安全・安心科学技術委員会(第10回) 議事要旨

1.日時

平成19年7月17日(火曜日) 16時~18時

2.場所

JST社会技術研究開発センター 第1会議室

3.議題

  1. 安全・安心科学技術について
    <有識者ヒアリング>
    ○ 実験心理学と安全問題の一端:視覚的注意・認知・安全性
     三浦 利章 大阪大学大学院人間科学研究科 教授
  2. 安全・安心科学技術について
    <有識者ヒアリング>○ 仙台地域知的クラスター創生事業先進予防型健康社会創生クラスターについて
     今井 建彦 仙台市経済局産業政策部産学連携推進課 課長
  3. その他

4.出席者

委員

 板生委員、井上委員、大野委員、岡田委員、岸委員、土井委員、中村委員、奈良委員、原委員、札野委員、堀井委員、松尾委員

文部科学省

 森口科学技術・学術政策局長、川原田科学技術・学術政策局次長、生川科学技術・学術戦略官、井上安全・安心科学技術企画室長

オブザーバー

 三浦利章 大阪大学大学院人間科学研究科教授(有識者)、今井建彦 台市経済局産業政策部産学連携推進課長(有識者)

5.議事要旨

【板生主査】
 時間になりましたので、第11回安全・安心科学技術委員会を開催させていただきます。本日はお忙しいところ、また暑いところありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。
 まずそれでは議事に入る前に事務局に人事異動があったということですので、そのご報告と、それから配付資料の確認等を井上室長お願いいたします。

【井上室長】
 まず人事異動につきまして、ご報告させていただきます。7月6日付で科学技術・学術政策局の次長をしておりました袴着が異動となりまして、後任に川原田が着任してございます。また7月11日付で、計画官という組織が、新しく科学技術・学術戦略官という組織に、変更してございまして、その関係で、私の隣におります生川の名前が計画官から戦略官に変わってございます。以上でございます。次長何かありましたらお願いします。

【川原田次長】
 科学技術・学術政策局次長の川原田でございます。私は原子力施設から見た安全・安心を五、六年前に担当しておりまして、リスク管理等々につきまして考えたことがございます。今度はもっと大きな視点から検討を行う安全・安心科学技術委員会ということで非常に楽しみにしております。ぜひ先生方に引き続きご検討のほどお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【井上室長】
 では引き続きまして本日の配付資料を説明させていただきたいと思います。お手元の資料の一番上に議事次第が乗っていると思います。その下に資料1「実験心理学と安全問題の一端 視覚的注意・認知・安全性」、その次に資料2「仙台地域知的クラスター創成事業 先進予防型健康社会創成クラスターについて」、その次に資料3、これは昨年の委員会で一度ご議論いただいた資料ですが、A3の横長の紙、「人文・社会科学面からの取組の視点の例」がございます。その次に資料4「安全・安心科学技術の重要研究開発課題について」(検討のまとめ)(案)がございます。その次に資料5、これまでの委員会におきます主な意見をまとめた資料がございます。
 今日は、有識者として大阪大学の人間科学研究科の三浦先生においでいただいているということもあって、人文・社会科学の取り組みについて議論が及ぶかと思いまして、その参考としていただくために資料3を用意しました。また、お手元の机上に青い冊子があると思いますけれども、JST社会技術研究開発センター安全安心ユニットで人文・社会科学分野からの取り組みについて本年2月に報告がまとめられておりますので、これも本日の議論のご参考にということで配付させていただいております。以上でございます。

【板生主査】
 それでは議事に入りたいと思いますが。4月よりこの本委員会で検討を行ってまいりました安全・安心科学技術の重要研究開発課題につきましては、本日は取りまとめを行うという、そういう時期になりましたので、ぜひご協力をよろしくお願い申し上げます。そういうことでまず事務局のほうからこの検討のまとめのうち、前回お示しいただいたものから変更があった部分等について簡単にご説明をいただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

【井上室長】
 それでは資料4をごらんください。変更があった部分につきまして、説明をさせていただきます。1枚おめくりいただきますと、2ポツに「安全・安心科学技術の考え方の整理と重要研究開発課題抽出の視点」とございます。3行目のところが削除してあるんですが、「『安心』の確保については、どのような取組を行うべきかという手法を模索しているという段階」という部分、ここにつきましては、これまでいろいろと安全・安心についての取り組みも実際に行われておりますので、書き方を変えまして、「『安心』の確保については、様々な取組があるものの、その手法は確立していないといえるであろう」と書いてございます。
 次に、この2ポツの3つ目のパラグラフでございます。削除してある部分について、「リスクアセスメント」と書いてございましたけれども、リスクアセスメントというと、取りようによっては非常に狭い定義を取り得る可能性もあるため、ここをより丁寧に説明させていただきました。「社会現象の予測・評価を行い、起こりうる危機の予測・解明、回避・軽減方法の探求、危機発生時の対処方法の探求、危機の人間や社会への影響評価等」と書いてございます。
 その次のパラグラフでございます。ここのページの一番下のほうで2行削除してありますところに「リスクコミュニケーション」や「ユーザーへのフィードバック」等と書いてございます。このリスクコミュニケーション、あるいは教育といったところも、これはまさに要素技術の1つと考え、あわせてシステム化するということが大事ではないか、と考えてこのパラグラフを変更しております。読み上げますと、「そして、以上を踏まえ、要素技術を適切に統合化するとともに、社会システムとの整合性が取れた、安全・安心を達成するためのシステムを構築することが重要である。また、ここで言う要素技術には、リスクコミュニケーションや教育といったいわば社会的な技術も含まれていなければならない」と記載してございます。
 次のページをごらんください。「2.予測・評価フェーズ」のところについて、微修正ですが、「リスクを評価」と書いてございましたけれども、ここも非常に狭い意味でとらえられ、ミスリーディングな面もあるため、より広く、「社会現象を予測・評価する」と書き直してございます。
 また3.のシステム化フェーズのところでございますが、先ほど教育やリスクコミュニケーション、こういうものも要素技術としてシステム化していくということをご説明しましたが、同じ趣旨で修正を加えてございます。また、このページの一番下でございますけれども、この委員会でも随分同様のご意見をいただいていた点だと思いますが、特にこのシステム化フェーズにおいては、「国民がリスクの実態を理解し、どう対処すれば安全かを知ることによって安心すること、また実際に危機が発生したときに、社会として冷静・的確に対処することによって被害を最小限にとどめることの重要性を念頭にシステム化を進めることが重要である」という文言を加えてございます。
 そのほか3ポツに微修正をいろいろ加えてございますが、これらについて一つ一つは説明しませんが、基本的にはこれまでにこの委員会でいろいろいただいた意見で漏れていたところ、これまでいただいた意見をもとにつけ加えておいたほうがいいと判断したものを事務局のほうでつけ加えさせていただきました。以上です。

