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資料7

電子顕微鏡研究開発・利用推進検討会報告書
【概要】

志水隆一主査(大阪工業大学教授)のもと、幅広い有識者を集め、今後の電子顕微鏡に関わる研究開発・利用推進のあり方・方向性について検討


1. はじめに
  電子顕微鏡は、対象とする物質・材料を原子レベルで直接観ることを可能とする強力な分析・解析装置
これまで我が国は電子顕微鏡の製造及び応用技術において世界に冠たる歴史を誇ってきたが、欧米で次々と国家プロジェクトが展開されてきた結果、収差補正技術を中心とした性能向上の技術開発において、欧米がリード
電子顕微鏡を中心とした分析技術のニーズを把握して、性能・機能向上に向けた研究開発を産学官が連携して推進し、この分野におけるイニシアティブを維持していくことが必要

2. 電子顕微鏡をとりまく状況
  電子顕微鏡は、原子レベルの構造観察、元素分析、状態観察を可能とするユニークな分析・計測機器であり、低倍率の広域観察からナノ領域に絞った高分解能観察を連続的に行えることが特徴
電子顕微鏡市場で日本製品のシェアが減少するとともに、周辺機器では外国製品へ依存
近年、欧米では電子顕微鏡の高分解能化、高機能化に向けた研究を積極的に推進
次世代電子顕微鏡に求められるニーズを明確に把握し、“国際競争力と国民生活に資する”といったグランドデザインに基づく戦略的・積極的な開発が必要

3. 電子顕微鏡に対するニーズ
  構造材料、磁性材料、カーボンナノチューブなどのナノ物質、高温超電導体などの材料分野では、ナノレベルの構造観察と元素分析などに向けた、高性能化やスペクトロスコピー(分光分析)の高度化が求められている
半導体分野では、測長などの検査用に加えて、デバイス解析用に大きなニーズがあり、特に3次元的な元素分析・構造評価および素子中の電磁界分布の観察などに向けた、高性能化、3次元観察の実現および電子線ホログラフィー技術の向上が求められている
バイオ分野では、生体や細胞の高精度かつ様々な環境下での観察などに向けた、3次元観察やその場観察の実現、解析用ソフトウエアの開発、画像検出・記録系の高度化が求められている
電子顕微鏡に対する共通ニーズでは、高度な専門性の必要な画像解析や3次元形態解析などにおける自動解析が可能な電子顕微鏡や、製造現場などにおける操作容易型電子顕微鏡が求められている

4. 次世代電子顕微鏡システムを開発するための技術的問題点
  1) イメージングの高度化においては、電子光学系ではレンズの収差、電子ビームでは電子銃と高圧電源の安定性が課題であり、また電子線ホログラフィーでは、可干渉性の高い高輝度電子源とともに下記の画像検出・記録系の高度化が必要
2) スペクトロスコピーの高度化においては、X線分光器ではエネルギー分解能、軽元素分析、検出効率の向上が課題であり、EELSでは光源の単色化やアナライザーの高性能化が課題
3) 画像検出・記録系の高度化においては、リアルタイムでのデータ処理、大口径検出器、フーリエ変換などの情報処理能力をもつ検出器の開発が課題
4) 3次元観察・その場観察など様々な状態観察の実現においては、試料ホルダーおよび解析のためのソフトウエアの開発が課題
5) 電子顕微鏡の高度自動化においては、操作・機能などの自動化および制御システムの構築が課題

5. 研究開発の視点
  日本が得意な技術領域をさらに伸ばすとともに、高性能システム構築のボトルネックとなる技術領域の研究開発に特化
我が国においてこれまでに開発された独創的な技術のうち、次世代電子顕微鏡に活用の可能性のある要素技術の掘り起こしが必要

6. 早急に取り組むべき研究開発課題
  電子顕微鏡を利用した様々な研究開発分野の強いニーズと、電子顕微鏡技術開発における欧米との競争が激しい技術領域において、5年から10年後を見た場合に必要な次世代電子顕微鏡開発のための課題は次の通り
  1) 高分解能イメージングに関する要素技術の開発(電子光学系の高度化に関する要素技術の開発及び高輝度電子ビームの実現に関する要素技術の開発)
2) スペクトロスコピーの高度化に関する要素技術の開発
3) 画像検出・記録系の高度化に関する要素技術の開発
4) 動的な3次元観察・その場観察の実現に関する要素技術の開発
5) 高度自動化された電子顕微鏡に関する要素技術の開発

7. 推進に当たっての方策の基本的な考え方
  産学官連携体制による戦略的な研究開発を進め、開発段階からユーザーである研究者と協力して機器を作り上げていくことが必要
今後、研究開発を行う電子顕微鏡について積極的に共用化を図り、若手研究者が先端の電子顕微鏡に接する機会を広く提供するとともに、それを支える高度支援技術者の育成が必要


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