言われるものについてまとめてみたものです。これは今の段階で妥当性について判断するには難しいですが、先ほどご紹介いただいたような事実を積み上げて整理した上で、検証し、適切だとか不適切だと言わなければなりません。そのためにお考えていただくときの参考となる資料にはなり得るものと考えております。

 例えば、学校などではどのような行動をとればよいのか。それをうまく伝えるにはどうすればよいのか。それをお考えいただいて、点検もしくは判断をしていただく材料には少なくともなるだろうと思いますので、今後も我々のほうで、収集・整理して、委員の先生方に情報の提示をさせていただこうと思います。

 

【林委員】

 無礼というよりは、全体に対して、こんなにある種の時間をさかのぼったような形で出す必要はないと思う。もっと最新知見的に考えてもいいはずです。

 

【南山防災科学技術推進室長】

 そういう意味でも、改めて資料として提出させていただいたのは、まず、映像で見たものが一般の人も含めて、我々も含めて知ったことの再確認のためです。どのような分析できるのか、という今後の詳細な場合分けに生かされるんじゃないかなと考え、改めて資料を準備しました。

 

【荒卷委員】

 ちょっとよろしいでしょうか。

 今の関連なんですけれども、確かにこの資料3-2というのは、E-ディフェンスの映像からでの事実だとは思うんですけれども、今現在のこの表記の仕方というのは、非常に誤解を受けやすい表記になっているんじゃないかと思います。これそのものは公開になりますよね。そのときに、建物の共通事項の一番上の2つ目の事項なんですけれども、高層階ほど家具や書棚の転倒等が顕著って、これは固定化されてないということが入っていれば、言葉は通じるかもしれないんですけれども、このままだと高層階だと何をやっても駄目だというふうにとられてしまうんじゃないかなという懸念があります。ですから、そういうことが、つぶさに見ていくと、いろいろなところにちょっと出てくるように感じます。

 これがちょっとこのままだと、資料として無理があると思います。本当に公開していったときには、逆に大きな問題が出ちゃうんじゃないかと思います。

 

【林委員】

 そんなに後ろ向きの意見を言うつもりはありません。

 だから、そんなに成果を焦らずに進めていただきたい。こういうこともわかるけど、やっぱりE-ディフェンスはビジュアルだと思えというだけのことがポイントです。言いたいこともありますが、資料についての議論から論点がそれていしまいますので、あとの機会で話をしたいと思います。

 

【田中主査】

 ポジティブな内容があるんだろうと期待しています。お願いします。

 

【林委員】

 3つ言いたいことがあって、そっち論点を移して、これを離れたいと言っただけのことです。

まず、1つ目ですが、人間の行動に僕は正解というのはないと思っているんですよ。

基本的に自分が選択したものは受け入れるというのが人間なので、むしろ大事なのは、自分が選んだということをどう認識して強くさせるかというところにかかっています。それで、たとえそれが間違っていたとしても、客観的な状況、僕らの研究分野の中では、イリュージョン・オブ・コントールと言っていますが、コントロールをしているという幻想感が非常に重要なんです。何もできないでバタバタするよりは、少しでも何か自分がやっているというふうにできるほうが私たちとしてはハッピーなこともある。

 そのことを考えていただくと、正解というふうなものを設定して、それを何パーセント誰もができるのというふうな問題の設定の仕方をしても答えは出てこない。なぜかと言えば、間違っていたって、イリュージョン・オブ・コントロールさえあれば、それは何で生まれるかと言ったら、自分でそれを選択したという認識から生まれるわけですから、選択をさせるということが多分重要だと思います。ということは、選択させるためには、オプションを提示する必要がある。

 2つ目の話ですが、ここで、緊急地震速報の話が出たんですけれども、緊急地震速報というのは、これからうまく使っていけたらいいなと思うんですね。そのときに、考えていただきたいのは、全体として僕らは何をしたいかと言うと、安全な行動をとってくださいよというふうに人々をある意味では説得したいということです。警告したい。だから、ウォーニングということです。警報の一種として考えたほうがいい。警報というのが成立するためには、実は2つの要素が必要で、1つはアラートということです。今が危ないですよということ。ここが行動のしどころですよというふうに、そのタイミングを言う部分。それから、それを事前に、ノーティフィケーションというふうに言っていますけれども、何がどう危ないんだということを知っておいてもらうこと。だから、ノーティフィケーションがあって、アラートがそこで加わると、初めてウォーニングになるという方程式が実は存在しています。今まで、地震というのは、必ず不意打ちだということになっていたから、アラートがないという前提で話をしていたけれども、だけど、中規模の地震でアラートがきくということになったとしたら、やっぱり何をどうノーティフィケーションしておくかというところが決定因になっているわけです。

 今までは、いろいろな心得えとか、いろいろあったことというのは、全部アラートができないという前提の下で、それらしいことをノーティフィケーションしておこうという発想の下につくられている情報です。時と場合によって人はどこにいるかわかりませんから、それっぽいことを言おうとしていると。蓋然性で議論している。

 だけど、さっきの自己選択には文句を言わないという部分があるから、それでいいと。机の下に入っちゃって死んじゃったやつって言うけど、ハッピーで死んでいるかもしれない。もともと梁が落ちて死んでいるわけだから。こんな机が梁に耐えられるわけがないので、そのときにそれは行動としておかしいというよりは、ハッピーだったんではないかなということを考える。むしろ梁が折れるような脆弱なものであるということをちゃんとノーティフィケーションしておかなければいけないということ。何をどうノーティフィケーションして、アラートを使うかというふうに考えてもらうことが多分重要だと思います。

