「GEO戦略計画の実施に向けた我が国の地球観測の実施方針」骨子(案)

1.はじめに

 ○ 我が国では、平成16年度に策定された「地球観測の推進戦略」(以下、「推進戦略」という。)に基づいて、10年間地球観測事業を推進してきた。
 ○ 総合科学技術・イノベーション会議(以下、「CSTI」という。)環境ワーキンググループは、「地球観測の推進戦略」策定以降の我が国の取組状況に基づく地球観測等事業の進捗状況のレビューを実施している(平成27年6月)。
 ○ このレビューを受け、地球観測推進部会(以下「本部会」という。)は、今後10年程度を目途とした我が国の地球観測の実施方針を作成することとした。
 ○ 一方、地球観測に関する政府間会合(GEO)は、全球地球観測システム(GEOSS)の新たな10年間の実施計画(GEO戦略計画)の検討を進めている。そこでは、社会利益分野を時流に即して再構築し、国際的な地球観測体制の強化を図ろうとしている。
 ○ 本実施方針は、「基本認識」、「課題解決型の地球観測」、「共通的・基盤的な取組」、「統合された地球観測システムの推進体制・組織」で構成する。

2.基本認識

1.地球観測を取り巻く現状

 ○ 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書では、気候システムの温暖化は疑う余地がないことや、人間による影響が温暖化の支配的な要因であった可能性が極めて高いことなどが示されている。
 ○ 今後、我が国において気温の上昇、降水量の変化など様々な気候の変化、海面の上昇、海洋の酸性化などが生ずる可能性があり、国民生活の様々な面で影響が生ずることが予想されている。
 ○ 一方、少子・高齢化が進む一方、持続的な成長と社会の発展を目指すため、豊かで質の高い生活を確保することが求められている。また、大規模地震や火山噴火などの自然災害のリスクに対し、地殻変動監視などの様々な地球観測の知見に立脚して、安全・安心な社会を継続的に実現していくことも重要である。
 ○ 科学技術の飛躍的な進展により、グローバルな環境においてあらゆるものが瞬時に結びつき、相互に影響を与え合う時代に突入している。地球観測もその例外ではなく、情報化の進展、国のオープンサイエンスの動向に合わせ、地球観測に関する情報をあらゆるユーザーが利活用できる時代が目前に迫っている。このため、ユーザーの要望や共感に応える新しい価値・サービスを創出していかなければならない。
 ○ 我が国は、国際社会の平和と安定のために積極的に関与するとともに、地球規模の課題へも我が国の強みを活かしながら、国際社会と協調しつつ対応していくことが求められている。

2.地球観測実施にあたっての基本的な考え方

 ○ 今後の地球観測は、地球及び人間社会の現状や将来予測に対する包括的な理解と対応のための基礎データを得るものとなるべきである。
 ○ 一方、観測技術が向上し、より広範囲または高分解能な観測が可能となってきているが、継続的な地球観測には多額の予算が必要となることから、観測方法の特性を踏まえ、目的や対象地域を明確にした戦略的な地球観測の推進が、これまで以上に求められる。
 ○ 地球温暖化による影響が顕在化し、その対応を検討するための基盤となる地球観測の重要性は増大している。今後の地球観測は、観測データの利用を促進するとともに、社会からの課題解決の要請に具体的に応えることを強く意識したものであるべきである。
 ○ その際、理想とする将来像の実現に向けて地球観測がどのように貢献できるかを考える、いわゆる「バックキャスト型」の推進が求められる。
 ○ 課題解決への貢献や、我が国がこれまでに注力し強みとしてきた観測の更なる強化の観点では、「活力のある社会の実現」、「防災・減災への貢献」、「将来の環境創造への貢献」を目指した観測を重視する。
 ○ そして、「地球環境の保全と利活用」、「新たな知見の創出」を目指した観測が、これら3つのテーマに横串を通す観測となる。
 ○ これにより、我が国は、地球観測を通じ、国際社会とも協調を図りつつ、新たな社会の構築に貢献していくことを目指す。

