安全・安心科学技術委員会(第17回) 議事録

1.日時

平成21年3月19日木曜日 13時~15時

2.場所

文部科学省 5F7会議室

3.議題

  1. 主査代理指名
  2. 委員紹介、自己紹介
  3. 研究計画・評価分科会および安全・安心科学技術委員会の設置について
  4. 安全・安心科学技術の取組状況等について
  5. 安全・安心科学技術分野の今後の取組について(ディスカッション)
  6. その他

4.出席者

委員

板生清委員主査、青木節子委員、大野浩之委員、岸徹委員、四ノ宮成祥委員、土井美和子委員、奈良由美子委員、橋本敏彦委員、樋渡由美委員、村山裕三委員

文部科学省

泉紳一郎 科学技術・学術政策局長
岡谷重雄 科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(推進調整担当)
西田亮三 科学技術・学術政策局安全・安心科学技術企画室長

5.議事録

1) 開会

第5期科学技術・学術審議会として最初の委員会であり、人事案件である主査代理の指名は非公開で行った。岸委員が主査代理に指名された。

 委員の紹介、自己紹介を行った。

<板生主査挨拶>

 ここの委員会は、科学技術・学術審議会の研究計画・評価分科会の中の安全・安心科学技術委員会となっている。評価分科会の中では技術的な分野で縦割りになったいろいろな議論がされている。それに対して、この委員会は安全・安心という、言ってみれば横ぐしを刺したような、名前、ミッションだけ見ると幅広い分野になっている。

 そこで、この委員会がどういうような形で活動することがお国のためになるのか、そういうことを常に考えながら、この委員会をどういう形に持っていくのが一番よろしいかということを新しく加わっていただきましたメンバーの方々にはぜひ新鮮な目でながめていただいてご議論をいただきたい。

 特に昨今、安全・安心という言葉がまくら言葉のように、あらゆる技術開発の上につけて言われているが、実際問題として国民にとって一番大事なのが安全・安心である。技術だけの観点ではなくもっと社会に目を向けて、どういうふうにして技術を社会に実装していくかと、社会が必要としていることはどういう技術を使ったらそれができるんだ、というような観点からご意見をいただき、より充実した意見を集約して、この審議会の中に反映させていただくと、こういうようなことでこの委員会を進めていきたい。

 

<研究計画・評価分科会および安全・安心科学技術委員会の設置について>

【西田室長】  研究計画・評価分科会と安全・安心科学技術委員会の設置について、資料1から4に基づき簡単にご説明をさせていただく。

 安全・安心科学技術委員会は、資料1のとおり、研究計画・評価分科会決定に基づき、今年の2月20日に設置が決定された。委員会のメンバーは資料2にあるとおり。

 研究計画・評価分科会の運営規則は、資料3にあるとおりだが、第4条で「分科会は、その定めるところにより、特定の事項を機動的に調査するため、委員会を置くことができる」という規程に基づき、安全・安心科学技術委員会が設置されている。

 安全・安心科学技術委員会の運営規則では資料4にあるとおり、議事の公開、あるいは定足数、過半数の出席がなければ会議を開くことができない等について定めている。

 

2) 議事

<ディスカッション>

【西田室長】  資料5で示すとおり、安全・安心科学技術委員会は、研究計画・評価分科会のもとに設置された委員会の中の一つである。安全・安心科学技術について重要事項の調査検討を行っていただく。

 安全・安心に関する科学技術の推進については、資料5の2ページにあるように、第3期科学技術基本計画を踏まえた基本的な考え方のうち、社会、国民に支持され成果を還元する科学技術の実現、安全・安心な社会の構築への貢献など社会的価値の創出を目指し、研究開発の成果を通じたイノベーションを実現するといった考え方に基づいている。

 具体的には、危機事態別・分野別に、大規模自然災害など7つの分野に分けて、各施策を推進している。これら7つの分野の具体的な研究開発の内容については資料6のとおりで、文部科学省の各施策の主な概要と、成果の展開事例等を右側の欄に簡単にまとめている。