 3つ目のポイントは、いろいろなもので調べてみて、地震のときの地震発生時のときの心得10カ条というのは、それこそほぼ既定の事実のように、どの自治体も推奨しているんですよ。僕は、富田さんから事前に送っていただいた資料の中で、これは先回りの話になるかもしれないけれども、こういうのを拝見していたら、横にピピピと、今後続くよというふうにして、アイテムが書いてありましたので、だけど、むしろこの委員会ができることから言えば、この横に今ある10カ条を1つ1つ検証していってもいいのかもしれない。だから、今、どうしてもハザード側から話が始まるとね、対応がチョロチョロと書いてあるんだけれども、そうじゃなくて、こういうふうに図をひっくり返してもらって、あるいはこうでもいいですけどね、さあ、心得1、グラッと来たら、我が身と家族の身の安全を守る、と書いてあるんです。そういうものをどういうふうに考えていったらいいんでしょうか。何は使えて、何は危ないんでしょうかみたいな検証をしたほうが少なくとも10個、達成目標はクリアになるし、屋外、屋内に分けてあったりするんで、結構な英知なんだと思うんです。だから、それはそれである意味では、これの定性的ステートメントと同じ程度に定性的にステートメントとしての10カ条があるなら、こっちから引っ張っていく心得10カ条を検証していく中に、こういうビジュアライゼーションを含めて、どういうふうにしたらノーティフィケーションできるんだというところに落としていったほうが、うまくいくんじゃないかなというのが思っていることなんです。

 

【田中主査】

 3つほどお話いただきました。

 その辺も含めて、ほかの先生方、やはり林先生おっしゃっていたけれども、あと2回ぐらいで何となく少し正解イメージとそれから正解イメージの中の1つとして、長期的な研究課題とそれからこの委員会でとりあえず言えること、少し分けての議論が必要な気もするんですね。

 その中のお話だと思うんですけれども、いかがでございますか。

 

【国崎委員】

 福和先生のホームページを拝見して、その中で家具の転倒実験は非常にわかりやすい情報であると感じております。

 室内では揺れによって物がどう動くのかがよくわかり、自分の家と照らし合わせて家具は一体どうなのか、テレビなどの家電製品がどうなるのか、イメージすることができます。1つ1つの危険性がクリアになれば、自宅の危険性を認識し、対策の優先順位や危険回避行動への実践的な対策につながっていくと思います。

 講演の中で、市民の方々に、昔は常識と言われていた行動が、現代の行動に合わないことがある、と伝えています。それは例えば、インフラが整備されて、ガスのマイコンメーターが、地震時に自動的に遮断されるため、あわてて火を消しに行かずにまずは身の安全を優先するということです。この検討会で発信される内容が何十年か後にもうあれは古いよねって言われることのないように、将来の社会的な背景を鑑みながら、国民の生命を守るための退避行動、安全行動を検討する必要性を感じています。その意味でも、個人がそれぞれの状況によってその場にある危険を回避して身を守る行動を自分で見つけていけるような、有益な情報をいかに提供できるかが重要であると思います。

 

【田中主査】

 ほかにいかがでございますか。

 

【小林委員】

 私は、学校という立場で、やはりどう子供たちに危険を予測させる学習をしていくかという視点で、やはりさまざまな事実とか、今までの情報を出していただいたようなものは伝えていきたい。それが子供だけではなく、教える側の教師自身にもまだまだ十分とは言えない状況があるなと考えています。それから、子供たちを視点に置くと、学校にいる場合は、多くは集団として教師が導いて、避難させるということがあるんですけれども、それだけでなくて、もちろん家庭やそれから子供自身、個人として行動している場面も多いので、最終的には一人一人がそこでどう判断して、行動していくかということが、大変大切だろうと思っています。また、学校という視点では、学校の施設でもう従来のような、箱型の学校からオープンスペースのような1つの部屋に、机と椅子があって、壁があってという形ではなくて、廊下がはっきりしない、または多くの場所にさまざまなものが置かれていてというような、本当に昔と比べると、変わってきているという環境もありますので、そのあたりを整理しなければいけないと思っています。それから、防災に熱心な市民ばかりならともかく、私のような少し勉強しかけている者であっても、なかなか我が家の耐震診断はしておりません。我がことと思っていない、また我がことと思っていても、具体的な行動ができない人たちに対して、イエス・ノーではなく、我が家は安全ですか、耐震診断はしていますか、などのメニューのようなものを提示できないでしょうか。建物によっても違うんですけれども、あなたの家は何年に建築されたものなのか、鉄筋なのか何なのか、家具の固定はできているのか、緊急地震速報が設置されているか、本当にそういうようなことをもう一回一人一人が自分の防災という視点で見直すような資料というか情報提供ができて、もう一回振り返れるような何かあったらいいのかなと、自分の生活を振り返りながら思います。専門家の方たちはたくさん立派な研究がなされているんですけれども、いざ一人一人の生活をと思うと、地域の防災訓練に出ることすら、すべての人が出ていないという実態がありますので、そういった部分も少し感じております。

 