3.課題解決型の地球観測

 ○ 本部会は、地球観測を通じて解決すべき課題と10年後に目指す理想の社会像を挙げ、その姿に至るまでの道筋と必要な地球観測の取組を検討した。

1.活力のある社会の実現

 ○ 現在及び将来にわたって、発展途上国・先進国の区別なく、人類全体が安心して豊かな生活を営むことができる社会を実現するためには、食料や農林産物、水資源に関するセキュリティの確保、エネルギーや海底鉱物資源に関するセキュリティの確保、健康に暮らせる社会の実現を重視すべきである。
 ○ その際、モニタリングからモデル化、対応策へのフィードバックサイクルの確立など、観測データを課題解決に結びつけるシステムを構築し、これらシステムを社会実装させることが必要である。
 ○ 高齢化社会や地域の衰退など、国・地域レベルの課題に対する地球観測の貢献のあり方を明確化すべきである。

(1)安定的な食糧、農林産物の確保

 ○ 気候変動にも適応した形で、世界の食料が安定的に供給される社会の構築に貢献する。
 ○ 我が国の農林水産業の生産性が向上し、品質の高い生産物の安定的な供給が可能となることで、地域の活性化、食料自給率、木材自給率の向上、農林水産物の輸出等による経済発展にも貢献する。
 ○ そのため、農地利用・作付体系、農業生産環境、農業生産量、農業基盤の整備・管理、食料の流通(輸送と販売など)、森林植生の分布、森林蓄積量、水産資源の量や分布、漁場環境、有害生物などの把握のための地球観測が必要である。

(2)総合的な水資源管理の実現

 ○ 気候変動にも適応した形で、世界の水資源が安定的に供給される社会の構築に貢献する。
 ○ そのため、効率的な治水・利水、効果的な水災害削減を含む、健全な流域水循環と水資源の安定的な利活用を実現するため、治水・利水施設の管理、河川流量、地下水位や揚水量、土壌水分量などを把握する地球観測が必要である。

(3)エネルギーや鉱物資源の安定的な確保

 ○ 再生可能エネルギーの利用が進み、化石燃料への依存度が低下することで、温室効果ガス排出抑制(地球温暖化の緩和策)の取組が進む社会の構築に貢献する。
 ○ 我が国周辺の海底資源の賦存量が明らかとなり、生物多様性や環境保全に配慮した確保・利用に向けた取組が進み、多くのエネルギーや鉱物資源を輸入に頼る我が国が、「資源大国」への転換に向け本格始動することにも貢献する。
 ○ そのため、風況、日射量、海況、資源の賦存量、海底下の地質などを把握する地球観測が必要である。

(4)健康に暮らせる社会の実現

 ○ 適切なモニタリングに基づき、大気汚染状況の把握、対策推進を図ることにより、グローバルな問題も含めて健康被害が低減され安全・安心な暮らしが確保される社会の構築に貢献する。
 ○ 感染症の発生・伝播過程を予測することで、世界的な感染症拡大が抑止される。
 ○ そのため、大気汚染物質やヒートアイランドの実態の把握、感染症の発生状況、媒介生物の出現状況などの把握のための地球観測が必要である。

