原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力基盤強化作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成21年5月21日(木曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省 旧文部省庁舎2階 第2会議室

3.出席者

委員

田中主査、市村委員、井上委員、小川委員、小澤委員、高橋委員、丹沢委員、服部委員、村上委員、山名委員

文部科学省

櫻井大臣官房審議官(研究開発局担当)、坪井開発企画課長、山野原子力計画課長、中澤原子力計画課課長補佐、稲田原子力研究開発課課長補佐

4.議事録

【田中主査】

 それでは、第2回原子力基盤強化作業部会を開催いたします。

 まず、本日の議題や配付資料につきまして、事務局から説明をお願いします。

【山野原子力計画課長】

 議事次第を見ていただきまして、今日は2つのアイテムについてご議論いただければと思っています。人材の話と、インフラの話です。配付資料としましては、資料1から資料5まで、それぞれ関係の各委員からお話をいただくという資料を用意してございます。資料1と資料2が人材に関すること、資料3から資料5がインフラに関することです。

 個々の資料は確認いたしませんが、もし何か不備がありましたらその都度言ってください。また、あわせて、パンフレット等につきましては適宜挟まれておりますので、あわせてご参照ください。

 以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 それでは、議題の(1)「原子力人材の育成の在り方についての検討」に移りたいと思います。

 まず初めに、日本原子力産業協会の服部委員から、「原子力人材育成について―産業界から見た原子力人材育成問題―」についてご説明をお願いいたします。

【服部委員】

 日本原子力産業協会の服部でございます。

 資料1をご覧いただきたいと思いますが、前回この場で、私どもが4月に公表いたしました原子力人材育成関係者協議会の報告書をお配りしましたが、その中からの抜粋を若干資料の後ろにつけておりますが、今日はその報告書についてご説明するということではなく、全体を俯瞰したという形での産業界から見た原子力人材問題ということで資料をまとめております。

 表紙をめくっていただき、2ページですが、原子力人材を取り巻く現状ということで、これは皆さんもうご案内のとおりでありまして、我が国並びに世界的な規模で今原子力で何が起こりつつあるかということでして、原子力が基幹電源としての役割、それから、地球温暖化対策という観点から再評価されて世界的にもルネッサンスというような動きがあるということを書いております。

 次のページに行きまして、それでは、我が国で今申し上げた基幹電源というような観点からどういう取り組みが行われているかということであります。

 1番目が、基幹電源としての役割を確実に果たすために、まず既設炉をしっかり活用していこうということ、それから、計画されております新増設、あるいは、これから起こるであろうリプレースに対してしっかり準備しておこうというところであります。

 それから、原子力ルネッサンスという世界の大きな流れに我が国が持っている技術力を積極的に活用して、あるいは、貢献していくということで、さまざまな取り組みが行われているところであります。そういうことから、引き続き我が国の原子力産業界としては優秀な技術者、あるいは研究者というものを確保していく必要があると考えております。その優秀なというところがどういう人なのかは、これから先申し上げたいと思います。

 4ページに行きまして、もう少し産業界の実態について触れておりますが、我が国は過去40年以上、建設プロジェクトが途切れることなく継続されてきました。これは世界の中でも極めてまれなといいますか、日本だけだと言ってもいいくらいでありまして、そういう観点から、産業界としては諸外国に比較して恵まれた環境にあったと言えると思います。

 しかしながら、これから先を見てみますと、電力需要というのは大きな伸びが現状見通せないという中で、当面計画をされておりますプラント、現在3基建設中でさらに12基のプラントが計画段階にありますが、これを着実に進めていくことになります。従って2030年頃から始まると予想されるリプレース需要の立ち上がりまで国内での大幅な新増設計画はないという見通しであります。このリプレースに対応するため、現在ナショナルプロジェクトとして官民一体で次世代型軽水炉の開発に取り組んでいるところであります。従いまして、当面産業界として見ると、海外プロジェクトへの参画というものが大きなビジネスチャンスと期待されているところであります。

 最後に「なお」と書いておりますが、1990年代の半ばぐらいですか、大きく建設の時代から運転保守の時代に移ったと考えておりまして、そういう観点から新規炉の開発や設計・建設という機会が全体的に見て減少し、設計・建設経験者の高齢化、あるいは、彼らが持っております技術技能の伝承ということが課題になっているところでございます。

 次に、大学の状況ということです。これは先ほど申し上げました協議会の中でいろいろなデータベースを整理したわけですが、それは後ほどの参考のほうで見ていただきたいと思いますが、全体的な傾向として、初等中等教育段階での理科離れとともに大学における工学離れということで、工学系学科の人気が低下をしているということ、それから、工学系の中でも電気、機械などいわゆる産業の基礎・基盤となるような学科への志望者が減少し、場合によっては定員割れも起こしているような状況があり、そういうことから質が低下している。特に、最近若干持ち直す動きが出ておりますが、原子力と名のつく学科を有する大学の減少、それから学科の大括り化による原子力についての体系的な学習機会の減少、あるいは原子力教育の希薄化、それから実験・研究施設の老朽化、それから原子力関係学科への志望者の減少、質の低下が起きているということでございます。

 それでは、先ほど優秀な技術者が欲しいと申し上げましたが、産業界が求める原子力人材といたしまして、電気事業者という立場で見てみると、幅広い基盤かつ特定専門分野の深い知識を有し、あらゆる分野に対応可能な人材を採用するという、この理想的な人材をここで要求しているのでありますが、その一つ目が、T型(ジェネラリスト)と言われている技術者ということで、原子力を幅広く理解し、原子力発電や燃料サイクル施設等の開発・管理・運用について全体を俯瞰し企画・調整するという、技術者というよりも政策論というような、そういうところを主として携わるということかと思います。二つ目が、I型(スペシャリスト)と言われている技術者ということで、専門知識を生かして個別の課題解決に対応するというようなものでございます。

 三つ目は、原子力の技術というのは、社会とのインターフェースといいますか、対話が極めて重要でありますから、技術というものをバックグラウンドに持ちつつも、地域との橋渡し、あるいは国際的に活躍するというようなエンジニアが求められているということでございます。

 次のページに行きまして、次にメーカーの立場で見ますと、ものづくりにまず興味を持つ人材が欲しいということ。日本の強みというのは一言で言うとものづくりということになろうかと思いますが、専門分野的に言うと、原子力工学系、機械工学系、電気・電子工学系、物理系、金属・化学工学系、材料・腐食・水化学系などであります。それから、世界的に原子力が見直されているということで、これから国際展開ということが見通されておりますので語学力を期待するということ。業務の分野としては、研究から始まって設計、建設、運転、保守というようなところに携わる人たちということであります。

 次の8ページですが、若干視点を変えまして、先ほど来、国際的というお話を申し上げておりますが、国際的な場で活躍できる人というのはまずどういう場面があるだろうかということですが、これはメーカーの立場でいうと、原子力プラントの輸出、これは先進国である場合、新興国である場合、あるいは途上国である場合、それぞれ若干違いますが、それから、国際的な研究開発に協力をしていくという場で活躍をするということ。それから、さまざまな国際会議、あるいは、国際機関で活躍するということ、それから、次はかなり個別・具体的な話ですが、世界標準の企画・基準というようなものが議論されておりますが、そういう場に積極的に参画していくということであります。

 従いまして、期待される能力・資質としては、専門分野をベースにしつつも、語学力、いわゆるプレゼンテーション能力、コミュニケーション能力ということ、さらに、性格的にといいますか、若干社交性、積極性、国際的な視野、さらには、文化的素養というようなところという、コミュニケーションしていくためにはやはりこういうものが備わっていることが望ましいということ。それから、そういう機会をとらえて国際的なネットワークを構築していくということ。これは社交性、積極性というようなところにつながることだと思っております。

 9ページに行きまして、以上のことをもう少し別の形でまとめてみると9ページのようになりまして、求められる人材像という形にしております。原子力技術者として活躍するためには、まず原子力の基礎知識というものをしっかり持ってもらうということ。先ほど原子力の工学に対する希薄化というようなことが出ておりましたが、そういうことがないようにということであります。

 それから、実験・実習というものを通じた現象の把握と分析能力といいますか、やはり数字や数式だけではなくて、やはり現象をしっかりと捕らえるということが大事であるということであります。

 それから、電気、機械、化学、土木、建築などの専門知識、とりわけ基礎・基盤分野の知識ということで、ここに星印をつけておりますが、次のページをご覧いただきますと、どういう分野かということで、先ほどメーカーの立場のところでも話しましたように、極めてハードといったら語弊がありますが、ベースとなるような材料・金属、構造力学、溶接、腐食、水化学、熱流動、振動、電気・電子・制御、それから最近は地質・地盤・断層、あるいは、耐震設計・免震設計・制震など、そういう分野であります。

 ページを戻りまして、そういう基礎的な知識といいますか、そういうものをしっかりベースにしながら、それを有効に活用するような汎用的な能力が必要だということ。それから、一般産業界においてはということで申し上げますが、コミュニケーション能力、これは地域であったり、あるいは、国際的な場であったり、それから特定の分野に軸足を置きつつ全体を俯瞰できる能力、法律や技術史、経営工学などについての基礎的な知識、それから、新しい技術分野に取り組む探究心、課題解決能力、熱意、責任感、倫理観というようなところ、そのようなところであります。

 以上が本文でありまして、11ページ以降は先ほどの報告書の抜粋でありまして、これは1ページずつながめていただきたいと思います。

 最初は検討の経緯ということで、レポートをまとめるに至った経緯を書いてございます。次は検討の流れということで、どういう検討をしたかということでございます。特に定量的なデータを一応私どもとして可能な限り取ったということと、ヒアリングを随分やりまして皆さん方のご意見を幅広く聞いて、それをまとめて課題、対策というようなところにまとめ上げていったというところです。

 13ページのところは原子力の人材に関する基礎的なデータということで、これまでの日本の原子力開発の歴史を言っているようなものであります。14ページは人材の需要と供給についてのデータであります。15ページが大学における現状ということで、左側のグラフは大学院に行く原子力の志望者が減る傾向を、右肩下がりになっている傾向、それから、右側の青と赤のグラフは青が79年で30年後の2007年において原子力の科目が減っているとか、あるいは、このグラフで一番特徴的なところは、1979年と2007年とで、実験・実習の科目数が数分の一に落ち込んでいるというところが見てとれます。

 そういうことを踏まえて、最後のページにありますように、1から6のとおり提言としてまとめたところであります。以上でございます。

【田中主査】

 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして日本原子力研究開発機構(原子力機構)の小川委員から、「日本原子力研究開発機構の原子力研究開発基盤の現状と課題―人材育成等について―」のご説明をお願いいたします。

【小川委員】

 本資料の中は、大きく分けて3つほど入っております。1つ目が、原子力機構が一つの事業として取り組んでいる、いわゆる原子力研修センターの取組などです。2つ目が、外に主体があるような人材育成に対する協力、それから3つ目が、コミュニティ的な活動の中で人を育てようという新しい試み、こういったものを取りまとめております。

