安全・安心科学技術委員会(第12回) 議事要旨

1.日時

平成19年8月24日(金曜日) 10時~12時

2.場所

三菱ビル 地下1階 M1会議室

3.議題

  1. 平成19年度「安全・安心科学技術プロジェクト」の選定結果について
    <採択課題について>
    ○ウォークスルー型爆発物探知システム
     高田 安章 株式会社日立製作所中央研究所 主任研究員
  2. 平成19年度「安全・安心科学技術プロジェクト」の選定結果について
    <採択課題について>
    ○ ミリ波パッシブ撮像装置の開発
     佐藤 弘康 東北大学大学院工学研究科 助教
  3. 平成19年度「安全・安心科学技術プロジェクト」の選定結果について
    <採択課題について>
    ○ 有害危険物質の拡散被害予測と減災対策研究
     加藤 信介 東京大学生産技術研究所 教授
  4. 平成20年度予算概算要求に関する事前評価について
  5. その他

4.出席者

委員

 板生委員、井上委員、大野委員、岸委員、札野委員、堀井委員

文部科学省

 森口科学技術・学術政策局長、川原田科学技術・学術政策局次長、吉川科学技術・学術政策局総括官、戸渡科学技術・学術政策局政策課長、生川科学技術・学術戦略官、水元安全・安心科学技術企画室長

オブザーバー

 松尾委員高田安章株式会社日立製作所中央研究所主任研究員(有識者)、佐藤弘康東北大学大学院工学研究科助教(有識者)、加藤信介東京大学生産技術研究所教授(有識者)

5.議事要旨

(1)水元室長から、資料1「「安全・安心科学技術プロジェクト」の選定結果について」と資料2「「安全・安心科学技術プロジェクト推進委員会」について」の説明の後に、高田主任研究員より資料3「ウォークスルー型爆発物探知システム」、佐藤助教より資料4「ミリ波パッシブ撮像装置の開発」、加藤教授より資料5「有害危険物質の拡散被害予測と減災対策研究」についての説明及び質疑応答がそれぞれ行われた。

(委員会での合意により審議内容を非公開とする)

(2)水元室長より、資料6「平成20年度「安全・安心科学技術プロジェクト」」、資料7「平成20年度「安全・安心科学技術プロジェクト」事前評価票(案)」の説明が行われた後、意見交換が行われた。

【板生主査】
 昨年度は安全ということを重視した形をとったが、今年度は科学技術を用いて、安心な社会をどうつくるかということを1つの焦点として議論をした。今年度の議論の一つのポイントは、地域における社会的な課題に対して、人間行動学的、人文・社会科学的な知見を動員しつつ、科学技術によって解決を図るということである。文科省からはこれに対して研究開発課題を公募するという説明があった。また今年度始めたテロ対策の研究開発の方も引き続き予算措置がとられた。今年度のプロジェクトに関して議論したい。

【札野委員】
 テロ対策の研究開発に関しては、開発したものを使える人たちを同時に育てておかないと意味がないのではかという気がする。例えば、どこかの自治体に実装したときに、どういう人材をどういうふうに配置しておくべきか、といったようなプロジェクトを一緒にやることはできないか。こういう人間科学的な側面が地域社会の安全・安心につながっていくと思う。

【水元室長】
 大事な視点だと思う。ニーズとシーズをしっかりとマッチングする、現場のユーザーの意見を聞き使えるようにするということを重視し、例えば防災訓練とタイアップするなどのことをしていく。テロ対策の場合、例えば空港当局や警察当局が使用者になるので、タイアップを前提条件として応募していただいき、それを審査して課題を選定している。

【川原田次長】
 人材に関する視点が必要だというのは同感。こういうことが得意な方に応募いただいて、タイアップしながらやっていくという提案をしていただければ、非常にありがたい。

【板生主査】
 テロ対策のこのプロジェクトが公表されて、それに対する提案をさらに公募で集めるというような形があるかもしれない。

【井上主査代理】
 日米安全・安心科学技術協力イニシアティブでは、文科省を中心に他の各府省庁が連携するような体制が一応できているが、今回の3つの課題の実装を考えていくと、やはり他省庁との連携が必要になる。どういうふうに普及させていくのか、連携の枠をそろそろ考えておいたほうがいいと感じる。

【水元室長】
 この公募をする際も警察を初めとする関係者と連携し、またこの4月には警察庁との間で研究開発を進めるための枠組みを作った。日米のイニシアティブについても、具体的には科警研の先生方にも中心となっていただいており、さらにしっかりと連携していきたい。

