資料2−5

データ統合・解析システム分野の取組

4.データ統合・解析システム

(1)地球観測分野

1データ統合・情報融合コアシステムの開発

 地球温暖化、水循環、生態系の各分野において、アーカイブ対象となるデータの容量,フォーマット,対象データのアクセス特性,処理方式、および必要となるデータ統合・情報融合・解析機能等に関する情報を収集し、超大規模アーカイブストレージシステム,可視化システムの基本設計を行った。本システムは、ストレージ層、ファイルシステム層、データマネージメント層、共通基盤ソフトウェア、個別ユーザソフトウェアからなるアプリケーション層から構築されており、共有性を確保しつつ個別要求にも対応できる拡張性を有している。また、IPCC第4次評価報告書に用いられた世界の26の気候予測モデル出力のアーカイブを行い、気候変動研究および気候変動が水循環、生態系および農業に与える影響の評価研究のデータ基盤を構築した。

2データの相互流通性の実現支援システム

 多様な分野のデータの相互利用実現のために必要となる専門用語辞書およびデータの位置情報整理のための地名辞典作成支援システムを開発した。また、オントロジーレジストリに関する各種調査に基づき、システムアーキテクチャ、レジストリ機能としての実現可能性及び利用ニーズの観点から機能用件を整理した。また、河川流域のメタデータレジストリシステムの設計を進めている。これらの機能の開発、実装により、分野間でメタデータの相互検索の基盤が開発され、それに基づき地球観測データの多様な分野での相互利用が促進される。

3利用ニーズに即したデータの収集・品質管理の実現と永続的・体系的な蓄積

 衛星データの収集・提供を行った。対象は、海洋物理・化学、アジアモンスーン域・寒冷圏の水循環変動および大気陸面相互作用、降水過程、赤潮監視など、多様な分野に及ぶ。海洋観測データのコアシステムへの投入に当たって必要となる「データ投入前処理システム」の開発のために必要となる設備を整備した。また、海洋動物プランクトンに関する約2,500種に関する文献情報、約800種、2,600ファイルの形態図、約300種の映像を取得・電子化した。水循環データに関して、全地球統合水循環強化観測期間(CEOP)プロジェクト(2002年10月〜2004年12月(2年3ヶ月))の枠組みで得られる統合データ、および気象庁と電力中央研究所が提供している長期再解析出力をアーカイブした。これらのデータ投入はコアシステム、相互利用性実現支援システムの開発と協調して、応用機能開発研究グループからのニーズに基づいて実施された。

4地球観測データの科学的・社会的に有用な情報への変換

 地球観測データを効果的に用いて科学的・社会的に有用な情報の創出を目的として、地球温暖化(4課題)、水循環(4課題)、生態系(4課題)に関する応用機能開発研究を実施した。科学的に有用な情報としては、4次元データ同化出力の解析による海洋の水塊形成のメカニズムの解明、北ユーラシア氷河の経年変動、温室効果気体の発生・吸収源算定手法の高精度化などの成果が得られた。社会的に有用な情報としては、わが国の洪水、渇水対策に効果的なダム統合管理を行うための情報、農家が害虫防除や作付けなどの農作物管理を効果的に行うための情報などの提供のプロトタイプを作成するとともに、外来生物法に基づく特定外来生物の防除計画に資する情報を市民モニタリングとデータ統合システムを組み合わせて収集するシステムのプロトタイプが構築された。これらは、コアシステム、相互利用性実現支援システムの開発と同時並行で実施されており、これらの応用機能開発成果が、それぞれのシステム開発に適用されている。

<推進体制>

 文部科学省は、地球観測データ統合・解析システムの開発・運用を行う機関として、東京大学を選定。東京大学は、JAMSTEC、JAXA(ジャクサ)、その他関係研究機関等と連携・協力を図りつつ地球観測データ統合・解析システムの開発・運用を行うこととしている。