【板生主査】
 はい、ありがとうございます。これは後ほどいろいろと議論をしていただくことになりますが、その前に本日おいでいただきましたお2人の先生方にお話をいただくということで、ヒアリングをさせていただきたいと思います。
 途中で退席される委員もいらっしゃるとのことですので、このヒアリングの後にすぐご意見、討論をいただくということにしたいと思います。それよりも、今ご意見をいただいたほうがよろしいでしょうか。では、ちょっとだけ5分ぐらいの時間を取りまして、ご意見をいただくということにしたいと思います。
 突然言われてもなかなかないでしょうが、もしあればよろしくお願いいたします。なければ先に進んでいきたいとは思いますが、よろしいでしょうか。
 それではヒアリングのほうに入りたいと思います。本日はこれまで重要であるという発言が非常にありました人文・社会科学の観点からの研究と、それから地域住民とか市民の健康に関する取り組み、この2つの話題につきまして伺いたいと思っております。有識者として今日お越しいただいているのは、大阪大学大学院人間科学研究科、三浦利章教授。それから仙台市経済局産業政策部産学連携推進課、今井建彦課長様でございます。まず最初に三浦先生のほうから、実験心理学による安全確保ということに関する研究についてお話をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【三浦教授】
 大阪大学の三浦でございます。このような場にお招きいただきました井上室長に感謝申し上げます。この会議では随分広範な問題を扱っておられるようにお見受けいたしておりますけれども、私は実験心理学という立場から、やや細かい話になりますけれども、主に安全性、特に交通安全にかかわる実験に関して紹介させていただきます。
 よく私たちは申し上げます、“To Error is Human”と言いますけれども、まさに人間とはエラーをするものであるということで、その人間のエラーの背景には一体どんな水準があるんだろうということなんですけれども、1つは個人レベル、これは心理、生理、身体。個人間レベル、これは人間関係、コミュニケーション。組織レベル、管理、あるいは組織の雰囲気。社会文化レベルといろいろございますが、本日お話いたしますのは個人レベルの主に心理、その中でも人間の情報処理といった観点からお話しいたします。
 私の研究室、適応認知行動学、Applied Cognitive Psychologyと申しますけれども、主には人間の認知、注意のメカニズムと、実際に存在するさまざまな問題や現象、これは安全、危険、事故の問題、あるいは機器の操作性の問題ですけれども、それに関する基礎研究と応用研究を行いまして、成果を学術と社会に還元するという立場で行っております。本日主にお話し申し上げたいのは、この視覚的注意の時空間特性ということで、私たちが見るということと注意、これがどういうふうな関係があるのかということをお話しさせていただきます。
 提供話題ですけれども、はじめに簡単に注意についてのデモンストレーションをさせていただきまして、次に注意の広がり方の問題、それから注意の奥行き方向、遠近方向での広がり方の問題、それから注意の事前・事後効果、これはカーナビゲーションの問題ですけれども、そういったことの実験を紹介させていただきまして、まとめていきたいと思います。
 デモンストレーションですけれども、赤いりんごは幾つあるでしょうかと言いますとすぐにおわかりと思います。今、わかられたと思うんですけれども、黄色いりんごは幾つありましたか。これ、全く自信を持って答えられる方がおられたらこれはびっくりしますけれども、まさにフェイントのようなことですけれども、結局注意していないものは、あるいは見ようとしていないものは見えていない。注意を向け方がゆえに重要であるわけですけれども、注意を必死で向ければそれで私たち、あらゆるものを認識できるのかということなんですけれども。
 2枚のスライドが順次提示されます。それが時々、一部が変わります。どこが変わったかお気づきになったら手を挙げていただきたいと思うんです。すみません、ちょっとうまく動いていたんですが、今、動きませんので、これ省略させていただきます。今ので申し上げたかったのは注視点、すなわち視覚的注意の向けどころと認知内容の対応関係があるということをデモンストレートしたかったんですけれども、ちょっとうまくいきませんでしたので、ただし見れば必ず内容がわかるのかということをさらにデモンストレートしたいと思います。
 これは盆栽を見ているときの視点の移動なんですね。これはアイカメラという装置を使いまして人間が各瞬間どこを見ているかということをとらえることができるわけです。こういった道具を使いまして結果を整理しましたのがこれです。この白い丸があるところがこれが注視箇所なんですね。白い丸が注視箇所。これも白い丸が注視箇所です。プリントにはもう出ておりますが、どちらかが盆栽のことを知らない人間で、どちらかが盆栽のことを知っている人間が見た経路なんです。盆栽にもしご趣味がある方ですと、どちらが盆栽のプロだということがおわかりになると思うんですけれども、実際にはこのようにこちらが素人で向こう側がプロということになっておりまして、盆栽のポイントの1つは幹筋、枝振り、それから根張り、鉢なんですけれども、プロは確かにポイントとなるところを見ておりますが、素人の場合はまさに枝葉末節、葉っぱのあたりばかり一生懸命見ているということになります。見た直後に、今見たやつを思い出して絵をかいてくださいと言いますと、素人はこんな形、もうクリスマスツリーみたいな典型的な木で、鉢も典型的な鉢で、実際にはこういった直方体のものですけれども洗面器のようなもの。ところがプロの場合にはポイントをついたところを全部頭に残しているということで、まさに見る目がなければ見えていないということも言えるわけです。
 以上がデモンストレーションですけれども、より実際的な問題としまして、交通場面での交通事故に絡んで問題を取り上げます。動画がうまく動きませんが、これが先ほどと同じように四輪車を運転しているときの注視点の動きです。こういったときに、運転しているときに、これが注視点なわけですけれども、この注視点のところだけを見ているかと言ったら、もちろん私たちそうじゃありません。その周りのある程度の範囲が認識されています。視点が次々に移動していって、大体全体の様子を把握することができる。これが私たちの認識の基礎になっております。
 ここで問題として取り上げますのは、日本の交通事故では、昔から現在もそうなんですけれども、市街地の中小の交差点での事故が頻発しております。こういったところですと一般的にドライバーは比較的よく注意しているのに、どうしてなのかということなんですね。ただし予備的に目の動きを調べてみますと、混雑した場面に行きますとドライバーは頻繁な注視移動を行います。頻繁に注視移動、すなわちいろいろなところを見ているにもかかわらず事故が多いのはどうしてなのかということを考えますと、そこで有効視野の狭窄ということが考えられます。これはどういうことかと申しますと、これ、ここが注視点です。この周りが有効視野、すなわちこの注視点の周りで同時に注意の及ぶ範囲、認識可能な範囲、これを有効視野と申します。混雑したところでは有効視野がこのように狭いので、それゆえに一生懸命、注視点を移動しているんだろうということです。それに対して混雑していないところならば、有効視野がこのように広いので、そんなに頻繁に注視点を移動する必要がないのだろうということを考えますと、有効視野が果たして実際にこうなっているのかということを調べてみたわけです。
 実際にはアイカメラ、注視箇所を調べる装置を装着しまして、フロントガラスの内側にアクリルパネルを張りまして、そこに小さな光点、豆球を15個ほど並べまして、そのうちのどれか1つがランダムな時間間隔で点灯するという実験を行いました。具体的にはこれが運転席から見た場面ですけれども、光点がつきましたけれども、運転しながらこういった光点がつきますと、音声で「はい」と返事をしながら運転をしてもらう。さまざまな混雑の程度のところでこういった実験を、実走行の場面で行ったわけです。
 それで具体的には詳しいことは申しませんが、光点がつくまでの目の動きと、光点がついて発見したときの目の位置、この関係から有効視野というものを推定するということを行ったわけです。その結果ですけれども、縦軸が、こちらが有効視野の広さを示しております。上が広いわけです。こちらは反応時間、気づく速さですね。上はおそいです。横軸ですけれども、これが停止している状態、それから混雑していない一般道路、それから混雑していない高速道路、それから一般の幹線道路、混雑した商店街という順序に並べております。これでごらんいただいてわかりますように、混雑すればするほど、すなわち注意の必要性が大きくなればなるほど、有効視野は狭くなる。それに伴って対応して反応時間、気づく速さは長くなるということがこのような形でわかったわけです。ちなみに一般的に高速走行で視野が狭くなるということが言われておりますけれども、あの話は全く根拠のない話でございます。
 そこで疑問として出てくるのは、注意の必要性が伴って、一生懸命注意を払おうとしているのにどうして有効視野は狭くなるのだろうかということなんですけれども、その答えを端的に申しますと、注意には広さと深さがあって、それは両立しないということです。何かと言いますと、この山ですけれども、ここが注視点でこの山の高さは注意の深さを示しております。山のすそ野の広さ、これは注意の広さ、すなわち有効視野の広さを示しております。この山の断面積、これがあるところを見ているときに使うことのできる心理的なエネルギー、すなわち注意量を示しております。混雑した場面になりますと、このように注意を深めなければならないので、自動的に有効視野、山のすそ野は狭くなる。それに対して混雑していないところでは注意を深める必要がないので、山のすそ野、すなわち有効視野は広くなるということで、結果的に混雑した場面では一生懸命目を動かすんだけれども、どうしても抜けたところが出がちである。それに対して混雑していないところだと目を少し動かすだけで全体をカバーすることができる。結果的に先ほど言いました中小の混雑した交差点で事故が頻発しているということの1つの原因は、混雑した場面で注意を深めるので、有効視野が狭くなり、抜ける部分があらざるを得ないということになります。
 今の実験から言える実際的な示唆ですけれども、注意には限界があるということです。混雑場面でこそ走行速度も抑制が必要である。交通環境の整備が必要である。さらにカーナビゲーションの安全性の問題、すなわちカーナビゲーション、比較的細かいものを注意深く見なければならないので、ますます有効視野が狭くなる。それからさらには酒気帯びの運転基準、これは本日紹介しませんが、それから高齢者では有効視野がどうなっているんだろうか。あるいは技能・訓練によって有効視野を広めることができるのかどうかというふうな問題がさらにございます。
 続きまして高齢者の場合にどうなのかということを簡単に紹介させていただきます。具体的に行いました実験ですけれども、1つの課題は中心課題といいますけれども、単純に「あ」「お」「ぬ」「め」という平仮名が順次瞬間的に提示されます。被験者は「あ」が出てきますとそのときだけ「あ」と答える。ほかの文字が出たら回答する必要はない。それに対しまして今度は周辺課題なんですけれども、例えば一番外のこの楕円に注目してください。光点が次々に点灯していきます。そのときに時計回りで順番に点灯していくんですけれども、時々1つここから飛んでしまったり、あるいは元の位置にとどまったり、あるいは逆に戻ったりします。これは全体の20パーセントしかございません。してもらうことはレギュラーな点灯であったか、イレギュラーな点灯であったか、これを判断して答えてもらうということをします。第3番目の課題は先ほどの平仮名の検出の課題と、今の周辺に点灯する光点の規則性の判断の課題、それを同時に行うという課題を若者と高齢者、高齢者の平均年齢は74歳ですけれども、それで行いました。
 その代表的な結果なんですけれども、縦軸が反応時間、周辺の光点に気づく速さです。こちらが高齢者、こちらが若年者です。最も差が出るのはここなんですね。ここは何かと言いますと、「周辺二重課題の非規則的標的」と書いてございますが、中心部で平仮名の弁別をしなければならない。あらわれたら答えなければならない。と同時に周辺に出てくる光点の出現の規則性を判断しなければならないということを同時に行った場合に、若年者と高齢者の気づく速さの差は最も多くなる。すなわち高齢者の場合には有効視野の狭窄が起こるわけですけれども、特に予想外の周辺視対象の発見のおくれという形で出てくるというのが1つの結果です。
 これがどうして起こるのかということですけれども、模式的に示してみますと、注意の偏り、すなわちこちら側に標的が出てくるだろうと、左側に出てくると予測しているときに、逆に右に標的が出てきた場合、先ほどの有効視野の山を示しているわけですけれども、有効視野の山の形を変える、この注意の勾配の偏りの修正の効率、これがどうしても高齢者の場合には悪くなっているのではないだろうかということが考えられるということです。
 その次、今までお話ししましたのは二次元平面状での上下左右方向での注意の広がりの話ですけれども、今度、同じ視線上で奥行き方向で注意はどのように働くんだろうかということを調べてみました。具体的にはこういった、約13メートルあります大きな装置の中に被験者がいすに座ってずっと入ってまいります。そのときにここを注目していながら、この標的と一緒に入っていくわけですけれども、そのときにこの標的が入ったときに、どこかに光点がつきます。その光点が標的よりも手前に出たか、向こう側に出たか、その判断をしてもらうというタスクを行っております。これが装置の概観です。こういった形で入っていくわけですね。こういったときにここを注目しているわけなんですけれども、注目点の前後に光点が出現してくる。そのときに光点の位置を判断するという課題を行ってもらいます。
 実験装置の中でとまっている場合と、前進移動していく場合と、これでどのように違うだろうかということを比較したわけです。細かいことは省略いたしまして、1つの、私たちが見出した大きな特徴は、これは時速40キロで入っていった場合の結果なんですけれども、この点に注目していただきたいわけですけれども、この点は予期が外れた場合、すなわちこの点は遠くに出るだろうと構えているときに、光点が実は近くに出てきた場合の光点の検出反応時間です。それに対しましてこちらは近くに出るだろうと構えているときに、実際には予想外に遠くに出てきた場合の気づく速度です。注意の切りかえる遠近距離はこの場合もこの場合も同じなんです。だけど近くから遠くに切りかえる場合には、遠くから近くに注意を切りかえる場合よりも、時間がより、かかってしまう。逆に申しますと、近くに出てきた予想外の対象には、移動事態では人間は速く気づくことができるというのが、1つの私たちが見出した結果です。
 それに対しまして静止している状態では、この近くから遠くに注意を切りかえるのと、遠くから近くに注意を切りかえる、この差が少なくなっているというのがさらに特徴で、移動事態では人間には予想外の近くの対象に対して素早く気づくことができるという仕組みがあるんだということが見出されたということです。こういったことを私たちは「注意のラバーバンドメタファー」というふうな呼び名をつけております。
 すべて先に出してしまいますが、今のような注意の切りかえの方向による効率の相違ですけれども、これはとまっている場合よりも、これは移動事態でより顕著になるということです。それと予想の妥当性の効果、これは二次元よりも三次元で、より強く出てきます。それから安全の生態的な妥当性を持つ、これは先ほど申しましたが、移動事態で近くの予想外のものには速く気づくことができる。これは末梢機構、すなわち目玉の仕組みからは説明はできない。これはおそらく生得的なものであり、他の動物でも同じような仕組みがあるんではないだろうかというふうなことも考えております。
 今の結果から実際的な示唆として言えることは何かと申しますと、車内のディスプレー、これは近くを見させようという装置です。そのときに、そのことは逆に言いますと、今のラバーバンドという特性からしますと、前方に出てきた予想外の対象に対して気づくのをますますおくらせてしまうということになる。ナビゲーションも同じです。それから二輪車の問題、ちょっと省略いたします。
 最後、ナビゲーションの問題を具体的にお話をいたします。具体的に被験者にどんなことをしてもらうかといいますと、これはナビゲーションを積んで実際に運転しながらの実験ではございません。2枚のスライドが連続して出てくるんですね。1枚目のスライドが例えばこれです。2枚目のスライドの危険というのは対向車がはみ出してきている場合ですね。1枚目のスライドから2枚目にはみ出してきたら、これは被験者は危険と判断しなければならない。それに対してそのまま近づいてきたら安全と判断すればいいという単純な仕事をしてもらいます。そのほかに、ちょっと見にくいですけれども、先行車がいてブレーキランプが点灯するか、点灯しないか、そういったようないろいろな事態がございます。
 この、今のようなタスクをしてもらうときに、1枚目のスライドと2枚目のスライドの間にナビゲーションを観察したらどんなことが起こるだろうかということを調べてみたわけです。具体的にどんな実験になるかというと、1枚目のスライド、これを見てもらうわけですね。その次に警告音が出ますと、まだ1枚目のスライドが前方に映っているんですけれども、ナビゲーションの画面で自分の位置を確認してもらいます。確認すれば、すぐに視線を前方に戻します。視線が前方に戻ると、先ほどの第1スライドが提示されたままなんですね。その数秒後に第2スライドに変わります。これはブレーキランプが点灯しましたので、危険という判断をしなければならないわけです。で、ブレーキランプがついていなかったら安全という判断をしたらよいということをやってもらうわけですけれども、その主な結果なんですけれども、縦軸が危険判断にかかる反応時間です。横軸が「事後効果」と書いてございますが、これはナビゲーションを見たあと、2秒、3秒、5秒です。これがナビゲーションを見た場合の実験の結果。これがナビゲーションを一切使わなかった場合の気づく速度なんですね。
 強調したいことは、視線が前方に戻っていても、前方の危険、安全の判断がナビゲーションを見たあと2秒では相当反応時間が長くなり、5秒ぐらいたったらやっと元に戻れるというのが実態であるということなんですね。こういったことは、こういった実験を組まなければ知ることのできないことであるということを申し上げたいわけです。
 どうして今のようなことが起こるのかということをちょっとこれは省略をいたしますが、こういうふうなことを見出しまして、特にナビに関して言いますと、ナビゲーションの使用、これは二重課題、すなわち前方の安全、危険を観察すると同時にナビゲーションを観察する二重課題であり、2つのことを1度にやるということに対しまして人間はもともと弱いものです。しかも前方にかかわらない視覚情報処理、あるいは視覚的イメージ保持の課題がナビゲーションの課題なわけですけれども、そういったことから、これちょっと省略いたしますが、心理学の立場からナビゲーションの使用は推奨できないということも実際的な問題として申し上げたいわけです。
 これは95年に調べたナビゲーションが一般的に普及する前のことなんですけれども、ナビゲーションを画像で見せたほうがいいか、音声で案内したほうがいいかということを、こちらが心理学者に聞いた場合です。これが理系の研究者の方に聞いた場合です。これが一般の人たちに聞いた場合なんですけれども、視覚情報のほうがよいと、ディスプレーのほうがよいと答えられたのは理科系の研究者の方は50パーセントほど、それに対して心理学者の場合は25パーセントほどというふうに、安全性の基本的な人間の特性に対する考え方が、やはり心理と理系の方では異なるようだというふうなことも申し上げたいわけです。
 ちょっと時間が超過いたしましたが、まとめとして申し上げたいことは、実験心理学の基礎研究は実際の行動場面と遊離しがちである。これは心理学者に言いたいことなんですけれども、応用場面では根拠の乏しい安易な知見が流布しがちであることを心理学の内部から指摘したいわけです。ゆえに、交通場面に限らず、さまざまな行動面での認知・注意特性に関する確固たる基礎知見の蓄積が必要とされている。ここを申し上げたいわけですけれども、特に、新しい技術の導入に当たっては、人間の注意特性を十分に考慮しなければならない。ところが技術の進歩、開発はそれに対応する人間の特性の解明よりも格段に速いのが現状であるということで、今、紹介しましたような実験、これは実際に考え出して終了するのに何年もかかるようなことですけれども、やはりこういった基礎的な、しっかりとした実験心理学的なデータが、安全を考える上で必要であるということを私の立場から申し上げたいわけです。以上でございます。どうもご清聴ありがとうございました。