2.防災・減災への貢献

 ○ 従来は、地震、火山噴火、地すべり、台風、洪水、高潮など、現象そのものの観測を重視し、災害現象の監視・観測を行ってきた。今後は、災害によるリスクを低減させ、復旧・復興にも資するため、現象が起こる(起こりつつある)場所の観測や、多様な観測データを効果的に組み合わせるシステムの確立が必要である。
 ○ 災害発生の予測と、被害防止・軽減、危機管理につながる恒常的な地球観測や監視等を実施することで、国民及び国際社会の安全・安心の確保に貢献するためには、地球観測と災害モデルの効果的連動、災害データと関連観測データのアーカイブ、復旧・復興監視を重視すべきである。
 ○ その際、高密度観測網を持つ日本ならではの研究成果を他国への防災・減災に役立てることや、GEOをはじめとする国際協働事業や各国データセンタによる災害データの収集に協力することにより、我が国の国際貢献を果たすとともに、海外における質の高い情報の入手とデータの更新が継続的に行われるようにする。
 ○ また、災害に関わる地球観測情報を簡便に利用できるサービス環境の基盤を整備することにより、それを利活用して災害リスク軽減の実用化を担う民間ビジネスの発展につなげることも検討すべきである。
 ○ これらの取組にあたっては、第3回国連防災世界会議(平成27年3月)で掲げられた防災・減災に関する7つの目標と4つの優先行動項目を踏まえたものとすべきである。

(1)災害の予知・予測

 ○ 災害の危険地域のリスクとその変化の把握、予兆現象の検出、精度良い予測(特にリアルタイム予測)を実現するための地球観測が必要である。
 ○ そのためには、地球観測計画の着実な実施が必要である。例えば、実際に被災した場所及び今後被災する可能性の高い危険地域を抽出して、予防段階及び発災後の地球観測による監視を行う。その際、災害リスクに関する情報を共有し利活用するため、観測データを確実にアーカイブしていく。
 ○ あわせて、低頻度大規模災害(地震・火山災害など)の予測・減災のための歴史・考古・地質資料などの情報を整備する。また、地球観測と防災・減災とがうまく連動した研究成果や実務成果を収集・整理することで、不足している観測を明らかにし、充実させていく。
 ○ 一方、防災分野で活躍する衛星による観測の継続、個別の災害予測モデルの高度化により、予兆現象の把握や高精度の予測を推進する。
 ○ 気象衛星「ひまわり」等による詳細な観測データを防災・減災研究に役立てる。また、高分解能のマイクロ波放射計による積雪量・降雪量観測の高精度化、衛星データ等同化による予報モデルの高度化(数時間後までの降水予測)といった、新たな観測機器の開発や観測手法の高度化を推進する。

(2)発生時の緊急対応と復旧・復興

 ○ 災害が起ころうとするとき、あるいは進行しつつあるときには、被災範囲を予測・把握する必要がある。そのための観測体制の充実と予測モデルの構築・高度化が必要である。
 ○ 復旧・復興段階における「より良く再建すること(Build Back Better)」の典型的な実例を示せるように地球観測をうまく活用する方法を検討する。
 ○ また、地球観測によって復旧・復興の様子を監視するとともに、より良い再建になっているかどうかを判定できる基準の策定にも貢献する。

3.将来の環境創造への貢献

 ○ 複雑な地球環境変動を把握し、その悪影響を軽減する等の適切な対応の検討に活用するためには、人為的な気候変動に伴う悪影響の探知・原因特定や、長期的な海洋環境監視を重視すべきである。

(1)気候変動に伴う悪影響の探知・原因の特定

 ○ 人為的な気候変動に伴う地球環境変動を探知し、その原因を特定可能するため、地球環境を監視する観測とそのデータを詳細に解析するための研究開発が必要である。
 ○ その結果、気候関連の自然災害に対するロス・アンド・ダメージをめぐる議論に科学的な根拠が提供されると共に、持続可能な発展を阻害するような新たなグローバルリスクの検知やマネジメントが可能となることに貢献する。
 ○ あわせて、グローバル及びローカルな気候変動対策(緩和策・適応策)の効果を定量的に評価し、その結果をよりよい環境の創造に活用すべきである。
 ○ そのため、両極を含むグローバルかつ高解像度の恒常的な観測体制を構築するとともに、衛星、航空機、地上における温室効果ガス観測のような地球規模環境変動監視の要となる地球物理量の継続的な観測を行う。
 ○ また、発展途上国を中心とした国々の過去の観測記録のデジタル化や、古気候プロキシデータの体系的な収集と永続性・堅牢性のあるアーカイブシステムの構築等を推進する。
 ○ さらに、人為的な気候変動影響の寄与の定量的な推計を可能とする気候モデルのシミュレーション精度の向上とアンサンブル数の増大を推進して不確実性を減少させる。

