原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力基盤強化作業部会(第3回) 議事要旨

1.日時

平成21年6月4日(木曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 旧文部省庁舎2階 第1会議室

3.出席者

委員

田中主査、市村委員、井上委員、小川委員、小澤委員、高橋委員、丹沢委員、長﨑委員、服部委員、村上委員、山名委員
(外部有識者)
日立製作所株式会社研究開発本部 城石主管研究長、日本原燃株式会社経営企画室 田中企画部長

文部科学省

文部科学省櫻井大臣官房審議官(研究開発局担当)、坪井開発企画課長、山野原子力計画課長、中澤原子力計画課課長補佐、稲田原子力研究開発課課長補佐

4.議事要旨

【田中主査】

 それでは、第3回原子力基盤強化作業部会を開催したいと思います。本日はお忙しいところをありがとうございます。

 まず、本日の議題や配付資料につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 本日のメインテーマはいわゆる技術移転関係でございまして、それと人材を少しということでございます。資料としましては、資料1から資料6、あと資料番号はついていませんが、山名委員の資料1枚が配られてございます。

 それで、資料1は、技術移転関係で、まず市村委員から日本原子力研究開発機構(原子力機構)のお立場というか、原子力機構の代表というわけでもないのですが、ご説明いただきます。資料2が、電力関係ということで、本日は日本原燃の田中企画部長に来ていただいております。資料3と資料4がメーカーの立場ということで、資料3のほうは、原子力ではない他の事例でございますが、産学連携などでうまくいった事例紹介、資料4が小澤委員からの論点ペーパー、そしてそれらを受けていろいろな議論をしようということで、事務局で論点をまとめたものが資料5でございます。また、資料6が、長﨑委員から人材関係の大学の立場からということで資料を用意していただいてございます。

 以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございます。

 それでは、早速でございますが、議題の(1)「原子力技術の戦略的な事業化への移行についての検討」に入りたいと思います。

 まず初めに、原子力機構の市村委員から、「新技術の実用化を実現するためにはどうすべきか-再処理、ウラン濃縮に関するこれまでの経験を踏まえて-」につきましてご説明をお願いいたします。

【市村委員】

 それでは、お手元の資料に基づいてご説明したいと思います。

 表紙をめくっていただいて、1枚目でございますが、これまでの技術開発の経緯を説明すると非常に時間がかかりますので、その次のページが少し詳しい各項目の説明になっていますので、恐れ入りますがこの部分は、端折った説明にさせていただきます。

 まず再処理に関しましては、ご存じのように、これは1961年に我が国が海外の再処理に関して調査団を派遣しまして、それに基づいて海外からの技術導入で、パイロットプラントではなくて、実際の実規模のプラントの建設をやろうということになりました。そこで、1971年に東海再処理工場を着工いたしまして、あと、そこに書いてあるように、これはフランス技術の導入であったわけですが、それを動かすためには、いろいろ国内の技術を使って、例えば放出放射能量を下げるための技術だとか、あと、これは東海工場が実際に操業に入る前に、日本とアメリカの間の日米交渉というのがございまして、ここでプルトニウムの単体抽出では駄目だという話でいろいろ交渉があって、プルトニウムの混合転換という技術を開発しまして、それを使えるようにしたとか、あと、ウラン脱硝に関しては、これは元々はフランスの技術を入れて動かそうとしたのですが、うまくいかなくて、相当苦労して動くようにしたとか、あと、ガラス固化技術の開発とかいったことを進めて、元々の東海再処理工場に追加しながらこれまで運転をしてきたということでございます。

 そういった中で、1980年代にそれまでの東海再処理工場等で培った経験から、年間400トンの再処理という容量のRP400という再処理プラントの設計研究を行っています。これはそれを民間の再処理工場に使えないかということで提案をしたのですが、結局これは採用されておりません。

 あと、それらと並行しまして、高速増殖炉(FBR)燃料の再処理技術開発というのを1970年代ぐらいからずっとやってきておりまして、これについては実際の使用済燃料を使用して、その試験をするためのRETFという施設を設計・建設をしておりますが、これは未完の状態で終わっております。

 あと、下のほうに日本原燃の話が書いてありますが、これは後で日本原燃の田中部長のほうからいろいろお話があると思いますので、ここはちょっと省かせていただきますが、いずれにしても、そういった東海再処理工場でのいろいろ得られた知見を基に、日本原燃のほうに、そこにあるような人的な支援、それから技術情報の提供等を行ってきているということでございます。

 次に3枚目ですが、それを整理したのがこのページでございまして、一番左にありますように、現状というところでちょっと整理をしましたが、まずご説明しましたように東海再処理工場(TRP)、これはフランスから導入した技術でした。ただ、導入したものの、そのまま順調に動くというわけではなくて、いろいろ安定運転に向けた技術開発というのが必要で、これにまず集中してきたということです。したがって、その先の商用化のための技術開発ということでは取り組んできていないというところが1つございます。

 それから、先ほど言いましたように商用化の技術開発はやらなかったとはいえ、RP400という設計研究はやったのですが、結果的に六ヶ所の再処理工場(RRP)は主工程の部分はフランスから導入ということになっています。

 したがって、そういうような状況ですので、現在再処理プラント全体をエンジニアリングする能力というのは国内に今ないという状況にございます。

 左の下に少し課題ということで書きましたが、再処理に関して言いますと、これはそこに書いてあるように一つ特殊性があるということを考えないといけないかと思います。まず、再処理プラントの建設機会が非常に限られている。何十年に1基ぐらいの建設機会しかないということ、あと、核不拡散上機微なプルトニウムを取り扱うというような問題、それから施設自体が非常に巨大で、かつ複雑なものであるということを考えないといけないということがあるかと思います。

 もう一つは、これは全く別の観点なのですが、原子力のこういった研究開発をやっております私ども原子力機構に関して言うと、こういった軽水炉燃料の再処理、L再と略してありますが、これは六ヶ所の再処理工場がもう動こうとしているわけで、そういうような状況下で、現在原子力機構の中でL再にかかわる技術開発をやるにはいろいろな面で制約があるというようなことがございます。

 そういった中で、このところ、六ヶ所再処理工場の次の第2再処理工場をどうすべきかという検討が始まっていて、この中では動く時期が今世紀の半ばぐらいだろうという想定ですので、そうなってくると、軽水炉の燃料のほかに、当然FBRの燃料も考えなければいけないでしょうというようなことがございます。そうなってくると、そこで考えなければいけないことが3つそこに書いていますが、1つは、原子力機構で開発しているような新しい技術をどう入れ込んでいくかという問題、それから、今後、六ヶ所再処理工場を動かすことによって出てくる運転経験とか改良技術といったものを生かしていかなければいけないということ。もう一つは、国内のメーカーが持っている六ヶ所工場の設計とか建設の経験といったものをその中で考えていかなければいけないだろうということかと思います。

 真ん中に論点として書きましたが、では、これまでのことを考えると、どんなことを少し議論する必要があるのかということですが、赤い字で書いていますが、これまではよく技術移転という単語が使われてきました。これはどういう意味かということは、きちんと定義しなければいけないと思うのですが、普通に言うと、技術開発したところ、ここでは甲と書いてありますが、そこから違うところにその技術を移して、乙とか丙のところでさらにその先を進めていくというようなことかと思いますが、これは後で濃縮のところでも出てきますが、そういうことではうまくいかないのではないかというように考えていまして、ここは技術の産業化というように書きましたが、用語がいいかどうかは別にして、甲も乙も丙もある役割を担って、開発の当初から実用化に至って、それからその後のところまでも一緒にやっていくというようなことを考えないといけないのではないかと考えます。

 そういうことでやっていくためにはどうしなければいけないかというのが4番目の今後の方向性というところに書いてありますが、ここに書いてあることの真ん中の3つ、まず開発の初期段階から、将来の事業を実施するであろう実施主体と、それから、プラントを設計して建設していくためのメーカー、これらが参画して国の研究開発機関の中で一体に開発を進めていく仕組みというのが要るのではないか。

 そこがある段階から、ある段階というのは、もうそういう事業をきちんとやるということを決めたところから、その事業の実施主体あるいはメーカーにその部分の要員を移して、各々の役割の中核にそういう方たちがなっていくということを考えていく必要があるのではないか。

 3番目は、事業として始まった後も、事業遂行に直接かかわる研究開発は、その事業の実施主体が行うということだろうと思いますが、関連した基礎基盤的な研究というのは必ず必要で、それについては、やはり国の研究開発機関が継続的に支えていくということを考えないといけないのではないかというように思います。

 それから、一番上と一番下は、これは再処理の特殊事情かもしれませんが、上のほうは、軽水炉燃料の再処理、L再は実用化技術であるという視点、それから、F再については、まだそれを実用化したところはないわけで、いろいろ研究開発中だということはありますが、その両者の技術を今後統合して、これからの開発をしていくべきだろうというように考えます。

 それから、一番下のところは、次の第2再処理工場をつくるということを考えると、実際に総合的にエンジニアリングできるところがないとできないという事情がありますから、そういうところは早い時期に決めておかないと、研究開発側とのリンケージというようなことでどうしていくのかというところに問題が出てくるだろうと思います。

 以上が再処理の話で、次のページにめくっていただくと、今度は濃縮の話ですが、これも説明すると長くなるので、次に書いてある各項目毎のところをリファーしながら掻い摘んでお話をさせていただきますが、まずウラン濃縮については、現在、六ヶ所工場で動いております遠心式の濃縮機、これを開発しようということになって、これは1959年にまず理化学研究所で第1号機の開発を行いました。そして、旧動力炉・核燃料開発事業団(旧動燃)のほうがその後を受けて、72年にナショナルプロジェクトということで開発を始めました。これは遠心機そのものを金属でつくった金属胴遠心機と書いてありますが、これの開発に着手しまして、そこで開発されたものが、その下の欄に同じ色で書いてありますが、当時の動燃の人形峠にパイロットプラントをつくり、それからデモプラントをつくって確認をして、その技術が日本原燃のほうに、これは技術移転という格好で移って、六ヶ所の濃縮工場の建設につながっているということでございます。

 それからもう一つ、一番上の欄で、【動燃】・東海というところに、点線で囲って複合材料胴遠心機開発と書いてありますが、これは金属胴の次の世代の遠心機開発ということでこういう形で始まったのですが、ここについて、当時の動燃と日本原燃、それから実際の遠心機の胴の製造とかをやっているメーカーといったところの連携がどうもうまくいかなかったというようなこともあり、開発はしたのですが、結局採用されないで終わっています。

 そういうような状況下でもう一つは、1980年代に、これは【動燃】の中で、8と書いてありますが、先導機と称する、これは当時のヨーロッパのURENCOにも打ち勝ちたいというようなことで、それをしのぐような能力の遠心機を開発しようということで始めて、これをずっと行っていました。

 そういった中で、例の動燃改革という話があり、その中で濃縮技術に関しては整理事業というように整理をされ、結局2001年には、動燃といいますか、その後サイクル機構なのですが、その中でウラン濃縮にかかわる技術開発は終了という形になっています。

 そういうことなのですが、その動燃で開発をしていました先導機については、その後、日本原燃のほうで、現在動いている遠心機の次の世代の遠心機ということで技術的に採用されて、今、これについて実際に物をつくってリプレースしていこうという段階に来ているということでございます。

 次のページは省略しまして、後ろから2枚目のところですが、濃縮については、今ご説明したように金属胴の遠心機の開発を始めまして、その後、複合材料胴の遠心機の開発と、このように辿ってきたわけですが、いろいろその間問題があって、1つは、金属胴の遠心機の開発のときは、当時の動燃が、その機器製造に関しても品質管理みたいなところを自ら見ていたというようなところで、どういうところが非常に重要かということは分かっていたわけですが、それが日本原燃に技術移転をした後、その辺がうまく伝わらなかったところがあって、結局、品質管理上非常に重要な部分をメーカーのほうが変更してしまったのですが、それをそのまま見逃してしまったということがありまして、うまくいかないというようなことが出てきました。

