2.現状認識

1.地球観測の重要性及び「地球観測の推進戦略」について

 推進戦略においては、「地球観測」を「地球環境変動の監視・検出や影響予測等の地球環境問題への対応、気象・海象の定常監視、自然災害の監視、地図作製(地理情報の整備)、資源探査・管理、地球科学的な知見の充実等を目的として、大気、海洋、陸域及び地球内部の物理・化学的性状、生態系とその機能に関する観測を行うものであって、全球を観測対象とするもの、又は地域を観測対象とするが全球の現象に密接に関係するもの」と定義している。他方、推進戦略は、地球観測に対し、地球の理解に関わる研究者に必要な情報を提供するだけでなく、政府や地方自治体の施策決定に必要な情報や、産業界の経営基盤となる情報、一般社会の人々の生活に密接に関わる情報を提供することを求めている。これに鑑みれば、「地球観測データ」の議論に当たっては、これらの自然科学的なデータだけでなく、広く関連する社会経済データも含めて検討すべきである。
  このような多種・多分野にわたるデータを取得し、効果的に利活用していくためには、引き続き、推進戦略の下、国として統一した方針をもって推進することが必要である。これまで推進戦略の下策定してきた「我が国における地球観測の実施方針」の下では、各省庁における取組を網羅的に集約し、推進してきたが、今後は、社会からの要請(ニーズ)に応じた観測を行う観点から、我が国の強みを明示しながら観測から課題解決に至る道筋を明確に描いていくべきであり、それには、中・長期的な視点を持つことが欠かせない。
  これらの観点から、本中間取りまとめ及び今後策定される実施方針は、これまで毎年度策定されてきた「我が国における地球観測の実施方針」に代わるものと位置づけ、より中・長期視点に立った地球観測を推進するための方針としたい(※ア)。
(※ア) CSTIにおける推進戦略のレビュー状況も踏まえ、今後調整する。

2.これまでの取組と成果

  推進戦略の下では、(a)国民の安心・安全の確保、(b)経済社会の発展と国民生活の質の向上、(c)国際社会への貢献の3点を踏まえ、国として喫緊に対応すべきニーズが明確にされた。それを踏まえ、府省連携等や各省の努力により観測が維持され、観測データの提供や公表、観測データの統合・融合に向けた取組が進み、着実に成果を上げるとともに、国際貢献も進展した。これまでの成果の概略は、本部会報告書を参照されたい。
  一方、毎年行われた総合科学技術会議のフォローアップの中で、課題として、長期的な観測体制の構築、観測システムの更新の必要性が掲げられたほか、観測データの提供・公表が進むのに伴い、より一層のデータ統融合、積極的な情報発信、課題解決への貢献のさらなる必要性が指摘された。

3.推進戦略策定後の状況変化

(1)社会状況の変化と科学技術・イノベーションの進展
  推進戦略の策定以降、地球温暖化による影響が更に顕在化し、また気象災害や、地震災害、火山災害等が頻発する中、これらの現象を把握し、対応を検討するための基盤となる地球観測の重要性は増大している。この間の主な状況変化としては、以下の5点があった。
  ○日本企業の海外進出を始めとするグローバル化の進展
  ○開発途上国の発展に伴う環境影響の顕在化
  ○観測技術、情報通信技術の高度化、政府におけるオープンデータ推進などの動き
  ○異常気象の多発、気候変動による影響の顕在化、巨大地震・津波災害を引き起こした東北地方太平洋沖地震や御嶽山における戦後最悪の火山災害の発生
  ○民間主導の地球観測データの利活用の進展

(2)国内からの要請
  国内においては、「宇宙基本計画」(平成25年1月)、「海洋基本計画」(平成25年4月)が策定され、環境の保全、資源の利用、国の安全保障・防災、地球環境変動などの全地球的課題への対応といった観点で、地球観測の重要性が指摘されている。また、「地理空間情報活用推進基本計画」(平成24年3月)、「防災基本計画」(平成26年1月)、「国土強靱化基本計画」(平成26年6月)では、地震災害、津波災害、風水害、火山災害、雪害等に関する研究及び観測の推進等の必要性が指摘されている。さらに、「環境基本計画」(平成24年4月)では、地球温暖化に関する科学的知見の充実に関する課題として「地球環境の観測や、科学的知見の幅広い情報収集を継続していくことが重要であり、そのための基盤を整備していくことが必要である。」と指摘されている。また平成27年度には政府の「適応計画」(仮称)や「水循環基本計画」の策定が予定されるとともに、平成28年度には第5期「科学技術基本計画」が開始される予定であり、科学技術の発展や、地球環境の把握や水循環の総合的管理等の観点において、地球観測がこれらの計画に貢献できる。

(3)国際社会からの要請
  国際社会においては、GEOSSについて、2014(平成26)年1 月の地球観測に関する政府間会合閣僚級会合で採択された「ジュネーブ宣言」において、地球観測データに基づくよりよい意思決定を可能とさせるための技術革新、政策決定者を含むステークホルダーとの連携及び協力の拡大、及びGEOSS の引き続きの発展と機能に必要なリソースの維持が掲げられている。
  一方、地球環境研究におけるシームレスな学際的・統合的研究を進めるため、平成24年の国連持続可能な開発会議(リオ+20)において、「フューチャー・アース」構想が提案された。この構想では、地球環境研究の成果を社会に実装し、最終的に社会変革に結びつけるという目標を達成するため、分野の壁を超えて企画段階よりステークホルダーとともに立案・協働し、相互理解を深めながら研究開発を推進(co-design)して地球の変動を包括的に研究することが想定されており、地球観測もこの分野での貢献が期待できる。
  さらに、国連では「持続可能な開発目標」や、「兵庫行動枠組み」に続く2015(平成27)年以降の新たな防災の枠組みの検討が進められているなど、複数の新しい国際的なイニシアティブが具体化に向け検討されている。

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