【板生主査】
 ありがとうございました。それでは5分ぐらい、この今日の話に関してご質問等ありましたらお願いいたします。どうぞ。

【井上主査代理】
 最後のほうでナビ使用の話が出ていましたけれども、ナビを使用した方が事故率が本当に上がるというデータはありますか。こういう基礎研究と実際との関係というのは、どれくらい相関があるのか気になります。

【三浦教授】
 データは、何年でしたか、2004年か、5年に、つくば市で、携帯電話の規制がかかったときに…。

【井上主査代理】
 携帯電話のほうですね。

【三浦教授】
 同時にあの時は「携帯電話等を使ってはいけない」というふうに伝えられたそうなんですけれども。今のは携帯電話の話です。ナビゲーションの具体的なデータは私、存じません。ただしナビゲーションが安全であると言える保証はどこにもないということは申せます。

【井上主査代理】
 便利でありますがね。

【三浦教授】
 はい、ただしそれは使い方次第であるということです。

【板生主査】
 こういう実験が、心理学的な実験が行われて、さらに例えばMRIとか、そういうものを使って、人間の頭はどういうふうに考えているのかというのと相関をとるような研究というのはどういうふうになっていますでしょうか。

【三浦教授】
 これは今のような実験自体では不可能に近いです。非常に細かい実験ですと、もう山ほどございます。

【板生主査】
 例えば空間認知機能みたいなものを実験するときは、先ほど絵が出なかったですけれども、多分絵が出て、前の絵と今の絵とどう違うか、違うか、違わないか、それを例えばMRIといいますか、脳の血流とかそういうものの状態との関係で、それを関連づけるとかいうような研究を聞いたことがあるんですけれども、そういうような、多少は人間の体の脳の中はそういう全体の中での、生態的な反応との関係で、うまくリンクするということはできないでしょうか。

【三浦教授】
 もちろん、そういう研究はいくらもあります。ただしどのような種類の注意が働いているときに、脳のどの部分が活性化しているかということはわかるわけですけれども、逆に私の立場からしますと、それがわかって人間の行動にとって何なんだというのが私の立場です。ですから逆に、私たちに参考になる脳研究としましては、脳損傷の患者さんでどうなのかということから、逆に私たちの見るメカニズム、あるいは注意のメカニズムがどうなっているのかということに対してはいろいろなヒントを与えてくれます。

【板生主査】
 どうぞ、何かありましたら。よろしいですか。特にこういうツールがあったらもっといいけどというようなものはございますか。こういうツールを開発してもらえば、先生の研究がさらに進む。

【三浦教授】
 安価なバーチャルリアリティーがあれば、今の実走行の実験、これ大変なんですけれども、それがあれば非常に有効であることは間違いございません。

【板生主査】
 そのほかよろしいでしょうか。それでは、ありがとうございました。
 それでは続きまして今井課長から市民の健康を守るための取り組みということについて、仙台市の取り組みをお話を願いたいと思います。よろしくお願いいたします。

