原子力分野の研究開発に関する委員会 原子力基盤強化作業部会(第1回) 議事録

1.日時

平成21年4月24日(金曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省 研究開発局会議室1

3.出席者

委員

田中主査、市村委員、井上委員、小川委員、小澤委員、高橋委員、丹沢委員、服部委員、長﨑委員、村上委員、山名委員

文部科学省

櫻井大臣官房審議官(研究開発局担当)、坪井開発企画課長、山野原子力計画課長、中澤原子力計画課課長補佐、稲田原子力研究開発課課長補佐

4.議事録

【山野原子力計画課長】

 定刻になりましたので、ただいまから、第1回の原子力基盤強化作業部会を開催いたします。
 第1回目の会議ですので、冒頭だけ私のほうで議事を進めさせていただきます。
 まず初めに、大臣官房審議官の櫻井から挨拶をさせていただきます。

【櫻井審議官】

 原子力の研究開発を担当しております櫻井でございます。
 本日はお忙しい中、先生方にお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。ご案内のとおり、昨年の洞爺湖サミットなりでも原子力というものは、エネルギーの安全保障、それから地球環境問題、CO2の関係も含めまして、非常に大事なものであるということで、さらに認識が強まっているということかと思っております。
 このような中で我が国のほうを見てみますと、六ヶ所の再処理の問題とか、我がほうが今一生懸命やってございます、原子力機構のほうで取り組んでいただいています「もんじゅ」の運転再開とか、いろんな問題が山積してございます。
 この中で、我々は原子力ルネサンスなどということを打ち上げた中で、足元を翻って見てみますに、基盤的な研究開発とか、それから人材育成とか、そういう基礎的なものを、政策担当省として少し掘り下げて考えたい、またどういうことを備えていけばいいかということを考えたいという問題意識がございまして、先週の4月16日に原子力分野の研究開発に関する委員会を開催させていただいた折に、こういう問題意識を披露させていただき、その中で、原子力基盤強化作業部会の設置ということを決めていただきました。それにおきましての本日の第1回目の会議ということでございます。
 足元を見ましても、この元気のない日本ということで、未来開拓戦略、Jリカバリー・プランとかいろいろものが言われていますが、その中の3つの大きな柱の中でも1丁目1番地が低炭素革命ということでございます。これを進めていくのも、この原子力の部分をどう考えていくかということが大事になりますし、係ることも含めまして、今日、限られた時間ではございますが、いろいろな意味で今我が国は、この原子力の基盤という観点から、人材育成、研究開発、インフラ、また基盤技術等について、何を準備し、どのような仕組みでこれを進めていけばいいのかということで、忌憚のないご議論をいただければと思います。
 簡単ではございますが、冒頭のあいさつとさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 それでは今、櫻井のほうから話がありましたように、先週16日に開催されました、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の下部組織であり、この作業部会の親委員会に当たります原子力分野の研究開発に関する委員会におきまして、この作業部会の設置が決定されたというところでございます。
 あわせて主査としましては、田中委員にお願いするということになってございますので、皆様よろしくお願いいたします。
 それではここから田中主査のほうに議事の進行をお願いいたします。

【田中主査】

 ただいまご説明がございましたが、この作業部会の主査を務めさせていただくことになりました田中でございます。どうぞよろしくお願いします。
 先ほど櫻井審議官から話がございましたが、先週4月16日の原子力分野の研究開発に関する委員会で、この作業部会の設置が提案され、またこの部会に対するさまざまな要望等もあったところでございます。短い期間ではあるかとは思いますが、集中的に議論していただき、また実行可能なものにまとめ上げていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 議事に入る前に、初めての会議ですので、皆様から一言ずつごあいさつをいただけたらと思います。名簿の順でございますが、市村委員のほうからお願いいたします。