 まず、表紙をめくっていただきまして2ページですが、これはまさに原子力機構の事業として行っている原子力研修センターの取り組みであります。ここでは左肩に書いてありますとおり、国内研修として国内技術者育成、それから機構技術者教育ということですが、ここでの研修はもっぱら原子力にかかわる専門知識を与えるという研修であります。それから、その下のところに国際協力として、アジア原子力協力フォーラムの人材育成ですとか、IAEAの原子力安全ネットワーク、こういったところに専門家、あるいはテキストの提供、それからアジア諸国から将来その国での講師の候補になるような研修生を受け入れるといった活動を行っております。それから、右側に大学等との連携協力とありますが、これは次のページでもう少し詳しくご説明いたします。

 それでは、次のページですが、ここでは大学等との連携協力ということで、これが実はここ数年非常に拡大しているところであります。左上のところにJAEAの発足とともに始めました東京大学の原子力専攻、専門職大学院、それから、原子力国際専攻との協力ということが書かれております。ここでは専門職大学院について客員教授を出したり、非常勤講師を出したり、あるいは、実験・実習ということで実習講師延べ78名が協力をしております。

 それから、右側に連携大学院、これは現在で14校ありますが、そのほかにも福井工大、あるいは、津山高専との協力といったような形で客員教員を出しております。

 それから、左側にやはり青い囲みの中に原子力教育大学連携ネットワークというのがありますが、このような5大学と一緒にインターネット回線で双方向の遠隔教育システムを確立しております。それから、若干でありますが、実習を実施して学生を受け入れております。

 そのほか、右の下のほうには文部科学省、経済産業省が平成19年度から開始しました原子力人材育成プログラム、現在34大学9高専が採択されておりますが、そのかなりの部分に対して出張講義をしたり、あるいは、実験実習生を受け入れたりという形でご協力しているところであります。

 こういった形で外の人材育成の主体にできるだけ協力するということは、原子力機構にとっても大変大事な活動であると認識しておりますが、幾つか悩みがございます。それが4ページのところに書いてあります。

 まず、先ほどのお話にもありましたとおり、産業界の側から見ても実験・実習を通じた現象の把握、こういった過程を経た人が必要であるということでありますが、学生が自ら実験に携わる機会を提供するということは、安全管理も含めると相当な作業量あるいは準備量になりまして、原子力機構の中でも例えば核燃料ですとかRIといったものの取り扱いと安全管理に習熟した技術者というのは全体的に高齢化し、人数も減っております。このあたり、できるだけやらなくてはいけないと思う一方で、なかなか苦しいなという状況になっていることも事実であります。

 それから、2つ目ですが、連携大学院、この協力のやり方が非常に難しいところです。連携大学院はあくまでも大学側に主体がある話ですから、我々のところはそこに客員教員というような者を1人あるいは2人という形でそれぞれの大学に推薦するわけですが、やはり大学側に主体があるものですから、なかなか組織的な対応がとりにくいということがあります。それから、個々の学生の側から見ると、東海村や大洗に来ないといけないということで、アルバイトの機会が少ないなど、敬遠されがちな要素もあると現場から聞いております。

 それから、3つ目ですが、これは2つ目と似たような話ですが、原子力機構自身のためにこういう活動をもっとやっていきたいという気持ちは持っておりますが、ただ、大学側の個別の事情に対してきめ細かく対応するということはこれは到底不可能でありますので、改善しようとしたときにどうやっていくかというのは今後の課題と考えております。特に学生を受け入れたときに学生が来てよかったなと思っていただけるような形での充実というものを今後どう図っていくのかということを考えていきたいと思っております。

 それから、5ページ目ですが、ここにはその他のさまざまな取り組みが書いてあります。人材育成ということですと、左側にありますが、産業界との協力ということで、再処理とかプルトニウム燃料に関する実習を、日本原燃株式会社との協定による技術協力といったような形で、累計900名ほどの方に研修ということで協力をしてきております。その他、右側にあります原子力緊急時支援・研修センター、あるいは国際原子力情報・研修センターといったところでの研修活動もあります。

 それで、この原子力研修センターの最近の状況ですが、真ん中のところに少し薄い青色で表がかいてあります。18年、19年、20年という形で、やはりこういう研修に対する需要というものが少しずつですが高まってきているということがこの表の数字からも見ていただけるかと思います。

 6ページですが、これはまだ試行の段階ではありますが、一つこの原子力の世界、こういうところにもっと広い人に入っていただいてこの活動のベースを広げようという試みをいろいろな大学と一緒になって始めているところであります。

 その代表的なものがこの日本アクチノイドネットワークというものですが、アクチノイドというものがγ線、α線、中性子線を放出するということで特別な施設が必要であるということで、非常に参入障壁の高いそういう研究分野であります。そういうところにできるだけ今まで関係ない人にも入って来れるようにしたいということがあり、大学の方々と相談してこういうネットワークを立ち上げました。このネットワークの中身については、次の7ページにありますが、これは20年3月に8つの大学と原子力機構、財団法人電力中央研究所が発起人となり、事務局を東北大学に置き、ネットワークをつくりました。

 その中で、その下の絵にあるとおり、研究者のネットワークをつくり、人が交流するだけではなく、まさに試料の使い回しといったような貴重なアクチノイド試料を使い回すとか、あるいは施設を相互乗り入れするとか、そういう活動をやっていこうということであります。こういう活動の中で新しい人を育てていこうということで、コミュニティの中でこの将来のアクチノイドの研究を担うような人を育てていきたいということであります。

 これはまだ始まったばかりで、今後活動として盛り上げていかないといけないのですが、その一つの試みが8ページにあるのですが、このアクチノイドネットワークを支える一つの活動として広域連携ホットラボといったものを始めております。これは東北大学の大洗の施設、京都大学原子炉実験所、それから原子力機構東海のNUCEF、原子力機構大洗のAGFといった施設を結んで、そこで研究活動の相互乗り入れ、それから、プルトニウム、アメリシウム、キュリウムといった試料の使い回しといったことを行っていこうということであります。

 次に9ページですが、原子力機構では、いろいろな標準のデータベースですとか標準コードというものをつくっているのですが、かつてに比べてこういうところのユーザーサポートというものを意識的にやっております。利用講習会といったような活動をしておりまして、こういうところでも随分産業界の方にも来ていただいて、また、こういう講習会をやることで産業界側、あるいは、ほかの原子力以外の分野の人たちの要望といったものも汲み上げて我々の活動の一つの資料として使わせていただいております。

 10ページでまとめになりますが、人材育成に関して大学等との連携が強化されておりますが、連携大学院での人材育成、これについては大学側に主体があるということで、どのように柔軟かつ効率的な対応ができるのかということではまだ検討していく余地があるのかなとは思っております。

 それから、2つ目ですが、ACTINETですとか、それから、原子力研修センターで始めているような海外の原子力人材育成関係機関との連携、こういったことを通じて、国内外の知的なネットワークを形成して、その中で共同して人材を育てるという取り組みを強化していきたいと考えております。

 以上であります。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの服部委員、小川委員のご説明も踏まえまして、人材の育成のあり方について議論をしたいと思います。ご意見等よろしくお願いします。

【山野原子力計画課長】

 一つよろしいでしょうか。

【田中主査】

 山野課長どうぞ。

【山野原子力計画課長】

 配付資料の一番最後に、参考として、AREVAのプレスリリースの資料がありますが、少しこの議論に関連しますので、簡単にご説明します。

 これはたまたま先週の14日のAREVAのプレス発表ですが、私もこれ以上の裏とりをしているわけではないのでこれ以上の情報があるわけではありませんが、これを見てわかりますように、例えばAREVAは今年度、フランスだけではなくて5つの国とか地域ということで、ドイツ、中国、北米、フランス、あと、インド、中東から今年度、1万2,000人の技術者のリクルートキャンペーンを行うというようなプレス発表がたまたま先週出ていました。

 この資料自体はそれ以上の情報がないのですが、ホームページとかを見ると、その1万2,000人のうち4,000人はフランスで、8,000人がフランス国外というようなことが出ていましたので、我々がこれから議論しようとすることと、これは輸出プラントメーカーの立場ということになるのでしょうが、少し関連する話なのでご紹介させていただきます。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 では、今の件も含めまして、人材育成のあり方についていろいろと議論したいと思います。小澤委員、お願いします。

【小澤委員】

 先ほどの服部委員の資料15ページで、大学における現状の課題でありますが、服部委員の説明にもございましたが、特徴的なことは実験・実習というところの教育が非常に減っています。一方、2007年の赤の棒の方が高いところがありますが、ここは多分シミュレーションをやっているのではないかなと思います。我々メーカーとしても、ぜひこの実験・実習と、現場というか実条件に近い条件で試験、実験をして、そこから考える力を養えるよう人材育成していただきたいと思った次第でございます。

【田中主査】

 私も大学におりますが、どんどん実験的なところが減っていったりしていて、その辺の分析をして、それがどうしてなのかということについて、何か整理があるといいかなとも思います。実験設備を維持するのが結構大変であるとか、昔は技術職員とかがたくさんおられましたが、定員削減の中で人が減っていくとかいうようなこともあったりして、やむを得ずというようなところもあろうかと思いますが、その辺のところもこれから議論できればいいと思っています。

 あと、何かございますか。山野課長どうぞ。

【山野原子力計画課長】

 小川委員の資料で、連携大学院についてはかなり進んできているものの、主体が大学にあるので柔軟な対応が難しいなど、いろいろ書かれていますが、何が一番ネックになっているのでしょうか。

【小川委員】

 連携大学院について言いますと、これは正直な非常にストレート過ぎる言い方をしますと、大学の側から特定の研究者が一本釣りされるような形で、そこに客員教員として協力をするという形です。

 これは悪いことではなくて、原子力機構の人間にしてみれば大変名誉なことでもありますし、一つ人に教えるということで自らの研鑽にもなるということでいいのですが、組織のほうから見ると、そういう活動が人事評価などに入れるようにはこの頃はしているのですが、やはりどうしても見えづらいということで、本当は組織としてもっときちんと対応したほうがいいと思いますが、どうしても一人一人の研究者のところで言ってみれば個別な対応になってしまっていて、非常に見えづらくなってしまったりしていて、そこが問題ではないかと思っております。

 ですから、学生さんが来て、一人一人いろいろな不満を抱えたりということが断片的には聞こえて来るのですが、そこのところに対して組織的に対応することは難しいというところです。

 本当は、連携大学院の大学関係全体と原子力機構というような、全体で何か議論するような場所でもあればいいのですが、今の連携大学院のシステムはそうはなっておりませんので、どうしても個々の研究者が自分の裁量の中で問題に対して解決しようとするという形になっております。

【坪井開発企画課長】

 1ついいですか。今おっしゃったことは、多分そういう連携大学院がたまたまそうなっているからであるということだと思います。別な例で、筑波にある研究所と筑波大学の例では、一つの学科を丸ごと一つの独立行政法人が請け負っているというようなシステムもありますので、一本釣りでない形も、制度的にできないわけではないので、それは大学側と研究所側で工夫をすればできる可能性はあるのではないかということを一言ご紹介したいと思います。

