第5期 地球環境科学技術委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成22年1月5日(火曜日)13時30分~14時50分

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室(中央合同庁舎7号館東館3階)

3.議題

  1. 平成22年度予算案について
  2. 作業部会「21世紀気候変動予測革新プログラム課題選定プロジェクトチーム」の設置について
  3. その他

4.出席者

委員

安岡主査、安井主査代理、石川委員、井上委員、甲斐沼委員、笹野委員、高橋委員、高村委員、三村委員、持田委員、安成委員、山口委員

文部科学省

谷地球・環境科学技術推進室長、西山地球・環境科学技術推進室室長補佐、岡本海洋地球課課長補佐、湯本地球・環境科学技術推進室専門官

5.議事録

【安岡主査】  本日は緊急の議題もあり、正月早々にお集まりいただいております。議題が2件あり、1件目は来年度の予算案になります。2件目は我々が審査しなければならない議題ですが、今実施している、21世紀気候変動予測革新プログラムの課題が選ばれることになりました。詳細は後ほどご説明いただきますが、その作業部会を設置させていただく案件でございます。

【谷室長】  本日、誠にお忙しい中お集まりいただきありがとうございます、本年もどうぞよろしくお願いいたします。本日は12名ご出席の予定で、現在、11名ご出席されており、過半数に達していますので委員会は成立と報告させていただきます。

【安岡主査】  資料の確認を。

【岡本補佐】  (資料確認)。

【安岡主査】  それでは議題に入らせていただきます。一番目の議題、平成22年度予算案ですが、資料の1に基づき事務局からご説明をお願いします。

【谷室長】  それでは資料1をごらん下さい。

 簡単な総括表を付けました。当委員会で新規のもの、中途段階で中間評価等、様々な評価を頂いたところですが、22年度政府原案が12月25日に閣議決定されました。これについてご報告します。

 1点目、気候変動適応戦略イニシアチブについて、内容は大きく2つありまして、1つは平成18年度からシステム開発を続けているデータ統合・解析システムで、21年度予算額に記載の8億円弱に相当しますが、22年度については16億円の予算のうち約10億円がデータ統合・解析システムの継続分の予算です。残り6億円は、新規で気候変動適応の研究のプログラムを立ち上げます。2点目、21世紀気候変動予測革新プログラムについては、IPCCへの貢献を目指して精力的に研究を進めているところですが、22年度については、21年度とほぼ同額の15億円で計上しました。最後、地球観測システム構築推進プランについては、既存のプログラムが一部終了するということで、残る2課題について最終年度の約3千万円を計上しております。

 次のページ、これらの予算を含めて、文部科学省全体でグリーンイノベーションを目指した研究開発として、昨年春から夏にかけて省内で議論あるいは先生方にもご議論いただいたところですが、低炭素社会づくりの研究開発戦略を策定し、これに基づいて予算要求をしてきましたが、この戦略全体を示しました。21年度の関係予算としては、36億円強でしたが、22年度として計上したものは97億円強で、大幅に強化した形になりました。事業仕分け等の予算の大幅な見直しがありましたが、地球環境・グリーンイノベーションについては力をいれてしっかりやっていきたいと考え、予算計上した結果です。図の左側に緩和の戦略、右側に適応の取組を示していますが、それらを社会システムの中に入れていく取組ということで、フィールド実証する取組みを真ん中上にいれてあります。これら全体を支える総合戦略、基盤的な研究から社会シナリオ研究も含めたものが一番下です。また、この様々な取組を科学技術外交という観点から積極的に海外へ展開していく取組を右上のオレンジの箱に整理しています。薄い黄色の枠で赤文字の部分について、緩和の戦略の部分には先端的低炭素化技術開発を挙げておりますが、JST等で新しい革新的な環境技術について取り組むもので25億円計上しているほか、関連する独立行政法人等で行う研究開発を合計して約58億円。適応の部分では、先ほどご紹介した気候変動適応戦略イニシアチブに21世紀気候変動予測革新プログラムを加えて32億円を掲げています。フィールド実証については、総合科学技術会議の方で全体の資源配分方針を決めておりますが、科学技術振興調整費の新しい事業で「気候変動に対応した新たな社会の創出に向けた社会システムの改革プログラム」5億円の新規プログラムが計上されております。この部分は、総合科学技術会議で三村先生が座長補佐を務められた「気候変動適応型社会の実現に向けた技術開発の方向性立案のためのタスクフォース」がとりまとめた報告書を具体化するプログラムです。下の方、総合戦略に掲げた「低炭素社会実現のための社会シナリオ研究」は新規で3億円を計上しました。JSTも低炭素社会戦略センターを設置し、社会シナリオの研究に取り組んでいくとのことです。外交戦略ではJICA-JST事業がありますが、これは環境エネルギーに特化したものではないので具体的な数字を掲げておりませんが、環境エネルギーに関係する重要な課題も含まれていることを申し添えさせていただきます。関係府省や総合科学技術会議と連携しつつ、文部科学省の総力を結集して取り組んでいきたいと思います。

