資料2-5 グループ討論の結果のとりまとめ

グループ討論の結果(概要)

(1)活力のある社会の実現

 テーマ

 10年後の達成目標

 道筋

 必要なこと

 共通基盤的観測

 

・定常的な観測の継続(地球の現状をありのままに把握すること、開発に伴う環境保全を監視すること、観測のための機器の継続的な開発と維持・管理など)
・自然環境の価値の定量的把握手法の開発
・衛星の活用、海洋内部の観測網の構築と維持
・気候変動メカニズムの解明、予測精度の向上
・開発途上国における森林の現況・減少・劣化状況把握
・海運等の実務利用に関わる雪氷・海氷分布の常時把握
・市民参加型の観測(スマートフォンなどの情報端末の活用)
・データの精度をチェックし、ビッグデータとして再構築するシステムの開発と運用、ディープラーニング等も生かした情報抽出による高次情報の抽出と利活用
・データのリアルタイムな共有と提供(あらゆる人々へのデータ・情報の提供、そのためのオープンデータの推進)
・観測データを課題解決に結びつけるシステムづくり(モニタリングからモデル化、対応策へのフィードバックサイクルの確立、システムの社会実装)
・高齢化社会や地域の衰退など、国・地域レベルの課題に対する地球観測の貢献のあり方の明確化
・科学技術外交・国際協力への地球観測の貢献のあり方の明確化
・広義の安全保障の考慮
・より実効性の高い人材育成と理解増進 

・大気、気象・水象、海洋、土地被覆・利用情報、地図情報、地殻・地形情報など、地球環境の現状を正確に記録する。

 食料や水資源に関するセキュリティの確保

・気候変動にも適応した形で、世界の食料(特に農産物)や水資源が安定的に供給される。 

・農地利用・作付体系、農業生産量、農業基盤の整備・管理、食料の流通(輸送と販売など)などを把握する。
・水産資源の量や分布、漁場環境、有害生物などを把握する。
・治水・利水施設の管理、河川流量、地下水井や揚水量、土壌水分量などを把握する。 

・我が国の農林水産業の生産性が向上し、地域が活性化される。
・日本の食料自給率の向上や、農水産物の輸出等による経済発展にも貢献する。 

エネルギーや海底鉱物資源に関するセキュリティの確保 

・再生可能エネルギーの利用が進み、温暖化緩和策の取組が進む。 

・風況、日射量などを把握する。
・資源の賦存量、海底下の地質などを把握する。 

・多くのエネルギーや鉱物資源を輸入に頼る我が国が、「資源大国」への転換に向け本格始動する。 

環境と調和した社会の実現 

・生態系サービスを定量的に把握することにより、適切な環境保全や利活用の取組が進む。 

・森林の現状、生物の生息環境などを把握するとともに、これらの生態系から享受する利益や、生態系が損なわれることで生じる損失を定量的に把握する。
・森林分布、樹種構成、森林劣化等の変化状況を経年で把握する。
・北極海航路の運用のため、雪氷分布状況を短周期に把握する。 

・気候変動に伴う自然災害の影響が評価され、適切な防災・減災が実現される社会となる。 

・REDD+の取組みにより、途上国の森林減少・劣化が把握され、対策が講じられることで、温暖化の進行が抑制される。 

・北極海航路の開拓など、気候変動の影響をプラスにとらえた適応策を講じ、豊かな社会づくりに活用する。 

 健康に暮らせる社会の実現

・大気汚染など、グローバルな問題も含めて健康被害が低減され安全・安心な暮らしが確保される。
・世界的な感染症拡大が抑止される。 

・大気汚染物質の実態などを把握する。
・感染症の発生状況、媒介生物の出現状況などを把握する。 

 観測の利活用を推進する体制整備

・将来の環境変化に伴い想定されるグローバルな課題に対し、未然に対策が講じられることにより、これらの課題の顕在化・深刻化が回避される。 

・利用プロジェクト単位で、官民連携で観測・解析・利活用を一貫して行う体制を整備し、アプリケーション開発と現業ユーザへの普及を促進する
・政策誘導により地球観測の利活用を推進する施策を講じる。 

