安全・安心科学技術委員会(第1回) 議事要旨

1.日時

平成18年3月23日(木曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 10階 10F1会議室

3.議題

  1. 主査、委員及び事務局紹介
  2. 主査代理指名
  3. 委員会運営規則について
  4. 安全・安心科学技術に関する取組みについて 1.俯瞰的予測調査による安全・安心科学技術関連結果について
  5. 安全・安心科学技術に関する取組みについて 2.共通基盤的機能に関する取組みの現状について
     ・JST/RISTEX(独立行政法人科学技術振興機構 社会技術研究開発センター)
     ・JST/CRDS(独立行政法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター)
  6. 安全・安心科学技術に関する取組みについて 安全安心にかかる人材育成に関する取組みの現状について
     ・「安全・安心な社会を実現する科学技術人材養成」(東京大学)
     ・「高度リスクマネジメント技術者育成ユニット」(横浜国立大学)
  7. 安全・安心科学技術に関する取組みについて JST戦略的創造研究推進事業における取組みについて
  8. その他

4.出席者

委員

 板生委員、井上委員、岸委員、竹内委員、土井委員、札野委員、堀井委員、松尾委員、御厨委員

文部科学省

 小田科学技術・学術政策局長、吉川政策課長、内丸計画官、岡村安全・安心科学技術企画室長

オブザーバー

 桑原総務研究官(説明者)

5.議事要旨

(1)事務局から、資料1により、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の下に、3月6日に、安全・安心科学技術委員会が設置されたことを報告。資料2により、委員会の板生主査、委員を紹介。

(2)事務局の紹介。

(3)研究計画・評価分科会の運営規則第4条に基づき、井上委員が主査代理として指名された。

(4)事務局より、資料3を説明後、委員会運営規則が了承された。

(5)事務局より、資料11を説明後、意見交換が行われた。
 ○委員、△説明者、●事務局

委員
 5カ年研究をやったものが、実際に安全・安心な社会基盤ということで何年後にそれが実行されるかというあたりのイメージは、どういうふうに考えたらよいか。2点目は、技術のシステム化・統合化は非常に大事だと思うが、従来だと、新規性がないということでなかなか予算がつかない。本当は、その点が重要だと思われる。

事務局
 何年後に実現かということについては、各研究開発プロジェクトが何年後の実用(安全)を目指すかにもよると考える。文部科学省は、科研費や大学の様々な研究も含めて、基礎シーズをうまく生かしていく。例えば、3年でこういうものをつくりたいという目標があるものついては、明確なターゲットを据えて、それに向けて取り組む。現時点では、全く提案されていない新しい技術を目指す場合には、もう少し先のターゲットを据える。今回、特に19年度の予算に当たって、テロや各種犯罪を候補として考えているが、新規性があり、みんなが使える形まで持っていける技術シーズをぜひ掘り下げてご審議いただきたい。

事務局
 既に科学技術振興調整費という中で課題解決型の研究開発費制度が発足している。この制度は、研究開発の採択の際の評価軸として、技術の新規性のみならず技術の与える社会的な有用性なども加味している。今回の委員会の中での議論を踏まえて、今後ともそのような制度を拡充し、さらに作っていくという方向。科学技術政策そのものも、単なる新規性だけではない方向にだんだん広がっているので、ぜひご議論いただきたい。

委員
 技術的シーズが出てきても、それを社会へ還元するまでの「システム化」の部分が相当大変であるが、世界的に認知されていない。それを説明することも、安全・安心の分野においては非常に大事である。

(6)桑原総務研究官より、資料4の説明後、意見交換が行われた。

委員
 13ページの、リスクを事前に発見・認知するため社会が備えるべき技術の水準が日本は低いということは、具体的にはどういうことか。

説明者  この領域における具体的課題を見ると、例えば社会において監視カメラがネットワーク化されていて、挙動不審な人を事前にチェックできるような技術等、がこの中に具体的に出てくる。それらの平均値が水準としてやはり低かったということを集約して、こういう書き方をしている。

