第1回地球観測推進部会(5月7日)における委員からの御意見

1.状況の変化

(1)Future Earth (以下、FE)

  • 課題解決という出口に向かって解が得られてこなかったことへの反省から、気候変動研究プログラムの再編とともに、観測についても出口を見据えようとするもの。
  • 課題解決に向けての観測という、観測の在り方そのものが変わってくる可能性がある。課題解決をしなければいけないという世界的な流れの中で、観測をどうすべきか、観測の面から全て課題解決でいいのか、きちんと議論する必要がある。
  • FEと地球観測全般に関する既存のプログラム等を関係させる場合に、それぞれが独立に行うことと、それをどう絡み合わせるのかに注意しなければ、データフローに混乱が生じる恐れもある。
  • 「地球システムの変化をモニターし、予測する」との内容はGEOSSとリンクすべき。
  • GEOSSのようなガバメンタルな話と、FEのようなアカデミア発の動きをどのように絡ませるかが重要。

(2)ビッグデータ

  • 米国大統領が関連のイニシアティブについて発言するなど、産業にも大きく影響を与えるもの。E-サイエンス、E-ジャスティスという、社会の判断への貢献や産業利用も含めてデータへの認識が変わってきている。これらを踏まえデータに関して検討すべき。

(3)災害等

  • 推進戦略の策定(2004年12月)前後から考えても地震(インドネシア、ハイチ、ニュージーランド、東日本大震災等)、津波、洪水(日本、タイ等)等の災害、食料危機(これに対応してGEO-GLAMが発足)、鳥インフルエンザ等の感染症といった人類の危機があった。これらを見直しながら、今後10年の実施計画を考えるべき。

(4)全球地球観測システム(GEOSS)に関する議論

  • 2015年以降のGEOSSに関しては、「地球規模課題の解決」、「持続可能な開発目標(SDGs)の達成」といった課題から遡って、どのような取組をすべきか設定した方が良いとの議論がある。これは、気候変動、災害、水といった各分野は相互に関連し、これらに対応する観測等を個別に切り離すことは適当ではないため。

2.これまでの成果

  • GEOSSの構築については、日本が中心的な役割を担い推進してきた。例えば、水や生物多様性(GEO-BON、AP-BON、J-BON)、森林炭素(FCT、GFOI)などのイニシアチブが立ち上がった。また、アジア太平洋のGEOSSに関する取組を推進するためにシンポジウムを開催してきた。推進戦略に記載されている国際的な観測の取組に関し、日本は世界の中でも貢献してきたと言える。
  • 連携拠点業務(温暖化)を実施しているが、観測についても連携は進んできた。
  • 観測の時間的、あるいは空間的な解像度が技術的に上がったことで、ミクロな場所の情報が得られるようになった。このような8年間の技術開発あるいは科学の進歩と、社会における課題やニーズとを考え合わせて、今までの成果をどう説明するかシナリオを考えることが、次の戦略の見直しに役立つのではないか。
  • 様々な観測は課題解決だけでなく、デイリーのオペレーションに随分寄与している。これまでの観測でどのように改善できたか、何が測られれば更に改善できるか、という成果・果物の絵が必要。
  • 推進戦略では重点分野として、気候、水、災害の3分野をうたった。また、ニーズ主導の地球観測を色濃く書いたが、その一方で新しい知の創造というのもうたっている。
  • 重点化は適切だったと思うが、重点化の再評価や分野の再検討は必要。

3.課題解決へ向けた取組・ニーズに基づく観測

(1)分野間連携、トランス・ディシプリナリ

  • 現行戦略ではニーズ主導がうたわれていたが、FEの議論でもあるように、分野連携(インターリンケージ)や、ステークホルダーの参画により、科学から社会へ知を受け渡し、社会の発展に寄与するトランス・ディシプリナリの視点を強く意識する必要。
  • ただデータをとる、あるいはサイエンティフィックな興味だけでやるというのではなく、出口を見据えた観測、研究は重要。ただし、ステークホルダー間の連携や分野連携についてはやり易い分野とそうでないところとがあることを考慮する必要。

(2)課題解決型の観測と新たな知の創出

  • 政策のため、出口のためだけの観測でいいのか。新たな知見を生み出す発見型の観測の重要性も検討し、目的を明確にして戦略的に取り組むべき。
  • 地球観測は、科学的に未知の地球システムを明らかにし、更に役立つ方向に変えていこうという意識が強い。観測によって新しいものを見つけ出すことが含まれないと、戦略として非常に狭い。
  • 課題解決型の観測だけでなく、地球を知り、誰も知らない発見をし、これからの危機に備えるといった面からの観測も必ず必要であるという視点で書くべき。
  • 課題解決とは、出口が最初から決まっていて、やれば答えが出てくるというものではなく、新しい知の創造が不可欠。そのための観測は課題解決の文脈でも評価される。
  • 課題解決型というのは、知を社会に役立てる道筋を見せるということ。観測データによって直接課題が解決されるものでは必ずしもないが、課題解決を行う側は地球観測の重要性を十分認識している。
  • 第4期科技基本計画において地球観測・予測等についても、我が国が取り組むべき課題を明確に設定して行うとされている。
  • 地球の環境変動の場合、非常にスパンが長いものが多いので、長期的な観測をきちんとやる必要がある。
  • 課題解決の「課題」は、どのくらいの範囲で、時空間を広げて見るかによって変わる。
  • モニターのようなベーシックな観測はいわばインフラであり、課題解決のためにも重要な役割を担っている。また、例えばArgoは、モニターで科学をしようという発想のものだが、新たな科学的発見とモニターは切れない。

