静粛超音速機技術の研究開発推進作業部会(第5回) 議事録

1.日時

平成19年5月28日(月曜日) 15時30分~17時30分

2.場所

三番町共用会議室 大会議室

3.議題

  1. 静粛超音速機技術の研究開発 推進作業部会 報告書について
  2. その他

4.出席者

委員

 主査 久保田 弘敏
 委員 井川 陽次郎
 委員 鵜飼 崇志
 委員 大林 茂
 委員 垣本 由紀子
 委員 鐘尾 みや子
 委員 河野 通方
 委員 高原 雄児
 委員 星野尾 一明
 委員 柳田 晃
 委員 李家 賢一

文部科学省

 文部科学省大臣官房審議官(研究開発局担当) 板谷 憲次
 文部科学省研究開発局参事官(宇宙航空政策担当) 池原 充洋
 文部科学省研究開発局参事官付参事官補佐 湊 孝一

オブザーバー

和爾 俊樹、家邊 健吾
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))理事 坂田 公夫
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))航空プログラムディレクタ 石川 隆司
(説明者)
 宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))航空プログラムグループ超音速機チームチーフ 村上 浩

5.議事録

  • 事務局より議事資料の確認があった。
  • 議題(1)について、事務局より資料1、資料2により静粛超音速機 推進作業部会 報告書(案)について説明があった。主な質疑は以下のとおり。

【井川委員】
 報告書案の6ページについて、「また」や「も」といった、弱い表現が多く感じた。むしろ「ビジネス旅客をターゲットに絞った小型のSSTというのは早めに事業化が成立し、将来的に1.5倍の運賃であったとしても50パーセント旅客が次世代SSTを選択する時代が来る」という順序ではないか。
 また、他の委員が入れたところに対する意見として、18ページ、(5)社会とのつながりのある研究開発の部分で、「わかりやすい説明」というのは、高速な旅客機が普及すると社会は変わる、生活は変わる、ということを含めて「わかりやすい」を入れると、身近に感じて応援してくれる人が増えるのではないか。

【湊補佐】
 6ページについてだが、「1.5倍の運賃であったとしても約50パーセントの旅客が」というくだりは、50席クラスの小型機を対象とした数字ではなく、より大きなSSTのものについて検討したものである。それに加え、「また」のところは有識者ヒアリングとして三菱総研の方に報告していただいたが、そこで小型のものについても事業性が成立するのではないかという御報告があったので、それを踏まえて書かせていただいている。
 また、18ページについては、久保田先生からのコメントを踏まえて、「社会とのつながり」というところを入れさせていただいているが、そこについては先生の御了解いただけるのであれば修正をしたいと思う。

【久保田主査】
 ここに入れたのは、技術のための技術ではなく、社会に貢献するのだということを入れたいという趣旨であった。したがって、井川委員がおっしゃったように、これをやるとよくなるんだということも、わかりやすく説明するということでよいと考える。

【垣本委員】
 5ページの高速移動に対するニーズについて、ただ漫然と「目的地に早く着きたい」と書くだけではなく、より早く、より安全に、より快適に着きたいということを含めて書いていただきたい。
 また、SSTを導入することによって旅客者への負担がいかに軽減されるかということも、ニーズのところにアピールしてはいかがか。
 それから、コンコルドからなぜSSTへという説明で、何でコンコルドが今日まで継続できなかったかという理由をつけ加え、だから今日SSTが必要なんだというつながりで、アピールが必要ではないか。
 もう1点、終わりのほうに人的要因という言葉が2カ所出てくるが、最近はヒューマンファクターという書き方が広く使われているので直してはいかがか。

【久保田主査】
 旅客者への負担という文言を快適性や安全性という意味も含めてニーズの中に入れることとする。
 それから、コンコルドが成り立たなくなって次世代へ行くためにはどうすればいいかということは、運賃が高かった、環境適合性がなかった、快適性もなかったというコンコルドの課題を次世代超音速機としては改善するようなものが必要であり、その中で第一のものは環境適合性であるという文章を加える。

