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資料2

大強度陽子加速器(J-PARC)計画の意義

平成19年1月19日
量子放射線研究推進室

  J-PARCは、高エネルギー加速器研究機構の大型ハドロン計画と日本原子力研究開発機構(旧日本原子力研究所)の中性子科学研究計画との統合計画であり、両者のポテンシャルを活かし、共同プロジェクトとして平成13年から建設を開始した。中間子やニュートリノを用いた自然界の基本原理を探求する原子核・素粒子物理学研究、世界最大強度の中性子やミュオンを用いた物質・生命科学研究をめざし、新しい科学のフロンティアを拓く基礎研究から新産業創出につながる応用研究に至る幅広い分野の研究が期待される。完成後は、世界的に類を見ない多目的の最先端研究施設となる。

 原子核・素粒子物理学の分野では、ニュートリノ振動の精密測定による標準理論を超えた新しい素粒子の学問体系の構築や、中間子ビームを用いた新しい核物質の生成と物質の質量発生機構の解明を目指す。これらの研究は、共に、自然界を記述する基本的な理論の構築に貢献し、この分野を世界的にリードする我が国の地位をさらに躍進させるものである。
 物質・生命科学の分野では、現在稼働している国内施設の100倍以上のビーム輝度を有する中性子ビーム、ミュオンビームが実現され、量的だけにとどまらず質的に新しい研究分野が開拓される。たとえば、ナノスケールの現象を解明することによる磁性等を含む物質構造や高温超伝導の基礎研究、燃料電池等の新材料の開発、内部応力の観察による製造技術開発、タンパク質の水素・水和構造の決定及び機能の解明による新しい医薬品の開発等が期待されている。
 さらに、J-PARCはOECDメガサイエンスフォーラムにおいて、アジア・オセアニア地域における中性子科学研究の拠点やハドロン科学における世界的な拠点として位置づけられるなど、国際的な研究・教育センターとしての役割が期待される。
 また、中性子科学研究においては、米国オークリッジ研究所のSNSや英国ラザフォード・アップルトン研究所のISISとの知的財産の獲得における熾烈な国際競争の中にある。さらに、我が国が世界に先駆けて推進してきたニュートリノ振動実験に関しても、欧米で実験計画が進行するなど、国際的な競争となっている。

 このように、J-PARC計画は、国内外の幅広い分野における利用が可能な国際的に開かれた国際公共財であるとともに、その規模の大きさ、対象とする研究分野の多様性、関連する研究者層の広がり、見込まれる成果の重要性など、科学技術・学術的意義や社会へ与えるインパクトの大きさから見て、国として取り組むべき重要なものであり、意義の高い計画であるといえる。



別紙

1. 科学技術・学術的な意義
(1) 原子核・素粒子物理学
以下のような研究が可能になる。
核物質のQCD(量子色力学)、特に、ハドロンの質量の起源の究明
エキゾチックな原子核(ハイパー核・K中間子原子核)などの新しい核物質形態の研究
時間反転対称性の破れなど基本的対称性の研究
ニュートリノ振動の検証
レプトン族の混合等の標準理論を超えた現象の探索
ニュートリノの世界におけるCP対称性の破れの観測

「OECDメガサイエンスフォーラム、原子核物理作業部会」の報告
4つの方向(RIビーム、電子ビーム、ハドロンビーム、高エネルギー重イオンビーム)のうち、ハドロンビームは日本の大強度陽子加速器計画で実現するべく提言。

「OECDグローバルサイエンスフォーラム、原子核物理作業部会」の設置
今後10年から15年の間の国際レベルの原子核物理分野における大型施設及びプロジェクトに関する方向性等について議論するため、2年間の期間で同WGを設置。

