資料3 地球観測データの利用促進方策について

地球観測データの産業利用促進方策(骨子案)


1.背景・現状
○ 地球観測推進部会では、第5期科学技術基本計画の実施に当たって必要となる地球観測の重要性について、「地球観測推進部会取りまとめ~Society5.0の実現に貢献する地球観測~」(平成28年12月16日)の提言を取りまとめた。提言では、主としてCSTI、文部科学省をはじめとする関係省庁及び関係機関等に対する提言を行っているものの、民間企業等の事例やニーズについて踏み込むには至らなかった。

○ 「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」(平成27年8月25日、地球観測推進部会)では課題解決型の地球観測を志向しており、その中で「特に、観測データを課題解決に結びつける仕組みを構築し、地球観測の成果を産業利用も含めた社会実装につなげることを検討する必要がある。」としている。

○ また、本年5月に策定された「宇宙産業ビジョン2030」(平成29年5月29日、宇宙政策委員会)においては、衛星データを活用したソリューションビジネスの推進が言及されているとともに、「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(平成29年5月30日、閣議決定)においても、官民データの活用とデータ連携のためのプラットフォームの整備が言及されている。

○ 地球観測データの産業活用例としては、衛星分野、気象分野、海洋分野など、既にサービスとして展開している例が出てきているものの産業利用は未だ限定的な状況である。

○ 一方、企業においてはCSV(共有価値の創造)の観点からもパリ協定や持続可能な開発目標(SDGs)への貢献が期待されており、地球温暖化問題への取り組みやSDGsのゴール達成に当たり地球観測データの活用が必須になっている。


2.地球観測データの利用促進に向けた取組
(1)産学官の連携の在り方
○ 産学官が連携し、最終的なサービスやエンドユーザまで視野に入れた施策の展開が必要であり、そのためには、観測の計画段階からユーザの視点を取り込んだサービス運用体制を構築するなど、民間セクター等との協働の仕組みが必要である。

○ 特に、民間セクター等だけでは解決できない部分については産学官がシームレスに接続されるような、またはセクター間に適切なブリッジ機能を持つ連携を実現する仕組みの構築を強く意識する必要がある。

○ その上で、社会実装は民間セクター等が得意とするところであり、企業のノウハウを活用してユーザの利用にまでつなげることが重要となる。


(2)データ提供の在り方等
○ データ利用の敷居を下げ、民間セクター等の利用側に配慮した提供の仕方が重要となる。ユーザがデータの扱いに慣れていることを前提とせず、汎用的なフォーマット形式やデータハンドリング機能の提供など、利用しやすいデータプラットフォームの構築も必要である。また、民間セクター等の多様なニーズに応えることを可能とするIT専門家との協働の場も必要となる。

○ 国で観測している基本的な地球観測データは協調領域としてオープンにし、データの付加価値を高めてサービスにつなげる部分は競争領域として、民間セクター等の活力を削ぐことのないような適切な形でコントロールされたデータポリシーを設定することが、新たな市場開拓やより良いサービスを展開していく上で重要となる。

○ 民間セクター等がビジネスとしてデータを利用するためには、品質管理されたデータと欠測のないデータの継続性が重要である。観測に空白期間ができるのはビジネスにとってリスクが大きく、民間活用の促進を妨げている面もあるため、国においては観測の継続性の観点でも留意が必要である。


(3)その他
○ データ利用の積極的なプロモーションや解析事例の紹介など、利用場面や利用の可能性を示すことにより、潜在的ユーザの取り込みを行うことが必要である。

○ 産業として成立できるビジネスモデル、ビジネス・エコシステムを確立することが必要であり、本格的な産業化が軌道に乗るまでの間、国によるアンカーテナンシー、シードマネー等の支援も有効な手段である。

○ 産学官が一体となって、地球観測データの活用の拡大及び新たなデータの価値を見いだすこと等により、着実に社会的課題の解決につなげていくことが重要である。

○ 地球観測の重要性を広く国民に理解してもらうため、教育現場も含めた様々な場を通じた普及啓発が重要である。

以上



(参考)

地球観測データの産業利用促進方策について

これまでの意見(メモ)


(1) 地球観測データを用いた民間ビジネスについて、どのようなニーズがあるか(必要な観測項目、精度、頻度など)。また、どうすればニーズを掘り起こし、先鋭化出来るか。潜在的ユーザの発掘についてはどうか(例えば、データ統合・解析システム(DIAS)では、防災、食料・食品・物流、エネルギー等の分野でデータ活用に興味を持つ民間企業を集めたコミュニティフォーラム、シンポジウムの開催や、民間企業を含めたフィジビリティスタディを実施)