(2)長期的な海洋環境監視

 ○ 人類は海洋から様々な恩恵を受けていることを踏まえ、海洋が持つさまざまな機能を維持していくため、全海洋の効果的かつ継続的な観測が必要である
 ○ その結果、人為的な気候変動に伴う海洋環境変動や生態系変動が速やかに探知され、原因特定のための研究に資するとともに、科学的根拠に基づいた政策決定や海洋環境の維持と持続可能な利活用に貢献する。
 ○ そのためには、各種センサーをはじめ、海洋内部を自動で平易に精度良く計測する技術、生態系変動や生物多様性の示標を計測する技術の開発を進める。

4.地球環境の保全と利活用

 ○ 生態系サービスの享受や気候変動の緩和と適応など、人類を取り巻く環境と調和した社会の実現は、活力のある社会の実現と密接不可分であると言える。
 ○ 一方、これらの環境を保全し持続可能な活用を目指すことは、将来の環境創造の視点からも重要である。また、環境の変化によりもたらされる災害への対応は、防災・減災の視点にも貢献するものである。
 ○ 適切な環境保全や利活用の取組を推進するための、生態系サービスの定量的な把握のための地球観測が必要である。これは、「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」における我が国の貢献にもつながるものである。
 ○ また、地球温暖化の進行を抑制するため、森林分布、樹種構成、森林劣化等の変化状況を継続的に観測するとともに、REDD+の取組等を通じ、森林減少・劣化の抑制や森林増加につながる対策につなげることが必要である。あわせて、これらの生態系から享受する利益や、生態系が損なわれることで生じる損失を定量的に把握することも必要である。
 ○ さらに、長期的な海洋環境の監視(3.(2))と合わせ、気候変動がもたらす北極海航路の利用可能性を視野に雪氷・海氷分布を常時把握するなど、環境の保全と利用(開発)を両立させ、豊かな社会づくりに貢献する。

5.新たな知見の創出

 ○ 将来起こりうる潜在的な課題の解決には、変動の兆候を早期に発見するとともに、変化を予測し、将来の影響を想定した対応を取る必要があり、そのための観測データと科学的知見の蓄積が重要である。
 ○ したがって、未知の現象の解明や新たな科学的知見の創出を目指した地球観測は、横断的取組として、引き続き推進していく必要がある。
 ○ 地球システムを構成する固体地球、陸面、海洋、大気、電離圏・磁気圏の相互作用及びフィードバック、太陽地球系の結合過程の理解を深め、地球システムの包括的理解に必要な基礎的知見を蓄積するための地球観測に取り組む。
 ○ そのためには、科学観測の計画が健全に策定され評価される必要がある。すなわち、地球観測の提案から、審査、策定、実行、評価まで、一貫して推進する機能を確立する。これにより、科学的に重要とされる地球観測と、課題解決や政策的な観点から重視される地球観測を結びつける。
 ○ また、新しいが挑戦的でもある地球科学観測に対し所要の予算を措置し、安定・継続した観測体制を確立するとともに、次の研究展開に生かすための取得整備されたデータの適切な管理を行うことも必要である。