 それから、複合材料胴遠心機については、これは先ほど少し言いましたが、開発をしていた動燃、それから日本原燃、それからメーカー、どうもここの連携がうまく行っていなかったのと、それからこの間で開発について2種類の遠心機が並行してなされるというような状況が出たりして、結局うまくいかなくて実用化されませんでした。

 そういうこともありましたので、六ヶ所の次期の商用プラントに使う遠心機の導入が大幅に遅れるというようなことになったということがございます。

 左下に書いてあるのは、先ほど説明しましたが、動燃は、もんじゅの事故とか東海の事故とかあったりして、結局動燃改革ということが行われて、その過程でウラン濃縮については、国の研究開発機関での技術開発はもうおしまいにしなさいということになりました。したがって、現在、原子力機構の中にはもうウラン濃縮に関する技術開発の要員も施設も実際もう使えるようなものはないというような状況になっています。

 一方、メーカーD社の解散と書いてあるのは、これは金属胴遠心機の製造を行っていたところがD社なのですが、その次の世代の遠心機は金属胴でないということもあって、結局D社が成り立っていかなくなって解散をしてしまっているというようなことがございます。

 そういうようないろいろ紆余曲折はあったのですが、どうなっているかというと、今、現状と真ん中の下に書いてありますが、結果的に、現在は日本原燃にその遠心機の設計から開発・試験、それから機器製造、機器の品質保証、プラントの建設運転とか性能保証といったところまで一貫して見られる体制が構築されまして、そこで現在、六ヶ所の濃縮工場のリプレース用の遠心機の製造に着手しようとしているところにあります。

 そういうことで、遠心機自体の開発、それをつくること、それから据えつけて運転するというところは、すべて日本原燃に集約されている形になっていまして、これはそういうことで、結果的にはいいところに来ているのではないかと思います。

 ただし、さらにその先のことを考えたときに、いろいろ基礎基盤的な研究開発がまた必要なのだろうと思いますが、その辺については、これはさすがに日本原燃の中で行うわけにもいかないような部分もあって、そこをどうするかという問題があるのではないかというように思います。

 それで、その上にちょっと論点と書きましたが、これは今申したような濃縮に関して言うと、こんなようなことが少し問題というか、考えるべきではないかなということで書きましたが、1つは、いわゆる当時の動燃で開発した技術を日本原燃に技術移転したということなのですが、それのやり方がよかったのかというのが1つ反省点としてあります。

 それから、では受け取った日本原燃のほうの事業戦略のあり方というので、フルターンキーは正しいかと書いてあるのですが、これは普通に物を買うのであれば、ちゃんとできているものを買ってくるわけでいいのですか、この濃縮に関して言うと、開発してきたところが、国の機関で全部やってきているところがあって、では、それを原燃に移したときに、日本原燃は遠心機を製造するメーカーに発注をしているわけです。そこのメーカーにきちんと動くようにということを要求しているわけですが、メーカーのほうは、先ほども言ったように、当時の動燃からある部分きちんと伝わっていないところがあってうまくいかなかったようなところがあるのではないかということです。

 そういうことで、では、設計とか製造とか運転といったところのトータルのマネジメントは一体だれがその舵を握ってやるべきかという問題があるだろうということです。

 それから、そういうこと全体を見渡すと、長期にわたった開発戦略、特に国の機関で開発して、それを民間に技術移転するといったときの役割分担をどのように考えたらいいのかというところをよく考える必要があると思います。

 それで、右の今後の方向性に書いてありますが、先ほど申したように、濃縮に関して言うと、事業を遂行する上でのいろんな体制の部分については、今、日本原燃に集約されているという形がとられていますから、そこはそれでいいのではないかと思いますが、基礎基盤的な研究というのは、今後のことを考えると、やっぱり国の機関のほうで支えていくようなことを考えていく必要があるのではないかということでございます。

 最後にまとめますと、では今後こういった原子力の分野で新しい技術を開発して、それを実用化していこうというときには、従来言われていたような技術移転という発想ではなくて、その技術を産業化していくのだという観点で考えるべきだろうということで、下に絵がありますが、これまでの技術移転という考え方は、「これまで」というところに書いてあるそのバーチャートのように、研究開発機関があるところまでやって、そこでできたものについては事業主体に渡す。そして、研究開発機関の中でそういった開発に携わってきた人のある部分は事業主体に移行しておりますが、そうでない人たち、かなりの部分については別の研究開発のほうに移ってしまっているというような状況があります。

 そういうようなことで、技術移転が行われたということになると、研究開発機関の業務は終結ということになって、これは予算もつかなくなるし、人もつかなくなるということになっていたということです。

 ここで、メーカーが登場してこないのですが、実際は、先ほど特に濃縮のところでご説明したように、メーカーの役割というのは非常に重要なのですが、こういった技術移転という切り口で見てしまうと、存在感があまり出てこないというところがあります。

 やはりそれでは駄目だろうということで、これからこうすべきというのが下に書いてありますが、やはり開発の初期の段階から、そのときには事業実施主体というのは決められないのでしょうが、将来なるであろうところが想定されるのであれば、そこも入れて、さらにメーカーも入れて、国の研究開発機関の中で一体的にまず開発をやっていくのだというような仕組みが要るのではないか。

 それから、その後、事業の実施主体が明確になってきたところで、ここの開発をしてきた部隊は、かなりの部分をその事業の実施主体、あるいは実際のプラント建設に携わるメーカーに移行して、その中で中核の役割を担うということを考えるべきでしょうということ。

 それから、その後は、先ほども説明したように、事業遂行に直接かかわる研究開発は、その事業実施主体が自ら行うのでしょうが、関連する基盤的な研究とか、あと、いろいろ考えられると思いますが、事業実施主体がどうもできそうもないといったことを担う国の機関というのが必要で、そこは継続的にその事業を支えていくようなことをやっていかないと駄目ではないでしょうか。したがって、ここの下に書いてあるように、その3者が事業を支えていくための仕組みというのをつくっておく必要があるだろうというように思います。

 それから、最後に、少し再処理のところで述べましたが、実際のプラントをつくるということを考えると、それの総合エンジニアリングを担うといったところを、やはりきちんと想定して、そことの関係をきちんと構築しておく必要があるだろうというように思います。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 それでは、続きまして日本原燃株式会社経営企画室の田中治邦企画部長から、「研究開発機関からの技術移転について」、ご説明をお願いします。

【田中企画部長】

 日本原燃の田中です。それでは、資料2をご覧ください。

 今の市村委員のお話と、要するに、国内技術を開発して、それを移転した側と、それを受けた側の話ですので、認識はほとんど変わっておりません。したがって、その歴史的なものはなるべく省いてご説明したいと思います。資料は分厚くなっておりますが、赤い文字だけでも目で追っていただければと思います。

 2ページですが、これは一般論ですけれども、実用化に向けた技術開発には、その技術開発に投入するリソースの大きさが重要だと。リソースは人・物・金ですが、それがきちんと大きな規模で投入されれば、難しい初めての試みに組織として取り組むことができ、一定の成果に到達可能であると思います。ただ、初めて技術をつくろうとしていますから、技術的実現が最初の目標ですので、経済的成立性というのは、優先度がその段階で下げられざるを得ないというのは、これは仕方がないことだと思っています。リソースの量が逆であれば、逆の結論と。

 大きな第2段落ですが、技術は暗黙知の部分が大きい。実用化主体が別の機関に定まってしまうと、研究者のほうは責任の解除とリーダーシップを移されてしまうということで興味を失って、技術図書を引き継ぐだけで終わってしまうおそれがある。どうしても頭脳というか、人的な移動が必要になってしまう。

 基礎研究段階でその知識を得た研究者が実用化に取り組めば、一番成功への道のりは近いはずです。問題は、その研究対象とした自分が研究してきた技術が実用化されるということが、その研究者本人にさらなる取り組みの意欲を与えられるということが鍵だろうと思います。

 次に話をちょっと変えまして、参考までに発電プラントの技術開発のことに少し触れさせていただきたいのですが、軽水炉についてのところ、アメリカの強大な重電メーカーがオリジナルの設計をして、そのころから市場での競争にさらされたこと、それからどんどん売れましたので、豊富な建設・運転保守の経験から設計改善へのフィードバックがたくさん得られた。いろいろな新知見とか失敗とかもあって、そういうのがどんどんフィードバックされて、原子炉メーカーが積極的に設計改良に努めたということが成功につながっている。

 それから、発電プラントとして採用したユーザー、すわなわ電力会社も積極的に改良改善のための研究開発に投資したと。

 ちょっと恐縮なのですが、日本が動力炉開発の対象として取り組んだATRについては、独自開発でもって我が国の原子力工学の知見高度化に大きく貢献しましたし、特にMOXのハンドリングについての実績は世界に誇れるものと認識しておりますが、一方では、主として経済性の観点からユーザーの関心がなくて競争に生き残れなかった。そして、国内の原子炉メーカーが主体的に取り組む対象にならなかったことが敗因の1つであると。ここが上のLWRとATRとの違いであります。

 例えば国がリードして、国策会社的なところはありましたが、原子炉を供給するメーカーを育ててやらせたという部分では、カナダとかイギリスで成功している例はあります。最終的に今生き残っているかどうかは別問題ですが、それぞれの国では随分売れました。

 それから、FBRですが、これはまず、当然我が国の存立基盤と認識してR&D機関が取り組むことが重要ですが、それに加えて、何といってもそこにビジネスチャンスありと感じて、原子炉メーカーが主体的に参加することが必須で、そのために日本がFBRをやるためのメーカーを1つに選定するような、そういう環境を整備したということは、将来について大きいのではないかと思っています。FBRは将来導入されることは必然ですけれども、ただし、その際には、ユーザーの立場から見ると、国産技術といえども国際競争にさらされることを覚悟して、それに耐えられるものをつくらなければいけないということが鍵で、その戦略が必要であります。

 一方、ユーザー側からの研究への参加というのは、商業化の見通しがあるかどうかということに強く依存していると思っています。

 こういったような原子炉の歴史を見ると、その共通のキーワードというのは、国内の原子炉メーカーの役割であると思います。それが少しばかりサイクルの場合には違うというのが悩みのところで、4ページ以降ですが、まずウラン濃縮、これは核不拡散上機微なものですから、技術については国内の独自開発しか方法がないということで、日本は最初から遠心法に注力してきて、それを産業界も採用することになった。すなわち、六ヶ所では動燃事業団の原型プラントと同型の遠心分離機を導入した。また、重電3社の参加を得たということで、この第1世代の金属胴遠心機は一定の使命を果たしたというように考えております。すなわち、商業規模での濃縮技術保有国の地位を確立しましたし、この製品出荷量1,559tUF6というのは、100万キロクラスの原子炉で55年以上に当たりまして、まあかなりのものだと思っております。

 ただ、この遠心機は必ずリプレースしないといけませんが、そのリプレースを行わなかった。予想外に早期の停止事象が発生して、それは先ほど市村委員のご説明がありましたように品質管理に起因している。それから、経済性の点で国際競争力が不足した。これは突然どんどん円高になってしまったとか、海外ではウラン濃縮市場をめぐって新規参入があって、ものすごく競争が激化して、DOEの単独支配のところから一挙に価格が落ちてきたということがありますが、そういったことで同一設計でのリプレースは困難であった。遠心分離機を製造するというビジネスから重電メーカーが撤退したというようなことになっています。

 次の5ページですが、一方リプレース用の後継機の開発がうまく進まなかったということは、市村委員のご説明にあったとおりで、まとめれば星印の3つ目のリソースが分散してしまってやっていたということに問題があると思ってございます。