 次のページ、フィールド実証戦略に掲げている事業の詳しい説明です。科学技術振興調整費で新たに設けた「気候変動に対応した新たな社会の創出に向けた社会システムの改革プログラム」です。気候変動の対応という観点から、緩和と適応の両面をきちっと進めていくことが必要ですが、最終的にそれが社会の中に入っていくことが当然ながら必要です。社会の中に入っていくことについて、この事業の中でフィールドで実証することにより、場合によっては研究開発上の課題や、社会的な規制緩和の問題などがでてくるかもしれませんが、そういった課題をあぶり出し、科学技術を社会の中に入れていくことを、加速するプログラムです。振興調整費ですので、複数の府省庁にまたがる取組みや技術を、市町村に手を挙げていただいて1つのフィールドで一緒になって取り組んでいく仕組みです。全体で5億円、5年程度の事業で1課題当り1億円から2億円です。実際に革新的な環境科学技術が社会に入っていく先導的な役割を果たすことが期待されます。今回はグリーンイノベーションということで、各省の事業分野の加速をするということで各省にも予算計上されていますが、各省が自ら実証するものと、これを組み合わせることで、社会システム改革を進めていきたいと考えています。

 次に、気候変動適応戦略イニシアチブです。当委員会で事前評価をお願いしておりましたが、財務省との調整等を踏まえて当初から変更したところもありますので、ご説明いたします。基本的な問題意識としては、気候変動適応研究をしっかりやる事で変わっておりません。ただ、当初は、申し上げていたように地方自治体との連携、適応研究の成果を出口まで到達させるという目的で設計しましたが、最終の適応策の実施は当然ながら地方自治体あるいは事業官庁が実施するが、文部科学省がやる部分をはっきりさせるべしとの指摘もあり、下の箱に書いてありますが、研究課題イメージとして先進的なダウンスケーリング手法の開発、データ同化技術の開発、適応シミュレーション技術の開発という大きな3つの領域に着目し、こういったところで基礎基盤的な研究を気候変動適応というところへ取り込んでいく、という事業の設計に修正しました。出口はしっかり見据えつつも、基礎基盤的な技術を文科省の役割分担として実施する形にしました。次のページに、他省庁、自治体との連携についてまとめました。基礎基盤的なところを文部科学省が担うということで、全国各地の大学の活躍を期待しているところですが、大学が地方自治体を巻き込んで地域の課題解決にあたるという問題意識は変わりませんが、具体的にその地域での課題解決にあたって、手法として例えばダウンスケーリング、シミュレーション技術、データ同化技術について、研究開発で対応していく。ある意味上流側にあたりますが、そういう研究成果を、すでに設置されている関係府省連絡会議などを通じて情報交換・情報共有を図り、関係省庁、あるいは自治体にこういう研究成果を流していき、その成果を関係省庁や自治体で具体的な適応策の展開につなげていきたいと考えています。

 その次のページ、気候変動の影響評価や適応については、環境省でも、通称S-8と言われている新たな課題を立ち上げて取り組もうとしています。すでに公募が進んでいますが、三村先生が全体の研究代表者になるとお聞きしていますが、文部科学省としても、適応戦略イニシアチブと連携をしていくことを、環境省と相談し、整理しています。基本的な連携の考え方としては、すでに概算要求の時にご説明させて頂きましたとおり、すでにある合同会議を活用する方針です。いずれにしましても、これからグリーンイノベーションということで社会全体も大きく動いていきますので、予算編成全体を通じて非常に厳しい財政状況の中、効率的効果的にやっていくために、こういった相互連携をしっかり進めていきたいと思います。

 21世紀気候変動予測革新プログラムについては、内容的には変わっておりません。予算も21年度と同額です。今年度、来年度で気候変動予測の本実験を実施する年にあたっておりますので、この予算でしっかり成果を出したいと思っております。

