研究評価部会 研究開発評価システム改革検討作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成21年6月26日(金曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 科学技術・学術政策局会議室1(15F)

3.議題

  1. 研究開発評価システムの改革について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員)
平野主査、阿部委員、伊地知委員、小川委員、北川委員、黒木委員、小林委員、小間委員、武田委員、沼尾委員、野田委員、山本委員
(協力者)
林大学評価・学位授与機構准教授

文部科学省

泉科学技術・学術政策局長 岩瀬科学技術・学術総括官、柿田計画官、苫米地評価推進室長、沼田計画官補佐

5.議事録

【平野主査】  第2回の科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会研究評価部会、研究開発評価システム改革検討作業部会を開催させていただきます。

 この間まで、私から皆さん方にご無理をお願いいたしまして、ご意見を寄せていただき、なるべく効率というより効果的な会議にしたいと思い、またそれを見ながら、ここでさらに意見をいただいて取りまとめに入りたいと思っておりまして、お願い申し上げましたところ、大変貴重なご意見を寄せていただきました。ありがとうございました。事務局を中心にして取りまとめをいたしました。私も全部見せていただいておりますが、この会として大変いいまとめになるのではないかと期待しているところであります。まず御礼を申し上げます。今日はそれに基づいてさらにご意見をいただき、そして取りまとめに入っていきたいと考えているところであります。

 それでは、まず審議に先立ちまして、事務局より配付資料の確認をお願いします。

【沼田計画官補佐】  議事次第の配付資料一覧のとおりでございますが、順を追って説明させていただきます。資料1―1が「事項の整理について」、資料1―2が「研究開発評価システム改革の方向性について(素案)」、1―3が前回の作業部会における主な意見。参考資料でございますが、こちらは前回の第1回にお配りした資料でございます。参考資料1―1が「評価システム改革に向けた論点整理」、1―2が関連するデータ、1―3が「評価システム改革に向けた検討の視点(主要論点)」、1―4が「第3期科学技術基本計画(抜粋)」でございます。それと机上配付資料1といたしまして文部科学省の評価指針と、机上配付資料2といたしまして、先生方からいただきました意見を整理したものと素案を比べて整理したものということで置かせていただいております。欠落等、不備がございましたら事務局にお申し出ください。

 以上でございます。

【平野主査】  ありがとうございます。資料の欠落はございませんでしょうか。

 それでは、議題に入らせていただきますが、今日は評価システムの改革について全般の議論に入っていきたいと思います。

 先ほどごあいさつの中でお話しいたしましたように、前回の作業部会において評価システムの改革の検討課題について、大変貴重なご意見をいただきました。また、会議終了後には各課題について意見をお願いし、委員の方々から回答あるいは提案をいただいております。今日はこれらの意見を整理して、事務局において素案を作成していただいておりますので、それをもとにしながら追加等々を入れて議論をしたいと思っております。事務局にも相談をしたときにお願いをいたしまして、委員の方々にあらかじめまず資料をお送りできる限りはお送りしようとした次第です。そして、たとえこちらに来る電車の中であろうとも見ていただけたらありがたいと思って、お願いをいたしました。メールでお送りしておりますので、またメールが来たと思われたかもしれませんが、そういう背景で私からもお願いしておりますのでご理解いただきたいと思っております。

 審議の進め方といたしましては、まず全体構成について事務局から説明をしてもらいまして、あと素案の各事項に沿って意見をいただきたいと思っております。そして最後に、全体を通しての意見がありましたらまたお伺いするという形で取りまとめをしたいと思っております。この委員会はあともう一回予定しておりまして、そこではもう最終段階の確認を含めてしていただきたい。今日はその項目ごとにご意見をいただいて、また整理に入りたいと思っております。

 それでは、まず資料1―1に基づいて説明をしてもらいます。よろしく。

【苫米地評価推進室長】  それでは、資料1―1「事項の整理について」でございます。

 前回作業部会でのご意見、またその論点整理へのメール等でご意見を賜りましたものにつきまして、基本的に論点整理をベースといたしまして、報告書をイメージした素案を作成させていただいているところでございます。前回の論点整理の中で掲げておりました、背景として「現状」と書いてございましたが、それを「はじめに」という形にさせていただいております。また、論点整理の中で2.の「問題意識」あるいは評価への対応の評価のあり方等につきまして、評価の目的に関すること、階層構造に関することがそれぞれ書かれていたことがございまして、それらを1の「基本的考え方」として、「目的に応じた評価システムの再構築」、また「階層構造と階層間の関係が明確化された評価システム群の形成」という形で取りまとめたものでございます。

 以下、「課題への対応」ということで、前回記載させていただいたものにつきましては、「評価システムの当面講ずべき改革の方向性」という形で、ほぼ内容的には前回のものを踏襲し、委員の方々からいただいた意見を踏まえた上で、具体的方策等を盛り込んだ形で記載させていただいているところでございます。なお、前回2の1(3)にございました「世界水準の視点での評価」は、観点・基準・視点でございますので、報告書素案の中ではローマ数字2の1.(4)という形でこちらに移動させているものでございます。また、前回の作業部会の中で、我が国における評価の文化というお話もございまして、研究者が評価についてなれていない、あるいは評価されるのは当然であるというような機運を醸成する必要があるのではないかというご議論が多々ございまして、今回「評価文化の醸成」という形で新たに項目を立てさせていただいて、本日後ほど、またこれについてご議論をいただければと考えてございます。

 以上でございます。

【平野主査】  ありがとうございました。

 今説明をしていただきましたように、この前のご意見をもとにして、素案としてこれを認めていただければ、この内容、項目でまとめたいという提案であります。特に初めの「基本的な考え方」のところを、この前ご意見をいただいた部分の骨格となる、「はじめに」部分としてここに整理したところでございますが、全体の構成について、今の説明に対して何かご意見等ございますでしょうか。この項目立てでよろしいでしょうか。ありがとうございます。

 今日はここの部分、それぞれ項目ごとにご意見をいただきながら整理をし、全体を通して必要な部分について、また後で全体的なご意見をいただきたいと思っております。

 それでは、まず事項に沿って審議を進めていきたいのですが、「はじめに」という部分と関連いたしますその中の1の「基本的考え方」について、事務局から資料に基づいて説明をしてもらいます。

【苫米地評価推進室長】  それでは、素案についてご説明させていただきます。

 「はじめに」でございますが、前回の論点整理の中にございました「現状」ということの認識でございます。3ポツ目でございますけれども、「研究開発評価は研究開発活動の質向上に役立てるとともに、社会的な説明責任を果たすことなどを目的としており、評価結果が適切に活用される必要がある」ということで、このようなことを「はじめに」という形で記載させていただいております。

 ローマ数字1の「基本的考え方」でございます。「1.目的に応じた評価システムの再構築」ということで、評価は何らかの意思決定を行う目的のために実施される手段であり、その目的に応じて個々の評価システムが構築される必要がある。しかしながら、評価自体が目的化している場合などがあるのではないかという問題意識があり、この点につきましては文部科学省における評価指針においても、既に評価実施主体はどのような目的で評価を実施するのか、また、評価結果はだれがどのように活用し、どのような効果をねらっているのかなどに対しまして、その役割、責任などを明確にして関係者に周知するとともに、結果が適切に活用されるようにすることが既に記載されているところでございます。評価主体においては既に実施されているところでございますけれども、改めて次の点を再検討して、首尾一貫性を確保した評価システムを構築する必要があるのではないかということで、丸1、丸2、丸3として、まず1でございますが、あらかじめ評価結果の活用方法と活用の責任主体を明確化する。2評価方法、評価基準、評価に要する労力等を評価結果の活用方法と整合するように設計すること。次ページになりますが、丸3としまして、評価結果の活用方法と責任主体及び評価方法、基準等について、評価者、被評価者の関係者と事前に共有すること、などを挙げる必要があるのではないかということでございます。

 また、ボックスになってございますけれども、前回の論点整理の中で「評価」という言葉の定義について記載させていただき、ご意見等をいただいたところでございます。これらにつきましては、国はこれらを相互に区別して認識できるような概念の分節化を促し、定着を図っていく必要があるのではないかということにさせていただき、それぞれの言葉につきましてはこの素案の15ページ、16ページに、それぞれ英語に対する和文、和訳という形で、どのようなものがあるかということを整理してつけさせていただいております。

 続きまして、「2.階層構造と階層間の関係が明確化された評価システム群の形成」でございます。政策から具体的な研究実施までの政策体系は、概して政策―施策―プログラム・制度―研究開発課題に分けられると、このような階層構造をとっているところでございます。評価基準は上位階層との関係からそもそも自然と策定されることになるわけでございますが、現状では階層間の関係が明確となっていない場合がある。また、そのために評価活動が形式化・自己目的化することにつながっているのではないかという問題意識がございます。このために、評価実施主体は各階層間の関係を明確化して、上位の目的の実現の観点から階層間の適合性、相互接続性を踏まえて、それに即した効率的、有効な評価システムを構築する必要がある。特に施策やプログラム・制度の評価については、我が国ではあまり経験を積んでおりませんけれども、個別のプロジェクトの評価が行われる場合や、評価が一覧化されるだけの場合があるなど、プログラムレベルでの有効性の評価が十分になされていないという問題意識がございます。

 説明責任を評価目的とする場合や、社会経済的効果の評価を必要とする場合には、個々のプロジェクトを詳細に評価するよりも、プログラム・制度に説明責任を果たすほうが自律的なマネジメントを推進できて、すぐれた研究活動を長期的な観点から支援できるほうが、有効かつ効果的である場合が多い、施策やプログラム・制度の評価推進を図ることが必要であるということでございます。また、同時に施策やプログラム・制度の評価において得られた知見や課題が、上位の国の政策の改善や新たな政策に反映させることに期待するという形にさせていただいております。

 その下のボックスでございますけれども、これは前回論点整理の中で定義として項目立てしていたものにつきましては、共通的な項目でボックスとしてまとめさせていただいて、ご参照いただければと思います。なお、次の4ページで、ボックスの中で加えさせていただいたものにつきましては、「文科省の政策評価における階層構造の例」ということで、文部科学省における基礎研究の充実等の政策目標の構造について、具体的な例として記載させていただいているところでございます。