 現在、進めている新型遠心分離機については、2000年度にサイクル機構と、過去に重電メーカーで遠心機開発に携わった技術者が日本原燃に集結して、新型遠心機の開発に着手しました。事業者自身が技術開発組織を持って、国内の遠心機に関する頭脳を集結したということが非常にうまくいって、ここは重電メーカーは撤退したのですが、その撤退によって活躍の場を失った優秀な技術者も逆にこちらに入っていただけましたので、そういうことで実質的にはオールジャパン体制になったということで、成功の可能性は高いと考えてございます。

 6ページは、そのウラン濃縮について、今後も原子力機構からのいろいろな技術協力は必要だと考えている課題はあるということが前の段落で、その個別の項目はともかくとして、下側の段落にありますように、まずこの事業については、もはや事業者から研究開発機関に返すというようなものではなくて、日本原燃が新型遠心機導入後も技術開発体制を維持していくということが重要でございます。

 それから、現在実施中のカスケード試験には国の支援を頂戴していますが、2010年度以降も日本にとって必要なことだと思いますので、お願いしたいということでありまして、要はウラン濃縮についての国際競争力を確保するためには、引き続その性能向上を図る研究開発は必要だと思っております。

 先ほどの市村委員のお話で、原子力機構の中にはもはやウラン濃縮に関する研究基盤はないというお話がありましたが、そういった意味では、我々事業者がそもそももう事業化していますから取り組んでいかなければいけないのですが、遠くを見た新規の材料を開発するとかいったような、ちょっと遠い将来を見た基礎的な研究というのは原子力機構の頭脳が生かせるのではないかというふうに期待してございます。

 7ページからは再処理ですが、再処理について国内技術を採用したのが3つあるというのがそこに赤の文字で書いたところです。細かいところは省かせていただきます。

 8ページは、今、再処理のアクティブ試験を実施中で、残るのはガラス固化試験のみの状態に来ている。今しばらく時間を要するという話を書かせていただきますが、この辺は省かせていただきます。

 9ページ、まず国内技術の採用を我々がどう考えているかということですが、それなりのプラス要素はある。当該技術を使用する先行事業者が国内にいるということは、我々にとっては大変な安心感ですし、訓練生を派遣して人材育成を図る、お願いする、研修をやっていただくということもすごく容易ですから、大きなプラス要素があります。

 一方で、これまでの技術協力には改善すべき点も存在していると思います。一つは移転後のトラブルなどへの支援体制。AREVAの場合には、技術移転契約により性能保証をしてくれますし、建設工事を請け負った国内メーカーも契約に基づいて責任出所範囲についての性能保証をしてくれています。しかし、採用された国内技術に国の研究開発機関が民間に性能保証するなどということはどだい無理でありますから、そんなことを要求するのは困難と思っておりますので、実質的にどれだけ信用を頂戴できるかということが課題かと思ってございます。今、ガラス固化については全面的に協力をいただいていると認識しています。

 それから、二つ目で、先行事業者として事業化に役立つ積極的な助言をどれだけいただけたかということは、別に批判するつもりはなくて、そこはどうしても研究開発機関と性能保証しているメーカーとは違いがあるかもしれない。AREVAは設計改良、運転ノウハウ等も自主的かつ積極的にどんどん我々に打ち込んでくれるというような状態でございます。

 そういったことで、こういった比較から国内技術を採用した場合には、今で言うと原子力機構のサポートが大変重要で、特に民間ではプルトニウムを取り扱う試験施設を持っておりませんので、研究開発機関のホット試験設備を用いた検証とかデータ提供が重要でございます。

 採用された国内技術について、メーカーが育って、メーカーが性能保証するというような体制にまで移行できていない場合には、助けていただける体制の継続というのが必須と認識してございます。

 10ページですが、今後も原子力機構からいろいろ協力していただきたい必要な課題はありますが、細かい項目は省かせていただきまして、下の段落、今後の取り組みの方向性として、まず六ヶ所再処理工場の設備改善のための技術開発は、もう日本原燃が責任主体となって、引き続き原子力機構、メーカーの協力を得ながら実施して参ります。

 一方で、革新的な技術を創出するための基礎基盤的研究は、原子力機構に期待しています。

 少し話は変わりますが、操業開始後も原子力機構との技術協力関係というのは維持したいと思っています。我々は、AREVAとはグローバルパートナーシップという契約を結びまして、お互いの工場での運転経験を積極的に交換して助け合っていくということにしております。FBRサイクル技術開発を担う原子力機構への我々からの運転保守経験のフィードバックもきっと役に立つだろうと思ってございます。

 11ページから3つ目の分野として、国内技術を技術移転していただいた部分の大きい分野としてMOX加工の話を載せておりますが、これはこれからですので、11ページのMOX加工ラインの中でどこが国内技術だということを、11、12、13ページとデータということで書いた程度ですので、詳細は省かせていただきますが、13ページの一番下の段落、他事業、すなわち再処理とウラン濃縮、それら2つの技術移転のやり方というのはかなり異なる体制をとったということがこれまでのご説明でご理解いただけたかと思いますが、そういったものを横睨みしつつ、MOX加工事業を成功に持っていきたい。燃料加工メーカーの参画が重要ですし、原子力機構の技術者と経験を活用していくことが重要だと認識してございます。

 14ページは、これまでの技術者の派遣とか、我々からお願いした原燃技術者の訓練とか、そういったものの量を数字で書いただけですので省かせていただいて、最後のまとめのページを読まさせていただきます。

 建設機会が少ないサイクル事業では、メーカーの自主努力によるビジネスの拡大というのは困難ですから、したがって、一たび竣工してしまうと、メーカーの意欲と技術力は徐々に低下する恐れがある。技術の維持・発展には、したがって、ユーザーの役割が極めて重要。日本原燃がエンジニアリング能力の確保に取り組む必要があると認識してございます。ウラン濃縮事業は遠心機をつくるという分野まで、部品はともかくとして日本原燃が行うことにしました。ただ、規模が大きな再処理の場合にはなかなかそうはいかなくて、原子力機構やメーカーあるいはAREVAのサポートを私ども必要としています。

 特に研究開発機関、今で言うと原子力機構が独自開発した国内技術を採用したものについてのサポート体制が課題であります。メーカーからの支援が期待できない場合には、ぜひ原子力機構にしっかりとサポートをお願いしたい。特に初期の研究開発に携わった人と、それからホット試験施設の維持というのをお願いしたいと思っています。

 それから、原子力機構から開発成果について十分な検証データを蓄積するということを継続していただきたいですし、適宜実用化プラントへフィードバックを、フィードフォワードと言うべきかもしれませんが、することを期待してございます。

 先ほどからの繰り返しですが、革新的な技術の基礎基盤研究については、原子力機構の取り組みをお願いしたいと思っています。

 以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 続きまして、他分野の経験を踏まえた原子力研究開発のあり方について、メーカーのほうからのプレゼンをいただきたいと思います。

 小澤委員、そして城石主幹研究長、よろしくお願いいたします。

【小澤委員】

 それでは、メーカー側からのプレゼンをさせていただきます。

 最初に日立製作所の研究開発本部の城石主管研究長から、事業化したプロジェクトの事例として、お手元の資料の「世界大競争に立ち向かうための産学官連携」ということで、磁気ディスク装置に関する研究開発と実用化という例をご紹介させていただきます。分野は異なりますが、複数の組織が1つの製品を開発して事業化に結びつける際の仕組みややり方等が参考になり、原子力にも共通するものがあるのではないかと思い、ご紹介させていただくものでございます。

 それでは、よろしくお願いいたします。

【城石主管研究長】

 ご紹介にあずかりました城石です。よろしくお願いいたします。

 今日ご紹介させて頂くのは、磁気ディスク装置(ハードディスク)に関する研究開発事例でございまして、実際のハードディスクを持って参りましたので、ご覧頂ければと思います。本事例は1996年から2001年までのプロジェクトということでやらせていただいた例でございます。

 ハードディスクは、家庭で言いますと、最近では、テレビ番組の録画を行うレコーダーにデジタル情報を記録するための装置として入っております。2ページ目に書いてありますように、非常に多くの情報が最近生成されておりますが、2010年になりますと、その6割ぐらいしか、もう貯められない、それほどたくさんの情報ができている。情報を貯める装置としてはハードディスクが殆どということで、非常に重要な装置になっております。ハードディスクは、基本的にナノテクの塊でありまして、開発をメーカー各社の力を結集して、また、産学官が連携してやらなければいけないという一つの事例として紹介させていただきたいと思います。

 3ページ目ですが、実はハードディスクというのはかなり昔から実用化されております。原子力と少し事情が違うというところをちょっとご了承いただきたいのですが、ここにありますように1991年ごろに他社が部品の技術としてMRヘッドを、最近GMRというノーベル賞をもらった技術があるのですが、それの前駆的な技術なのですが、それを導入いたしました。実はそれが非常に画期的であったために、日本のメーカーが3年間ぐらいそれをつくれずに非常に事業的に困ったということを各社経験したわけでございます。アメリカのほかの企業でも同じでありまして、IBMだけが突出した技術を持っており、ほかがどこも追従できなかったということで、日本でも基礎に立ち返って、もう少ししっかりした技術をつくりましょうということで、プロジェクトが立ち上がりました。

 それが4ページでして、磁気記録というのは、1898年、今から111年前に蓄音機というものができたのですが、それが1956年にはハードディスクという装置になりまして、50年ぐらいの歴史があります。

 ただ、それは面内記録方式というもので、50年ぐらい前から実用化してきています。一方、垂直磁気記録というのは、実は大学のほうに種がありまして、1977年に東北大学(当時)の岩崎先生が発明されて、特許も取られている。ただ、それを実用化するということに関して幾つかトライはしていたのですが、なかなかうまくいきませんでした。そこで、この技術を取り上げさせていただいて、ここに組織図がありますように、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、(超先端電子技術開発機構(ASET)ということで、この垂直磁気記録の分野というものを新しくつくっていただき、各企業のいろんな研究者がそこの中に入って開発を進めさせていただいたわけでございます。

 そのときに、このような良い技術が大学のほうにたくさんありましたので、形としては各企業から再委託という形で大学の英知をいただきながら、全体のプロジェクトを運営するということでやらせていただきました。

 プロジェクトの運営としては、資料4ページに「各社に分散」と赤い字で書いてございますが、いろんなやり方があるのですが、やはり各社いろいろな特徴がございまして、1カ所に集めてやりますと、良い人をなかなか出さない。例えば企業の優秀な人間をそこに送ってしまいますと、日々の研究開発、設計、製造ということがなかなかうまくいかないということになり、優秀な人間を集めにくいということがありましたので、基本的に分散でよろしいと。ただし、垣根を下げて全体が連携する仕組みを何とかやりましょうということでやらせていただきました。

 5ページ目ですが、まずロードマップということで、これは賛否両論あったのですが、ちょっと俯瞰していただくためにここに書いてあります。

 一番上の赤い字でNEDO、ASETと書いてある期間がプロジェクト期間でありまして、プロジェクトでカバーした技術がその赤い字で書いてあるものでございます。それ以外の黒い字で書いたものは何かといいますと、これはメーカー側がそれぞれ責任を持って開発する技術でありまして、いわば自己責任でやると。要するに赤い字で書いたところが非常に難しい、挑戦的な技術でありましたので、それを特別に取り上げて、分担して開発することにしたのです。

 その分担の仕方というのは、先ほど申しましたように何社か集まっておりましたので、それぞれが自分が得意である技術、あるいはやりたいと思っている技術というものを取り上げて、そこに特化してやりました。これらは非常に難しい技術で、ちょっと恐縮なのですが3ページに戻って難度をご説明させていただきますと、左に赤丸で1と書いてありますが、当時は面記録密度という尺度が1という単位でございました。それをこのプロジェクトでは40と40倍に上げてやるということで、先ほどの5ページに戻っていただきますと、製品としては2005年ごろ、当時としては5,6年後に出るぐらいの製品をターゲットにやらせていただいたということであります。