 地球観測システム構築推進プランについては、大きく予算を減らした形になっていますが、これは既存の課題が終了するからです。なお、観測については、地球観測の重要性は当然認識しており、しっかり取り組んでいきたいと考えており、文部科学省関係の独立行政法人、海洋研究開発機構や宇宙航空研究開発機構とも連携しながら、また関係府省とも連携しながら進めていきたいと考えております。ただ、予算的には地球観測システム構築推進プランが縮減しており、できれば新しく立ち上げる気候変動適応戦略イニシアチブの中に、気候変動適応に不可欠な観測データの取得、出口に近い観測、についてはイニシアチブの中でも考慮したいと考えており、観測については新しい事業を立ち上げることはこの情勢の中では難しかったのですが、そういった形で対応させていただくことを考えています。以上、資料1についてご説明させていただきました。

【安岡主査】  ありがとうございました。この委員会で半年ほど前にご議論いただきました件について具体的に予算化されたとの報告でございます。予算当局や総合科学技術会議との折衝など頑張っていただいたとのことですが、何とか予算が付いたということで大変すばらしいと思います。それではご意見・ご質問あればお願いします。

【安岡主査】  私から一点よろしいですか。資料に三角形の絵が有りますが、この絵でどんどん成果が上に向かって行くわけですが、実際その成果を上に上げていくのはそう簡単ではない、それをつなぐものとしてフィールド実証や、関係府省連絡会議で、適応策や緩和策を採る省庁にインプットしていくという話がありましたが、もう少し具体的に何かないと難しいのではと考えますがいかがですか。

【谷室長】  ご指摘の通りだと思っております。なるべく、文部科学省としても低炭素社会作り戦略に基づいて進めていくと言うことで、その際、総合的・一体的にやって行くということで、個々の戦略のアウトプットや進捗状況を横の連携が必要で全体を見ている所としては足りないところもあろうかと思います。文部科学省がそれを担うのは少々違っておりまして、総合科学技術会議でちょうど年末に気候変動の適応についてのタスクフォースの最終取り纏めが行われました。2008年に環境エネルギー技術革新計画が作られて緩和の議論と適応の議論というのが一通り終わったということでございますが、これからはグリーンイノベーションということでタスクフォースを立ち上げると聞いておりまして、総合科学技術会議の方で緩和と適応の両方を見て、これまでの議論を踏まえた集大成をされるとも聞いております、従いまして、そのタスクフォースでの議論、総合科学技術会議の方でも関係各府省がやる成果の総合調整をする仕組みが必要であろうという問題意識を持っていると聞いているので、その議論にも我々の意見のインプットをしっかりやりながら、総合科学技術会議を中心に各府省の成果が有機的にきちんと流れていくように我々も貢献していきたいと思っております。

【安岡主査】  それではご意見・ご質問がある方はお願いします。石川委員。

【石川委員】  よろしいですか。緩和と適応の三角形が上に上っていく、そして上から逆三角形でフィールド実証戦略が降りてくるという、そして予算としては大変立派な予算と思うのですが、こういったものがきちんと組み込まれてきたことが、本当に大きな飛躍であろうと思っております。私はダウンスケーリングをずっとやって来ておりますので、そこの資料に、今、話がありました防災都市・コンパクトシティ・健康長寿これは大変いい物がしっかり3つ並んでいると思います。これはとても的をついて非常によろしいと思います。ただ、2つお願いがあるのですが、やはりこういったものを支えるのが人なんです、特に子供たち、それから生涯教育ですので、そのそれぞれの人が、人のグリーンイノベーションがないと動かない、それこそが文部科学省のかけがえのない財産であり、使命ですから、この3つのものを支える人のグリーンイノベーションこそが最も大事であるということを是非この表の中にもっときちんと位置づけていただけたらと思います。やはりつなぐもの、関係省庁いろいろありますが、つなぐものは人だということをもう少し位置づける。それから、ダウンスケーリングにいきますとデータの問題、つまりは地球レベルで整備しているデータとダウンスケーリングに対応出来るデータは全然違うのです。つまり、各基礎自治体がデータの構築からやるのでは、低炭素化社会は実現しない、要するに各基礎自治体が使えるデータが、弱小自治体が財源を投入しなくても使える様な状態でないと、地球環境インフラに係わるデータベースがないと机上の空論となってします。これは1960年から70年代に有る意味ではバラバラに整備されてきたのですが、もう殆ど化石データ、つまり使い物にならないデータになっています。このことはダウンスケーリングしようとしている当事者でないと気づかないのです、データがないと言うことに。是非、予算の何パーセントでも構いませんから、全国やるのは大変なことです、ただ、これを少し分けてダウンスケーリング対応の低炭素化社会に向けたデータ基盤の構築というものを立ち上げて頂きたい。これがないと本当に弱小自治体は動くことが出来ません。志があっても基盤がなければ出来ないのです。データのインフラ基盤です。これら2つが加わりますとこのフィールド実証戦略が何か突破口になって、大きな今までやってきた仕事と、具体的な目に見える、子供にでもお年寄りにでもわかる環境に変わって行くのではないかとそういう風に思います。今日は、これを本当に見せていただいてありがたいと思っております。