 以上でございます。

【平野主査】  どうもありがとうございます。

 今説明をいただきました「はじめに」の部分でありますが、これについて修正等々含めて、ぜひお考え方を教えていただきたいと思います。いかがでしょうか。

 はい、どうぞ。

【小間委員】  最初にご説明のあった事項の整理の一番下、「評価文化の醸成」ということは大変適切だと思いますけれども、その観点で「はじめに」のところを見ますと、評価という言葉にいろいろな意味があることを提示している点、階層という点、このようなことが入っているのは大変適切な方向だと思います。

 もう一つ私が足したいのは、普通、我々が評価と言っているときには、頭の中に終わった後の評価、途中の評価という概念はすぐに入るのですが、事前評価という言葉があまり一般には普及していないのです。事前、中間、事後という3つの時点で、事前評価はプログラムの制度設計そのものが適切かどうかということも一つですが、我々が一番なじんでいるのは採択審査で、これを評価という観点で位置づけ、事後評価、中間評価と適切な関係を持たせるシステムと考えることが大変大事だと思うのです。知っている方はそういう考え方をすると思いますが、今のところは、特に評価される研究者の中には事前評価というような概念があまり多く入っていないのではないかと思われますので、せっかくこういう四角で囲んだところに書いていただくのであれば、もう一つ四角をつくって、事前、中間、事後といった評価の枠組みの考え方を入れていただけると適切ではないかと思います。

【平野主査】  ありがとうございます。

 私は大変重要なご指摘だと思います。前の科学技術・学術審議会の評価分科会でも、そのことが以前議論になりました。というのは、受ける方から見ていきますと、今小間委員がおっしゃったとおりでありまして、審査の段階の部分を事前評価としてきちんと位置づけて、全体の評価のシステムとして動かしていく必要があるのではないかということもありました。これは終わってからの意見だったのですが、採択委員の方々は大変精一杯努力されておりましたが、もしもその中であまりいいものでないのが入っていたら、そこを後々無理にやってもだめということもあり、きちんとそれをフィードバックできるような体制も要るのではないかという意味で、一連とした評価のシステムに位置づけるということが必要であるとの議論もありまして、今先生がおっしゃったとおりの意見が出ておりました。それについて、まだ深い議論はしておりませんでした。

 いかがでしょうか。今の事前、中間、事後というところでの位置づけを、きちんとここに入れていただいたらいかがでしょうか。

 はい、北川委員。

【北川委員】  それに関連して、事前、中間、事後評価にプラスして、最近は追跡評価、それに対して今、文部科学省の科研費の一番上の部会に入っていて、そこでもやっているのですが、文部科学省の場合は個々の課題の追跡評価をしているのです。私は、それはおかしいのではないかと思います。制度設計に生かすようなものでないといけないので、10年前とか5年以上前のものを今からほじくり出してどうこうするのは、個々の先生もしくは課題の評価というよりは、追跡評価ではなくて追跡調査だと私は思うのです。何のために追跡評価するかというと、例えば果たして特別推進の制度がよかったのかどうか、今ほんとうに変えないといけないのかどうかを見るべきです。今JSTでも、科学振興調整費のプログラムオフィサーをやっておりますが、私は追跡評価というのはおかしい、追跡調査であろうと思います。調査して、その制度設計が果たしてよかったかどうかをきちんとフィードバックさせないといけないと思うのです。そういう点で、NEDOは最近ものすごく評価体制がよくなっていて、5年間やったプログラム全体の制度設計がよかったかどうかをNEDO側が常に評価を受けるのです。評価者がNEDOを評価するのです。そういう体制にしていかないと何のための追跡評価なのかということも、枠組みをきちんと考えておかないといけないのではないかと私は思っています。

【平野主査】  今、北川委員がおっしゃったのは、非常に重要なところだと思います。この前も、ここにも出て説明がありました、国の上の制度にさかのぼっての評価の検討が要るのではないかと思います。そういうところにも関連してくることだと思うのです。

【北川委員】  そうですね。だから、果たして制度設計がよかったかどうかは追跡調査した上で判断するべきものだと思います。

【小林委員】  今のお話には全く賛成で、後ろのほうまで読んでいくと、事前、中間、事後、追跡の区別が書かれていると、もっとわかりやすいところがたくさんあるのは確かです。そういう意味で大賛成なのですが、今のお話のところで言うと、おそらく個別のプロジェクトに対する追跡評価は、ケースとしては大規模なものや特殊なものがあり得るのですけれども、小規模のものはあまり普通は行わないです。むしろプログラムレベルでの追跡評価という形で行うのです。それは調査というか評価というかありますが、あらゆる階層において、事前、中間、事後、追跡という観点で設計することが必要だということを書かれることが、多分大切なのだと思います。

【平野主査】  わかりました。ここで言うと3ページのボックスのすぐ上のところのポツ、「同時に施策やプログラム・制度の評価において得られた知見や課題が、上位の国の政策の改善や新たな政策に反映されることを期待する」というのが、今、北川委員が言われたのはここにも出ているのです。

【北川委員】  そういうことです。

【平野主査】  もう少し明確に事前、中間、事後という評価のところを、ブロックで書いた中にもそういうことを入れ込んだほうがわかりやすい、というような線で、また事務局を中心にして整理をさせていただきます。

【武田委員】  今のご意見に私は賛成でそれがメジャーだと思うのですが、「4.評価文化の醸成」にもかかわる、例えば研究開発とは極めて未知の可能性への挑戦なので、評価をきちんとやればいい成果が出るかというと必ずしもそうではない。逆に、先ほどおっしゃったように採択のときの目利きという問題もあるので、追跡調査をしてみたら幾つかのプログラムが極めていい成果を出していたり、あるいは期待外れだったりといったときに、そのプログラム自身を評価するのか、そのプログラムを採択した評価者を評価するのかという問題があると思うのです。

 投資と同じで、選ぶ人が報われるシステムも含めて、あまり表立って「あの評価委員たちが選んだのはいつも外れだね」ですとか、「あの評価委員が選んだのはいつも当たりだね」という要素はあると思います。何らかの形で評価者にフィードバックするような、トラックレコードになるような格好の仕組みをどこかで入れませんと、私もたくさん評価して、評価疲れで、読んでは点数をつけてと行っているわけですけれども、どういう人が評価すると隠れた才能を見つけるとか、非常に可能性のあるプロジェクトを採択するかというのはなかなか難しい話で、属人的な部分もあるので、その辺の何かがないといけないのではないかと一つは思います。

 それから、全体を読んだ感覚で、申し上げたいのは、これだけの評価システムの改革を何のために行うのかという、「はじめに」のところにもかかわるわけですが、社会的な説明責任を果たすことなどを目的としているより、この作業部会であえて評価文化の醸成ということを入れたことも含めて、日本の今の研究コミュニティを改革するという面があると私は思うのです。評価のシステムがどういうシステムをとっているかによって、日本の科学技術のコミュニティがどういう性格を持っていくかということに多大な影響を及ぼしていると思うので、評価システムを改革するからには、日本の科学コミュニティをいい方向に導く視点が、私は必要ではないかと思うのです。若干上位概念ですから、この作業部会から上に向かって物申すようにです。

 しかし、そういうビジョンの中で、今の日本の研究コミュニティを世界的な水準にさらに高める視点からしたときに、大きなポイントは2つあると思います。研究コミュニティにおける人材の流動性、それから才能の多様性。今私は理研のマネジメントでもそれを常に重視していて、いかに人材が流動し、いろいろなものを持った人を取り込んで、それでクリエイティブな仕事をするかという意味においては、理化学研究所においてもまだまだ不足しているという視点で、端的に言えば、流動性が欠けてきますと、その研究コミュニティは非常に権威が強くなってきて縦割化していく。そうすると評価システムが、ある意味でそういうものを壊していくような要素が必要ではないか。多様性ということであれば、例えば多数決で決めていくとだんだん少数の独創的なものが排除されることも含めて、日本の研究コミュニティを一段ブレークするには、流動性や多様性を頭に置いた評価システムも含めて、何かそういう視点が必要ではないかと思います。

 前回も口頭で言ったことの趣旨は、いい評価システムをつくろうとマニュアル化していくと、実際は、今我々が陥っているある部分を下手に強化する方向に向かって――コミュニティ全体をもっとダイナミックで活力あるものにするための評価システム改革という視点をどこかで入れておかないと、きちんとした評価をやろう、という方向に若干向かうのではないかという懸念があります。表現も含めて工夫していただければと思うのです。

【平野主査】  ありがとうございます。ここでいう「はじめに」のところの3つ目のポツにかかるところがあるのではないかと思います。

【武田委員】  むしろ我が国の科学技術コミュニティの改革につながるというような形です。

【平野主査】  そこの言葉は検討いただき、またいい言葉があれば、この研究開発活動の質向上とともに、あるいは研究者コミュニティの活性化、そのあたりの言い回しを加えていくようにしましょう。

【沼尾委員】  私は学術振興会の学術システム研究センターで委員会をいろいろ組織することを考えて、事前、中間、事後の評価を考えてきたのですが、委員会の評価の場合にはどうしても委員が途中で交代する。その中での連絡が難しいという問題があるような気がしています。メンバーはある程度長く務めていただくことも考えているのですが、途中で委員が交代した場合に一貫性を保つ手法を開発する必要があります。先ほど武田先生から属人的という話がありましたが、そういった属人的な面もあります。日本では、属人的にはせず、委員会が評価している場合が多いので、一貫性を保つのが困難になりがちです。そこで、一貫性という問題をもう少し深く考えていく必要があります。たとえば、委員が交替した場合でも、一貫した評価をつける。事前で評価された課題に対し、一貫性を持って引き続き事後でも評価する。こうしたことに配慮したシステムを開発することは、可能になってきています。たとえば、ドキュメントの管理や電子化により、ある程度引き継ぎが可能になります。電子的なタグ付で以前の情報を検索しやすくする技術は盛んに研究されているところです。

【平野主査】  これも昨年度だと思いましたが、評価の分科会で採択のときの審査者がその後もフォローすべきではないかというものがありました。それに関連するところではないかと思います。

【沼尾委員】  はい、そういう話です。

【平野主査】  審査者はきちんとした方々なので大丈夫だろうという立場の上でやりまして、審査者に問題ありというときには、その区分けが要ると思いますが、そのような意見もありました。

【沼尾委員】  点数の問題もありますし、そのときに「ここが問題だね」と言われたら、評価者は細かな情報をお持ちなのですが、それが後に反映されるかどうかという問題です。