【市村委員】

 原子力機構核燃料サイクル技術開発部門の市村でございます。よろしくお願いいたします。

【井上委員】

 電力中央研究所の井上でございます。よろしくお願いいたします。

【小川委員】

 原子力機構原子力基礎工学研究部門の小川です。よろしくお願いいたします。

【小澤委員】

 日本電機工業会の原子力技術委員会の委員長をしております小澤でございます。よろしくお願いいたします。

【高橋委員】

 電気事業連合会の原子力部長をしております高橋でございます。よろしくお願いいたします。

【丹沢委員】

 東京都市大学の原子力安全工学科の丹沢でございます。よろしくお願いいたします。

【長崎委員】

 東京大学の長崎でございます。よろしくお願いいたします。

【服部委員】

 日本原子力産業協会の服部でございます。よろしくお願いします。

【村上委員】

 日本エネルギー経済研究所の村上でございます。よろしくお願いいたします。

【山名委員】

 京都大学原子炉実験所の山名でございます。どうそよろしくお願いします。

【田中主査】

 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 それでは早速ですが、これから議事に入りたいと思います。
 まず初めに、事務局のほうから配付資料の確認をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 最初に議事次第があり、その後にいろいろな資料があると思います。資料としましては、個々には確認しませんが、ここにありますように資料1‐1から、間に参考資料を含めまして、各委員の配付資料の資料3‐3までございます。それぞれの場で、もしなかったりしましたら、その都度言っていただけたら適宜対応したいと思います。
 本日の議事としましては、第1回目ですので、むしろ事務局からの説明はなるべく簡単にし、各委員からそれぞれどういう課題を検討すべきであるかや、どういう問題が今の原子力をめぐる情勢の中であるかということを、ざっくばらんに議論していただいて、今後、どういう論点を詰めていくかという議論になっていけばいいと考えております。
 説明は以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。先だっての原子力分野の研究開発に関する委員会のときにも、ある委員の方から、説明はできるだけ短く、議論に多くの時間を取るべしというご注意をいただいたところでございますので、事務局のほうもよろしくお願いいたします。
 それでは最初の議題でありますが、形式的になるかもしれませんが、原子力基盤強化作業部会の設置について、事務局のほうから説明をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 資料1‐1から1‐3まで簡単に説明いたします。
 今話がありましたように、やはり我が国を取り巻く情勢を見ながら、基盤の強化について、それは人の話や研究開発施設の話、そして原子力機構がどうあるべきかということも含めまして、こういったことを議論するために作業部会を設置するということでございます。
 検討事項例ということでここにありますように、まず1つは教育現場などの原子力人材の話です。2番目が研究開発施設ということで、原子炉であるとか、ホットラボのような、まさに原子力らしいホット施設の話。3番目が研究開発から産業化というような、いわゆる技術移転的なものについてどうあるべきかという話。4番目がそういう原子力機構の基盤的機能の強化ということです。こういう観点から、日本の原子力の底力をつけるためにはどうしたらいいかということを議論していきたいということでございます。
 そしていろいろな議論をしながらも、来年度の予算要求などに反映したらいいものなどについては早急にまとめていき、大きいもの、小さいものもあるかと思いますが、7月ぐらいを目処にとりあえず中間報告をまとめ、当然それで終わるわけではありませんので、引き続き検討を行っていくものは行っていくということができればと思ってございます。
 資料1‐2は、当作業部会の構成員名簿でございまして、今日は皆さんご出席でございます。
 資料1‐3は、いわゆる科学技術・学術審議会関係の運営規則でございまして、特にこの作業部会だからということで目新しいものはございません。例えば第2条に専門的な事項を議論するために作業部会を置くということで、そういう中にこの作業部会は位置づけられるものでございます。
 また、ほかの会議も同じですが、この会議自体は公開していますので、一般の人も席の範囲で傍聴できるということでございます。また議事録も、後ほどそれぞれ各委員には確認いただき、その上で公表するという扱いにさせていただきます。このように運営させていただきます。
 説明は以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。特に質問等はないと思いますので、次に行きたいと思います。作業部会における議論の論点についてであります。
 まず、事務局のほうから簡単に説明していただき、その後皆さんにお願いしていますが、いろいろと論点ということについて話していただき、その後フリーディスカッションできればと思います。
 まず初めに、事務局のほうから資料について簡単に、要点等の説明をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 基本的には資料2‐1に基づいて説明しますが、別にこれを議論したいということではなく、とりあえず議論のたたき台としてこういうことを考えたらどうかという資料です。
 なお、この論点1から論点4につきましては、参考資料が2‐1‐1とか2‐1‐2ということで、それぞれもう少し掘り下げた論点に関する資料があり、それらの中には多少データ的な資料もありますので、そこは今日の場で見るなり、持ち帰って見てもらうなりしながら、参照してもらえばと思います。
 ということで基本的には資料2‐1でご説明しますが、まず総論的に言いますと、やはりこれまでの日本の原子力開発は、基本的には軽水炉をきちんとやって、あとは濃縮、再処理というものは技術移転したということなのですが、今後を考えますとそれに加えまして、再処理工場の本格稼働、プルサーマルやFBR、高レベル放射性廃棄物など、今までどちらかというと軽水炉中心だったことが、こういう様々な技術がきちんと日本の中で根づいていく必要があるということで、それらを支える技術基盤というものも考えなければならないということが、まず背景としてあるのではないかと思います。
 その上でどのようなことを考えたらいいかということですが、まず現状の問題点というのもかなり明確なところがあると思うのですが、それ以上にこういう論点を考えるに当たっては、例えば10年後とか20年後を考えた場合に、ある分野では日本として底が抜けるのではないかという分野もやはりあるわけでして、そういうことを考えながら、今からどのように取り組んでおくべきかということ、また繰り返しになりますが、かなり幅広いものですから、全体を見るものの、これを見てきれいな報告書をまとめるというよりも、ある程度できるところから具体策をどんどん打ち出していくということでやっていけたらと思ってございます。
 このような中で、論点例についてですが、論点1の人材ということにつきましては、それぞれの大学の現場で、いわゆる昔の原子力工学科というのが軒並み倒れてきたということです。最近になって一部、今は名前が変わりましたが武蔵工業大学(現東京都市大学)であるとか、東京大学などでも原子力関係学科が復活するなど、そういうことがあるのですが、やはり昔に比べると人材の不足が言われているということです。
 ただこれにつきましては、この作業部会の委員でございます服部委員を座長としまして、日本原子力産業協会の中で関係者が集まって議論をしてきています。そういう報告書などもいろいろ参考になるところはあると思いますので、そういうデータを見ながらいろいろ考えていったらいいのではないかと思います。
 ただ、こういう人材についてもほんとうにネックになるのはどこかということで、当然大学から若く優秀な人がどんどん出てくれば、すべて解決するであろうというのがもちろんありますが、やはり本当に量か質かということで、わかりやすく言うと、例えばすそ野を広げるということもあるし、トップ人材を考えるべきであるとか、あとは例えば専門家という意味ですと、巷で言われているのは、10年先になったらきちんと安全規制を議論できる人材がいない分野が出てくるのではないかということも言われています。そういうことも考えながら、どうやっていったらいいかということです。
 こういうこともあって、2年前から経済産業省と文部科学省とで、いわゆる人材育成のための補助金の仕組みをつくりましたが、それを見て十分かどうかや、もうちょっとメニューを加えるべきではないかや、あと、ある程度ニーズがあるのであれば、特定の大学と特定の産業界でもいいのですが、連携したような、もう一歩進んだ取り組みが考えられないかということでございます。
 論点の2番目が、インフラということで、研究開発施設のほうでございますが、基本的には原子力をやる以上、今のいろいろ進んだ技術でシミュレーションなどをしているのですが、最後は本当に根っこになる技術については、実際にホットな場で実証するということが必要になるわけです。そこは恐らく炉であろうと再処理であろうとあると思うのですが、そういう意味でまず我が国として、原子力機構を中心に持っているホット施設というのは、今どういう状況で、どれくらい使われているかというところから始まって、今後、我が国として戦略的に整備するようなものとしてはどういうものがあるかということ。やはりそれをオールジャパンで使うような仕組みをつくっていったらどうかということで、当然今までも、原子力機構の仕組みの中では外部に開放されているということですが、それが本当に十分かどうか。そうでないならもう少し進んだ、皆で使うような仕組みを考えたらどうかというのが論点の2でございます。
 論点の3ということでは、やはり基本的には我が国では、まず国費を使い原子力機構が中心となって開発し、それを民間に技術移転するというビジネスモデルでやってきたということで、そのビジネスモデルも炉などは、実験炉、原型炉、実証炉、実用炉という線形モデル的に考えてきたのですが、実際上そのモデルで素直にいったものというのはあんまりないわけでして、技術移転を考える上では、今までも濃縮とか再処理などがあり、別に当時のことをほじくり返して、良かった、悪かったということをあまりしても仕方ないのですが、やっぱり反省事項とか教訓にすべき事項とかあると思うので、そういうことを見ながら技術移転をする際に考えておくこととして、単純に技術情報の書類を渡したら技術移転ができるというものでもないだろうということで、分かりやすいのは人とか組織の移転まで含めて考えるべきではないかとか、あとは技術移転になると単純に技術開発主体と事業主体だけではなくて、実はそこをつなぐ役割としてメーカーというのがあるのですが、そこらも含めてそれぞれが、研究開発段階・移行段階・事業化段階でどう連携していくべきかという論点でございます。
 また、技術移転をするようなものについては、研究開発段階からやはり将来的な経済意識、コスト意識とかいうことも盛り込みながらやっていかないと、できたけど高くて使い物にならないということが出てくるということになってしまいます。
 また、技術移転後にそういう技術開発主体がどうあるべきかということで、わかりやすい事例で言うと、例えばウラン濃縮は旧動燃がやっていたものを日本原燃に移転して、ほとんど旧動燃での活動はなくなったわけです。そこはいろいろ経緯があって、メーカーのUEMとかいうのもなくなって、今はもう日本原燃が単純にウラン濃縮の実施主体というだけでなく、ある程度技術開発もやるなどとなっていますが、そういうぶつ切りみたいなことでいいのかどうかということ。ぶつ切りしていると、その事業主体が何かがあってお手上げになったときに、日本としても底が抜けるということです。かといって、技術移転した以降も太くずっと続けるかというと、それはまたナンセンスなのですが、やはりある程度基礎研究であるとか安全研究とか、薄くは続けるべきではないかという論点でございます。
 論点4については、ここもすべてリンクする話になるのですが、やはりこういう将来を見通して、我が国として維持、育成しておかないといけないような基盤とかはどういうものかということでございます。
 若干わかりやすく言うと、例えば軽水炉であれば旧原研であるとか大学ということになりますが、軽水炉で何かいろいろトラブルがあったわけですが、トラブルがあるたびに、何となしに日本の中では誰かがきちんとフォローできるような、万屋相談所的な体制があったということなのですが、今後の再処理やFBRが出てきたときに、そういき機能もきちんと我が国の中で維持していくべきかどうかという話や、それとインフラとも関係する話でありますが、やはり原子力機構はインフラを持っているわけですから、そこは原子力機構の職員のためだけでなく、大学や産業界が原子力機構に来て、一緒に切磋琢磨してやるような原子力道場的な機能のようなものが、日本でもあったほうがいいのではないかということでございます。
 またもう一つ違う話として、原子力の黎明期にご活躍された、既に60歳近いような人が結構います。そういう人が大量に退職するということで言えば、そこらのポテンシャルをどう考えていくかということでございます。
 最後のもう一つの論点が、この前の親委員会のときは書いていなかったのですが、論点5として、国際化ということを考えると、我が国の原子力産業が国際展開ということも考えていく中で、人材なども含めて支援するための技術基盤などは何か考えられないかということです。
 また、新たにアジアの近隣諸国でも原子力導入国というのが出てくるわけですが、そこらに対してもやはり研修とか我が国の施設を開放するとか、あとは相手側に施設があるのであれば、日本の人も使いに行くということも含めてなのですが、そういうことを考えるかどうかということでございます。
 とりあえず、こういうことがたたき台として考えられるというだけのものでございます。
 ちなみに資料2‐2で、先週、この親委員会のほうでこれに類似するような説明をしたときに各委員からあったコメントを、少しご紹介させていただきます。
 簡単に説明しますが、全体のご議論としては、あまり総花的に議論するのではなく、やはりできることから実現させていくべきであろうとか、あとはもう一つの議論としては、こういう議論というのは昔からあるのだが、何も進まないというのは、何かほんとうに根本的な原因があるのかもしれないから、そこら追求すべきではないかという議論がありました。
 あとは人材のところでは、必要な人数など、何か目標を明確化しないとなかなか進まないのではないかという話とか、高専などを活用して地域との連携というのも考えていったらいいのではないかとか、実際上、電力会社やメーカーの採用を見ると、原子力だけの人材ではなく、むしろ電気や工学、機械などの人材も多いので、そこらの人材まで巻き込んだ人材育成が必要ではないかや、大学からではなく、もう少し底辺の初中段階からの原子力教育ということを考えるべきではないかということ。
 インフラのことについては、ホット施設をつくるとか維持するとかいうのは、結構最後は資金の問題に行き着くので、そういうところまできちんと考えてほしいということ。また、原子力機構のホット施設については使われると言いつつも、一部の原子力関係者にだけしか使われていないが、もう少しいろいろな、農学や医学を含めてすそ野を広げるようなことを考えたらいいのではないかということ。
 また技術移転のところでは、スピードとか的確性が重要であるということで、研究側とメーカー側との間に今は意識の乖離があるのではないか、そういうことがないように、皆が一定の方向を向くような仕組みを考えたらいいのではないかということ。
 また、事業化を本当に考えたら、1つの組織の中に事業部門と技術部門があると、トラブルがあったとき等のフィードバックが早いのではないかということ。
 また、技術移転を考える場合は、今研究をやっている人がきちんと目標を持てるようなことをやらないと、技術移転してしまうと自分の仕事がなくなるという感じでは、うまいこといかないのではないかというような議論でした。
 また、現状を見てみると、基礎研究と応用工学というところにミスマッチがあるのではないかということ。そこらが有機的に連携できるような仕組みが要るのではないかということ。
 次の原子力機構の基盤的機能というところでは、旧原研、旧動燃の融合が不十分ではないかということがありました。プロジェクト研究と基盤研究というものの連携を考えていくべきではないかというようなご議論がございました。
 ご参考までに、他にまだありますが説明は省略いたします。
 事務局からの説明は以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。今山野課長がおっしゃったとおり、これらは論点例であって、これにこだわることもございませんし、本当にいい案、実行可能な案をつくっていくということが一番大事であると思います。本当に本音的な議論ができたらと思っていますので、よろしくお願いいたします。
 それではここから、委員の皆さんからいろいろと忌憚のない議論をしたいと思います。まず初めに議論すべきポイントについて、委員の方々に前もってお願いしているところもございますから、それを一通り聞かせていただいて、その後フリーディスカッションという形で進行させていただきます。
 そして、高橋委員がもしかしたら途中で抜けるかもわからないということを聞いていますので、まず高橋委員のほうからお願いいたします。

【高橋委員】

 申し訳ありません、なるべく最後まで参加しようと思っていますが、最初にやらせていただきます。電気事業連合会と書いたパワーポイントのペーパーを用意いたしましたので、ご覧いただけますでしょうか。
 まず、事業者側から見たという視点で幾つか書いてございますが、大学等における教育の活性化ということについては、先ほど山野課長からもありましたが、幅広い専攻分野から採用していくということ。今求められていますのは、やはり課題の解決能力というところで、従来の電気事業とは違って、課題をきちんとリスク評価も含めて、自分で見つけてきて解決ができるという能力が非常に重要だと考えてございます。
 それから現場のマネジメント能力、社会とのコミュニケーション能力、国際的な活動能力というところでございます。優秀な若手ということに関しては、先ほどから出ておりますが、魅力ある産業分野というところがポイントになると考えます。
 2ページ目でございますが、教育の活性化ということについては事業者としても可能な協力をやっていきたいということで、特に共同研究や委託研究、それから冠講座といったところでは、やっぱり私どもとのコミュニケーションというのが非常に重要かと考えております。そういった意味では学会活動などを通じて、課題別にロードマップづくりというようなところが活用されておりまして、例えば燃料ですとか、高経年化とか、耐震とか、法制度といったところで議論しておりますので、こういうところを使って、産業界と大学等でお互いにニーズ、シーズを掘り起こしていくということが大事であると考えます。
 それから研究開発施設ですが、実施可能なテーマ、どう使えるかということをアピールしていただくような活動を期待しているということと、研究成果については、社会に向けたメッセージ性のある情報発信を期待しているということです。それからやはりスピーディーに柔軟にというところが、なかなかできない部分がございますので、こういうことを可能にするような制度も必要であると考えます。
 それから4ページ目で、研究開発から産業化への戦略的な移行ということに関しては、やはり一番大きなところは、日本は導入技術が主体だったというところがあって、軽水炉分野ではそういうところで比較的うまくいってきたという部分があると思います。
 一方、サイクルについては機微技術であるということで、日本の国産技術として濃縮、それから再処理についても、例えば脱硝施設とかガラス固化施設というところは一から育ててきているわけですが、こういうところの技術移転と戦略的移行というところについては、先ほどのお話もございましたが、横断的な分析を一度してみて、今後どうあるべきかという議論をしていったらいいのではないかと考えます。
 それから原子力機構については、これは結構大変で、電事連の原子力部長の仕事の30%ぐらいは、原子力機構とのインターフェースという仕事であり、携わりが多いわけです。ここには比較的上品に書いてみましたが、やはりいろいろな問題があって、例えば仕組みとか人とか風土とか責任の分担というところについては、ここでいろいろ議論していったほうがいいと思います。
 それから私がいろいろ仕事をしてみて思いますのは、例えば年度予算とか評価の仕組みとか成果といったようなところで、最新のR&Dですと予算がついて評価されるのですが、例えば苦しくて長いプロジェクトを仕上げるといったことについては、一生懸命評価しても減点法で悪い点がついてしまうという部分もありますので、こういうところのあり方というのも1つ、やはり活性化という点ではポイントになるかと考えます。
 最後は議論の進め方について6ページに書いてございますが、多分議論がかなり発散する可能性があると考えますので、どこをどういう範囲で議論していくのかということと、短期、中期のすみ分け、それから論点を順番に議論していくということを期待していきたいと思いますし、原子力機構の次期中期計画へ、この辺の検討成果をぜひ反映していただけたらと考えます。
 簡単ですが以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。高橋委員もできるだけ最後までいらしてください。
 それでは名簿の順番で恐縮ですが、市村委員のほうからお願いいたします。

