安全・安心科学技術委員会(第6回) 議事要旨

1.日時

平成19年4月26日(木曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 M6会議室(三菱ビル地下1階)

3.議題

  1. 主査代理指名
  2. 委員会運営規則について
  3. 安全・安心科学技術について
    1.俯瞰的予測調査に基づく「2025年に目指すべき社会の姿」の検討における安全・安心な社会像について
    2.今後の検討課題について
  4. その他

4.出席者

委員

 板生委員、井上委員、大野委員、岡田委員、岸委員、土井委員、中村委員、原委員、札野委員、堀井委員

文部科学省

 森口科学技術・学術政策局長、袴着科学技術・学術政策局次長、吉川科学技術・学術総括官、井上安全・安心科学技術企画室長

オブザーバー

 科学技術政策研究所 桑原総務研究官(説明者)

5.議事要旨

(1)板生主査より、主査代理として井上委員を指名した。

(2)事務局から、資料3により安全・安心科学技術委員会運営規則の説明が行われた。

(3)桑原総務研究官より、資料4「生活者の視点からの目指すべき安全・安心な社会像について」説明した後、質疑応答が行われた。
 ○委員 ●事務局 △説明者

委員
 具体的な取組(資料1P5以降参照)が記載してある部分について、前に書かれている年度が技術的な見通し、後に書いてある年度が実際に実現すると考えられる年度か。

説明者
 そうである。後の年度は、社会で使われるようになるだろうと専門家が考えた時期。

委員
 技術的な見通しについて、非常に基本的な技術は、既にかなり世の中にあるため、ここで取り上げられているものは、新技術を一から発明してやるのとは少し異なるのではないか。フィージビリティースタディーをきちんとやるなど、実用を考え、実際に物を作ってみて、どこに問題があるかを調べ、それをつぶして使える技術に仕上げるということではないか。

説明者
 技術的な実現については、例えば企業でいうと、企業内の研究所で試作品ができる時期を想定している。ただし、多くの場合、値段がかなり高く、既存の競合品にも勝てないため、コストダウンの技術が必要であったり、実験室規模では作れるが、量産の技術が必要であったりするため、このような技術開発が行われ、世に製品やサービスが出るという時期(社会適用時期)も調査。
 したがって、技術ができてから社会に出るまで、ある程度整った研究開発を次の社会的イノベーションに繋げるまでのギャップについては、この調査で見ることができると考えていえるが、ご指摘通り、特にこの安全・安心に関するものは、技術自体をさらからつくるものはあまりなく、あるものを如何に上手く組み合わせて物にするかという要素が多いと思う。

委員
 技術開発というと、「新」技術の開発を発想してしまいがちだが、安全・安心に関しては、既に世の中にある技術のシーズをどう使って役に立つものにするかという点が非常に大事だと思う。

委員
 安全・安心はサイエンスよりもむしろエンジニアリングに近い。芽が出て相当なものができている中で、それを如何に目的を明確にしてエンジニアリングをして、最終的に社会システムに組み入れていくかということだと思う。

委員
 各項目がランダムに並んでいる感があるが、安全・安心という視点で再整理を行う予定はあるのか。デルファイ調査でやったものの項目も安全・安心を意識して実施したものではないのではないか。

説明者
 技術や社会像を考えるとき、例えば国家的観点、世界的観点等、様々な視点があるが、特に「生活者ベース」に最初から視点を絞っているため、例えば国家安全保障のような話はそもそも抜けている。
 また、この資料は、健康問題等の別の軸で切って議論し、そこに出てきた安全・安心を集めてきただけである。
 たたき台として不十分なところがあることは認識しているが、これ以上の作業は特にスケジュールはされてない。

委員
 楽観的な人から悲観的な人まで大変幅が広いと思われるが、実現時期、社会適用時期の数字は、平均値や最多値なのか。

説明者
 中位置をとっている。標準偏差は項目によって異なっており、一般傾向として、実現時期が比較的早い、次の10年くらいのものの分布は、わりとシャープで狭い範囲におさまるが、実現時期が20年後になると、段段ばらついてくる。

(4)事務局から、資料5-12により、これまでの安全・安心科学技術に関する取組と安全・安心科学技術委員会の今後の進め方の案についての説明した後、意見交換が行われた。