 また、安全・安心科学技術については、特に現場のニーズとシーズのマッチング、あるいは、その研究開発成果の社会実装を重視するという観点から、「安全・安心科学技術プロジェクト」を平成19年度から新たに立ち上げて実施している。

 また、本委員会では、資料5の3ページにあるとおり、「安全・安心科学技術の重要研究開発課題について」という報告書を平成19年7月に取りまとめている。この中で、安全・安心科学技術の考え方と重要研究開発課題の抽出の視点として、行動学的、心理学的知見も活用した人間行動や、人間を取り巻く社会環境の把握をした上で安全・安心を確保するシステムに反映させてくという視点を取りまとめるとともに、重要研究開発課題の例として、3ページの下にあるように、災害情報通信システムの開発、テロ・犯罪等で使用される危険物探知、子供・高齢者の危険状態の探知や事故予防、あるいは、疾病予防、健康増進などの健康モニタリング等について重要研究開発課題の例として取りまとめていただいている。

 人間の行動や人間を取り巻く社会環境の把握等については、こちら資料6の3ページの一番下にあるとおり、戦略的創造研究推進事業の中で「人間と調和する情報環境を実現する基盤技術の創出」という新たな研究プロジェクトが21年度から立ち上げられる予定である。

 重要研究開発課題の例については、安全・安心科学技術プロジェクトの中でもテロ対策に係る技術開発、あるいは、地域における災害情報システムの研究開発などに取り組ませていただいている。

 安全・安心科学技術プロジェクトでは、具体的に資料5の4ページにあるように、テロ対策では危険物探知、化学剤・生物剤のリアルタイム検知の技術開発を行っており、平成21年度からの課題としては液体爆発物・危険物探知技術について公募しているところである。また、地域の安全・安心の分野では、平成20年度から災害時における地域の安全・安心確保のための情報システムの構築について取り組んでいる。

 また、テロ対策については、安全・安心に係る知・技術の共有化という観点から、テロ対策技術について、あるいは、バイオディフェンスに係る医療対策等について、ワークショップの開催等を行っている。

 資料5の5ページでは、安全・安心科学技術の現在の動向と、安全・安心委員会の今後の取り組みについて簡単にまとめた。

 現在、総合科学技術会議において第3期科学技術基本計画に基づく分野別推進戦略について中間フォローアップを実施している。安全・安心科学技術は社会基盤科学技術分野の一つとして、総合科学技術会議社会基盤プロジェクトチームにおい検討が実施されており、本年の3月中に検討結果を取りまとめる予定と聞いている。

 また、文部科学省においては、次期科学技術基本計画の策定に向けた検討を視野に、新たな委員会を設置し、本年6月以降検討を開始する予定である。ついては、安全・安心科学技術委員会においても、安全・安心科学技術分野の課題を把握するとともに、次期科学技術基本計画の検討も視野に入れつつ、さらなる発展に向けた提言をおまとめいただきたい。

【泉局長】  今、西田室長からご説明申し上げたのが基本的な骨のところだが、今回初めて当委員会にご参加いただいた先生方もいらっしゃるので、もう少し大きいフレームワークである科学技術基本計画について説明したい。

現在の科学技術基本計画は3期目で、平成18年度からスタートして22年度までの5年間をカバーしている。基本理念と政策目標を立てており、科学技術政策を通じてどういったことを実現していくかということで、「健康と安全を守る」という理念、具体的には「安心・安全で質の高い生活のできる国の実現に向けて」ということで、「健康」と、「安全が誇りとなる国」という2つの目標が立っている。

 この目標のもとに、総合科学技術会議が、資料7の1ページにあるような分野別の推進戦略を立て、それを踏まえて文部科学省も傘下の研究機関あるいは大学等においての研究開発を進めている。