【安岡主査】  それでは井上委員、その他に手を挙げられている方はその後で。

【井上委員】  内容ではなく表現の問題ですが、たとえば2ページ目でグリーンイノベーションを目指した研究開発が、適応戦略・緩和戦略と整理されているのですが、タイトルのグリーンイノベーションを目指した研究開発の下の所に低炭素社会作りに向けた社会システム変革へという表現がありますが、これに対して適応戦略とどういう関係になっているのかわかりにくい。適応戦略は低炭素社会作りではないのですよね。同じことが4ページにもありますがいかがでしょうか。本当にこういう緩和戦略と適応戦略という整理がいいのかはちょっと疑念を感じました。5ページ目に、気候変動適応戦略イニシアチブに向けた他省庁・自治体との連携に向けての中に、コンパクトシティとある、これは今までの厳密な分類から言うと適応策ではなくて緩和策に分類されるかと。他方、こういうコンパクトシティを考えていく時には、コンパクトシティという言葉がいいかは別として、こういう社会構造を考えていく時には、緩和策と適応策を一緒に考えていくようなシステムが今後増えていくと考えられます。だから今後こういう適応策・緩和策という分類の仕方を少し考えた方がいいかと思います。IPCCなんかの定義でずっとこの流れで適応策・緩和策という言葉を大きく直さずにきたわけですけど、文部科学省として考えた方がいいかと思います。

【安岡主査】  三角形の絵でいいますと、いまのご意見は緩和技術、適応社会への実現から1つ上に行く時にそれそのものが低炭素社会作りに向けた社会システム変革へというのにつながらないのではないかと、言葉の問題としてつながらないのではという意見ですね。これはもう使われた資料ですので。

【井上委員】  これはもうこれで結構だと思いますけど、これから考える時に整理した方が良いのではと私は思います。

【谷室長】  コメントさせていただきますと、これは低炭素社会づくりといったもののイメージといいますか、定義に係わってくると思っておりますが、低炭素社会についてはいろいろ議論があってわかりにくいという話で、確かに低炭素社会というのは単なる緩和の社会ではなくて、ここは当然気候変動の適応も含めた様な社会ということなのであろう、そもそも参考資料でお付けしている、ずっと春からご議論していただいておりました第4期に向けた地球環境技術の在り方の中でも議論がございました、低炭素社会作りの一体その中身は何なんだという、非常に狭くとらえているのではというお話しもありましたが、実際には持続可能とか、気候変動にも対応したというのが入って低炭素社会ということで、低炭素社会の定義をもう少し広い循環型とか自然共生とか3つを含めたものが低炭素社会の中身ですという風に、第4期の議論ではそういう風に整理をさせていただいたのですが、必ずしも低炭素社会といった時に、広くそういうことが共有されている訳ではないのかなと、これだけ低炭素社会ということで議論をしてきても思っております。グリーンイノベーションについても議論がまだございまして、まだ皆さんが共有できるような定義が出来ている所には至っていないのではという感じもしております。ただ、低炭素社会作りに関しては、繰り返しになりますが、気候変動の適応と緩和を両方含めたような社会で、確か緩和と適応はまさに整理学と考えていて、緩和と適応両方に資する科学技術もありますが、ある一定の整理の上で使える時は使うということかと思っております。気候変動への対応がますます深まり進んでいくと、緩和・適応どちらともいえない、両方のことにまたがるような取組というのもどんどん出てくるのではないかと思っております。

【安岡主査】  それでは甲斐沼委員、その後三村委員。

【甲斐沼委員】  予算との関連で、最初に示していただいた、資料1で、金額とがどこにどう入っているかがわかりにくいと思いました、書き方だけの問題ですが。もう1点、省庁とかの連携、これは既に安岡先生も言われたのですが、省庁との連携をどうするのかがちょっと見えないと思いました。例えば、先ほど問題になりました適応戦略イニシアチブに係わる他省庁自治体との連携についてという、防災都市・コンパクトシティ・健康長寿都市というのがある資料ですが、環境モデル都市として京都・富山など、実際に推進をされているところと、どういった連携をとるのかということとか、また、環境モデル都市に入っていないが滋賀県のようにシナリオを開発し、水資源やエネルギーについての目標を定めながら、低炭素社会の構築を推進されている自治体と文科省での研究の連携を密にして行った方が良いのではないかと思います。もう一点、適応策の所ですが、排出量をマイナスにしない限りいろいろな影響が現れてくるので、適応策と緩和策を合わせて考えていくのかが非常に重要で、適応戦略の中に気候変動適応型社会の実現と低炭素社会という、トータルで見ていくような形に言葉を使った方がいいと思います。