【室﨑委員】

 林先生の言われたノーティフィケーションというのはすごく大切だと思います。そうすると、推奨行動の話は、それだけ単独で議論するんではなくて、1つはやはり危機察知能力とか、適切な選択をする力をどうつけるかという内容に帰着します。もう1つは、やはり事前に備えて、まわりの環境を安全にするという、3つのことを同時にやっていかないと、推奨行動だけやっても効果は薄いと思います。

 

【田中主査】

 あと1つは、E-ディフェンスとほかのものとの関係ですね。先ほど横浜のお話も少しやっていただし、いろいろなケースがあると思います。そういう面で見てみると、少しデータの幅を広げながらということと、同時に、来年度以降、どんな研究をしていくのかということで、もっと定量的にしていく必要があると思います。例えば、ドアが開かなくなるって、よくわからないんです。気象庁のデータを相当調べて、事例はあるのですが、よくわからない。記述がわからない。バランスの善し悪しがよくわからない。定量的に詰めていけるものがあると思いますけれども、ただそれは環境条件の方というのはおっしゃるとおりだと思います。そういう面では、今までのお話を全部伺っていると、やはり各自に考えてもらうデータをきちんと示していくと。人間側だけでの条件で決まりませんので、それもできるだけオプションを見つけていく。そうすると、横っておっしゃっていたけれども、多分、推奨行動というのがあって、推奨行動というものにこういう成功例だったり、失敗だったり、こんな条件がないととれない。ただ、それをやっていてもうまくいかない部分はでてきます。特に、人間の問題はなかなか難しいところもありますけれども、そこはまた少しロングレンジで見たほうがいいかもしれません。

 

【福和委員】

 さっきの国崎さんの答えだけしておこうかなと思っています。

 国崎さんから言われたので、一応建築屋なもので、少し整理しておきたいと思います。建物の固有周期は、建物の高さがN階建てだとすると、Nが大きく高さが高くなるほど周期が伸びて、ゆったりと揺れます。このTというのが固有周期です。これがとても大事で、それ逆数をとったものが振動数というものになります。ドアが開くか開かないかというのは、どれだけ1階当たりに変形するかということで決まります。その1階当たりの変形をδと書いています、これは変形角×階の高さですから、100分の1変形して、3メートルの高さだとすると、これが3センチという数字になります。もしも、こんなふうに直線的に建物が揺れたとすると、1階当たりδという変形をしたとすると、一番上はN×δだけ変形しますから、そこは変位としては、N階建て×1階当たりどれだけ変形したかで、N×δ、これが一番上のところのどれだけ変形したかになります。これで言うと、30階建てのほうが10階の建物よりも3倍、一番上ではよく揺れるということになりますが、途中の階の10階という場所であれば同じです。ですから、30階建ての10階であろうが、10階建ての10階であろうが、変位という、どれだけ移動したかということが出てきます。ただ、速度というのは、どれだけ変位したかというものに、このへんてこな振動数というものを掛け算したものになりますので、そうするとこういう形になってきて、一番屋上の速度は、建物の高さNに関係なく、一定値ということになります。変位はいっぱいするけど、速度は変わらない。加速度はもう一回これにωというものを掛けるんですけれども、それは高さが高いほどNが大きいほど、これは割り算になっていますから、加速度は小さい。ですから、そういうような関係は、基本的にはあるんですね。

 じゃあ、人間が感じる揺れというのは何で決まるかと言うと、速度と加速度を掛け算して、ルートしたものが、人間が感じやすい揺れの指標で、感覚的には一番上階はよく揺れるとは言いますけれども、背の高い建物のほうが、実際には人間が衝撃を受けるような揺れは小さい。ただし、変位はすごく大きくなるので、移動量は大きくなるということで、この3つの尺度を気をつけて比べないと、どのこと言っているのかはっきりしないでしゃべっちゃいます。それから、これをもう1つ見ると、最上階の加速度というのは、加速度は背が高いほど小さくなりますから、ここでさっき出ていた、0.2Gという数字は、あれはNが大きいときの0.2Gなので、そうではなくて、あれが低くなればなるほど、今度は加速が大きくなるので、この0.2Gがちょっと心配というのはそういう部分になります。だから、加速度が大きい、小さいということを言うときには、背が低いときのほうを言ったほうがいい。どれだけ移動するかという話をするときは、こっちの最上階の、周期の長い建物の変位に着目したほうがいい。

 算数をしなさいと、林先生がおっしゃったので、ごく簡単に説明させていただきました。。

 

【林委員】

 こういうのを聞いたときに、スッと出てくるのが、その分野の権威の知恵だと思うので。ここまで言っていただければ、引き続いて長期的な研究をもしやるとすれば、心理量としての揺れというものの式をつくる必要も出てくると思います。

 だから、19世紀か20世紀になるころに、心理学ができた途端に、そのときに起震台はありませんでしたが、精神物理学という分野をみんなが一生懸命やっていました。一番の出発点はそこなので、物理量と心理量の法則性、関係則を導くというところが実はある。僕らがいつもエンジニアの人たちにはぐらかされているように思うのは、加速度でしゃべってみたり、速度でしゃべってみたり、変位でしゃべってみたり、自分の都合のいいときにしゃべるわけですよ。それで、一番、次のお金につながるようなしゃべり方をすると、また悪い言い方だけど、こっちが聞きたいのは、実は心理量としての揺れみたいな、あるいは対応の前提になるような、ある種の量なんだけれども、それは実はないんですよ。なかなかそこまでコミュニケーションできないから、本来はつくるということを考える。そういうときに、実はちょっとE-ディフェンスはあまりにも経費がかかり過ぎるけれども、福和さんがつくってくれているような、ああいう震動台は、パラメトリックに実験をしたら、すごくいい心理量としての揺れというものの計算ができる。そういうポテンシャルがものすごくあると思います。この前、現物を見せていただいています。あのくらいのレンジがあると、非常にいろいろなことができる。