 それについて、文部科学省における安全・安心科学技術に関する基本計画、研究開発計画の策定及び推進に関する重要事項の調査検討ということで、この委員会でいろいろとご審議いただく。具体的には新しいプログラムの中での新しい計画、取り組み、研究開発プログラム策定の事前審査、あるいは、事後の評価、中間・事後の評価といったようなことを行っていただいている。

 平成21年は第3期科学技術基本計画の4年目ということで、この夏ぐらいから研究計画・評価分科会、そのもう一つ上の科学技術・学術審議会のもとに次期科学技術基本計画に向けた、文部科学省としての取り組み、あり方というものについてご審議いただく場を設け、全体的なご審議をいただくので、この委員会でもそういったこともにらみながらご審議をいただきたい。

 今のフレームワークの中でのいろいろなご審議ということもあるが、さらに次期科学技術基本計画に向けたこの分野の取り組みのあり方といったようなものについてぜひこの委員会を通じてご審議いただいて、科学技術・学術審議会のもとに置かれる次期基本計画に向けた審議に反映させていきたい。分野別の個々のスペシフィックな議論ももちろんだが、総合的なご議論をぜひこういった場でお進めいただきたい。

【板生主査】  局長がおっしゃったようなことが我々のミッションである。特に技術と社会との接点のような形で、安全・安心という分野が非常にウエートが高くなってきておるという現状からして、技術をベースにしながらそういう国民の安全・安心というのを守っていくというこの非常に大きな課題の中に我々は位置づけられているということを改めてもう一度再確認して、今後の委員会の進め方とについて今日は忌憚ないご意見をいただきたい。

 この委員会の活動を通して、実際に具体的な政策、ある意味では提言としてそれが実ってきつつあるものということに関して、もう一度念のために整理していただきたい。

【西田室長】  これまでご議論いただきました結果が、具体的な予算、あるいは施策としてつながってきたものとしましては、安全・安心科学技術プロジェクトの中でテロ対策のための科学開発、あるいは、地域の安全・安心のための科学技術といった取り組みがある。

 また、平成19年7月にまとめていただきました報告書に基づきまして、資料6の3ページ、戦略的創造研究推進事業として、「人間と調和する情報環境を実現する基盤技術の創出」といった研究開発プログラムを21年度から新たに立ち上げている。

 また、同じく資料6の3ページの上から3番目、科学技術振興機構の社会技術研究開発事業の中で、「犯罪からの子供の安全」といった取り組みもあわせて実施している。

 

【西田室長】  安全・安心科学技術の課題について、資料7に基づきご説明をさせていただく。

 総合科学技術会議の分野別推進戦略の中間フォローアップを実施している中で、社会基盤分野の中間取りまとめが今年の1月9日に行われており、この中の安全・安心分野について抜粋したものがこの資料7の中の記述である。

 総合科学技術会議の中の議論では、基本的に社会基盤技術分野、これは安全・安心も含めてであるが、ほかの科学技術一般と比べて、やはり成果が社会に実装されていって初めてその意義があるということで、実装という観点が重視されるのではないかといった議論が出ている。

 今回、ここでまとめられている課題としては、民間においても研究開発が実施されているが、国の研究開発活動の情報が民間に伝わっていないこともあり、官民の連携が進んでいないのではないか。国が主導する研究開発について必ずしも民間が算入してくるような連携が進んでいないということ。

 また、開発された機器やサービスが現場につながる研究開発方式を実施することが重要であり、研究開発側とユーザー側の組織的な連携を促進する取り組みについて検討する必要があるということ。

 さらに、特にテロ対策技術など、市場が限られ、かつ、必要とされる技術情報の公開にも限度があるなど、民間の算入のハードルが高い分野においては、公的機関も含めたユーザーサイドと研究開発側との連携とともに、両用技術の活用、それから、実際の経験の蓄積がある海外先進諸国との研究開発協力体制の構築が重要というご指摘をいただいている。