【小川委員】

 次のインフラのところで多少お話ししようと思っておりましたが、そういう共同運営的な組織も我々としても検討していきたいと考えております。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 東京大学も原子力専門職大学院をいろいろとやって、対等にということを思いながらも、やはりこちらがかなり意識しないと本当の意味での対等になっていかないところもあって、それが何か人事評価の問題なのか、もうちょっと深いところにあるのか、その辺を一つ解決しなくてはいけないかと思いました。

 私から服部委員に質問ですが、学生にアンケートをしたりいろいろとやっておられますが、資料の中に、優秀人材はどのような人だというようなことも書かれていて、こういう要望というか、こういう人材が欲しいということをまとめられていますが、大学の様子を見るとなかなか本当に優秀な人材がまだ原子力には来てくれないようなところもあるのかと思うのです。その辺の原因がどこなのかということが分かるようなアンケートなどの調査はされたのでしょうか。少し変なことを言うと、給料が少ないのか、外国と比べて日本の原子力の行く末がなかなか見えない、見えにくいとか、何か少しもう一つ何か深いところに理由もあるような感じもするかと思うのですが、いかがでしょうか。

【服部委員】

 今日はご説明をしませんでしたが、一番最後のページの16ページに提言というものを書いております。ここで今まさに田中主査がおっしゃったようなところがにじみ出ているのではないかと思うのですが、まず1番目で、初等中等教育課程でエネルギー・環境ということを言っていますが、その前に理科離れや数学離れみたいなことが起こらないようにどう工夫していくかというのが一つあると思います。

 そういうものとあわせて、エネルギー・環境についての授業と。これは学習指導要領が改定されることになっておりますので、かなり改善はできるのではないかと思っておりますが、まだ時間的には、カリキュラムといいますかテキストの整備であるとか、あるいは教える側のトレーニングというようなこともあろうかと思いますので、少し時間がかかるのではないかと思っております。

 それから、2番目で、原子力界の魅力の伝達とありますが、これは産業界側から、あるいは、研究のところも含めて、原子力にはこれだけの夢があり発展性があり、やりがいがあるというようなことをもっともっと発信していく必要があろうと思います。

 そういう観点から、一つは原子力の産業界と大学側とのコミュニケーションというのがまだまだ不足しているのではないかと思っております。大学側に対してはこういう人たちが欲しいというようなことも伝え、それから、こういう将来を我々は考えているというようなことをもっともっと言っていく必要があるのではないかと思っているところでございます。

 そういうことで、この報告書の中では魅力を伝えるためにはどうしたらいいのかということなど幾つか書いておりますが、今日はあえてそこのところは触れませんでしたが、アンケートの結果はやはり原子力界が例えばマスコミに出るケースを考えると、原子力と名のついたときにはほとんどマイナスイメージの情報しかないのです。

 そういうところから、原子力に行っても将来展望がないと思っている。もっと言うと、母親をどうやって教育するかというようなところにも関わってくるのかと思いますが、原子力なんかには行かないほうがいいというようなことが家庭内で相当すり込まれているのではないかと推測しているところであります。

【田中主査】

 ありがとうございました。井上委員どうぞ。

【井上委員】

 私も昔は燃料屋でしたが、私が育った30年とか35年前と比べるのがいいのかどうかわかりませんが、そのころと比べるとやはり大学の先生自体が例えばウランやプルトニウムといったものを使った研究がかなり減っているのではないかと思います。昔のことを言えば、例えば照射試料を旧日本原子力研究所で照射したり、そういうことを先生自らやっていました。そうすると、先生がそれをやれば当然学生もおのずからそれをするということになりますが、今は大学の中でのそういうアクティビティが減っているからおのずと関連する教育が減っていくのではないかという気はします。

【田中主査】

 ありがとうございます。丹沢委員、お願いします。

【丹沢委員】

 小川委員に一つ質問させていただきたいのですが、連携大学院というところでいろいろご苦労されている。主体が大学側にあるということですが、率直に言いまして、大学側で指導する側の人材をやはり育てる必要があるということを感じているのかという側面と、もう一つは、やはり原子力機構のほうでいろいろ大学院生を指導する上で、試料の準備とかそのほかでいろいろ負担になっているのか、こういった点についてのご認識といいますか、お聞かせいただければと思います。

【小川委員】

 連携大学院で客員教員となって協力するとき、大きく言って2つあると思います。

 1つは、集中講義を分担するという形で、これはある意味個人の努力でカバーすればいい話ですので、その人にとってはちょっと労働になりますが、同時に人を教えるということは喜びでもあるということで、それはよろしいかと思いますが、学生を受け入れる場合、要するに、こちらで学生を受け入れて実験をしてもらって学位論文などを書いてもらうというときに、やはりそれは原子力機構が受け入れたという形ではなくて、あくまでも連携大学院の客員教授たる誰々が受け入れた学生さんという位置づけになってしまいます。そうすると、その学生のためにもっと組織として、本当はいろいろなことをやってあげたいなと思っても必ずしもできないという部分があります。

 今まだこういう人が少ないのですが、我々は本当はもっと、先ほど井上委員から核燃料を取り扱っている先生が少ないというお話が出ましたが、だんだん核燃料の管理が厳しくなってくると、我々自身でさえもう相当な体制を整えないと核燃料の実験なんてできないような状況になっているときに、おそらく大学で続けていくというのはある特定の施設の先生方を除いては相当難しいのではないかと思っております。

 そういう意味でいくと、本当にこの実験・実習を重んじたような原子力教育をこの先やっていこうとすると、我々のところにそういう形で、あるいは、これ以外にもいろんな形で学生を受け入れないといけないのではないかと思っておりますが、それがこの今の連携大学院のシステムだと少しやりづらいかなという部分を感じております。

 これは原子力機構の中でもまだまだやりようがあると思いますので、今東海研究開発センターのほうで少し議論を始めたところで、もう少し課題が整理できた段階でお話しできると良かったかもしれません。

【丹沢委員】

 ありがとうございました。

【田中主査】

 あと、いかがでしょうか。

 先ほどの山野課長が言われたAREVAの件を見ると、フランスは何か1万2,000人もと書いてあったということで、こういうことを日本のメーカーはあまりやらないのでしょうか。

【小澤委員】

 こういうことに対して学生は非常に敏感ですので、こういう記事が出るとメーカー等に人気が集中するということだと思います。全体的な流れを見ると、学生も海外の原子力ルネッサンスという流れの中で原子力のほうに少し興味を持ってきているというのが現状かと思います。某社においてはこういうふうな広告を出しているところもあるようです。

【田中主査】

 ありがとうございます。

【服部委員】

 今の件でよろしいでしょうか。あまりこういう場でお話するのは適切でないかも知れませんが、私どものところで原子力産業セミナーという形で学生に対する原子力産業の実態を理解してもらうということと、あわせて、そこに参加した企業は、あるいは学生は就職活動の一環というような場を設けております。

 そこの場には最初は200人ぐらい、それから、300人近く、去年は500人を超えるような学生たちが集まって、非常に盛会になっています。実はその場にAREVAが、(AREVAの日本法人は私どもの会員でもありますので、)その辺は非常に戦略的にやっていまして、その場で日本の学生と直接接触をし、彼らに対してインターンシップというような制度があるのでフランスにぜひとか、そういう言葉を聞くと学生にとってはとても魅力的なのです。

 そういう点から言って、日本のメーカーなり日本の機関が海外に出かけてそういうリクルート活動をやっているかというと全くといってできてないと思います。そういう意味で、非常にフランスは戦略的にその辺を取り組んでいるというのがよくわかると思います。

【田中主査】

 ありがとうございます。あと、いかがでしょう。

【小川委員】

 今の件に関連してですが、AREVA、あるいは、フランスのやり方ですが、産業界が出ていく前にまず大学が出ていくのです。中国なんかはパリ大学が最初に出ていって、そこから学生を連れてきて、あるいは、パリ大学で実際にそちら側に分校的な仕組みをつくったりしてということで、そういうところはやはりフランス人というのは非常に上手だなと思うのですが、日本の大学もそういう取り組みを始めておるのだと思いますが、やはりああいうフットワークの良さというのは見習う必要があるのかなとは思います。

【田中主査】

 そうですね。例えば、うちの大学とフランスのある大学が連携関係などを結ぼうということになってくると、フランス大使館の人が一緒に来るとか、AREVAの人も一緒に来るとか、そのような形でフランス国として議論を展開してきて、そういうところから興味を持たせていくという感じでやっていたり、かなり戦略的にやっていると思いました。

 1つ質問で、小川委員に聞いていいのか、原子力機構で昔からアジア地域の人を取り入れて研修をするなどをしていまして、あれはかなり歴史的には古いと思いますが、最近の情勢の変化に応じた形で見直すとか、あるいは、今後どのようにしていくかなど、その辺検討されているのでしょうか。

【小川委員】

 まだ組織的に見直すというところまでいっておりませんが、明らかにそういう先方から積極的に人を送り込んで少し訓練して欲しいという話はぼつぼつ出てきておりまして、例えばマレーシアのほうから自分のところに保障措置技術分析のセンターを将来的にはつくりたいということで、その人材育成に協力して欲しいとか、それから、JMTRに研修で人を出したりとか、そういったような動きもあります。そういう形の動きというのはこれから各国が原子力の開発を進めていくと出てくると思います。もう一つは、カザフスタンのほうでやはり原子力の安全ということで、そういう人材育成に協力して欲しいといった、そのような話も出てきております。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 今回のいろいろな整理に入ってないかと思いますが、外国との人材育成に関する取組については、各々の大学で外国からの留学生を受け入れたり、文部科学省の仕組みがあったり、あるいは、原子力安全研究協会の仕組みがあったりなど、一度その辺を整理して、さらにオールジャパンとして効果的にするにはどうすればいいかというようなことも検討されるのもいいかなと思いました。

 あと、いかがでしょうか。高橋委員どうぞ。

【高橋委員】

 全体、感想ですが、特にベトナムなんかに行って感じるのは、いろいろな国がプレゼンテーションで出てくるのですが、韓国なんかはやはり非常にドキュメンテーションというのが非常にうまいような気がしていて、いろいろなところでトレーニングとかプレゼンテーションをやるときに、わりと一本でまとまったデータがしっかり出てくるような感じがしています。

 日本のやり方というのはどうしてもいろいろな機関がいろいろやっているものですから、ノウハウが一元化されていないというか、その時々に応じて電気事業者も資料をつくっているので、非常にちょっと散漫な感じがしていまして、ああいうソフトウエアをしっかり基盤技術にして厚みを持って、いろいろなところに日本としても海外に出ていけるような仕組みと言うか、やはり共通にそういうものを持つというような動きを日本全体としてはやはりしていく必要があるのかなという感じがいたします。