【市村委員】

 私のほうから資料をお出ししていますが、先ほど山野課長がご説明した内容と、重複している部分もありますが、今どちらかというと、私の仕事を進めている上での悩み事をこの場でいろいろご議論していただけると、非常に我々としても助かるのかなと思い、その辺もあえて書いております。
 特に原子力技術の研究開発から産業化に持っていくところをどうしていくのかということについて、先ほどの説明でもいろいろございましたが、従来はいわゆるバトンタッチ方式と呼んでいる、研究開発ができました、成果が出ました、これをお渡ししますから後はやってくださいねと、言い方は少し悪いのですが、そういう感じでしてきた部分も確かにあります。ですが、それが果たしてうまくいっているのかということについては、いろいろ反省すべき点があるかと考えています。
 したがって今後、そういった研究開発を実用化していくことでこういったこと出てくるのかというと、1つの代表例が、ここに書きましたが、再処理技術に代表されるような、開発に非常に時間がかかって、なおかつその結果としてプラントをつくるにしても建設機会が非常に少ない、こういった技術を研究開発しながら技術移転していくにはどうしたらいいのかということで、ある意味原点に立ち戻る必要もあると思いますが、しかしながらあまりその理想論とか一般論を言っても仕方がないので、やはり現実味のある方策は何なのかということを議論していただきたいなと思っています。
 そこで、3つほど書きましたが、1つはやっぱり関係者の役割といいますか、研究開発するところの国、将来的にそれを使うところの事業者、使うために具体的に施設とか設備をつくっていくところのメーカー、この3者がどの範囲について、いつからいつまで、どう関与するのがいいのかというところをきちんと議論しないといけないかと思います。ただしこれは、おそらく各技術によって違ってくるので、あまり一般論にならないし、むしろ一般論をやっても意味がないかなとは思います。
 また、ここが我々研究開発機関の悩みどころなのですが、研究した結果を技術移転すべき相手は誰なのかということ。端的な例で言うと、事業主体に当然技術移転ということはするのですが、事業主体に100%技術移転をするのかというと、おそらく実際に施設とかをつくるメーカーに移転をしなければならない部分というのはかなりあるはずで、そこら辺についてどうやっていったらいいのかというところが、1つ悩みどころかなと。それから、その技術移転されるほうが、研究開発を進めるときからどう関与していくのかというようなことも議論が要るのではないかなと思います。
 また、繰り返しかもしれませんが、いわゆるバトンタッチといいますか、点接触でない技術移転を可能にするにはどうしたらいいのかということ。
 もう一つが、これはこの場がいいのかどうかというのはありますが、いわゆるエンジニアリング能力というのがありまして、いろんな個別の研究開発をやっても、それを統合して、産業化に結びつけるような技術がないとだめなわけで、この辺をどうやっていくのかというのが、私ども原子力機構も研究開発をやっていて非常に悩ましいところでして、特に再処理といったような開発に非常に時間がかかって、しかもその結果として出てくるプラントの建設機会が少ないといったような技術、これを本当にどうしたらいいのかと。
 恐らく、産業化したときに、産業界がそれによって事業をどんどん展開していけるようなものについては、メーカー側としても当然それによって利益を出していけるわけですが、こういった建設機会があまりないものについては、そうおいそれと簡単に乗ってこられないというところが当然あるわけで、そのときにどうしていくのかというところが一番の悩みどころかなと思います。
 それからもう一つは、では、その実用化ができたとして、その後どうするのかという話ですが、これも先ほど山野課長のお話の中にもありましたが、実用化した後、研究開発機関はどう関与するのがいいのかということ。
 また、実用化した後、そこでいろいろ運転とか維持管理を積み重ねてくると、いろんな経験が出てきて、それを研究開発にフィードバックする必要が当然出てくるのですが、それをどうやってやったらいいのかということ。特にこれは国の研究開発機関と民間事業者の間でどうやってやるのかという問題があるかと思います。
 また、そうはいってもやっぱり実用化の後も、関連した研究開発は要るであろうと思いますが、では、そういう関連分野の基盤的といいますか、そういった研究開発を研究開発機関で維持していくにはどうしたらいいのかということ。これは過去の例で言うと、よく、もうそこは開発ができたからいいでしょうというお話で、なかなか予算が取れないという話もあって、そうはいっても産業界のほうからはそこに対していろいろリクエストが出てくるわけで、その辺をどうやっていくのかなということも考えていただきたいといいますか、一緒になって考えさせていただきたいなと思います。
 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。次は井上委員、お願いします。

【井上委員】

 昨日まで出張していまして、飛行機の中で考えて来たのであまり整理されていないのですが、、OECD/NEAの分離技術の会議があって行ってきました。そこで、すぐCEAの話をして申し訳ありませんが、CEAは着実にいわゆる新溶媒の開発をやっているわけです。特にここでちょっと細かな話になりますが、そこでは自分たちの、ガネックスという方法を今研究開発しているいるのですが、それに対する溶媒開発は技術内容から見て今まで日本は、これはただアイデアだけだろうと思っていたのです。しかしながら実際にもう進んでいる。それからもう一つ、旧原研で開発されたような溶媒についてもきちんと試験を行っているということで、非常に独善的にならないようにすべてのものを見渡して、かなり進んでいる。このような海外の状況と比較しますと、やはり日本の中の燃料サイクル関係のアクティビティーとか、アウトプットなど、私はかなり弱体化している、少ないと思います。
 そういうことからして、現状のままでは、我が国で次期再処理技術を独自に実用的に確立することは、私はほとんど無理ではないかと考えております。確立するということは、やはりエンジニアデータまでしっかり取得して、それから技術保証ができるということです。これは開発機関、それからメーカー両方含めてです。それで今この体制をしっかり立て直さないと、おそらく失われた5年、10年となるのではないかと私は思います。
 ということは、実は今これのいい例が現れています。1980年から85年ぐらいにかけて返還ガラスの仕事をしていたわけですが、そのころはいわゆるガラス物性など、いろいろな基礎研究、基盤研究をいろんな研究機関でやっていました。しかしながら、今回六ヶ所の話がでてきたわけですが、この20年間で、見事に技術が失われています。基盤技術なんて全然継承されていないというような、情けないと言っていいのかどうかわかりませんが、そういう状況です。そういうことからいって、例えば今進められているような次世代の再処理技術なども、当然そうならないように見直していく必要が私はあるのではないかということを感じます。
 また、技術開発とか実用化に至るまでの、これは皆さんおっしゃることですが、役割分担を明確にして再定義することが必要であると思います。特に私が専門としております燃料サイクルのような分野は、メーカーのリスクのもとに直接それにすぐ手を出せるような技術ではないわけですから、やはりメーカーがきちんと設計できるようなデータまでとってあげることが必要ではないかと思います。
 また、今までのこういうやり方、例えば国とメーカーの現状のあり方、国というのは研究開発機関ですが、やはりこれを見直す必要があると思います。というのはどういうことかというと、いつまでもこれは甲乙の関係なのです。これが厳然としてあるのです。そうしますと、やはり資金が常に一方的に流れますからそうなるのであって、基本的にこの辺の一方通行をなくして、むしろメーカーからも国の研究機関、先ほど、どのように施設を使うかという話がありましたが、そういうところにメーカーからJAEAに仕事を発注する、いついつまでにこういう仕事をしなさいということがあって当然しかるべきではないかと思います。
 また、これも常々私は思っているのですが、我が国で本当に専門家が着実に育成されているかということです。これも特に燃料サイクルの分野では寂しい限りだと思います。この根拠として、旧原研と旧サイクル機構が一緒になったといえども似て非なるものであって、私が見ている限り、旧原研のほうは、基礎分野の技術開発なんかをされて、それなりに成果は出ている。しかし残念ながら、実用技術、それから産業界との連携とかいうことについての問題意識が今まで薄かったのではないか。一方、旧サイクル機構のほうは、いわゆる産業界に対する視線はありましたが、残念ながら専門家が育成されてこなかった。これはなぜかというと、二、三年で人事異動を行って、現場に入って実際に実験することによって専門家を育てるという姿勢がなかった。またその成果を実際につくる人が少なくて、いわゆる成果を直接生産しない非生産者、これが過剰過ぎる。私はこの辺はマネジメントの問題ではないかと思っています。
 そういうことからいって、ちょっとここまで先走っていいのかどうかわかりませんが、現状解決できる仕組みとしては、今の体質、体制のままであるならば、そういう仮定のもとですが、いわゆる今の研究機関の外に、我が国の燃料サイクル、これは六ヶ所の再処理から継続して次世代再処理、それから高速炉再処理までの戦略、研究企画、成果の評価などがしっかりできる組織体を、関係機関が協力してつくることが必要であると、今のままであるならば私はそう思います。
 また、この論点の中で、それぞれまた議論すればいいところもありますが、二、三だけ申しますと、例えば研究開発インフラの整備と有効利用とありますが、これは私が見ている限り、我が国にはそれなりの施設はあると思います。ただ施設があるわりにアウトプットが少ない。そして、効率よく使われているとは思わない。ですからここをしっかり分析して、なぜこうなるかということを検討する必要があるのではないかと思います。
 そういうことからいって、東海再処理工場、TRP、これも含めて国内にある施設の稼働率、それからそれぞれの役割分担などをまず調査、評価して、施設戦略を構築する必要があるのではないかと思います。まず新設の建設ありきではないと思います。
 また、技術開発から事業化へのビジネスモデルを再検討するべきではないかということはあるのですが、やはりサイクル技術というのは国が道をつけざるを得ないと私は思います。そうするとして、特にJAEAと技術移転先であるメーカーとの役割、責任の明確化をしっかり定義する必要があるのではないかと思います。
 また、技術移転という話があるのですが、技術移転という前に、ほんとうに移転できる技術が育っているのか、ここまで掘り下げて考える必要があるのではないかと思います。そこで、その技術移転できるような戦略をつくる必要があると思いますが、これは1つの機関だけではだめで、メーカー、ユーザー、専門家が入って、1つ例えて言えば、5者協議会のワーキンググループといったものの中できちんと議論していく必要があるのではないかと思います。
 やはりここではCEAやアレバの仕組みをしっかりと学ぶということ。今でさえかなり遅れて、このままいけばおそらく周回おくれ以上になるかと思いますが、その辺をしっかり我々は反省する必要があるのではないかと思います。
 最後にもう一つですが、原子力道場という機能のことが書いてありますが、道場には師範が要るんです。しかしながら、本当に誰もが認める専門家、師範はいるのかというところです。なぜそういうことができなかったか、今私が見ている限りでは、むしろメーカーのほうが師範ではないかと思うことすらあります。
 かなり本質的なところまで入って議論して、そしていい案をつくっていかないと、いままでと同じ轍を踏むだけだと思っています。少し長くなりましたが以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。それでは小川委員、お願いします。