 こうしたご指摘も踏まえて、今後の安全・安心科学技術につきましてご検討をいただきたい。

 また、2ページ目に、これまでの取組を踏まえた問題意識を事務局でまとめさせていただいた。今後の議論で必ずしもこれにこだわる必要はないが、たたき台としてご提出させていただく。

 問題意識としては、まず、研究開発フェーズ。これは研究開発におけるシーズとニーズのマッチングの強化が必要ではないか。特に技術の普及に影響を持つ公官庁・ユーザーサイドと研究開発のサイドとの連携、実際その技術を使っていくような制度を持っている公官庁、あるいは、実際のユーザー自体であるようなところと研究開発が予め連携をしていくような取り組みというのを強化すべきではないか。

 それから、民間の技術力の活用の強化が必要ではないか。特にニーズは高いものの市場が限られているものについて、民間算入のインセンティブを高める取り組みの必要があるのではないかということ。

 問題意識の2として、実装フェーズ。これは、ユーザーが限られ、市場が小さいもの、あるいは、革新技術等で新規市場の開拓が必要なものの研究開発や製品化を促進するための基盤、例えば技術標準、基準、国際標準化といったものについて国が整備を促進すべきではないか。あるいは、研究開発成果を社会実装につなげるため、初期需要の創出について国が支援するべきではないかというようなこと。

 また、問題意識3として国際関係で、国際標準の検討など、研究成果の普及に必要な国際的活動への参画について国は支援を強化すべきではないか。また、テロ対策技術等について海外の豊富な知識、経験を我が国の研究開発に生かすために、機微情報を含む海外の先進諸国との協力を強化する必要があるのではないか。

 それから、最後の問題意識4としては、研究開発管理について、テロ対策に係る研究開発など技術情報の公開や、意図しない移転が好ましくないものについて、研究開発時の情報管理体制について明確化すべきではないか。また、毒性の強い細菌の遺伝子情報など、悪用可能な科学技術情報の取り扱いについて何らかのガイドラインを設ける必要があるのではないかということ。

 この問題意識4の最後の研究開発管理については、実は他省庁でも動きがあり、例えば技術情報の管理については安全保障貿易管理の観点から、外為法の改正について検討が行われている。そういった点も踏まえてこのような取り組みが必要ではないかということ。

 また、最後の悪用可能な科学技術情報の取り扱いについては、特にバイオ科学技術の情報について、非常に毒性が高い遺伝子情報などの情報の取り扱いについて、OECDなどでモデル的なガイドラインの検討も始まっており、2年後ぐらいには何らかの取りまとめが行われるという情報もある。

 そうしたことへの対応も含めて、今の時期から検討が必要ではないかということで、ここに問題意識として挙げている。

【板生主査】  今までの説明等を参考に、この安全・安心科学技術の今後取り組むべき課題等について討議に入りたい。

 先ほどの泉局長からの話にもあったように、広く横断的に、国における、国家における安全・安心とは一体何なのかという高次元のところから議論を進めて、各論へ、そういう技術的にはどういうふうに対応すればいいかというような話も進めていきたい。

 したがって、最初は国における安全・安心の科学技術とは一体何かという国家レベルの話、または、生活レベルの話、いろんなレベルの話についてそれぞれのご意見をいただくことからまず始めたい。

【橋本委員】  私は『SAFETY JAPAN』の編集長をやる前に、MOT、マネジメント・オブ・テクノロジーという、技術をどういうふうに実際にビジネスに持っていくかという話を取材させていただいたことがあるが、こういう市場のない、小さいものはすごく難しい。ここで挙げられているような形で支援をしていくというのは大変有効と思う。具体的にどういうものが技術として挙げられているのかというのがあると議論がしやすい。