【川原田次長】
 先生のご意見は、研究開発の成果が出たものを実際に政策として生かしていくための体制整備のことだと思う。おっしゃるとおりだと思うが、今は内閣官房を中心にNBCテロ対策の体制の整備を図りつつあり、そこに研究開発の成果を入れつつ、対策をさらに強化していくというやり方があると思う。また、体制整備が不十分だということであれば、さらに強化するような法的な枠組みなどを検討していくということは当然我々も想定している。研究成果がかなり具体的なものになってくれば、それを組み込んだ形で、体制整備も並行的にやっていくということになる。

【井上主査代理】
 あまり一般論でやっていても、話が進まないと思う。

【大野委員】
 発表があったような、非常に先進的な要素技術の開発が物になりそうだとなった段階で、どこか別のチームが受け皿の部分をつくっていくことも必要だと思う。
 例えば、今もいろいろなセンサーのシステムや交通量のシステムがあるするが、ネットを介してそれを自由に相互接続できるかというと、なかなかできない。相互に情報交換するという視点は、先端で開発している方にはなくてもかまわないが、バックグラウンドで、それらを将来相互接続する部分というのをつくっていかないと、何年かしたら、日本のテロの検査システムはすごくいいけれど日本だけでしか使えない、ほかの国は全部別の統一されたシステムを使っているなどということになりかねない。こういうことは実際、携帯電話などで起きてしまっている。どこかのタイミングで、世界的に連携させる、あるいは標準をつくってそれをもとに開発するというようなことをした方がいい。将来の実用化や大規模発展を考えたときにリーダーシップをとる視点がすごく必要だと思う。そういうところの議論をどこかでするとおもしろいのではないか。

【岸委員】
 特にアメリカなどは、標準化というのをすごくやっていて、TSAでは標準化しているし、放射性物質の検出器の関係などでも、ホームランドセキュリティーの分野に関しては公表されているところがある。日本ではまだそういう意味での標準化が出てきておらず、結局アメリカで標準化してつくったものを日本に導入して使っているという現状になっている。標準化というのはなかなか難しいが、ある程度国際標準を視野に入れた日本の標準化というのをやっていかないと、この先ちょっと難しい話になるという気がする。

【大野委員】
 10年先、20年先まで生き残るためには、今標準化の議論も含めておいたほうがいい。

【川原田次長】
 全くおっしゃるとおり。国力というか国自身の発信力によるところがあり、日本はかなりおくれていることは確か。
 行政実務としてやっているのは、外務省と経産省だと思うが、我々もできるだけ標準化をにらんだような努力を、経産省に要請したり、あるいは外務省に要請したりしたいと思う。ぜひ先生方も現場のレベルからも突き上げてほしい。解決策としては国力を上げるということになるので大変な話だが、ぜひそういう視点を持ってやっていきたい。

【井上主査代理】
 何を標準化したいのかということを早く議論しておき、働きかけ、そこでのイニシアティブをとれるようにするとよいと思う。アメリカの場合は、空港の装置は完全にデファクトスタンダードにしてしまった。

【板生主査】
 私は光ディスクの標準化をずっとやってきたが、標準化の戦略で大事なことは、特定の技術を世界が使いたいという形になることで、そうならないとなかなかリーダーシップをとれない。そういうことを考えると、世界のトップの技術に磨き上げつつ広げていかないといけないという2つの難しさがある。技術についてもまだまた実はバックアップしなければならないことがある。
 今日お聞きしたのは採択した3つの課題の発表で、すべてすばらしいのですが、実は六十何件あった応募の中には、まだいっぱいいいものがあった。予算枠が決まっていて仕方がないが、本来はもっとたくさんの技術を並べてみてから選ぶ話に持っていかないといけない。今の段階であんまりまとめるより、もう少し広げていろいろ動かしてみて、そしてその中からこれはという形に持っていくというのも1つの考え方だと思う。

【川原田次長】
 研究開発の部分の予算要求については、できるだけ広げたいと思っているし、JSTの戦略にも採択されるよう努力していく。

【板生主査】
 次に「地域の安全安心」に移るが、地域については、テロと並立しているようなので関係がないように見えるが、実際には非常に関係を持ってやっていくというのが今日の1つの意見だと思う。
 地域社会というところも、キャッチフレーズとしては訴えるものがあるのかなと思われる。地域社会とは一体何なのかと問われたときに何と答えるか、またどういう定義をしておけば、皆さんが間違いなくそういうふうに思っていただけるか。地域社会というのは、生活空間という意味に近いのではないか。

【水元室長】
 検討の中で地域差、環境差を考慮するようにということで、こういう視点を入れた。イメージとしては、国民が生活する場という意味合い。自治体という枠組みもあり、もう少し別の違ったコミュニティーということもあり得ると思う。実際に生活している人たちの安全・安心につながる、そういう意味の生活者という視点で考えている。