・我が国が国際社会への貢献を果たしてポジションを高めるとともに、日本全体、ひいては世界全体が豊かになる。 

(2)防災・減災への貢献

 テーマ

 10年後の達成目標

 道筋

 必要なこと

 防災・減災対策への貢献

・地球観測による様々なデータが、防災・減災対策に直接役に立つ。
・前兆現象の予知、リアルタイムの予測の精度が格段に上がる。
・被災直後の一次的被害(ロス・アンド・ダメージ)の算定が容易となる。
・国内外において緊急対応を日本政府が主導できる。
・色々な分野でのリスクマネジメントに貢献する。 

(1)地球観測と災害予測モデルの効果的連動
・地球観測計画の着実な実施
・「だいち2号」の後継機
・災害予測モデルの高度化とそれを担う研究者の育成、研究費の供給
(2)災害データと関連観測データのアーカイブ
・衛星により得られる地球観測データの確実なアーカイブ
・国際協働事業、各国のデータセンタによる災害データの収集とそのアーカイブの拡充への、およびそのためのシステム(DIASなど)の拡充と維持管理
・巨大なアーカイブ(データベース)から、災害の防止・軽減に有用なデータを抽出するインタフェースの構築
(3)国際連携と防災人材育成
・防災関係の科学協力事業にける地球観測データの活用、アーカイブと公開
・若手研究者や大学院生の育成
・GEOの災害分野の活動、国際災害チャータ、センチネルアジア等への継続的・積極的な参加
(4)復旧・復興監視
・予防段階及び発災後の地球観測による監視
・復旧・復興によるリスクや悪影響の監視・予測、そのための組織構築
・用途や課題別に最適化されたデータベースシステム
(5)その他
・データ同化・データ活用の新しいパラダイムの構築
・わが国の研究成果を他国への防災・減災に役立てる
・国際防災情報ネットワークの構築
・国際連携のもとで、歴史、考古、地質資料などの情報整備を強化し、リスク情報として提供
・衛星観測頻度を高める
・地球観測を継続的に高度化
・アフリカや中南米も視野に入れた地球観測の枠組の構築 

・地球観測が、海外における日本の経済活動の自然災害リスク、環境リスクの軽減に役立つことを示していく努力
・人材育成を含めた人的・組織的ネットワークの構築
・簡便に利用できるサービス環境の基盤整備
・地球観測と防災・減災とがうまく連動した研究成果(best research)や実務成果(best practice)の収集・整理と、不足している観測の明確化
・年々の成果をとりまとめ
・「ひまわり8号」等の詳細な観測データをを防災・減災研究に役立てる仕組みと投資
・以下の観測機器の整備や高度化とその継続
  光学、合成開口レーダ衛星
  赤外、温室効果ガス観測衛星
  高分解能のマイクロ波放射計、降水レーダ
  光学立体視センサやレーザープロファイラ、高精度DEM
  積雪量・降雪量観測、積雪量推定の解析技術
  衛星コンステレーション
  受信局/光データ中継衛星増による提供速度向上
  衛星データ等同化による予報モデルの高度化
  水文モデル、大気モデルの高精度化
・ 国際協力協定 

 日本国内の災害
 (予知・予測)

・地震動、地殻変動、火山活動、気象、水文、潮位、GPSなどの高密度の観測網によるデータが、人工衛星、航空機、無人飛行機などによる観測とさらに統合化され、有効に利用される。(予兆現象の検出、リアルタイムの災害予測)
・広域的な気象観測から、大雨、干ばつ、熱波、大雪、寒波の予測が数ヶ月前から精度良くできる。(季節予報) 

 日本国内の災害
 (緊急対応と復旧・復興)

・地球観測データが迅速に利用でき、モデル予測やナウキャストが効果的にできる。
・地球観測によって復旧・復興の様子を監視し、より良い再建になっているかどうかを判定できる基準が確立されている。 

 非軍事面の国際貢献

・平時及び災害事象発生に至る段階までの災害関連情報や防災・減災に有用な情報を効果的に伝達できる地球観測体制の国際的枠組を確立する。
・災害発止直後の状況把握・緊急対応から復興に至るまでのわが国の地球観測分野での国際貢献の枠組を確立する。 