 基本的には、対数で僕は動いているから、意外とおもしろい。そうすると、感覚的には全部そこに対数が入るとすると、あるところからいくと、急に怖くなくなって、すごく大きな変化があるようなんだけれども、そんなに物理的には感じない。そのようなことが出てくるかもしれない。できれば、こういうパラメーターセットの上で、心理量も測れるようになったほうがコミュニケーションはそこから広がって、それはもうちょっと言えば、いわゆる性能設計みたいな言い方に近いことで、ユーザーサイドの感覚のインデックスを持てれば、それは非常にダイレクトな性能表示のインデックスになるわけです。だから、何となくこの委員会全体、ある種の社会科学的な雰囲気を持っていると思われているけれども、それは単に定性的に何かを論ずるだけではなく、本来は定量的にいけるはずで、何を定量化するかというところのターゲッティングをするのにものすごい時間がかかるから、大体そこまで行かないで終わっているというのが本当なんです。だから、そういう意味で、すごく整理されていて、こんなに整理して授業してくれないですよ。だけど、そういう意味で、エンジニアはどうとらえ、普通の揺れている人はどうとらえるかというところの逆も同時に見せてくれる。非常に重要なことだと思います。

 

【 議題3 検証の具体的進め方について 】

 

【田中主査】

 ありがとうございました。

 議論は進んでいますが、検証の進め方、作業部会の進め方の案について事務局からの資料を少しご紹介していただいて、また元に戻って議論を詰めていきたいという気がいたします。

 資料3-3の説明をお願いします。

 

【富田防災科学技術推進室室長補佐】

 それでは、資料3-3をごらんいただきたいと思います。こちらは、先ほども触れましたように、今後こういった1から4の流れで進すめていくのはいいのではないかという、事務局の案でございまして、1でございますが、これは前回の会議でちょっと、対策が可能なこの4つの住宅、学校、体育館、百貨店等について場合分けしてはどうかということがあったので、ちょっと場合分けしたのが次の別紙1-1から1-4でございます。これはもう先生方にもお送りしたもので、下の部分をちょっと省いているものでございますが、福和先生からいろいろ、これ以外にもいろいろ踏まえるべき条件があるのではないかということをいただきましたので、配慮事項等で、破線の四角の中に簡単にまとめているものでございます。これもある程度動ける場合とほとんど動けない場合で分けて、そしてその下、事前対策、家の場合だと、家具、戸棚、固定をちょっとメインに書かせていただいておりますが、そういう対策をある、なしで分けておりまして、さらに建物が耐震化されているか、非耐震のものかで分けているものでございます。その下に、その場合における現象の可能性して、一番左であれば、事前対策なしで、非耐震であれば、層崩壊、天井落下、家具類転倒、什器飛散等を書かせていただいておりまして、右側の震度6弱以下のある程度動ける場合につきましては、場合によってはそれぞれ左側が起きるというふうに書かせていただいております。これがそれぞれ、学校内、体育館、百貨店等、それぞれのケースにつきまして、これも予想といいますか、事務局の予想とか従来の言われているものからこういった可能性があるのではないかというので事例を書かせていただいているものでございます。

また、資料3-3の1枚目に戻っていただきまして、2.ですが、「現在推奨されている退避構造の整理」というところでございますが、これは別紙2を見ていただきたいと存じます。これは、先ほどの別紙1-1から1-4の次についてございますが、「現在推奨されている退避行動案」について、これも以前出したことがあるもの、参考として出したものをここでお出ししているものでございますが、その下に、出典と書いておりますが、出典の中でAからDまでは、第1回目の本部会で参考資料として出しているものでございます。そして、Eとしましては、研究地震速報という黄色い本でございます。それからそれぞれ抜き出しているものでございますが、それぞれについて、本部会ではこういったものを対象として検討したらどうかということで出させていただいておりますが、先ほど、林先生のほうから言われましたように、10カ条というのが最近あっちこっちで使われているということなので、ちょっとそれも視野に入れまして、今後また対象とすべき退避行動につきまして、検討を進めていきたいと思っております。1枚目の3でございますが、考慮すべき場合ごとに、現在推奨されている退避行動の適否を判断するためのエビデンス、科学的根拠、事例等ということでございますが、それを収集・整理し、適否を検証というステージに入っていく場合でございますが、これは先ほどの別紙2の次の別紙3-1と3-2でございます。表になっている「○」、「×」です。「×」は、この際に、絶対当てはまらないということは恐らくないのではないかと思って、ちょっと×は入れておりません。この「○」、「△」、「?」と、いろいろ出ておりますが、それぞれについて、まだ現状では判定不可能であると思われるものについては「?」。妥当と思われるものについては、「○」。場合によっては妥当というものは「△」で、それぞれ踏まえるべき件につきましてはカッコ書きで書いてございます。本部会は、本年度どこまで定量的にやるかというお話が先ほど出ておりましたが、もし定性的にやるのであれば、こういう「○×」的なことで、今年度は終了するのかもしれないんですけれども、今後、それぞれの場合について、この退避行動の妥当率みたいなものを形式化していくのであれば、先ほど言われましたように、あらゆるパラメーターについて、定式化して、この別紙3-1の各場合についてこの妥当率のようなものをそれぞれ四角の中に、この場合だと、何パーセント、この行動は妥当である、みたいなことを長期的に考えるのであれば、そういうことも考えられるのではないかというふうに考えております。その下、1枚目の4でございますが、エビデンスをもとに適否を検証ということでございますが、科学的根拠ですが、この別紙3-1の「○△」を、エビデンスをもとに今後検証していく必要がありまして、適宜エビデンスを収集したり、もしそこで退避行動が怪しいと、「△」とかほぼ「×」に近い場合には、適切な退避行動の導出につながるような研究とか実験課題についての検討を行っていくということをしております。4のところに、別紙4と書いておりますが、別紙4を見ていただきますと、今現在の状況、作業部会の状況ですと、確実に研究していくべき、あるいは調査すべきというのは、この2点は確実にやるべきであろうというふうに思っております。