【堀井委員】
 やはり地域というのは少しあいまいに考えて、大切なことは多分ユーザーと一緒にやることで、ユーザーが特定できれば地域の意味というのがおのずと決まってくるだろうと思う。あんまり厳密に地域とは何かということは決めずに、むしろテーマごとにふさわしいユーザーというものを取り込んでいくということが大切なのではないか。
 ここに盛り込めなかった部分については、JSTの戦略創造の中で多分やっていくということになると思うのだが、その戦略創造のところで一体何ができるのか、ここで挙がっているものとの間に有機的な補完関係が構築できるのかということが大切である。

【板生主査】
 文科省の内局でやる話は政策的でもあり、かなり現実社会に沿うべきということなると思う。JSTはむしろ、どちらかというと社会基盤のような、基盤技術みたいなものを確立していただくことになるので、その辺の切り分けが必要ではないか。

【水元室長】
 JSTの戦略創造は、やはり科学技術の発展、それから新産業の創出という観点から、革新的な新技術を創出していく観点が非常に大事で一貫して貫いていると思う。その一方で、安全・安心、特に経済的価値よりも社会的な価値を目指していくときに、場合によっては技術的な革新性はそれほど大きくはなくても、社会に役立てられたときに非常に大きな効果をもたらすようなものとか、そういう観点での公募あるいは審査というのが必要ではないかと思っている。
 この安全・安心科学技術プロジェクトの研究開発課題は、3年間でちゃんと研究成果を出して社会に実際につなげていただく、ユーザー側ともよく連携をとっていただくということをやっており、少し時間がかかる革新的な技術開発には時間的に大変なところがあるので、こういう予算要求をさせていただいてはどうかと考えている。

【井上主査代理】
 従来だと戦略創造は、今説明があったように、技術側からの言葉でくくっている。戦略創造は今の枠組みでずっといくのか、あるいは少しそういう発想を変えてもらえるのか。

【堀井委員】
 それは非常に重要なポイントで、システム技術みたいなものをどうやって革新的なものを国として育てていくのか。そこはやっぱりちゃんとした理念を持ち、区別してお金をつけていくということが大切である。

【井上主査代理】
 システム化の部分を突き詰めて考えれば、かなり新しい技術というのもあると思う。いろいろな技術を組み合わせてニーズにこたえていくというところがなかなか説明しにくい。だからおそらく相当難しいのではないか。

【板生主査】
 CRESTの安全・安心のための先進的統合センシング技術の応募に当ってはシステム技術または基盤技術というような申告を一応してもらい、その上で審査をしている。
 システム化技術というのは科学技術になじまないという議論がよくあるが、私自身は反対に、システム化技術というのはすごく大変で泥臭く、ものすごくいろいろなことを考えなければならないものなので、これも科学であり、技術だという気がしている。実はこの難解さをうまく説明する技術がみんなに不足しているのではないか。特に文科省の内局でやるものは、革新的な技術というよりはむしろそれをどう社会に実装していくかということが中心になると思う。JSTは基礎・基盤技術をやる、という住み分けになる。

【札野委員】
 先ほどの、69件の申請があってその中にはすごくおもしろいものがたくさんあるという話に戻るのですが、昨年度の検討のときに、文部科学省として安全・安心に係るいろいろな情報を共有できるようなプラットフォームをつくっていくんだという議論があったが、その69件の中で公開してもいいという情報に関しては、一度公開していただいて、これに対して、人文・社会科学系の人たち、あるいはシステムを考えている人たちが、その辺の技術をどう使えるのかということを考えてもらうような場というのをつくってもいいのではないか。そういうことが存在していることを、多分人文・社会系の人たちは知らないと思う。

【板生主査】
 69件の中でもうまく一緒にするといいようなものもあったりするので、先生方の了解を得られて、リストアップされていけばおもしろい。

【堀井委員】
 安全・安心にかかわる知・技術の共有化という部分は、社会技術研究開発センターとグローバルセキュリティセンターでやられるということだが、ぜひやっていただけたらよい。安全・安心にかかわる科学技術のポータルサイトみたいなのをつくり、きちんと類別されていて、クリックすると研究者の成果とかホームページとかに飛ぶような形にすると非常にいいのではないか。

【水元室長】
 その方向で検討を進めさせていただきたい。

【板生主査】
 委員会の結論としては、今年は文科省からご提案いただいたような形で進めていただき、検討をさらに深めていただくということを要請して本委員会を閉じることにしたい。

以上

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