【小川委員】

 私は少し絞ったお話をしたいと思います。今、井上委員のお話にもありましたが、一番深刻な問題は人の問題だと思っています。JAEAの中を見ても、あるいはJAEAの外を見ても、特に将来の燃料サイクルを支えるような人が育っているのかどうか、そういうことを考えて、まずそのことを一番大事な問題と置きたいと思います。
 そのときに、では、人はどこが育てるのか。大学が育てるのか、JAEAが育てるのか、メーカーが育てるのか。おそらくそういうことではなくて、まず人はみんなで育てるということであると思います。そのみんなで育てるという仕組みをつくらない限りはどうしようもないと思います。
 それから、今民間企業が選択と集中を進める、それから公的な研究機関も予算の制約の中で事業の重点を進めざるを得ないという中で、知識とか経験をどうやって継承するのかということ、それを考えると、知識と経験というのは共有化することによって継承するしかないという、その共有化の仕組みをつくらないといけないと思います。
 それから3つ目に、人の問題と関係するのですが、どんどんこの原子力の研究開発に関しては、プレーヤーの数が減っている。この先もおそらく減るだろうと思います。そういうところでプレーヤーを増やすのにはどうするのか、その新規参入を促す仕組みというものをつくっていかないといけないと思います。
 そういう3つぐらいの課題を置いた上で、JAEAの今後の施設の整備もそうですし、体制の整備もそうですが、そういうことを我々として考えていきたいと思っております。そこでいろいろ大学の方々、それから企業の方々との間で、どういうものをJAEAの中に整備していったらいいのか、あるいは国の施策でお願いしていったらいいのか、このあたりのところをできたらつくっていきたいなと思っております。
 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。それでは小澤委員、お願いします。

【小澤委員】

 本作業部会にメーカーの立場として、日本電機工業会より参加しております小澤でございます。日本電機工業会の原子力技術委員会の委員長をしております。本作業部会は今までご説明、ご議論されたように、非常に重要な案件を検討してございまして、メーカーとしましても重要な場と考えておるところでございます。一通り論点について、意見というか、考え等を述べさせていただきたいと思います。
 まず論点1の原子力の人材の育成ですが、世界的な原子力発電の再評価を受けて、我々メーカーもグローバル化と事業規模の拡大を図っているところですが、設計、製造、建設、メンテナンスといったものが原子力発電所の建設のために必要でして、幅広い、今までも出ていますように、原子力のみならず、機械、電気、材料等の総合力が必要ということでして、工学分野を含めて優秀な人材を数多く必要としており、質か量かという問いかけもありますが、質と量両面から大学の教育が活性化されることを大いに期待しているところでございます。
 それから論点の2番目、原子力関係の研究開発施設の有効利用という点ですが、我々も研究開発をするためにスピードと経済性が求められており、メーカーとしても我が国にある照射設備等を大いに利用させていただきたいと考えておりますが、その利用に当たっては利便性と経済性が求められ、この辺の議論が必要かと考えております。
 原子力関連の研究開発は我が国のエネルギーセキュリティーにかかわるものでありますので、自国による開発を基本とすべきでありますが、一方、欧州では国際的なファンドを使って設備の更新維持を図っている例もありますので、国際的な枠組みでの研究開発ということについても柔軟に対応できるようにしておく必要があるかと考えております。
 3つ目の論点、原子力技術の戦略的な事業化への移行という点ですが、これも開発の初期段階から事業化をする覚悟と柔軟な研究開発方針を、研究開発機関がしっかり持つことが重要です。我々としましても製品を開発する場合には、研究段階、試作、商品化ということで、主に従事する組織や人材は異なる場合が多くありますが、必ず各段階での技術的な重なりを持って、齟齬のないように製品化に努めているところでございます。そのためのチェックとかフィードバックを研究の各段階、開発の各段階で行っているところでございます。こういった柔軟性が必要になってくると考えております。
 それから4番目の原子力機構の基盤的機能の強化ですが、我が国の原子力を引き続き発展させていくためには、原子力の基盤技術を研究開発できる人材と能力、設備の維持が必要と考えております。先ほども述べましたが、原子力関連の研究開発は我が国のエネルギーセキュリティーにかかわるものであり、この基盤的機能を維持、強化していくには、基本的には国の役割と理解しておりますが、我々メーカーとしましても、双方のニーズに応じて共同研究開発等の場を活用していきたいと考えてございます。
 5つ目の論点ですが、原子力の国際的な変化への対応ということで、我々メーカーも国際展開の基盤整備については、安全確保に関する観点が考えられます。原子力の安全は、それぞれの国の責任で確保する事が前提ですが、日本から原子力発電所を輸出する場合には、輸出したものと同一のプラントに対する長期的、継続的な建設、運転経験を我が国が有していることから、その過程で構築された安全規制の知見や経験を相手国に的確に伝えていくことが重要であり、そのために、先ほども出ておりましたが、安全を語れる人材をはじめとする基盤強化が、国際展開に当たって重要であると考えております。
 また、日本全体としてJAEA、JNES、海電調等の多くの機関で人材育成に関する国際協力を実施しているところですが、これも効果的な連携が必要と思っております。今日出られている服部委員が座長を務められております原子力人材育成関係者協議会でもこの点が議論に挙がっておりまして、相手国に対する人材育成がどのように生かされているのか、我が国で研修を受けた相手国の人材をどのように活用しているか、その活躍マップ、あるいは人的ネットワークのデータベースを整理してみるのも一案かと考えているところでございます。
 以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。丹沢委員、お願いします。

【丹沢委員】

 東京都市大学の丹沢でございます。今年の3月までは武蔵工業大学という名称でしたが、大学の中では黎明期から、原子力の分野で教育活動はしていたわけですが、昨年改めてといいますか、原子力安全工学科を立ち上げました。そういうところの経験ということもあるでしょうか、この作業部会ではそういったところも少しお話しできればという意味合いもあるかと思います。
 今日は、多少散漫になるかもしれませんが、大きく分けますと、1つは当然のことですが、人材育成という観点、それからもう一つ、私もこの間、原子力施設との関わり、研究炉の利用及び管理運営といったところでの関わりを長いことやってきておりますので、そういった部分について少しお話をさせていただきたいと思います。
 まず、その人材の問題ですが、もともと問題意識という中で提起されていますように、冒頭山野課長のほうから報告があったとおりの状況があったわけです。やはりルネサンスという方向を大きく提起して、日本のインフラをきちんとやらなければいけないのではないかということは、日本の国のあり方として必要なことだと思います。そういう中で我々もこの先、大学の原子力機関としてどうやるべきかということで、原子力政策大綱を踏まえた原子力立国という中で、それぞれの分野がそれぞれの役割を具体的に果たすべきだろうというところが、原子力立国計画で提起されていたわけです。
 そういうところで大学、我々としては、どこができるかということになりますと、実は2005年くらいから我々、大学としてどういう方向を出すかといったときに、今の時期、やはり人材育成、学科を立ち上げるべきではないかということで、実はその2005年あたりの時期というのはなかなか学内でも、まだまだ学科立ち上げ賛成という状況ではなかったので、いろいろ議論相半ばだったわけです。
 やはりポイントは、私学でございますので、経営が成り立つのかという部分です。定員何名以上でないとなかなか私学として収支のバランスが難しいというところがあって、そのバランスがとれる中でのスタートが切れるかということが最大の議論だったのですが、具体的に実際上の判断としましては、既存の人材、既存の設備を最大限活用してスタートしようということでして、それでも運営としては、経営上はなかなか厳しいところの定員に設定して動き出したということで、2008年開設ということにしたのは、大学全体としての原子力分野へのそれなりの社会的貢献という意識があったわけです。
 それで国のほうもこの間、2007年に経済産業省と文部科学省が連携して原子力人材育成プログラムという支援事業を始めました。これは本当に必要なことで、タイムリーな事業です。
 その中で我々もいろんな意味での資金を活用させていただいて、カリキュラムの組み立てとか、その後の多少なりともいろんな教材あるいは資材の整備的なところと、それから、今の学生たちがそういった部分についてどういうレスポンスをするのかといったところを、そういう準備の過程の中でフィードバックをかけていくという位置づけで、その人材育成プログラムをいろんな意味で活用させていただきました。大学、私学のほうがどの程度本当に必要かといったら、億の単位は要らないわけです。ですから予算規模的にも適切なものであったのではないかと思っています。
 それでスタートしたときに、我々の問題意識として、学生に対してどういう教育をするか、人材を育てるかといったところは、実はスタートする前に、先ほど高橋委員のほうからご報告があったような方向性を考えました。実務的な意味合い、しかも原子力特有なものに特化したという意味ではなく、やはり電気、機械といった面にも目を向けてという形を組み立てていきたいということと、最初説明があった、質か量かといったところについては、質か量かではなく、両方だと思っています。やはりそのバランスの問題だと思いますし、定量的な話というのは、これからいろんな現状分析をしながらやっていくことになろうと思います。ということで、我々としてはやはり実務的に原子力のいろいろな分野の現場で中核となり、マネジメントもできるような人材を輩出していきたいということでスタートしたわけです。
 実は今年2年目を迎えていて、我々は最初やはりどの程度集まるかということ、結果どうなるかということを随分、当然のことながら心配したわけですが、幸い志願者は我々が予想したよりは、去年に比べて今年多かったということで、当然我々としては、もちろん就職して採用していただけるところがどの程度の形になるかというのが一番大事なところでありますが、入口のほうをどうアプローチするかということで、学科スタート前からいろんなところの高校訪問を先生方が分担してやりました。そういう地道な活動がどうしても必要なわけです。
 それでやはり最初はあまり、高校の先生方のレスポンスがよろしくないのです。しかし、この後いろいろ分析してみたいとは思っているのですが、実は今年あたりになりますと、高校のほうから生徒の関心が少し高まってきたのでしょうか、原子力の話を聞いてみたいので出前授業に来てくれないかという電話が、直接高校の進路指導担当の先生からお願いがあるといった状況も多少生まれてきているというのが現状でございます。
 経験的なことのお話をさせていただきましたが、人材という意味で言いますと、私らがそこで感じているところは、論点をちょっと変えますと、最初実務ということで言いましたが、やはり実習を重視したいということで、そういう体験を通して学生は、理解が深まるとうことで、現場、原子炉の運転実習とかいったものに対して実にレスポンスがいいのです。そういう実習が1つ大事であるという点を強調しておきたいと思っています。
 それと最後にもう一点、要点だけ話します。研究施設につきましては、人材育成という視点からいって、また、JAEAの研究炉は40年以上たっていまして、その視点から、やはりリプレースが必要な時期になっています。それを実現しようとしたらば20年くらいのリードタイムは絶対必要で、今新しい原子炉施設の、例えばJRR‐3、JRR‐4といったところに代わるものを視野に入れて、フィージビリティスタディをはじめるべきではないかと思います。そうしますと原子炉システムとしてトータルに捉え、まず炉物理から始まりまして、エンジニアリングスケジュールが引ける人材も含めて人材を育成していくということになるのではないかと思っています。