 特にソフトって日本人はあんまり得意ではなくて、何かやろうと思うと、また一から英訳しなければ駄目だとか、そういうことが非常に多いので、やはりデータベースをしっかり整備をしながら、いろいろ出ていくときにそういうものをうまく使っていくとか、使ったものをアップデートしてもとに戻して、また最新のものにしていくというようなことが日常的な活動の中でPDCAが回せるような仕組みがうまくできると、全体としては非常に高効率的な仕事の仕組みになるのかなという感じがします。

 大学教育なんかは、どのようになっているかよく分かりませんが、そういうようなことも考えていくと原子力として全体として厚みが増えてくるのかなという感じがします。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 ご参考までに教えていただきたいのですが、韓国はそのような仕組みをどこが中心となってやっているのでしょうか。

【高橋委員】

 そこはよく分かりませんが、例えばKINS(韓国原子力安全技術院)とかの資料を見ますと非常にまとまっていて、海外に頻繁に行っているというような雰囲気のきちんとした資料が出てきて、説明も英語で非常に流暢ですし、非常にいいかと。日本の原子力安全基盤機構(JNES)がどういう感じなのか私自身はよく知りませんので、比較できるような立派な資料ができているのかもしれませんが、少なくとも何となく関係者でしっかり情報を共有しながら、共通の財産でソフトウエアをしっかり持っておくというような文化といいますか、そういうものが非常に何か大事な感じがします。

 多分仕組みがわりと、国を前提にして一本になっているというようなところがあるので、そういうところの日本との産業体制の違いが、フランスも多分同じだと思いますが、そういうような部分も背景にあるのではないかと考えます。

【田中主査】

 ありがとうございました。服部委員どうぞ。

【服部委員】

 今までの発言があったので、あえて控えていましたが、話をしていると何か国際戦略みたいなことで、国内のまず原子力の教育をどうするかと、こういう話の前にそういう話が中心になってしまいそうですが、海外なんかも視野に入れつつ、もう一度日本全体としてはどういうふうに相互連携をしながらやっていくかということだと思います。

 そういう意味で、今日、今しがた原子力機構からご説明いただいた新しい試みというアクチノイド研究のネットワーク、こういうのが一つの何かモデルになるような気もするので、何かこういうふうな形の活動ができればいいのではないかと思った次第であります。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 山名委員もACTINETについては中心的メンバーであると思いますが、いろいろとご苦労があるかと思いますが、まだまだ日本の中でこういうものをしっかりとしていくためにはどういうところが問題だと思われますか。

【山名委員】

 アクチノイドに特化した話をしますとかなり特殊な世界になりまして、ただ、一つ典型的に言えるのは、従来縦に離れていたものが横につながることで非常に得るものが大きいということです。試料が動くとか人間が動くとか学生が現場を見るとか、今までなかったものに何かの流れを加えることができるのは間違いないことかと思います。

 ですから、特に今まで田中主査も私も旧文部省ですよね。要は旧科学技術庁と旧文部省の間にはギャップというのはやはりありまして、そこが流通できるようになるということは凄いことかと思います。だから、文部科学省に完全になればいいので、それが旧原子力局的な部隊と旧文部省的な部隊がもっと流れるようになるというのは本当にすばらしいことなのです。ぜひそっちを拡大したいと思います。

 それで、一つよろしいでしょうか。今2つお聞きした話はどちらかというと原子力という一つの大きな着目したものの話なのです。ところが、前も言いましたが、原子力というのは決して孤立した学問でもなくて、もっと大事なのは、原子力でない学問分野の人たちもこの原子力という技術を真剣に考えるとか、目を向けてくれるとか、機械とか電気とかそういう技術者も原子力に大いに必要ですから、そういう広い意味での学問分野が原子力というものに結構親近感を持ってくれる、あるいは、存在感があるとか、そういうことをやることでやはりどんどん強化されると思うのです。

 これは原子力という一つの限定されたところがお互いに連携してもある程度限度があるでしょう。だから、そういうもう少し広いアプローチができないかと前から思っていました。そういう意味で、今の議論の中で人材のスペクトルの話はあまりありませんでした。求められている人材に原子力的な極めてスペシャルな人間もいれば、もっとジェネラルなエンジニアが欲しいというのもあれば、もっともっと広く他の学部でも何でもいいから原子力というのをもう少し真剣に見てほしいというのがある。

 原子力のスペシャリストのためにはいろいろおっしゃったような取り組みが必要だし、それ以外の部分についてはもう少し何かやることもあるのかなという印象は持つのですが、いかがでしょうか。

【田中主査】

 井上委員どうぞ。

【井上委員】

 いわゆる原子力のそういう人材育成の前に、これは服部委員がさっき触れられたかもしれませんが、やはりエネルギー教育そのもの自体をしっかりしない限り、幾ら原子力に人を持っていこうとしても駄目であると思います。

 エネルギー教育というのは、私は昔、出身の中学校か小学校かに行って話したことがありますが、殆どの小中学校でそういう時間がないのです。先ほど服部委員が言われたように、母親からプルトニウムは怖い、恐ろしいものと聞いているというように言うのです。だから、まずその辺りをしっかりすることが私は大事だと思います。

【田中主査】

 原子力教育、エネルギー教育の重要性についていろいろなところでいろいろな意見が出て、文部科学省でも着実に検討が進んでいるのかと思います。

 ほかに意見があるかと思いますが、ひとまず先に進ませていただき、今日いただいたいろいろな議論につきましては事務局のほうで適宜まとめていただき、今後の作業部会での議論に生かしたいと思います。

 次の議題(2)ですが、「研究開発インフラの整備と有効活用の在り方についての検討」であります。

 まず初めに、原子力機構の小川委員のほうから「日本原子力研究開発機構の原子力研究開発基盤の現状と課題-研究開発基盤および原子力エネルギー基盤連携センター」についてご説明をお願いいたします。

【小川委員】

 それでは、殆どの話が現状の説明となってしまいますが、まず、できるだけ正直に現在の姿をお示ししようと思っております。

 まず、表紙をめくっていただきまして、施設共用ということですが、これは旧2法人が一つになりまして原子力機構になってから、施設共用というのが明確にこの法人の仕事となりました。

 それで、そこに基本的考え方が書いてありますが、まず、保有する施設は可能な限り外部者の広範な利用に供するようにしようということです。それから、自分の都合で利用の可否を決めるのではなく、第三者の審査を活用するなど、透明性・公平性の確保をきちんとするということです。それから、費用については利用者負担を原則とするということですが、成果の公開、非公開を基準に負担額を分けるということ。これは一つの国際標準であると思いますが、そういうやり方をとっております。それから、施設があって、さあどうぞ使ってくださいといって、使えるような施設というのはそうありませんので、やはり教育トレーニングですとか運転支援等、こういうサービス体制の充実を図るということ。それから、大事な話として、利用者がどこにアクセスしたらいいのかということですべてに対して窓口を一本化しようということで、産学連携推進部といったものをつくりました。

 そういうことで、現状17の施設が共用施設として指定されておりまして、いろいろな申し込みを受け付けているところです。

 ただ、これを見ていただけると分かりますように、試験研究炉と、それから、加速器関係の施設、こういったものが中心であります。ホットラボ、あるいは、燃料サイクル関係の施設といったものはまだ共用といったところにはなっておりません。

 それで、次のページを見ていただくといいのですが、施設共用といってもいろんな形態があります。受託といったような形で、労力込みで使っていただくもの、それから、文字通り共用でユーザーに対して施設を開放するというもの、それから、ものによってはなかなかユーザーだけではできませんから、共同研究契約といったものを結んでやるというもの、こういった広い形での共用ということでは、共用施設として指定されたものは相当外部の方に使っていただいているというのがこの表を見ていただけると分かると思います。

 分野によってその比重がまちまちでして、やはり加速器関係というのは共同研究が比較的多い。それから、照射、研究炉を使ったような試験ということになりますと共用が多くなってくる。それから、燃料試験施設のようなものになるとこれは受託が多いということであります。

 次のページに表が続きますが、そこでまだこの表に入ってないものとして大事なのはJT-60ですが、これはトカマク国内重点化装置ということで、共同研究の枠組みで全体が運用されているところであります。それから、先ほど申し上げたとおり、ホットラボ、バックエンド、これの外部利用促進というのが今後の課題であります。

 それで、次のページですが、そういうことで課題を幾つか書いてあります。まず施設共用を拡大したいという一方で、なかなか進まないということの理由が書いてあるのですが、まずホット試験とかバックエンド関連施設、これはやはり何といっても利用者に、来てくださいと言うわけにもいかないし、それから、利用者のニーズに従って中身を機敏に入れ変えるという形にも現在の日本の制度からいうとなってないということで、そういうところの利用者に対する利便性の提供という意味では相当いろいろなことを考えていかないといけないということであります。

 特に施設ごとの許認可条件が違っていて、例えば旧核燃料サイクル開発機構の関連の施設ですと殆どの施設がRIの許可を持っていません。これをRIの許可を取れるようにしようと思うと大改造しないといけないとか、そういう不便さがあります。

 それから、仮に施設を共用したとして、施設側の事由で何か試験不調があったときの補償の問題をどうするかというお金の問題も絡んで、こういうことも整理をしていかないといけないのだろうと思っています。

 それにしても、もっと早く取り組むべきではないかという話は当然あると思いますが、原子力機構になってからこういう共用というものを業務として挙げまして、まだここまで及んでいないというところはお詫びをしないといけないところかと思っております。

 それから、利用率を制限している因子ですが、これは既に共用を行っている研究炉のところであるのですが、まず、運転サイクル間の期間がどうしても長くなりがちだとか、日本の制度の中ですとやはり国外の場合に比べると定期点検期間が長くなってしまうというのは、外国の炉に比べると稼働率が低い一つの原因になっています。

 それから、やはりスクラム後の対処ということについて、研究炉というのはスクラムするのが当たり前というくらい実はスクラムするものなのですが、外国の場合ですと、スクラムしてもその日のうちにまた立ち上げるというようなことが普通ですが、日本の場合はその都度きちんと報告をして対処法等をやらないと動かせるようにはならないという、このあたりも細かないろいろな仕事をしようと思うとやはり足かせになってくる部分であります。

 それで、JMTR改造のときにこういうことを議論したのですが、6ページに少し利便性を向上するためにどういうことをやろうかということで、JMTRではこういう対応をとりましょうという一つの方針であります。

 まず、照射手続を簡素化するとか、技術支援体制を充実するとか、それから、原子炉稼働率については当面まず70%は目標にしましょうといったようなところ、ここまでいけば国際水準から見てそう恥ずかしくないところになるのではないかと思います。

 それから、結果が得られるように例えばキャプセル部材を在庫化するとか、そういう意味での回転を早くしましょうというような、こういう細かな工夫を積み上げていくとまだ稼働率を上げる余地はあるかといったところであります。