 もう一つは、テロ対策というのは幾つかあるが、日本はまず第一のテロターゲットにはならないと思っているが、世界でいろいろ騒がれた後にその手段、方法が日本に持ち込まれるという可能性は否定できない。そういう意味ではやり方がわかっているので対策も立てやすいと思う。ただ、ここでいう問題意識3の国際関係というところだが、海外で具体的にどんな被害だったのか、犯人たちがどういうふうにそれを調達したのかとかいうような情報、ほんとうの機微情報みたいなものがないとまず研究も何もない。

 前、にせ札の検査機をつくっている方にお話を聞いたが、その方はにせ札を見たことがなく、外国に行かれて実際のにせ札を入手して、本物との違いを探ったそうである。

 ほんとうに具体的なターゲットがないと技術は空回りしてしまうので、まず調査、どういうものが必要なのか、相手はだれなのか、どんなものなのか、そういうところを調べるのが大事であり、そういったものに対しては支援をしていったほうがいいと思う。

【板生主査】  警察やいろいろな分野で行政的な面から見てもたくさんのニーズがあり、それをどこまで技術的に対応していくのか、技術とニーズのマッチングをしていくということは非常に大事なポイントではないか。その議論は今後さらに深めていく。

【村山委員】  私の専門は経済安全保障で、普通の軍事安全保障ではなくて経済や技術力を使っていかに安全保障に役立てるかという分野である。

 この私の分野から考えると、この安全・安心というのは非常に重要である。なぜかというと、日本にはいろいろないい技術がある。これを軍事的な安全保障に使うというのはまだかなり抵抗がある。特に憲法の問題もあり、平和を愛好するという国民感情もあり、直接日本のすぐれた技術を軍事分野に持っていくというのはかなりまだできない部分がある。

 ところが、そういう安全保障と安全・安心というのは重なる部分があるが、この安全・安心に関しては割合国民のサポートが得られると思う。だから、日本のすぐれた技術をここにうまく入れられれば、日本の持つ資源を非常に有効に使える、安全・安心でいい技術ができれば世界にも貢献できる、そういう分野だと思う。

 したがって、この分野は日本という国にとって非常に重要な分野だと私は考える。

 企業の人に、君たちがやっている技術を社会に役立つどういう分野に活用したらいいか、軍事の安全保障なのか、こういう安全・安心なのか、環境か何か、アンケート調査を行うと、一番大きなギャップは軍事の分野と安全・安心である。軍事に対してかなり反対が多いが、安全・安心なら実際に技術開発をやっている技術者も抵抗なくやれる分野である。そういう点でも国としては取り組みやすい分野という感じがする。

【板生主査】  ただ、技術はかなり共通している。

【村山委員】  だから、技術的には連続しているが、政治的には切り分けは必要だと思うので、その政治的な判断と技術的な判断、そのあたりも議論をしなければならないと思う。

【樋渡委員】  私は、軍事分野のテクノロジーということに非常に関心があり、安全保障や国防の観点から見た国家安全保障ということを徹底的に議論しなければ、食の安全が保たれようが何の安全が保たれようが、テポドンを打ち落とせなかったらどうなるのかという問題があると思う。

 軍事を日本の国防、ナショナル・ディフェンスからどういうふうに考えるのかと。守らなくていいのかと。今、尖閣のあたりで何が起こっているかというのを踏まえて、そうは言っても日本が壮大な軍備を持つわけにはいかないので、今ある民間の非常にいいテクノロジーを、例えばP-Xとか対潜哨戒機の中のいろいろな技術的なことにどういうふうに転用が可能かとか、インフォメーション・テクノロジーは、護衛艦、哨戒機、潜水艦などいろいろなものに必要であるとか。そこは民間のすぐれた技術との間の接点だと思うが、日本の国家の安全保障ということを考える上で、日本のすぐれたテクノロジーをどんなふうに使えるのか。デュアルユースとよく言われるが、そういう観点から国を守るということまで広げて議論していくべきだと私は思う。

【板生主査】  技術的にはかなり共通なものがある。レーザービームのテクノロジーは民間で発達しているものが軍事にも適用できるなど逆のことも起こっている。そういう技術の関係を調査するのは非常に必要だというふうに考えてよいか。