【田中主査】

 ありがとうございました。長崎委員、お願いします。

【長崎委員】

 論点として3点考えていることがあります。1番目と3番目はかなりリンクしていますが、1つ目は、我が国の人口はこれから減ります。それは明確です。たかだかどの道、軽水炉で53基しか要らない。そのときに、我々はこういう原子力の基盤強化、あるいはその技術というものと、人、施設について、我が国の中だけで閉じた議論をすることに意味があるのか、そこはやはりきちんとしておかなければいけないと思います。
 日本人を育てるのか。韓国で育った若い人に高い給料で来てもらって働いてもらうのか。彼らは英語がしっかり話せるということもいいかもしれないし、施設も何も原子力機構である必要はないわけです。HANAROに行ってもいいかもしれない。そういう論点で、ほんとうに我が国は、日本にこの基盤を持つべきなのかということを考えるべきであろうと思います。
 2番目ですが、もしも我が国の中でそういう基盤技術を残すべきとしたときに、やはりいろんなインフラを持って、それから人的ポテンシャル能力、技術者の層ということを考えると、そこは原子力機構の役割といいますか、期待は大であるということは、言をまたないところではあろうと思いますが、例えば、独立行政法人整理合理化計画、平成19年12月24日閣議決定というところを見ると、これまでの軽水炉再処理開発技術については平成27年度末までに民間に移転するとなっています。その後、民間に移るようなものは移して、もうやめなさいとしか読めないものがあるわけです。
 もう一つ、文部科学省のいろんな公募事業においても、例えば処分事業についての研究は全く公募の対象にならないということを見ると、これは明らかにそういうものについては文部科学省の所管外だと普通の人なら捉える。そうしたら、なぜそれがそもそも原子力機構の中にあるのか。原子力機構の中でそういうことをやっていくことが、文部科学省が所管する研究開発機関の中にあるのか。そういう意味で、原子力機構のミッションとの関係でしっかりと整理しておいてあげないと、原子力機構の人たちが十分に働くことはできないのではないかと思う次第です。
 その一方でやはり、今日持ってきたのですが、高木仁三郎さんの『原子力神話からの解放』という本にも、私は彼の本はたくさん読んでいますが、ちょっと言い方は正確ではないかもしれませんが、旧動燃が関与したプロジェクトで成功したものは一つもないと言われている。そういうことも考えたときに、本当に我々は原子力機構といったものをどう考えていくべきなのかということは、やはり考えておかなければいけないと思います。
 否定しているわけではありません。そこをしっかりと皆が認識することが、やはり次の原子力機構の発展につながるわけです。そこがないと、やはりこういう基盤技術自体というのは、原子力機構に基盤能力を強化していきましょうという論点で読んで考えれば、これの中にはもう再処理、処分といったものはないということになりますので、そこはしっかりとしておく必要があるのではないかと思います。
 それから3番目ですが、原子力人材育成プログラムというのはプログラム自体、非常に有効に機能されていると思いますが、これは親委員会のほうでもコメントが出ていました、人材育成の問題は、原子力だけの問題ではございません。工学全体であり、我が国全体の問題です。原子力だけに人が来るわけはないと私は思います。航空工学科は来ます。あれだけマスコミが取り上げてくれ、夢もある。だけどそれは恐らく原子力には来ません。いや、かなりの確率を持って私はそう思います。
 だとすればやはり、工学系に来るように考えていくべきで、それが科学技術創造立国というべきところなのでしょうが、残念ながら現在、携帯電話はゼロ円で確か買うことができますよね。自分が関与した技術が社会的価値はゼロ円だなんていうような分野に来るわけがないわけで、やはりそういうところから問題を掘り起こしてこないと、3年、5年の短期的な手当てをしたところでは人は育ちません。人を育てるというのは20年、30年かかりますので。
 ですからそこまで踏み込んで考えていかないと、おそらく原子力人材の育成ということにはつながらないのではないかと思います。だからそこまでやれるのかどうかということが1つ問題ではないかと思います。
 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。それでは服部委員、お願いします。

【服部委員】

 あまり頭の中を整理しないままに来ておりますので、皆さんのご意見を聞きながら、相当混乱している中でお話を申し上げたいと思います。前回、親委員会のところで私は、国際化の問題、国際的な視点が抜けているということをお話いたしましたが、今回論点の中に入れていただきまして、ありがとうございます。
 それからもう一つは、立地地域の発展、共生というものに資するような形で何か検討できないかということで、これはあまりアイデアはなかったのですが、たまたま高専ということを一つの核にして何とかできないかなと思ったところでありますが、これら2点をまず入れていただいたということでございます。
 最初のその国際化につきましては、今の長崎委員の意見と若干共通したところがあります。日本だけでものを考えるのか、あるいはもう少し広げて、原子力という技術そのものが国際的な共有財という観点に立てば、1国だけですべてやっていくというのではなく、もう少しそれぞれ役割分担しながら、役割分担するということは、何らかの日本の強みというものがしっかりないとなると、役割分担しようとは言えないわけなので、一体何を日本として今後も維持していくべきなのかということを議論して、その上で、その他のところについては長崎委員がおっしゃったような形なのかどうかわかりませんが、他所と組んだり、その人たちを入れたりなど、いろんなことになって行くのではないかと思っております。
 もう一つは国際化の観点で、具体的なテーマとしては研究開発の施設の共同利用ということを考えますと、「もんじゅ」は一つのそういうものになっておるわけですが、それ以外もいろんな研究炉などあります。大変うらやましい例で、例えばノルウェーのハルデンについては、世界中が利用していたわけです。我が国ではこれまで国内で照射した材料をわざわざキャスクに入れて向こうまで運んで試験をしてもらって、その試験データが許認可に使われている。大変恥ずかしいといえば恥ずかしい事態がずっとあったわけなのですが、何かそういうことで貢献ができないかと思っているわけです。
 先日、韓国のHANAROに行きましたら、日本から持ち込まれたシリコンのウエハーの照射にたくさんのインゴットが積まれてありまして、これはどこから持ってきたのと聞いたら、トヨタですとおっしゃっていまして、どうして日本でそういうことができないかなと思った次第であります。
 それから関連して申し上げますと、研究開発の施設の共同利用という観点で、米国の新しい政権に向けて、NEAC、ニュークリア・エナジー・アドバイサリー・コミッティーですか、これは植松さんなんかもメンバーに入っておられますが、政策提言を去年の10月ぐらいにされました。そのときに米国内の研究施設の現状を全部洗ったのです。これはバッテルかどこかが確か行ったと思いますが、そういう作業を1回行うべきではないかと思います。これは先ほど来言われている、施設がどこまで使われているかという実態をよく調べるということなのですが、それぞれの部門がそれぞれ出していきますと、若干バイアスがかかったような形になると思いますので、どこか1つの機関が全部調べるということが必要ではないかと思っております。それが国際化のところで1点目であります。
 それから2点目の立地地域の発展、共生に資する形でということで、結局は地元に密着した形でできて、原子力が別の研究開発という観点からも、一部そういうことをやられているところはあります、福井なんかでそういう試みがなされていますが、もう少し広がりを持った形で、他産業が積極的にその施設を利用するような仕組みができないかなと思っているところです。これはまだ頭の中が十分整理できておりません。それが2点目であります。
 それから人材につきましては、先ほど来皆さんからリファーしていただき、一応の報告書ができておりますが、この報告書のスコープがかなり狭いのです。いわゆる研究者、エンジニアというところでありまして、幾つかの提言をしておるわけなのですが、そのほかにも規制当局の皆さん方、あるいは顧問の皆さん方の高齢化というところもあり、その辺をどうしていくかというようなこと、それからいわゆる現場第一線の人たちだとか、そのほかにテクニシャンみたいな方、特殊な技術を持っている人たち、例えば超音波探傷の技術を持っている人たち、これは原子力以外のところにも相当活躍はされているわけですが、そういうことで原子力に関連する企業、産業群の人材もあわせて考えていかないと、原子力の中だけやっても全体がどこかに支障が出てくると思っております。
 それからあわせて、先ほど長崎委員から指摘があったと私は理解したのですが、初等中等教育のエネルギー・環境分野の強化という分野があるのではないかと思っております。
 それから最後に、JAEAのあり方など、先ほど井上委員からもご指摘があったところでありますが、これはなかなか大きなテーマで、JAEAだけで済む問題ではなく、日本原燃もあわせて議論しなければいけない問題だと私は思っています。現状は不幸なことに、研究機関とオペレーターしかいないのです。
 これは間をつなぐところが、実はメーカーなりで、電力にはそういう技術はありませんから、非常に弱い形になっていまして、オペレーターに全部任せるわけにもいかないし、かといって継続的に研究的なテーマというのはあるのですが、それを維持するためにJAEAの中にそういうものを持つのかどうかというのは非常に悩ましいところでありまして、日本原燃も含めて何かそういう大きな機関で、いわゆる研究から次のステップに入ったらそこで全部まとめてやるような形、相当国が中に入り込んでというような形がいいのかなと思ったり、ここは相当難しい問題なので、この場では少し手に負えないのかなと思っているところで、先ほど冒頭に、この場で何を議論するのかというときの論点から少し重た過ぎる感じはします。
 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。それでは村上委員、お願いします。