【平野主査】  そのあたりはシステムの中で、反映させるということにしまして、そのほかはいかがでしょうか。

 では、この部分は基本的によろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは次の2番目、「評価システムの当面講ずべき改革の方向性」。これは項目が多いものですから、まずそのうちの「1.評価の観点・基準・視点」についてご意見をいただきたいと思います。まず事務局から説明をお願いします。

【苫米地評価推進室長】  それでは、ローマ数字2「評価システムの当面講ずべき改革の方向性」ということで、「1.評価の観点・基準・視点」についてでございます。ここの現状と問題意識については、前回の論点整理の中で述べさせていただいているものと変わりはございません。施策やプログラム・制度やプロジェクトの評価手法の違いや、それぞれの目的、性格、内容等も多様であることから、限定されることなく、それぞれの特性に適した評価項目を含め、観点で評価が行われるべきであるという問題意識でございます。

 そこで委員の方々からいただいたご意見等を踏まえた上で、具体的な方策として2つ入れさせていただいておりますが、施策やプログラム・制度レベルにおいては、「必要性」、「有効性」、「効率性」の視点でおおむね問題はないけれども、プロジェクトレベルの評価においては研究の不確実性等がございますので、インパクトの多面性・長期性などを見越して観点を設定する必要がある。例えば4つ、プログラム・制度との関連性でありますとか、研究内容や成果の「質」・「独創性」・「先進性」・「新規性」・「メリット」、また将来を十分に見据えた「インパクト」、将来的な展開への「波及効果」などが考えられるのではないかということで記載させていただいております。

 「(2)研究開発の性格に応じた多様な評価基準」で、これは長期にわたる地道な研究活動が必ずしも評価されておらず、目先の成果を重視する傾向にあるという指摘にあるような問題意識でございます。次ページでございますが、具体的な方策としましては、プロジェクトの評価基準は上位の施策やプログラム・制度等によって定められるものであることから、各プログラムの内部でその目的に即した適切な評価基準を作成することが再検討されるべきであること。説明責任の所在を、よりプログラム、機関に置くことで、長期的研究や地道な研究を実現可能とするマネジメントが、それらの内部で実施されるようにすべきであるという点。施策やプログラム・制度を新設・変更する際には、事前評価基準を設定するだけではなくて、その後の事後評価でありますとか、モニタリングでありますとか、そういうものをあわせて構築するべきである。また、被評価者であるプロジェクト実施者に、必要以上の労力がかかることのないように、資金配分機関等が評価活動への対応の仕方について支援や助言を行うことが必要であろうということでございます。

 また、丸3といたしましては、「新たな研究領域を開拓する挑戦的な研究を促すような評価基準が必要ではないか」ということで、学際融合を指向する研究を促進するような基盤が未熟で、評価基準も不明確である。そのことからプロジェクトに比して、過度に低く評価される傾向があるのではないかという問題意識でございます。

 具体的な方策といたしましては、ハイリスク研究や学際・分野融合研究が、事前審査や事後評価の方法・基準、マネジメントの仕組みを、プログラム・制度の目的を踏まえて導入することが必要であろうということ。また、それぞれの施策やプログラム・制度の目的に応じて評価を行うことを推進し、事前審査においては、短期的な成果主義や過去に出版された論文数など形式的評価にかかわらない。事後評価においては、予期せざる波及効果に大きい意味がある場合等は、それを積極的に評価することを許容するような評価基準を作成する。また、マネジメントについては、施策やプログラム・制度レベルで管理することが、評価する上で重要であろうということでございます。また、特定の社会的課題解決などを目的として挙げる場合には、そのために多様な異分野融合型の研究開発を進める学際・融合研究がございます。これらについては、目標達成の道筋や必要な技術課題群の明確化を行うことが必要であろうということ。また、新しい研究領域の開拓を目標とする施策やプログラム・制度以外の審査においても、学際・融合領域に不利にならないように扱いを明記するなど、適切に拾い上げることが必要であろうということでございます。研究の進展に応じた評価システムを見直していくことが重要であるということでございます。

 「(3)研究活動を支える組織、次世代の人材を育成する組織やプログラムの役割を重視する評価の視点」でございます。丸1でございますが、個人重視ということが現世代の研究者個人の重視になって、次世代の若者の教育・育成への配慮を失わせている可能性があるのではないか。研究コミュニティの若者育成が必須であって、研究コミュニティの責任であるという意識を研究者自身が共有する必要があるのではないかということ。また、プロジェクト内でポスドクが使い捨てられている現状があるのではないかというような問題意識でございます。

 次ページでございますが、次世代の研究者、専門家の養成、大学の学部生への教育効果、アウトリーチなどを、評価基準として積極的に位置づけるべきであるということ。機関、施策やプログラム・制度によって総合的に実現され得ることを踏まえた上で、評価システムを設計し、運営すべきであるということでございます。また、次世代研究者の養成を評価項目とする際にも、単純に養成数を確認することにとどまるのではなく、ポスドクが適切な環境・条件のもとに雇用されているか、その後の就職等の状況が良好であるか等を含めて評価を行うべきである。このために資金配分機関は、ポスドクやRAの処遇、育成、キャリア支援等についてガイドラインを設定することが望まれるとしております。

 続きまして、丸2、丸3でございます。「モノから人へ、機関における個人の重視」は改革的な方針でありましたが、結果として個人を支える機関の役割が軽視されて、バランスを欠く影響を起こしているのではないかという問題意識で、また、そのために個々の研究者に過重な負担をかけている結果を招いているのではないかという問題意識でございます。

 具体的な方策といたしましては、機関や組織の評価においては、個々の研究者が研究活動を行う基盤や環境が適正に形成・維持されているかという点を重視する必要がある。研究評価関連活動や研究プロジェクト管理等に対して、組織的な支援体制が必要であろうと。また、評価の説明責任の主体を明確にして、個々で対応するところと組織で対応するところを明確にする必要があろうということでございます。また、国全体としての研究基盤をさらに活用するためには、研究実施機関として、個別組織を対象とするだけではなくて、ネットワーク・オブ・エクセレンスも対象とできることを再確認して、そのネットワーク・オブ・エクセレンスについても十分に適応可能となるような評価システム等を構築していく必要があろうということでございます。例えばすべての組織が同じ機能を保有するのではなく、特定の組織が持つ機能を、ネットワーク・オブ・エクセレンスに参画する他の組織も協働して利用することを許容するという方法も考えられるとしてございます。

 「(4)世界水準の視点での評価」ということで、世界的な視点での評価について、世界的なベンチマークの活用等、研究開発の特性に応じた世界水準の評価方法など、我が国にふさわしい評価方法を明確化する必要があるのではないかというものでございます。一部の組織では海外から評価者を招へいして、世界水準の評価が行われているところがあるが、分野における違いを十分考慮せずに、世界的に標準な評価方法を求めるのには問題があって、我が国にふさわしい評価方法の検討が必要であろうという問題意識でございます。

 具体的な方策としては、研究開発の特性や規模に応じて実施され得るよう取り組んでいくことが必要であろうということ。それは国際競争・協調の観点や研究開発水準における国際比較等の観点から評価を行うためには、そういうことが必要であろうということ。また、戦略的に海外の研究者との人的交流を維持・拡充していくことは極めて重要であるということ。我が国では、外国人を評価者に含む評価は導入されたばかりであって、率直な意見が得られる反面、研究アイデア流出の可能性などが懸念されております。そのため、当面、施策やプログラム・制度レベルや規模の大きなプロジェクトなど、特に有効と思われる部分にその実施を支援することが必要なのではないか。また、その効果・影響について常に見直しを図っていく必要があろうということでございます。世界水準の評価のあり方については継続的な調査研究が必要であろうということで、例えば論文や引用データを用いた定量的指標にベンチマークが求められる場合もあるけれども、非英語圏である我が国において、研究分野によっては適用可能性が低いことなどが考えられるので、その限界について十分に調査研究を行う必要があろうということでございます。

 以上でございます。

【平野主査】  ありがとうございます。

 委員の方々のご意見を中に入れさせていただいて、まとめられるところでは、今説明があったように取りまとめをしてきたわけでありますが、特に「評価の観点・基準・視点」という点においてご意見を賜ればと思っております。いかがでしょうか。ここは相互に関連するものですから、両括弧の1、2、3、4と意見を言っていただいてと思っておりましたが、多分関係しますので、これを取りまとめて、観点・基準・視点というところでご意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【小間委員】  机上資料2に各委員の意見が入っております。私も見せていただいて、そのとおりだと思うところが多かったのですが、中でポスドクの問題では共感する点が多くあります。小川先生はQOL、クオリティー・オブ・ライフをきちんと考えた評価をしなければいけないとおっしゃっていますが、私もそのとおりだと思います。今の状況を考えますと、ややアファーマティブに行うことが必要なぐらいの状況ではないかと強く危惧しております。

 事後評価あるいは中間評価の中にはそのような配慮があったかという視点の評価は入っているので適当だと思いますが、事前の採択のときには、あまり重要視されていません。、私が見ておりますJSTのCRESTやERATOという大きなプログラムになりますと、ポスドクを10人とかいう形で雇う計画があるのですが、特にそういう大型プロジェクトの最大の問題は、終わって突然その10人の人の職がなくなるという状況を生む仕掛けに結果的になっているものですから、ほんとうにその人たちがその後のキャリアがきちんとできるような配慮を十分しているのかどうかということは、ある程度チェックすることを意識的に行う必要があるのではないかと思っております。

 それで、私は担当している大きなプロジェクトの審査の場では実際に質問をして、その点を確認しておりますが、国としてガイドラインをつくる中では、そういう観点で、事前評価の段階でも研究代表者が雇用する研究者のキャリアを十分配慮しているかどうかをチェックする項目も入れておいたほうがいいのではないかと思います。

【平野主査】  ありがとうございました。

 大変重要な全体にかかわる提案ですから、より具体にいくと、今小間委員が言われたようなことも検討の中に入れておいて、というご意見でございます。ほかいかがでしょうか。

 どうぞ、野田委員。

【野田委員】  今の問題は非常に大きなところで、8ページの具体的な方策の中で、実はうちの研究所もポスドクが、日本の感覚ではポスドクとは研究者になるものだということがあります。そうなると、とても受け入れる余地がないのですが、最近、こういったいろいろな企画、施策に関して、その分野の専門的な知識が必要であると。企画部門やエンジニア的なという言葉があるのですが、これだけ技術が進展すると、ドクターレベルでの技術がないととてもやっていけないということで、うちではフロントやエンジニア的なところも、実はポスドクの方の受け入れ場所に考えているのです。ポスドクは必ず研究者にならなければならないというのではなくて、社会全体でそれを受け入れる、それを評価してあげるようなシステムがあればいいと感じました。