 このプロジェクトでは、本来の目標の製品化に必要な研究題目だけではなくて、例えば真ん中あたりにTMRと書いてありますが、当時としては全く夢物語でありましたような技術、今、実はTMRも実用化されているのですが、そういった将来技術もあえて幅広くとらえて、本来の目標以上に拡張した目標も含めて実際に運営させていただいた。それから、産業全体を支えるための基盤技術についても取り組ませていただきました。

 その結果といたしまして、6ページにありますように、GMRという、これが実用化できたので、それを発明された方がノーベル賞をいただいたわけですが、その技術を日本が逆に最初に製品化できるようになり、またその右の上のほうに書いてありますように、垂直磁気記録も、日本が最初に実用化できるようになったということでございます。

 それはなぜかと申しますと、7ページに纏めさせて頂きました。この図は大学と産業界と官の関係なのですが、大学には基本的に長い歴史がありますので、そこで生まれた深い知識をうまく連携をとらせていただいて、その実用化に向けて、基幹技術であれば、それを強化する。あるいは新事業であれば、それを創成するということに、産業界として力を入れることが出来た。その核になったのが、今回のプロジェクトであったということでございます。

 8ページ目が、当時何が有用であったかということを思い起こしたものでして、ここで、背景とこうあってほしいなということを書いてあります。実際に次の9ページ目にどういうことをやったかが書いてありまして、結果としてこの8ページ目がかなり実現できたというふうなスタイルになっております。

 まず8ページ目ですが、一番大きかったのは危機感が非常に強かった。これを逃すと存続できないと。企業ですから、製品を売って、それの利益を開発にまた回すというサイクルが必要ですが、それが壊れるぐらいに他社の技術にインパクトがありました。何とか基礎に立ち返って挑戦しなくてはいけないということで、大学のほうに期待をして、できるだけ深みのある技術、革新的な技術を企業と大学が一緒になって実用化に向けて研究開発をやらせていただいた。

 そのときに、下のほうに書いてあります官の主導というのは非常に重要でありまして、官側より、企業というのはどういうものであるかという現場を熟知した管理者を選んでいただきました。そして、その方に、各社の得意分野、強い分野へ特化できるような仕組みをつくっていただいて、シナジーが発揮できるようにしていただいた。実際には分散研ということで、それぞれ競争的な体制で、仲よくもやるのですが、競争をかなりしたということであります。

 その結果として、9ページにありますように、トップダウンで、企業に資金がうまく適正配分されて、しかも、その資金が生きた。企業側も、それにこたえてトップクラスの人材を分散研ということもあって送り込みました。例えばこれは卑近な例ですが、その後事業部の本部長になった人間とか、そういった人間を早い時期に研究開発としてこのプロジェクトに入れて、プロジェクトを成功するために鋭意尽力致しました。それから目標設定そのものを非常に高い目標に設定いたしまして、当時全くできないと思っていたようなものをあえて選んでやる。システム的にこうすればいいのではないかという目標設定、指標を明確にいたしまして、万が一それが達成できない、ある要素技術開発ができないというケースも想定して、さらに拡張目標を設定して、そのロードマップを共有してやらせていただいた。マネジメントそのものは、そういった長期的なマネジメントで、目標に向けて運営はしておりましたが、一方では、日々短い単位で厳しくフォローして全体が遅滞なく進むようにした、ということが成功の要因の一つではなかったかと思います。

 10ページ目ですが、まとめますと、そういった全体の連携がうまくとれたということで、お蔭様であるレベルになったというように考えております。ハードディスクは、基本的にグローバルな産業でありまして、競争も激しく、ある時期は100社ぐらい存在していたものが、今は5社にまで集約しております。そのぐらい競争が厳しい世界であります。例えばシンガポールでは、国の政策と一致した形で全体を統制し、集中と選択を行って国際競争力の向上を図っていますが、我が国の学と産と官が連携してうまくいくように取組んだ知見を生かせればと思いまして、ハードディスクの事例をご紹介させていただきました。

 ありがとうございました。

【小澤委員】

 それでは、今の経験を踏まえまして、原子力研究開発のあり方に関する論点ということで、資料4に沿ってご説明させていただきます。

 今のプレゼンにありましたが、事業存続への強い危機意識というのが、一つのキーポイントになるということでございます。原子力の世界の燃料サイクル技術のように開発が長期にわたり、かつ開発成果が単発的な施設に反映されるような分野は、民間の企業活動と整合するのかといった点、それから開発初期段階から事業化への強い意識が必要となりますが、初期段階から事業主体をはっきりできるのかといった論点が考えられます。

 それから、全体像を理解でき、かつ個別アクションをとれる仕組みの構築というご指摘がありましたが、全体を俯瞰できる優秀なプロジェクトリーダーの育成と権限の集中が可能かということでございます。原子力機構における部門と拠点の関係ですが、機動的な人、物を集約できるのかという点でございます。

 また、優秀な研究者、これは専門性と追究心に優れている方、それから優秀なプロジェクトリーダーというのは、総合力と柔軟性にすぐれている方ですが、特質の異なる人材を1つの組織で育成できるのかといった点が論点として考えられます。

 また、年度予算の制度の枠組みの中で、人・金・物という点を柔軟に運用できるのかという点でございます。

 もう一点、目標設定と緻密なアクションプランが重要だという指摘ですが、我々の原子力では、事業化までの期間が長いということで、開発初期には漠然とした開発目標しか設定できない、高い目標設定ができないのではないかという点。

 それから、先ほどロードマップの話が出ておりましたが、長期にわたる開発においては、緻密で短期的なアクションプランの設定とあわせて、常にアクションプランを見直して再構築する仕組みが必要ではないかといった論点が考えられます。

 以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 それでは、最後に事務局から論点整理も含めて、技術移転の論点についての説明をお願いしたいと思いますが、山名委員からペーパーが出ていますので、事務局の前に山名委員のほうからご説明お願いしますが。

【山名委員】

 論点を聞いてからにします。

【田中主査】

 では、事務局、お願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 それでは、資料5ですが、これを細かく説明するのではなくて、この後、いろいろな議論をしていただくときの参考程度の議論用のメモという程度ですから、議論していただくほうが重要なので、説明は簡単にします。

 今までの各先生方からの説明にもそれぞれリンクするし、この論点というのはそれぞれ独立のものインディペンデントではなくて、裏から見たり表から見たりというだけで、それぞれリンクスするようなところがあります。

 考えるポイントとしては、例えば1番目としては、過去のいろいろな反省も踏まえて、教訓はどういうことだろうかというのを出発点にしたらいいのではないかと思います。

 それとか、例えばここにありますようにいろいろなモデルがあって、今までは単純に言うと、小さいものから大きいものという、単純な線形モデルということでやっていたのですが、本当にこういうことというのが今後もいくのだろうか。

 それとか、違う考え方で言うと、原子力機構で技術開発して、何らかの形でバトンタッチ、技術移転をして、後を事業主体によって行うということなのですが、事業主体のほうは、基本的にはターンキー方式でやって、原子力機構のほうは、渡してしまうと終わりというようなことが本当に動くのかどうかということでございます。

 その次の論点は、技術移転をする際に何の伝達が重要かということで、当然ドキュメントを渡すというのは当たり前なのですが、どうしてもノウハウとか、人の頭にしか入っていないようなことはどう考えたらいいんだろうかということ。

 あと、技術的な内容としても、本当に技術開発のものと、あとやはりオペレーションのデータということは、やっている人も違うものですから、そこらはちょっと分けて考える必要があるかもしれないということです。

 論点4は、それを具体的に言うと、単純にドキュメントを渡しましたというのではなくて、人とか組織などの大括り的な移行みたいなこともやっぱり考えるべきなのではないかというようなこと。

 論点5は、主体としては、今も議論がありましたように、原子力機構があって、渡す先の事業主体というのではなくて、やっぱりメーカーもおるわけですが、それぞれ3者が三すくみにならないように、それぞれの責任と負担を担う。それも段階的には技術開発段階、移行段階、あと事業化段階とあるのですが、そういうところでは、それぞれ3者の役割はどうあるべきだろうかというようなこと。

 それと、当然技術として完成したものでないと話にならないというのはあるのですが、それとあわせて、最後は経済性があるものにしないと駄目だということで、そのためには、技術開発段階からやはり考えておく必要があるのではないかということでございます。

 次のポイントは、例えば技術開発段階での柔軟性の確保ということで、今までは、例えば原子力委員会が定めた何とか計画とか、そのようなものがあると、それに則って非常に硬直的になったということなのですが、実際問題としては、いろんな事業者側のニーズとか、国際動向を踏まえて、もう少し柔軟にやるような仕組みにしないといけないのではないか。

 あと、大きなプロジェクトは、ミスター何とかという強いリーダーシップの存在が重要ではないか。だけど、今までのことを考えたら、ミスター濃縮は誰だったかと言われると、少し疑問があるような状況ですから、こういうことも考えたらいいのではないか。

 それと、市村委員の資料に出ていましたように、技術移転して渡した後、原子力機構については濃縮は止めたと。止めたというか、止めさせられたかもしれないですが、そういう状況になっているわけですが、国として考えた場合に、ベースとなるような先端的な基礎研究みたいなものはやっていくべきではないか。

 あと、事業主体が立ち行かなくなったときに、日本として誰かがきちんとフォローできるような体制というのは用意して考えていったらいいのではないかというのが論点でございます。

 それと、これもいろいろな人の説明にも入っていましたが、炉とサイクルというのは、特にメーカーのかかわりというのはどうしても変わってくるのではないかということです。炉はシリーズ物としてどんどん何基というので動いてくるのですが、サイクル施設はやっぱり単発品ですから、そこらをどう考えていったらいいのかということです。

 あと論点としていろいろあるのですが、国産技術にどの程度こだわるのか。それは自主技術開発なのか、国際協力なのか、そういうことを今後どう考えていったらいいのかというような切り口。

 それと、特に再処理であるとか、FBRなんかもそうですが、そういうプルトニウム周りについては、やはり世界的な核不拡散強化とかいうことで、そこらも柔軟に、かつタイムリーにそういうことを捉えながら動かないといけないのではないかというようなことでございます。

 それぞれの論点は、さっき言いましたように、これについて一つずつどうのこうのということではないので、これからの議論の参考にしていただければという趣旨でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 それでは、ただいままでの委員や、あるいは田中企画部長、城石主管研究長からのお話、そして事務局からの論点整理等を踏まえまして、ご意見をいただけたらと思いますが、まず山名委員のほうから、机上配付資料もありますので、よろしくお願いします。

【山名委員】

 お手元にお配りしたものがありますが、主に私は、今山野課長がお話になった議論の論点の前半部分、主に、国の開発の中での技術の考え方について少し意見を言わせていただきたいと思います。

 研究開発モデル、先ほど線形モデルというのがありましたが、基本的に私は工学研究開発というのは、その紙に書きました(1)から(4)に分かれていると考えています。最もプライマリーなものはフィージビリティ研究であって、これは概念を新しくつくったり、アイデアを出して、それがファンダメンタルな段階で成立するかというアイデアを確証する段階というのがあるわけです。この段階で100のアイデアが出れば、そのうちの2ぐらいが実用になるような確率があるわけです。

 2番は基礎研究段階で、原理確証のための基礎的な実験、基本物性の測定、物質や材料の開発の初段階やスクリーニングの段階、それから計算による設計評価などの基礎固めの段階。ここの段階でつくられる技術、つまり、基礎情報やツール、計算ツールとか、あるいは実験的なロジック、そういったものがすべての基本になる上、その後に出てくる経験工学的な何らかの予期しない現象の発現に対しての解決の基本になるということです。人的能力も実はここにかなりありまして、これが欠けた状態で、それ以上の段階が走っているというのは相当弱い、脆弱であるというように考えるわけです。