【河野委員】
 一番にSSTの意義があり、課題もある。そこをクリアするために、たまたまJAXA(ジャクサ)の旧NALでソニックブームの低減の技術を開発された。これは非常に運がいいことであるが、それらを含めて開発していきたいという書き方にすれば、もう少し開発を行っている人たちの情熱が伝わっていくのではないか。ここに書かれている報告書というのは非常に優等生的で、実現の可能性がこうすればある、意義がある、研究開発はこうやって進めるとなっているが、ではなぜ今そういうことがやれるようになったのかというところがよくわからない。
 それから、資料を見ても、いつまでにやるではなく、今すぐやらなければだめだという書き方になっていないが、その辺りはいかがお考えか。

【久保田主査】
 今、河野委員がおっしゃったのはまさにそうだと思うが、ひっかかったことがある。たまたまソニックブームの研究をしていたのが、ちょうどうまい具合に適合したと言われたが、決してそうではないと考える。コンコルドから第二の超音速機をやろうとすれば三つの課題があり、市場性、技術向上、環境適合性、これは絶対世界中で必要だと言われていて、それで日本にしてもJAXA(ジャクサ)にしてもソニックブームを一生懸命やっていたわけであるから、これはまさに超音速機をやろうということでやっていたわけなので、たまたま合致したというわけではないと思っている。

【河野委員】
 それはやろうと思ってやったから道が開けたということで、実力がなかったらできないわけである。そこは大いに褒めてあげないといけない。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 まずJAXA(ジャクサ)の立場から申し上げると、これは15年ほど前から始まっている日本の超音速機の研究開発の一環として私どもが引き続き長い間やってきたものの幾つかの成果の一つを、ここへさらに飛行実験という形で結実させようというプログラムである。今の委員のご意見がニュアンスとして入っていくのであれば私どもは意を強くしてさらに活動を高めたいと思っている。
 それから、飛行実験をすべきという問題意識は極めて高いので、ここでのご意見、エンカレッジをエネルギーにして今後も実現に向けていきたいと思っている。そのためには委員会だけではなく、日常活動や、皆様のご協力、また、もっとも大事なのはJAXA(ジャクサ)総体としての意思表明と文部科学省との調和ということだと考え、努力していきたいと考える。

【久保田主査】
 資料2については報告書に載るのか。

【湊補佐】
 最終的には航空科学技術委員会と、そのさらに親委員会である研究計画・評価分科会に報告書とセットで提出することになる。

【久保田主査】
 報告書とセットということは、報告書の中に載せるわけではないのか。まとめたものという意味か。

【湊補佐】
 報告書をまとめたものである。どういう形で冊子として綴じていくかは別途考えたいと思う。

【井川委員】
 資料2の件であるが、新聞記者をしていると、新聞記者や世間の人は、報告書を一生懸命書いてもあまり読まずに、概要図ですべてを理解していると感じる。整合性や、世間に広く理解していただくという意味では、本報告書は粛々と無難に書いているところがあるので、概要はある程度事実関係を踏み外さずに世間にインパクトがあるように作っていくというのも一つアピールするのに重要なことではないか。

【湊補佐】
 資料2について改めて御説明申し上げると、先ほど申し上げたように、親委員会等に添付する資料である。内容については、次世代SSTのニーズや、実現に向けてJAXA(ジャクサ)の研究開発のあり方といったところについて、キーワードとなるものを抜き出して書かせていただいている。こちらについてもご意見があればぜひよろしくお願いする。

【久保田主査】
 本資料は、親会だけでなく、社会にも説明するものだと考える。その意味では、我々がやっていることが社会への説明責任を果たすものであると言え、その両方の意味を果たすような報告書になっていればよいかと考える。また、これは推進作業部会なのであるから、推進のためには何をやるかということをもう少しトーンを強くしてはどうか。

【井川委員】
 トーンを強くするという意味では、はじめにの最後があまりにも人ごとのような文章になっているため、ここは修正すべきではないか。
 報告書の中に、開発については「着実かつ迅速に」という文章があるが、着実のほうが先に来ているのはおかしいので、着実と迅速があるところは迅速と着実に順序を変えていただきたい。
 また、はじめにの最後の部分は、「作業部会は結論としてこれを速やかにやることが重要であるという判断をした。それで今後、文部科学省並びにJAXA(ジャクサ)に‐」という流れになるのではないか。
 最後にもう一点、日本が本開発すると全体でお金が幾らかかるかということについて何ら言及がない。世の中に、これが膨大な額なのではないかと勘違いをする人や、10億円程度でできる簡単なものであると誤解する人がいても困るため、どのぐらいかかるかということは、ある程度何らかの形で言及されてはいかがか。額を入れないのであれば、中規模の人工衛星1個分等、例えをつけて入れることによって、プロジェクトとして、予算的には適正規模であることを示しておくべきではないか。

