資料1

「平成19年度の我が国における地球観測の実施方針」に基づく地球観測等事業の進捗状況のフォローアップ

平成19年8月8日
総合科学技術会議
環境PT

1.フォローアップの主旨

 第3期科学技術基本計画の下、分野別推進戦略では環境分野の推進方策として‘「地球観測の推進戦略」に従い、総合的地球観測システムの構築に向けて、省庁横断的な取組が必要であり、各国の活動とも連携して、GEOSS10年実施計画の実施を目指す。’としている。
 また、「地球観測の推進戦略」においては、‘総合科学技術会議は、実施方針とそれに基づく事業の進捗状況について科学技術・学術審議会からの報告を受けるとともに、必要に応じて関係府省・機関からも報告を受けて総合的な評価を行う等により、統合された地球観測システムの運用状況をフォロー’、さらに‘「地球観測の推進戦略」の見直しを必要に応じて行う’と規定している。
 今回は、統合された地球観測システムの運用が効果的に推進できるよう、平成19年度「我が国における地球観測の実施方針」とそれに基づく地球観測等事業の進捗状況、中でも関係府省・機関が連携した地球観測の取組について、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球観測推進部会の事務局である文部科学省から第1回環境PT(平成18年12月4日)及び第3回環境PT(平成19年5月30日)への報告に基づいてフォローアップを行う。

2.平成19年度「我が国における地球観測の実施方針」及び「統合された地球観測システムの進捗状況」の概要

 我が国の地球観測の基本戦略は、「地球観測の推進戦略」(平成16年12月27日総合科学技術会議意見)に示されているように、1利用ニーズ主導の統合された地球観測システムの構築、2国際的な地球観測システムの統合における我が国の独自性の確保とリーダーシップの発揮、3アジア、オセアニア地域との連携の強化による地球観測体制の確立を3つの柱としている。これらの戦略を具体化するために、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会地球観測推進部会では、平成18年度から「我が国における地球観測の実施方針」を策定している。
 平成19年度「我が国における地球観測の実施方針」では、特に「利用ニーズ主導の統合された地球観測システムの構築」を目指して戦略的重点化を図る等の観点から、国内の観測活動において分野間又は府省・機関間の連携を促進することとしている。また、連携を実現する具体的方策として、「連携拠点の推進」と「分野間・機関間連携を図る施策の推進」を進めている。

○「連携拠点の推進」について

 連携拠点の目的は、国内外の観測ニーズと進捗状況等に関する情報の集約や実施計画を作成し、緊急の課題に機動的に対応できる体制を確保することで、地球観測活動を効果的・効率的に推進することである。既に、平成18年度に環境省と気象庁が中心となって「地球温暖化分野に関する地球観測連携拠点」が設置されている。また、「地震・津波・火山分野」において、文部科学省が連携拠点としての機能を果たしている。

○「分野間・機関間連携を図る施策の推進」について

 当該施策は1複数の府省の連携の下に行われる観測プラットフォームの整備・利用やデータの統合的処理・利用などの施策であって、2各府省・機関が施策の実施のために必要な資源を協力して確保し、3施策の実施の成果である観測データ・情報を共有して利活用を図るものを対象としている。
 以下の7件が対象施策である。

  • アジア地域の対流圏大気変化把握のための辺戸岬スーパーサイトの共同運用
  • フラックス観測タワーの共同利用
  • 電磁波の高度利用・衛星測位精度の向上のための電離圏精密観測
  • 温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)の開発利用
  • 大気汚染など都市環境のリモートセンシング技術
  • データ統合・解析システム
  • 資源エネルギー探査・管理、防災・環境管理のためのGEO Gridシステムの開発

 上記の施策のほか、基盤的事項、5つのニーズに対応した重点的取組及び15分野における地球観測の推進に関する施策を推進することとしている。

 平成19年度「地球観測の実施方針」を踏まえて、平成19年度「我が国における地球観測の実施計画」が平成19年3月に取りまとめられた。この計画では、1地球温暖化分野に関する連携拠点、2地震及び火山分野に関する連携拠点における関係府省・機関の観測の連携促進、また、上記7件の「分野間・機関間連携を図る施策の推進」が図られることとなった。

3.「統合された地球観測システムの進捗状況」について

○「連携拠点の推進」について

(1)地球温暖化分野に関する連携拠点(環境省・気象庁)