 それから、準工学研究段階というのは、原理的な確証を終えた上で、工学的な開発を視野に入れた段階、小規模であっても実体系を意識したような実験、あるいは工学的なクリティカルパスを同定して、そのソリューションを模索しているような段階であります。この段階において大事なことは、その工学的なクリティカルパス、つまり最も重要となるような弱点等を見つけて、そのソリューションを論理的・科学的に見つけていくということが大事なわけです。場合によっては、これは小規模な実験で済む場合もあるし、極めて大きな実験が必要なケースもあるということが、ケースによって違ってくるように思っています。ここで大事なのは、科学的なジャンプアップと書いていますが、要するに、頭を使うことが極めて大事だというように思っております。

 4番目が工学研究段階で、この段階はもう実用を極めて強く意識して、性能保証に導くための工学研究の段階ということになります。つまり、この4の段階というのは、実用のための開発ということがありまして、本当に性能保証につなげなければならないということです。ただ、この場合に、小規模の実験と設計上の安全余裕の導入によって性能保証できる場合もあるし、何らかの極めてリアリスティックな実験、つまり規模の大きな実験を入れていかなければならない場合もある。いろいろなケースがあると思います。

 なぜこの4つの段階をここでお話ししたかというと、従来、研究開発のロジックが規模の論理だけで進んでいることが多くて、例えばビーカー実験、コールド実験、ホット実験の実証施設だという言い方をよくしますが、それはあくまでサイズの話であって、実はそれがこのどの段階にあるかというのは、別の話なのです。ひょっとすると、ビーカースケール、コールド実験から、工学研究段階にジャップアップできる可能性もあります。ただし、一般的にはそれはプロセスがシンプルな系になってきます。経験工学的に大きなリアルな条件がクリティカルパスを支配している場合には、何らかの規模のアプローチが必要ということになるわけです。

 次のページにいきまして、一つの例ですが、セラミックメルタのガラスについては、準工学段階においてクリティカルパスが十分同定できないで、不十分なまま工学研究段階に至って、性能保証のカバレッジができなかった一つの例であると。

 それからITERのようなものは、準工学段階なのですが、非常に巨大な実験が必要なケースでありまして、こういうのは国際共同でしかできないものになりますし、当然メーカーでできるなんて話はないわけです。

 「思うところ」に書いてありますが、実は従来動燃事業団が線形モデルでやってきたものというのは、どちらかというと、海外で既に準工学段階までの路線が引かれていて、つまり、できるべきものが導入されている。つまり、できることしかやっていなかったということになるわけです。

 それを大きな規模にして、産業技術というレベルに持ち上げるものが、やはり従来のものであった。そのときに先ほどお話があったように、産業界で強いインセンティブを持っているもの、つまり、ビジネスの目標が直近にあるもの、例えば軽水炉ですとか濃縮ですとか、そういったものは海外で準工学まで達成しているものを何とか性能保証で国内でやるという強いモチベーションがあったわけでありまして、それは線形モデルは成立したと思うのです。

 ところが、どちらかというと、今、新しい先駆的なシステムの提案というのは、高速増殖炉とか核融合とかありまして、さらにその実用化目標というものは極めて不明確なところがあるわけです。なぜならば、こういった開発というのは、あくまで国としてのある将来のリスクに対する開発のような、生命保険を掛けているような開発なわけです。であれば、メーカー側のインセンティブというのはどうしても低くなる、目標が明確でないですから。

 そうすると、この箱物ステップというのはなかなか描けなくて、大事なのはやはり基礎のベースと準工学段階でのソリューションの充足度、ここに来ると思うのです。そうすると、国が投資すべき開発というのは、先ほどいろいろお話があったように、基礎と準工学段階での非常に重要なところをがっちり押さえることがまず出てきて、それがあってメーカーや事業主体が直近の緊急度のテーマであると認識する時代になったときに、それはいつなの分かりません、まあ二、三十年後になったとして、そのときに極めてしっかりした工学段階にポンと入れるということになるというように思うのです。

 ですから、その時間的な違いとか、そういったものを無視した上で、単に箱物ステップアップのロードマップを引くということは、ある意味で開発リスクの上でリスキーでありますし、お金の投資が無駄になる可能性があるということです。

 ですから、これから我々が考えるべきもの、特に目標が将来にあるもの、つまり、産業界としてまだ強いインセンティブが働かないような開発については、基礎のベースと準工学段階での工学的ソリューションの充足度に力をかける開発にまずシフトしたほうがいいのではないか、というようなことを最近思っております。

 もちろん、先ほどありました技術は、本来の目標は国内のメーカー、事業主体にこの技術が根差すことですから、必ずこの過程も共有してないと、結局技術伝承にはなっていかないでしょう。国がやったものが、データベースあるいは知識ベースとして、将来ポンと渡せる形にはならないと思うので、何らかの形で、先ほど市村委員が3つのラインが並行するラインを書いておられましたが、ああいう形で進めていくということになると思っております。

 それから、大事なことを最後に1つだけ申し上げますと、国の研究開発では、さっき言った第4段階の工学段階における性能目標というのは描けないのです。なぜならば自分が主体でないから、絶対描けない。それはやはりピンぼけしているところがあるのです。ですから、性能目標を置くための強い技術的リーダーシップを誰が持つかというのは非常に大事であります。

 それから、原子力の場合には、この性能目標が極めて広くわたる。非常に大きなシステムなのです。その大きなシステムを広いインテグラルなアプローチでやると、どうしてもピンぼけが起こってしまう可能性があって、その全体を俯瞰する能力をどこかが持たなければならない。これは性能目標が描き切れない国の研究開発機関が、そこのインテグラルのリーダーシップをとるということは多分失敗が起こる可能性がある。そこを総合的に俯瞰してどうリーダーシップを持つか、それをだれが引くかというのは、多分最大のテーマだというように思います。これはおそらく文部科学省とか経済産業省とか事業主体とかメーカーがきちんと話をして、何らかの強い俯瞰した性能目標を描ける機能を持つ、つまり、統合エンジニアリングの強いリーダーシップの拠点を置くということが必要になってくるのだというように思っております。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 他の委員の方々からもいろいろご意見、コメントをいただければと思います。

【井上委員】

 資料のご説明を聞いて思ったことなのですが、まず1つ、今、技術移転について、それぞれ日本原燃と原子力機構のほうからお話があったのですが、多分この中の一部の方はご存知と思いますが、今学会ベースで、なぜ技術移転がうまくいかなかったかという資料が回っていまして、そこにおいては、今発表されたことと違うような、もっと厳しい見方がされています。その辺に具体的に踏み込んで、どういう課題があったかということをきちっと分析して、それに対して今後どうすべきか。過去のことを責めるのではなく、どうすべきかということをしていかないと、やはり前向きの改良案、次にこうするべき案というのは、出てこないと思います。

 それからもう一つ、開発、特にサイクルの開発は最初の段階からメーカーも入れて一緒に開発しようというようなこともあるのですが、例えばサイクルのようなもので、最初からそれをすれば、私は最初の会に言いましたように、また甲と乙の関係ができて同じようなことになるだけです。

 それで、最初ある程度、ここまで行けば、ここまで見えれば実用化できるよというようなところまでは、やはり国というか、原子力機構と言っていいのか分かりませんが、その当たりがしっかりとやっていく必要があるのではないかと思います。

 そしてもう一つ、先ほどディスクのお話があったのですが、これは非常にいい例としていろいろ参考になったのですが、これは実力がある多機関同士が集まって、そして目的も目標もかなりはっきりして開発されたのでしょう。これは非常にいいケースであると思うのですが、しかし、今、サイクルを見た場合、どうもそのあたりがもう既に怪しいというようなことなのです。やはりそこまで掘り下げて、先ほど論点を山野課長のほうからいろいろ紹介されましたが、順番はどれでもいいのですが、しっかり議論をする必要があると思います。

 もう一つ、危機感があったということをおっしゃいましたが、どうもサイクル関係の研究開発に関しては、私が見ていても、危機感の思いがそれぞれ違う。どうも我が思い、他人の思いにあらずで、そのあたりの危機感の持ち方も共通認識しておいて、今我々はどの位置にあるのか、またAREVAと比べてどのポジションにあるのかというようなことをしっかりと反省して、次の道を決めないといけないと思います。

 最後にもう一つ、これは皆さんおっしゃったのですが、今までは基礎から実用化まで俯瞰して、戦略を立てて、それから組織、技術管理、技術計画、立案、評価、そこまでできるステアリングが不在であった。やはりこれはつくる必要があるのではないかというように思います。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。他にいかがでしょうか。村上委員お願いします。

【村上委員】

 どうもありがとうございます。村上でございます。

 井上委員のご発言にちょっと勇気を得まして、思い切って私のような若輩者からこれまでの感じたことを少し述べさせていただきます。

 技術移転に関してですが、これは技術移転というよりは、市村委員の資料の言葉を借りますと技術のまさに産業化と、これはすごくいい言葉だと思うので、産業化ということに関して何が問題であり、どうすべきかということに関して私の感じていることを私なりに申し上げさせていただきます。一言で言いますと、事業の実施主体の本当の意味での主体性を関係者の方々には尊重していただきたい。人ごとみたいに言うなら尊重すべきということになりますが、事業実施主体の当事者の立場に立つと、もっと事業実施主体であるところの主体性を尊重してほしいということになるかと思います。

 もう少し具体的に、ちなみにこのような課題は、これまでいろいろ指摘されたことに多分あったのではないかと思いますが、過去のことをいろいろ言うのはあれなのですが、あえてうまくいかなかった技術、産業化の例として、かつて電力が主導でやっていたFBR実証炉プロジェクトの例で言いますと、事業実施主体の主体性があまりというか、はっきり言うと主体性が尊重されたと当事者として感じたことはございませんでした。これが具体的にどういうことかと言いますと、事業実施主体、当時日本原子力発電株式会社でございますが、必ずしも高速増殖炉に関してすべてのスタッフがそれぞれの専門性、技術的な専門性のすべての分野に精通しているというわけではなかったです。殆ど日本原子力発電は軽水炉を持っておりました関係で、専門家も軽水炉の、しかもそれぞれの分野、電気であったり、機械であったり、炉心であったり、燃料であったり、安全であったり、それぞれの分野の専門の仕事をして来た者が集まってFBRの実証化に向けてプロジェクトを進めているところでございます。

 それに関して、専門家である原子力機構も、当時の動燃もさりながら、むしろ原電を電力としてサポートすべき立場にある電力の中に主に長くFBRに関わっていらっしゃった専門家の方々から、いや、ここにまだ課題があるとか、例えばナトリウムの熱流動性でありますとか、ナトリウムの漏洩が起きたときに、だから言わんことはない、ナトリウムの漏洩に関しては、軽水炉とは全然違う取り扱いが必要であってというようなことを、とにかく課題、課題、課題と何かというと課題を指摘されまして、では、それをどうしていったら実証炉が建てられるのかというポイントを指摘することなく課題ばかり指摘されて、日本原電として建てるためにどうしたらいいかという意識を持っているものがたとえいたとしても、はっきり言えば、あまりその存在は聞いていただけなくて、結局実証炉というものはなくなってしまいました。

 そのような立場として、私も当時、若輩者とはいえ当事者の立場でございましたので、それに関してもっときちんと原電としての意見を主張できなかったという強烈な反省は、当事者としてありますが、今、では日本原燃がしようとしているウラン濃縮、再処理の事業化に関しまして、そういった懸念が全くないと言い切れるでしょうかというのが私の懸念でございます。

 日本原燃も電力が主体ですから、推進主体の皆様が必ずしもそれぞれの専門分野の知識をすべてお持ちであるとは限らないであろうと思います。それに対して、もちろん専門家の専門的な知識のサポートというのは当然必要であり、技術の移転というのも必要なのですが、産業化という意識があれば、専門知識がないことを持ち出して課題がある、課題があるというばかりでは済まないはずでございます。そのような観点が事業実施主体として一番求められているというか、周りの事業実施主体、そして原子力産業界全体に求められる姿勢ではないかと感じております。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。長﨑委員、どうぞ。