【久保田主査】
 最後の金額のことは、可能であれば出していただいて入れる手はある。また、最初のはじめにについては、はじめにの終わりが弱いということと、全体の構成をはじめにで言っておくのもいいが、今のところ結論がないということが考えられる。結論らしいものは、20ページの最後に書かれてある3行のみである。これが結論だとすると、作業部会は何をやっているんだということになるのではないか。結論をもう一つ章立てして、ここでこういうことは必要である、これを推進する必要があると示すべきではないか。ただ、やりたいという人がやるというのは世の中ではあまり信用されないため、当然信用されるように理解を得ながらという意味も含めた上で、最後のだめ押しとして章立てして明記したほうがよいのではないかと考える。
 それから、議論の間に実用化するのかという話があったが、本来であれば実用化に持っていくように推進していくべきであると書くのが一番いいが、実用化すると書いてしまうとおそらく文部科学省の範ちゅうではなくなり困るであろう。しかし、静粛超音速機技術は実証できそうだということがわかったとしても、研究機だけで終わっていいのかという問題もある。そこのところを結論に入れるかどうかが重要である。つまり、「実用化」と言わないまでも「実用化につながっていくような…」という言い方があるのか、無いとは思うが「研究機だけで終わってしまう」と書くのか、その点について委員の方々の御意見をいただければと思う。

【井川委員】
 ここは委員長のおっしゃったとおり、新たなまとめという章を設けて、「世界的にこの技術に対する期待が高い」、「直ちにできるだけ早く開発に臨む必要性がある」と言うべきではないか。実用化については、十分に専門的な評価を加えた上で、できるだけ実用化を目指すべきであるというのを入れておけばいいのではないか。この辺りの要素はやはり結論として要るのではないかと考える。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 実用化の件であるが、18ページの関係機関等との連携が書かれている留意事項の辺りに期待される記述ではないか。そのような小さなところに置いてよいかという議論はあると思うが、産業が育っている部分について文部科学省が書き切るということは難しいため、ここではJAXA(ジャクサ)の役割のみが書いてあるが、委員会の報告書であれば他省庁への提言といったことを委員会からいただくこともあり得るかと考える。一度委員会でSTOLの議論をさせていただいたが、その時も実用化についての活動が不足であったため、その点はしっかりと留意して作らなければいけないという話があった。そのような議論のまとめとして、報告書の中に盛り込むことよいのではないか。

【井川委員】
 STOLが開発に手間取った最大の要因としては開発に時間を費やしすぎたということがあり、開発における迅速性というのは重要である。実用化ということについてどう考えるのかを、章か両括弧つきで文章で書くこととし、その部分に実用化をにらむ上で基礎レベルの研究開発を迅速かつ着実にやらなければいけないという前提を入れ、その上で専門的な評価を加えて速やかに国が産業界と協力して実用化を目指すという方向性を決めるべきだという文言を入れればいいのではないか。

【河野委員】
 研究費等は非常に流動的で大まかなものであるので、わかる程度で書いていただき、我々の決意を示すというところで親委員会に上げればよいのではないか。

【鐘尾委員】
 実用化のところがとても弱く感じる。今の諸般の事情から見ると、日本国内で独自の実用化は難しいと考える。STOLの場合は時間がかかりすぎ、どこにも使われなかったということがあるが、SSTに関しては世界の現状を常に把握して、そのニーズにあった形で技術開発ができており、日本だけではなく、どこかの実用化につなげていくというスタンスで書けないものか。

【和爾補佐】
 今、実用化の話をご議論いただいているが、将来、実機の開発ということになると私ども経済産業省が主体的に取り組んでいくという話になってくるだろうと考えている。SSTの将来の実機の開発の姿は、いろいろな案があり、SSBJ、50席クラス、300席クラス等々、様々な可能性がある現段階では、特定のものは書きにくいと考える。ただ、将来的にどのような実機が出てきた場合においても、本研究開発の成果は必ず生かされるであろうと考えている。そのような意味から私どももこの研究開発は前向きにとらえているが、まだはっきりと議論されて整理されてきてはいない段階で、この報告書の中で実用化の話を踏み込んで章立てまでしてお書きいただくというのはいかがなものかと考えている。
 また、先ほど幾つかコメントが出ているが、いずれにしてもこの出口というのは、将来SSTは必ず国際共同開発になるだろうと考えており、そのときに日本として主体的に参画できるような高い技術を備えておく。それにこの研究開発の成果がつながっていくと。そのように理解をして記述していただければいいのではないか。例えば、第三期の科学技術基本計画を決めたときに戦略重点分野ということでSSTも入っているが、そのときの書きぶり等も参考にしながら工夫してみたらいいのではないかと考える。もちろんこの成果は実機の開発に将来役に立ってほしいと考えているが、具体的なところは、これからの議論だろうと思っているので、その点はぜひご配慮いただきたい。