 1つ目でございますが、長周期地震の揺れによる室内状況の把握。長周期地震はなかなか起きておりませんし、事例も少ないですので、室内に設置された電気製品や家具類の挙動を定量的に把握する必要がある。こういったことを踏まえて、事前対策による転倒防止効果の定量的な把握も検討していく必要があるかと思っております。その下、2.にございますけれども、地震時の振動状況下での人間の運動能力についての研究。起震車で発生させる震度6とか7というのは擬似的なものであり、正確な波形をもとに出したほうが、正確な行動が出てくると思いますので、E-ディフェンス等の震動台を用いた実験を行う必要があるのではないかというふうに考えて書いてございます。前回にも出しましたように、ダミー人形でもどこまで見えるかもわかっておりませんし、人間が乗ってももうすぐ揺れるぞというのを考えた上で揺らすと、またそれで条件が変わってきますので、それが本当に適切な実験でやるかどうかも含めまして、研究していく必要がある。それと地震の揺れの特性ごとの人間の運動能力について、測っておく必要があろうかというふうにも考えております。今後、別紙4につきましても、今後、取り組むべき研究課題及び調査内容として、この下にどんどん増えていくのではないかというふうに考えております。1例として、別紙のほうを挙げさせていただいております。

以上、今のところ、事務局で考えていると言いますか、こういった流れで今後具体に進めていくのではないかというふうな案を示させていただきました。

 

【田中主査】

 幾つかもう既にご意見いただいているものもあると思いますが、トータルにご意見をいただいていきたいと思います。なかなか人間の行動は、個人差のほうが大きいかもしれないから、研究を進めることは困難かと思います。

 

【荒卷委員】

 方向性としてはこれでいいんだと思うんですが、別紙の3-1のところで、要は「○」、「△」をつけている中に、コンロやストーブの火を消すという部分で、「○」をつけている。単純に「○」がついている部分があるんですが、これが本当にそれで適切なのかなと思えるんですね。というのは、確かに地震10則とか、あるいは今現在は消防科学総合センターでやっているのは、8則にしていますよね。私が消防庁防災課にいたときに、10則だったんですけれども、横浜は3則だったものですから。あまりにも多いとちょっとわかりづらいだろうと整理したはずなんです。今は横浜は、地震3原則の中で、素早い火の始末の中で、揺れが小さいときは火の始末を優先しましょう。それから、大きい揺れは、まず身の安全を図る。その後に、火を消す機会は3度ありますよと。揺れを感じたとき、揺れがおさまったとき、出火直後という言い方をしているんですね。ですから、そういった部分で、この火を消すという部分で、妥当という部分が単純に「○」だけが出てしまうと、やはりちょっとここは怖い側面があるなというふうに感じています。

 

【鈴木地震・防災研究課長】

 これは今の段階で、事務局側が正しいと思って仮に設定しているものです。緊急地震速報がある場合で、30秒間到達までに時間あるというときは、火は消したほうがいいというものですが、それらには条件が付いてきます。そういう点では、条件によって当然ここのマークは変わります。そういう点から、ここに打ってある「○」が、唯一正しいものだというふうには思っていませんので、いろいろ事例を集め、検討した上で修正していきたいと思います。

 

【荒卷委員】

 その部分で長周期の場合は確かに30秒ということですが、直下型の場合は本当に数秒、あるいは十数秒の単位の到達時間として考えています。そうなってきたときに、その行動を推奨することが妥当か、という懸念をもってしまいます。

 

【国崎委員】

 この表をメールで事前にいただいたときに、気づいた点を事務局側には伝えているのですが、空間別に台所、居間、寝室ということで分けています。しかし、銘記されている内容がまったく同じなので分ける必要性を感じませんでした。Eディフェンスの結果として、同じ挙動を示したことによる推奨行動であるということを知るのは重要ですが、国民に情報提供する際には見易さや理解しやすさを意識して建物内の場所の替りに、他の情報を入れたほうがいいのではないかと思いました。

 

【富田防災科学技術推進室室長補佐】

 作業中に、こちらの最初の別紙1-1からのフローを検討しているうちに、ほとんど一緒だなと思って、確かに今の状況では、今のこのレベルだと同一なんですが、今後分けるとまたちょっと違ってくるのかなと思ったりしたり、そこでどこまで分類すればよいのかということを含めてちょっとご意見を賜りたかったということでございました。