【長﨑委員】

 ありがとうございます。いろいろなお話と、それから今井上委員、それから村上委員が言われたのは、要は我が国の原子力においてマネジメントする能力がない、だから、そこを何とかしなさいというのが一番の課題だというのがよく分かったということだと私は思います。

 山名委員のご説明にもあったように、俯瞰しながら全体を引っ張っていくマネジメントの能力、あるいはその人ということの欠落が大きな問題ではないか。すみません、他人事のようなことを言っていますが、それだということが改めてわかったということだと思います。

 それから、井上委員が一番最初に言われたことでちょっと思ったのは、それから、今日お話を伺っていて思ったのは、前提ありきではなくて、再構築し直すぐらいの気持ちでこの技術移転、産業化というのを考えていかなくてはいけなくて、今日のお話の大前提は、例えば、山名委員の資料にはありませんが、原子力機構ありきだというのがすべての資料にある。原子力機構ありきというのが大前提になっていて、本当にそうなのかということも含めてやはり議論すべきだろうというように思いますし、最後、産業化していくのだとしたら、例えばなぜAREVAが産業化できているのかどうか知りませんが、AREVAは商売としてうまくやっていけていて、我が国のサイクルは商売にならないから、きっちりと国が面倒を見なければいけないのか、どこに差があるのかというところまで踏み込んで議論しておかないと同じことになると思います。

 それから、技術移転等々においても、人のモチベーションをいかに維持するかというところまで含めて考えておかないと、時間の問題、それから、おそらくはっきり言って原子力機構に就職しているというか、入っている方の大部分は基礎研究がしたいと持って入っている人で、経験年齢がいって実用化をやりなさいと言ったってモチベーションが上がるわけがない。だから、ある程度人の心理まで踏み込んだ設計をしていく。だから、結局最後はマネジメントになるのだと思いますので、そういうことをしっかりと国なり事業者なりがしていくべきなのだろうと思います。おそらくそれは大学での教育というところにも関わってくるのだろうと思いますが、そういうことなのではないかと思います。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。他にいかがでしょうか。

【小川委員】

 先日あるフランス人と話したのですが、山名委員のお話は大変大事なポイントがいっぱいあったのでが、その中にやはり性能目標をどうするかというお話があって、フランスのGeneration 4とかという世界になると、やはりそこのところは大変悩ましい問題をいっぱい抱えているということがよく分かりました。

 何でこの問題が悩ましいかというと、実現の時期が非常に遠いということが1つ当然あるわけなのですが、今原子力の世界というのは、国際市場の問題とナショナルセキュリティーの問題をうまく調和させないといけなくて、例えば核不拡散ですとか安全性というのは、これは一国の中で閉じなくて、言ってみれば国際的な枠組みの中でだんだん決まっていくということになっていって、そうすると、やはり国際的ないろいろな動きをうまく使いながら、その核不拡散、安全性の考え方を固めていって、それを性能目標に反映させないといけない。だからこそGeneration 4のフォーラムというものをうまく使っていかないといけないということだと思います。

 一方で、ナショナルセキュリティーという問題があって、あまり国際、国際と言っていて主体性がなくなってしまうと、では技術のナショナルセキュリティーはどうなるんだという話があるのだと思うのです。そこをどうやって調和させるかということは、今、どこの国の原子力開発も深く悩んでいるところだと思っています。

 ですから、今、こういう問題を考えるときに、国の中だけで、我が国はどうするかと国の中の体制の話になってしまいがちなのですが、そういう国際的なファクターというものをうまく入れ込んでいかないといけないかなと思っています。

 そのときに、前々回に山名委員がモジュラー的アプローチということをおっしゃったのですが、これがもう一つ大事な視点であるというように思います。勢いそうやって国際的な技術開発ということを考えると、1つの国がインテグラルに全部をスタンダードに握るということはあり得なくて、どこのモジュールをうまく担っていくのかとか、どういう国際的な分担をやっていくのかということを考えないと技術開発はし切れないのだと思っております。

 そういうところで、今、日本原燃が事業主体としてこれからどう展開していくのかとか、そこにJAEAがどう協力していくのかということを考えないと、非常に架空な議論をすることになってしまうのではないかと思っております。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。丹沢委員、お願いします。

【丹沢委員】

 今日こうやって田中部長とか市村委員から、この間の30年、40年を整理されて、私は大学というよりは企業、メーカーで長いこと技術開発をやってきましたので、そういう立場から見ると、非常によく整理されて、納得的な方向性を実は感じているところでございます。

 今日の原子力の話、規模の大小というようなキーワードの中で、メーカーというところというのは、少なくとも今日いろいろお話がありましたように、主体の問題がはっきりしているわけです。技術開発目標がはっきりしている。だから、基礎研究段階で原理実証をしたら、その人間が事業化に向けて人ごと行くわけです。それで仕組みをつくるといったことになる。原子力の場合は、ちょっと規模が違うのですが、そういう意味では主体がはっきりしていて、効率的な技術の見極めとか課題とか、そういったところについても、そういう論理、ベースがわりあいはっきりしていたということだと思うのですが、村上委員のほうからのお話も非常に納得的なところがあったのですが、形の上での主体ということではなくて、現場での実質の主体の確立ということがやはりポイントであると思います。やはり今後の方向性というところをここではきちんと出していくべきところなのですが、基本的な方向性が出ているのではないか。やはり原子力機構は国の機関として基本的に基礎の部分をきちんと担っていくように、既存のインフラとか、今後必要なもののインフラをよく整理し、方向性を出していく必要があるのではないかと思います。直接的に技術移転というわけではないのですが、そこのところが大事かなというように思っています。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。他にいかがでしょうか。高橋委員どうぞ。

【高橋委員】

 私は、通水試験からアクティブの初めぐらいまで日本原燃におりまして、今、電気事業連合会で田中部長と行ったり来たりしている関係になるわけで、そういう意味では、事業者側からも、それからステークホルダー側からも見ているので、マネジメントが総じて駄目なグループの一員に入るのではないかと思うのですが、経験から言わせていただきますと、先ほど長﨑委員からあったのですが、一度原子力機構のあり方も含めて物を考えるというところについてはいいと思うのですが、経験で言うと、原子力機構が六ヶ所の建設、それから今の試運転に果たしてきた役割というのは非常に大きかったというように私自身は思っております。

 そういう枠組みで考えた中で言っても、若干原子力機構というところに対して、原子力機構法も、それから今の独立行政法人の評価の仕組みも含めて、いろいろな制約が大きいような気がしておりまして、原子力機構の中の行動様式というか、物の考え方が、まず法律ありき、それから原子力機構法ありき、それから中期計画ありきで物を考える。そこの制約を少しフリーにしてあげるような仕組みができないか。そこのところは、ここの委員会の中で最終的にどこまで考えるかというところにもよりますが、できれば、ぜひそういう提言ができればいいのではないかということを若干考えております。

 そういう意味で、技術移転というように言いますと、自分自身の経験でいっても、ポイントで考えるのではなくて、かなり長い時間まで、要するに、ウラン濃縮なんかでも、やはり経年劣化というようなところまで考えて、そういう官民の役割分担を考えていく必要があると思いますし、それからもう一つは、全体としての柔軟性というようなことで、やはり年度予算で物を考えるというようなところから、タイムリーに研究目標というのを設定しながら研究を進めていけるような制度的なことを考えていただければというように事業者側としては考えてございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。他によろしいでしょうか。服部委員どうぞ。

【服部委員】

 今日の最初の市村委員の資料は、大変よく整理がされていて納得がいくようなものだと思いますし、それから、今高橋委員からありました原子力機構というもののいろいろな制約の前提を少し取っ払ったような形で自由にといいますか、かなり思い切って書いておられるというように思います。唯一といいますか、これに付加していただきたいのは、先ほど小川委員からのコメントにあった、この技術はいずれもセキュリティにかかわる、つまり核拡散にかかわるというところと、そういう観点からナショナルセキュリティーということ、そういう国際的ないろいろな制約のある技術開発であるということ。それからもう一つは、いわゆるエネルギー安全保障という観点から、どこまで国産技術でまかなおうとするか。つまりすべて国内で完結するような形を目指すのかどうか。これは経済産業省のほうの議論の中でもそういう議論が若干出ているのですが、そこをもう少し踏み込んで議論する必要があるのではないかなと思った次第であります。

 市村委員の最後のページに、今後目指すべき方向性ということで、これも非常にわかりやすい絵がかいてありまして、先ほど来出ているAREVAのモデルが、果たして我々が目指すべきモデルかどうかはちょっと議論する必要がありますが、これで言うと、一番最後のページの発想の転換のところ、こういう形になっているのかどうか。AREVAもCEAというようなところとうまく連携をしながらやっているわけですが、果たしてそういう形になっているのかどうかということであります。そこは私はよく分からないのですが。

 それからもう一点、日本原燃として目指すべき方向が、AREVAとも違う新しいモデルを目指すべきだと思うのですが、それがどの辺にあるのか、私が外から見ているところでは、日本原燃というところは、基本的にはほぼ完成された技術をオペレーションするという、そういう組織だと思うのです。そのオペレーションを通じて得た経験で、改良改善というようなことをやっていくということでありますから、したがって、ベーシックなところについてのノウハウといいますか、そこはあまりないと考えるべきだと思います。それをどうやって支えていくかというところが大事なところでありまして、そこがAREVAの場合にはどういうようになっているのかというところでございます。

 例えば運転の領域というのはある巾の中で決められていますから、多分そこではオプティマムな領域があって、そこを最低3点ぐらいのデータでカバーされているのではないかと思いますが、それを外れたところが一体どういう世界があるのかということについてのノウハウがあって、それを理解して初めてきっちりしたオペレーションができるのではないかというように思っていますので、そういう観点から市村委員の書かれているような、それをサポートするようなベーシックな機能というのは引き続き維持していく必要があると思います。それが原子力機構になるのか、あるいは原子力機構プラスメーカーの形になるのか、あるいは日本原燃の中にそういうものをつくるのか、これは非常に基本的なところだと思いますので、ぜひそういう議論をこの場でできればと思っています。

 ありがとうございました。

【田中主査】

 ありがとうございました。あとはいかがでしょうか。

 先ほどの高橋委員、今の服部委員、また市村委員からもいろいろと前向きなご提案もあったかと思うのですが、今の問題点とかは、多分皆さん大体共有しているところがあって、マネジメント能力がないとかですが、では、今後どうすればいいのかというふうなことについて、今後また報告書をまとめていくときに参考にさせていただきたいと思いますので、いろいろとご意見をいただきたいと思います。

 フランスの例などを見ていても、AREVAにしても半国営会社ですよね。我が国は相当状況が違う。それから、先ほどの事務局の論点5に原子力機構と事業主体とメーカーの役割で3つのすくみと書いてありましたが、そこで1つ抜けているのは、国がどうするのかというのがあって、四すくみ状態になっている。また、一方で、原子力機構の組織論みたいな議論が始まってくると、これは多分時間と労多くして、それほど効果がない。それほどゆっくりできない中で何をやっていくのか、何が一番効果的なのか。先ほど高橋委員がおっしゃったような評価制度の見直しとか、資金の使い方か分かりませんが、現実的で前向きなことをご提案いただけたらと思うのですが、いかがでしょうか。

【小川委員】

 資料5の山野課長からご説明いただいたものの随所に柔軟性という言葉があって、これは先ほどの高橋委員からのコメントともあわせて、原子力機構としては大変ありがたいキーワードだと思っているのですが、やはり柔軟性というものをこの先どう確保していくのか。あるいはどう全体の中に組み込んでいくのか。そのためにはどうすべきなのかということで、何か前に進めるような議論がいただけたらありがたいなと思っております。