【今井課長】
 仙台市役所産学連携推進課の今井でございます。本日はこのような場で発言する機会を与えていただきまして、文科省さんには心から感謝申し上げます。
 それでは本日の私のほうからのご報告でございますが、先般、文部科学省様より仙台地域はいわゆる知的クラスター事業に申請いたしましてご採択いただきました。その中身につきまして井上室長のほうから、ちょっと皆さんにお話しするようにしてもらえないかというご依頼がございましたので、私の申し上げるのはどちらかというと行政から見たお話でございますので、科学技術的な話と若干視点がずれるかもしれませんが、そのような観点でお聞きいただければと思います。
 それでは話をさせていただきます。ちょっと2ページが出てしまったんですが、1ページを見ていただくと、皆様のお手元の資料の1ページを見ていただきたいんですが、地域の課題ということがございまして、高齢者の数が大きく増加する。いわゆる仙台市、大都市でございますので、いわゆる過疎地域に比べますと高齢者の方の数、割合は低うございます。ただし今後増加する割合が非常に高くなるだろうということで、その地域の課題というところの1、2に書かせていただいたんですが、非常にこれから高齢者の方が多くなると。その割合が、非常に伸び率が高いという状況にございます。医療費もそれに続きながら大きくなっていく。介護費も当然大きくなるというような状況がございます。
 そういったところで、これはこれまでの取り組み例ということで、今、画面のほうに出させていただいているんですが、鶴ケ谷という、これツルガヤと読むんですが、鶴ケ谷という団地がございまして、この団地は仙台市の駅から5キロぐらい離れたところにございまして、昭和41年から開発が始まった団地でございます。それで通常、過疎地に行くと高齢化率が40パーセントとか30パーセントとかという形なんですが、仙台市は大体平均が16パーセントなんですが、鶴ケ谷という団地も実は高齢化率が30パーセントぐらいの形になっておりまして、非常に高齢化が高い地域になっています。そういう地域がございまして、これは大都市でも実は同じように、高齢化率が非常に高い地域というのは過疎地域だけではなくて、大都市地域の中のいろいろなところに点在しております。
 そういったこととか、あとは高齢者の方でうつになっていそうな方、そういう方を1,000人ぐらいの中からヒアリングしている中で見つけまして、その方たちに看護師さんがいろいろなケアをするというようなことをやりました。これもかなり統計的には有意な効果があるということで、非常に効果があったということで平成17年度より一部地域、これは介護保険地域包括センターというのがございまして、そこでいらっしゃる方に対してうつかどうかのチェックシートを書いていただいて、状況に応じて看護師が訪問したりするというような事業をしております。
 さらに通所施設というのがございますが、通所施設というところにいらっしゃる高齢者の方で、ちょっと運動能力が低下しそうだ、している、そういう方に関して運動のプログラムを提示して運動していただくということを具体的に今、仙台市でやっております。
 この鶴ケ谷プロジェクトというのはいわゆる科学学術研究から仙台市の行政にいろいろな効果があったというものの1つの例でございます。ちなみにこのプロジェクトの中で一番一般の方に関係するものは、実はここにある「脳ウェルネス・プロジェクト」というものでございまして、これはいわゆる川島隆太先生の脳トレの実験フィールドの1つでございまして、そんなような効果も実はこれからは出ております。
 それでこういった状況を受けて、本市としていわゆる知的クラスター創成事業に申請する際に、上にありますように、仙台市として市民が安全・安心に健康で幸福に暮らすことができる都市というのを仙台市で掲げておりますので、こういったものを実現するために文科省さんの制度を使わせていただこうということで申請したところでございます。背景にありますのは、先ほど申し上げましたように、少子・高齢化社会でございますが、それに対するインフラとか、システムがまだまだ不十分だと。さらには医療費・介護費用が非常に増えている。仙台市の予算規模は、一般予算とか特別会計予算を入れますと約7,100億円程度のものでございますが、そのうち2,500億円ぐらい使っているという状況でございます。そういったためにこういう少子・高齢化社会に対応するために、予防型健康福祉を実現するために自治体主導でいろいろやっていこうと、そのために体制も整備しようということで、今、考えておりまして、それの一環として知的クラスター事業で今、取り組みつつあるところでございます。
 それで具体的にどのようにするかということでございますが、そこにございまして三角形、こういうピラミッド形のやつがございますが、これはあくまでも模式でございまして、必ずしもこういうふうに分布しているわけではないんですが、人数的に見ると一般健常者の方が多いだろう。それに対して高齢者の方とか、生活習慣病予備軍の方がいらっしゃる。3次予防というのがここにございますが、これはもう病気になっていて、再発予防するんだというようなところの方でございます。少なくとも1次予防、これはいわゆる今、健康で何の問題もない方に対していろいろな予防策をすることによって、その方たちの数を増やしましょう。3次予防、要するに疾病、何か病気にかかっていらっしゃる方の数そのものを減らして、この方たちが医療費非常にかかりますので、そういう方たちをどんどん減らしていこうと、そういうことで仙台市として施策を展開していこうということで考えております。
 それでこういう形で予防をどんどんすることによって、病気になりにくい、なるべく安全にしましょうと。元気で生き生き、長生きできる、安心的な部分ですね。そういったものを市民の皆さんに提供できるようにしていこうというような形で、今後施策を展開するということで考えております。
 じゃあ、具体的にどういう形でやるのかということなんですが、これもまだ概念的なレベルでございますので、先ほどの三浦先生のように、何かこういう実験をしてこうなっているというようなものはちょっとお示しできないんですが、基本的には住民の皆さん一人一人の生活情報、健康情報、医療情報を集めて、それを分析して個々の皆さんに最適な健康サービスを提供しましょう、非常に言っていることが抽象的でまことに申しわけないんですが、できるだけ一人一人に合った健康増進のため、もしくは予防のためのサービスを提供しましょうということを考えております。
 具体的には、一般的な方に対しては健康指導プログラムを提供する。あとは施設に入っていらっしゃる方なんかに対しては、要介護度が上がらないようにするようなサービスを提供しましょうと。あとは先ほどの三浦先生のお話ともちょっと絡みそうなんですが、運転している方に対して、リアルタイムでデータを集められるセンサーをある程度装置することによって、体調の管理、これはなかなか実用化、多分すぐには難しいと思うんですが、そもそも気を失っている状態というのをセンサーで見つけるというのは、なかなか難しいらしいんですけれども、その定義がなかなかできないと。そんなところで研究開発しなければいけないところがあるんですが、体につけたセンサーで、それを無線で集めて、それをデータを集めて分析して、どういう状況かというのがわかるというところがかなり進んでおりますので、そういうことでリアルタイムに体調を管理するようなサービスもやってみようということで、今、考えております。
 具体的にサービスを提供する主体としては、社会保険事業団体、これはいわゆる会社の持っている保険団体でございますが、仙台市ですと国民健康保険ですとか、老人医療保険とか、そういうのを持っていまして仙台市が組合としてやっているんですが、そういったいろいろな団体が、その人たちの健康状態をよくして、医療費がなるべくかからないようにしようというようなのが、先ほどちょっと飛ばしてしまったんですが、これは厚労省さんの事業で平成20年度から、特定予防検診というのが義務づけられまして、それに対応していろいろやらなきゃいけないということもありまして、こういった事業者さんにお願いをして一緒にやっていこうと。あとは単純にフィットネスクラブとか、老人介護施設とか、そういったところと一緒にやっていこうと思っておりまして、市民の皆さんが生き生き元気に安全・安心に生きられる、そういうものをサービスとして提供していこうと、今、考えております。
 研究の内容でございますが、先ほど申し上げましたようにまずセンサー、これは生体情報と書いてありますが、いろいろな方の、個人個人のいろいろな情報が、脈波のデータとか、いろいろなところからセンサーを体につけることによって、さらに小さいものをつけられますので、そういったもので集めると。さらにはウェルネスアルゴリズム技術、これもセンサー技術に近いんですけれども、集めてきたものを無線で集めてデータベースに入れて、それを判断しましょうと。さらに、これはどちらかというと1.と2.に関しましてはリアルタイムの問題でございますが、それだけではなくて、いわゆる検診とか生活習慣の情報とか、これはリアルタイムではなく定期的に集めるような形にして、そういうすべてのいろいろな情報を集めて、データの分析を行って、それを知識としてサービスとして活用して仙台市民に提供しようと。それがまた新たなデータを生み出して、これがぐるぐる回るというような形で市民全体の健康を高めていこうということで考えております。
 多分その中の中心になるのは、先ほどチラッと申し上げましたウェルネスアプリケーション技術というのが3.にございますが、多分これが中心になる技術であろうと、今、考えておりまして、どういうことかと申し上げますと、リアルタイムでいろいろな情報が集まってくる。センサーをつけていろいろなものを集めるということと、もう一つは従来の保健サービスですと、これは皆さんもやられていると思うんですが、検診だとか、医療機関に行くとか何かで、いろいろなデータが集められると思うんですね。例えば血糖値が100以上だとか、あとはコレステロール値が220以上だとか、そうなると国民基準値という非常に画一的な数字で「あなたはちょっと不健康です」みたいな話になるんですね。そうするとそれに対してどちらかというと画一的な指導がある。
 例えば私がコレステロール値が250ぐらいになったとすると、やせろという指令が多分出ると思うんですよ。比較的そういう意味では今まではどちらかというとほんとうに画一的な指導をされていたわけですが、ただ私の例でまことに申しわけないんですが、私の親を見るといわゆる糖尿病になりやすいというのが明確なんです。そうしますと私は太るとだめなんです。ある程度やせなきゃいけないとか、その人その人によって多分健康になるための状況って違うんですね。こういう形で、いろいろなデータを集めて、その人その人に合った、いわゆる有益パターン、有害パターンというのを導き出して、一人一人にサービスを提供しましょう。
 何でこういう話になったかというと、先ほど冒頭申し上げました鶴ケ谷というところでやったプロジェクトで、うつになっている方とうつになっていない方を、だーっとこういろいろな生活習慣を分析していった中でおもしろい結果が出まして、小魚を食べている方は一人もうつになっていなかった。これは有意な結果として出ておりまして、じゃあ、そういう方はカルシウムが多いのかとか、いわゆるそのこちらの画一的指導の元になる国民基準値的に見るとどうなるのかというと、そういう見方をするよりも、小魚を食べていないというほうがはるかに有意性が高かったというようなことがありまして、いろいろなデータを集めてそのライフスタイル、これをやってみると、その人その人に合った予防的なサービスってできるんじゃないかというようなことを考えておりまして、多分この辺を中心に、いわゆる行政的に見ると市民の皆さんにどういうサービスを展開するかというのが第一に来ますので、科学技術云々の先端性があるかないかということよりも、多分我々としてはこの辺を重視してやっていこうというところで考えております。ですから個別型統合予防サービス、いろいろな言い方が、まだ我々も定めていないんですが、こういった形で住民の皆さんに提供するサービスを5年後にある程度つくるという前提で今やっております。これはその説明をちょっと書いたものです。
 そのほかに技術的なお話を申し上げますと、すべては通信で行うと。インターネットであったり、無線であったりするものですから、その中心になる通信技術というのはいわゆるそのプライバシーマネジメントを非常に重視しなければいけないと。なぜかと申しますと、その移動体から集めようというところも実は一部ございますし、いろいろな医療機関から、医療機関に対してうちからデータを出したりと、いろいろなことをしますので、そういった中で自分のデータをどこに行っても使えて、かつ安全に使えなきゃいけない。自分のデータをほかの人が勝手に使うことはいけないと、そういうところで、その辺の技術的、通信的なセキュリティーの技術も確保していこうということで、今考えております。
 それでこれはどういう形で進めるかということなんですが、本部長は仙台市長なんですが、その下に事業推進本部というのをつくりまして、これは研究者の方にも入っていただきますし、地域の関係機関の皆さんにも入っていただこうと思っておりまして、地域全体で事業を進めるということでこういうものをつくっております。これは仙台市の内部の話なんですが、こういった事業を進めるに当たって、実際にやるのはこの健康福祉局というところが住民の皆さんに対するサービスの提供をいたします。そういったところと、我々たまたま産業振興ということで、この事業に取り組んでおりますので、こういったところとあとは企画市民局というのは、いろいろな市民の皆さんに対してサービスの提供する場所を持っているところなものですから、こういったところと一体になって、今、こういう事業を進めていこうとしております。
 具体的に地域でどんなことを実現しようかと考えておりますのは、先ほど申し上げましたテーラーメードなサービス、それから予防的ないろいろなサービスを展開することによって、市民の皆さん一人一人には安全・安心で、その結果として健康で質の高い生活を提供しましょうと。あとは1次予防の強化で、これは一人一人の住民の皆さんにとっては安全性が高まることによって医療を受ける機会が低くなる。介護を受ける機会も低くなるということで、コストが削減されるということで、この事業を進めるとなっております。
 私の所属する経済局的にはこの一番下のやつが一番大事といえば大事なんですが、結果として住民の皆さんに使っていただけるようなサービスを提供すれば、産業として地域に根づくであろうというようなことで、この事業を展開しようとしております。私のほうからは以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