【村上委員】

 日本エネルギー経済研究所の村上でございます。私は、皆様有名な先生方ばかりですので、お名前とかはよく存じ上げておりますが、多分私をご存じの方というのは、この中にはあまりいらっしゃらないのではないかと思います。
 そのような無名な私がこのような会に呼んでお声をかけていただきました理由が、今でもちょっとよく分かっていないのですが、おそらく考えられるのは、私が、何十年か前ではございますが、原子力工学科の出身であるということと、あと、今はシンクタンクでエコノミストをやっておりますが、その昔というか、つい最近までは事業会社、日本原子力発電ですが、まさにその研究開発とか技術開発部隊におりました。その経験があるいはあったのかと思います。
 そういう観点から、本日いただきました論点等に関して、まずはどのような切り口が私なりに考えられるところがあるかというのを少し考えてきましたので、簡潔に述べさせていただきます。
 このような会でいいところは、まず皆様方のご意見を伺ってから自分の意見を言えるということでして、いろいろと伺ううちに自分の観点が、既に何人もの方が突っ込まれたところだからもうここは言わないでおこうとか、ここはどなたもまだおっしゃられていないから言ってみようとかいう整理ができることでして、今回もちょっとそれを利用して、推敲しながら考えていたのですが、まず論点1の原子力人材の育成に関しまして、これはどなたも多分これまでご指摘がなかったと思われる点ですが、原子力産業の研究開発及び産業の今後の拡大、発展のために、原子力工学のカリキュラム、あるいは原子力工学の大学における教育というのをもう少し強化したらいいのではないかというご意見は、この今日いただいた論点整理の資料にも、あと何人の方からもご発言はあったのですが、私はむしろ、原子力工学のかつての学生だった立場からは、社会に出て就職して真っ先に思ったのが、原子力工学の専門知識というより、もっと幅広い工学の基礎的な分野、はっきり言えば電気と機械の工学的な分野が原子力工学科出身者はやはり弱いのではないかというのを痛切に感じました。
 実は研究機関は別としまして事業会社では、圧倒的にと申し上げるとちょっと語弊があるかもしれませんが、機械や電気の出身のほうが、これは個人差はありますが、やはりしっかりした電気と機械のエンジニアの基礎の基礎といったようなものを持っているために、私から見ても彼らの基礎は非常に強いように思いました。
 なので、こんなことなら電気や機械系の実験とか製図とか、ほんとうにそういう基礎をもう少し勉強しておけばよかったと、社会に出てから感じたのですが、このあたり、大学のカリキュラムの中で原子力工学専門分野の強化というよりは、そちらのほうがむしろ産業界に出てからのことを考えると先ではないかなというのが実感です。
 ただし、それを現実的にこの現在のカリキュラムで何か実現する方法があるかといいますと、ちょっとそれはないのではないかなと思っていまして、なぜならば、原子力工学科のカリキュラムは機械や電気の工学一般の授業もありますが、原子炉物理から始まって、炉心、熱流動、材料、化学といった非常に幅広い分野をカバーしておりまして、それで機械や電気を強化すると、学生の負担が今の2倍とか3倍になってしまって、多分これでは今の進学のシステムでは、原子力工学科が逆に選ばれなくなる可能性のほうが高いと思われますので、それをどうしたらいいかというのはまだ思いついておりません。
 それからもう一点、これは論点の3番目ですが、技術移転のお話、事業化への移行に関する点で考えた点ですが、私の事業会社で技術開発部門にいた経験から思うことなのですが、今日のいただいた論点の整理の資料の中で、これまでウラン濃縮及び再処理の技術移転は行われてきた。今後は再処理施設の稼働やFBR実証炉といった、FBR実証炉が今後のほうに入っておりますが、1980年代から90年代にかけて日本原電が主管で、FBR実証炉の技術開発及び実用化プロジェクトというのがあったのを、皆様当然ご存じのはずで、これが今後に入っているということは、要するにこれまでの技術移転は完全に失敗に終わったという認識でよろしいのですね。
 私はまさにその失敗に終わった部署におりましたので、そこで、何が問題だったのだろう、なぜその技術移転というのがこれまでになされたことではなくて、今後のものになってしまっているのだろうというのを、今さらながら振り返ってみたのですが、当時の私のおりました原電高速炉開発部では、旧動燃、JAEAから多くの出向者を受け入れて、各分野の専門家により、それぞれ炉心、燃料、安全、熱流動、計装制御、電気といった各分野に分かれて、設計では技術開発をやっておりました。
 私は最初、炉心燃料グループにおりまして、それから途中でプラント設計全体を統括するグループに移りましたが、そのプラント設計を総括する部隊では何より求められることが、これは開発と実用化を見据えておりますから、問題解決、しかもありとあらゆるすごく広い分野の問題解決能力というのが一番求められるものです。
 これは先ほどもどなたかがおっしゃいましたが、JAEAの中でも問題の、エンジニアリングの全体の構成能力といったようなことのご指摘があったかと思うのですが、能力というより、これはまさにそのような意識の問題として、今から思えばその各分野の専門家の方々には、自分たちのグループで摘出されている問題点を、全体の総合エンジニアリングプラント全体の設計に組み込んでいくためにはどうすればいいかという、その解決に向けた意識というのがなかったような感じがあります。
 つまりこれをよく言われる言葉で言いますと、自分の専門分野の中にこもってしまって、他の分野とのインターフェースを考えようとしない、狭い意識のエンジニアということですが、これがえてしてその道の専門家、特に原子力工学で炉心や燃料や安全を専攻した方に多かったと記憶をしております。
 私もその当事者の一人ですので、自分もそうであった面というのが非常にあったと思って、今では反省しておりますが、やはりそれが実用化に向けての一番のネックであった、逆に言うと、これから何にせよ実用化をしていくときには、自分の狭い専門分野にこもって、それが他の分野とのインターフェースや全体の総合的な工学の中でどういう意味を持つのかという意識を持たねば、どんなプロジェクトでも実用化、事業化というのはできないのではないかと感じております。
 このようなことが、原子力工学という分野の教育とか人材育成といった観点だけで解決するとはとても思えませんで、それを解決するためには、これはエンジニアリングとか工学部という限られた枠ではなくて、例えば技術経営の大学院、MOTとか、あるいはMBA課程といった、もう少し幅広い教育のカテゴリーで考えていったらいいのではないかという気が個人的にいたしております。
 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございました。山名委員、お願いします。