【安岡主査】  はい、ありがとうございます。環境モデル都市という実際に動いているプロジェクトがあるわけですが、それに対して、文科省の成果を具体的にインプットしていったらどうかというご意見かと。何かございますか。

【谷室長】  2点ほど、1点目は自治体との関係では環境省と三村先生の取組に期待させていただくところがありますが、環境省のS-8のプロジェクトは自治体との取組を底上げするのがポイントの1つだとお聞きしておりまして、自治体コンソーシアムを立ち上げるとお聞きしております、文科省の個別具体的な事例研究の取り込みは、地域も含めた形で自治体コンソーシアムいったところで共有が図られると期待しております。もう1つは、環境モデル都市の関係では全国の自治体を対象にした協議会というところがあり、気候変動関係の取組に熱心な自治体が集まっており、非常に大きな評議会があります。そちらに、これまでも新規のプロジェクトについては、情報提供をしており、プロジェクトを始めるので関心がある場合には是非応募していただく、あるいはお問い合わせなどお願いしますとPRさせていただいておりまして、既にいろいろと相談というか問い合わせをいただいております。引き続き、問題意識の高い自治体が集まってくる非常に良い場だと思っており、そういったところとの連携などもやっていきたいと思っております。

【安岡主査】  では、三村委員。

【三村委員】  2つ程言いたいのですが、石川さんのおっしゃるとおり、人とデータ、まさにそうだなと思います。先日、環境省で日本全国の影響について定量的にまとめましたが、すぐに来た質問が府県からは自分の県についてデータが欲しい、という問い合わせがあり、自分たちでやって欲しいというと、自分ではテクニックもデータもなく切り出せない、県議会で議員から聞かれて困っている、という意見がありました。緩和にしろ・適応にしろ実際に社会に組み込むとしたら、日本全体に一遍に組み込むのは難しくて、個々の地域だとか、自治体でやるところから始まると思う。ですから、そういう意味では次の議論だとは思いますが、今後そのように生み出されてきた知見をどの様に地域に生かしていくか、というのは次の議論であり、大きなテーマになると思います。それは私の感想ですが。もう1つは観測のことですが、グリーンイノベーションということで問題解決型を指向に注力しているのは評価しますが、片方で、地球環境システムが今どうなっているのか、について着実にモニタリングして理解を深めていくのは文科省の大事な仕事と考えます。予算には現れていないのかもしれないが、これまでも地球観測の基本方針を取りまとめたりとか、宇宙からの観測や海洋観測など実施していますが、従来の観測は継続されるのか、あるいは減るのか。全体の観測とかモニタリングの推進が今どうなっているのか教えて欲しい。

【谷室長】  我が国全体の観測については、科学技術・学術審議会地球観測推進部会で全体の方向性や個別の戦略について議論していただいています。結論からいうと観測については従来通りしっかりやっていく方針です。特に、グリーンイノベーションを目指した研究開発の中で特出しした形で、新たに新規の予算化はしていないので、大きくは取り上げてはいませんが、関係独法含めてこれまで継続しているものを引き続きしっかりやっていく方針です。

 予算の関係でもう1つ説明をする必要があることがあります。機構定員、組織の変更も予算要求とセットで同時に並行して実施することになっています。新年度から環境エネルギー課という組織を作り、グリーンイノベーションを目指す研究開発全体を統括してやっていくことを要求しており、それも認められており、予算とパッケージで認められた。現在は海洋研究開発機構の所管課である海洋地球課と密接に仕事をしていますが、環境エネルギー課になると海洋地球課などの所管課とは別の組織として仕事をしていくことになります。JAXA(宇宙航空研究開発機構)やJAMSTECだけでなく、観測の関係ではいろんな機関と連携して司令塔としてしっかりやっていくことを考えています。組織的にも独立した課になるので、しっかり目配りをしながら仕事していきたいと考えています。観測については弱まるということではありません。