(3)課題解決への具体的貢献

  • 地震については、過去の経験から、地震観測の重要性が認識され、関連する観測を気象庁の震度予測に変え、被害を想定し、対策を立案するという流れ、メカニズムが国の取組として決定されている。
    環境問題においても、国がどのような観測を継続し、そのデータをどのような指標に変え、更にその指標に基づいた分析結果を踏まえて対策に生かすのか、意思決定に活用するのか、といった流れを具体的に見せていく必要がある。
  • 気候変動に関して、2度目標を達成する、あるいは、大気中CO2濃度を抑制するための対策を観測とどうつなげるか。また、適応と緩和策と両方含んだ研究と、地球観測がどうつながるのか等、具体的に検討いただきたい。
  • 宇宙空間平和利用委員会においても、持続可能な開発に向けた取組のための宇宙の貢献を明確にすべく活動している。
  • ビックデータサイエンスや技術の進歩で観測やデータ処理が可能となったが、データを使いこなして問題解決型の研究に活かしていくためには、衛星以外にも地上でのモニタリングや観測も忘れてはならない。

4.データ統融合・利活用

  • ビッグデータの最大の特徴は、多量かつ多様性に富んだデータをどう構造化するのかという点。DIASにおいても、データをどう構造化するかが重要。
  • 同じデータも違う目で再構成すると、新たな取組や知見に繋がる。これが可能となるように、保存も含めたデータフローとデータの構造化をすべき。
  • 現在、国では省庁のオープンデータ化、オープンガバメント化を進めようとしている。ある目的のため1次的に得たデータを、ユーザー側の別の目的のため2次利用できるようにすることがオープンデータ化。
  • ただ単にデータが保存され、自由に使えても利用は促進されない。利用者とコミュニケーションし、データやそのフォーマットについて要望を聞き、利用が進む環境を作る必要。
  • データの統合化の部分で共通、国際標準化が重要になる。日本がイニシアチブをとり、継続的にやるという考えを明確にすることも必要。

5.国際的な取組戦略

  • リオ+20で議論されたSDGsは数値目標であり、モニター可能かつ改善状況が把握できないといけないが、この点で科学技術の貢献が求められている。SDGsとリンクした地球観測は国際戦略においても非常に重要。
  • 科学技術外交の推進の中で、地球観測を全面的に押し出すことは重要。現行の戦略はアジア・オセアニアに特化しているが、現在の国際状況も踏まえ、日本の国際的な生き残りをかけ、大胆に踏み出すようなことまで書いていいのではないか。
  • 狭い意味のモニタリングに限って言えば、国際協調できる部分は多く、継続的に行う必要。科学技術外交という言葉もあるが、モニタリング外交とも呼べるような、世界協調の大事な基盤を形成するセカンドトラックを日本が主導することは、次の10年において特に大事なのではないか。

6.その他 (観測基盤、技術開発、観測手法等)

  • 現行戦略で記載されている内容は、今後10年の戦略でも必ず載ってくるようなもの。今度10年の戦略について、特徴ある部分をどう整理するかの議論が必要。
  • 戦略においては、観測の継続性も重要。どう使われるのか分からなくとも、長期にわたって測るべき観測は何であるか、今後10年を見据えることが大事。
  • 地球観測の長期的な観測と評価が求められている中、更なる継続が必要。また、期待される実施計画が十分に達成できていないことも課題。
  • 観測対象には、極めて地域性の強いものや測定方法が個別的なものがある。農業関係でも非常にローカルな観測方法があったり、今までのデータが随分蓄積されているものもあるので、それをうまく生かして構造化する必要。このような観点を忘れてはならない。
  • ベーシックな観測(モニター)も、イノベーションにより変化。たとえば海洋関連の気候観測においては、観測手法は10年で変わる。モニターも科学技術の成果であると同時に、科学的な知を導き出すもの。
  • 観測機器そのものの技術について、世界的な観測の需要が高まる中で、民間の力を取り入れていくような動きを発信してもよい。
  • モニタリングは観測の基盤であり非常に重要。競争的資金で何とか継続していたが、観測成果を強調しないと資金を得られない状況が最近特に強くなっており、基礎の部分がますます脆弱になる懸念がある。戦略においては、これを考慮し、ケアする話をすべき。
  • 観測データを活用し社会に活かす点においては予測も重要。温暖化予測の分野においても、地球状態の大体の把握だけでなく、観測データとの連携の必要性は高まっている。また、観測データと予測モデルを結ぶ技術としてデータ同化技術が発展してきており、観測技術の一分野としてとらえられる。データ同化技術は、観測網のデザインにも実用的に使えるものであり、取り入れることを検討されたい。

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