 それから、照射試験費が高いといったような話もありますので、維持費の合理化ということで30%程度の削減と、そういう数値目標も掲げております。

 7ページですが、それで、原子炉稼働率の向上ということで、これは各国のいろんな炉とまず左側に稼働率を比較しております。日本の炉というのは大体50%ぐらいがいいところだということですが、外国の炉も実を言うと、この頃は大分老朽化してきて、昔に比べると稼働率が低いのです。あまり変り映えのしないようなところまで落ちてきているかなというところですが、稼動率が高いのがHFR、オランダのペッテンの炉です。それから、HFIR、オークリッジの高フラックス炉です。この2つは稼働率はまだ非常に高いということです。

 それで、右側に各国の試験研究炉の運転年数の表がありますが、どこもおしなべて老朽化をしてきているということで、今この老朽化の問題が一番はね返ってきているのが医療用のRIの供給体制、これが国際的に崩壊しかかっているということで、国際的にも今議論が盛り上がっているところです。

 それで、今、欧州に3大研究炉計画というのがありまして、フランスのジュールホロビッツ、それから、オランダのペッテンのパラス、そして、ベルギーのミラーという、この3つがやはりこれからこういうものを、炉をリプレースして3つのセンターという形でやろうとしているところですが、日本は当面JMTRを改造してこういうところを柱にしていこうと私たちのところでは考えております。

 8ページですが、これは大学、民間の研究開発に受託という形で協力しているものを書いております。何でこの表を持ってきたかということですが、やはり民間や国からの受託というものは年々増えております。民間の受託、あるいは、大学からの受託というのは、実はそれぞれのところが国の公募等で取ってきたもののうちのホット試験にかかわる部分を、我々のところで再受託をしているという部分があります。そういう活動もこういう形でサポートをしているところであります。

 9ページですが、これは大学との研究開発の一つの仕組みですが、この原子力機構ですとか、あるいは東京大学といったところの施設を開放利用していただこうということで、連携重点研究という仕組みをつくっております。これは一種の公募制なのですが、そういうところに民間の方も加わっていただいて、施設や設備を協議の上、無償で利用できるようにするという形での研究開発のサポートシステムといったものを運用しております。

 10ページですが、これも原子力機構になってからの新しい取り組みで、先ほどまでは比較的基礎的な話が多かったのですが、ここはもう少し実用に近いところということで、これは産業界のほうのイニシアチブを汲んで、産業界のニーズに対応するような形で産業界と一緒になって研究開発をやりましょうということで、原子力エネルギー基盤連携センターというものをつくりました。広く産学のイニシアチブに応じて原子力の革新技術開発のための共同研究等、このプラットフォーム機能を提供しようということです。

 活動の仕方としましては、連携協力協定を結んで企業や大学と原子力機構との研究者・技術者から成る特別グループをつくって活動をするということです。

 この場合、企業のほうから原子力機構にこの特別グループに参加していただく方について連携研究員というような形で事実上原子力機構の人間と殆ど同じ身分を与えるという形で、原子力機構の中で研究ができるという仕組みをつくりました。資金はマッチングファンド、あるいは、競争的資金を一緒に獲得をしてくるということであります。

 それから、一番最後の行に書いてあるのですが、そうは言っても、原子力機構と組むことが本当にいいことなのかどうか、なかなか分かりませんというユーザーに対して、トライアルユースという形で、まず秘密保持をきちんと確保しながら私たちの施設を一時的に使っていただいて役に立つかどうかという判断もしてもらってから協力に入るという、こういうやり方もとっております。

 それで、11ページが現状の姿ですが、原子力機構の中に原子力基礎工学研究部門といういわゆる基礎・基盤の原子力エネルギーの基礎・基盤を担っている部門がありますが、ここの職員数が約200名であります。ここの人間がいわば兼務の形でこの連携センターに課題に応じて出ていくということであります。一方、民間からは連携研究員という形で人を出していただくということですが、現在5つほどのグループが立ち上がっております。詳しくは説明しませんが、いずれもそれぞれの企業にとって事業上必要があるのだけれど、なかなか自分たちだけの施設、あるいは、エキスパーティーズでは先に進むことが難しい、あるいは、もっと効率的に進めるためには原子力機構と組んだほうが意味があるといったような課題であります。

 新しいものとして、まだ出来て一月も経っていないのですが、ガラス固化技術の特別チームといったような形で、これは新しい仕組みでして、基礎工学の人間だけではなくて核燃料サイクル研究所の人たちが相当ここに入って、ガラス固化に関わる科学的な側面、化学的な側面を少し調べましょうという形で進んでおります。

 12ページについてはちょっと繰り返しになりますので省略いたします。

 13ページですが、こういった活動をさらに拡張していくためにどんなものを用意しないといけないかということですが、それはもちろん古い施設をリプレースしていければいいのですか、それがどんどん進められるという状況に残念ながらないものですから、その中で何をやっていくかという、そういう観点で書いております。

 それで、まず大学や民間との共同運営型の研究開発グループ、これは先ほどの連携センターをもう少し発展させたような形ですが、例えば、ある大学からこのグループを見るとそれはその大学の組織なのですが、原子力機構の中から見ると原子力機構の組織でもあるといったような共同運営型の研究開発グループ、こういうものが欧州なんかでは始まっておりますが、そういうものがつくれないかなということも検討していきたいなと思っております。

 それから、2つ目ですが、大学のほうにもまだ数は少ないのですが、研究炉ですとか臨界実験装置があるわけですが、こういうものを整合的に利用していく、あるいは、整合的に将来計画を立てるということで、そういう調整機能といったものもやはり大学のほうと相談してつくっていきたいと思っております。

 例えば、炉物理や核データの国内・国際ネットワーク、こういうものの必要性は先般原子力委員会で山名委員に主査をしていただいて分離変換の検討会をやりましたが、そこでもやはり指摘されていることですが、うまく国内・国際的なリソースを活用してしっかりマイナーアクチノイドのデータを整備していかなければいけないということで、そういった活動をやっていきたいと思っております。

 それから、医療用RI等での将来需要へのバランスのとれた対応といったこともこれはやっていかないといけないということです。

 それから、ホット施設について維持、共用の促進ということで、特に核燃料サイクル分野、これをどうするかというのは、この後、井上委員から厳しいことを言われる予定になっておりますが、できるだけきちんとやっていけるようにしたいと思っております。

 それから、知識の統合・管理で、シミュレーション技術開発、これは広い意味での知的インフラということではまだまだ我が国は力を入れてやっていかないといけないものだと思います。

 それから、原子力エネルギーの研究開発に、これは欧米に比べると先端ツールの活用というものが少し遅れてきているということで、例えば放射光ですが、欧州などではガラスですとか、それから、抽出剤の研究、こういったものにこの放射光が大変な威力を発揮しておりますが、原子力機構の中でもそこの絵にありますとおり新しい技術が出てきまして、これは抽出カラム内で元素分布、それから、その元素の電子状態の変化とか原子配置の変化、こういったものが同時に把握できるような新しい技術が出てきております。

 こういうものはこれからバックエンドの研究に応用すると大変大きな波及効果を持つと思いますが、こういうものをどんどんつくっていってユーザーに提供していきたいと思っております。

 右側の高速中性子ラジオグラフィーですが、熱流動の研究ですとか、それから、流体と構造との相互作用、こういったものを、現在はこのエンジンですから6,000rpmぐらいの世界なのですが、時間解像度をこの1,000倍ぐらいに上げた技術開発というものもこれから着手しようというところです。そうなると、やはり原子力の世界にも大変大きな影響を持つと思っております。

 以上、まとめとして14ページですが、施設共用は進展しているのですが、ホット施設とかバックエンド関連施設、こういうものに対する利用拡大といったものに対してこれから力を入れていきたいと思っています。

 習熟度の低いユーザー、端的に言うと大学、大学院の研究といったようなところに対する利用者サービス、こういったことに対しても少しずつ対応できるというようなことは考えていくべきではないかと思っております。

 それから、全日本的視野に立った施設ネットワーク構築、先ほどのアクチノイドのネットワークもその一つですが、これからは炉物理分野ですとか核データ分野、こういった分野でやはりこれをつくっていきたいと思っております。

 それから、基盤連携センターと民間との連携ということで、内外の知識・技術保持者と連携した知識管理ということを進めていきたいと思います。

 それから、4番目ですが、国全体の原子力研究開発マトリックス、こういうものの中にやはりこの原子力機構の基礎・基盤研究、これを言ってみれば国のインフラ的なツールということで位置づける、こういう形でやっていきたいと思います。

 以上であります。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 引き続きまして、井上委員から「超ウラン元素研究所のホット施設の概要と運用」につきまして、お願いいたします。

【井上委員】

 事務局のほうから、今回、インフラという面から超ウラン元素研究所のホット施設の概要についてと、それと、我が国の戦略的に確保すべきインフラは何かというようなことのご依頼がありましたので、私見という形で述べさせてもらいます。

 それで、私が専門としている燃料サイクルにポイントを置いてということでお話しさせていただきたいと思いますが、また、例によって厳しいことを言うかも分かりませんが、その辺はご了承いただきたいと思います。

 超ウラン元素研究所(ITU)というのは、これは私が見て、アクチノイド研究に対しては、恐らくここは世界一の研究所ではないかと考えております。それで、これは歴史としまして1963年に設立されて、これはEUが直接運営する共同研究センターの一つで、原子力関連研究はここに集約し、核燃料サイクル、それから、アクチノイドの基礎科学、保障措置等の研究に深い経験を有する世界の先端研究所でございまして、最近はアルファ線を使った医療応用も研究しています。

 それで、場所はドイツのカールスルーエ市の北側にありますドイツ連邦の研究所である、昔のKfK、今はFZKですが、そこと敷地を同じくしてあります。

 職員数としては約300名程度、職員の内訳ですが、約60名が研究者、それから、約110名がそれを支えるテクニシャン、さらにいろいろそのインターフェース等で動きます約50名の補助職、それからこれはEU各国からポスドクを受けておりまして、25名程度、それから外来研究員、そのほかで30名というようになっております。

 次に意外と驚くことが予算なのですが、意外と少ないのです。2007年で、日本で言ういわゆる運営費交付金のような資金が約37.9ミリオンユーロ、それから、コンペティティブ・バジェット、競争資金というのが5.9ミリオンユーロ、トータルで43.8ミリオンユーロです。それから、2006年ですが、トータル45ミリオンユーロということで、60億円弱です。ここには人件費も含んでいます。人件費の割合はどれくらいかと言うと約半分で、その残り半分が研究活動にいくということになります。

 次、超ウラン元素研究所(ITU)、並びにその保有施設の概要ということを、大体どういうものかをイメージしていただきたいと思いまして席上配付ということで配付しております。なぜ席上配付にしたかと申しますと、セキュリティの問題がありまして、ノウハウだとかそういうことに関しては特に問題はないのですが、プルトニウムを扱っていますのでセキュリティ上まだ相手の了解を全部まだもらっておりませんので、こういう扱いにさせていただきたいと思います。