【平野主査】  ありがとうございます。はい、どうぞ。

【黒木委員】  WPIのプログラムディレクターをしている関係で、2つの重要なポイントがここに示されていると思います。

 1つは融合領域をどのように評価するかという問題です。WPIはアウトスタンディングな研究成果ですが、同時に融合した新しい研究領域を開拓することを一つの使命にしております。その融合をほんとうにどのように力を入れてやっているかというのは評価として非常に難しいわけです。融合は拠点長などそういう人がトップダウンで言ってもなかなか進むわけではなくて、ボトムアップの現場の研究者のディスカッションと、実際にプラクティスから生まれるものだと思いますが、そうするといつ生まれるかわからない。基本的に研究はすべてそうですが、特に融合は予知が不可能、アンプレディクタブルという面があります。結局どのように評価するかというと、そのための基盤をどのように整えているか、どれだけ熱意を持ってやっているかということになります。一番簡単な融合はコラボレーション、共同研究という形だろうと思いますが、これはできるのですが、それから先にほんとうに新しいものを生むことをできるかどうかを評価するのはほとんど不可能な状況です。

 それからもう一つは、国際評価というのでWPIは全部英語でやっております。英語でレポートを書いて、サイトビジットもフォローアップ委員会も全部英語で行う。北川先生が1つの拠点の委員になっておられますが、さらに研究評価には国際的なワーキンググループにして、外人が大体2-3人、日本人が3-4人ぐらいの構成で行っているわけです。その負担は非常に大変ですが、だんだん英語でなれてきて、評価するほうも大変ですが、今は、それほど問題なく進められるようになってきました。ただ、ここにも書いてありますが、研究の成果が漏れてしまうという非常に深刻な問題が一つありまして、国際評価というのは非常に有効ですが、かなり気を使う面があります。それから、もちろんその方たちを呼ぶのに相当なお金がかかります。岩瀬総括官も常に、随分一緒に出ておられますが、何かありますか。

【岩瀬総括官】 拠点の運営の仕方、評価する側も含めて、まさにそういう経験を積み重ねていって、それをぜひほかのところで水平展開できるようにお願いしたいと思います。

【平野主査】  融合分野の次への展開をどう評価の中に入れるかというあり方ですね。それからもう一つ、最後に黒木委員が言われたのは9ページの下のあたりで、国際水準で見る場合の問題だろうと思います。これについて、WPIはそうやられているし、ほかの大きいものは一部やっております。科研費の部分もその議論をいたしました、内容については徐々に経験が積まれてくるであろうと思いますが、文章としては9ページの最後のお話のところあたりでよろしいでしょうか。

【黒木委員】  ただ、国際的基準というのは絶対に必要だと思います。

【沼尾委員】  国際評価は学術振興会で特別推進の検討をさせていたときに一緒にいたのですが、漏れるということで、分野によってすごく温度差がありまして、人文系とか、私は情報系で、それほど言っていなかったのです。

【平野主査】  多分、バイオ。

【沼尾委員】  生物系あたりは相当言っておられて、結局、特別推進の場合には申請書そのものではなくて、業績を主にした別の短いサマリーみたいなものをつくっていただいて、それを外国人の方に回すという妥協的な案になりました。その結果、前回話が出ていたと思うのですが、評価される側から見ると、外国人から来たレポートがあまり有効ではないのではないかというご意見もでているのではないかと思います。これは妥協の産物でありまして、内容が漏れてはいけないというところに主眼をおいているからです。

【黒木委員】  それから、外国からワーキンググループで来られる方は何か聞き出そうとすごく張り切って来るのです。それが目的で来られるもので、質問攻めにしたりで大変みたいです。

【平野主査】  たしかグローバルCOEも海外から一部入っていたのですよね。

【山本委員】  私はグローバルCOEも、特別推進研究も審査に加わっていたのですが、海外の書面レフェリーのものはほとんど役に立たない。誉めてあるだけなので、ほとんど役に立たないというのは皆さんのおっしゃるとおりだと思います。

 私は違うことを申し上げようと思います。3番目に書いてある「挑戦的な研究を促すような評価基準」にはほんとうに賛成で、学際領域を開拓することを奨励するような評価の方針があったらいいではないかと思います。新学術領域に、融合領域ができていて、人社・生物だとか、生物・理工だとか、そのような審査が始まったのですが、審査会に行ってみると、人文系から半分、生物系から半分、委員が入って採点した結果が出ていくだけなのです。これでどうして挑戦的なものが、学際領域が、開発できるのか、評価の側も工夫しなければいけないだろうと思います。学際領域を奨励するような評価の方法をつくるのだと今ここで言うことは非常に大切なことで、それをやらないと今行っている新学術領域も掛け声倒れになって、これはあまり大したことなかったねということで終わりになってしまうと思うのです。

 それからもう一つ、先ほど小間先生が言われた件で、私もERATOの助成を受けて、ちょうど5年半ぐらいで終わりにしなければいけなかったのです。そうすると雇っていた皆さんに、どこかに就職してもらわないといけないのですが、「きみはもうクビだよ、いなくなっていいよ」というわけには絶対にいかないのです。そういう有期限の人が流動していくような文化をつくり上げる必要があること、それから、ポスドクの人が頑張れば、講師や准教授になれるという夢を持ってもらうような運営をしなければいけないわけですが、このためには評価を超えて社会制度そのもの、我が国の科学文化、科学の社会、コミュニティそのものに対して何かしなければいけないと思います。

 先ほどお話があったように、この提言をする中で、そういう提案ができればすごくいいのですが、現実には一つ、中間評価や事後評価の点で、どれだけ若い研究者、ポスドクを雇い、それから大学院生の指導、ポスドクの指導に対して力を込めているのかも評価の観点なのだということを盛り込んでいく。それは既にここに書いてあり、次世代の人材を育成するような評価の視点が必要ではないかということです。大変賛成です。こういう視点を持っていないと、結局お金をつけるだけで、ある先生がすばらしい発見をしたからそこに資金を注入しますということだけになってしまいます。研究助成を通して科学のコミュニティに対してどれだけのアウトプットがあるのか、あったかということを評価していくことも大切かと思います。運営そのものを評価することが大切だということです。

【平野主査】  ありがとうございます。

 これは、人材委員会の中でも大変大きな問題であります。ここで皆さんのご意見で書いていただいたところ、小間委員もおっしゃったように、事前評価、採択時のところと言ってもいいと思いますが、そこにおいて人材育成に関してどう対応するつもりであるか、あるいは中間評価の段階においても、ポスドクの方々をどう考えているのかという課題を、リーダーの人にはきちっと評価の項目として見ておくというご意見でよろしいですね。

【小間委員】  はい、大部分の方は大変良心的にやっていただいていますが、チェックは必要だと思います。

【平野主査】  ええ、そうだと思うのです。

【小間委員】  今おっしゃられたようにどうしようかと考えながらとっておられる方が大部分で、私自身もそういう配慮をしていたのですが、中にはそうでないと思われるような発想の方が応募されてくるのを見ますと、このまま放っておくと非常に悲惨な、せっかく有能な若者をだめにしてしまうことを競争的資金が行っていることになりかねないと危惧しています。

しばらくの間は、事前評価の段階でもチェックするぐらいのことが必要ではないかと思います。

【平野主査】  わかりました。大変重要なご意見だと思います。ここでそれを強調。

【山本委員】  少しだけ補足させていただくと、今のご意見はすごくよくて、よくアメリカのグラントを読んでいると、ポスドクAは何を行う、ポスドクBはこれこれを行う、ポスドクCはこれこれを行う、大学院生はこんなことを行うと、1人1人について任務、分担が書いてあるのです。我が国のものは、大学院生の名前を出さない、ポスドクの名前を書かないという申請書のほうが多いので、事前申請のときにそれぞれ参加してくる人の役割をきちんとするようなことも考え方かもしれないです。

【平野主査】  グローバルCOEは大学院のいい方を育てるというのは大きいのですが、同時にポスドクもあそこへ入れるわけです。もう少し広い意味で言えば、研究を通しながら若手研究者を育てるという点においても、同じようなことが言えるわけで、おそらくこれは人材委員会などにも反映してくるとも思いますが、ここでの一つの提言といいますか、内容になるかと思います。これはそういう意味で書かせていただきます。

【小林委員】  追加の情報ですが、実は人材育成の部分を評価で重視するというのはもう2世代くらい前の大綱的指針から入ってはいるのです。形の上では、例えばCOE、GCOEでもそうですし、今いろいろなところで事前審査は評価項目の一部に入っているのです。ただし、何をしたらいいか悪いかということは何も判断基準がないし、それが全体のウエートの中でどうかという基準はないので、結果的に何の意味もないという形なのです。

 私があえて提言させていただいたのは、人材育成を重視する視点を出すためにはある程度目安を示さないともうだめではないかという点です。一番最後の行に、資金配分機関はガイドラインを設定することが望まれると書いてあるのですが、これはイギリスがそうだったのです。人材委員会ではあまり受けがよくなかったのですが、イギリスも結果的にはファンディング機関のほうがそれをやったので何とかなり始めたのです。実は、各機関の自主的取組みに期待するだけではだめだったのです。ですから、そういう意味で言うと、評価の中でこういうものを扱うというのがほんとうにうまく動き始めると、非常に有効だろうとは想像できます。ぜひとも入れていただいて、実際に動いていただければいいなと思います。

【平野主査】  ありがとうございます。8ページの丸2のすぐ上のところ、私も自分でチェックを入れてありますが、この部分は重要な一つとしてここに入れさせていただくということで、よろしいでしょうか。そのほか。

 はい、どうぞ。

【伊地知委員】  既に日本の科学研究コミュニティというのは、人材を見るとかなり国際化している。理研、物材機構、各大学もそうだと思うのですが、そうすると9ページ下から5、6行目のところに、「外国人を評価者に含む評価」とあります。「外国人」というのが誤解を招くおそれがあり、「外国で活動している研究者」という意味かと思うので、例えば「外国研究者」というようにしてはいかがでしょうか。要するに日本のコミュニティはもう既に国際化しているという前提のもとで考えていったほうがいいのではないかと思う次第です。