4.共通的・基盤的な取組

1.地球観測データのアーカイブとデータの統合化・利活用の促進

 ○ 地球観測データのみならず、土地利用や社会・経済活動等に関する情報・データを収集し、それらのアーカイブから必要なデータを抽出し、統合解析するシステムを整備する。
 ○ データのリアルタイムな共有と提供も図れるユーザーインターフェースを構築すると共に、ディープラーニング等の最新技術も取り入れ、より高次の情報を抽出し利活用するための研究開発も推進する。
 ○ そのため、永続性・堅牢性のあるアーカイブシステムを構築する。「データ統合・解析システム(DIAS)」等、日本が世界に先駆けて開発してきた情報基盤を十二分に活用する。
 ○ さらに、利用促進を図るための体制の確立と強化を推進し、あらゆる人々へのデータ・情報の提供を念頭に、国が主導してオープンデータの推進にあたる。
 ○ 近年の新たな技術革新に対応し、個人の携帯端末を活用した地球観測データの取得と利活用を推進する。その際、情報通信技術の利用に困難を抱える方々に対する情報提供のあり方を検討する。

2.分野間の連携、多様なステークホルダーの関与の促進と人材育成

 ○ 社会からの多様なニーズに応え、課題解決への道筋を示すため、社会と研究開発をつなぐ視点での地球観測を実施する。
 ○ 例えば、スマートフォンなどの情報端末を活用し、事業者や市民の手で観測を実施することで、農家や漁業者など、情報のユーザー自身が観測者となる。
 ○ また、産業界との連携(例えば民間航空機や船舶観測との連携)により、地球観測データと社会をつなぐ技術開発を促進する。
 ○ 欧州のCopernics等を参考に、官民連携で観測・解析・利活用を一貫して行う体制を整備し、アプリケーション開発と現業ユーザーへの普及を促進する。
 ○ さらに、多様なステークホルダーがデータを活用し、課題解決のための行動を取れるよう、専門的なデータの利活用に関する情報提供や技術支援を推進する。
 ○ また、観測データの取得から利活用まで、データを適切に取り扱い、目的に応じたデータの加工・利用に当たる専門の人材、我が国のみならずグローバルな課題解決を支える人材、地球環境情報を教育研究の現場や社会で生かせる人材の育成に取り組む。
 ○ 長期的かつ安定的に地球観測を継続させるためには、地球観測に関して、重要性や有効性が国民に広く理解される必要がある。地球観測に関わるあらゆる組織、研究者が、国民との対話や、幅広い普及・啓発に努める。

3.長期継続的な地球観測の実施

 ○ 地球の現状を的確に把握し、災害の予兆をはじめとする地球環境の変化を捉えるとともに、長期的データを蓄積し将来の有用な成果につなげるためには、継続的に高精度な地球観測の実施が不可欠である。
 ○ このため、地球観測を実施する機関が連携し、既存の地球観測プラットフォームを最大限活用することにより、恒常的な地球観測を確立する。
 ○ また、観測の目的を明らかにしつつ、既存の観測項目の必要性や課題解決への貢献度の評価と新たな観測項目の洗い出し等を実施し、今後、我が国が長期継続すべき観測項目を特定する。
 ○ その際、重要度の高い定常的観測項目は関係府省・機関の業務観測の一環として実施する等の長期継続性を確保する方策を検討する。
 ○ あわせて、過去の電子化されていないデータのアーカイブを推進し、既に取得された観測データも、最大限活用できるよう配慮する。
 ○ また、海面・気候変動監視、自然災害等の地球科学分野及び社会・経済活動分野で用いられる地球規模の地理空間情報及びその根幹となる国際地球基準座標系(ITRF)を整備する。
 ○ 長期かつ安定的な地球観測の維持の観点からも、実効性の高い人材育成は早急に取り組まなければならない課題である。