 海外の災害
 (予知・予測)

・観測網が劣化せず、より高密度に現代的になる。
・広域的な国際情報伝達ルートが確立される。 

 海外の災害
 (緊急対応と復旧・復興)

・ナウキャストが的確にできる。
・余震などの観測とその情報伝達が迅速にできる。
・被災後の状況変化に基づいた観測システム自体の復旧・復興が迅速にできる。 

(3)将来の環境創造への貢献

 テーマ

 10年後の達成目標

 道筋

 必要なこと

 人為的な気候変動に伴う悪影響の探知・原因特定

・人為的な気候変動に伴う地球環境変動を探知し、その原因を低い不確実性で特定可能とする。
・気候関連の自然災害に対するロス・アンド・ダメージをめぐる議論に科学的な根拠が提供されると共に、持続可能な発展を阻害するような新たなグローバルリスクの検知やマネジメントが可能となる。 

・地球規模環境変動監視の要となる地球物理量(Essential Climate System Variables; ECSVs)の継続的な観測を行うと共に、十分活用されていない古い地球観測記録の発掘やデジタル化を行って利用可能な時間的・空間的な拡大を進める。
・気候モデルのシミュレーション精度の向上とアンサンブル数の増大を推進して不確実性を減少させる。 

・地球規模環境変動の監視の要となる地球物理量の絞込み、観測体制の構築・維持・強化、技術のイノベーションの促進、地球観測手法の高度化の推進。
・過去の観測記録のデジタル化や、古気候プロキシデータの体系的な収集、アーカイブシステムの構築。
・データの統合やオープンデータ化と共同利用の推進。
・長期地球観測に基づく地球環境変動のメカニズムの解明、ビッグデータ技術を転用した地球規模環境変動の早期探知技術の開発などの推進。
・膨大なデータを統合して人為的な気候変動に伴う地球環境変動を探知し、その原因を低い不確実性で特定可能とする技術開発と実証研究の推進。
・地球規模環境変動観測情報を教育研究の現場や社会で生かせる人材の育成のさらなる推進。
・関係府省・機関間の観測協力体制と安定した観測予算計画の構築。 

 持続可能な活用のための長期海洋環境監視

・人類は海洋から様々な恩恵を受けており、これらの機能を維持していくための継続的な地球観測が必要。
・充分な時空間スケールで、必要とされる項目が全球海洋においてくまなく観測され、得られたデータが可及的速やかに公開される。
・人為的な気候変動に伴う海洋環境変動や生態系変動が速やかに探知され、原因特定のための研究に資するとともに、政策決定に科学的根拠を与える。
・海洋環境の維持と持続可能な利活用の方向性が定まる。 

・既存の観測網の整理と拡張
・重要観測網の維持
・極域観測の強化
・国際協力、国際的枠組みの重要性
・観測イノベーションとして、普及型のpHセンサー、CO2センサーの開発、海洋深層を自動で平易に精度良く計測する技術、生態系変動や生物多様性の示標を計測する技術 

・Essential Ocean Variables (EOVs)の策定
・EOVsモニターのための観測網の維持・更新
・これをインフラストラクチャーと位置づけ、sustainableにする仕組み作り
・自由なデータ流通の維持(外洋)と推進(沿岸域)
・海洋開発・利用を行う際の「環境維持経費負担」の仕組み作り 

 グローバルな地球環境(炭素循環)変動に対する人為的な関与の実証的解明

・気候変動の状態を、国際的な協調のもと、包括的、継続的に観測し、地球温暖化プロセスの理解を深めることにより、気候変動の将来予測の不確実性を大幅に低減する。
・気候変動が大気圏や地球表層圏、生物圏の環境に与える直接的な影響を把握し、特に地球環境変動とその影響に対する人為的な関与を、観測に基づき実証的・定量的に解明する。
・これらの知見は、気候変動の現象解明と影響予測の高精度化に不可欠であると同時に、グローバル及びローカルな気候変動対策(緩和策・適応策)の効果を定量的に評価し、将来のよりよい環境の創造に貢献するために不可欠である。 