・ 民間企業において地球観測データの利用を進めるためには、データだけの提供ではなく、多様なニーズに応えるアプリケーションの提供が重要となる。
・ データ利用を推進するためには、利用方法や解析事例を紹介するなど、積極的なプロモーションにより社会的ポジション・認知を獲得し、出口(利用場面)を拡大することが必要である。
・ 地球観測の重要性を広く国民に理解してもらうため、教育現場も含めた様々な場を通じた普及啓発が重要である。
・ 小型衛星コンステレーションなどの民間単体で可能なシステムは、市場に応じたビジネスとして既に民間で実施されている。
・ マイクロ波による衛星観測については、沿岸域の観測と高解像度化が課題となっており、これが実現すれば沿岸漁業者に対する情報提供ビジネスにも有効である。
・ 民間利用の促進、社会実装については、産業として成立するようになることであり、そのための指標を考え、可視化できるようにしておく必要がある

 (2) 地球観測データをビジネスに用いる上で、どこに、どのような障壁があるか(具体的には、国内/海外データの入手のしやすさ、価格、データポリシーの整備、解析環境の提供などが考えられる)

・ 民間がビジネスとして衛星観測データを利用する場合は、継続的な観測が必要であり、観測に空白期間ができるのはリスクが大きい。
・ 気象観測データは国民の生命や財産を守る防災情報であり、データの品質維持(品質管理)と欠測を防ぐこと(データの継続性)が重要である。
・ 気象観測データについては、ある程度の費用負担は受け入れられているため、ビジネスが成り立つ適正な金額設定をすることが必要である。
・ 漁獲データのように民間の事業者から情報を得られにくいものもある。これらのデータが自分たちにとっても益になることを説明し、理解してもらう活動が重要である。
・ データをオープンにしたからといって、そのまま使えるわけではなく、品質管理をして、ユーザが使える物理量に変換する作業も必要になる。この部分への投資も必要になる。

(3) 地球観測データをより広く社会で活用するためには、どのような民間企業等の関与の仕方が効果的か(例えば、官民一体となった観測体制やプロジェクトの構築、市民参加型の観測など)

・ 衛星による観測データの社会実装を推進するためには、民間利用だけではなく、産官学が連携した「トータルサービス」の中に衛星データを位置づけ、定着を図っていくことが必要である。
・ 産学の協力による基礎研究に加え、社会実装部分は企業が得意とするところであり、民間のノウハウを活用しユーザまでのラスト1マイルをやり抜くことが重要である。
・ 気象データについては民間による独自観測も行われており、ビジネスに利用されている一方、データの品質や継続性の面では官が行うデータと統合ができていない。
・ 地球観測は民間単体で成り立つビジネスとは異なり、各種プレーヤのシームレスな連携を実現する仕組の構築を意識し、その中での民間の役割を考える必要がある。


(4) 様々な目的で取得した観測データや既存の観測システムの更なる連携を促し、イノベーションにつなげるためには、具体的にどのような取組が必要か(DIASのようなデータ統合・解析のためのプラットフォームの提供など)

・ 欧州のコペルニクス(衛星利用モデル開発プログラム)のような形で、1.オープンフリーの流れのなかで政府衛星を中心に官需を喚起する、2.シードマネーを投入し具体的な先導例や成功例を構築する、3.サービス開発時から官(民)ユーザ主導の運用体制を構築する、ことができるといい。
・ まずは政府衛星を核とする利活用の仕組みを国家インフラとして位置づけ、国・自治体等の公的利用を推進するモデル事業を作ることが重要である。

(5) オープンサイエンスやオープンデータの流れの中、民間企業等が利用しやすいデータ提供の在り方はどの様なものと考えられるか(「宇宙産業ビジョン2030」や経済産業省の「政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備事業」等が現在動いている衛星データ利活用等の具体的な事例)

・ 欧州のセンチネル衛星や米国のランドサット衛星等とのグローバルな場でのビジネス競争に勝つためには、官主体の無償配信体制により競争に勝てる条件を整えることが必要である。ただし、無制限なオープンではなく、必要に応じてコントロールできることを留保すべきである。
・ 海外における民間利用の視点も必要である。ベンチャーなど新分野・新ビジネス開拓についても、世界的な大きな潮流をとらえて、国家インフラとしての国際衛星・利活用システムの在り方を見据えた民間利用・位置づけを検討することが必要である。
・ 地球観測データについてはオープン化の方向議論がされているが、オープンで無いところにビジネスチャンスがあることを理解しながら方法論を考える必要がある。
・ 協調領域として基本的なデータ、特に国で観測しているデータの流通はオープンにし、それにどのように付加価値を付け、サービスにつなげていくかは競争領域として、より良いサービスを展開していくことが重要となる。
・ 企業には必ずしもデータの扱いに慣れている人がいるわけではないため、利用しやすい配信形式で提供することが重要になる。

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