【久保田主査】
 必ずしもどういう形のもので実用化すると書く必要はないと考える。最終的には、国際協力という形になるかもしれない、または、どこかが開発に使ってくれるかもしれない。しかし、出口としては、19ページにもあるように、産業界がこの成果をどう使うかということによって決まってくると考える。したがって、産業界からの評価も高いということはすでに書いているので、産業界が取り入れて実用化につながるということは出口として明らかにしておいてもよいのではないか。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 12ページに国際共同開発の一員となると書いているが、研究開発が終わった後に、それをどういう筋道で提案するのかという部分が書かれていない。したがって、この数行の後に、これを実現するのにその後の成果を発展、展開する仕組みとしてここでは何が語れるかというのをまとめていただければよいかと考える。

【井川委員】
 経済産業省の方がおっしゃるのはそのとおりであるが、やはり私は章が要ると考える。ただし書きぶりは、研究開発の具合を見つつ、これは本格的に実用化の議論を遠からずやらねばいけないということを入れた上で、その形態についてはいろんな議論があるため、例えば「どのような体制でどのようなものを開発するのかということの本格的な議論を期待する」、あるいは「進捗状況を見つつ、本格的な議論に入らねばならない」等、そのような当然の道筋は入れておいても何ら問題ないのではないか。なおかつ、過去にSTOLで、実用化の議論、あるいはマーケットや、航空環境の十分な現実を踏まえた対応や議論ができなかったことで、結果として実用化につながらず、研究開発のための研究開発で終わったという批判を招いたことを踏まえ、実用化をしっかりと章立てで入れていたほうがよいのではないか。

【板谷審議官】
 今、経済産業省の和爾補佐からお話があったが、おそらくまさに現在の航空機の産業を取り巻く状況だと思う。当然ながら本研究開発を実施するということになれば、目標というのは、ただ単に研究のための研究ということではなく、実用化を目指した、実用化につながる要素研究を確実にやっていくということになる。この研究開発をいかに次の実用化につなげていくかということについては、関係者間でいろいろ議論していくことになっていくと考える。したがって、やはり要素技術をしっかりと持っておきたいということを明言していくということが一番大事なことではないか。かえって、実用化の時期や姿に言及しようとすると、議論がまとまらないのではないかと思う。その点をぜひご留意いただければと考える。

【久保田主査】
 技術開発をして世界に誇れる技術をここでやろうという点はよいと思う。次にその技術は何かというと、超音速機の技術向上と同時に環境適合化技術を何年かの間にプロジェクトとしてやろうということである。先ほどから議論になっているのは、皆さんは当然そう思っていて、研究のための研究で終わるのではなく、もちろん技術力は上がるがことも考えているが、その上で「飛鳥」の教訓も考えると、実用化というのはその先にあっていいのではないか、それを期待しようという話である。和爾さんがおっしゃられたようにどういう形のものにするというのは、いま書けないというのは当然なので、これが実用化につながることを期待するということで、審議官のおっしゃることと大きな違いはないと考える。

【井川委員】
 実用化についてどういう可能性があるのかは、そこまで細かく書く必要はなく、多分10行も要らない。ただし、遠からず実用化に向けた議論をしないと、研究のための研究をやっているのではないかという疑惑を招きかねない。コンコルドの課題の中で、一番大きな課題の一つを日本が取り組んで、その進み具合によって迅速に世界並びに国内等で実用化の議論につなげていくという記述は、あってしかるべきではないかと考える。