【樋渡委員】  具体的に何のために使う技術なのかというところがはっきりしないと我々はテクノロジーを考えられないとすれば、軍事と民間の普通の技術との間の接点でどんな技術がデュアルユースでほんとうに使えるのかとか、今後こういうふうにしていくともう少し国家安全保障のほうにも貢献できるのかとか、そこはやるべきだと思う。

【大野委員】  つまらない過去に引きずられ過ぎるのはよくない。

 日本は科学技術立国として、一般的な科学技術は民間と軍事で別々にやっても成功するのは多いと思うが、安全・安心というのは危機管理と近いところがある。そうすると、危機管理の基本的な考え方やスタンスはどこの国でも軍の人たちが詳しいし、生活態度まで及ぶ部分がある。そういう教育を受けている人たちの話というのは、逆にエンジニアとして興味を持っている人たちにとってもすごく参考になると思う。海外では軍出身の人が大学へ来て話をしながら一緒に研究をしたりできるが、日本では接触ができないというのは、工夫のしようがあると思う。過去に一回やってはいけないという線を引いている関係があるので、どこまでだったらどういう接触はいいということを再度線を引き直すことになるのか。

 ともかく、安全・安心や非常時や危機管理というのはビジネスとしてはあまりもうからないので、放っておくとビジネスユーズはあまり広がりにくい部分があるかと思う。その一方で、そういうことをちゃんと研究したり、ミッションにしているような人たちがいるのだから、そこをうまく接触できる枠組みを整理することが普通の科学技術分野に比べて多くあるのではないか。例えば、論文を通してお互いシェアする、日本発の標準技術を別のセクターから再度取り込むなど。

【板生主査】  これは一つの大きな課題になってくると思う。文部科学省の安全・安心科学技術プロジェクトの中のテロ対策の科学研究では、防衛省の方にも入っていただいて実際に審査していただいているというあたりで接触があるところだと思うが、その辺はいかがか。

【四ノ宮委員】  諸外国、特にアメリカなどは国防省が軍事開発だけではなく、いろいろな一般の研究開発にグラントを出している。例えば有名雑誌に載っているようなもののグラントがどこから出ているかということを調査すると、ごく一般の研究に国防省からいろいろなグラントが出ている。

 片や、日本では防衛省からはほんの少ししか研究費が出ておらず、むしろこういうふうな文部科学省系のグラントに非常にたくさんの額が出ている。日本の国の特徴として軍事的なものにあまり研究開発資金を出していないという特性があるので、文科省のお金の使い方というのは全世界的に見ても軍事でない方向にかなりたくさん使われているという認識がある。

 それから、資料5の2ページに研究開発の推進で1.から7.までの領域がある。この7領域を見ると、国家の防衛、安全に対するところもあるが、各個人の健康増進、安全というものもある。どういう切り分けで日本国の技術としていろいろな安全を守っていくか、国民の生活としての安全や健康を守っていくかということを、どういう基準で考えていくか、ぜひ皆様方で議論をしていただき、社会、国民に支持されてその成果を還元するという基本的な考え方のもとで、先生方のご意見を伺いたい。

【板生主査】  最初の話は、防衛省や警察がもっと大学にお金を出して基礎的な研究をやってもらいたいと本来は思うが、予算上の制約があってなかなかそれは難しい。そういう意味で文部科学省のテロに対する研究開発というようなことを一緒行うということがある。実際には警察と一緒にやっていることが起こっている。

 2番目の話は、総合科学技術会議において設定されている7つの分野を我々流にもう一度よく見直してみるということが必要ではないかと。

【岸委員】  軍関係の技術といった場合に、それをどういう定義をするかというのが議論する上で非常にややこしい話になってくると思う。軍関係の技術で情報管理のしっかりしているものというのは、ほとんど表に出てこないというのが現実ではないか。