【武田委員】  私も今、理化学研究所で国際化推進担当なのですが、おっしゃるとおりこれは非常に抵抗があるのです。理研の中で外国人は何人いるかと、国籍でカウントしますと10数%だと、これをもっと高めようと、わかりやすいのですが、どうも違うのではないかと思います。最近、幹部、理事長以下、センター長クラスには全部日本人ではないかと外部評価で言われまして、これは前回、我々がやっている世界中のサイエンティストによる理研の評価というところで言われ、宿題だというので、今回出したのが利根川進さんでした。外国人のサイエンティストたちは、「これで外国人の幹部が1人できた」と言ってくれたのです。彼のように、大学を出たらそれ以後は数十年間の研究生活は全部海外で過ごしている。

 これは余談ですが、おっしゃるとおり、私もあまり外国人、外国人と言い続けるのはどこかで――国際人というのがどうかは別として、例えば海外における研究歴が10年以上あるですとか、あるいは教育歴でもいいと思うのです。私は自分の内部では、海外での在住経験を10年以上持った者は、理研における国際人リストに入れて、今何人いるかなと、むしろそういうふうにと思っているぐらいですので、確かにこの外国人という表現そのものも、難しい話ですが誤解を生むのではないかと思います。

【平野主査】  確かに、そうですね。では、例えばここの部分は、海外で活動している研究者を評価者に含むというような書き方でいいですか。

【武田委員】  そうですね。そのほうが私はいいと思います。

【平野主査】  ノーベル賞がこの前あったように、日本国籍を持っているか持っていないかで、日本人と言えるかどうかというのはおかしな話で、その人が研究をしてきたベースがどこにあったかが重要ですよね。それは重要な問題だと思いますので、ここの部分は、最後の表記を書きかえましょう。

【小間委員】  「世界的水準の視点での評価」のところですが、ここで例えばベンチマークであるとか、今の海外で活躍している研究者による評価だという視点のほかに、もう一つ足していただきたいという提案をしたいと思います。

必ずしもベンチマークはないようなものでも、その専門家のピアの人が、世界的な観点で見たらこの仕事はトップクラスですという評価は可能です。ピアレビューの中で、国際的なスケールにしたときに、これは世界のトップに入りますとか、そういう視点を常に持つことを入れておいてもよろしいのではないかと思うのです。客観的でないからといって妙なベンチマークを無理に入れなくても、ピアの人を信じて、そのピアの人たちがこれは世界のトップであるか、世界的に見ると少し劣るというような、世界水準視点に立った評価は、いつでもできることではないかと思います。

【平野主査】  わかりました。ここでの部分は、そういう意味合いでよろしいでしょうか。

 はい、どうぞ、野田委員。

【野田委員】  今の賛成なのですが、基本的には海外の方であれ、国内の方であれ、トップであれば世界的な水準はわかるわけです。ただ私もコメントを書かせていただいたのは、特に機関、組織の評価のときには、海外の方の意見は結構参考になることがありまして、日本の狭い社会の中をどう維持するかということよりも、海外の状況も見る必要があるので、評価をするときに、先ほどの階層化、項目によってここはいろいろな見方があるということで、一律には書けない感じがします。

【平野主査】  そのほか。はい、武田委員。

【武田委員】  先ほどからの議論に反するということではないのですが、幾つかにまたがってはいるのですが、挑戦的なあるいは新たな研究領域を開拓するという要素と、融合、連携という異分野融合、このキーワードはずっと用いられてきていて、プログラムを見ていて逆に気になるのは、融合、連携をきちんと計画したプログラムはいいと言うのですが、私は、特に基礎科学の分野でノーベル賞クラスが生まれた背景や、ほんとうの意味で新しい領域を開拓した者が、あらかじめ仕組まれた融合とか連携によって生まれているのかというと、必ずしもそうでもないと思っています。

 では、どう促したらいいか、私が今具体的に関連している評価のときは、ここにも出ていますが、いつもどれだけ人を育てましたかというもののほかに、もらったお金で、あるアクティビティーをしているところに、どれだけほかの分野の人が寄ってきましたかということ。つまり、先ほどの話に逆行しますが、このお金で、ポスドク3人で、あるテーマである期間しっかり研究するぞといったときに、隣の研究室が「何やっているの、おもしろそうだね」と言ったら手弁当でも参加するですとか、ほかの学部なども含めて、何かオープンさとダイナミックな部分を持っていないと、ほんとうの意味で新しい領域といいますか、思わぬ創造というのは生まれないと思うのです。あらかじめ企画された連携、企画された融合で新しい領域ができるくらいならだれも苦労しない。むしろ「あの研究者は何かやっているけれどもちょっとのぞいてみよう」と、あるいは「のぞいてごらん」と、訪ねてきた人を受け入れるようなオープンさを、運用の面、プログラム設計の面、評価の面、どこかで入れておかないと、あらかじめ妙に計画書で医工連携とか書いてきているのは、それも必要だと思うのですが、何かオープンさとダイナミックさというのでしょうか、そういう要素をどこかに入れておく必要があるのではないかと思います。

 申しわけありません、こういう文章で入れるという具体的なところまで、あまり消化できていないのですが。

【平野主査】  わかりました。貴重なご意見なので、どこかに寄ってくるようなという文章ではいけないのですが、他分野を引きつけるような、そういう文章でいきましょう。

【武田委員】  必ずしもこのお金を使って研究した人以外から画期的な成果が出ても、それはお隣組で研究を行っていたから生まれたのですということがきちんと評価されればよいと思います。そうでないと自分がもらってきたお金だから、この範囲ならきみにはこのお金は渡せないからというクローズな運営をしてしまう。

 この間、ボストンエリアでも最近はハーバードとMITで、それがすごく活発になっていて、特に若手なのです。大学院生等が、自分の個人的な興味で、利根川研究室をのぞいたらネズミを見ていて、これに何かつけたいということを吸い込んでいくような運営、大学にはよくインフラの問題もあるかもしれませんが、何かそういう要素がないと、融合や連携など、新領域と一生懸命言ってもという気が若干しますので、その辺の活路を少し開いていただきたい。

【平野主査】  8ページのところ、個人と組織との相互連携、それらをつなぐ人の役割というのが大見出しで、自然とそのようになればよい。

【武田委員】  火つけなのですよね。このファンディングですべてを行うわけではないので、どれだけ波及効果というか、そういう意味での連携を促したかというようなことを評価の視点に入れるなどです。

【平野主査】  何かそのような項目のところを、後で入れていきましょう。

 はい、どうぞ。

【黒木委員】  評価の視点として必要性、有効性、効率性というようなことが書いてあるわけですが、フランソワ・ジャコブという遺伝学でノーベル賞をとった人が、『ハエ、マウス、ヒト』という本を書いていまして、その中で科学とは本質的に予知不可能であると記している。その後にもう一つ、別な文章が書いてあるのですが、予知不可能であることが嫌いな人というのは科学技術官僚であるというふうに。これは三笠書房から出ている。そのようにも書いてあるわけなのです。

 それで、確かにそう考えると、予知不可能からノーベル賞が生まれた面が非常に大きいのですが、予知不可能ということばかり、アンプレディクタビリティーということばかり言っていても評価の対象にはならない。問題は、そういう不可能なことも寛容するような精神であるということではないかと思うのです。あまり寛容性を強調すると、もう何でもいいと評価の視点を失ってしまうわけで、そこのバランスは難しいと思いますが、ある程度、何というか将来がわからないことに対する寛容性というものを、評価の視点としては、我々が常に心に持っていなければいけないのではないかと思っています。

【平野主査】  わかりました。ありがとうございます。今黒木委員が言われる部分は、ここの中で長期的な視点に立ってというところにも寄ってくるだろうと思います。

【黒木委員】  そうですね。

【平野主査】  はい、どうぞ。

【小林委員】  今のことと関係することで、私が一つ提案したのは、7ページの冒頭2行目にある、トランスフォーマティブというものですが、これはアメリカの議論はなかなかうまいと思っており、昔から感心して聞いていたのですが、2000年代の初頭だと思いますから、もう数年前です。NSFで盛んに議論されていたのは、まさに皆さんが今言っていたような話なのです。

 本来研究とはもともとそういうもので、今は評価でいろいろな項目があるので、その評価が達成されたかどうかで研究しているような気になってしまうのだけれども、ほんとうの研究というのは予想以上にとんでもない成果が出て、新しい分野ができてしまったとか、あるいはその研究がいろいろなほかの分野に影響を与えてしまったとかです。特に計測系の技術はそうだと思うのですが、そういう広がりが起きたり、あるいは方向性がぽんと変わったりというのは一番評価されるわけで、だからこそ引用も多くなるわけです。

 そのような性質を持っているので、その種の研究に対してもっときちんと考えていこうというのがトランスフォーマティブの概念のNSF流の議論です。そこはなかなかおもしろいと思ったので、まだ日本でなれていないこともありますから、今お話しになっていることを全部、一つコラムか何かでそういう精神だということを明確に打ち出していただく、具体例を入れたりとかするほうが、読んでいてわかりやすいのかというような感じがしました。私も言葉を入れてもらったのですが、むしろ言葉で入れるよりもコラムか何かで、その精神がわかるように書いていくのがいいという気がします。

【平野主査】  せっかくですから、ここで評価基準を作成するというご提案になって締めていますので、必要だったらここについての背景を入れておくと、ほかの方が読まれても、ここ以外の委員の方々、先生のお話がわかってくると思います。ほかの方にはわかりやすいかもしれません。

 事務局で小林先生から簡単な何かいただいて、ボックスの中に用語説明でないですが、その背景を入れるということで。これは評価する人は大変ですが、大変重要です。

【小林委員】  アメリカの場合、実績があるのでやりやすいかもしれません。

【平野主査】  日本でもそうです。文科が公表していますが、例えば科学研究費補助金の採択から研究が発展してきた例示ですね、京大の山中先生の例もそうですが、もとをたどればここから出たのだというのは重要ですので、そういう意味で事例を入れればいいのかもしれない。