【李家委員】
 2点あって、1点は非常に細かいことで、18ページの6.他の課題への取り組み等というところで、航空路とか運航方式の検討が想定されるというのがあったが、おそらく超音速旅客機となると現行のパイロットにも新たな訓練等必要なことが多々出てくると思うので、運航する人に関する何らかの検討も必要ではないかと考える。
 それから2点目、静粛超音速機を出すにあたり、さまざまな機体形態を検討した上でJAXA(ジャクサ)が本当にできること、かつ効果があって世界のためにも役立つこととして、JAXA(ジャクサ)の持っている低ソニックブーム技術と数値解析技術を連携してやれば、世界の中でも非常に高い成果か上げられるということで静粛超音速機という話が出てきたと思う。
 そういった点を踏まえて、この報告書を考えると、JAXA(ジャクサ)が持っている数値解析技術によって超音速機のために絶対不可欠なソニックブーム低減ということが可能になるということがもう少し強調されてもいいではないか。報告書では言いにくいかもしれないが、資料2の中で、例えば今ソニックブーム低減というのを機体全体で行うことができるのは日本だけで、これをやらないと世界が先に進まないとまで言い切ってもよいのではないかと考える。だからこの静粛超音速機を今日本で一生懸命、研究開発すべきであると。そういう多少強めの言い方をしてもよいのではないかと考える。

【鐘尾委員】
 13ページの知的財産権の確保のところで、他国に先駆けた特許の取得と言っているが、資料2のほうでは知的財産権の確保という言葉を使っている。知的財産権というのは特許、実用、意匠、商標と言われる工業所有権のほかに、もっと広い概念なのでほかのものも入るため、他国に先駆けた特許等の知的財産権の確保という書き方にしたほうがよろいのではないかと提案させていただく。また「電子デバイス等の例を持ち出すまでもなく」という文章は要らないのではないか。

【井川委員】
 電子デバイスにこだわっているわけではないので、知的財産のご専門の立場から今おっしゃったような、広がりがあるのであれば異論はない。

【鵜飼委員】
 結局この中でJAXA(ジャクサ)の研究開発の一番大きなイベントが実証機の飛行だと思うが、確かにこれは全体の論旨はそうなっているが、実証機を飛ばすというのがなかなか明確に見えてこないという印象がある。その辺りは工夫されてはいかがか。

【高原委員】
 先ほど意見があったように、飛行実証の必要性という記載が13ページにあるが、いまひとつ弱いと思う。何で飛行実証をやらなければいけないかという部分が一言、風洞ではできないと書いてあるだけである。もしソニックブーム低減の実証が簡単にできるのであれば、ソニックブーム低減と離着陸騒音低減、低抵抗化、軽量化という四つの事を淡々と実施すれば良いことになる。ソニックブーム低減の実証を実機でやらなければいけないというところにこの研究開発の特異性があると理解しているので、ソニックブーム低減についてはどうしても実証、飛行機を作ってやらなければいけないということをもっとアピールする必要があると考える。
 また、飛ばすことによって他にも派生する技術を獲得できるという部分があると思うが、その辺のアピールも足りないのではないか。残りの三つの技術についても、ついでにやるような感じになっているので、その辺りを整理されてはいかがか。
 もう一点、残りの三つの技術について15ページのところ、日本航空機開発協会で今回掲げているよりも高い目標を掲げており、JAXA(ジャクサ)がやる 25ページにある揚抗比8.0という目標は航空機開発協会が定める8.6よりは低いわけだが、8.0をやることによって引き渡すという意味なのか、文部科学省がやられている静粛超音速機技術の中では8.0を目標にするのであれば、なぜ8.0なのか、その辺りはどういう道筋となるのかについての説明が必要と考える。本研究開発事業がプロジェクトかプロジェクトではないかと、大きな話になっているのは飛行機を実際に作って飛ばすからだと考える。したがって実際飛行機を飛ばすことによる意義等をもう少しアピールし、200億でCFDの検証だけかと言われないようにする必要があるのではないか。

【JAXA(ジャクサ)(村上)】
 飛行実証の必要性については、以前この委員会でも説明したとおり、ソニックブームは、大気の密度勾配等々が、地上での発生に大きく影響するがゆえに飛行実証なしにソニックブームの低減実証実験はできない。例え地上において、これから新たに設備を作るとしても、そのような地上設備を作ることはできない。したがって飛行実証が必要である。
 それから技術目標について、経済産業省の目標とJAXA(ジャクサ)の目標に幾分の違いがあるということについては、JAXA(ジャクサ)が出している技術目標というのが、小型の超音速旅客機を対象としたものであり、サイズが違う。あるいは粘性抵抗に対する比率が違う。基本的にJADCのものは大型を対象とした揚抗比や軽量化の目標と我々はとらえている。我々としては技術的な検討を行い、大型のSSTに比べると二回り、三回り小さい小型SSTで考えると、揚抗比8以上となった。我々の技術のレベルでは8から8.7の間であるが、その中で小型のSSTが事業の成立性があるということで確認した上でその設定をしている。重量軽減も同様である。