 ただし、ある程度一般化してくるとスピンアウトしたような形、あるいはそれに類する形で表に出てくるということがあり、例えば自衛隊でも科学技術関係の研究会が登録すれば聞ける形になっている。そういう意味である程度スピンアウトしたような形での技術との連携というのはいいかと思うが、それ以上のところに行くと非常にややこしくなるという気がする。

 だから、先ほどからシーズとニーズという話があって、ユーザー側がどういう目的なりどういうものを要望しているかということに対して、そういう技術が応用できるのであれば連携を図るというのは大事だと思う。いわゆる安全・安心の科学技術を推進しているが、自衛隊関連の方にも出てきていただいていろいろコメントをいただいている。そういう意味での連携はある程度とり始めてきていると思う。

【板生主査】  アメリカのように軍がどんどんお金を出して大学に基礎的なことをお願いして研究してもらうという、そこまではなかなか防衛省では今の段階ではいかないというところか。

【村山委員】  これは軍民両用技術の問題で、樋渡先生、大野先生が言われたことは正しい議論で、軍事にも使うべきだが、そういうことを言っても政策的には動きにくい部分がある。

 ところが、技術は連続線上にあるが、安全・安心から入っていくと政策が動きやすい。岸先生が言われたテロ対策で、防衛省と警察が絡んできたというのは、安全・安心から入っていったからうまく政策的にいき始めたわけである。

 だから、方向性というのは重要で、正面から軍事といって切り込むとはね返されてきたが、こういうところから入っていったほうが技術は使いやすいのではないか。

【大野委員】  今の件で、幾つかレベルがあると思う。高いレベルでの議論というのもあるが、もっと基本的なところで大学の人は見落としていることがあると思う。

 つまり、安全・安心や非常時の対応と考えたときに、大学の先生が及ぶのはストラテジーとタクティクスまでである。実際ロジスティックスがないものをやっても展開できない。

 自分が内閣官房で安全、情報セキュリティ関係をやっていたときのことだが、もし日本の政府がサイバーアタックを受けたときにどうするかというとき、技術出身の人、大学系出身の人というのはこういう技術をやってこういうプロテクションをやってとやるわけである。ところが、一緒のチームにいた防衛省の人は、長期戦になることを考えて、まず食糧と水と毛布を確保してというところから話をする。その上で人のローテーションも決めた上で長期戦に備えましょうということを実際にする。しかし大学の先生は全然そんなことは思わず、ルーターを持ってきてあそこに備えて、ファイヤウォールをここへ立ててという話をしてしまう。一瞬動くかもしれないが、長期戦になったらそんなやり方では全然もたない。

防衛省の人は当たり前のこととして戦略をする、展開するからストラテジー、タクティクス、ロジスティックスと普通に考えているのが、全く新しい。そのぐらい発想が違う。基本のところでストラテジーとタクティクスだけで判断、話をすると工学系の技術だけで終わってしまう。なので、情報公開ができないような微妙なところを出せと言っているのではなくて、基本的な立ち位置で情報交換のようなことをすると、何か戦略的な広がりが持てるのではないか。

【板生主査】  今のような話をいろいろ考えていくと、まだ議論があるが、文部科学省が取り組んでいる技術的な観点から、安全・安心という立場を保ちつつ、軍事との関連、かなり境界の領域があるので、その辺のところをまとめていく。

 ただし、安全・安心という分野に大学も含めてもっと関心を持ってもらって、基本的な研究までもっとやっていただく必要がある。文部科学省、今後の安全・安心科学技術委員会では、さらにそういう技術者、研究者、技術そのものを掘り起こしていくということ、それは別に軍事的な技術に直結するんではなくて、むしろ安全・安心という技術に直結するものだという形で進めていくということが、一つ大事なポイントではないか。

 