【安岡主査】  それでは安成委員お願いします。

【安成委員】  特に、地方自治体との連携が強調されていて、今後の適応にしろ緩和にしろ非常に重要な部分だと思います。世界的に見ても、特にアジアのいろんな国と共同研究をやってきたが、各国とも既に関心が自分の国がどうなるかという問題、それ抜きでは温暖化問題が語れないということになっています。特に日本の場合は各地域でどの様になるか、雪の問題から夏の雨の問題などいろいろありますが、適応戦略イニシアチブで自治体との連携は重要であるが、科学的知見の提供や、自治体との共同研究・連携だけでなく、自治体の持っているデータなども活用して進めていくべき。特にダウンスケーリングについては、あちこちで実施されているが、未だに信用できるダウンスケーリングがない、それは検証の問題があります。検証の問題となると各地域・自治体が持っている観測データ、場合によっては観測するなどが必要になるかもしれないが、それを含めて本研究で考えていただきたい。自治体との一種の共同研究を推進するという形でイニシアチブを、インタラクションを重要視して進めないといけない。今、愛知県などでいろいろやっているが一方的に情報をもらう形では進まない、自治体によっては、密な観測、データ収集をやっているところもあるんですが、これを本研究のいろいろな面に活用できる面もあると思います。そういう研究を可能なところから進めていくという形で是非実施して欲しいと思います。

【安岡主査】  はい、ありがとうございます。では、高橋委員お願いします。

【高橋委員】  グリーンイノベーションの三角形、一番下の総合戦略のJST予算の中に社会シナリオ研究とあるが、これは、先生方からご指摘のあった文科省の研究に重点を置いたところと自治体を結ぶところを連携させるための橋渡しをする研究ではないかと考えます。JSTの方の予算で積み上がる知見も文科省の研究や各省庁との意見交換の場などで活かして欲しい。文科省は研究に重点を置くかもしれないが、それが実際にシナリオを挟んで自治体にうまく流れる、あるいは自治体の意見がシナリオを通して返ってくる様な循環型の研究開発が推進されれば非常に良いと思いました。

【安岡主査】  はい、笹野委員。

【笹野委員】  自治体への取組みは大変結構なことだと思いますが、業務の中身についてですが、研究課題のイメージについて、例えば先進的なダウンスケーリング手法の開発などがありますが、数値シミュレーションの結果を単純に自治体レベルに落としてと見えますが、重要なことは各自治体での種々のデータを効率よく十分に集めるか、そしてシミュレーションの結果とどう組み合わせていくかだと思います。いろいろな自治体から話を聞くと、各自治体でのデータを取る部分が難しく、持っていたとしてもかなり古いデータとか、各部局で抱え込んでいたり、あるいは委託先がデータを持っていて使い方がわからないとかがあると聞いています。実際に本研究として上からと下からとをうまくつないでいくならば、自治体も参加の部分で力を入れて取り組んでいく必要があると思います。

 また、地球観測は観測にとどまらず、地球システムの理解がかなりそぎ落とされてしまっている、将来予測であったり観測であったり、そのメカニズムそのものだったりの理解が見えなくなってきている。これは何も文科省に限らず他の省庁でもそうです。適応・緩和・グリーンイノベーションなどの課題の言い方をしてしまっているが、地球システムを理解するのが表面上見えなくなってきているところが心配です。国立環境研究所の地球環境研究センターでも、フォーラムで提言したところだが、地球システムを理解することと温暖化を解決することの2本立てで言わせてもらっている。この2本立ては大事なことであってあり続けるだろうと思います、そういう頭の整理を忘れず、何処かに入っていますではなく、真正面から取り組んで欲しい。

【安岡主査】  はい、山口委員。

【山口委員】  フィールド実証戦略が非常に大事ではないかと、まさに25%の実現に際しても今更、技術開発ではなく、出来るところから実行しようというところだと思います。そのための評価ツールとして3つのダウンスケーリング・データ同化技術・適応シミュレーション技術は評価手法としては非常に大事とは思いますが、しかし、この評価手法は学術的な研究であってはいけない、まず誰が使うのか、これは自治体の方が使わなければならない、しかも日本にはいろいろな自治体がある、例えば、富山の例などはコンパクトシティを実現した、だがその成果が評価されていない、そこにこの評価ツールが使える。したがって4頁目の流れは逆だと思います。本来は自治体なり、この評価ツールを使う方のニーズを聞いて、この3つの評価システムを構築すると言うことであり、評価ツールを先に作ることはまさに、企業でいうと技術先行でお客さんの声を聞いていないようなものに等しい物になりかねない。したがって、本研究の基本設計をする場合には是非とも学術的な観点ではなく、PDCAのサイクルでいうとCheckにあたるので、従ってDoの部分がどういうニーズがあるのか、せっかくの評価指標なので、また、求められている評価指標だと思いますので、使う方のニーズを十分に把握した上で進めていただければいいのではと思っています。大変期待しているテーマです。