(7)堀井委員により、資料5について、また、井上委員より、資料6について説明後、意見交換が行われた。

委員
 情報セキュリティに関しては省庁のファンドがついて、常に十分な取り組みがあるというご説明だったが、社会インフラなどから見た場合の情報システムセキュリティという意味でいうと、十分な取り組みができているかは疑問である。2点目は、相互依存性解析にかかわると思うが、今、解析されているのは、どちらかというと災害があったらという話だと思う。人文社会的な話ともかかわると思うが、ATMが持っていかれてしまう等、明らかに、人間の行動あるいは人間自身の文化的背景が変わってきており、それによって、今までは安全だったものが安全ではない。そういう事象との相互依存性解析は、可能性があるのか。

委員
 情報セキュリティの関係は内閣府をはじめ、経産省、文科省も所管しており、全体で見るとかなり取り組まれている。ただ、ご指摘のように、当然、問題点もある。我々のセンターでも、そこのところを重点的に検討しているグループもある。

委員
 ご指摘のような視点では、情報セキュリティへの取組みは必ずしも十分ではない。しかし、研究開発センターでは情報と社会という視点で解析もやっている。なお、私どもの相互依存性解析は、まずは国民的関心も高く、社会経済影響の非常に大きいものということで、大規模の地震災害を対象にしている。一たん構築されたシステムは、例えばテロ対策にも十分使い得るということで、今後は対象の被害を広めていこうと考えている。

委員
 技術シーズとニーズのデータベースは、犯罪、テロ分野ででき上がっているということか。そのようなものを扱う場合は、特許や知的財産権の話がいろいろあると思うが、その扱いはどのようになるのか。

委員
 当然、そうしたデータベースを構築することは了解の上で、ご協力いただいている。今後、データベースの活用にあたって、特許という話につながると思われる。活用の方法についてはさまざまあるが、行政側のニーズに対してデータベースを使って、研究者を紹介することにより、その後で、具体的な共同研究等の話が進む。このため、当面、ご指摘のようなご心配はないと思っている。

委員
 データベースがどこまで使えるのか、どのぐらい効果があるのかという点をどのように検証し、かつ、実際に社会にどのように還元して使えるようにしていくか、具体的な考えをお聞かせ願いたい。

委員
 まず、プロトタイプをつくり、ニーズとシーズのマッチングがうまくいくためのアプローチを検証している。それを実際にどう使っていくかという点については、先ほど言ったようなマッチングを行って共同研究を立ち上げていただく、あるいは、研究を公募する側に競争的資金獲得のための情報提供をする等、が考えられる。

委員
 深掘り課題として、児童・高齢者の犯罪・事故からの防護が提案されている。社会基盤という観点からすると、かなり有用な課題ではないかと考える。

委員
 今、実際のリスク・ハザードの発生確率あるいは規模からいうと、例えば地震や台風、特に地震が大きいと予想される。もう一つ、犯罪は世間の注目度も高い上に、増加傾向にあり、これは嫌なことだと我々は思う。単純に、今までのリスクの発生確率と規模だけでは言えない、潜在的な拡大の可能性があり、重要な分野の一つである。科学技術でどれぐらい解決できるかは、一つのポイントである。いろいろなセンサー類、監視装置類、それを設置する社会システムとの組み合わせでないと、成立しないことが考えられるため、民間企業ではできない分野ではないかということで、我々は注目している。

委員
 児童・高齢者の犯罪に関し、総務省でもユビキタスということで、特に児童向けの事例を集め検討している別のワーキンググループがある。本委員会とのすみ分けはどうなるのか。

事務局
 文科省としては、総務省、省内の関連部署と連携をとって取り組んでいく。例えば今はランドセルにGPSをつけて歩く子供が多いが、そのような機能は5年前には一般国民は思いもつかなかった。同様に5年後、新しい技術でもって実現される安全がある可能性もある。

(8)御厨委員より、資料7を説明後、意見交換が行われた。

委員
 この種の人材育成プログラムは、まだ2年であることから、今後5年後の課題になるが、トレーニングを受けた方が現場へ戻り、そういう職種にきちんとつき、さらにそれがプロモーションを受けているか、または、その部署にインフラがきちんと整備されたのかをフォローアップすることが重要。極めて少数であっても枢要なポジションへ上がっていかれる方には継続支援をJSTか東大の先端研あたりで考えていかないと、いずれは息切れする。