 

【室﨑委員】

 1つは、環境条件の話で、このストーブの火の話ですよね。僕はやっぱり人間のやる行動というのは、限界があるので、やはり人間はいざというとき、基本的に決断を要求するのは間違っていると思います。緊急地震速報で消してくれればそれで済む話ですよね。電源会社は嫌がりますが、ブレーカーをつけると、この項目は消えるんですよ。自分で消す必要はないので。だから、そういう人間のやることを置き換えて、きちんとそういうものができるものであれば、なるべくそういうことをすればこういう行為は減ってきて、重要なことだけやれるようになります。やはりその辺のことを念頭にしないと、また、ダルマストーブを消火するという推奨行動が出てしまうとおもいます。

それから、もう1つは、机やテーブルの下って、実際に机を探し回る人がいるんですよ。よその部屋に行ったりとか。そうではなくて、安全スポットを決めていて、安全スポットに行きましょうということです。

 林先生の選択の幅が狭いんですけれども、でも安全な場所に逃げるということだから、机でなくても、家族の中で、我が家はここが安全スポットとそこに逃げればいい。安全スポットの例の中に、頑丈な机とか、黒檀の座敷机とかいう例示があれば、我が家はこれをしようと思って、そこに逃げこみます。単に机というと、机の下を探し回って、隣の部屋とかうろうろして、我が家には机がないということがわかったという人がいたりします。机の下というふうに限定していいのか。この表現の仕方も考え直さなきゃいけないです。

 

【福和委員】

 これはメールでも申し上げたんですけど、寝室と子供部屋とは随分違うので、寝室と子供部屋は分けたほうがいいかなと思います。寝室はもうみんな多くの場合は、寝るときしかいないし、本箱なんかあまり置かない人が増えてきていますよね。でも、子供部屋はそこにすべてがあるし、常にそこで生活しているので、机もありますよね。子供部屋と寝室は分けておいたほうが書きやすいと思います。寝室は危ないって言われているから、対策をする人は、家具を取りますけど、子供部屋は意外と進んでないのではないかと思います。

 

【林委員】

 場合分けって、離散変数ならわかるのですが、本質的には離散じゃないようなものも随分あるわけですよね。例えば耐震性「有、無」なんてやって、エンジニアの世界から怒られないのかという気がします。事前対策「有、無」みたいに、大がかりでいいんだろうかみたいな気もするんです。やはり大事なことは、基本的な1つ1つの変数はやはり連続変数としてとらえていくべきようなものなのだと思う。そうじゃないと、細かい議論というのはできなくなってしまって、そう考えていったときに、同じような変数の1つに火災の可能性みたいなものもあります。だから、今、これは極めて構造的なものに縛られているパラメーターを探している段階というふうに見せておかないと、実は、それ以外にもさっきの火災というのは、非常に大きなペリルですが、これもまたハザードの議論というのと、それから実際にいろいろな問題を引き起こすペリルの議論というのと分けていただいて、ここで今やりたいとしているのは、ペリルのリストというのをつくりたいと思っているのね。火があれば、火は危険になり得る。火がなかったら、そんなもの要らない。それから、建物そのものも危険の原因になり得る。じゃあ、屋外にいたらそういうことはない。それから、そういう非構造部材もやはり原因になり得る。そこも入れなければいけないし。それから、家具もそういうことになりますよね。全部、それ実はニュートンの世界だから、連続変量で計算できるはずの問題でしょう。じゃあ、火だけかと言ったら、今度外に出たら、狭い路地だの何だのがまたあるわけだから、そういうふうに一応ペリルはペリルとして全部リストアップしてしまって、それが持っている関数形の整理というのはいろいろな分野でやられているわけですから、その成果を踏まえたほうがいいのではないかと思います。富田さんが作成したもので欠けているのは、人間の側の関数に置き換えられてない。人間側の関数というのは、連続変量だと思ってないから、そこのところの関数形が見えなくて、悩んでいるという感じがすごくする。だから、これを人間の行動の関数に置き換えると、たくさんのそういう環境要因というのが、それを支配するパラメーターとして定義できると思います。できればそういう形に考えていただくと展開し得るんじゃないかなと思うんです。これはいくらやっていてもやはり厳しいと思います。人間というのは、個人差が大きいみたいなことを必ず言うし、そういうふうな形で、外から縛っていったら、そういう意味では関数形は見えないと思います。どういう条件だったら、どういうふうにしがちなのかということの組合せの中で、ある状況の中での行動というのが決まるので、その平行線をやっぱり出すというふうに見てもらうといいと思います。やはりとるべき行動というのは、非常に限られていて、それが発現する確率みたいなものとして、表現できるはずだろうと思います。もう1つは、慌ててとか、安全とか、どうやって定義するんだろうか、安全ってどうやって定義するんだというのがあるわけです。それをどうやって物理的に把握できるようなもののセットで定義しようかというところが、人間行動を説明するときの基本のからくりだと思います。だから、過去言われている推奨行動のリストみたいなものを見ると、いろいろなものがぐちゃぐちゃになり過ぎていて、これを1つのターゲットとして考えてはいけない。もう少しある種の、ここの中のベースになっている行動のセットに置き換えて、それがどう発現するかどうかという形の関数形に持っていかないと、まずいんだろうなと思います。これはチャレンジなことを言っているんです。今まで、防災世界ではずっとこんなことはやってこなかったから、堂々巡りで終わっているんだけれども、本気でやるのであれば、きちんとアプローチをして、ある種の精神物理学的な設定から始めて、揺れの下でのいろいろな人間の性能の評価をやってみる必要があるのではないかと思います。

