大強度陽子加速器計画評価作業部会（第2回）委員コメント

【井上明久主査】

• J-PARCの利用方針について
  • 1施設2利用体制がJAEAとKEKの両法人が共同運営することでのシナジー効果の1つとして提唱されている。そのシナジー効果が早期の段階から現れる一元的利用体制の構築の可能性について
  • ユーザーから見て一元的な利用体制となるのか
• ビームライン及び装置の整備と設備の時期について
  • ビームラインの整備状況、試験運転、本格運転開始時期などのスケジュールについて
• J-PARCとJRR−3の一体的運営の可能性について
  • 両施設を一体感をもって連携的に運営することによって科学技術レベルを上げることが必要ではないか。
• ユーザー参加型共同利用体制の可能性について
  • ユーザーから意見を聞きその意見を反映できるような運営体制が必要ではないか
• J-PARCセンターの運営の最終権限と最高責任者について
  • センター長は運営会議で決められたことのみを行うのか、J-PARCの将来的なビジョンを自ら持つことができるよう両機関から独立した権限を有することが適当なのか。

【井上信委員】

• 運営体制について
  • 基本的にはJ-PARCの自立をめざしていくべきと考えるが、JAEAとKEKの両機構との連携は学問分野的にも技術・管理面でも必要である。
  • 財政上の問題や組織改革の問題など様々な我が国独自の国内事情による言い訳は国際的な研究機関としては非関税障壁みたいなもの。あるべき制度設計を提案すべきである。
  • KEKからの人員について「本籍はKEK」とあるが、本籍地はそれで良いとしても、現住所（J-PARC）が本務地だと思う。つまり本務地がJ-PARCである職員はJ-PARCから給料を受けるべきであり、そのような金の流れとする財政システムにすべきである。業務委託、派遣職員についても両機構との契約ではなくJ-PARCとの契約とすべきである。
  • KEKからの出向者について、KEKとして学問的に連携が必要であれば、あるいは本籍地がKEKにあることを名簿に残したいのであれば、KEKを兼務とすべきである。
  • KEKが特に加速器関係の人事を一体的に行いたいという考えも今後の全日本的な加速器計画に柔軟に対応できる流動性を保つ観点から理解できるので、両機構からの出向者の人事異動や空席になった場合の人事についてはJ-PARCはそれぞれの機構と協議のうえ進めること、および両機構の事情で出向者の差し替え等の異動を図りたい場合もそれぞれJ-PARCと協議のうえ進めることができるように覚書を交わしておくことで、両機構の人事政策との円滑な連携を図ることとすれば良いのではないか。
  • 人事・予算を含めた運営の連携に関して保証するために、運営委員会は両機構のマネジメントを代表するメンバーとJ-PARC側が推薦するメンバーがほぼ同数で構成し合意形成を図るものとすべきある。
• 利用と国際公共財ということについて
  • 学術文化の世界では、我が国が世界をリードする分野のユニークな研究施設等を持ち、これを国際公共財として世界の学問文化の発展にも役立てることが、我が国が世界から尊敬を受けることであり、そのことが広い意味で国益にもかなうことである。また、産業の育成とは異なり我が国が遅れているところを補強するという姿勢では世界の尊敬は得られない。J-PARCでは常に世界をリードする研究を進めることが重要であり、このための利用システムと研究装置の整備が重要である。
  • アジアでは100年後には中国、インド、インドネシア等が国力では日本を越えるようになるかもしれない。ヨーロッパでも国力ではドイツ、フランスに劣るスイスや北欧諸国が学問的に尊敬されるレベルの高さを保っており、世界のトップ企業も持っている。将来に備える意味でも、我が国がGDPにこだわらず優れた研究拠点を持つことの意義を、そしてそのために今、税金を使うことの必要性を国民に理解してもらう努力をすべきである。
  • J-PARCについては、産業応用研究はもちろん基礎研究であっても役に立つ開発研究（特に電力・エネルギー問題の解決に役に立つ研究）のための基礎研究をすべきであるという関係業界からの要望も聞こえる。
    （ここでの基礎という意味は、宇宙の物質の根元を極めようとする根本問題に挑む学術研究を指していう場合などの基礎研究とは異なり、どちらも基礎研究といわれるために議論がすれ違うことがよくあるが、この二つの基礎は区別して議論すべきである。）
  • エネルギー問題や産業利用に役立つ国際競争力としてのJ-PARCの利用は実利的な意味での国益に関わる部分で、国によって重要と考える課題が異なることから、課題採択や利用制度についても我が国の特殊事情を反映したものになってくるのは当然であると思う。この意味では中性子の産業利用によって国際競争力を高めることができるのであれば、国が支援することも導入期には正当化されると思う。私が初期には産業利用も無償にすべきであると述べたのはそういう意味である。これはニュートリノ研究のような学術研究に対してIUPAPの指針に従って無償にすべきという意味とは別の観点からの議論である。

【大野英雄委員】

• J-PARCセンターの権限について
  • J-PARCセンターは基本的には、国内外に開かれた真の意味での共同利用研究所（大学共同利用とは全く異なる）とするためには、両機関（各々の機関の制約を受けているため）のミッションと異なる独立した機能と権限を持たすべきである。そのためには、運営段階に入った時点で、J-PARCセンター長には両機関から独立した人事権、予算権を付与すべきと考える。
  • 第2回会合での説明を聞く限り、J-PARCセンター長は単なる調整役に過ぎない感が強い。これでは1,000億円以上の建設費を使い、年間100億円以上の運営費を使うであろうJ-PARCの責任がとれるのか。SPring-8の運営を10年以上やって来たものから見ればあまりにも無責任体制としか思えない。
• KEKの兼任について
  • J-PARCセンターに対するKEK側の考えには全く理解出来ないものが有る。まず、全ての研究者、技術者が兼務でJ-PARCセンターに関与される点である。1,000億円以上の国家予算を投入したプロジェクトは、建設したら終わりではなく、建設終了がある意味では始まりである。SPring-8においても、供用開始10年たった今でも、加速器、ビームラインなどの運転のみならず、改良、高度化を進めている。そのために200名近い研究者が専任で携わっている。J-PARCのミッションの一つに産業利用が掲げられているとすれば、学術利用のみと異なった大きな責任（安定してビームを計画的に提供する）が伴い、KEKも責任もってこのミッションをはたすためには、KEKの組織の再編を含め考え直し、J-PARC専任者を東海サイトに任命すべきと考える。加速器部門はもちろんの事、物質構造研究所においても放射光を除けば全て東海サイトでの研究拠点となるのであるから、J-PARCセンターに専任で入るべきではないか。

【横山広美委員】

• 広報の位置づけについて
  • J-PARC運用体制について、「広報チーム」が業務ディビジョンの中のさらに総務セクションの中に位置づけられている。第3期科学技術基本計画にも「社会に支持される科学」、とあるように今後ますます社会からのサポートが大事になる。そのためには、広報が十分に機能する必要があり、総務の一チームとしての位置づけは、各ディビジョンとの自発的なやりとりを難しくするのではないかと懸念する。SPring-8の運用体制については、広報がディビジョンクラスに設置されている。
    　是非、J-PARCでも広報をディビジョンクラスに設置し、総務のスタッフが広報にあたるのではなく、広報の専門官（教官）を設置すべきと思う。
• 中性子利用について
  • 産業界の中性子利用について、海外の産業界に対しても中性子利用の宣伝は行われているのか。J-PARCがアジアの中性子利用の拠点になるためには、積極的なアピールが必要であると思う。
  • 解析センターを設置する場合、利用は有償になると思うが、そのための産業界の調査も必要になると思う。