【安岡主査】  皆さんどうもありがとうございました。皆さんからいただいたご意見は、研究者が社会に向けた出口をかなり強く意識して活躍する、そういう時代に入ったと思われます。矢印が上から下、下から上に行くわけですが矢印で何が流れているかをしっかり意識しておく。データが流れるのか、知識が流れるのか、モデルが流れるのか、非常に具体的に言いますと、三角形の絵でそれぞれの関係の部分で、それを実施するのはJSTであり、他省庁でありということもあるが、そこの間の連携になるのですが、連携する際に何が流れるのかを忘れないようにして、それを実施主体にインプットして是非文科省の方からしていただければと思います。非常貴重なご意見を皆さんからいただきました。はい、どうぞ。

【谷室長】  自治体との関係について先生方からいくつもご指摘をいただきましてここに書いてなくてご説明しなかったところで、具体的な事業実施の中でと考えていましたことがあります。イニシアチブについては自治体の役割が非常に重要だということでありますが、問題意識は文科省も持っておりまして、具体的に課題の審査する際に、公募要領とかで地方自治体の方に研究チームに入っていただくとポイントが高い、という仕組みを考えています。現在その作業を実施している。問題意識として、研究のための研究に終わらないで、最終的な出口につながっていくと言うことをどのように担保するかを考えた時に、自治体の役割は薄くないだろうということで担保したいと考えております。また、課題を実施していく中やいろいろな局面で、引き続き意見を賜ればと思っております。

【安岡主査】  はい。貴重なご意見をいただきました、この意見を是非全体のプロジェクトを実施する主体、個別の研究をする方々にインプットしていただくことを考えていただければと思います。

 それでは議題2に移りたいと思います。議題は「21世紀気候変動予測革新プログラム」課題選定プロジェクトチームの設置についてです。事務局より説明をお願いします。

【谷室長】  資料2をごらんいただければと思います。。既にご存じの通り、21世紀気候変動予測革新プログラムは現在実施中で、平成23年度までの計画で残り2年となった。今年度は中間評価もいただいたところです。今般、チーム制を敷いて実施しておりますが、その中でチーム3極端現象の予測についてですが、主管研究機関となっております地球科学技術総合推進機構(AESTO)という財団法人が諸般の事情によりまして今年度末で解散となっております、従いまして課題実施機関がなくなるという、通常例がないことですがそういう事態に至ったと言うことで、従いまして、チーム3に相当する極端現象予測の課題を引き続いて実施していただく機関を募集をするということで、今般その際、再公募の手続きの一環として、課題選定プロジェクトチームを設置をしていただきたいとして諮るものです。資料2の作業部会の設置についてということですが、1ポツ、地球環境科学技術委員会の運営規則第2条に基づきプロジェクトチームを設置するということでお諮りしたいということです。調査の審議事項は課題選定を行うことであり、プロジェクトチームに主査を置き、選定の過程については非公開でございますけど、委員は、選定過程について守秘義務を負う、なお、4ポツについて、「地球環境科学技術委員会により推薦された機関から」の一文は削除していただきたい。それから、外部専門家にも意見を求めることが出来ること、その場合は守秘義務について適応するということでございます。6ポツはその他規定です。

 別紙として、委員の候補として、既に内々にご相談させていただいた形ですが先生方にお願いできればと考えています。安岡先生には主査をお願いしたいと思います。環境委員会の委員ではありませんが、外部有識者として東京大学海洋研究所の新野教授にもご参画をいただこうと思っております。新野先生は、革新の当初の課題選定に携わって頂きましたので、参画いただきたいと考えているところです。資料2の説明は以上です。

【安岡主査】  ありがとうございます。委員会では課題選定プロジェクトチームを立ち上げて、あとの審査はプロジェクトチームが実施すると。今回のことは、前例のないことなので、実際に動き始めると主管研究機関が移ってうまく纏められるかは、しかも残り2年だけなのでどうなのかと思いますが。それでは、笹野委員。

【笹野委員】  質問ですが、これは、今までやってきた機関がなくなるということで新たな課題の選定を行うという意味ですか、それとも課題そのものの内容は保ったまま機関を選定するのいずれでしょうか。