 

【鈴木地震・防災研究課長】

 これから来年3月までの間に、林先生の提案された実験を実施するのは難しい状況ですので、今後の検討や研究内容と現在事実として言えることを整理してみることが必要だと思います。これだけ実施すれば良いということをケースごとに整理して、さらにそこから先はどのような研究が必要かということを示せればよいと思います。林委員がご指摘された内容については半分もわかってないと思います。研究をすすめれば分かってくることについて当面検討させていただいて、それ以外のものについては、その今後の課題という形で整理させていただき、次の取組として用意することを考えて参りたいと思います。

 

【林委員】

 個人的な印象を言えば、それはかなり投資効率が低いと思います。そういうやり方で問題をアプローチしても、なかなか正解というか、いい答えが出にくいという気はします。だから、ほかにやりようがないじゃないかと言われると、もう困りますが、でもなかなかそのやり方では多分正解には正直いかないというのが僕個人の認識です。もう少し違うアプローチを立てたほうが、すなわち最初に研究の大計画みたいなものをある程度立てたほうがやりよくなるような気がします。その手掛かりとしては、例えば8則でもいい、3則でもいい、10則でもいいのですが、これらには非常に多様性があります。慌てて行動しないと言われたときに、具体的に何を指しているのかと言われたら、もう何万通りってある。そこの定義をせずに、外から見えるところだけしっかり押さえているから、ある程度見えるというお話なんだと思うんですけれども、むしろそれで探せるこういうはじっこの姿というのは、本質って何なんだ、みたいなことに一度立ち返って、慌てて行動しないということの意味は何だという部分を少し概念的に整理したほうが、多分結論は近いと思います。そうしておけば、他の分野の人たちの精査と結びつけるときに、時間が省略できると思う。この「○」、「×」の星取表を見たときに、多分エンジニアリングコミュニティからは、否定的な意見が出されると思います。それ自体が避けるべきことだと内心は思っているんです。やはりいろいろな、ずっとここ何年かのいろいろな議論を考えてみると、やはり人間の性能にある程度踏み込んでいくことが、次の防災研究を進めていくために大変重要なというところまではみんな言うようになった。いろいろなものにそう書いてある。だけど、どういうふうにしたらそれができるかというところは、実は、みんなわかっていないものですから、試行錯誤しているという状態です。この作業部会がこれだというふうに言ってもいいと思います。だとしたら、やはり発想を変えないと無理なので、正しく餅屋は餅屋にやらせないと、私だって料理人だという形でやったときに、やはりなかなかうまくいかないと思います。それこそ、田中良久という人の「心理学的測定法」を1冊読んでもらうだけでもいいのだけれども、そういうところから少し始めて、人間の性能を測るということはどういうことか、人間の行動を測るということはどういうことなんだと、今までないことをやろうとしている訳です。こういうダイナミックな環境の中での人間の行動をちゃんと組織的に調べようなんていう試みは、非常に野心的なものだと思います。その発想の正しさを大事にすべきで、変に明日使える成果というふうに考えるより、枠組みをきちんと整理していったほうが、よほどそちらほうが将来に対して影響や成果が大きいような気がします。

 

【田中主査】

 さて、どう引き取るかが難しいところですけれども、どういう心理量を設定するのかというのもよくわからない。多分、パッと出てくるものは安易なような気がします。例えば、注意資源ってどれぐらいあるのとか。例えばそんなことがあるのかもしれないけど、そこはあまり明確ではない。多分、今日の委員会の全体の議論の中では、これに「○」、「×」をつけること自体はあまり大事ではなくて、定量的にできるものはしておいて、できないものは定性的でもいいから記載していくという、If then else が多分並んでいくことになっていくのかなと思います。その中から、心理量が出るか出ないかと言われると、期待もするし、でも林先生がおっしゃるように出ないかもしれない。

 

【林委員】

 これは逆に出さなきゃいけないと考えてもらいたい。これは理学ではないので、ある意味では、ある種の実学として成立させなきゃいけないと思います。そういう意味では、そういう心理量が必要となります。今の物理量としての加速度、速度変位というものは非常に整合的な体系を持っているし、実際の現実はいろいろな貢献ができるわけだから、それを踏まえた上での心理量としての揺れもいいし、あるいはさまざまな安全行動と定義されたようなことを体系付けるのもいいと思う。

その状況がちゃんと認識できることと、その中で危険の度合いを判定できること、それに対して対応できるだけの実行できる行動オプションが存在すると。この3つの要素をどう高めるかが安全を高めていくことになるので、何もこれは地震のときだけの特別なことではなくて、正しい状況認識をして、事実の意味を理解して、いい対策を選べばどんな場面だって使えると思います。だからやはりそういうものとして人間の性能をとらえていかないと、地震の時だけというふうにやっちゃうと、これは駄目になってくる。そうすると今のものをどう認識するかといったときに、さっきの揺れの理由というのが1つでてきます。