【板生主査】
 ありがとうございました。それではご質問があればお願いいたします。どうぞ。

【井上主査代理】
 こういう事業で一番大事なのは、やっぱり成果を上げることだと思うんですね。それで今、大事なのは例えばこういう一番最後のスライドで、市民、行政、地域、それぞれこういう狙いがあるんですというお話があったんですけれども、それぞれの評価指標を定めることがすごく重要だと思うんですよ。現状はどうなのか、目標はどうなのか、やった結果はどうなったのかというこの3点がないと、何をやっているのかわからなくなってしまうんですね。その辺の評価指標というのは決まっているんでしょうか。

【今井課長】
 この資料で申し上げますと、6ページのところに社会経済分析、一番左下のところに社会経済分析というところに、社会経済評価とかいろいろ書いてあるんですが、最初からどう評価するか、盛り込んでいってそれに基づいてやっていきましょうということで、今年度それをつくることにしております。結局これは外に向かって言うときも、これこれこういう税金を投入して、これこれこういう成果があったということを言わないといけないもんですから、これは確実にやろうと思っております。
 ただし市民の声というすごく抽象的な言い方をすると、市民の皆さんの評価って難しいものですから、とりあえずは使ってもらえる、何かやって使ってもらって、それで評判が高かったぐらいの話も当然含まなきゃいけないと思うんですが、あとはいろいろな指標でそれはやっていこうと思っております。

【井上主査代理】
 特に市民の健康で質の高い生活にほんとうに寄与したかどうかというのは、そういう満足度みたいなものですかね、安心度なのか、満足度なのか、あるいは健康指標なのか、いろいろな評価指標があると思うんですけれども、できるだけ具体的に、定量的に示せるものがいいと思うんです。

【今井課長】
 できるだけそうしたいと思っております。とりあえず目に見える形で当該事業は展開していかないと、行政がやるものですから、この知的クラスター事業って5年間なものですから、5年間のうちにいろいろな形で目に見える形でやりたいと思っております。

【板生主査】
 ほかに、どうぞ。

【中村委員】
 大変興味あるお話、ありがとうございます。鶴ケ谷の場合には70歳以上の方、約1,000名参加されたということですが、今回の知的クラスターで実際に参加していただく規模、住民はどのくらいを想定しておられるんですか。

【今井課長】
 最終的に、仙台市の行政施策にしようと思っておりますので、5年後になるのか10年後になるのかわかりませんが、100万人を対象に考えております。ただ100万人といっても高齢者の方はそのうちの何割とかという話になりますのであれですけれども、できるだけ市民の皆さん多くに使っていただけるようなものにしていこうと思っております。

【中村委員】
 ありがとうございます。もう1件だけ。そのときにいろいろなサービス提供主体に参加してもらうということとか、それから今までの健診センターとか、それから病院とか、いろいろなインフラが協力することになるのでしょうか。そのときに例えばデータベースなんかも共有されるような仕組みになるんでしょうか。個々にばらばらだとなかなか効率も上がらないと思うんですが。

【今井課長】
 理想的に申し上げれば共有したいんですが、現実に皆さん持ってらっしゃるものとかありますので、どこまでやれるかはわかりませんが、少なくとも仙台市としてこういうのをやりたいということで、地域のいろいろな機関に働きかけて、できるだけ共通のものにしたいと思っております。ですから最初から全部できるんではなくて、ある部分に関しては皆さん共有しましょうというところから始まっていくのかなと思いますけど。

【中村委員】
 はい、ありがとうございます。

【板生主査】
 ほかによろしいでしょうか。それではありがとうございました。

【今井課長】
 ありがとうございました。

【板生主査】
 それではあとの時間をいただきまして、今日、お話をいただいた三浦先生、今井課長さんのヒアリング等も踏まえまして、先ほど最初にご説明のありました資料4、「安全・安心科学技術の重要研究開発課題について」という検討のまとめ案でございますけれども、これにつきまして、記述全般についてご意見をいただければと思っております。時間は40分ぐらいございますので、ゆっくりといろいろな意味でご意見をいただければありがたいなとこういうふうに思います。よろしくお願いいたします。