 席上だけの配付で恐縮ですが、まず、「EU超ウラン元素研究所の組織と施設の概要」ということで、これはどういう位置づけにあるかということから入りたいと思います。まず、JRC(Joint Research Center)とは何かということですが、これは欧州委員会の総局と呼ばれる組織の一つです。欧州委員会の委員長であるバローゾ委員長がおり、その下に向こうでいう閣僚である欧州委員がいまして、そこにScience and Research(科学・研究担当)のポトチュニック委員がいます。彼は東欧の出身です。

 そしてその下に、DG・RESEARCHとJRC・RESEARCHとありますが、DG・RESEARCHとは、いわゆるEUが予算を持って各研究機関などに公募等で配賦するところ、そしてJRC・RESEARCHがジョイント・リサーチ・センターで、EUがその直属の研究所に予算を配賦するところです。

 それで、JRCというのはどのようになっているかということですが、5つのサイトに7研究所が所在しております。トータルの人員が約2,650人。予算が300ミリオンユーロ。そして124のプロジェクトがありまして、研究所としては7つありますが、ITU-Karlsruhe Germany-Institute for Transuranium Elementsはこのうちの一つであります。

 この研究所の概要ですが、基本的にどのようなことをしているかというと、ベーシックのアクチノイドリサーチと、それから、燃料サイクル関係の安全性に係る研究保障措置、それから、超ウラン元素のアプリケーションに関する研究ということを一手にやっております。

 それで、なぜ我々がこのようなことを知っているかと言いますと、1988年から電力中央研究所と超ウラン元素研究所との協力ということを開始しており、そのなかでプロジェクトとして金属燃料の研究、湿式再処理の試験、高燃焼度燃料の研究、使用済み燃料の中間貯蔵、乾式再処理の研究等々を実施しております。また現在、もうひとつ新しいプロジェクトをここと折衝中でございます。

 研究所の中の状況ですが、燃料サイクル関係の主な研究とインフラの例ということで、燃料サイクル関係ではこの湿式分離関係、これが16段の遠心抽出器で、ここでいわゆる使用済み燃料の非常にわずかな量ですが再処理をしています。それから、その次が乾式分離研究ですが、これは電力中央研究所が設置した施設です。

 それから、そのほか燃料研究でのホットセル、そしてもう一つ特徴なのは、世界に先駆けてこのマイナーアクチノイドを選択的にある程度の量取り扱えるMinor Actinide Laboratoryと施設をつくっているということでございます。

 次にこの研究所の構造は、真ん中に長い廊下、これは100メートル程度の非常に長い地下通路もある廊下ですが、その真ん中にWing-Cとありますが、これが所長等がおりますアドミニストレーションですが、Wing-AからFまで7つのウィングがありまして、非常に実験がしやすい環境になっております。

 Wing-Bというのが実際に照射済み燃料を使えるホットセルということで、照射燃料を受け入れて、それで、照射後試験、使用済み照射後、それから、溶解試験等をするということでございます。

 もう一つ大きな特徴は、Wing-Eというものがありますが、その中でマシンショップ・工作工場とありますが、ここで実際に使うようなグローブボックスなどちょっとしたものは全部自分たちでつくって、すぐ実験に供するというようになっています。

 ホットセルについてですが、ホットセル内では結構分析装置も充実しています。日立製の電子顕微鏡と、それから、熱伝導をホットセル内でホットの試料を使って測定するような装置です。

 それから、もう一つおもしろいのは、グラム規模でアメリシウム、キュリウムが利用できる中性子遮蔽つきグローブボックス、前はここで電力中央研究所と一緒にMAを入れた燃料を使っていたのですが、今はこれを取り外して、先ほど申しましたMAを先端的に、選択的に取り扱うことのできる施設をつくっているというもので、いわゆるスクラップ・アンド・ビルトによる施設の更新もかなりされております。ここに示した写真は世界でおそらくなかなかないかと思いますが、ここで製造しましたアメリシウムの金属の写真を載せてあります。

 次が、先ほどのWing-AとかWing-Fにありますプルトニウム実験室の様子でして、先ほど申しましたように、グローブボックス等はほとんど内部で自作ということです。それから、電力中央研究所の者が実際に扱っているのですが、先ほどのアメリシウムだとかキュリウムを使った物質をここで使っています。それを使って照射用の燃料をつくったものが写真にありますように金属の棒です。

 それから、もう一つおもしろいのが、実際にEUの中で若手研究者の教育ということで、先ほど小川委員のほうから日本版ACTINET研究というものが立ち上がったとありましたが、EUには既にこのACTINET研究というのがありまして、そこでいわゆる年に2回ほどそういう各加盟国が参加していろいろ講演だとか共同研究も行っています。その一環で、半日ほどかけていわゆる若手を教育するための時間が設けてあり、そこでは今第一線で活躍している人たちの話や、実習、その後楽しくそういう人たちと一緒に懇談するといったように、その辺が非常に有機的に運営されているということでございます。

 次に、ホットセルの概要ですが、24のホットセルと5つの鉛遮蔽セルがあります。その右側にLayout of the hot cell laboratoryとありますが、これが先ほどのWing-Bの照射施設でして、それから、化学試験施設、電子顕微鏡セル、除染セルがあります。そして、電力中央研究所もこの中の一つを占有していまして、この中で実際に電力中央研究所の者が試験をしております。

 次に、もう一つ、セーフガードということで、これはちょっとおもしろいのですが、IAEAの委託を受けて、プルトニウム等のセーフガードシステムを開発しておりまして、六ヶ所再処理工場へのオンサイトラボの技術移転もここで開発した技術ということでございます。

 次に、右のほうはActinide User Laboratoryと、いわゆる研究施設の外部からの利用の促進と研究者の育成ということで、ここもかなり熱心にやっており、ここにありますようにTRUを使うハンドリングや、このTRUを使っての試験で、実際に学生を受け入れてPh.D.の学位を取るところまで面倒を見るというようなことをやっております。

 このようなところが概要でございます。

 本文に戻っていただきまして、超ウラン元素研究所の施設並びに運用ということですが、1ページは割愛させていただきまして、2ページの上から行きますと、どのように運用されているかということですが、毎年8月末から9月中旬にかけて2~3週間施設を全停止して定期検査を行い、他の期間は稼働しているということです。すなわち定検期間が短いということです。我が国に比べ稼働率や生産性が高いのです。特に、私も30年ほど前にここにしばらくの間滞在していたことがありますが、中にいるとまだまだ遅く感じますが、それでも生産性はまだ高いというように感じます。

 それから、試験の目的に応じて柔軟に運用されているということです。この辺は我が国とは、先ほど小川委員の話にもありましたように、施設の使用、運用上の規制の違いがあるため、そのあたりの分析も必要かと思いますが、やはりかなり柔軟性が高いということです。

 また、試験実施上バリエーションなども高いということです。これはどういうことかと申しますと、例でいうと使用済み燃料などが比較的使いやすいことです。ドイツ国内で使用した燃料や他の目的で照射したMA燃料の使用、実験室への装置の組み込みなどを言っているわけですが、例えば今私どもの試験は実際にドイツの商業炉の使用済み燃料を使って実際にやっているということでございます。

 このようなことから、これまでの超ウラン元素研究所との共同研究の進捗からどのようなことが言えるかということを私なりの感想ですが、新しい研究でも国内で立ち上げるよりも早くできるということをはっきり言えるかと思います。

 それから、国内施設よりも試験が実施しやすいということです。これはなぜかと申しますと、当所(電力中央研究所)の有するポテンシャルとITUの有するポテンシャルの有機的な連携、それから、テクニシャンによるサポート、それから、やはり施設、装置の充実と使いやすさというようなこと、それから、金額的にも、ここでは数字は申し上げませんが、日本で実施するよりもかなり安くつくのではないかと思います。

 それで、次に、我が国が今後戦略的に確保すべきインフラは何かということですが、今後確保、整備すべきホット施設としては、先ほど申しましたように、燃料サイクルにポイントを置きますと、核燃料サイクルのプロセス化学研究、実証研究、それから、高速炉時代に向けた燃料製造プロセス開発、製造試験、それから、照射後試験施設、それから、こういうMAを選択的、選定的に取り扱うラボラトリーということであります。

 意外とこの照射後試験施設なんかは、先ほど小川委員から紹介にあったように、我が国ではこのぐらいの施設は十分あると思うのです。そうすると、何が問題かというところですが、いわゆる同じような施設が複数あって、それぞれの稼働率が低い、ほとんど利用されていないところもあるということで、本当に効率的に使われているのかなどやはりこの辺はしっかりとレビューする必要があるのではないかと思います。

 それから、燃料サイクルの研究開発上はまだプロセス開発など現状施設を使って実施しなければいけない段階であると思っています。したがって、まずは現状施設での効率的利用をしっかり考えるべきであろうと思います。

 それから、もう一つは、生産性が低いということ、例えば実施できる試験回数が少ない等、その原因をしっかり分析して改善していく必要があると思います。実際にされている方の士気だとか、それから、ハードとか製造上といろいろな問題があると思いますが、その辺をしっかりレビューして次へ生かしていく必要があるのではないかと思います。

 それから、今まではある程度試験を行って次の施設というように、次へ、次へと施設を新設してきましたが、その考えはやはり見直すときではないかと思います。それから、もう一つ、それに伴って古いレガシーがかなり溜っているのです。そういうもの処理もどうしていくかというのは不可欠ではないかと思います。

 今後の姿ということで、どのようにするのがいいかということですが、やはり統廃合して集中化ということで、不要なものの処理処分も長期的な計画のもとに着実に実施していくというようなことが必要ではないかと考えます。

 それから、最後のページに参りまして、燃料研究、再処理化学研究、再処理工場、いずれもプルトニウムやマイナーアクチノイド、特に後者2つは使用済み燃料まで取り扱える施設の充実が必要であるということです。これはやはり基本は既存施設の利用、改良、改修ですが、超ウラン元素研究所などの例などを見ていますと、十分そういうことができるのではないかと思います。

 上記のための条件としましては、効率的に運用できない、生産性が低い原因の究明と対策、それからもう一つ、これは前のときに申し上げましたが、旧日本原子力研究所、旧核燃料サイクル開発機構が一体となった利用運営、これは今のところ決してされてないと思います。例えばCPFはこれは旧核燃料サイクル開発機構と、NUCEFだと旧日本原子力研究所いうことで、いわゆる施設主体ではなくて研究主体でどこを使うのかということをしっかりと考える必要があるのではないかと思います。

 それから、もう一つは、今申したことができていないのに外部からの利用が活性化できるかということで大きな問題なのですが、最終的には一歩づつ外部からの利用の活性化をしていく必要があるのではないかと思います。今の状況ではとても利用しやすい状況ではないのではないかと思います。あとは、大学・産業界の若手です。