【山名委員】

 私はメモをつくってお配りしていまして、これは昨日新幹線の中で書きましたので、誤字脱字がたくさんありますが手短にお話します。
 まず、原子力技術を支える基盤って何だろうと。東京でのぞみ号が発車して、名古屋までずっと考えていたのですが、1から10までぐらいかなという気が、突き詰めて考えるとしたのです。
 まず技術の目標像。それからそれに対する技術者の意欲、モチベーション。それから人的なある種の能力、これは一般的でいいのです。それから数。それから極めて専門的な技術的な知識や能力。それからオーガナイズされた技術力。このオーガナイズというのは非常に大事だと思っています。それから応用性の高い技術知識やツールとか理論や基礎という学問です。それから施設、お金。それから原子力なら原子力でそれが支えられている技術コミュニティーの存在。これはいろんなものを共有したり協調する体制ということです。それから活気と発展性のある産業活動があると。多分この10がそろっていることが大事で、現状ではこの10のそれぞれに何がしかの問題があるということであるかと思います。
 いろいろ懸念を書いてありますが、これを読んでいただいたらわかるのですけど、多分我々がここで考えることに段階があるだろうと。まず、自助努力とか経営判断のような、ある種のみんながベクトルを共有することで向ける活動、これはおそらくある。これはあまりお金とか法律とかが絡まないでできるものがあって、それは何かの形で統一歩調をとるようなことが必要だと。ただし護送船団的ではなくて、どちらかというと前を向いて引っ張っていくような行動をとる。では、誰がリーダーシップをとったりするのかというのはこれからの議論。
 それからもう一つは、政策誘導といいますか、ちょっと文部科学省のほうに水をまいていただいて、ある種の誘導措置をとっていただいて、こういうアクティビティーを育てるという行動です。既に、例えば原子力人材育成プログラムとか原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブとか原子力の公募事業というのはあって、これがまさに政策誘導的な能力を発揮しつつあって、これを実効性のあるものにどんどん育てるということが大事なのだろうなと思っています。
 それから今度は先ほど井上委員がおっしゃったような、JAEAというようなものの大きな改革の話は、法律とか人間の首とかいろいろ絡んできまして、これは10年計画ぐらいでじっくりやる必要があるだろうと。虎視たんたんとそれを目指すというアプローチが必要だと思っております。
 それでさっきの私の資料の懸念というところに1.から11.までありますが、取りかかれそうなものをちょっと紹介すると、3番の核燃料サイクルや廃棄物のところで産業化前の段階で技術的な成熟度の不足が存在。これはもちろん組織的、大きな問題はあるのですが、次のページを見てください。
 ○が3つあって、R&D Triangleと勝手に名前をつけているのですが、基礎と経験工学的な開発と、今度はそれを現物にしていくときの設計基準ですとか、設計のノウハウですとか、物づくりに生かしていくようなエンジニアリング、この3つの○がきちんとすり合わせながら並存していく活動がないと、まともなものはできないと思うわけです。
 このR&D Triangleをきちんと実現するにはどうするか。現状ではこれがそれぞれぶつ切れになっているという状態にあるのです。これは先ほどおっしゃったような組織的な改革とかはもちろん大事です。ただし、そこに至るまでの範囲でできることも多分あるはずなのです。例えば人間的な動きを進めるとか、先ほどの協力体制をもう少し組むとか、何らかのルールをつくって、ドキュメンテーションとかいうものを増やしていくとかいうアプローチはあると思っているので、まずR&D Triangleをきちんと構成するために、現状の自助努力で何ができるかというのを探るべきだと思っています。
 それから10.というところに原子力技術と一般産業技術間の距離と私は書いておりますが、村上委員も似たようなことをおっしゃったと思うのです。我々は、原子力という実は実態のない寄せ集め学問をつくったことによって、ある種閉じてしまったものがあって、そこに外部から入ってくるべきものを絶ってしまったという失敗があったと思うのです。
 村上委員がおっしゃるように、原子力学といういいかげんな寄せ集め学に入ってしまうと、それぞれの本来の基礎学問の生産性が薄くなっているというところがあって、ほんとうは原子力の技術者というのは、例えば熱流動の専門家だったら熱流動をやりながら原子力的な面でやっているという、2面性を持っているのです。マトリックスといいまして、いわゆる学問的専門性とプロジェクトとして何を見ているかという、2軸の交点で活動しているのです。
 その専門性のところの感覚で言えば、別に原子力というのはプロジェクト側の話であって、一般産業と全く同じです。実はこの一般産業界からの知識とかその交流を絶ったことによって損している部分がかなりある。これは実は、国が原子力予算というのをある種閉じたことによる問題もあったと思っています。でも今からでも解決できるのではないかと。つまり門戸を開けということです。政策誘導の対象でもあるでしょう。
 それと関連して11番の大学として、寄せ集め学としての原子力学としての凝集力の低下。凝集力というのは2つの意味があって、学生を集めるという意味と、その寄せ集めの学問自身が核分裂しつつあるという問題です。つまりプロジェクト側から今度は基礎学問の側にまた戻りつつあるということです。そこを何とかするということは大学の自助努力で考えるべきだということです。
 で、最後に、ちょっとこれは今まで井上委員のお話を聞いていて、小川委員も似たようなことをおっしゃったので、先日、原子力委員会の専門部会で東京大学の先生のお話を聞いたわけです。一般産業の分析をされている先生で、藤本隆宏先生という方です。一番印象に残ったのは、一般産業界での技術開発というのはモジュラー型の開発とインテグラル型の開発があるというわけです。モジュラー型の開発というのはどちらかというと、ある狭い目的をばしっと決めて、例えばパソコンのプリンターを開発するといったらプリンターをつくるのだと。モジュラー型というのはそれです。インテグラル型というのはもっと広い概念で、いろんな技術を組み合わせながら、ああでもない、こうでもないと試行錯誤しながら広いシステムをつくっていくアプローチ。
 日本の企業はインテグラルが得意、アメリカはモジュラーが得意なのですが、我々が原子力の開発を国としてやるときに、インテグラル型に固執し過ぎていたのではないかと。つまりできるだけいいものを組み合わせていきながら、でっかいものをつくって実証しながら、ああでもない、こうでもないと失敗したりというアプローチに固執し過ぎて、本来のモジュラーの、つまりどちらかというと、やや狭い専門域でばしっとねらうものに力が行っていないというところがあったと思うのです。
 もともと原研などは基礎学問ですから、モジュラー的にばしっと科学は科学だというところがあったが、動燃はインテグラルに固執し過ぎて非常に大きな労力を損していたところがあるのではないか。しかも、結局できたものがインテグラルどころか、非常に広がり過ぎたようなものになっている、発散してしまうというケースがある。
 多分我々が、今の限られた予算と限られた人員と限られた技術者の中でいくのは、まずモジュラー的にできるものをばしっと決める、ある種のエレメントを用意するということだと思って、それをインテグレーションするのはどちらかというと産業側に任せるというか、アセンブニングの能力というのは民間は極めて高いですから、そっちの力をうまく使う。ところが現在モジュラー的、あるいは基礎要素的な部分で欠落がある。欠落があるままにインテグレートすれば失敗するのは当然ですよね。だからJAEAはやはり限られた予算の中で、少しモジュラー型に戻っていくようなアプローチが要るのかなと思いながら、その原子力委員会のお話は聞いたわけでございます。
 これは組織の性格なので、さっき言ったような経営問題なのか、あるいは法律問題なのか、お国の予算の問題なのかというのは何とも言えませんが、少し原子力の基盤技術の伸ばし方として、モジュラータイプを目指すという、国としての何らかの方向付けはあってもいいのかなという印象で、それを勉強したということでございます。
 こんなような感覚で私は議論に参加させていただきたいと思っております。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 では、各委員から、まず一通りご意見とかをいただいたところでございます。たくさんの課題が挙がってきたわけですが、次回以降、これをどういうふうにして議論するのか、また事務局のほうと考えたいと思いますが、いろいろといただいた中で、まだ言い切れていない、あるいはこんなこともあった、今までうまくいかなかった理由はこれもあるのではないかとか、もし何かありましたらぜひここでいただいて、あと20分ぐらい、自由にフリーディスカッションしたいと思います。
 4月16日の親委員会でも、何が根本的な原因なのかというご意見もありました。もし、まだ今日の議論の中で根本的な原因についてここで出ていないようなところとかありましたら、教えていただけたらと思います。それ以外でも結構ですのでご意見をお願いいたします。山野課長は何かまずございますか。

【山野原子力計画課長】

 個々には言いませんが、確かにこの議論でも境界条件としてどうあるかというので、例えば長崎委員が、国際化まで考えるのか、我が国で閉じるのかとか、そういうことなのですが、ほかにも原子力機構法があるではないかとか、いろいろな議論もあるのですが、とりあえずここの議論としては、あんまり境界条件を狭めるようなことはせずにしたいと思っています。
 それとか、国内で閉じるのかとか、国際化とかという二者択一ではなくて、開いてどうのこうのということをやると、方程式が1つ増えるだけで、ただでさえややこしそうなのが、ややこしさがもう一度増えるということになるので、それぞれいろいろ難しいからこれはできないだろうとは言わずに、とりあえず最初の議論としては大ぶろしきで、境界条件をあまり狭めずに議論しながらも、かつ、ただ議論のための議論をしても最後は仕方がないので、ある程度具体化できるところ、そうすれば予算措置であろうが、極端なことを言えば法律改正でもいいのですが、できることを一つずつでも出していくということで考えていけばいいのではないかという印象を受けました。

【田中主査】

 ありがとうございます。委員の方々からご意見とか議論をしていただければと思います。
 文部科学省だけでも対応できないようなことがあるかもわからないし、別にそれはまた十分論点を整理して、適当なところで検討してもらえばいいかと思うのですが、ぜひ1回目ですからいろんな問題点を出していただきたいと思います。

【高橋委員】

 全体広目に受けるということはそれでいいと思うのですが、いろいろ議論していくと非常に広すぎて、かみ合わなくなってしまうのでは。1から4までいろんな論点があると思うので、ぜひ、このぐらいの回数でこういう順番で議論したいというようなところを少し事務局でおまとめいただいて、そこに向けて頭の中を整理して部会に臨むという形のほうが、議論がしやすいような感じがいたしますが、どのような進め方になるのでしょうか。

【山野原子力計画課長】

 恐らくそこはそうなっていくと思います。別にこれだけ幅広くずっと毎回同じ議論で、何かトートロジーをやっておっても仕方ないので、やはり2つ考え方があって、分野もある程度絞って、議論を集約していくということもあるし、それと、それぞれ長さのレンジで見て、予算とかを考えれば、夏ですから、7月というのが1つのターゲットになるとか、あとは今後の流れとして1つ大きいと思われるのは、原子力機構の中期計画というのは次の3月から改定になるということですから、ある程度完全にここでまとめなくても、ここでの議論の方向性がそちらに伝わるようにしなければいけないと思っています。そうするとそのタイミングで、そこまでにどういうことを考えたらいいかなど。
 また、これは半年議論をしたからといって、すべて解決するわけはないので、そういうものは長期的に引き続き検討するとか、そこはそういうことで、上手な運営を考えたいと思います。

【田中主査】

 まず7月ぐらいまでにということですけが、今までどこに問題があったのかということ同時に、すぐできることと、山名委員がおっしゃった10年計画ぐらいで着実にやっていくという話もあります。

【山名委員】

 山野課長の頭の中には、当然そういったことはあるのでしょうが、幾つかの現実的問題があって、1つは既にある原子力研究開発のアクティビティー、これを達成していかなければいけなくて、明確なミッションがあるということ。これは親委員会でも原子力機構の岡�ア理事長がおっしゃっていました。かなり大きなミッションを達成していくと。その枠におけるどの程度の行い方の変化が許容されるかというのは、いまいち見えないわけです。そっちががたがたになったらすべて沈没する可能性もあります。ですからその枠とこの枠のある種の関係というのを明確にする必要があると思います。
 それからもう一つは、基盤強化するために、やっぱり我々は負の遺産を持っているわけです。負の遺産というのは細かく言えば、廃棄物の蓄積ですとか、施設の老朽化ですとか、それから人間の引退ですとか、あるいは社会的人気が悪いとか、いろんな負の遺産があって、この負の遺産、負債を解消しないと、金融界と同じでなかなか新しい展開が開けないというところがあるのです。だから乗り越えなければならないものはやっぱりあるのです。よってその辺を無視して理想像だけ言ってしまうと、これは中身が伴わない。
 さて、では、目の前にあるネガティブなものをどう整理しながら、目の前にある大きなミッションをどう果たしながら、どうやって基盤を徐々に変えていくかという、極めて戦略的かつ生々しい、かつスマートな何かが要る。ウルトラCも多少要るかもしれません。そういうことを考えていかないとだめだということで、そういう意味では、リアルなアクションプランをこの中でどうやって組むかというのもぜひ考えたいと思いますが、私には考える能力がないなと。

【田中主査】

 いやいや、皆さんすべての方が今抱えている問題とか現下の課題とか、皆さんご承知だと思いますから、そういうことを頭の中に置きながら、総論に走ることでは全く意味がありませんので。何か井上委員ありますか。

【井上委員】

 皆さんおっしゃることの状況認識としては、大体同じような認識を持っておられるのではないかと思うのです。また、文部科学省のほうもそういう問題意識を持っておられ、こういう作業部会を立ち上げられたのでしょうから、やはり一番大事なのは、今の山名委員の負債の問題も含めてなぜそうなったのかということ。例えば、なぜ、アウトプットが日本はあまりにも遅過ぎるのかと、その辺の原因をそれぞれの論点についてきちんと把握することが必要かと思います。
 例えばもう一つインフラの問題ですと、やはりそれぞれ日本にどういうインフラがあって、それがどう使われて、その稼働率はどの程度なのかというようなことをきちっと調査して、それからそれに対する解決策をこの場でつくっていくと、かなり前向きな提言というのが出てくるのではないかと思います。

