資料3 核融合研究推進のロードマップと必要な施策に関する方向感について(案)

核融合エネルギーの実用化に向けた長期的研究開発の戦略において、とくに「原型炉」の建設に至るまでの研究開発のロードマップを総合的かつ詳細に検討し、合理的かつ高い国際的競争力を有する推進体制を実現するための施策を明らかにすることが必要。とりわけ、目標達成のために必要不可欠な課題を明らかにして、国をあげた取り組みに研究者・技術者の協力を求めるとともに、効果的な組織・体制のありかたを示し、また研究の進展をチェック&レビューする具体的な手続きの制度設計を示す。

1.研究推進のロードマップ

1)原型炉とは

『ロードマップの「目的地」を具体的に定義する。「目標値」の意味づけ(エネルギー・環境問題の視点も含めて)を具体化する必要がある。』

2)ITERおよびBAの位置づけと役割

『ITER計画を具体的なテーマに分節化し、チェックポイントを定義して、それぞれがもつ意味を原型炉へいたるロードマップ上に位置づける。 』

3)国内で解決すべき研究課題

『ITER・BAは国際協力で進められるプロジェクトであるが、これを推進するために必要な国内の基盤研究について、それぞれの役割・効果を具体化する。原型炉に至るために必要な全ての研究開発を総括し、ITER・BAを補完するプロジェクトをリストアップする。』

 1. 大型装置研究の合理的な展開

 ・ITER

  全日本によるITERの準備・支援研究 →全日本によるITERにおける共同研究

 ・BA

  JT-60SA:高自発電流による定常化

     全日本による準備・支援研究 →全日本による共同研究

1. ・FERC

   IFMIF/EVEDA → IFMIFによる照射実験

・LHD:最高性能化(重水素実験)
・FIREX-1  (→ FIREX-2)

2. 原型炉方式決定のための検討体制の確立

 ・原型炉戦略(原型炉ミッションの定義、課題の抽出、R&D、長期的ビジョン)

       全日本として全体を見る ←→分担してR&Dを進める

   設計とR&Dの緊密な連携

 ・全日本的な原型炉設計チーム

・工学設計活動の構築 (概念設計 → 工学設計 → 原型炉建設)

3. 工学研究の推進

・ITER-TBMの開発→材料工学とリンクしたブランケット工学→先進ブランケット
・原型炉向けダイバータ→ 先進ダイバータ材料の開発 → 実用化に向けた開発
・原型炉用コイルの開発
・Li-6の濃縮技術  
・トリチウム関連技術(初期装荷トリチウムの入手)
・メンテナンス手法開発
・ヘリカル原型炉に向けた工学研究 (基本設計→実規模・実環境試験)
・LIFT工学設計→ 繰り返し工学試験
・規格基準検討
・環境安全性評価手法の開発、リスク評価と社会受容性

4)研究推進の整合性(完結性、合理性、高度化、重層化)

『上記3)で網羅した計画が、核融合エネルギー開発計画として完結したものであること、合理的であることの立証。我が国の核融合研究が国際的にトップの水準であるためには、核融合に関連する広範な学術・技術の重厚な知的ストックおよび諸分野との有機的な融合を維持・発展させる必要がある。また、長期的展望に基づく大規模で計画的な研究開発とともに未発の可能性にチャレンジする独創的研究や、成果を他分野へ転換する学際的研究が重層的に構想される必要がある。これらを含めた計画の全体像に、整合性をもたせる。』

・研究課題の洗い出しと分担化、競合化、スケジュール

   国際事業であるITER、IFMIFとの関係

・全日本的な原型炉検討とIFERCとの関係
・産業界の開発への参画
・双方向型共同研究などによる核融合理工学の体系化
・人材育成

ITER、 JT-60SA稼働までの研究者の維持と育成、ポストの配置、人事交流のための制度設計

・核融合フォーラム・ITER/BA技術推進委員会と核融合ネットワークの役割
・資金や人員の円滑な流れを確保する制度の構築

5)ロードマップとチェックポイント

『上記3)および4)で総覧・分析した全体計画を「ロードマップ」としてダイヤグラムにして示す。それぞれの研究計画・プロジェクトの連関を「チェックポイント」を連接点とする交差として示し、原型炉に至る研究開発の「流れ」を明示する。』

2.残された課題と必要な施策

1)収斂させるべき研究/展開させるべき研究

『原型炉建設に直結する開発段階では、これまで広角的に展開してきた研究開発を巧みに収斂させ、人材と研究資源の集中化をはかる必要がある。さらに、「核融合研究の推進に必要な人材の育成・確保について」で分析したように、今後より多くの人材を投入する必要があることから、この分野の研究開発が独立化するのではなく、境界領域を一層幅広くし、他分野との連携や融合によって機動的な人材を確保することが必要となる。また、第一世代の原型炉の改良とともに、より先進的な概念の研究など、核融合研究はさらに長期的な課題となろう。このために、収斂の他方で展開の戦略をもたねばならない。より集中化し同時に多面化する核融合研究の全体像と、それを可能にする体制の在り方を示す。』

2)進路決定の仕組みづくり(そのサポート体制)

『研究開発戦略のロードマップは、精密な地形図の上に進路を線引きしたものでなくてはならない。全体計画が目標達成可能であるための必要要件を洗い出すとともに、多様に展開する研究開発を一つの目標に向けて収斂させるための方向付けを行う。現段階では未決定の事項について、どの時期にどのような基準で判断を行うかのプロトコルを定めておく必要がある。ここでは、1―5)のダイヤグラムで示したチェックポイントにおける意思決定と合意形成の仕組みのありかたを提言する。これは核融合研究開発に携わるコミュニティーの協力と支持を受けるものでなくてはならない。』

3)喫緊の課題とその解決に向けた施策

『研究開発戦略のロードマップ(1―5のダイヤグラム)上で分析された喫緊の課題について、具体的な施策を提示する。』

 1. 原型炉設計を担う組織

・国内原型炉戦略組織:概念設計の確立と課題の抽出、中枢課題の実施
・国内原型炉設計チームの構築
・原型炉設計組合のような連携組織
・FIREX-2からLIFTへの展開を担う新組織

    論点:IFERCとの関連、概念と工学設計活動の分担と統合、産業界の参画

 2. 工学研究開発の加速プロジェクト

 ・材料開発とリンクしたブランケット工学

 ・先進ダイバータ材料の開発

   論点:BA活動との分担と新組織

 3. ITER/BA活動への取り組み

 ・準備・支援研究のための競争的基金

 4. 核融合炉の社会的認知のための活動

 ・原型炉政策課題の明確化

 ・社会的受容性

4)国の方針と研究現場の関係

『核融合エネルギー研究開発戦略のロードマップは、国の長期的な環境エネルギー戦略のビジョンに基づいて推進される必要があるとともに、核融合研究開発に携わるコミュニティーの協力と支持を受けるものでなくてはならない。長期計画が固定化・硬直化しないために、全体計画の方針作りと研究開発最前線の状況とが、常に綿密なコミュニケーションに基づいて、整合をはかられる体制がとられなくてはならない。ここでは、具体的なチェックポイントとともに、チェック体制の在り方を提示する。』

お問合せ先

研究開発局研究開発戦略官付

(研究開発局研究開発戦略官付)