 最後に、批判ばかりしても仕方が無いわけで、次に、我々としてポジティブにいくためにどのようにすればいいかということです。

 当面すぐやらなくてはいけないことは、やはり我が国施設の重複、運用状況、稼働率、生産性等の観点からの調査と評価ということです。これは統合されたときに実施されたはずではないかと思うのですが、ちょっと私はそこの経緯は知りませんので。それから、超ウラン元素研究所(ITU)をはじめ、海外の施設の上記観点についての調査ということです。その次が一番大事なのですが、やはり我が国の施設の利用とか整備、そこのところのしっかりした戦略をつくることが必要ではないかと思います。これも内部の人間だけでつくるのではなく、組織横断的な専門家によってつくっていく必要があるのではないかということであります。

 それから、もう一つ、今超ウラン元素研究所(ITU)の利用に関することを申し上げてきたのですが、インドのインディラ・ガンジー研究所に私は行って見たときでも、追い上げ国、インドと書いたのですが、このR&Dのスピードなんかはかなり早く、日本も多分抜かされるのではないかと感じました。ただし、インドの場合は安全確保上方策についてはちょっと不明であります。

 それから、最後に、イギリスのセラフィールド、これは昔のBNFLテクノロジーセンターという研究開発センターですが、ここがコールド試験、ウラン試験、プルトニウム試験、ホットセルを機能的に配置した世界最新鋭の施設ではないかと思っています。ただし、残念ながら、今英国内のたび重なる組織の見直しによって全面的な利用状況にはなっていないということですが、先ほどの超ウラン元素研究所と同じように、非常に機能的に配置されています。実際の居室からすぐ右側に渡って試験場所に行けるように、また、ホット施設などもモジュラー式でその使用に応じて柔軟に運用できるようになっているというような状況でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 次に、事務局から原子力機構以外の「我が国における主な原子炉・ホットラボ施設の使用状況等」について説明をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 資料5ですが、これは参考資料として使う程度ですので、あまり詳しい説明をしませんが、大物はほとんど原子力機構にあるのですが、その他にどのような施設があるかと言いますと、もう皆さんご案内のとおりに、原子炉関係としましては、大学では、京都大学、東京大学、近畿大学、そして京都大学には臨界実験装置もあります。それぞれの利用状況等についてはそれ以降に資料がついています。また、民間でいいますと、東芝が臨界実験装置を持っているということでございます。

 また、核燃料系のホットラボということでは、そんなに大量には使いませんが、大学関係では大洗にあります東北大学の金属材料研究所で、アクチノイドなども使える施設があるということと、あと、民間企業ではPWR、BWRに対応してということなのですが、ニュークリア・ディベロップメントと日本核燃料開発株式会社がそれぞれホットラボを持っているということでございます。

 次ページ以降のそれぞれの施設の概要については説明は省略いたします。

 以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの小川委員、井上委員、また、事務局の説明も踏まえまして、研究開発インフラの整備と有効活用のあり方について議論をしたいと思います。20分強ぐらいあるかと思いますので、いろいろとご意見をいただけたらと思います。よろしくお願いします。

【山名委員】

 小川委員にお聞きしたい点がありますが、この施設的な基盤という意味でいうと、広く考えますと原子力では決してなくて、いわゆるサイエンスとして、物質科学、生命科学として、ビームですとか施設を使うというケースと、それから、またに原子力に深くかかわるような燃料研究ですとか材料照射ですとか、まさに原子力的な利用と2つに分かれるはずです。重要なことは、原子力機構の施設には理想的には両者を十分カバーしていただきたいということであるわけです。

 多分、数だけからいうと、サイエンティフィックなユーザーというのは極めて多くて、当然そのことを、原子力にあまりこだわりのない方もいるんですが、それも大事なんですよ。そういう人たちがこういう施設を使うことでいろんな認識が共有できるということがありましてね。

 小川委員にお聞きしたいのは、原子力的ユーザーと非原子力的ユーザーの割合がどれぐらいか、それから、そのユーザーのマーケットというのは日本にあるわけで、マーケットと言ったら失礼ですが、それで、そこには隠れているユーザーもあれば、使いたいけれども使えないユーザーもいるし、原子力機構の施設を使うにしては比較的原子力寄りの人だけだとか、ある程度お金がある人だけだとか、いろんな条件もある。そこで、どれぐらいのユーザーを結局カバーできているかということ。これはマシンタイムの提供度合いも含めて、そこを一度詳細にお聞かせいただければと思います。

 それから、2つ目の点が、井上委員もおっしゃった話ですが、原子力機構の場合、大変だと思うのです。つまり、研究開発もやらなければいけないし、大学院の先生もやらなければいけないし、それから、共用のサービスも提供しなければいけないし、3つも仕事を持って今の枠でやっていけるのかという心配があります。

 それで、一番大事なのは研究開発でありまして、要は副次的サービスのために膨大な時間やお金をとられ過ぎるような、かえって逆効果がないようにもちろん考えておられるでしょうが、それが非常に重要であるということは多少気になるところです。

 ですから、言ってみれば、本業の研究開発をやりながら、教育をやり、共用施設をサービスするという最適な体制、人的な予算的な体制が必要ということがあると思いますので、そういうところのご意見を伺いたいと思います。

 それから、3、4は、今度は文部科学省のほうにちょっと申し上げたいことがありますが、1つは、我が国にあるこういった施設はいずれにせよ老朽化してきます。それで、今後の研究開発に対して条件的に合わないようなところもある。それから、負の遺産などもある。

 そうすると、必ず施設のリファービッシングといいますか、リフォームといいますか、ちょっと手を入れるということが必要になるはずです。つまり、手を入れればポテンシャルが生きると、安全性の意味も含めて。あるいは、条件をもっと最先端の条件に合わせると。

 私どもの大学なんかでは施設費というのは運営費交付金からしか出ませんから、競争的費用では施設をいじってはいけないようなところがどうしても出てきますので、つまり施設費は運営費から出るべきで、競争的資金からはなかなか出にくいと。科学研究費補助金とか原子力の公募資金も設備には使えないところがありまして、結局リファービッシング、リフォームをどういう予算措置でやっていくのかというのは結構大きな問題です。

 原子力機構の場合には運営費交付金から捻出されるのだと思いますが、それにしても厳しい予算の中で簡単ではないはずです。要は、施設のてこ入れというのを予算的にどうカバーするかというのは大きな議題であると思います。

 それから、4つ目、最後ですが、これはちょっとまた余計なことを申し上げますが、JMTRの改装は予定されておりますが、いろんなことを考えると、我が国にもう一つ最先端の研究炉が要るのではないかということです。これはKURの人間としてもそんな思いを実は持っております。といいますのは、フラックスの話と、さっき言った科学研究に中性子ビームを使う話と原子力的な照射利用に使う話と2つを十分満足していく機能を兼ね備えた炉、そういったものがやはりユーザーとしては欲しくなるのです。

 JMTRはどちらかというと材料の照射で、原子力的なものですし、JRR-3は逆に原子力的でなくて中性子ビームユーザーのためのものなのです。J-PARCはもっと特殊なものであるということになると、その両者を兼ね備えた何か研究炉、つまり極めて利用性の高い研究炉というのを我が国も考える必要がないのかということは常に思っておりまして、ちょっと余計な提案をいたしましたが、そのことも含めて、どこかでそういうことを考える必要があるだろうと思っています。

 従来はこういう研究炉のポリシーというのは日本学術会議の中の部会で議論されてきたように私は理解していますが、その辺の全日本的な研究炉のあり方のポリシーの審議というのはしばらく休眠状態にあるのかという気がしていますので、こういったところの検討の体制ももう一度考え直す必要があるのではないかと思っております。

 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。小川委員お願いします。

【小川委員】

 まず、ポテンシャルなユーザーも含めたユーザーの状況ということですが、さすがにポテンシャルなというところになるとなかなか把握ができないのですが、はっきり申し上げまして、原子力エネルギー利用、それから、非原子力の利用者ということで言いますと、現状共用施設は原子力エネルギー利用よりもそれ以外の世界の人のほうがどんどん増えてきているということではないかなと思います。

 それで、原子力エネルギー利用ということですと、どちらかというと共用という形よりも受託とか共同研究といったような形で、特に受託というような形のものでこれはやはり増えてきているという感じがいたします。

 ただ、その原子力エネルギーのところはやはり日本のある意味特殊事情かもしれませんが、研究開発のプレーヤーが減ってきているということで、我々はそのプレーヤーの掘り起こしというところから含めて活動をしないとなかなか難しいのかなと思っています。

 それと、今度は、今の話はどちらかというと大学とか研究者層の話ですが、民間企業の利用を考えたときには、今民間企業はグローバルな展開をしていますので、もうこの頃日常的に経験しているのですが、我々のところの施設と外国の施設とを天秤にかけます。どちらが利便性がいいか、データのクオリティが高いのか、スピードはどうかといったようなことで、勝てる場合もあるのですが、負ける場合もあります。それから、企業の戦略的な理由で外国の施設を使わざるを得ないということもこの頃出てきております。

 こういうことも考えると、やはり原子力エネルギー利用についての課題というのは広く言えばユーザー層の掘り起こし、あるいは、新しい参入者の開拓ということと、もう一つはやはり我々のところに特色のある技術、あるいは、特色のある施設といったものをきちんと整備していって、国の原子力開発の中のバランスといったこともきちんと取りつつやっていかないといけないということも感じておるところであります。

 なかなかご指摘のとおり予算も厳しくてそうすぐにはできないのですが、現在の施設でもまだできることというのはある程度あるのかなとも思っております。

 それから、サービスその他で時間がとられてしまってということは、これは実は我々の若いころと違って、今の若い研究者の大変悩みの部分ではあるのですが、しかしある意味、今までと違って基礎研究の人たちの活動が外に広く認知されるというきっかけもそれだけ増えているということですので、悪い形ではないのではないかと思っています。

 ただ、非常に難しいのは、もともとの研究機関というのは高卒技術系の大変優秀な人たちがそういうサービスの部分を支えてくださっていたのですが、そういう人たちはほとんど引退してしまって、やはり技術者層が非常に手薄になってしまっているという状況です。その技術者層を今後どう育て、また、人材を継続していくかということは、原子力機構の内部の課題として非常に大きな課題であると認識しております。

 施設の問題でいうと一番頭が痛いのは、運営費交付金の中で更新、何も新しい施設をつくるということではなくて、現在の施設の維持更新ということがやはりだんだん難しくなっているということで、公募資金の中でもそういう形で使えると大変ありがたいということは現場を担当している者として感じるところであります。

 それから、もう一つ、せっかく山名委員がおっしゃってくださったので、研究炉の将来の計画的な話についてですが、私はこれは原子力機構だけで考えるとか、あるいは、どこかの大学で考えるということよりも、やはり国全体で考えるべきことだと思うのですが、これも一体、では、その研究炉をだれが設計するのかとなったときに、10年以内ぐらいに着手しないと設計する人がいなくなってしまうのではないかという懸念さえ持っております。