【谷室長】  実施研究主体が解散するので再公募ですが、内容としてはもともと革新プログラムが目指していた、つまりチーム3が今実施している極端現象の課題を引き継ぐ方を募集する形でございます。

【安岡主査】  これまでのチーム3の成果、データや成果報告書は新しく選ばれるチームに引き継がれるのでしょうか。

【谷室長】  形式的なことで恐縮ですが、毎年度成果については役所に納めてもらっています。今年度までの成果は役所で持っていることになります。これをベースに、残り2年間、チーム3で実施している超高解像度の大気モデルを作る、不確実性の低減の評価、将来予測と評価になりますが、その部分をこれまでの成果を基に実施していただくことになります。

 ただこれは形式論であり、実際には人に蓄積されていることもあろうかと思います。実際に審査していく部分ではそのような所も見ていただくことになるのだろうとは思っていますが、私どもも急な話であり、3月までに新しい研究チームを作る必要があり、突貫作業で進めている状況です。

【安岡主査】  はい、安成委員。

【安成委員】  事実確認を。何とか推進機構はAESTOのことですか。それでその下にある実質の機関、例えば気象研などがあり、そこではすでに研究を進めているので新規というのが正しいのか。それとも形として主管研究機関のAESTOがなくなる。AESTOにも研究員はいますけど、ここは、どうなんですか。まったく新規ならこれまでの3年間は何だということになる。これまでの研究を継続し発展させるということが条件だし、新規の扱いがいいのか疑問に思います。

【安岡主査】  ここは非常に難しい議論だと思っています。今までに例のない話なので、新しく手を挙げる機関が、これも具体な話になるので・・・今までのメンバーを取り込むとかそのような話であれば継続性が非常に高い、しかし、そうするとある種の条件の下にやらなければならない、それはかなわんというところがある。その辺をどうやるかが評価の一つの基準にはなるという気がします。どうぞ

【谷室長】  大体事情はおくみいただけると思いますが、役所の手続きとしては役所に成果があるので、新規の公募という形にならざるを得ない。現在、委託のあり方については、厳しく見られているところなので、厳しい条件を課したり、、特定のところに応札させることはできません。ご指摘の通り、これまでの成果については問題あるところだが、きちっと、回っていくような形で、新しいチームとして公募してくださいとなるのかなと。特定のところしか公募できないというふうにはできない。他方で審査のところで、フィージブルというかミッションがきちっと出来るかどうかを見ていただくことが重要なポイントだと思っております。

【安岡主査】  ここに名前が挙がっている方々は、私も含めてですが相当苦労して選定しなければならなくなるかなとも想定しています。本日3時半から1回目の会議がありますが頑張らせていただきたいと思います。

【井上委員】  今のお話ですが、形態的にはプロジェクトの改変に近いのではないでしょうか。ただ代表機関がなくなってしまうということですよね。協力機関が変わる場合には代表機関から組織の改編の申請が出て、それが許可されれば良いが、代表機関が変わってしまうということですね。だから、公募までいってしまうということですね。

【谷室長】  そうです。

【安岡主査】  公募のところに対しては、公平・公正を保った形での募集をしなくてはならない。余計な条件は付けられないということになる。本日のPTでも議論になると思いますが、2年間、良い成果を上げていただくことが重要で、何とか頑張りたいなと。私が頑張ってもどうにもならないですが、そうしたいと考えております。では、プロジェクトチームを立ち上げるということでご了解いただけますでしょうか?

 (反論無し)

 ありがとうございます。それでは、議題は終了しましたが、事務局から何かありますか。

【谷室長】  今後の予定について。第4期科学技術基本計画の策定については、多面的な議論をいただきありがとうございました。セット版として改めて配布させていただいております。概要のポンチ絵は審議会に提出してあります。今後、基本計画特別委員会でも議論され、その中で総合科学技術会議へのインプットに使われていく予定です。お礼も兼ねて報告させていただきたいと思います。

【安岡主査】  ご記憶のことと思いますが、皆さんから多岐にわたる意見をいただきました、ありがとうございました。皆様の意見を全て入れて、事務局と私の方でこういう形に纏めました。ご質問などはありませんか?よろしいですか?

 では、ありがとうございました。まだお正月の内ですから、早めに終われて良かったと思います。では事務局から。

【岡本補佐】  次回の委員会について、2月25日午後を予定、詳細は別途連絡いたします。プロジェクトチームについては、このあと15時30分ぐらいから開催します。委員の先生方におかれましては、よろしくお願いします。

【安岡主査】  では、ありがとうございました。

 

―― 了 ――

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