【田中主査】

 ありがとうございました。井上委員、お願いします。

【井上委員】

 論点11で先ほどから議論されている国際技術でいくのか、自主開発するのかというところなのですが、ここは今分かれ目に来ていると私は思うのです。

 というのは、まず1つの考え方として、今の段階で再処理プロセス全体を我が国でやる、開発するということ、これはFSなんかがとっている立場ですが、ただ、その場合に先ほどから話が出ていますようにトータルシステムとして性能保証をこれまでした経験がない中で、本当にできるのかどうか。

 それからもう一つの道としては、幾つかの要素技術を実際にやって、例えば抽出なら抽出、それを世界に誇れる我が国の技術にするかということ。

 それからもう一つは、完全に国際主義を基本路線として、良いものをそちらから取るかということなのですが、今、実際に現状を考えた場合、その辺の方針を決めないと、これから結構資金、計画、それから資源等が変わってきますので、この辺のところの日本の戦略というのは早期に決める必要があると思います。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

 それでは特にないようですので、もしまた後で何か思いつかれたら、メールでも結構ですのでいただくことにして、次の議題にいきたいと思います。ただ今いただいた議論は、これから報告書をまとめていくときに、ぜひ入れたいと思いますので、ご意見の追加がありましたらよろしくお願いします。

 続きまして、議題2、原子力人材の育成の在り方についての検討でございますが、東京大学の長﨑委員から大学側からのご意見ということで、原子力人材の育成の在り方についてご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【長﨑委員】

 事務局のほうから大学として困っていることなどをということだったので、少し考えてきました。

 資料にございますが、最初の3ページの日本語で書いているところが私の資料で、その後ろの参考として小さい文字で書いているもの、これはオバマ大統領がNASで講演をしたときの原稿です。

 一番最後ですが、表紙だけつけていただいていますが、『FOREIGN AFFAERS』に出ている論文でして、この先生は現在は国務省の部長か何かに任命されている方だと思いますが、そういう方の資料です。こういうのも参考にしながら書いてみました。

 全体ですが、国立大学の法人化というのは、これは教育改革ではなくて、財政改革の一環であるということは、今後も続くということと、それから、あくまで今回のこの表の3ページの資料はあくまで私の個人的なものでございまして、別に東京大学の中でいろいろとお伺いしたというものでもないということで、あくまで個人的なものということにさせていただければと思います。

 それから、自己反省のところで3点ぐらい書いておりますが、これはあくまで私自身が反省しているところでして、国立大学法人という意味を必ずしも理解をしていただくように努力をしてきていないところがあるのではないかと考えており、国立大学法人というのは民営化ですので不採算部門はなくなるというものですので、そこはしっかりとこれからも考えておかなければいけないということだと思います。

 そのときに、原子力に限りませんが、大学教育の国際化というのが求められているのだろうと思います。大学そのものの国際化が求められているというように考えておりまして、その1つがグローバルCOEというような制度を文部科学省のほうで制度設計していただいて、現在走っているところですが、グローバルCOEにつきましては、大学の教育改革というところではそれなりの成果を上げつつあるのだろうと思いますが、なかなかまだ大学の組織改革という本来の趣旨にまでは立ち至ってないのではないかというのが反省しているところでして、あと、大学が大学であるのは、学というものを確立していくところということなのですが、若干現在、評価疲れとか競争疲れを理由にしてしまって逃げているところもあるのではないかというのが、私の反省しているところでございます。

 その自己反省を棚に上げての提案でございますが、原子力人材の在り方としては、日本の大学は人、いわゆる教員も含めて学生までの人と、それから資金、そういったものの流れはグローバルネットワークの中でつくっていかなければいけない。しかも、そのネットワークができたときに端っこにいても全然意味がなくて、真ん中あたりにいなければならないという必要がある。そのためにどのようにしていくかということを、大学の組織改革と意識改革まで含んでいくようなことが必要なのであります。

 それで、第一義的には、あくまでこれは大学の問題ですが、若干その辺をサポートしていくようなシステムが必要ではないのかということだと思います。かなり強い大きなドラスティックなことをしていかないといけない。例えばそこにスーパープロフェッサー事業と書いてありますが、それなりのネットワークの中核になるようなものを無理やりにでもつくらせていくような形をサポートしていくことが必要ではないかと考えているところです。1つの案としてふっと思いついただけなのですが、そういったものがあるのかなと思います。

 その下に旧帝大7校云々ありますが、1,675名の卒業予定者のアンケート、ですから既に卒業している人の4年生に対するアンケート結果が出ておりますが、英語に対するコミュニケーション力というのが、必要性は感じるのだけど実現ができていないとか、国際的能力が磨かれていないとか、あるいは国際的能力を磨くのは、卒業研究とか、留学生との交流であるとか、そういうようなところが出てきておりますし、それから、OECDとかIAEAでのインターンシップというのがありますが、現実的にはTOEICで880ぐらい取るような人でないと、来ても、はっきり言って無駄だというような状況ですので、そういった人を育てていくことが大学として必要であるというように考えておりますので、そういったものがまずは大事かと今考えているところでございます。

 (2)ですが、これは東大生だけのアンケート結果しか出ていないので、他大学は分かりません、66%が自分の大学にプライドを持っているのですが、それに見合うだけの実力を持っていると思うのは42%に過ぎないということです。これは当然大学に大きな問題があるのですが、おそらくこのことの意味していることの1つは、教育は大学だけで閉じて考えていてはいけないということなのだと思いますので、海外も含めた産官学のネットワークの中で生涯にわたって教育が受け続けられるような体制といったものをつくっていく必要があろうかと思いますし、そういった中で、おそらく産業界もそこに関わって来ることによって、また工学・技術者倫理といったような視点の教育も高まってくるのではないかと考えるところでございます。

 (3)番目ですが、これもアンケートを見ていて思ったのが、専門分野以外の学術の理解度といったものがかなり落ちている。64%から48%に落ちているということです。特に原子力のようにすそ野の広い分野といったものに対しては、おそらく学問的にも俯瞰する能力をつけた人材が必要になってくるということなのだろうと思いますが、これは言うのは簡単ですが、これも(2)と同じで、非常に長い時間の中でこういったものを育てていけるような仕組みをつくっていくことが大事で、はっきり言って2年とか3年で教育ができるわけはないのであって、大学そのものもそうですし、それからシステムとしても長期的に人を育てていける体制、あるいは育てていきたいなというインセンティブが働くような体制をつくっていく必要があるのではないかと思いました。

 一番最後のページのその他ですが、これは一番最初に事務局からいただいた大学として何が一番困っていますかということを自問自答すると、科学教育の不足と思います。工学系の人間としてはそう思うということですが、それを突き詰めていくと、大学入試そのものが問題だということになりますので、天に向かってつばを吐いているようになって申しわけないのですが、この辺は何らかの方法が必要かというように考えているところです。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの長﨑委員からの意見も踏まえましてご議論いただけたら思いますが、いかがでしょうか。

【山名委員】

 長﨑委員のおっしゃったことは大変よく分かるのです。私なんかが見ていると、実は原子力人材育成の問題というのは、ものづくりというか、工学全体の問題でもあって、結局今の大学入試制度云々の話の中で、つまり、ものづくり系を目指す子どもが減ってきているという深刻な問題があるわけです。成績が優秀だったら医学部に行けと、そういうルートがあったり、まあセンター入試の問題かもしれませんが。

 やはり原子力の人材育成ということを我々が考えるときに、やはりものづくり、あるいは重電というところのある業界に絞られますが、大きなものを何かつくっていくということをもう少し大事にする社会が本当はないと駄目なのです。原子力はその中の一部でして、おそらく原子力だけではなくて、重電産業自身が少しそういう傾向があるのではないでしょうか。本当にそういう重厚長大なものに意識を持とうという子どもが減ってきているということは最も深刻な問題で、突き詰めれば長﨑委員がおっしゃったように、結局入試制度の問題に返っていく話なのです。

 だから、我々は原子力人材という言い方をしていますが、もう少し懐を広くして、ものづくり人材を確保するというところからほんとうは始めなければ駄目です。これは天につばするところですが、文部科学省の一つの教育制度の問題に立ち返っていく問題だと思います。そういうところに原子力側から発信していくということはとっても大事だと僕も思っています。

 ちなみに、そういう流れの中でなおかつ入ってきた工学系の学生というのがいるわけです。それが今私たちが教えている生徒なのですが、その中も2つに分かれるのです。何となく変なのと、しっかりとある大事なところを見ている学生と2極に分かれているのです。我々はそういう制度をくぐり抜けて入ってきたその2極の中でも、その上のほうにあるピークの人間を何とかこの原子力業界に引き入れないといけない、こう思うわけですね。

 あとは、今度は大学の中の経営の問題になります。2極に分かれた問題が、大学の中で変なところに散っていくというカリキュラム上の問題があるということです。

 そういうようなことで、長﨑委員のおっしゃったことは非常に大事で、少し広く我々は見ていく必要があるのだろうなというように思っております。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。あとはいかがでしょうか。

【小川委員】

 原子力工学科が多分最近は人気がないのだと思うのですが、ただ、考えてみると、ものすごいミクロな現象が地層処分だとか原子炉という巨大な科学を支えているという非常におもしろい学問分野のはずなので、もう少し原子力学界全体として訴えようがあるのではないか、アピールのしようがあるのではないかと思うのですが、そういうこともあって、アクチノイドネットワークなんていうのもそこの活動を期待しているのですが、原子力というと怖がっているとか、母親が行かせたがらないという話は別として、学生として見たら、結構魅力的な分野にこれからますますなり得るのではないかとは思っているのです。特に新しいツールができてきて、今までなかなか見られなかったような放射性物質も扱えるようになってきたということもありますので、今、ある意味でチャンスではないかなというように思っております。

【田中主査】

 ありがとうございます。あとはいかがでしょうか。

【村上委員】

 私のような若輩者がこのようなことを言っていいのかという思いもありますが、あえて皆様とはちょっと世代が違いますので、世代の違う立場から考えることはないのかと思って、あえてちょっと生意気を言わせていただきます。

 原子力に優秀な人材が集まらなくなったと皆様、大先輩方は非常にお嘆きですが、原子力に人気がなくなったのは昨今、最近のことではないというのは、かつて十数年前に原子力工学科を卒業した立場としてそれが実感です。

 具体的に申しますと、私の12年上の先輩がいらっしゃいまして、その先輩がその先輩のころは非常に原子力も優秀な人材が多かったなという感想を私が述べましたところ、いや、そんなことはないよ、僕らのころから原子力は人気なかったよと。12年上でございます。田中先生よりちょっと下だと思いますが、ちなみに12年上ですから、当然スリーマイルの事故よりも、チェルノブイリの事故よりも前です。ちなみに私はチェルノブイリ事故後の原子力工学科進学組ですが、とにかくそのように他学科と比べて原子力工学自体に魅力がない、あるいは工学全体に人気がなかったという現象は、もう既に何十年前からの問題でありまして、その中でも人気がないなりにそれなりの人材がおそらく原子力の仕事につくようになってから育っていっていたはずでございます。現にその世代の方々が今の電力でありますとか、メーカーでありますとか、そういうところで中枢的な仕事を担われているわけです。

 そうしますと、問題は、優秀な人材が来なくなったからではなくて、やはり受け側の産業界のほうが、どっちがどっちというわけではないのですが、私の実感として、そんなに昔の学生のほうが質がよかったという実感はないものですから、その12年上の先輩の言葉もありますし、そういう意味ではあまり教育面ばかりに責任がいってしまって、あるいは日本全体の教育の昨今の問題にいってしまうのも、ましてや最近のお母さん方は原子力はやめておけと子どもに言うとか、そういう問題ではないのではないかという気もいたします。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。丹沢委員、どうぞ。

【丹沢委員】

 人気の話が出ましたので、ちょっと人気の件なのですが、確かにおっしゃるようにここ10年以上原子力への志望者が少ない。それが受け入れ側のほうの問題も1つあると、そういう状況があったと思うのですが、そういう意味では、今後の日本のインフラという意味で人材育成をスタートさせたわけなのですが、そういう危機意識が底流にあったわけです。