<全球的に取り組む課題と道筋>
・恒常的な地球観測の継続維持
・GOSAT-3の開発・運用
・人為起源・自然起源の揮発性有機化合物の発生と輸送に関する観測の継続
・温室効果関連物質の動態の長期監視、国別インベントリデータの精度評価を可能にする観測
・地球環境(全球炭素)監視システムの確立
・観測データを統合利用し、人為的関与を定量評価する解析手法の確立
<地域的に取り組む課題と道筋(特に、国内及びアジア太平洋域)>
・温暖化に正のフィードバックをかける現象の検出
・将来の気候変化予測の精度向上
・アジア太平洋における高密度な地球観測体制の構築
・温室効果関連物質の収支評価手法確立、排出量の高時間分解能での把握
・高い時間・空間分解能を有し、精度検証された排出量データに基づき、各種気候変動対策の効果を評価
・アジア地域で、地球環境保全に資するデータを提供
・産業界との連携による技術開発促進
・衛星観測による森林火災の監視、全球バイオマスの監視、温室効果関連ガスの排出量推定
<特に必要とされる課題および技術開発>
・温室効果ガスや気候汚染物質の、地球規模での三次元大気観測の実現
・化石燃料起源のCO2排出量を、14Cの測定によって推定する手法を確立
・グローバルな土壌炭素への温暖化影響の評価
・地球規模での気候-炭素循環フィードバックの解明・監視 

・既存の観測プラットフォームを活用し、観測の時空間分解能とカバレッジを向上させ、恒常的に主要な地球観測を実施する体制を強化
・民間および公的研究機関に対する新規的観測に対する装置や解析システムの開発予算の助成強化
・人材育成、特に、研究者・技術者に対する長期的に地球観測に貢献できるポジションの確保、開発途上国の研究者・技術者に対する能力開発
・地球観測を担う関係府省・機関や大学等の連携を促進する体制の確立(国内外の連携を促進する拠点の確保)
・地球観測のビッグデータ化に対応する、データの収集・保管・利用促進を行う体制の確立と強化 

 新たな知見の創出を目指した地球科学観測

・地球システムを構成する固体地球、陸面、海洋、大気、電離圏・磁気圏の相互作用及びフィードバック、太陽地球系の結合過程の理解を深める。
<具体的目標>
・ジオスペース環境観測の高度化・広域化と、これによる太陽地球系結合過程の研究基盤形成
・グローバルな大気結合過程と気候影響の解明
・持続的かつ機動的な南極観測・北極観測による地球環境変動研究の実施
・掘削等による全地球システム変動の解明
・リニアアレイ観測による火山ダイナミックスの解明
・地震及び火山現象の理解の深化と、地震・火山噴火ハザードの予測研究の推進
・航空機による機動的広域的大気観測システムの確立、雲・エアロゾル・降水相互作用、温室効果気体の変動と循環、越境大気汚染、メソ降水システム機構の解明
・海洋物質循環や、生物資源の変動メカニズムの解明
・次世代全球地球観測システムの開発と継続的な観測維持
・重要気候変数の観測精度向上、エアロゾル・雲・降水過程の総合的理解、全球規模の炭素循環把握、対流圏の短寿命気候汚染物質の全球規模監視、成層圏オゾン層変動に関わる各化学種の監視、海面高度観測の実現 

・科学観測の健全な策定および評価
・適切な規模および時期での予算化
・新たな知を見出し高めるための継続的な観測予算と研究助成
・次の研究展開に生かすための取得整備されたデータの適切な管理 

・コミュニティ形成とコミュニティにおける計画策定のスキーム作り。「提案」⇒「審査」⇒「策定」⇒「実現」⇒「評価」の機能。コミュニティから出された審査・公認するための組織体制作り
・新しいがリスクも高い観測技術開発に対する予算措置の方策。研究者・技術者の人材育成、企業を含む高度技術の継承
・安定した観測体制の確立(継続的観測維持のための運用費)と研究推進助成
・データのアーカイブ、利用促進を図るための体制の確立と強化 

 

お問合せ先

研究開発局環境エネルギー課

メールアドレス:kankyou@mext.go.jp

(研究開発局環境エネルギー課)