【堀井委員】
 1つよろしいでしょうか。

【板生主査】
 どうぞ。

【堀井委員】
 修文をいただいて大分よくなったなあというふうに思うんですけれども、やはり安全・安心ということで、安心というところが少し強調されて、ほかの科学技術とは違って、人文・社会科学の知見をうまく融合することが大切だということが読み取れる報告書になっていて、私はそれは大切だと思います。特に2ページ目のところで、「人文・社会系等多様な分野の知見を動員する」ということが書いてあって、ほかのところにも同様の趣旨の文言がたくさん散見するんですけれども、じゃあ具体的に分野の知見を動員するというのがどういうことなのかということについては、必ずしも明確に読み取れないというところが、私はもう少し物足りないかなと思っています。
 それで今日は資料の3というのをお配りいただいて、これは昨年のこの委員会で私が提出させていただいたものですけれども、7つの分野において人文・社会科学からの取り組みとしてどんなことが具体的に挙げられるかということで、それを事前を3つに、「認知・周知」、「準備・予防」、「被害低減」とこう分け、それから危機対応ということで「初期対応」、それから事後ということで「復旧・復興」というフェーズに分けて具体的なものを挙げてみたんですね。ただ時間の関係であまり深掘りをすることができず、このような資料を提出させていただいたんですけれども、それのあとに先ほどご紹介のあった、お手元に冊子体になっていますけれども、報告書として人文・社会科学分野からの取り組みに関する調査の報告書を取りまとめたわけであります。
 ちょっとお時間をちょうだいしますけれども、例えばこの報告書の青いページが2枚入っていますけれども、その最後の部分にまとめた部分で、例えばその1ページ、2ページのところを見ていただきますと、どんな作業をしたかというと学会誌とか業界誌、機関誌を選んで、そこにいろいろな方がいろいろな主張、オピニオンを提示されているので、それをまずリストアップして、それが例えばページをめくっていただいて、3ページ、4ページのところ、これは災害分野におけるそうしたオピニオンをリストアップした表であります。どんな方がどんなことが重要だとか、大切だとか、主張されているかと。人文・社会科学という視点から挙げていったと。それからさらにページめくっていただいて6ページのところに、そうして挙がった課題等を、階層化・構造化して、因果関係に基づいて整理をして、どんな対策が必要かと。特に人文・社会科学からどういう対応が必要かというのを整理したものが6ページにあります。さらにページをめくっていただいて、8ページのところにそういう分析に基づいて、論点というのを整理したと、こんな形になっています。これが防災の分野で、その次のページ、9ページからテロの分野という形で同様の作業が7つの分野にしてなされております。
 それを最終的にどう整理したかと申しますと、ずっとページをめくっていただいて、かなり最後のほうですけれども、59ページ、60ページのところに「6.取りまとめ」という形で整理されてあります。7つの分野から挙がってきたこういう主要な論点、それを横断的にくし刺しにするために、上位概念ということで、普遍的な言葉で整理したものが上位概念の1、さらにそれを抽象的にしたものが上位概念の2でありまして、そこに1.、2.、3.というような番号が振ってありますけれども、これは異なる分野で共通して上がってくるものを整理したものであります。こういう整理をすることによって、最終的に63ページ、7つの分野を横断的に見出せる共通的な課題として、1.、2.、3.、4.、5.というようなものが挙がっております。こういう形で人文・社会科学の知見を使って、具体的にどんなことをするべきか、それがその特定の分野に限らず横断して見出せるものとしてはどんなものがあるのかというものを整理したのがこの表であります。
 さらにこの表を取りまとめたのが、この報告書の一番最初の部分の4枚目、ちょっとページ番号振ってなくて申しわけないんですけれども、さらに取りまとめると3つにまとめられるだろうということが書いてあります。4枚目の裏側のところなんですけれども、3つというのはリスクにかかわるもの、認知・対処法・組織、それから危機事態発生後の対応ということ、それから3つ目として故意による危機への対応という、こういう3つに整理できるだろうということをこの報告書では書いてあります。
 これが今日の資料の4のどこに対応するかというのを見てみますと、これが資料4の3枚目の一番最後のところから、特に、3.システム化フェーズにおいては(1)としてリスクの実態を理解して、どう対処すれば安全かを知ることによって、安心するということ。これが1つ目に対応することであります。2つ目が実際に危機が発生したときに、社会として冷静・的確に対処することによって、被害を最小限にとどめること。これが先ほどの報告書の2番目に対応することであります。ということで、これを入れていただいたというのは非常にいいと思うんですけれども、それを具体的に人文・社会科学の知見を総動員して、具体的にどんなことをやるのかというところが、3の「重要研究開発課題」のところには必ずしも書き込まれていないですね。(1)の「安全・安心科学技術を支える基盤研究」というところに書き込まれるべきことかなと思いますけれども、ここはその社会現象計測研究、社会現象予測・評価研究と2つ挙がっています。これももちろん重要なんですけれども、ここに人文・社会科学の取り組みを必要とし、かつ分野によらず共通基盤的な研究として必要となるものがここに挙がっていると、その前の部分の文章とも整合するのかと思いますので、そういうような基盤研究をここに挙げていただくと非常に安全・安心というものに対して重要な課題が指摘された報告書になるのかなと思います。以上です。

【板生主査】
 ありがとうございました。従来から堀井先生が研究されておられましたことを、解説を細かく丁寧にいただきまして、ありがとうございました。特にこの「安心」という分野は昨年度は「安全」を中心にして展開をしたんですが、今年度は「安心」というものをどういうふうに科学するかということをかなり真剣に考えようということで、スタート、実際にこういう扱いをしておりますので、そういう分野を従来、今までされてきた研究をベースにしながら、さらに具体的に技術まで含めて、そして実際のソリューションを何らかの形で模索していくというようなことになると思います。そういう意味で今のご意見をさらに何らかの形で加えさせていただくことにしたいと思いますが、皆さんのご意見をもう少し伺って、最終的な文言の修正等についてもさらに進めていきたいと思います。ありがとうございました。よろしくお願いします。

【中村委員】
 ちょっと違うことでよろしいですか。

【板生主査】
 どうぞ。よろしくお願いします。

【中村委員】
 イノベーションの議論の中で、社会還元を加速するプロジェクトというのが今回わりと目玉になると。それでそれは総合科学技術会議リードで進めるんだというふうに伺っているんですが、その中に安全・安心にかかわるものも6つのテーマの中に少なくとも1つははっきりと書いてあるように、ちょっと今日、私は見てきたんですが、それと今、我々がここで議論しているのとのつながり、直接にあるのか、いや、関係ないのか。
 ちょっと言いたかったことは、今回のこの検討の中で主に重要な研究開発課題を摘出するということに我々は重点をおいてきたんですが、今度のイノベーションの議論の中で、それをどういうふうに社会還元を加速するかという議論が随分なされていて、この検討のまとめの中にそこを入れる必要があるのか、いや、実際に具体化する、あるいは実証実験する、それから先ほど仙台市からお話いただいたような、ああいうことをやるんだというようなことを、文言を入れる必要があるのか、ちょっとその辺が私、急にここへ来てわからなくなったものですから。今ごろこんなことを言って申しわけないです。

【板生主査】
 大変貴重な意見でございます。これはやはり、これは私が言うよりは皆さんの意見をまずお聞きしてからのほうがいいかもしれませんので、どうぞ、もし今のご意見に対して少しありましたら、ぜひお願いいたします。基本的に安全の昨年度の検討の中ではテロリズム、テロとそれから子供の安全・安心というものを実際にどうやって実現するかということで技術の問題を含めて、まさに今おっしゃっていただきましたような「社会への実装」という言葉を使っていましたが、社会へいかにフィードバックしていくかということ、まさに総合科学技術会議で言っているイノベーションの中で言っているようなことを、現実的には提案をしてまいったという経緯がございます。
 それで、じゃあ次の今年はそれを全然無視してということかというと、そうではなくて安心というものを現実的に社会に実装していくのはどうしたらいいか。非常に難しいテーマではありますが、それを模索していくという、その方針は私は変わらないものというふうに思っております。その辺のところをぜひもう少し皆さんのご意見をいただければありがたいと思います。

【板生主査】
 どうぞ、お願いします、原さん。

【原委員】
 欠席しがちで少し議論からおくれたところもあるかと思いますが、去年から参加させていただいています、去年は食品の安全というのが入っていましたが、今年はそこの部分というのが特にはなくなっているという感じがしているのです。
 国民生活審議会の総合企画部会では、6月の4日だったと思うのですが、安全・安心のための報告書を出しております、そこの中で言っていることは、特に「安心」といった場合なんですけれども、遊具による事故ですとか、去年エレベーターありましたけれども、それからプールの事故がありましたけれども、今年になっては遊具の事故なんかがあって、身の周りが結構、ハードの面の安全というのもありますけれども、安心した環境にないというようなことは、かなり生活の場面では意識をされているというところがあって、それがちょっと今回のこちらの報告書の場合は少し見えにくくなっているという感じがします。
 重要研究開発課題には入れられないとしても、その前段の2のところですかね、2枚目から始まる、2ページ目から3ページ目あたりにかけては、やっぱりそういったことも、生活の安全・安心というところにそういう観点がいるのではないかと思います。
 それからもう1点なのですが情報通信ネットワークの安全確保については書き込まれていて、5ページの下から、「情報通信ネットワークの安全確保」ということで盛り込まれているのですけれど、何かもう少しいろいろな面で不安を感じるので、もうちょっと太くすることができないかなと。これ、ネットワークだけになっていますけど、相当、子供たちの生活、暮らしとかというのもかなり危険にさらされているような面もあるように感じていますので、もう少し膨らませていただけたらと思います。以上の2点です。

【板生主査】
 ありがとうございます。どうぞ。大野先生。

【大野委員】
 今、情報通信ネットワークの話が出たので、ちょっと僕も今これ読んでいるところなので、もしかするとピントがぼけるかもしれませんけれども、情報ネットワークの安全確保って多分2つの視点があって、情報通信ネットワーク自体が安全でちゃんと動いてくれるというのと、情報通信ネットワークを使う側がそれを安全に安心して利用できるという2つの視点があると思うので、そこは分けて書けると思うんですね。ここで書かれている、5枚目のほうに書かれているのは情報通信ネットワークを利用する立場から見たときに子供も含めて云々という議論だと思いますが、例えばケーブルを多重化するとか、電波でパッチするとかというのは情報ネットワーク自身を安全に確保するための話であり、ここではちょっとまたそれとは違う視点で、書かれているんだと思うので、そこの辺の視点を整理するときれいになるかなというふうに思いました。
 それからもう一つは災害情報通信システムの開発がありまして、きのうも大きい地震があったばっかりでこういうシステムの重要性はあると思うんですが、これに関して2点コメントしたくて、1個は国民保護法の話があって、やらざるを得ないという状況が一方にあるわけですね。地方自治体とか何かが国民保護法における「有事」が起きたときに、地方自治体が住民に対してやらなきゃいけないというのが書かれていたりするので、それってもうやらなきゃいけないので、安全と安心という以前にやらなきゃいけないから、それとどう折り合いをつけるかというのは何かあったほうがいいような気がするんですけど。あまり国民保護法とか、「有事」のときのとかって話をすると何か開けちゃいけない箱を開けるようなところもあるかもしれませんが、決まっているもの、規定された法律ですから、というのが1点ですね。
 あと、きのう災害関係の話の議論を地元でしていて急に思ったんですが、災害に関して、あるいはその他の各種のリスクもそうなんですが、結構我々は知らない。例えば地震に関しては起震車みたいなのがあって経験したりはしているけど、例えば病気がすごく蔓延した場合って、ほんとうはどういう状況なのかとか、それから僕が気づいたのは津波なんですけれども、実は津波というのは何種類かパターンがあるみたいで、ほんとうの津波の映像というのはほとんどないみたいなんですよ。スマトラのときにだーっと流れてくるのが世界中に流れましたけれど、あれは1パターンらしくて、どーんというほんとうに大きな波が来る津波もあるらしく、だけどそういうものが映像としてはほとんど残っていないので、例えば津波のことをよく知らないまま議論をしたりということもあるので、何が言いたいかというと、そういう事前の普及啓発のところでそういう体験とかを、ライブな体験、文字で書いちゃだめで、映像とか写真、できれば映像のほうがいいんでしょうけど、なんかをシェアするみたいなところってどこかに入れないと、頭でっかちになってしまって、多分ほとんどの人はスマトラのときに映された津波のやつがあれがすべての津波だと思っているんだけど違うということを、きのうちょっと気づかされまして、何かそういう、せっかく画像とか、マルチメディア技術が通信とともに発達しているので、そういう各種のリアルな体験が追体験できるような環境みたいなものを、何か要るんじゃないかなと思いますが、まとまりが悪くて申しわけありませんが、そんなことをちょっと思ったということでございます。

