委員 寶・佃・浜崎
頻発する自然災害への対処は、地球観測分野においてもきわめて重要である。防災・減災への貢献という観点から、新実施方針目標を検討した結果を以下に示す。
自然災害や人為災害のリスクを予知し、それを公知(情報提供)し、損失や被害(loss and Damage)を予防あるいは軽減する、また、より良い復興に貢献する。そのためには、国・地方自治体・個人の行動判断(Behavior Decision Making)に資する情報を提供することが肝要である。
国家施策の主流の一つに防災・減災が位置づけられると同様、地球観測においても防災・減災への貢献がきわめて重要な位置を占めていくことになる。
災害リスクは、災害事象の大きさ、被災しうる人・資産の多さ、社会や人の脆弱性によって高まる。したがって、災害事象そのものの観測が重要であると同時に、被災しうる人・資産の存在と変化、さらに災害に対して脆弱な立地でないか、を観測によって把握することも重要である。これらの観測・把握に基づいて災害リスクを減らす防災・減災の施策が展開されることになるからである。
地球観測によって貢献できる防災・減災の項目として、災害事象そのものの観測以外に、以下のようなものが上げられる。
(ア)広域波及災害の予測と被災範囲の画定
火山灰や有害物質などの大気汚染の拡散、地震による津波の伝搬、台風の移動、森林火災の延焼など、広い範囲にわたって起こる事象の予測精度を上げる。災害事象が起ころうとするとき、あるいは、進行しつつあるとき、被災範囲を予測する。被災後に、現地踏査、人工衛星観測、航空機、無人飛行機などにより、被災範囲を確定する。波及現象の予測モデルが必要である。
(イ)予兆現象の検出
大気や地表面(海水面も含む)の様子を常時観測し、温度や地形の変化から、災害発生の予兆現象を把握する。これが実現できれば、防災・減災に大きく貢献できる。過去に起こった火山噴火、地震、台風や竜巻が発生したときの地球観測データを再検討し、予兆現象の検出に役立つ情報を導き出す研究が必要である。
(ウ)被災可能地域(危険地域)のリスクとその変化の把握
都市化、農地化、産業の集積により、被災したときの損失や被害がきわめて大きくなる。こうした被災可能地域のリスクとその変化・拡大の把握を行う。これは、当該地域を常時モニタリングしておき、地形条件・社会条件などからより危険な地域へと変化・拡大することに注意しておくのである。人口、土地利用、農地開発、産業立地といった社会経済的な情報とそれを空間的に把握しておくことが必要である。防災施設が建造されると、災害リスクは低減するので、そうした社会インフラの整備の状況も把握しておかねばならない。こうして、危険地域を予め把握しておくことにより甚大な損失や被害を予防・軽減できる。
従来は、地震、火山噴火、地すべり、台風、洪水、高潮など、災害現象の監視・観測を行ってきた。すなわち、現象そのものを観測してきた。次のフェーズとしては、現象の観測に加えて、現象が起こる場の観測、それらの観測情報を効果的に組み合わせること、そのためのシステムを確立する必要がある。
そのような観点から、新たに設定する分野を列挙すると以下のようになる。
(1)地球観測と災害予測モデルの効果的連動
上記(ア)を考えるとわかるように、観測しているだけでは防災・減災に役立たない。観測データを効果的に予測モデルに用いて、現象の予測を行わねばならない。いくつかの例を以下に挙げておく。
気象観測と気象の予報、予警報システムは、観測と予測モデルの良い事例である。静止気象衛星ひまわり、地上雨量が観測可能な気象レーダ(Cバンド、Xバンド)、地表面に配したAMeDASなどの気象観測網のリアルタイムデータが気象力学モデルと連動して、台風や雨域の移動予測を行い、効果的に予警報が出せるようになってきた。国・地方自治体・個人の行動判断に資する情報を提供できる段階に来ていると言える。しかしながら、大雨をもたらす地形性降雨の予測はまだ不十分であり、洪水、土石流の発生のリアルタイム予測とはまだ十分に連動していないと言える。
大気拡散モデルにより、火山の噴煙や火山ガス、森林火災によるヘイズ(煙害)等の予測はできるであろう。予測精度を上げるために大気に拡散した物質の時々刻々の観測が必要である。大規模の火山噴火を例に取ると、広域な火山灰の堆積による被害や火山灰の拡散による航空機の航行への影響、さらには、地球レベルでの日照の低下による環境変化が引き起こされ、その社会経済的影響は深刻な国際問題となることも考えられる。航空機の航行被害対策のため、国際連携組織が既にできている。国際連携で火山灰の拡散予測精度をさらに上げる取組が必要である。拡散する空間範囲とそれがいつまで続くのか、という予測が重要であり、拡散物の供給源(火山活動や森林火災など)の情報も必要である。活動が活発化した場合の推移予測、気象データと連携した観測情報の提供が可能となるよう国際的連携のもとでの観測の強化が必要である。(なお、放射性ガスを追跡するSPEEDI のようなモデルも発展しているが、放射性ガスを捉える観測技術は難しい課題である。)