 以上であります。

【田中主査】

 ありがとうございました。山野課長お願いします。

【山野原子力計画課長】

 国に対してもいろいろありましたが、おそらく2つのことを言われてましたが、おそらく同じことと思うのです。老朽化してきて、その予算の扱いをどうするかというような話とか、やっぱりオールジャパンとして新しい研究炉みたいなことを考えるタイミングではないかということ。

 そういうためにこの議論の場を始めたと思っていまして、やはり必要であれば何か新しい予算制度を考えないといけないとか、あとは、過去の反省を見れば、別に井上委員の言葉を借りれば、昔の原子力機構とかであれば右肩上がりの時代は新しいものを思いつきではないですが、とりあえずつくってきたと。大学は昔から意外と予算的には厳しい状況で、何となしにずっと老朽化対策をやっておるというような状況があったわけなのですが、今やそういう右肩上がりの状況でもないわけで、かつ、全体のリソースもどう配分するかという意味でも、関係者がみんな集まってどういうものが今後必要かというような議論で今後展開していけばいいのではないかという問題認識で始めたと思っております。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 先ほどの井上委員の資料4を見ると次のステップとかいろいろなものがあって、例えば我が国施設の重複、運用状況、稼働率と、今までの枠にとらわれない形でどういったものがいいかを検討すべきだというように言われていると思うのですが、別の仕組みまで考えないと有効活用がいかないから、今どこに問題があって、この次のことを考えるにはどういうことをしていったらいいかをオールジャパンで検討しようと言っているのでしょう。

【井上委員】

 そうです。我が国にとらわれなく海外の利用施設を含めて一番効率がいいものを考えればいいと言っているわけではなく、まずやはり日本の中できちんとしたもの、それから、最先端のR&Dができるものの整備というのは必要だと思います。ただ、その仕組みを考えるときに、やはりそれはオールジャパンできちんと戦略をつくってやっていく必要があるのではないかと思います。

【田中主査】

 ありがとうございました。高橋委員どうぞ。

【高橋委員】

 私は、JMTR運営・利用委員会というものに出ていて、もう3回か4回参画していますが、最初は説明を聞いても何を言っているのかよく分からないという状況だったのですが、3回ぐらいやってきてだんだんやっている人たちの考え方が分かってきて、気持ちも大分分かってきて、最近はあまり文句言うこともなくなってきました。やはりそういう取り組みを広く関係者に伝える努力というのが非常に重要なのではないかと感じております。

 それから、議論していますと、やはり原子力機構というのは研究、先ほど山名委員のほうからもありましたが、研究主体の組織の中で施設を維持するということは、すごく地味な仕事になってしまって、予算配分についてもあるときは一律何%ということで切られてしまうようなところでもあります。

 そういう意味から言うと、何らかのインセンティブというか、施設を動かしている人たちにやはり自らそこで稼いだお金が例えば国庫に入ってしまうということでなくて、自分たちの施設の改良に戻ってくるとか、何かそういう仕組みをつくってあげないといけないし、例えば、原子力機構の内部評価の仕組みでも安全に安定に動かしたということが評価されるかというと、多分そういうことでもないし、私は外部評価委員会にも入っておりますが、外部評価委員会でも先端の研究は評価されるのですが、施設をしっかり動かしているというようなところについてはほとんど評価されないというような現状だと思います。

 そういうところの仕組みをもう少し変えてあげなくてはいけなくて、原子力機構という非常に大きな組織の中でどう評価していくかというのは、先ほど教育のところでも出てきたと思いますが、そういう何か例えばこの施設についても国益として基盤技術でしっかりやるところがあって、JMTRなんかも例えば既存炉の高経年化ということを考えると材料の照射ということについては非常に重要なテーマなので、ある一定の部分についてはしっかり支えていかなければならない部分であるし、ある一定の部分についてはこういうビジネスモデルをつくって民間的な発想で施設を維持して動かしていくというような発想もこれからの施設運営には要るかなと思っております。

 あんまり定量的ではないのですが、JMTRの皆さんと話した印象として私はそんなふうに思ってございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 1回目の作業部会か、あるいは、前回の原子力分野の研究開発に関する委員会のときに誰かおっしゃっていましたが、議論の中では予算の仕組みなど、いろいろなところまで突っ込んだ議論をするのかどうかということをおっしゃっていました。そうすると、原子力機構の仕組み、あるいは国との関係、あるいは評価との関係など、その辺まで突っ込んで議論しないと、井上委員がおっしゃっているようないいものはできないような感じもするのですが。この作業部会としてば、その辺のところまで議論できるのでしょうか。

【山野原子力計画課長】

 それについては、幅広く何でも議論すればいいのと思うのですが、基本的にはハードだけの話ではなくて、明らかにこれはソフトも伴った話なので、そこはパッケージで考えればいいと思います。

 それで、制度などで言うと、大学共同利用機関と原子力機構の仕組みとを見て、よく世の中で言われているのは、大学は使いやすいのだけど、原子力機構の施設は何かいろいろ使いにくいというのはよく聞く話で、そこは何なのかと思うわけです。また、今までの議論を聞いていて、私のイメージは、原子力機構は、SPring-8のような共用施設をつくるということがメインではなくて、別にそういうこともあっていいのですが、まず今後の原子力を進めていく上で、どういう施設が要るかということを中心になってやらないといけないのは原子力機構の人たちなのです。むしろ今後の原子力の研究開発でどういう施設が重要かということをゼロ点に置いて議論したほうがいいのではないかという印象を持ちました。

【田中主査】

 ありがとうございます。市村委員どうぞ。

【市村委員】

 今、山野課長がおっしゃられたことに関してと、それから、その前に何人かの方が言われたのですが、これまでの旧日本原子力研究所、旧動力炉・核燃料開発事業団、もっと遡っていいかもしれませんが、特に旧動力炉・核燃料開発事業団、旧核燃料サイクル開発機構系統がつくったホットラボ関係はプロジェクト推進のための研究をやるためにつくったという意味合いが大きくて、現在も使い勝手が悪いとか非効率とかというお話を井上委員から厳しく言われましたが、私どもの内部では今依然としてプロジェクトオリエンテッドなテーマでやっている部分が非常に大きくて、それ以外の方たちに使っていただこうとしてもなかなか時間的なところが空かないという問題が一つあります。

 それから、もう一つは、なぜそうなっているかというと、これは効率性の問題があるのですが、いろいろ試験を行って、やった結果についてものを言うためには、いろいろ分析しなければいけないのです。それに結構手間暇がかかります。

 ただし、それを効率的にやろうとすると、またこういう話になると非常に恐縮ですが、やはりお金がかかるのです。それはなぜかというと、昔は自分たちで全部やれるようにしていたのですが、最近は人も減ってきているようなところもあってそこができなくて、外の人を雇ってきてやらないといけないというようなところもあって、では、そこにどのぐらいお金が回せるのかといったことになると、それは維持管理費の問題に行ってしまって、また原子力機構全体で考えたときになかなかお金が回せないというようなところもあります。

 ただし、そこは工夫次第でできるところについては相当努力をすべきだと我々も思っていて、今後改善していかなければいけないことと思っています。

 それから、もう一つ、先ほど新しい研究炉という話が出ましたが、ホットラボについても、何をやるかということはオールジャパンでの議論が必要かと思いますが、そういう観点でよく議論をした上で、やはり新しいものが欲しいとは思います。

 というのは、今たくさんラボがあっても相当寿命が来ていたり、中の施設が老朽化していたりして、これを維持管理するだけでも大変ですから、改造しようとすると特にプルトニウムとかそういったものを使った施設だと出てくる廃棄物の問題とかいろいろあって非常にお金がかかる。

 だから、どっちが得かという話なのですが、そこはよく考えて、それから、新しいラボをつくるのかということはよく考えないといけませんが、やはり今皆さんがおっしゃったようなことからすると、今後の日本の原子力開発を考えたときにどういう施設が要るのかというようなことを、この場が検討する場と言われればそうかもしれませんが、そういうところを少し知恵を出して考えていく必要があるのではないかと思います。

【田中主査】

 ありがとうございました。

 検討しないといけないということが明らかになってきたかと思いますが、ほかに何かありますでしょうか。山名委員どうぞ。

【山名委員】

 今、皆さんからのお考えも聞いてこう思うのですが、結局我が国の原子力がプロジェクト重点的に来たという歴史があって、もちろん旧日本原子力研究所は基礎をやっていましたけど、かなり大きな資金を投じて比較的大きな施設をつくってきたものの、ある部分、基礎的な部分、中間的な部分である程度抜け落ちがあるような状態になっている、これが一番原子力の基盤の弱さなのです。

 ではそのために、今後どういうインフラに持っていくべきかということを考えたときに、市村委員がくしくもおっしゃったように、もう少しヘビーというよりはライトな使い方を強化すると。これはユーザーのすそ野を広げるし、大きな実験はできないけれども、基礎的なある部分をきちんと取るという科学的アプローチの基盤を強化する。それに参画する研究者の数も増やす。論文の数も増える。そういうように、やや基礎重視の小回りのきく研究に少しウエートをシフトしていくようなことをやると。その中でも本当に大事な大きな実証をするものを重点的にピックアップして、そこにはお金をかけるというような、ライトとヘビーのバランスの見直し、やはりこれは一番大事だと思うのです。

 どっちに金かけたほうが効果があるかというスタディをすれば、おそらくややモジュール的なアプローチ、ライトユーザーを少々重視して機動性を高くしたほうを重視するアプローチのほうが結局我が国の技術基盤を強化する可能性があるというようなことは何となく思っておりまして、これはぜひ皆様のご意見も伺ってみたいと思っております。

【田中主査】

 ありがとうございます。

 その辺の議論をさらに突き進めていけば、そのようなライト、あるいはヘビーな施設をどのように使って、それをどう運営していくのかということで、これまでの運用方式についてもし欠点があるとすれば、それを見直したような形にしないといけないだろうと思います。

 あとはいかがでしょうか。井上委員はまだ言い足りないことなどありますか。

【井上委員】

 施設がまずあってではしに、私が言いたいのは、例えば今度、燃料サイクルでいえば、今どういうレベルにあって、次に何をしなければいけないかと。マイナーアクチノイドの研究だったら基礎的で何をしなければいけないのか、そこをきちんと固めた上で、ではどのような施設が要るのかということをしっかり分析しない限りは、いつも同じ議論で終わると思うのです。

【田中主査】

 ありがとうございます。おっしゃることはもっともだと思います。

 いろいろと議論いただきまして、前向きなというか今後の検討の道筋も、はっきりではないにしても、本当に重要なことが見えてきたのかなと思います。また、事務局のほうで適宜まとめていただきまして、今後の作業部会での議論に生かしていきたいと思います。

 予定した議題はこれで終わりですが、事務局から何かございますか。

【山野原子力計画課長】

 次回の議論についてはまたご相談しますが、次は技術移転関係を中心に関係機関からプレゼンテーションしてもらって議論できればと思っています。日程についてはまたご相談いたします。よろしくお願いします。

【田中主査】

 本日はいろいろと重要なというか貴重なご意見、議論いただきまして、ありがとうございました。これで作業部会を終了いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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