【板生主査】
 はい、ありがとうございました。

【井上主査代理】
 全体的なことで。昨年度から推進方策をまとめて以来、犯罪、特に高齢者、子供の安全を中心とした犯罪とテロについては、かなり系統的に整理されたと思います。ただそれ以外については、やはり第3期の科学技術基本計画に沿った項目が一応列挙されて、一通りの調査、ヒアリングはやられていると思うんですけれども、これを今後どうやっていくのか。今年度に入ってこの委員会でもずっといろいろな、今日もそうですけれども、ヒアリングして、いろいろな問題提起、あるいは活動の現状の情報をいろいろ教えていただいたんですけれども、これをどういうふうに具体的事業していくのか。
 今年度、安全・安心科学技術プロジェクトができて、犯罪関係とテロ関係がスタートして、それからJSTのほうでも事業として、例えば犯罪からの子供の安全ということで、事業が走っているわけですけれども、ほかのものをどうやってこれから具体的に国の施策として反映させていくのかという、その辺の見通しが何かわかりにくいんです。ここの委員会であと何を議論していけばいいのか。あるいは今までの議論がどう役立っていくのかという。

【板生主査】
 これは私が答える話ですか。それとも…。

【井上主査代理】
 室長にお願いするのかもしれませんね。

【板生主査】
 じゃあ、井上さんにちょっと話を聞いてみましょう。

【井上室長】
 今の井上先生のお話ですけれども、去年犯罪とテロをやりましたが、それ以外はあまり深掘りしていません。

【井上主査代理】
 そういうことで向こうを選んだと思うんですね。

【井上室長】
 実は事務局におきましてもいろいろ検討しましたが、去年重要な危機事態ということで7つ挙げていただきましたが、それぞれの分野で何をやるのかということを、社会還元というテーマを考えながらやっていくと、結局それぞれの分野でいろいろな省庁で取り組みをやっています。また、それぞれの分野ごとにいろいろな検討が行われて、委員会もあったりしてやっております。
 そういうものとの関係をどう考えるかとか、いろいろございますが、そういう中で今回は重要研究開発課題の検討ということでお願いしてまいりましたけれども、やはりこれまでの委員会の議論でもございましたけれども、特に文科省としてやっていくということでの特色というのを考えますと、人文・社会科学の知見の動員や、各省庁でのいろいろな取り組みがやっていますけれども、やはりそれはどちらかというと安全のほうでございますから、特に人文・社会の知見を動員して、安心というものをちゃんと考えていこうということで、そういうことで今回の検討になっていると理解しております。
 いろいろな分野で今回お示しいただいた考え方を応用して、研究開発ができると思います。実際に施策としてどうやるかはこれから我々も予算要求に向けて考えますけれども。
 それぞれの分野を深掘りしてもいいんですけれども、深掘りすると各省との関係を考えなきゃいけないというところもあります。
 特に安心ということにフォーカスを当ててご検討いただきましたが、実はそういうことを考えているところは日本全国いろいろな組織を見てもなかなかないわけでありまして、そこに今回の検討の特徴があるのではないかと我々は考えている次第です。

【板生主査】
 どうぞ。

【奈良委員】
 基本的なところで、質問というか意見なんですけれども、用語の定義をしなくてもいいのかということなんです。用語というのはつまり「安全」とは何か、「安心」とは何かという。この委員会の名前にもなっている安全・安心ですけれども、この報告書、今日いただいた資料4の中にも、かぎ括弧つきで「安全」、「安心」という言葉がもうしょっちゅう出てくる。一方でここで言う安全とは何々である、安心とは何々であるということが書かれていないのですね。その定義をしなくていいのかということと、及びなぜ、じゃあ両方、特に安心が必要なのかということをやはり明記する必要がないんでしょうかということなんです。
 例えば、安全・安心両方とも必要ということは、もうこの委員は全員一致している意見なんですけれども、定義として例えば、ここでいう安全とはリスクが許容可能なだけ小さくなった状態であって、安心とは人間がリスクがもう十分小さいとの心理的状態のことである、例えば一言定義をした上で、じゃあ何でその両方が必要なのかというと、もう十分安全なのに、つまりリスクは十分小さいのに、まだ安心していない状態はナンセンスであるし、一方でその逆もまたおろかであるというようなことをいって、安全についてはおそらく専門家は十分努力をして、リスクを十分小さくしなければいけなくて、それに該当するのが1.、2.の「自然・社会現象計測フェーズ」と「予測・評価フェーズ」におそらく該当していて、一方でその安心の充足には専門家の努力も必要なんですけれども、やはり生活者とか、市民とか、消費者の努力も必要で、つまり彼ら自身が一定の知識とか理解を持つという。それが、つまりリスクコミュニケーションとか、コンセンサス会議とか、教育ということで、それがこの報告書の中の3.システム化フェーズのおそらく重要なところに該当すると思うんですね。
 ですからこの全体の報告書の骨格にかかわる部分の、前提として安全とは何か、安心とは何かという、なぜその両方が必要なのか、それを充足するには専門家の立場では、あるいは市民、住民の立場では、というようなことを少し明記していったほうが、この委員会の独創性がよりクリアになるんじゃないかなというふうに思いました。以上です。

【板生主査】
 はい、ありがとうございました。いろいろ発言をしていただいて、それで最終的にまとめていきたいと思います。必ずしも文科省に対して詰問をしても始まりませんので、むしろ我々委員会の中でこの辺を解決していって、こういう形で答申をしましょうという形に持っていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。はい、どうぞ。

【札野委員】
 私の意見も、今までのご意見に共通するところがあるんですけれども、主語が見えない。だれがやるのかという、やらなければいけないことがいろいろ書かれてはいるんですけれども、一体だれがやるのかという。もちろんこれはだれがやってもいいということはあると思うんですが、いろいろなセクターが共同してやるべきなのか、それともその専門家と非専門家の共同が行われるべきなのかといったような、ある程度の主語を明確にするということが必要なのかなという気が、今の奈良先生や井上課長のお答えを聞きながら考えておりました。実はその前から考えていたのと同じようなところに議論がいったんですけれども。
 ですからこの報告書で、こういうことが必要だということは見えてくるんですけれども、読んだ方は、じゃあほんとうにだれがやるんでしょうと。そういうイメージを持たれるんじゃないかなという気がするんですけど。

【板生主査】
 はい、ありがとうございます。皆さんのご意見をできるだけいただいて。よろしければどうぞ。

【岸委員】
 いわゆる安全・安心という話、前から出てきているんですけれども、例えばテロとか犯罪ですと、いわゆるセンサーをつけるとか何とかすれば安全になるというところの議論はすぐできると思いますし、逆に言うとそういうものがつくことによって多分安心するだろうというところはあると思うんですけれども、基本的に前から話のある、安心というのをいかに評価するかというところの議論というのがどうしても煮詰まらないので、例えて言いますと今、いわゆる犯罪は減っているんだけれど一般の人はまだ不安だと思っているというようなところがあるんで、そこの評価というのを何か人文科学的な、あるいは総合的なところから評価できると、今、ここでずっといろいろなことが書いてあることに関しても、こういうことに対する安心の評価方法、こういうことに対する安心の評価方法ということで、非常に横断的に、有効な結果が出るんじゃないかなという気がするんですけれど。

【板生主査】
 その評価方法の研究ですか。

【岸委員】
 その評価をどういうふうにするかというところなんですけれど。

【板生主査】
 評価をどういうふうにするかというのを一つの大きな研究課題として…。

【岸委員】
 ただ単に、多分アンケートをとっただけじゃだめだと思うんですよね。「安心だと思いますか、思いませんか」というだけだと。

【板生主査】
 はい、どうぞ。原さん。

【原委員】
 リスクコミュニケーションのことが3ページ目の「3.システム化フェーズ」の中で「教育とリスクコミュニケーション手法の開発も行い」と書かれていて、リスクコミュニケーションが大事だというところが出されているというのは、私は大変いいという思っておりまして、食品の安全関係ではリスクコミュニケーションというのが、実施されてはいるわけなのですが、これに加わった人たちの中からは、今やっているのは本来のリスコミではないという、結構批判があって、やはりリスコミ手法というのがまだきちんと確立していないという感覚は皆、漠然と持っていて、消費者側から結構ブーイングになっているんですね。
 とても大事なのですけれど、3ポツの重要研究開発課題のところに来ると、個別の項目が並んでいて、せっかく教育とかリスコミが大事と書かれていながら、重要研究開発課題の中に入っていないというのが残念な感じがして、そして最後の4ポツの結語のところも、第2段落のところから計測の話と、それから「計測をもとにした予測・評価が重要であるという」ところになって、ここまででとまっていて、リスクコミュニケーションとか、そういったコミュニケーションの大事さということが、私はやっぱり安心のためには重要だと思うので、何かこの重要研究開発課題とか結語の中に、受ける課題だとか、文言とか、ぜひ工夫していただけたらと思います。

【板生主査】
 はい。その辺のところは文言をいろいろとまた検討いただくとしまして、そういう方向で入れていければいいと思います。

【板生主査】
 ご意見をいただいておきます。いろいろ、関連してもよろしいですし、それに関連しなくても結構ですので、いろいろな意見をいただいておきたいと。岡田さん。よろしくお願いします。