【小林委員】  実は、JSTもそういう評価をやっているはずです。

もう既に始めているのです。もう一つ重要なことは、アメリカではそういうことが重要だからというので、お金もそのように使えるようにしましょうというふうにしているのです。

【武田委員】  使えるようにしている。

【小林委員】  そこが日本と少し違うところです。協力しますので。

【小間委員】  今年から幾つかの競争的資金の中に、成果が必ずしも予測できないといいますか、もしかすると失敗するかもしれないが大きな成果を生む可能性のある課題を、あるパーセンテージ採択できるようにすることが総合科学技術会議から提案されて、JSTでも、学振でもそういうプログラムが入ったのではないかと思います。

【沼尾委員】  そうですね、挑戦的萌芽研究では、一部の審査員だけがサポートしただけでも、リスクを取って採択するというシステムを構築しています。

【平野主査】  挑戦的萌芽研究ね。

【小間委員】  既に少し試みがなされているということですね。

【小川委員】  つけ加えさせていただきたいのですが、次世代育成のことで、先ほど多くの先生がポスドクや院生の処遇や、就職先のことに関してご意見をくださって、すごく心強く思ったのですが、そのときにポスドクの後にまた任期つきのポスドクという形の就職が望ましいのかというと、いつまでもそれではほんとうに人生の生活設計ができないこともあります。特にそういう場合、日本の社会では、民間企業が博士課程を経た人材をなかなか受け入れてくれないことがあるので、社会を変えていかなければいけないという意味でも、施策、政策レベルや、プログラムレベルでの評価もあわせて行っていただいたほうが、個別の研究者や個別の課題で評価だけをやろうとしても、それは非常に苦しいことになると思います。

 特に任期つきのポジションをずっと経ていくときに、一番しわ寄せ、その犠牲になるのは女性のポスドクで大変厳しい状況に置かれています。もちろん男性もそうなのですが、割合として調べると明らかに倍以上女性のほうが高い比率で、そのような困難に直面しているようです。最近の10年間ぐらいで調べてみると、大学院生の割合で女子学生が非常にふえてきていまして、分野による差はありますが、自然科学だと例外なくどの分野でもふえていて、特に生命科学分野だと大学院生の3人に1人は女性という状況ですので、ポスドクの割合もここ数年のうちにそのぐらいの比率になっていっていると思います。

 任期つきのポジションをずっと続けていくと、非常に困難なのは特に育児の時期に当たった人が、子供を抱えて日本の中でどこでもいいから次のポジションを探すなどは大変しにくいこともありますので、ほんとうの意味で次世代育成にもつながっていくのですが、パーマネントな就職先を開拓していただくことも視点に含めていただいて、8ページ上のほうに書いてあるキャリア支援策についてのガイドラインを設定するところに、女性のポスドク、女性の人材育成にも配慮するという視点を加えていただけたらと思います。

【平野主査】  どうもありがとうございます。はい、どうぞ。

【阿部委員】  私も今の意見と同じですが、イギリスではもう自然科学の研究者は5割以上が女性になっていることが報告されています。日本もそのように向かっているということで、女性研究者、特にちょうど20代後半というのは、今小川先生がおっしゃったように育児だとかいろいろなことがかかわってきます。確かにそういう視点を持っていただけたらと思うのですが、今回の評価のシステムが、評価個々はいろいろな視点でやられていても、それが具体的に政策あるいはプロジェクトの立案というところに生かされないと、なかなか解決できないと思うのです。

 それで、今回ここに書かれていることはすべてもっともで、私は大賛成で、すばらしいと思います。しかし、ここで改革せざるを得ないことは、先程から皆さんが「システムをやっても文化が育たない」とおっしゃっているのですが、私もそのとおりで、こういったシステムを何らかの形で具体的に具現化しないとどうにもならなくて、その具現化する方法がここにはない。こういうことを行うとおのおのの人材が育って、そのうちに具現化ができますよということだと思うのですが、ここの部会はシステムをどうするかということだから、システムの個々について、今より現状よりいい方法を書けば、あるいはまとめればそれでいいのだと思いますが、それが具体的に、ポスドクの数をふやすことができるかとか、あるいはその中の女性研究者を具体的に数年のうちにふやすことができるかというと、なかなか難しい。

 だから、システムの中にある程度の目標、達成目標を書かない限りはいけないのではないか。評価の中に、先ほどからポスドクは何人雇いましたか、事後調査の段階で、その方々が、その後の生活として研究者として成功されていますかというようなことを、ある程度きちんと、そのカウントによって評価の数値があるということを具体的に行っていかない限りは、なかなかそういう理想には近づいていかないような気がいたします。

 では、そういうときに事後調査をして、その政策に対していいかどうかを判断しようとしたら、実際に5年間やって10年目で事後調査をして、そこで評価ができるかというと、最低でも10年ぐらいはなければいけないと思うのですが、幾つかのプロジェクトはもう10年目には違うプロジェクトに変わっているのです。学術創生というようなプログラムももう完全に名前が変わってしまって、そうだとしたら政策あるいはプロジェクトも、少なくとも10年単位ぐらいで続けられるようなことにしないと、五、六年たっておしまいになってまた次を行うということでは、このプロジェクトでどれだけ若者が育ちましたかということの調査、評価をしても、そのときにはそのプロジェクトはないわけです。

 そういう例が結構多いのではないかと思いまして、私自身は数値目標を挙げること、その数値を評価の中にきちんと表すこと、一方ではこういった評価のシステムが政策に反映されるためには、その評価を少し長い目で見てというような仕方もどこかで仕組みをつくって、その仕組みがいいよということをどこかで言わない限りは――今のように短期間で評価して、短期間で政策が変わってということになる。そこに一貫して根底に流れているものが引き継がれればいいのですが、なかなかそうでないプロジェクトもあり、この評価システムにどういう形でそれを入れられるかというのがわからないのですが、そういう視点が必要ではないかと思います。

【平野主査】  どうもありがとうございます。おそらく今、より具体な部分はそれぞれのプログラムのところで設定されるようにこちらから中で提案するということではないかと思いますが、何%入れること、ということはこの提言では出してもあまり一般化できないと思います。今のご質問に関連するとしたら、3ページの上のところで、先ほども少しお話ししましたが、施策やプログラム・制度の評価において得られた知見や課題が、国全体の政策面に反映されることを期待する。その階層的な部分でこれを位置づけるというところで、このシステム改善の位置を強調するというところかと思いますが、よろしいでしょうか。

 もしその後さらに具体案がありましたらまた教えていただくことにして、ここの項目はこの程度で、皆さんよろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは、続きまして、「2.効果的・効率的な評価手法」について、よろしくお願いします。

【苫米地評価推進室長】  それでは、「2.効果的・効率的な評価手法」についてでございます。

 現状の問題認識といたしましては、評価における過重な負担を回避するために、統合化・簡素化等の合理化を図る取り組みが行われているが、評価を実施する目的が見えずに、評価がどのように活用されるかわからないといった徒労感があるのではないかということが指摘されている。また、過重な負担が一部の者にかかっているのではないかというのが問題意識でございます。

 具体的な方策といたしましては、評価の目的を明確にすることが重要であり、先に出てきました「はじめに」の基本的考え方の中で記載してございますが、「1.目的に応じた評価システムの再構築」を踏まえて、評価結果の活用と責任主体等を明確にしたシステム構築が必要であろうということでございます。また、施策等、機関のマネジメントにおけるPDCAサイクルを回すことが重要であるといって、評価をマネジメントに生かすことを奨励する。また、1の2.の「基本的考え方」がございますが、階層に関することも踏まえまして、上位の目的の実現の点から、施策やプログラム・制度の評価を推進するということでございます。大綱的指針では、プロジェクトの評価について、研究開発成果を切れ目なくつなげていくということで、事後評価を終了する前に適切な時期に実施することとされていますが、結果として評価が頻繁になって過重負担となっているのではないかというような現状が言われているところでございますので、プログラム・制度や研究開発プロジェクトの実状に応じた対応が可能なシステムを再考する必要があるのではないかということでございます。

 過重な負担を回避する手段として、具体的に丸1から丸6として考えられるものを記載させていただいております。インフラデータの整備でございますとか、丸2、適当な評価期間を設定し、アドバイザリー委員会などによるモニタリング活動を評価活動の一形態として積極的にとらえて推進するでありますとか、配分額に応じた評価の過重を調整する。例えば配分額の少ないプロジェクト、プログラム・制度についてはできるだけ評価を簡素化すること、配分額の大きなものについてはそれに見合う細かい厳格な評価を行うというようなことが考えられる。また、評価者と被評価者の議論によって、評価の重点項目を経時的に設定すること、あるいは事前、中間、事後の評価で共通に使えるフォーマットの工夫、研究拠点あるいは研究機関において実施される規模の大きなプロジェクト等のモニタリングの場合には、site visitを活用することが考えられるということでございます。

 以上でございます。

【平野主査】  どうもありがとうございます。

 今の説明について、これも委員の方々のご意見をこの中に入れさせていただいておりますが、いかがでしょうか。ご意見があったらどうぞ、ご自由にお願いしたいと思います。

【山本委員】  ほんとうにここに書いてあるとおりですが、ただ、効率的ということと両立しないかもしれないのですが、評価は時間もかかればお金もかかって、それなりの投資も必要なのだと思います。効率的であることは大切ですが、評価に対して投資すべきであることを明快にしておくことが必要ではないかと思うのです。私もここに徒労感とかいろいろなことを書いたのですが、ある意味では評価に投資して、そのための人材を育成することも大切なんだ、だからここに投資していい評価システムをつくり上げるのだと、それが非常に重要な研究のインフラになるのだということも重要な視点になるのではないかと思います。

【平野主査】  ありがとうございます。

 もう一歩踏み込んで、研究の質の向上のためにも評価に投資をすべきであるという内容でよろしいですね。

【山本委員】  そのとおりです。

【平野主査】  そのほかいかがでしょうか。はい、どうぞ。

【黒木委員】  最近の裁判で、裁判員制度の導入のために短くしなければならないというので、弁護側と検察側があらかじめ話し合って要点整理をする。これはどこを中心として話して、ここはもうしなくてもいいだろうということをするのだそうです。ですから、この丸4に書いてあるのですが、評価者と被評価者の議論により、評価の重点項目を経時的に設定するというのは、評価の負担をかなり減らすという意味で重要な方法ではないかと思います。