委員
 資料12の「視点」をどう設定するかが一番重要なところだろうと思う。記載されている3つの視点は、重要だが、言い方を変えれば、当然の視点。
 安全・安心は非常に幅広く、文部科学省の中でも、文部科学省以外の省庁でも様々な取組が行われている。他省庁、または、他の分野別の委員会で実施すべきことと、安全・安心科学委員会で実施すべきことをどう仕分けるかという切り口を視点に入れることが重要と思う。記載されている3つの視点で、仕分けるのは難しいのではないか。

委員
 安全・安心は非常に大きなテーマで、各省庁で取組が行われている。例えば、経済産業省では、製品安全の関連でリコールの仕組みづくりなどをやっている。また、内閣府の国民生活審議会の下の委員会でも安全・安心を大きなテーマとして掲げ、検討を行っている。
 また、資料12の2ページ目に「子供・高齢者の見守りシステム」があるが、内閣府が高齢者のみまもりネットワークを昨年度からスタートしているため、重複感がある。
 ここでなければできないことをもう少し詰めたほうがいいのではないか。

委員
 「安全」と「安心」はどうちがうのか、どう切り分けるかという話もあったと思うが、反対語を考えると、「安全」の反対は「危険」で、「安心」の反対は「不安」になる。例えば、ある技術に「危険」が見つかれば、リコールするなり、開発するなりして、「安全」に戻すことができるなど、「危険」は技術的に解決ができるもの。しかし、「安心」と「不安」は、行ったりきたりする。能登での地震を例にとると、以前までうちの県には関係ないと思って「安心」していた人たちが、実際地震が起きたことで一斉に「不安」になってしまった。人間は情報や知識がないときにいきなり不安に持っていかれ、無限に不安になる。そこにヒントがあると思う。
 つまり、技術の「安全」と「危険」であれば、定量的に評価して、安全度、危険度の判定ができ、対策ができる。人の場合、今過剰に不安になっている人が、一年前は不安ではなかったといったように揺れる。そこを揺れすぎないようにするところ、教育や情報提示、訓練のように人を相手にした部分について、文部科学省で出来ることがあるのではないか。

委員
 犯罪について、現実的には、犯罪が減ってきているし、検挙率も上がっているが、まだ「不安」と感じている人が多い。現実と人が感じているところには、時間的なギャップがあると思う。
 なかなか難しいとは思うが、時間的な、いわゆるタイムラグも含めて「安心」を評価するというシステムがあると上手く対応できる部分があるのではないか。

委員
 「安心」と「不安」について、例えば、津波の警報を出しても、避難しない人が多い、一方で、地震が起きてしまえば、多少の余震があっても安全であるのにも関わらず、地震が起きると人はいっせいに不安になる。科学者と一般の人が考える「安心」と「不安」は、全く逆のフェーズのところがあるため、心理学の視点を入れるというようなことが必要ではないか。

委員
 「安心」に関する研究がされていないことについて問題と思っている。科研費で行われている研究の中では、実務にいかせるような「安心」研究はなかなかされないという現状がある。
 私が行っていた研究(不安が解消されるプロセスをモデル化する研究)を紹介すると、本人が能力がある場合には、自ら情報を得て、その情報の質を判断し、どう対処すればいいのかを判断することによって安心にいたる(「能動的安心」)。しかし、人は誰もがそういう能力を持っているわけではないため、信頼できる人を探し、その人の指示に従い、その人に任せることによって安心する。そういう人が見つからなかったときには、とにかく拒絶することによって安心するか、あるいは、自分には危害が及ばないと勝手に自分を説得して安心する。
 モデルに基づいて安心対策を設計していくことが大事だと思うが、このようなことは、「視点」の中の「技術開発のみならず社会的対応を包含する」というところに集約はできず、もう少し広げていく必要があると思う。今の議論を掘り下げていく必要があるのではないか。

委員
 いろんな省庁で安全・安心をとりあげているが、各省庁でどういうテーマが具体的に走っていて、本当の狙いとしているのは何なのかという本音が分かるような資料を作ってもらえると、国全体としてここは抜けているということが分かるのではないか。

事務局
 机上参考資料に、事態別に各省庁がどのような取組をしているかを概観した資料が入っているが、もう少し、本音が分かるような資料をどうやったらできるか、事務局としても考えてみたい。

委員
 その際、先ほどの資料のように、実現年度も入っていたほうがいいと思う。

委員
 日本全体で、安全・安心に関する科学技術全体、安全・安心に対する取組を横断的に見るのはここしかないのではないか。
 次に、この委員会、あるいは文部科学省で何をするかについて、資料7「安全・安心科学技術に関する研究開発の推進方策について」で文部科学省の役割が触れられているが、1つは省横断的なところであり、もう一つは、基礎研究にかなり立ち戻ったものである。
 「安全・安心」という名称で何がやられているを調べることについて提案があったが、実は他の目的でやっていて、実はこれにも使えるという技術が沢山ある。全面的に取り上げていくことは難しく、ある程度包括したところでその周辺を調べてみるしかないと思うが、そこにかなり膨大な研究開発、あるいは技術シーズがあるのではないかと思う。