地震や海底火山噴火によって発生した津波が、海洋を伝搬する様子を観測する。複数の人工衛星観測と航空機、島嶼における潮位計、GPS搭載のブイなどによる波高観測が必要である。津波の到達時間と到達波高を予測するモデルと連動させる。小さな島嶼は、島全体が津波で水没してしまうかも知れない。遠地津波の場合は、すでに国際連携組織ができている。しかし、チリ地震で日本に到達する遠地津波の予測精度はあまり高くなかった事例があることから、まだまだ改善の余地がある。近地津波の場合は、発生から被災までの時間が短いため、早期警戒情報をいかに早く伝えるかが重要である。
(2)災害データと関連観測データのアーカイブ
地球観測の政府間部会(GEO)第1期では、地球観測の探索フェーズとして、災害に係る現象の把握と解明および社会に貢献できる利用分野を特定することに集中した。また、可能な限りの観測データ(衛星、地上)を収集し、ひとつのデータベースで管理し、共通のゲートウェイで提供できるようになった(DIAS)。
色々な組織によって収集された災害時の種々の観測情報が地球観測データとして保存され、利用されやすくなっているであろうか。たとえば、被災地域やその状況を示したマップや人工衛星画像が災害時の地球観測データとしてアーカイブされているであろうか。まだ不十分であるとすれば、さらなる拡充が必要である。
上記(イ)予兆現象の検出の研究のためには、災害発生直前のその地域の地球観測データが重要である。災害が発生すると、災害前の画像と直後の画像が示されることがよくある。これは、前後の差分を見るために有用である。しかしながら、火山噴火や地震などのようにその場で起こる災害は、災害発生直前までの地表の変動や温度変化などの履歴を調べることにより予兆を把握できるかも知れないのである。従って、発生時および発生直後の観測データのみならず、発生までの履歴観測データも重要である。
国連防災世界会議を契機に、国連開発計画(UNDP)と東北大学との協力により、東北大学災害科学国際研究所に災害統計グローバルセンターが設置された。ここで収集される災害統計データと当該災害時の地球観測データとを連動させ、それを防災政策に活用できるようにできないであろうか。
(3)国際連携と防災人材育成
GEO第1期では、地球観測衛星の持つ広域観測特性を活かして、全球及びアジア地域において、発災直後の被害を把握するシステムが構築され、各種の災害で活用されている。予防段階では、国内の衛星ハザードマップが整備されるとともにアジアの一部の国において衛星データを活用したハザードマップが整備されるようになった。我が国は国際災害チャータに参加するとともに、センチネルアジア等の災害監視に関する国際協力枠組み作りや、「だいち(ALOS)」、「だいち2号(ALOS-2)」によるデータ提供など、国際社会に積極的な貢献を行った。また、アジア防災センターが中心となって推進している世界災害共通番号(GLIDE)の活用を通じて、災害情報の国際共有化を促進してきた。
これらの実績に基づいて、国際連携をさらに進め、広域波及災害の防止・軽減に貢献する。これまでに形成されてきた国際連携の枠組やシステムを持続し維持発展させることのできる人材を各国において育成する。その際、防災・減災に貢献できる地球観測の専門家の育成を図るため、我が国の大学等の教育研究機関、研修機関等も活用する。地球観測に関わる国内の研究者は他の先進国と比べ、決して多くない。引き続き、国際的視点を持つ高いレベルの研究者の育成が必要である。
(4)復旧・復興監視
従来、被災後の復旧においては原状復帰が当然とされてきた。しかしながら、東日本大震災の後、計画規模を超える災害事象、可能最大クラスの災害事象への対応にも関心が高まり、せっかく復旧するならより良い形で再建し復興していくことが望ましいという気運が高まった。後述するように、仙台会議でも復旧・復興段階で「より良く再建すること(Build Back Better)」が優先行動項目の一つに掲げられた。
地球観測の立場からは、復旧・復興がうまく進んでいるか監視することが可能である。それは、必ずしも復旧・復興の建設事業の進展の監視ではなく、被災地の環境の回復状況や、復旧・復興事業によって逆に環境が悪化していないかどうか、新たな災害リスクが発生していないかどうか、といった監視も含む。