4.地球観測による科学技術イノベーションの推進

 ○ 観測精度の向上や観測の安定性の確保、低コスト化に向けた技術開発に取り組む。また、新たな課題解決や科学的発見への道を開くため、斬新な着想に基づく新たな観測手法の開発や新たな地球物理量の観測等も積極的に推進する。
 ○ 我が国が特に強みとする衛星や船舶等による観測のための観測機器や衛星システム、探査機、広域物理探査技術等の開発を推進する。
 ○ そして、地球環境変動への適応策や災害リスク軽減策の実用化など、地球観測データを活用した新たなビジネスに結びつける。
 ○ そのため、地球観測衛星、通信衛星、測地衛星のデータ利活用のさらなる連携など、様々な目的で取得したデータの統合した利活用を促進する。
 ○ その際、地球観測データのリアルタイムに近い迅速な収集と流通、低コストで多地点高密度に展開可能な観測技術の確立等を目指す。

5.科学技術外交・国際協力への地球観測の貢献

 ○ 我が国が実施する地球観測と言う観点から、まずは日本の利益に資する地球観測が必要である。
 ○ 一方、日本の利益は世界の平和と安定と共にあるべきことから、世界に目を向け、我が国を取り巻く社会との良好な関係を築き上げるための地球観測も、我が国の広義の安全保障の観点では必要である。
 ○ このため、科学技術外交・国際協力への地球観測の貢献のあり方を明確化する必要がある。
 ○ また、国際協力関係を構築しつつ、地球規模の課題解決やその基盤となる地球システムの理解を含め、我が国の地球観測を活用して国際貢献を推進していく。
 ○ 現在の国際状況も踏まえ、アジア太平洋地域に加え、アフリカ、中南米等への対象地域拡大や地域的課題の解決への地球観測の貢献等の内容や人材育成も含め戦略を再検討する。その際、我が国の大学等の教育研究機関、研修機関等も活用しつつ、各国現地において人材育成することを検討する。また、国内においても、国際的視点を持つ高いレベルの研究者の育成が必要である。
 ○ これまでに形成されてきた国際連携の枠組やシステムを持続し維持発展させる。特に、我が国単独では得られない観測データや、海外における質の高い情報の入手とデータの更新が継続的に行われるよう、人的・組織的ネットワークの構築が重要である。
 ○ また、途上国における観測能力の向上を踏まえ、各国の能力を活用した連携の方策についても検討する。
 ○ GEOにおいては、利用者との連携で進めている「センチネル・アジア」や「アジア水循環イニシアチブ」のような我が国の取組をグッドプラクティスとして示しつつ、このような活動を後押しし、更なる発展を目指す。
 ○ また、新たな知見の創出にはグローバルなモニタリングが不可欠であり、基盤的な地理空間情報も活用しつつ、各国・各機関とデータの共有や統合での連携を通じて、活動を強化する。

5.統合された地球観測システムの推進体制・組織

 ○ 本実施方針は、「地球観測の推進戦略」の下で策定してきた「実施方針」にあたるものである。
 ○ CSTIのレビューに基づき、本実施方針は、国内外の地球観測の動向や社会情勢の変化に対応して、概ね3年~5年程度を目安に、見直しを行うことする。
 ○ 「地球観測の推進戦略」の下で毎年策定してきた「実施計画」については、引き続き毎年策定する。策定した実施計画は、CSTIに報告し、必要に応じ本実施方針と各事業の進捗状況等についてフォローを受ける。
 ○ 本部会は、観測から課題解決に至る取組を総合的に俯瞰し、CSTI及び関係府省庁との連携を拡大・強化するとともに、産業・市民生活への貢献、観測データの公開のあり方などを議論していく。
 ○ そのために、CSTI事務局と共同で関係府省庁の連絡会を設置し、各府省庁が取り組む地球観測について情報交換を密に取るとともに、本実施方針の目的達成のために必要な連携を図る。
 ○ また、推進戦略の下設置された地球温暖化分野に係る地球観測連携拠点など、必要に応じ分野ごとの推進組織を設置し、関係省庁、関係機関による国内外の連携を一層強化する。

以上

お問合せ先

研究開発局環境エネルギー課

メールアドレス:kankyou@mext.go.jp

(研究開発局環境エネルギー課)