委員
 総務省でも、安全・安心に取り組んでおり、子どもの見守りをやっている。しかし、それは通学路の話であり、本当に外側を守るだけで大丈夫かについては、例えば、日本の池田小学校、海外のバージニア大学の事件を踏まえると、疑問がある。また、学校は、悪い因子が入り込む場ではないという前提の設計でできており、事が起こってしまった場合にどうするのかという視点の検討も必要ではないか。教育現場について取り上げると文部科学省らしく取り組めるのではないか。
 また、「不安」と「安心」という話について、主観的なもので揺れ動いているものをアンケート調査しても、あまり上手くいかないと思う。例えば、地震が起こる前と後、定常的に地震が起こっている地域とそうではない地域において、防災グッズがどれくらい売れているのかの調査データのように、消費者の主観的な評価ではないところから取り組むことができればと思う。やはり、社会科学、人文科学も取り込めるのは文部科学省ならではと思うので、そういう新しい取組ができればと思っている。

委員
 「安心」についての研究は行われており、安全であることが理解できている、あるいは、その情報が信頼できることが基本原則とされていたと思う。また、例えば、命に関わることであれば、年に10万分の1以下の確立であれば、人間は大体無視する、安心と感じる。怪我の場合、もう少し確率が高くても安心と感じるという統計データもあったと思う。「安心」という言葉の定義は非常に難しいが、かなりきちっと議論を詰めていく必要があると思う。

委員
 地震がおきてから300年経つと、「喉もと過ぎれば熱さを忘れる」というように、忘れてしまうが、忘れた頃にもう一度、刺激を与えることができればと思っており、例えば地震なら地震に限るなど限定的なものでよいと思うが、それぞれの地域に応じた、予測モデルがあればよいと思う。

委員
 地域によって人々の反応の仕方や不安の持ち方が異なっており、地域ごとに別のロジックと別の習慣で安心が確保されているので、そういう部分は地域差を考え、学校や地域と連携して、地域に吸収されやすい形で「安心」を語る、「安心」を伝える必要がある。例えば、車のサスペンションに問題があって技術的に開発しなければいけない場合、どの地域でも一様に開発しなければいけないが、「安心」については、地域ごとにカスタマイズされていることが重要ではないか。

委員
 「安全・安心」というと、技術的にも分かりやすい「安全」を先にやっていく傾向があるが、「安心」という問題を科学することは非常に大事なことであるため、人文科学の観点から「安心」というものに関しての研究、それに対する施策というものを深めていくといように、具体的に掘り下げることを考えていきたいと思う。
 それからもう一つは、科学技術を使って「安全」というものに対して何をここで考えればいいか。政府全体の様々な安全・安心施策、文部科学省の立場を踏まえて、「安全」に関連してどういうものが現在まだ抜けているのか、またどういうことが行われているのか。例えば、JSTのCRESTという事業の中のセンシング技術の領域においても、約15チームが活動しており、子どもの見守り、爆薬や細菌の検知などについて研究を行っている。また、理化学研究所でもテラヘルツを使用した検知技術の研究を行っている。様々の研究が行われているのは確かであり、どこまでそれがいっているのか、どのような状況にあるのかということをマップすることは、一つの使命かもしれない。細かくやると切がないと思うが、簡単にまとめた上で、どこを重点的に攻めればいいかという議論にいければいいのではないかと思う。

委員
 資料12の事務局が候補としてあげた重要研究開発課題例について、例えば1について、なぜ国土交通省や内閣府、総務省ではなく、文部科学省が実施することが必要なのかという疑問にも応えることが、この委員会に求められていると思う。しかし、この疑問に答えるには、資料の3つの視点では足りないと思う。
 この委員会でニッチなものを探す、「安全・安心科学技術委員会」をニッチ委員会にするのはやめたほうがいいと思う。むしろ、様々な省庁や様々な委員会で扱っている重要なテーマである「安全・安心」の中にも不足している部分があり、その不足部分をここでカバーするというストーリーにすべきである。
 成果を使ってもらうというところにフォーカスを当て過ぎると、他の省庁とバッティングして、他があまりやっていないことしか残らなくなるのではないか。
 例えば1の例をとってみたとき、これを扱っているところがいくつもあり、各々あるところはカバーしているが、カバーできず、当面カバーする予定のないところを文科省がやる。そういうものを探し出すのが大切だと思う。