【李家委員】
 今のお話のように要抗比8.6はこの表にも書いてあるが、ある意味では見通しが立っている数字だと考える。したがって、本当のJAXA(ジャクサ)の言っている目標は参考資料2の28ページの揚抗比の性能のところの10.5という数字であり、JADCの言っている8.6に対応した数字ではないか。この報告書を見る限りでは、JAXA(ジャクサ)のほうが厳しい要求を出しているような気がした。その辺りが報告書を読むと誤解を招くような表現になっているのではないかと感じる。

【高原委員】
 25ページの表題の「当面」というのは2012年までという意味なのか。2012年だとすればJADCの目標とどういう関係になっているのかわかりにくい。静粛超音速機技術の技術課題は大きく分けて四つあると理解しているが、その四つについての全体の見通しはやはり要るかと考える。実証機を飛ばしてソニックブームというところに焦点が当たっているが、その四つについての研究が成就するとどうなるのかについての見通しの提示が必要と考える。また、予算を獲得する上ではなぜ飛ばさないとできないのか、その辺りの理論武装が必要ではないかと考える。実際、飛ばさなければ実証できないというのはわかるが、航空自衛隊のF15を使って飛ばしたらどうかということも言われる可能性もあると考える。その場合、それではだめだという根拠もいるのではないかと考える。

【JAXA(ジャクサ)(村上)】
 いろんな方法施策はあろうかと思う。例えばアメリカなどがやっているように先端のブームだけを何とか下げる。これをやるとアメリカがやったことと何ら変わらなくなるが、そういうことであれば例えば既存機を改修して、大幅にコストを抑えてということになると思う。しかし、ソニックブームは2カ所大きな音が出るのであるが、JAXA(ジャクサ)で言っている最終的にSSTに求められる低減というのは、その両方を下げるものであり、両方を下げるためには機体全体の最適化をしなければいけない。したがって、既存機の機体全機を最適化するということは新機を作ることと何ら変わりない。その中で我々が提案させていただいているのは、最小規模で地上の計測で確認でき、その設計技術を実証できるということを現在200億規模ということで提案させていただいている。

【高原委員】
 報告書の中に書く必要はないと思うが、その辺りの説明が一番重要になると考える。

【JAXA(ジャクサ)(坂田)】
 15ページの数行の部分はもう少し関連づけた記述があったほうが誤解を受けないかもしれない。事務局と工夫をさせていただきたいと思う。

【星野尾委員】
 14ページ真ん中あたりの、飛行実証をやるための試験機という記載だが、突然無人機でやるという言い方になっている。その辺の理由づけもあったほうが理解してもらいやすいのかと考える。

【柳田委員】
 我々は飛行実証、地上実証を含めて、実証試験と言っているが、実証された技術は信用して開発に使う。実証されていない技術は具体的な効果、コスト並びスケジュールに及ぼす影響等が判断できないので、開発には用いず聞き置くだけとなる。そういうこともあるので、ぜひ飛行実証、地上実証を含めて早く実証していただいて、それを開発に使えるようにしていただきたい。

【板谷審議官】
 それは産業界の常識ということか。

【柳田委員】
 はい、今回のボーイングとの787の交渉の場合でも言えるが、実証されない技術は特に外国では信用されてないと理解している。

【久保田主査】
 きょう伺ったご意見は最終的な報告書に反映させていただくが、きょうが最終の委員会なので、事務局と私に御一任いただきたいと思う。できたものはまた委員に見ていただくのか。

【湊補佐】
 そういったところも先生と御相談をさせていただきながら進めたいと思う。

【久保田主査】
 ということで御一任いただきたい。

(了承)

  • 事務局板谷審議官より委員へ全5回に渡る審議の御礼の挨拶があった。
  • 事務局より資料3により、前回の議事要旨の確認があった。その後、今後の予定について説明があった。

─了─

お問合せ先

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(研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付)