【田中主査】

 ありがとうございます。親委員会でも何か根本的な原因があるはずだというご意見がありました。そこを整理することが大事かと思います。多分今日まだ指摘されていないようなこともあるかと思います。私もこんな年になって大学の中で就職担当をしていて、学生と一番接するのが多いのです。最近は原子力ルネサンスとかいって、メーカーや電力にどんどん出ては行くのですが、いっときなかなか行かなかった。やっぱり一つの理由として言っていたのが、フランスなどと比べたら、日本の原子力政策はよく分からないという人もいるわけです。
 そういう意味では我が国の原子力政策はほんとうに明確にすべきだと思ったり、それから先ほどどなたかおっしゃっていましたが、原子力機構の現在の評価システムとか、予算の仕組みとかによって、現場はかなりその中で考えざるを得ないということになっているとすれば、その辺のところももう少し別の仕組みを一緒になって考える、あるいは提案するということもないといけないかと思います。
 まだ挙がっていないような原因があるのだと思うので、その辺をまた整理しつつ、どこを解決できるのかを議論したらいいかと思っております。
 あとはいかがでしょうか。長崎委員いかがでしょうか。

【長崎委員】

 一つ少し思ったのは、今、井上委員が言われたのにかなり近いところもあるのだろうと思いますが、今こういう論点がいろいろ出てきて先生方からのご意見をいただいた中で、例えば基盤を強化するということについて、それ自体に恐らく誰も異論はない、必要だと思っているのだと思いますが、そもそも何が困っているのか。例えば原子力機構は一体何が困っているのかということを私はわかりません。それは予算のことなのか、人も減らされいるといことなのか。
 しかし、いろんなところで短期的にできること、中期的にできること、長期的にやらなければいけないことというのがあるとしたときに、やはりそこを皆がある程度、必要なところについての共通の認識というか、同じ土俵に立った上での議論もどこかで必要なのかと思います。例えば法律を改正してもらわないと、原子力機構はこんないろんなことを言われても困りますという立ち位置なのか。
 それは我々は勝手なことをある意味言えますが、でもそれは文部科学省側からするとどうなのかとか、こういういろいろなものが出てきたときに、文部科学省としては文部科学省としての中期目標というのがあって、それに対しての中期計画というのを原子力機構の中でつくっていこうとするときに、そもそも一体どういう方向になっているのかということを議論できるのかというのが、よくわからないところがあるんです。
 山名委員でしたか、原子力予算として閉じているのを開放していかなかなければいけないと。それは簡単なことなのか、それとも誰かと刺し違えるぐらいのことをやってくれればできるのかとか、その辺ははっきり言って、分かっている方は分かっていると思うのです。私は少なくとも今の現時点では分からないところです。だからそういう意味で、ある程度、問題になっているところは一体どこなのかということについての共通の認識が、どこかで必要ではないのかという気はします。
 以上です。

【田中主査】

 ありがとうございます。その辺はどう考えればいいのでしょうか。

【山野原子力計画課長】

 そこはどのように個々の議論が展開していくかというのがあります。最初からこのハードルは高いというところから始まると議論がもう制約されるので、そこはあまりそういう制約を設けずにやればいいのではないかと思います。
 ただ、制度的に言うと予算で解決できるような話など簡単です。私が課長であれば私がやれと言えばできます。法律改正であれ、それは省として意思決定すればできますので、法律以上に難しいところはあまりないと思うのです。
 だから意外と見ていますと、それは原子力機構などもそうですし、大学などもそうですが、非常に自己規制をしているところがあるのではないかと思うのです。だからやらないための理由としてそういうことをエクスキューズとして使っていると、やる気がある人が誰か1人いれば、やってみると実は一声で終わるとか、そういうこともあるのではなかと思うのです。
 それと議論も大上段にやるとおそらく議論だけにしかならないので、アウトプットとしては大きな中のとりあえず第一歩とか、それをてこに最後は何かドミノ的に大きいことができるとか、そういう感じの発想で、少なくとも何かここで小さいことでもいいから、具体的なアクションが動いていくというような感じで議論が進んでいくといいのではないかと思います。
 そうでないと、この場でこういうことは重要だとかいっても、原子力機構と日本原燃をどうするかといった話を評論家としてはできるのですが、恐らくそんな簡単なわけはないわけです。ただ難しいからといって議論しなかったらまたどうしようもないので、そんなものを考えながら、ではできる第一歩は何かとかいうような感じで議論してもらえると一番いいのではないかと思います。

【田中主査】

 ありがとうございます。

【服部委員】

 この場は本当の原子力の関係者ばかりの集まりでしょう。ですからなかなかその枠を超えての議論というのは難しいので、先ほど山名委員から、いろんなことをやっている藤本先生の視点を紹介していただいたのですが、何かそういう外の物の考え方を紹介してもらうといいますか、そういう仕掛けみたいなことはできないのでしょうか。
 例えば経済産業省の原子力部会みたいなところですと、いろんな方がおられるわけです。それで我々のある意味で枠を取っ払ってもらえるようなことができるのですが、原子力の関係者だけの議論をやっているような気がしまして、そこが少し心配なのです。

【田中主査】

 メンバーを追加したり、あるいは外部講師をお呼びするなどいかがでしょうか。

【山野原子力計画課長】

 そこらはちょっと考えます。ただ、大人数で議論するところとは、ちょっと違う議論を想定していますので、むしろどちらかというと公開せずにできるくらいの議論のほうがいいかと思うくらいで、そこまではしていませんが、かなりざっくばらんに、ある程度少人数で根を詰めた議論という場にしています。
 ただおっしゃるように、確かに閉じた空間の議論だけにならないように、いい人がいれば、その人からプレゼンテーションを受けるなどはあるかと思います。

【服部委員】

 あるいはそれぞれの委員の方がいろんな方と接触して、それ用の議論を参考にこの場で紹介していただくなり、その人のご意見として言っていただくとか、そういうことを意識してやらないと、どうもえらい狭い話に入っていきそうな気がするのです。

【田中主査】

 そうですね。服部委員、あるいは山野課長の言われたようないろんな方法でやりたいと思います。
 最後になりますが、村上委員、これまではこのような場にあまり出なかったとおっしゃっていましたが、今日聞いて、何か最後の印象でもいいんですが、こうしたらいいのではないかとか、もしありましたら。

【村上委員】

 本当にこのような場で勉強させていただけることが非常に有意義であると思うものの、その一方、あえて言うならば、先ほど服部委員がおっしゃったように、私の昔からよく知った世界なわけです。それで出てくるご意見も、なるほどとうなずけはするのですが、正直言ってさほど目新しいとは感じませんでした。
 それで昔から何回も議論されて、相変わらず問題解決していないのではないかというご指摘も全くそのとおりだと思っていまして、外部のというよりも、ここにおられる皆様は恐らくお仕事でも生活でも、当然外部の方との接点をお持ちなわけで、その観点から少し見方を変えてみるというのは、おもしろい観点かなと思います。
 かといって、やはり全くの素人の方を連れてきていきなり話せというのも、その方も非常に居心地が悪いと思います。私は幸いにして居心地は悪くないのですが、やはりそれに甘えることもなく、これからいろいろなもっと活発な議論を期待していきたいと思います。

【田中主査】

 ありがとうございました。重要なコメントです。

【服部委員】

 その辺の1つの参考なのですが、私が先ほど申し上げたNEACのレポートというのが去年の11月に出ておるのですが、アメリカの政策を決めるのに海外から2人メンバーが入っているんです。そういうことをやるところがアメリカの幅の広さといいますか、奥行きの深さだと思っているのです。そんな感じの仕掛けが何かできないかなと思っています。

【田中主査】

 ありがとうございます。

【櫻井審議官】

 今日はいろいろ忌憚のないご意見ということで、こういう会というのは1回目、2回目というのは発散するほうがいいと思っていまして、たくさんいろんなことを言ってもらって、それをしないで初めからある部分でやっていると、まとまったときにはこじんまりしたものになってしまいます。まさに今日みたいなお話を、回数を増やしてでも何回かやればいいと思います。その中で足りない人がいれば来ていただけばいいと思います。足りない人という意味は、少し場違いの人であっても居心地が悪くなくてこういうのに関心を持っている人というのは、案外探さなくてもあちこちにいるのではないかと思います。
 そういうことばかり言っても仕方ないのですが、私自身、ではなぜ、どういう視点で、何するのかと考えたときに、井上委員のおっしゃっていただいたことが結構ヒントになっていますが、今やろうとしていることは案外難しくて、今までどおりのやり方ではできないわけです。特にR&Dの世界については。なおかつもう一つのキーワードとして、双方向の話ということもありました。であれば、JAEAだけでもできない話。JAEAも企業の人と組んで何かやるなど、そういう実践的に協力できる世界というのがかねてからあるとすれば、今解決しなければいけないR&Dの課題というのがいろいろあって、その中でできたテーマの中で、工夫次第で少しチャレンジできるものがあるのではないかと思うわけです。
 デファクトでやってみると、逆にそこで人材でどういうところが足りないとか、組織としてこういうところが少し足りないのではないかとかいうことが、議論をしている中で分かるのではないか。デファクトで少し足元でできることは、やることによって、この基盤的なR&Dインフラをどう活用するかという論点に対する答えのヒントが得られるのでないか。概念整理も大事なのですが、やることによってさらに次の答えを見つけていくという世界があってもいいのではないか。答えを見つけ切ってやっていたら多分遅いし、先の先まで見えなくても、やってみてさらに分からないことと、やってみて案外難しかったけどできることというのがあって、世の中が回っていくと思いますので、そういう一つやり方の工夫といいますか、R&D実施の工夫というのをみんなで少し考えていただき、できるものを足元で取りかかっていくということでいいのではないかと思います。
 すいません、雑駁な感想でございますが、お願いも兼ねて申し上げました。

【田中主査】

 ありがとうございました。これからもぜひ櫻井審議官におかれましても、いろんな議論に参加していただきたいと思います。

【櫻井審議官】

 ありがとうございます。

【田中主査】

 それでは、時間になりましたので、議論についてはこの辺で終わりたいと思いますが、今後伺っているところによると、月1回よりも早いペースで議論を進めたいということですが、また事務局のほうでいろいろと整理していただきたいと思います。
 最後に事務局のほうから、連絡事項をお願いいたします。

【山野原子力計画課長】

 次回の会議については、日程だけではなく、議題なども含めましてご相談させていただきます。
 また、今日の議事録につきましては出来次第、メールでチェックをお願いします。以上でございます。

【田中主査】

 ありがとうございました。
 それではこれをもちまして、第1回の作業部会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

── 了 ──

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研究開発局原子力計画課