(2) 物質・生命科学
以下のような研究・開発が可能になる。
磁性等を含む物質構造や高温超伝導の発生機構の解明等の物性物理学の基礎研究の飛躍的発展
がんやアルツハイマーなどの難病治療や個人の症状に合わせた治療のための創薬
より効率の良い生体構造再生材料の開発、シミやそばかすを消す効果の高い化粧品等の開発
燃料電池や水素自動車の実用化に向けた高性能燃料電池開発や水素を安全に取り扱う水素吸蔵合金の構造解明
リチウムイオン電池などの研究開発、現在の1,000倍以上の高密度磁気記録材料の開発
エンジン等の大型構造物等の寿命評価に基づく耐久性向上技術の開発

「OECDメガサイエンスフォーラム、中性子源部会」の報告
ヨーロッパ・アメリカ・日本の3地域に先進的な中性子源を建設するとともに、その施設がアジア及びオセアニア地域における中性子科学研究の拠点となるべく提言。

2. その他
 その他、J-PARCを取り巻く主な情勢等は以下の通り。
(1) 第3期科学技術基本計画
 基礎研究から新産業創出につながる応用研究に至る幅広い分野の研究に大きく寄与するJ-PARCが目指す方向性は、第3期科学技術基本計画(平成18年度〜22年度)においては、科学技術、経済、社会をめぐる国内外の情勢変化と今後の展望等を踏まえた理念である「人類の英知を生む」及び「国力の源泉を創る」に合致するもの。
【第3期科学技術基本計画】

 
理念1  人類の英知を生む
 −知の創造と活用により世界に貢献できる国の実現に向けて−
◆目標1  飛躍知の発見・発明 −未来を切り拓く多様な知識の蓄積・創造
(1) 新しい原理・現象の発見・解明
(2) 非連続な技術革新の源泉となる知識の創造
◆目標2  科学技術の限界突破 −人類の夢への挑戦と実現
(3) 世界最高水準のプロジェクトによる科学技術の牽引
理念2  国力の源泉を創る
 −国際競争力があり持続的発展ができる国の実現に向けて−
◆目標3  環境と経済の両立 −環境と経済を両立し持続可能な発展を実現
(4) 地球温暖化・エネルギー問題の克服
(5) 環境と調和する循環型社会の実現
◆目標4  イノベーター日本 −革新を続ける強靱な経済・産業を実現
(6) 世界を魅了するユビキタスネット社会の実現
(7) ものづくりナンバーワン国家の実現)
(8) 科学技術により世界を勝ち抜く産業競争力の強化

(2) 原子力政策大綱
  J-PARCを含む量子ビームテクノロジーについて、「量子ビームテクノロジーに関しては、革新技術の探索や新しい利用分野を開拓する研究、原子力以外の広範な分野での利用を開発する研究等を着実に推進することが必要である」と提言(平成17年10月)されている。

  量子ビームテクノロジーとは、
 加速器、高出力レーザー装置、研究用原子炉等の施設・設備を用いて、高強度で高品位な光量子、放射光等の電磁波や、中性子線、電子線、イオンビーム等の粒子線を発生・制御する技術、及びこれらを用いて高精度な加工や観察等を行う利用技術からなる新たな技術領域

(3) 原子力に関する研究開発の推進方策について
(科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会)
 「量子ビームについて、近年のビーム発生・制御技術の高度化に伴い、高強度かつ高品位なビームの発生・利用が可能となり、J-PARC等の大型ビーム施設の整備進捗により、基礎科学から産業応用まで広範な分野での利活用の期待が高まっており、確実な実現をはかるべきである」との報告書(平成18年7月)が取りまとめられたところ。

(4) 量子ビーム研究開発・利用の推進方策について(最終報告)
(文科省「量子ビーム研究開発・利用推進検討会」)
 「近年のビーム技術の高度化・多様化に伴って、今後、世界最大強度の多彩な量子ビームを供給するJ-PARCの各実験施設等を中心に、その高い潜在能力に立脚し、ナノテクノロジー、ライフサイエンス等、最先端の科学技術・学術分野から各種産業に至る幅広い分野での活用が期待される」など最終報告(平成18年1月)が取りまとめられたところ。