【平野主査】  ありがとうございます。

 私のところの機構もそうでありますが、評価をする側、される側が意思の統一といいますか、いかに重要点を理解しているかが大事だというのを痛切に思っております。ここの点も大事だと思いますが、そのほかいかがでしょうか。

 はい、どうぞ。

【小間委員】  研究者にとってみると成果報告とか、終了報告を相当細かく求められているのですけれども、それは制度の改革には役に立つだろうと思いますが、書いた本人には、今はあまりフィードバックされていない。それが研究者にとって大変な徒労感の原因になっています。、以前に大きな予算でなされた研究に対する評価がどうであったかが、次の大きな予算をとるときにある程度きちんと反映されるシステムをつくっていかないと、いつまでたっても徒労感だけが残るのではないかという気がします。事後評価のものが次の事前評価に生かされるようにということは、総合科学技術会議からも既に出されていたかと思いますが、この中にも書いていただくのが適当ではないかと思います。

【平野主査】  それは重要なことですね。ここへ入れるようにいたします。そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは、続きましては「研究開発評価に係わる専門人材の育成」のところでありますが、これについてまず事務局から説明をしてもらいます。

【苫米地評価推進室長】  「3.研究開発評価に係わる専門人材の育成」でございます。

 (1)「評価者、評価専門人材、評価の専門家」でございます。問題意識といたしましては、評価に従事する者が質・量とも不十分であるため、過重な負担が一部の者にかかっているのではないか。また、評価機関、被評価機関の双方において、人材の集積や人材育成の体制整備が進んでいないのではないか。また、施策やプログラム・制度評価や政策評価を充実していく上では、評価の専門家の役割が重要になるが、極めて少ないというような問題意識でございます。

 次ページをごらんいただきまして、具体的な方策としまして、まず評価者でございますが、退職した研究者を評価者として活用する可能性でありますとか、適否についての調査、検討が必要なのではないか。また、ピアレビューに当たる一段審査員などを想定した研修の機会をつくるなど、評価能力の向上方法等の視点からの講義などによる教育を行うことが必要なのではないか。また、評価者からの相談に応じる体制を整備し、評価方法の改良にフィードバックすることが必要なのではないか。また、事前、中間、事後評価の途中で評価者が変わるような可能性などを含めると、一貫性を持たせるために、1、2名が責任を持って継続して行う仕組みを確立する必要があるのではないか。

 評価専門人材でございますが、評価とともに、研究戦略・企画、プロジェクト管理・運営など戦略的なマネジメントを含めた研究支援体制全般のあり方を検討して、あわせて評価に関連する専門的知見と経験を有するマネジメント人材、研究支援人材の育成とキャリアパスの確立に向けた検討を行う必要があるのではないか。また、大学等において、評価室の専門人材でありますとか、資金配分機関における専門人材の交流を行うなど、人材の高度化を行う仕組みを検討する必要があるだろうということでございます。

 評価の専門家でございますが、評価に関連する専門領域の研究者に、専門的な調査研究に関与してもらうなどして、研究評価の方法や理論の高度化を図ったり、将来の専門人材の養成を図ることを検討する必要があるのではないか。また、評価支援組織でございますが、科学的なデータを種々の観点から作成して提供する、評価者の系統的・短期的な教育育成に当たって、また一般への啓蒙活動を行う評価サポート機関の設置の可能性について検討する必要があるということでございます。

 (2)の「PD、PO制度改革」でございます。PD、POの多くは非常勤であることから、2~3年でかわってしまうために、役割が十分に果たせていないのではないかというような問題意識でございます。また、キャリアパスを形成することが必要なのではないかという問題点でございます。

 具体的な方策としましては、PD、POは、常勤のPOの導入でありますとか、非常勤POと常勤POの協力による実施方式の構築など、競争的資金制度の特性に応じた体制強化・確立、POらに大胆な権限と責任を持たせるケースも検討されてよいのではないか。また、PD、POの経験をキャリアパスとして評価する仕組みを明確化して、定着させる必要があるのではないかということでございます。

 この中におきまして、私どもといたしましては、特に(1)のところでございますが、評価専門人材において全体的、戦略的なマネジメントを含めた評価システムを動かすようなマネジメント人材の育成というものについて、職業として確立させるでありますとか、あるいは国としてそういうものに対してどう支援するかということについて、先生方の具体的なお考え等をお聞かせいただければ幸いであると考えてございますので、よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

【平野主査】  どうもありがとうございます。

 この項目で、加えて最後にお話がありました、マネジメント人材、研究支援人材の育成、キャリアパスの確立というあたりを含めてご意見を賜ればと思っております。いかがでしょうか。

 はい、どうぞ。

【北川委員】  JSTの科学振興調整室でプログラムオフィサーをしているのですが、黒木先生が書かれている意見と基本的には同じですが、研究評価をする人の研究業績にかなりすばらしいものがないと、被評価者は信用しないでしょうし、もちろん現場も知っていないとだめなので、評価する専門職の人を育てるというのは基本無理な話かもしれないです。

 ただ、実際問題として必要であると私は思いますし、JSTのプログラムオフィサーの場合は、振興調整費のほうですが、常勤のプログラムオフィサーは全部企業から来ている人です。ところが、振興調整費で扱っているものというのは、最近はほとんど大学のシステム改革ものですから、企業から出向している常勤のプログラムオフィサー、現場を知らない人がやっているわけです。果たしてほんとうにそれでいいのかと思います。それに関して前の生川戦略官と私は議論したのです。常勤POに大学から出向させる者を出さないとだめだということを私は申し上げたのですが、「では、北川先生出ますか」と言われて、実際問題、いや、ちょっとというのがあるのです。

 だから、どうすればいいかというと、40代前半ぐらいで十分な研究業績のある人に、非常勤でいいのですが、そのかわりかなりの給料を払う。安い給料ではなくて、それでやってもらう。私も丸5年行っていますが、今もらっている給料は学振のものよりはいいとは思いますが、20万円弱もらえるのです。でも我慢して行っています。これがたかだか数万円だったら完全に見合わないですね。というのは、ゆりかごから墓場まで行うわけです。事前審査から中間評価、課題管理も行います。サイトビジットも頻繁に行きます。私は6課題程持っているのですが、年間20回程現地調査に行きますから、事後評価、追跡評価も行います。ものすごく書類を読まないといけないし、時間を使われるのですが、それに見合うものをしっかりと出せば、メリットもあるのです。お金だけではなくて、そういう評価システムをある程度経験すると、こういう申請書を書けば通りやすくなるなど、それはあるのです。

 だから、40代の前半でわりと業績があって優秀な、特に教授のほうがいいと私は思います。准教授の人は少なくともプロモーションをいろいろ考えないといけないから大変ですが、教授の場合は一応プロモーションはしていますので、そういう人を起用して、評価の専門家をしっかり若いときから英才教育をしておくことが重要かと思います。私はもう5年近くやってきて、ほかに得るものもあったと思います。ただ、大変なのは大変です。私は、先ほど言われた評価にぜいたくにというのは必要だと思います。

【山本委員】  私は先ほど評価に投資する必要があると申し上げました。それからここの中で出てきていることは、その評価の結果を循環的に生かしていき、せっかくみんなが時間を使い評価をするのだから、採択もしくは非採択だけを決めるのではなく、批判に答えて直して、もっといい提案をしてきたら、そうしたら通るよ、2回から3回やれば通るかもしれないというふうに活かしていくようなことが大切であると思います。申請者の方もだめだと言われたら、それを審査員がよくないからとか、あの人は専門じゃないからとか、バイアスがあるからというようなことではなく、一たん評価は評価として引き受けるような姿勢も必要だと思います。

 そういう(4番目の項目の)評価の文化につながるようなことが大切だと思います。私は評価の本質はピアレビューだと思うのです。見識のないことを言う人や、バイアスのかかった人たちも含んだピアレビューの中で、交通整理がきちんとできて、いいものを取り上げてフィードバックできて、それで提案の質を高めていく、ひいては私どもの科学研究のレベルを高めていくような審査をつくり上げることが大切と思います。その意味では、ある程度の科学トレーニングを受けた人で交通整理をできる、評価についての知識は深い、どうやって評価していったらいいか、クレームに対してはどのようにとらえるべきなのかというようなことを良く知っている専門人材を養成していくべきです。オン・ザ・ジョブだけだとあるバイアスがかかってきますので、オン・ザ・ジョブでなくて大学院の専門教育としてそういうものをつくり上げていくことが、理想として大切なのではないかと思うのです。

 投資をしていい評価をする、たとえネガティブな評価だったとしても、評価の結果を循環させて有効に活用する。研究者の側はそういう評価の結果を受け入れるような自分たちの文化を持つ。この提言を通して、そういうことを成し遂げられたらいいかと思います。

【平野主査】  今の北川委員のご発言の関係でお話を整理いたしますと、私も個人的にはそう思っていましたが、おそらく研究の部分をきちんと評価し、アドバイスをするについては、あるバックグラウンドがないと、研究者はプライドが高いですから、あなたに言われたくないと裏で思うのはよくわかるのです。あえて言えば、これは名古屋大学では対応したのですが、そういう方が東京に出てくるときに、かなりの頻度で出なければいけない、研究室の安全をも考えて、必ず助教を本部がつける、というように補助していました。今はどのようになったかわかりません。実験室を含めて、ものすごく安全面で心配なのです。特に実験者については、そういう方を本部からきちんと選んで採用していいということでもしないと、多分邦子為に一般的な任務を引き受けたくなくなります。それが1つ。

 それからもう一つは、今言われるのは研究そのものでなく、評価をマネージするというのか、そのような人を育てる必要があるという意味ですね。

【山本委員】  ええ、そういう意味です。

【平野主査】  わかりました。

【沼尾委員】  その意味では学術振興会のプログラムオフィサーは、直接評価するというよりはメタなことを行うといいますか、評価者を選び、それをマネージするということでいろいろ議論しています。そういう意味では、今の山本先生のご意見に近いという感じがします。学術振興会でも常勤的主任研究員は、かなり負担が大きいので、先ほど言われた程度の給料を払い、特任教員の採用に使える研究費をつけています。仕事の内容は、ごくわずかの課題を見るのではなくて、全般を見るような形であり、評価をメタにマネージする仕事が主です。