【岡田委員】
 私も先ほどの意見と一緒で、安全と安心の定義が、何遍も出席させていただきながら常にこうあいまいで、なかなか頭の整理ができないんですけれども、これ、反対語で言うと、「危険」と「不安」ですよね。ですから、安全というのは危険を取り除く技術、それから安心というのは不安を取り除く方策みたいなものをいかにして見つけることかなと、反対語で考えると何となくわかりやすいんですね。
 それで最終的なユーザーである生活者とか、国民とかというところなんですが、まず入り口として皆さんがどういうことを不安に思っていて、どういうふうになれば安心だと思うのかというところが多分ベースにあるんじゃないかと思うんですね。もしかすると高等な技術よりも、お金がたくさんあれば安心なんだよということがあるのかもしれないですね。危険な家に住まなくてもお金があればいいところに住めますし、高額の医療が受けられるし、何か危ない食糧を買わなくても済むということで、お金があれば全部解決するんだということだと、もう経済の問題になっちゃうかもしれない。そういうことを率直に、皆さんどういうことを不安に思っていて、どういうふうになれば安心できるというようなことをサーベイする。もう既にどこかでやられているかもしれませんけれども、そういうところがまずスタートとしてこういう、何かプロジェクトを組んでやってもいいのかなということを素朴に思いました。

【板生主査】
 なるほど。不安とは、安心とは、という研究をさらに深めるということが大事だということですね。ありがとうございます。どうぞ、中村委員。

【中村委員】
 すみません、先ほど言ったのと、委員の先生からもいろいろおっしゃったのを参考にちょっと思いついたんです。一番最後に4ポツで結語というのがあるんですが、この検討のまとめの案の、4ポツ、結語の一番最後に、「この報告で示す方向性を一つの道標にして頂ければと期待するものです」という非常に謙虚な表現になっているんですが、はやりむしろ安心とか、安全というのがこの文部科学省だけで閉じないということをはっきりと書いて、それでやはりいろいろな省庁とか、関係部門と連携して、ここで挙げたような重要課題について取り組まれ、あるいは社会に還元していくことが望ましいとか、ちょっとそういうことをはっきり書いたほうがいいのかなというふうに、今思いました。

【板生主査】
 ありがとうございました。

【井上主査代理】
 私も中村さんの意見に賛成です。先ほどの、ほかの重要課題については他省庁でやっているからという逃げ方はまずいと思うんです。やはりこれについても文科省としてやるべきことはたくさんあるはずなので、ものによっては、今中村さんが言われたように、まさに府省連携みたいな格好で取り上げることを考えたらどうかと思うんです。ほかに投げてしまうような表現になっては残念だと思います。

【板生主査】
 どんどん変えていくことは可能ですから。言っていただいたらどんどん変わっていきますので。有能な皆さんが、文科省の皆さんがいらっしゃいますから、全部聞いてくれていますので。

【井上主査代理】
 ですかえあ今みたいに連携していくということが大事なので、ほかにやっている省もある課題については、むしろ連携するというふうにしたほうがいいじゃないかと思います。

【板生主査】
 前回前回って悪いんですけど、昨年の報告書はそういう意味では現場とそれから研究開発と、それらの両方のコネクションをうまくつくっていくことで、連携というようなことが概念としてはあって、それをいかにやっていくかということだったので、そういう意味ではそれをベースにしていくことが一番いいんだと思いますけどね。それは昨年と同じようなことを言うよりは、少しとがった形にしたのかもしれませんけれども、ただ実際にはそういうものがベースにあるということで、それが独立しておりますから、やはり昨年の報告書と今年は独立しているという考え方に立てば、それを入れておかないと誤解を招くということになりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 そのほかに何かございますか。時間が大体近づいてまいりましたが、今までの議論を踏まえさせていただいて、安心というものの定義、安全の定義とか、そういうことが非常に大事であるということも今ご指摘いただきましたし、それから社会への安心という分野の人文科学的な研究ということと、技術の両方を合わせた、融合した研究ということが大事であるということでありますが、しかし抽象的なことだけではいかないので、具体的に、じゃあどういうことをやればそれが安心になるのかということも、もう少し踏み込んで書く必要があるということですよね。そのようなこと、それから社会還元ということがよく言われている中で、安全・安心の我々の委員会としては、どういうふうに社会還元をするのかということ、これも非常に大事なポイントであります。
 ということで、何だか最初の段階に戻って、もう一回、10回ぐらい議論しないとまとまりそうにないような気がいたしますが、これは何回やっても切りがないので、今日はお話をいただいた中で何とかまとめるということにしていきたいと思います。私、文部科学省の皆さんとともに、今いただいたご意見を踏まえて修正をしていくということで、主査に一応任せていただくというような形でまとめていきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
 松尾さん、もし何かありましたら一言でも。せっかくおいでいただいてありがとうございます。

【松尾委員】
 非常に休みがちだったもので、今回非常に勉強させていただいているところなんですが。それぞれの課題とかを見ますと、非常に大きいような話と、わりと個別で細かいような話があるようなところもありまして、いろいろまざっていても仕方がないのかなとは思いますが。

【板生主査】
 小さいのと大きいのはちょっと整理したほうがいいだろうということですね。

【松尾委員】
 なんかそんな感じがちょっといたしました。

【板生主査】
 ありがとうございます。以上、それでは皆様の意見を踏まえてということにしたいと思いますが。それではよろしゅうございましょうか。
 4月から始まりまして、かなりハイペースで、月に一、二回のペースでお集まりいただいて、大変お忙しいところを、皆さんにいろいろなご意見をいただきましてありがとうございました。この辺を踏まえて、今後文部科学省において私も含めましてこの検討のまとめを踏まえて、文科省においてはしっかりと施策を進めていただくというようなことをお願いしたいというふうに思います。ありがとうございました。
 それでは事務局、あ、どうぞ。

【川原田次長】
 皆様どうもありがとうございました。4月から精力的にご検討いただきました案につきまして、おまとめいただきましたが、これにつきましてはこれから文部科学省の中でしっかりさらに進めさせていただき、分析をさせていただいて、来年の予算要求に間に合わせるように施策を検討していきたいと思っております。
 それから各省の全体の話ですが、もちろんこれは総合科学技術会議のほうにもご報告申し上げて連携を取りたいと思いますし、それから各施策に落としていくときも、最近は各省で連携をする施策が多くなってきております。地域経済の振興の仕事もしておりますけど、やはり各省連携が当たり前のようになっております。これに関しましても連携すべきところは連携したいと思います。予算要求については、各省それぞれに要求するわけでありますけど、いい施策、かつ予算がつきそうなものでありますと、各省がそれについて予算要求するというのが常であります。こんないい報告書を出していただいたので、おそらくこれを宣伝、あるいは公にすることによって、いろいろな施策が、我々も考えられないようないい施策が各省から出てくる可能性もありますし、ぜひ我が方も各省に働きかけをしていきたいと思っております。」
 文部科学省としては、先ほど井上室長も申しておりますけれども、いわゆる「安心」についてさらにどうしたら、どういう施策を打てば「安全」が「安心」になっていくのかというような視点につきましては、それぞれ検討の余地が多々あるというふうに考えております。先ほどのご議論でもお金がたくさんあればいいこともあげていただきましたが、個人的には、確かに金融に関しての安全・安心というのは非常に重要なことだというふうに思っております。今の政治的なテーマですが、一番国民が不安に思っているのは年金だそうですから、いい、確かな年金制度をつくることがほんとうは安心のための最もいい材料じゃないかという気もいたします。ほんとうにテーマとしては広くて深いというふうに考えておりまして、また各先生方にもご相談させていただきながら、さらに施策をこれからじっくり考えていきたいと思っております。
 ほんとうにどうもありがとうございました。これをもとにいたしまして、さらに検討させていただきます。よろしくお願いします。

【板生主査】
 ありがとうございました。今回の答申のポイントは、ある意味では社会の安心を、社会現象をいかに科学するかと、計測するということも含めまして、そして従来の人文的な知見をいかに、さらに科学技術と融合した形でまとめていくかということにポイントがあるというふうに考えておりますが、それを何らかの形で取りまとめて、文科省のほうでより財政的な要求に変えていただくということで、我々はそれを切に希望しておりますのでよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。
 それでは事務局の井上さんのほうから、何かご連絡のほう。

【井上室長】
 4月から非常に短い期間にご意見をおまとめいただきありがとうございました。今日いただいたご意見はまた事務局のほうで整理いたしまして、主査の板生先生に最終的に確認をしていただいてまとめということで考えてございます。
 ただちょっと1点、若干話が戻るようで恐縮ですけれども、今日いただいたご意見について、安全・安心の考え方につきましては2004年の報告書がまずございます。そしてそれを踏まえた、昨年おまとめいただいた今後5年間の方針というのもございます。例えば2004年の報告書におきましては、安全と安心の定義について、1つの章を割いて丁寧に説明がしてあります。例えば先ほど奈良先生などからございましたそういう定義の話も、あるいは中村先生からございました社会還元の話も昨年の報告で非常にご議論いただきまして、社会還元のための新たなシステムの構築が必要だということを去年の報告でご提言いただいておりますので、またそういうものも合わせてちょっと考えて、盛り込ませていただきたいと思っております。
 それと事務的なご連絡でございますけれども、既に先生方にはメールでご連絡をしております。次回の会合は8月24日の10時から12時までということで予定しております。今回の検討のまとめを踏まえて、施策を進めるようにということでご意見もいただいておりますので、我々もそういうものを踏まえて予算要求、来年の新規事業について検討したいと思います。その事業について次回の会合ではご説明をさせていただき、ご意見をいただこうと考えております。以上でございます。

【板生主査】
 ありがとうございました。それでは本日はこれにて終了させていただきます。ありがとうございました。

─了─

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