(5) 包括的中性子利用のあり方について(最終報告)
(日本中性子科学会 大型施設共用問題特別委員会)
 「世界最大強度のJ-PARCを基盤とし、より積極的・多角的に中性子ビームの利用を促進し、大学共同利用や公的専門機関の学術研究ならびに企業・コンソーシアムの産業利用を含む応用研究を展開し、社会還元に努めるべきである。また、産業利用のみならずその基礎をなす学術研究利用をも含め、包括的中性子利用システムとして中性子利用プラットフォームの構築を提言する」など最終報告(平成18年3月)が取りまとめられたところ。

(6) サイエンスフロンティア21構想(茨城県)
 茨城県において、J-PARCを核として「つくば・東海・日立」地区の連携強化を図り一大先端産業地域の形成を目指す「サイエンスフロンティア21構想」を推進している。本構想は、研究開発を支援する産業の発展や研究成果を活用した新産業・新事業の創出を促進するための機能や将来の科学技術を担う人材の育成機能、この地域に来訪する研究者や技術者の快適な研究・生活環境づくりを柱としている。本構想事業の一環としてJ-PARC内に中性子産業利用促進を目的として、県独自に「生命物質構造解析装置」及び「材料構造解析装置」の整備が進められている。また、中性子関連10テーマ、放射線関連2テーマ、事業化検討1テーマの計13領域について中性子利用促進研究会を設置(平成16年)し、産業界に対する中性子ビーム利用の有用性の啓発、JRR-3等を活用した中性子モデル実験の実施、具体的利用ニーズの掘り起こしに努めている。

(7) 利用者・ユーザー側からのニーズへの対応等
1 中性子利用技術移転推進プログラム(トライアルユース)
 新たな産業分野へのビーム利用拡大に向けて、原子炉による中性子利用実験施設であるJRR-3において、「中性子利用技術移転推進プログラム」が平成18年度から開始された。これは、産業への有効性が注目されている中性子利用技術を電源立地地域の企業や研究機関等の技術者等に廉価で試行的に体験する機会を提供するもの。

2 人材育成
 加速器に係る研究・技術開発を担う専門的かつ高度な教育・訓練の実施を目的として、平成18年度から総合研究大学院大学高エネルギー加速器科学研究科に、5年一貫の博士課程が設置された。

3 利用者協議会の設置
  J-PARCにおけるプロジェクト実施にあたり、利用者の意見等を聴取するため、J-PARCプロジェクトチームに平成13年度から利用者協議会が設置され、利用者の立場からJ-PARCの運営及び利用に関する事項について協議し、プロジェクトディレクター(現在はJ-PARCセンター長)へ助言を行っている。なお、現在までに11回開催され、協議会からの提言を踏まえて運営体制タスクフォースが立ち上げられた。さらに、中性子における実験課題審査委員会(PAC)のあり方などが提言されている。

4 中性子の産業応用フォーラムの設置
 平成12年10月、J-PARCによって実現する高強度中性子ビームの利用に当たっての課題を産業界の立場から検討し、施設側に要望するチャンネルとして機能することを趣旨として設置された。その後、「中性子の産業利用シンポジウム」、分野毎の小セミナー及び利用検討会を開催し、中性子の産業応用に関する啓蒙的活動を継続している。特に磁気デバイス開発に関して、JRR-3を用いた先導的な産学連携プロジェクトを実施した。

5 量子ビーム産業利用研究会の開催
 平成17年9月から、具体的な研究開発課題にテーマを絞り込んで、量子ビームになじみの薄い産業界(ニーズ)側と量子ビーム施設(シーズ)側の専門研究者等が議論する量子ビーム産業利用研究会が設置された。これまで、超伝導材料や燃料電池等のテーマにて計4回開催され、産業利用促進等に向けた活発な意見交換が行われた。


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