【山本委員】  先ほど日本の企業社会が博士を持った人を採用しないということが問題になったのですが、科学政策の方も、博士をなかなか採用されないのです。筑波大学で学位をとった方の中には、学術振興会の評価担当に就職された方もおられて、博士の有力な就職先の一つとしてこういう科学行政もあり、それで、交通整理のような役割を行うというのも考えていく必要があるのではないかと思います。

【沼尾委員】  学振では分析調査員というポストをつくって、博士の方を雇用して分析しています。分析にはエキスパートが必要です。今、情報系ではそういう分析関係ではいろいろな技術が出てきているので、そういったものがわかるような方を採用するのが有効です。科学的なデータを種々の観点から作成し、提供するという観点でも博士の方が適しています。もちろん単純な分析をまず済ませる必要がありますが、最新の技術を駆使して、いろいろな観点で分析される方が要ると思います。

【北川委員】  そのほかでも最近、ドクターをとった人を結構雇っています。あれは非常にいいことだと思います。

【岩瀬総括官】  最後の説明で申し上げたものは、まさに今みたいな議論をしていただきたいという趣旨なのです。我々がそういうことをあえて最後に説明で申し上げている趣旨は、大学等は特にそうだと思うのですが、教育、研究をするプロフェッショナルと、後は事務をする人からなっているというのが伝統的なイメージです。そうではなくて、いろいろな意味でのプロフェッショナル集団にならなければいけなくて、そうしたときにまさに研究あるいは組織のマネジメントのプロフェッショナル、今からそういう層が必要だと思うのです。そういうコンテクストの中で、この評価のプロフェッショナルという議論をしていただけたらありがたいということで、最後に説明してもらったのですが、そういう意味で今の議論を深めていただくと大変参考になります。

【平野主査】  はい、どうぞ。

【小間委員】  ここでの提案の仕方の問題ですが、評価者というひとくくりではなくて、サイエンティフィックな部分の評価をする評価者と、それ以外のところを評価する評価者に分けて考える必要があると思います。サイエンス以外のところを評価する専門家を養成するシステムが必要だと思いますが、サイエンティフィックな評価については第一線の研究者によるピア評価が、評価される側の研究者が最も納得のいく方法ですから、第一線の研究者をなるべく負担なくローテーションするかというシステムを作ることが必要であると思います。

【平野主査】  そうですね。

【小間委員】  サイエンス以外の部分をきちんと評価できる専門家のつくり方については、今までとは全然違う視点でやらなくてはいけない。上述の2つの評価者の二人三脚で、初めていい評価ができることになるのだと思うのです。それを書いてもらうといいですね。

【平野主査】  そういう点で私が先ほど言ったのは、評価マネジメントと言っていいかどうか。評価者を含めたマネジメントをする人、あるいは研究支援をする人というのは育てておく必要があるのではないかという意味でよろしいですか。

【小間委員】  そのとおりです。

【平野主査】  わかりました。これは機構でも同じようなことを私も言っていまして、各大学は必ず評価を受けなければいけない。であれば各大学にそういうマネージする専門家を置くと、教員の負担がぐっと減るということを文化として育てていくならば、評価室等を設けて、そういう人が各大学にいるべきではないかということを私も言っているし、今、機構もそういう人を育てようと言っているのです。多分、この研究面にも同じようなことが言えるのではないかと思っております。

【阿部委員】  そういう意味でこの評価者のところで、ピアレビューする方はいろいろな方がいて、先ほど第一線の研究教授の方というのですが、現状ではたとえ助教をつけていただいても、そういう仕事をしている間は研究室が心配な方というのは、1人ぐらいつけてもらってもなかなか難しいと思うのです。自分が少々いなくても研究室がかなりきちんと回っていけるような方でないと、なかなか心置きなく、時間をかけていいレビューはできないと思うのです。ですから、お金を使いなさいというのは大事ですが、でもそういう人がものすごく少ないことを考えてみると、アメリカのようにある程度大きい予算をとって、そしてアメリカの場合は退職がないわけで、ファンドをとる限りはずっといらっしゃるのです。

 つまり日本で言うならば退職された第一線の研究者で、ピアレビューが現役と同じようにできる、しかも大所高所に立って、そういった視点から次の人材も育てられる人がいらっしゃると思うので、この「退職した研究者」という表現がいいかどうかは別にして、ピアレビューに耐え得る人というのは、今の日本の現状では、そういう人を活用せざるを得ないのではないかと私自身は思います。お金を使えということの一つなのですが。

【山本委員】  ただ、60歳を過ぎて来られた方にも、革新的な方はもちろんおられると思うのですが、どちらかというと、私のころはこうだったと自分の学問を大切にする方も多いと思うのです。ですから、審査はピアレビューで第一線の人が切磋琢磨して行うべきだと思うのです。ところが、その審査を交通整理する方がいない。例えば科研費の審査会に行くと、学術研究助成課の役人の方が座っておられて、あとはパートタイムで准教授クラスの人とかが来て助けておられるのですが、そこに専門家で、審査を専門とする、しかも学位を持ったような人が司会進行をし、手伝うことが大切と思います。政策的な面はもちろん文科省の人とつなぐ。それでピアレビューの指揮は、研究者の方の負担が一番少ないように設計して、事務的なところは行政サイドが行うという、効率のいい制度を設計するためには、絶対に専門家を養成していく以外にないと思うのです。

 NIHは非常に有効的にそういう専門家をリクルートしてきて、――もう研究はやめたか、もしくは最初に大学院に入って学位をとるときからそういう目的でやっている人を上手にリクルートして、大量のマネジメントの専門家を抱えているわけです。私たちも投資して、そういう人を養成し、雇っていく。しかもその方たちのキャリアパスもきちんとつけていくことをそろそろ考える時期です。評価は文化です。学問、科学も文化です。評価という一つの立派な文化をつくり上げると、私たちの科学はもっと進むのだという視点です。

【阿部委員】  私も大賛成です。

【山本委員】  人材活用はすごくいいと思うのですが。

【阿部委員】  ただ、いきなりそういかないので、過渡期はどうするかという。

【平野主査】  はい、どうぞ。

【武田委員】  最初の私のコメントに戻るようで――先ほどコメントして具体的に書くにはどうしたらいいかと考えていたら今の議論が出て、総括官の話を含めて、「はじめに」の部分でいえば、評価システムは研究開発の質向上ですとか人材育成に深くかかわって、それを通じて日本の科学技術研究コミュニティの活力に大きな影響を及ぼすのであるという視点を持って評価システムを考えるというのが、最初にありきです。次の各論で具体的に言ったときに、それはいろいろ関連するのですが、まさに今専門人材の話が出ますと、日本のアカデミズムというのは、先ほど言われたように、教員と職員しかいないというところをまず改革すべきです。日本の科学研究コミュニティーの根本的な問題点があると思います。私はあえて人材の流動性と価値観の多様性という軸でもって、日本の科学技術コミュニティをもう少し改革すべきと思います。これは勝手な持論ですから、書く書かないは別として――そうしたときに人材の流動性は、例えば産学官の間でも、先ほど企業の人は何も知らない、もっと企業の人間も学会に来たり、学問の世界の人、あるいは環境の方、今どんどんそれは始まっていますから、問題だというよりはもう動き始めている。価値観の多様性も、これも今だんだん改革が進んでいるわけです。つまり学問においてすばらしい業績を上げた方が学部長になる。学部長の中から何がしかで学長になるという旧来のシステムが、今少し変わりつつあります。

 私は今理研にいて、国外から、この間もドイツでノーベル賞をとったシニアな方ですが、昼飯のときに「どうしたらノーベル賞をとれますか」と言ったら、「私にとってターニングポイントは、あるとき学部長にならないかと声をかけられたときに断ったことだ」と。つまり欧米においてはディーンを行うということは、もう研究のプロフェッショナルとしてのキャリアは捨てて、今度はマネジメントに行くというキャリアを選ぶことがあるのです。

 今大きな流れを言いましたが、そういう意味の専門人材で言えば、アカデミズムの世界もそういう知財を見るだとか、あるいはプロジェクトを何とかするというのもそれなりの専門性が磨かれていってこそ行くわけです。何かそういう要素が――いろいろな科学コミュニティを改革する視点からすると、評価システムにおいても評価者というのは、科研費みたいなところはほんとうにそういう科学者同士が、ある意味では評価する人間も評価されるという立場で行うし、もう少しプログラムであるとか、プロジェクトぐらいの評価になると、必ずしもそういうピアレビューのときに期待されるような人でないとか、何かそういうディフィニションにだんだん明確化していくことが必要ではないかという気がいたします。

 大きく広げると、まとめがどうなるかわかりませんが。

【平野主査】  ありがとうございます。今の武田委員のご意見は、次の「評価文化の醸成」のところにもかかわることだと思います。

【武田委員】  そうですね、全部かかっていますね。

【平野主査】  一番初めの「まえがき」の第1行目に入れる部分もありますので、それを整理してここに反映するようにしたいと思います。まだお伺いしたいことがいっぱいだろうとは思いますが、「4.評価文化の醸成」はきょううまく当たれませんでした。ここは短いのですが、お目通しいただき、特にこの点についてはご意見いただきたいと思います。

【苫米地評価推進室長】  7月6日までにご意見を賜ればと思います。

【平野主査】  それでは、事務局から、また改めてお願いいたします。4番目の評価文化のところ、研究の評価システムにおいての評価文化の部分を中心にまずご意見をいただき、そのほか今日のこれまでのところについて、これはぜひ書き込んでおいていただきたい、提言の中に入れたいということがありましたら、それはまた加えて2段でご意見を伺うようにいたしますので、前回と同じように、メールで失礼ですが、ご示唆いただければと思っております。どうぞよろしくお願いします。7月6日までに改めてメールでお願いしますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、あと事務局から連絡をよろしく。

【沼田計画官補佐】  事務局から3点ほどご連絡させていただきます。次回でございますけれども、7月28日火曜日、14時から16時、場所は文部科学省3F2特別会議室で開催いたします。正式なご案内は改めて送付させていただきます。また、今回の議事録につきましては、作成後各委員にご確認をいただいて、ホームページに公表させていただきます。3つ目でございますが、本日の資料につきましては、机の上にお名前を書いて置いていただければ後日郵送させていただきます。

 以上でございます。

【平野主査】  どうもありがとうございます。また、宿題とお願いをしておりますが、よろしくお願いします。

── 了 ──

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科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)