 本連携拠点は、地球温暖化分野の地球観測実施計画の作成・報告、地球観測へのニーズ等の調査・集約、関係府省機関の調整及び情報の収集・分析等を行うものであり、平成18年に国立環境研究所内に事務局が設置された。
 運営は「地球観測に関する関係府省・機関連絡会議(温暖化分野)」の下で行われ、地球温暖化観測推進委員会(温暖化分野)による科学的助言を得つつ、1地球温暖化監視・予測のために必要な観測ニーズを踏まえて、関係機関による観測の実施計画を取りまとめ、2観測施設の相互利用(観測計画等の調整を含む)、観測データの標準化(品質管理等)、観測データの流通促進(インベントリー等の作成)などを通じて、関係府省・機関間の観測の連携を推進している。
 本連携拠点の事務局では、陸域、海洋、大気における炭素循環をはじめとした温暖化にかかわる地球観測のニーズ調査を実施し、また、観測の現状の実地調査を各地で行い、観測実施計画案作成に反映している。情報提供業務としては、気候変動の影響と適応戦略の統合データベースの改良と利用促進や、温暖化影響の情報発信のあり方の検討等が開始されている。平成19年1月にGEOSS APシンポジウムの開催を支援したが、次年度もさらにアジア・オセアニアでの地球観測の連携を図る等、今後の一層の成果を期待する。

(2)地震及び火山分野に関する連携拠点(文部科学省)

 地震調査研究は、地震調査研究推進本部が定める施策や観測計画等に基づき、地震予知研究は、科学技術・学術審議会測地学分科会における建議に基づき、地球観測推進部会とも協力しながら関係機関との連携を推進している。地震調査研究推進本部の事務局を務め、また、科学技術・学術審議会測地学分科会を所管する文部科学省が連携拠点としての機能を果たすことが期待される。我が国においてニーズの大きい分野であり、連携を推進する意義は極めて大きい。

(3)今後設置が期待される連携拠点

 「地球観測の推進戦略」ではニーズにこたえる戦略的な重点化が必要であるとし、「地球温暖化にかかわる現象解明・影響予測・抑制適応」「水循環の把握と水管理」「対流圏大気変化の把握」「風水害被害の軽減」「地震・津波被害の軽減」の5項目への取組が必要としている。既に2つの項目に関しては連携の拠点が確立しているが、残りの課題についても、順次、当該課題に密接に関係する府省・機関によって連携拠点を構築していくことが望まれる。
 水循環の把握と水管理に関する研究開発は「分野別推進戦略」(総合科学技術会議)において、戦略重点科学技術「健全な水循環を保ち自然と共生する社会の実現シナリオを設計する科学技術」に指定され、さらに、「長期戦略指針『イノベーション25』」(平成19年6月閣議決定)においても、本施策について世界的課題解決に貢献する社会実現に向けた研究開発ロードマップが示されている。また、水循環の全球的な変動と流域・局所的な変動を統合した観測・研究技術開発をGEOSS10年実施計画で定める期間に進めることが必要とされている。当該課題には、関係府省が「分野別推進戦略」に多くの研究開発目標を提示し、効率的・効果的な研究開発の推進を実現するために関係府省連携が求められる。従来からの検討を踏まえ、今後の連携に向けて、当該分野に密接に関係する府省の検討を期待したい。

○「分野間・機関間連携を図る施策の推進」について

 7件施策は別添の文部科学省からの報告通り、順調に関係府省・機関の連携が推進されている。

4.フォローアップの結論

  1.  平成19年度の実施方針及び実施計画に基づいた施策、特に「利用ニーズ主導の統合された地球観測システムの構築」に向けた連携の取組は、今後さらに連携を検討すべき課題があるものの、順調に推移している。特に、「地球温暖化分野に関する連携拠点」では連携の効果が発揮され、成果が上げられている。利用ニーズの観点からは、データ統合・解析システムなどを通じて幅広いユーザーのニーズにこたえる基盤が整備されつつあり、大気化学の分野では、辺戸岬スーパーサイトの共同運用を通じて、新たなデータベース構築の検討が始まっている。次年度も戦略的重点化をはかり、地球観測事業等が促進されることを期待する。
  2.  気候変動対策など環境問題の解決に必要な施策として、ニーズに対応した地球観測とデータ統合の重要性は更に増している。例えば、長期戦略指針『イノベーション25』(平成19年6月1日閣議決定)では、科学技術外交強化の一環として、先進的な地球観測衛星の観測データの提供、災害関連情報の提供等、我が国の優れた環境技術の成果を開発途上国のニーズに応じて積極的に提供することしている。今後とも、アジア・オセアニア地域との連携を強化するなど、GEOSS10年実施計画への我が国の貢献をすすめ、連携の実を挙げることが望まれる。
  3.  次年度も、「地球観測の推進戦略」に基づき、ニーズに主導された地球観測システム構築とそれに向けた各省・機関間の効果的な連携が更に推進されることを期待する。さらに、地球観測の成果が社会に広められていくことを期待する。