委員
 今、我々が一番困っているのは特に出口論である。5年後の出口をどこに求めるかという点については、東大の中でも検討しているし、我々も考えている。しかし、人材のインフラをさらに後追いしてサポートするというのは、できますとは全く言えない厳しい状況。もう一つ、安全・安心の部署にある人がその中で決して満足していない現状がある。企業等で非常に孤立しているために、彼らの間で連携が行われ、最終的にネットワークができた。このネットワークをさらに発展させて、それぞれの部署でどのように広げるか、プログラムの出口論で議論すべき点である。

(9)板生主査より、資料9を説明後、意見交換が行われた。

委員
 天然痘のバイオテロは、2年前に安全・安心の懇談会をやっていたときに比べて、あり得る蓋然性はもっとふえたと総合科学技術会議では認識されているのか。

事務局
 リスクそのものを定量的分析してどうかというのはあまり聞いたことはない。ただ、天然痘に限らず、世の中一般における不安感はふえているという認識を我々は持っている。

委員
 テロの仕事は、ワクチンや薬剤を開発しても人体実験ができない、要するに確かめられないというのが、最大のフラストレーション。一方で、国民の安全・安心は、意見を集約すれば食の安全など、ほかのところに少しずつシフトし始めている。天然痘のテロやCDCが並べたような病原体による、あり得るかもしれないテロに集約していくというのは、だんだん厳しくなってきたという気がしている。技術的には問題がないが、こういうものをトータルとして横並びにしたときに、こういうことの蓋然性がふえている、ということを本格的に検討して、反映させていくメカニズムが我が国にはない。

委員
 テロや犯罪を考えるときに、どこまでを想定するかという、非常に難しい話になる。テロや犯罪はいつも進化しているので、どこまで想定するかというのが一番問題になってくると思う。

事務局
 いろいろな科学技術のファンドもしくは何らかの投資をする際の政策判断として何に投資するか、「重点化」ということが第3期計画では言われている。そのときに安全・安心の分野は、技術の先端性だけで競うわけではなくて、この技術が求められている社会的ニーズ、もしくは、それが起こる蓋然性、いわゆるリスクの大きさが非常に大きなポイントだと思う。オーソドックスには、発生確率掛ける被害の大きさということだが、世の中の安心という目から見た場合、掛け算だけで世の中の人は納得しない。たとえ確率は低くても、一たん起こると大変だというものについては、常に備えをしてほしいという要望が強い。その判断をどうするかという点も、今後の重点化の視点とリンクしている。

事務局
 ライフサイエンス分野では感染症が、戦略重点化技術として集中的に投資しなければいけないと位置づけられている。社会基盤分野では、テロ対策としてNBC、爆発物への対処をするという方向性は出ている。もう一つ、アメリカの各種の機関、政府機関を回ってみたところ、どの省庁も、バイオテロへの危機感がこの2年間で非常に強まっているという感触があった。

委員
 例えば防犯だと、5分間破られなかったら大丈夫という、ある意味では破られる確率はあるが指標がある。今までは、被害の大きさだけが評価基準になっていたが、それが起きたときにここまで防げれば大丈夫というような指標にすると、安心を定量的に訴えられるのではないか。

(10)事務局より、資料10を説明後、意見交換が行われた。

委員
 どういうことが国民から希望されているか、技術的には何ができるか、社会法制上どういうことが可能なのか、いろいろな検討が必要になってくる。テロは非常に不安としては大きいが、これを技術的、社会的にどうやるのかという点も、非常に大きなこれからの討論課題である。

委員
 最近は、CMの中でも安全・安心という言葉が出てきたりするようになっているが、国民の意識をそういった方向に進めていくべきかと思う。

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科学技術・学術政策局政策課安全・安心科学技術企画室

(科学技術・学術政策局政策課安全・安心科学技術企画室)