それから、2番目としては、それがどういう揺れだとどういう知見に結びつくのかということも認識が多分要るだろうと。ここの部分が一番不足しています。そこが実は、難しい。それは、いろいろなものを通して定量的な関数形を考えることができなきゃいけないと思うんだけど、それから最後のアウトプットは、10則でも3則でも8則でもいいわけですね。ある人たちが、みんなが繰返し言っている蓋然性の高い行動のオプションを並べ、ある知見を察知して、ある状況に置かれたときに、それをどのくらい危険だというふうに認識するか、その感性というか、そこのメカニズムということの解明というのが非常に重要だと思います。だから、さっきの震度3で、慌てて飛び出していって、腰を折ってしまうようなおじいちゃんというのは、揺れそのものと危険の認識が極端にずれている。だから、震度3だから壊れないとドンとしていればいいのに、自分の中でいろいろ考えてしまうから、少しでも安全な場所を選んで、屋外だと思って出ていく行動をしていく。今度は、自分の中に体をマネージできるような能力がないからこけちゃう。1つのものがあるわけじゃなくて、やはり状況を認識していること、それを意味づけていることと、それから対応オプションを選んでいるということ、また実行能力などが絡みあう中で、1つの安全行動というのが発現するわけだから、そういう分析をちゃんとする必要があるのではないかと思います。認識面としては、1つの整理の方法だと思います。

 

【南山防災科学技術推進室長】

 今後の進め方や方向性として、定量的にとか、状況や場面を明確化していくとか、条件範囲を明確化しながら、例えば実験的にできることを整理していきたいと考えていました。例えば、資料3-3で紹介したことをE-ディフェンスでやっていく方向性については、固めていければと考えておりました。

その上で、また次回以降、作業部会において行うべき作業は何か、それまでにできることは何かというのは、事務局として考えているところでございます。

 

【田中主査】

 ハザードから始まって、一種の危険というのは、実態もあれば、我々が主観的にとらえるものもある。逆に、対応行動というのもある意味ではすべきだということ、実行できるものというのもあるわけです。そういう面では、認知レベルというか主観的な危険の評価というものがあって、そこにはいろいろなズレが多分あります。そして、対応行動に対しても私たちは間違ったイメージを持っている場合もある。それと推奨行動がありますよね。そこの関係をまずはっきりしておいたほうがよいという気がしました。

そのときに、それをどのところから出発するのかというのが難しいなと思っていて、ケース分けで入っていくと多分無理だと思ったんですね。1つは、林先生が提案された退避行動を少しぎちぎち見ていくという中から議論をしていくというテーマでは、多分そのまま一般の住民の方は、なぜそういう議論をするのかということ自体が分かりにくいかもしれません。

そういう面で、この10カ条なりから出発して実際にそういう危険の認知や行動をとれる・とれない、または知識の問題という整理から入っていって良いかというところではどうですか。

 

【林委員】

 それが現実的だと思います。

 だから、10カ条なり8カ条なり3カ条なりを少しちゃんと分析し、10個ぐらい、もしくはもっと削れると思うんですけど、10言われていることは一体どういうふうなことを推奨されているのかということの整理を行えばいいと思います。それからそういうことを引き起こさせるような環境側の要素として、揺れの強さ、建物の構造、家具の状況、火災の火源があるかないかみたいなものを、物理的な世界の中のパラメーターセットというのかな、それを変数として探し出す。それから、場合分けしないでもいいと思います。それぞれの変数が持っている固有の性質、さっきの揺れとか、ああいうものをむしろ整理していただいたほうがいいのかもしれない。10カ条というのがあったときに、それを見ているのは世界が違う人たちだから、自分たちがこの1条についてはこういうことを思うみたいなものをそれぞれがインプットしていただいて、それを事務局に整理してもらうという手もあるかなという気がしています。外に出るんだったら、ドアのさっきのここにあるように、変形角というので押さえられますよというふうな形でいってください。それから、火の始末といったら、現在はマイコンメーターで落ちるのでやる対応する必要ないじゃないかというような指摘もあるのかもしれないし。そういうものが、それぞれの10の命題なら命題について、いろいろな素材として出されてくることが多分重要だし、それを体系化することが次までの仕事じゃないかなと思います。

これは割と決め事で入ろうとしているから、そこで行ける部分は非常に限られていて、目的に近いところから逆読みしていったほうが、わかりやすくなると思います。

 

【田中主査】

 定量的に全部挙げられるかどうかは別だけれども、ここで何のためにやるのかとか、何ができないのかとか、どういう要件だとできるのか、そこを少しきちんと詰めて、それが最終的には推奨行動や防災教育上配慮すれば良いことにつながっていくことが第一ステップであるし、最終的には量の問題として、やはりきちんと心理学としては精神物理学に一度やってみたいなというところもあります

 前回、あまり全員からご意見もいただけなかったようなところもあったようでございますが、少しそういう整理もありましたので、皆さんにちょっとそういった視点で見ていただきながら進めたいと思います。また、あまり拙速にならずに、やはり大きなイメージとして、あるいは社会的な貢献の分野として育てていくという部分も含めて議論していきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 時間が大分過ぎてしまいましたことをお詫び申し上げながら、事務局にお返ししたいと思います。

 

【 議題4 その他 】

 

【事務局】

 次回は、10月6日、10時から12時まで、庁内で開催ということを予定しております。本日は、これで会議を終了いたします。ありがとうございました。

 

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室

(研究開発局地震・防災研究課)