たとえば、大規模火災後の森林において、復興段階の森林の状況を定期的に監視する。森林の回復は、地球温暖化対策、山腹崩壊や土砂生産の予防にも貢献できることになる。
平成27年3月に仙台で開催された第3回国連防災世界会議では、前回2005年の神戸会議で採択された「兵庫行動枠組2005-2015(HFA)」の後継となる、「仙台防災枠組2015-2030(SFDRR)」が策定され、2030年までの15年間について防災・減災に関する7つの目標が掲げられた。すなわち、世界レベルにおいて、
(a) 災害による死亡率を大幅に減らす
(b) 被災者数を大幅に減らす
(c) 国内総生産(GDP)に占める災害による直接的経済損失を減らす
(d) 医療や教育施設など重要インフラを強靱化し被害を大幅に減らす
(e) 防災戦略を持つ国の数を2020年までに大幅に増やす
(f) 途上国への支援を大幅に拡充する
(g) 複合災害の早期警戒システムをさらに整備し災害リスク情報にアクセスしやすくする
である。
また、各国が地方、国、地域、地球規模それぞれのレベルで取り組むべき4つの優先行動項目も合意された。すなわち、
1) 災害リスクを理解すること
2) 災害リスク管理のための災害リスクガバナンス
3) 災害に対する強靱性(レジリエンス)に向けた防災への投資
4) 効果的な応急対策に向けた準備の強化と復旧・復興段階において「より良く再建すること(Build Back Better)」
である。
これらの目標や優先行動項目を念頭に置きながら、地球観測が目指すべき10年後の達成目標を考えてみた。
(1)地球観測と災害予測モデルの効果的連動
今後10年のうちにコンピュータシミュレーションはますます進展するはずである。空間分解能、時間分解能はさらに詳細になり、計算時間も短縮する。これと効果的に連動する地球観測データの整備、データ同化技術のさらなる開発が必要である。現地観測、衛星観測、社会経済データとモデルの統合により事前に災害リスクを特定し、精度良く予測でき公知できる体制を確立する。
個々の地域の地震・火山活動は低頻度であっても、活発な地殻変動の場であるアジア環太平洋地域では全体として頻繁に発生している。発生場所によっては我が国に深刻な影響も考えられる(例:中朝国境の白頭山の噴火:10世紀に大規模な噴火があり、東北地方に降灰記録)。すなわち、国際連携により、発生した災害現象を正確に記述して記録に残し(既往災害のアーカイブ)、日本に適用できる現象を抽出し、観測に基づく予測技術・可視化技術・予報技術の高度化を進めることが重要である。
地球観測と災害予測モデルが高度化し、効果的に連動することにより、上記目標の(a), (b),(c)、上記優先行動項目の 1) 災害リスクを理解すること、に貢献する。
(2)災害データと関連観測データのアーカイブ
これから始まるGEO第2期では、防災の主流化として国・地方自治体・個人の行動判断(Behavior Decision Making)に資する情報提供を目指す。そのため、予防、把握及び復興段階の全ての災害フェーズ、さらに国内、アジア地域及び全球の全ての規模に対応できる衛星防災システムを実現する。準リアルタイム監視および全球の重点地域の定期観測の実現のために、衛星コンステレーションや搭載センサ(光学センサ、合成開口レーダ、マイクロ波放射計及びレーザープロファイラ等)の高度化を行う。また、災害関連データの収集、アーカイブにおいても、GEO第2期では国の政策や国連等の戦略に対応した形で、社会・経済活動等の情報を収集、現地観測や衛星観測、モデル出力との統合により発災前にリスクを特定できる体制を構築、能力開発を支援し強化する。
人工衛星による観測データ、各種地上観測データのみならず、土地利用や社会・経済活動等に関する情報・データを収集し、それらのアーカイブから必要なデータを抽出し、統合解析するシステムやユーザーインターフェースを構築する。
これにより、上記優先行動項目の、2) 災害リスク管理のための災害リスクガバナンス、3) 災害に対する強靱性(レジリエンス)に向けた防災への投資、に貢献できる情報提供を行う。
(3)国際連携と防災人材育成
発展途上国においては、高精度で自立的に観測を継続できる体制が整備されるよう、引き続き戦略的に支援が必要である。これにより、将来の観測コストの軽減が期待できるとともに、我が国のリーダシップのもとで情報を共有することにつながる。これまで、地震災害分野では建築研究所国際地震工学センター、洪水災害等の分野では土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)が、国際共同研究や人材育成において重要な貢献を行っている。