 実は、私ども東京都市大学は、原子力安全工学科という原子力系の学科を立ち上げまして2年目を迎えました。立ち上げ準備状況のときの学生さんの反応等を見ていると、人気がないというところを少し修正する必要があるのではないかという状況があります。2年入学試験がありまして、今年は昨年と比べて5割増しという志願者があったという状況があります。もう少し時間をかけていろいろ分析しなければいけないだろうというように思います。

 そういう意味で、1つ私が申し上げたいのは、高校生、生徒も原子力をやりたいという層はそれなりに底流としてあるはずなのです。ですから、どこに行ったらそういう勉強ができるのかなというところは、やっぱり用意しておく必要があるのではないか。教育体系の在り方というのは、ここでもいろいろ議論されておりますが、質と量をどのようにバランスさせていくかということがあると思うのですが、私ども私学として、そういう意味で旧帝大の果たす役割と私学が果たす役割というのはいろいろあると思いますが、やはり我々としては、少なくとも学生さんがそうやって学ぶという機会の場を1年のときから与える必要があるだろうということ、これは1つ大事なポイントで、そういう反応が出てきているのではないかというように、現状報告、途中経過みたいな形ですがさせていただきたいと思います。

 もう一点は、長﨑委員も最後におっしゃった教育論で、実は入ってきた学生さんの学力レベルというのを考えますと、やはり少しそういうことを感じることが、現実としては認めざるを得ないのです。高校の先生と話をすると、実は大学のほうの問題だけではない、高校のほうの問題がある。それはその辺のレベルまできちんと教えるような体系に必ずしもなっていない部分があるので、やはりトータルにその辺のところは考えていく必要があるというようなご意見もいただいているところです。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。あとはいかがでしょうか。

【服部委員】

 感想めいたことであれですが、先ほど城石さんからご説明のあった事例ですが、これは原子力とそれ以外のところの、いわゆる事業環境が大きく違っているところなので直接は比較はできないのですが、大学が全体のプロジェクトの中で技術の本当のコアのところで大変重要な役割を担っているということは、これは原子力と比べて全然違うのです。先ほど来の議論は、原子力の大学は人を供給する、そのようなことで我々は捉えているのですが、何とかこういう形で、いわゆる産官学というような形で技術のコアのところで大学の役割を担っていただければ、より良いのではないかと思うのですが、ただ、それを考えたときに、やはり原子力と、それからこういう情報の部分との技術の発展段階といいますか、それが大きく違っていて、本当の競争の段階に入って、そういう中でのものなので、少し違うのかと思ったところです。

 それからもう一つは、原子力の置かれているいろいろな制約条件、核不拡散の問題があったり、事業という観点で言えば、地域との関係がものすごくあって、地域とのコミットメントでいろいろなスケジュールが逆に制約を受けるみたいなところもあって、非常に難しい環境にあるものと、そういうものが全くない中で、フリーの危機感といいますか、先ほど出ていたようなああいう形で技術開発が行われているところとの違いというのを改めて感じた次第であります。

 言いたいことは、大学は人をただ教育するというだけではなくて、技術開発のところでもう少し役割を担うような形ができないかなと思ったところですが、本当にそれができるのかというのは自問しているところであります。

 以上です。

【田中主査】

 井上委員、どうぞ。

【井上委員】

 今のこととも関連するのですが、今、学生のほうばかりにどちらかというと議論がいっているのですが、先生のほう、教える教官のほう、そちらのほうにも少し問題があるのではないか。問題というのは、教官のほうの専門分野にもちょっといろいろ変化があるのではないかと思っています。

 というのは、先ほど村上委員がおっしゃった一昔前のオーソドックスなところからいけば、例えば炉物理、炉工学があり、放射化学あり、核燃料があり、それから廃棄物というのがあったわけです。だけど、そのころはれっきとしたすごい専門家の先生がいたのですが、今はかなりその辺が薄れているのではないかと思うのです。それは学生が来なくなったからか、それとも先生が宿替えしたのか、その逆かもわかりませんが、少しその辺のところも考えないといけないと思います。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。小川委員どうぞ。

【小川委員】

 今の井上委員の話なのですが、フランスって、実は大学に原子力学科はないのです。それでもちゃんと人材はつなげているということ。それと、オランダとかスウェーデンのようにモラトリアム的政策をとっている国の人たちと話すと、そろそろ彼らも原子力に復帰しようとしているのですが、ずっとモラトリアムだから人材が絶えてしまって大変だろうというと、全然心配してないと言うのです。何で心配していないかというと、欧州フレームワークプロジェクトの中で産官学のコンソーシアムを組んで技術開発をやっている。そういう中で人がきちんと育っているということなのです。

 やはりそういうところはヨーロッパというのは仕組みのつくり方がうまいと思うのですが、だから、それぞれの国の事情があるので、それぞれの国の事情に合わせて、産官学が共同してできる仕組みというものを用意すれば、その中できちんとやっていけるのだと思うのです。だから、今の大学の原子力を何か大きく変えるという必要は全然ないと思っております。

【田中主査】

 ありがとうございました。

【田中企画部長】 大学の学生の人気がないということについての原因というのは幾つかあると思うのですが、最大の原因は産業界にあると思うのです。産業界がうまくやっていないということで、学生はよく社会を見ていらっしゃいますから、自分の将来にとってどこがいいかというのを見ていますから、産業界がトラブルを起こしたり、果ては不祥事を起こしたり、うまく回っていないというのはやはり敏感に見られているから人気がないというのは最大の原因であると思います。したがって、産業界がしっかりしないといけない。すなわち、原子力がすごくうまく回っていて、すごく未来がある、将来があるということを言わないといけないと思っています。

 そういった意味では、ちょっと日本原燃の例をとりますと、日本原燃は青森にありますので、弘前大学で講義を開かせていただいて、1年間ずっとやっているのですが、そこで産業界の人間が原子力についての未来を語ると、すごく評判がいいのです。私自身も自分がやったことについてお願いをして、学生が自分の話した内容にどういう感想を持ったかというのを全部読むようにしているのですが、まるっきり印象が違うのです。

 そこで何が重要かというと、次は先生の責任なのですが、ちょっとこれは叱られてしまうかもしれませんが、さっき長﨑委員が再処理は商売にならないとおっしゃったことがずっとひっかかっていて、そういうことを先生に言われてしまうと、やはりちょっと学生は、それは駄目だなと思ってしまうと思うのです。

 これは明らかに間違いで、経済産業省が5年ほど前に評価をし、また原子力委員会が再度評価をして、日本はリサイクル路線は埋設するより高いかもしれないが、そこに価値ありと認めると。それは環境とか、エネルギーセキュリティーとかいう問題もあるし、それからやはりリサイクルをするコストを上に載せても化石燃料発電よりも優位性が大きいということを確認して、それだからこそ、そしてそのことをめぐる市場の単価というのはどんどん動いていますが、ビジネスをやっている以上、我々は常にそれを追いかけていて、新しい条件のもとでも原子力はサイクルを込みにして化石燃料発電と戦えるというのは、これは明白な答えであって、したがって、先生にぜひ再処理は商売にならないと大学で言われてしまうと、せっかくそうでないとこちらも大学に出かけていって言っているものですから、産業界がまずしっかりしないといけないのですが、産業に将来があるということを学生が納得すれば、自然に人気が出てくるのではないかと思っています。

【田中主査】

 ありがとうございました。学生は産業界を見ていますし、さらに優秀な学生は、日本国とか世界を見ていますので、よろしくお願いします。

【長﨑委員】

 私は産業にならないと言ったのではないはずで、私は産業にならないという意見があったのだけど、本当にそうなのかということをきちんと評価せよと。商売しているのでないかというのだったら、なぜ我々はそういうような意識でみんながいるのかというところを問い直せと言ったのであって、私は産業になっていないと思っていません。

【田中主査】

 最後に山名委員、お願いします。

【山名委員】

 産業界が求めている人材の中で、いわゆる原子力を専攻した人間なんてごくわずかなのです。1社2人ぐらいしか該当者はいない。本当は機械とか電気とか、さっき言った重電系のきちんとした工学的学問を修めた学生は多分大量にいるのです。大事なのは、そういう連中をきちっと入れることです。

 それから、原子力的な観点で言いますと、さっき言ったように原子力というのは寄せ集め学問なのです。我が国で一番大事なのは、核的な現象に対するリテラシーが低いこと、それから核的なことに対する抜きん出た注意が非常に重要だということなのです。ここを失敗すると、非常に社会上の問題でも問題だし、核不拡散のような問題が起こるわけで、核というのにやはり多くの人が親しむというか、親しむといったら変ですが、核に触れるチャンスというのはやはり広いほうがいい。

 ところが、大変残念なことに、さっきの人気の問題か知りませんが、核に触れる機会が大学から減少している。これはカリキュラムも減っているし、燃料物質を扱えた大学が、そこはもう維持できなくて縮小していっているというような現象があるのです。7帝大の中でも、名古屋とか北海道とか、そういう傾向にあります。大学の研究施設というのは、ご承知のように私立大学と、今は東京大学、京都大学です。

 何を言いたいかというと、そういう核的な現象にわずかでもいいから触れるという機会を持つことは、この国の教育としてやはり基盤的なものだと思うのです。一種の基礎教育です。実際うちの臨界集合体やなんかには、累計で3,000人ぐらいの学生が必ず勉強に来て臨界という現象を体感していっているわけでありまして、やはり基盤強化という観点で言えば、そういった若い世代、あるいはいろいろな人が核的な現象に触れられる教育現場というのは、広く薄くでもいいから残して欲しいということです。これはまさに原子力の基盤を強くする。それはたとえ機械工学から電力会社に入った人でも、そういう実験を1週間やっているということは大きいと思いますので、基盤強化という意味でも、そういう教育現場のフィールドを残すということが大事だということはお話しさせていただきたいと思います。

【田中主査】

 ありがとうございました。

【城石主管研究長】

 産業界の者なのですが、私どものハードディスクの分野も同様で、必要な学生は、非常に多岐にわたっているんですが、なかなか入ってきていただけない。例えば、東京大学で言えば磁性を扱っている研究室がないとか、いろいろな問題を抱えています。それではやはりいけないということで、実は産業界でお金をそれぞれ出し合って、例えば奨学生の方とかをそこにアサインして、その方を育てるとか、少しおこがましいのですが、先生方にこういうテーマで一緒に研究していただけませんか、ということを実は始めております。それはやはり、先ほどのように目的意識があって、最後は教育というのは一番大事ですから、そこまでを含めてやるというのが、やっぱり産業界の覚悟でありまして、それがないと、ただお任せして、学生さんを採るというだけではいけないと思います。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 もう時間もオーバーしていますが、これだけはぜひ言っておきたいというような委員がございましたらお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。

 どうもありがとうございました。今後の作業部会での報告書をまとめていくときの参考にというか、中身にさせていただきたいと思います。

 以上で本日予定していた議題はすべて終了ですが、そのほか、委員の方々から何かご意見はございますでしょうか。無いようでしたら、事務局から連絡事項をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 次回はいつかというのはまだ分かりませんが、なるべく早く今月中にもう一回ぐらい開催したいと思っています。

 今まで3回やってきて、今日もですが、いろいろな点でかなり貴重なご意見をいただいて、かなり発散しておりますので、若干論点を整理するとか、それとある程度急ぐものとか、引き続きずっと検討するものとか、そういうことを事務局のほうで少し考えてみたいと思います。そのような何をするかも含めまして少し検討した上で、次回のアレンジをさせていただきたいと思います。

 きょうの議事録については、出来ました段階でメール等でチェックをお願いいたします。

 以上でございます。

【田中主査】

 どうもありがとうございました。

 それでは、これをもちまして第3回の原子力基盤強化作業部会を終了いたします。

 どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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