委員
 製品安全は経済産業省が事業所・事業者を規制するという方法で対応しており、治安、泥棒等の対策は警察がやっている。そのため、地震インフラ、感染症、情報セキュリティが、現在対応が必要な、生活者の3つの大きな不安だと思う。情報セキュリティについて、総務省は、回線事業がテリトリーであるため、ネットワークの構築についてのみ、一生懸命やっている。また、経済産業省は事業者教育がメインなので、情報セキュリティの部分は弱いと思う。例えば、迷惑メールなど手の打ちようがないように言われるが、本当に技術的に解決可能ではないかという印象がある。文部科学省でも取り組んでいただきたい。

委員
 情報セキュリティは内閣官房のNISCがリーダーシップを取っている。情報セキュリティは内閣官房でコントロールするようになっており、そこが采配しているのではないか。

委員
 内閣官房で始めたのは、社会インフラ、特に産業、例えばバイキングシステムをどうするか、交通関係をどうするか等で、国民のことについてどこまでいつ全部カバーできるか分からない。

委員
 安全・安心は、本当に科学技術の問題なのか疑問に思うこともある。例えば、耐震補強について、新しい制震法、免震法を開発する研究はいくらでもあるが、その方向に走ることが本当に国全体の安全・安心につながるのか疑問に思う。資料に記載されている災害情報伝達システムについても、内閣府などを中心にして情報共有プラットフォームをつくろうという話が前からある。しかし、本当にいろんな人がいろいろな提案をしており、各研究者が各自治体とやっている為、いつまでたっても標準化が進まない。政治が決断して実行に移すことが必要なのではないか。研究者は人と違うことをすることに価値を見出すため、国中が一緒になって何か一つのものを作るとき、科学技術を追求すると実現しないのではないかと思う。まさしく、資料中の「科学技術のみならず」ということなのかもしれないが、社会的対応を含まないものは意味はないとまで言うと言い過ぎだが、社会的対応とのバランスを考えていかないといけないと思う。

委員
 そもそも「生活者」とは何か。各省庁の何処でも使えるようなシステムを開発しようというと、おそらく無理が来るため、焦点を絞らざるを得ないかと思う。カスタマーという考えからすれば、文部科学省をカスタマーに絞るのも一つ考え方だと思う。例えば、学校や生徒というところの安全・安心ということに絞ってやれば、逆にその技術が開発できた段階で、そこだけではなく、他のところにも使えるという考え方でもよいのではないか。

委員
 安全・安心を国のレベルで横断的・俯瞰的に考えようというのがこの委員会の目的であり、やはり、全部調べてみて、その中で国民にとって足りないものは何かを「政策」として提言することが求められているのではないか。

事務局
 科学技術・学術政策局というのは、政策を立案するところであり、必ずしもここで提言したもの全てを当室が予算化するものではない。例えば、地震や防災を所掌している課は別にあるが、そういうところでやったほうがいいものはそこで実現化していく。

委員
 先ほど、「科学技術の問題か」という指摘があったが、「科学」とは、必ずしも「自然科学」だけではなく、「社会科学」も「科学」である。「科学」というのは「わかる」ということ、「技術」とは「できる」ということであって、「科学技術」とは、「分かることによってできるようにする」ということだと思う。この様に考えると、人文・社会科学の知見に基づいてできるようにすること、こういう技術は広い意味での科学技術だと思う。
 資料7「安全・安心に関する研究開発の推進方策について」の下線を引いた部分の2つ目に総合的・横断的な科学技術の研究開発について、3つ目に人文・社会科学的な知見をも動員した取組について書かれている。課題を選択するときの基準として、人文・社会科学の知見の動員がその課題解決に極めて重要な課題というような切り出し方をすることで、他の省庁のやっていること、他の委員会でやっていることと差別化ができるのではないか。

委員
 先ほどの伝達システムが研究者の数だけあるという指摘について、政治的な決着を図る方法のほか、標準化を強力に進めるという方法も有効だと思う。経済産業省や総務省が行うものかもしれないが、「安全・安心のための標準化のリーダーシップをとる」というのは、一つのキーワードではないか。

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科学技術・学術政策局政策課安全・安心科学技術企画室

(科学技術・学術政策局政策課安全・安心科学技術企画室)