国連防災世界会議の直後の平成27年3月19~20日に京都大学で開催された第2回世界防災研究所サミットにおいて、防災・減災に関わる研究組織をメンバーとする世界防災研究所連合(GADRI = Global Alliance for Disaster Research Institutes)が設立された。我が国が主導することによって、こうした国際研究ネットワークを発展させ、世界の防災・減災に貢献することができよう。
(4)復旧・復興監視
地球観測は、地震・津波や火山噴火などの災害直後の被害推定や火山活動を監視し、被災地の定期的な衛星観測を行い、復興計画の立案や実施に貢献することができる。洪水・土砂災害、干ばつ、大規模森林火災に対しては、気象・降水データや土壌水分量データから、国内・海外の危険地域を抽出して、予防段階及び発災後の監視を行う。被災サイトの復旧・復興の様子を継続的にモニタリングするのみならず、復旧・復興によってその後の災害リスクが確かに減少しているのか、悪影響はないか監視・予測する。
上記の優先行動項目4) のなかに、復旧・復興段階において「より良く再建すること(Build Back Better)」が明示されており、実際に被災現場が「より良く再建できているのか」を監視する。
我が国のような観測網や技術の発達した国と、海外の途上国とでは達成目標が異なる。そうした観点から10年後の達成目標を列挙してみた。
観点 |
10年後の目標 |
防災・減災対策への貢献 |
○地球観測による様々なデータが、防災・減災対策に直接役に立つ。 |
日本国内の災害 |
○地震動、地殻変動、火山活動、気象、水文、潮位、GPSなどの高密度の観測網によるデータが、人工衛星、航空機、無人飛行機などによる観測とさらに統合化され、有効に利用される。(予兆現象の検出、リアルタイムの災害予測) |
日本国内の災害 |
○地球観測データが迅速に利用でき、モデル予測やナウキャストが効果的にできる。 |
非軍事面の国際貢献 |
○平時及び災害事象発生に至る段階までの災害関連情報や防災・減災に有用な情報を効果的に伝達できる地球観測体制の国際的枠組を確立する。 |
海外の災害 |
○観測網が劣化せず、より高密度に現代的になる。 |
海外の災害 |
○ナウキャストが的確にできる。 |
(1)地球観測と災害予測モデルの効果的連動
地球観測計画の着実な実施が必要である。特に、防災分野で活躍する「だいち2号」の後継機の計画策定と予算化は継続性のために是非実現しなければならない。
個別の災害予測モデルの高度化とそれを担う研究者の育成、そのための研究費の不断の供給が不可欠である。
(2)災害データと関連観測データのアーカイブ
CEOS(地球観測衛星員会)が毎年発行するハンドブック(2014年12月更新版)には、現在運用しているもの、今後15年間の打ち上げを計画している地球観測衛星についてまとめられており、268の地球観測衛星ミッション、785観測装置が掲載されている。その衛星データベースより、防災に関連する地球観測衛星(光学、合成開口レーダ、降水観測など)は80機を数える。これらの衛星により得られる地球観測データを確実にアーカイブしていく努力が必要である。
GEO、災害リスク統合研究(IRDR)、国際測地学地球物理学連合(IUGG)、科学技術データ委員会(CODATA)、国際科学会議世界科学データシステム(ICSU-WDS)といった国際協働事業、各国のデータセンタによる災害データの収集とそのアーカイブの拡充に協力する。
GEO第2期において、我が国および関係各国の協力のもとにそのためのシステム(DIASなど)の拡充が必要であり、それを維持管理する体制を構築しなければならない。また、巨大なアーカイブ(データベース)から、災害の防止・軽減に有用なデータを抽出するインタフェースの構築も必要である。これらに関する予算化が不可欠である。
(3)国際連携と防災人材育成
2008年から、国際協力機構(JICA)と科学技術振興機構(JST)の協力のもとに地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)を推進しており、世界の20か国以上を相手に防災関係の科学協力事業を行っている。これらの多数のプロジェクトにおいて、研究面での地球観測データの活用、プロジェクトで得られる観測データのアーカイブと公開を進める。同時に、若手研究者や大学院生の育成を行う。
多国間連携として、GEOの災害分野の活動をはじめとして、衛星機関による国際災害チャータ、センチネルアジア等に継続的・積極的に参加する。これらへの次世代人材の参画を推進し育成する。
(4)復旧・復興監視
国内・海外において実際に被災した場所及びおよび今後被災する可能性の高い危険地域を抽出して、予防段階及び発災後の地球観測による監視を行う。復旧・復興によってその後の災害リスクが確かに減少しているのか、悪影響はないか監視・予測する。こうした仕事を担当する組織を、国あるいは当該地域(地方自治体や地域コミュニティー)が作る必要がある。復旧・復興段階における「より良く再建すること(Build Back Better)」の典型的な実例を示せるように地球観測をうまく活用する方法を考えねばならない。また、何をもってbetter と言えるのか、その基準を定めることも必要である。
GEO第1期は、地球観測の探索フェーズとして、現象の把握と解明、および社会に貢献できる利用分野を特定する事に集中した。また、可能な限りの観測データ(衛星、地上)を収集し、一つのデータベースで管理し、共通のゲートウェイで提供できるようになった。
GEO第2期では、成熟したこれらのシステムの拡張に加えて、国や国連等のトップダウン的な防災戦略にあわせて、用途や課題別に最適化されたデータベースをユーザフレンドリーな検索やデータ加工が可能なインタフェース等を含めたシステムとして提供する。
その他、実現の道筋として、以下のようなものが考えられる。
・地震動、地殻変動、火山活動、気象、水文、潮位、GPSなどの高密度の観測網によるデータが、人工衛星、航空機、無人飛行機などによる観測とさらに統合化され、有効に利用されるようにデータ同化・データ活用の新しいパラダイムを構築する。
・高密度観測網を持つわが国ならではの研究成果を他国への防災・減災に役立てる。
・途上国における定常観測の劣化を防ぎ、現代化して国際防災情報ネットワークを構築する。
・低頻度大規模災害(地震・火山災害など)の予測・減災のため、国際連携のもとで、歴史、考古、地質資料などの情報整備を強化し、リスク情報として提供できるようにする。
・衛星観測頻度を高める(日本独自で困難であれば、国際連携を強化)。
・地球観測情報サービスの強化により、経済活動リスクの軽減につながるなど、地球観測を継続的に高度化することの重要性を認識する。
・アジア地域を中心に連携を行ってきたが、アフリカや中南米も視野に入れて、死亡者や被災者の数が大きくなる干ばつや熱波による災害にも着目した地球観測の枠組を構築していく。
地球観測が、海外における日本の経済活動の自然災害リスク、環境リスクの軽減に役立つことを示していく努力が必要である。海外における質の高い情報の入手とデータの更新が継続的に行われるよう、人材育成を含めた人的・組織的ネットワークの構築が重要である。簡便に利用できるサービス環境の基盤が公的に整備されることにより、それを利活用して災害リスク軽減の実用化を担う民間ビジネスの発展につながる。
地球観測は、人工衛星観測(国レベル)、地上ルーチン観測(国レベル、地方レベル)、研究観測(研究機関・研究者レベル)がある。これらと防災・減災とがうまく連動した研究成果(best research)や実務成果(best practice)を、国の立場で収集・整理する必要がある。こうしたとりまとめに基づいて、不足している観測が明らかになる。たとえば、地球観測推進部会のなかに成果調査チームを作って、年々の成果をとりまとめ、防災・減災に役立てられないだろうか。
静止気象衛星ひまわり8号の運用が間もなく開始される。空間分解能の倍増(可視域:0.5~1km、赤外域:2km)、10分間隔の観測時間(日本付近は2.5分間隔)、バンド(チャンネル)数の増加(16バンド)により、気象および地表面の状態がより詳しく観測・監視できるので、防災・減災における貢献のための期待は大きい。この新しい地球観測を防災・減災研究に役立てる仕組みと投資が必要である。
その他、災害の観測・監視において必要とされる項目を以下に列挙する。
・継続した光学、合成開口レーダ衛星
・継続した赤外、温室効果ガス観測衛星
・高分解能のマイクロ波放射計、降水レーダ
・光学立体視センサやレーザープロファイラ(衛星搭載、航空機搭載)の高度化
・光学立体視センサやレーザープロファイラによる高精度DEMの整備
・高分解能のマイクロ波放射計による積雪量、降雪量観測の高精度化。合成開口レーダによる積雪量推定の解析技術の検討。
・衛星コンステレーション(合成開口レーダは観測軌道/観測モードの共通規格化)
・受信局/光データ中継衛星増による提供速度向上
・衛星データ等同化による予報モデルの高度化(数時間降水予測)
・水文モデル、大気モデルの高精度化
・国際協力協定
(以上)
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