【板生主査】  少し視点を変えて、生活という観点からもひとつ議論をしていただきたい。日常生活の中での安全・安心ということも含めて議論していただきたい。

【奈良委員】  安全・安心についてのいろいろな取り組みが各省庁でされている中で、この文部科学省がこれを議論することの位置づけ、意味を今一つ考える必要がある。

 ネガティブな言い方をするとほかの省庁の取り組みとのすみ分け、ポジティブな言い方をすると連携になるが、それを絞り込むときの視点が、私はニーズとシーズのマッチングかと思う。

 ここで安全・安心の安心の部分が出てくると思うが、生活者のニーズ、ユーザーのニーズというのを大事にする視点がまず重要である。そうしたときに、国民の理解を踏まえて税金を使うというような視点が重要であろう。そうすると、絞り込みのときに、一つには生活者のレベルでニーズをきちっと押さえた方向性、つまり生活者がニーズを既に持っているとか自覚しているとかということで、多分ここのあたりで食の安全、医療、防災という問題が出てくると思う。ここに科学技術を使いましょう、考えましょうというので方向性が一つ明確にあると思う。

 もう一つの方向性としては、国レベルのニーズである。生活者が自覚していようがいまいが、生活者が拒否反応を示そうが示すまいが、国防、国家保障、安全といった問題は国レベルで重要なニーズである。そこにどう科学技術を使うべきかと考えたときに、おそらくそれは防衛省などが先行してやっているはずだが、情報が出ていないので知り得ない。

 であれば、国民ということを意識すると、伝え方がある。いかにそこにお金を使うか、いい、嫌にかかわらずやらなきゃいけないということをどう伝えるか、そして、国民の理解を得るかという、そこまでを含めた技術というものを議論するというのが2つ目の方向性かと考える。生活者のニーズに間接的にはこたえ得る安全・安心科学技術の議論の方向性かと思う。

【青木委員】  安全・安心は、誤解を招く言い方でもあるが、ぜいたく品だと思う。

 確かに国の安全保障は大事でそれがまず基本にあるが、たくさん核兵器があって他国から攻められないし軍事的には強い国であっても、個人としては貧しいという国はいくらでもある。

 日本はそういう国ではない国を目指すというのが安全・安心という政策であろうと思う。国家安全保障ももちろんきちんとする、専守防衛はしっかりする。しかし、非常に質の高い生活を国民に提供し、国民の側でもそこに努力をしていくということが、ほかの国とは違う日本の強みであるということを出していくのが、安全・安心ではないかと思う。

 だから、長期的に、限られた資源の中で有益な政策をとり、広く国民に公平な安全・安心を与えることが重要である。そのとき、公平とは何なのかということを考えていくということも大事であるし、安全保障と国家、安全・安心と社会の切り分けをどう考えていくのかということも、文部科学省が安全・安心政策として考えていくときには大事であると思う。

【土井委員】  文部科学省が技術として何をなせるかという話と、きちんとそれを実際の場に適用できるようにするために、その成果を関連の総務省、経済産業省、国土交通省、農林水産省、厚生労働省など、関係するところとどううまくその技術を生かしていけるような枠組みにするかというところが結構難しいのだと思う。

 先回議論させていただいたときに、技術はあるが、それをきちんと運用するための人材がないからうまくいっていないという話もあった。人材の話はこの安全・安心科学技術委員会でやるには領域が違うとすると、国全体としてはどうやってそれをやっていくのかというところもきちんと考えていかなければいけない。

 もう一点は、国を守るというのも大事だが、もし守り切れなかった場合、災害の場合でも災害が起きてしまったときに、その後どう復興していくか。日本は地震やいろいろな災害を経験しているのでそこに関してノウハウを持っていると思う。津波の予測などは世界的に運用されているが、ほかの国にどうやって適用していけるのかと技術的にもう一度考え直すことが、ほかの国に対して何ができるのかというところにもつながっていく。

【板生主査】  人材育成の観点というのは一つある。企業の人の危機管理というものができていない。危機管理に関する人材育成をやるのかというのは、安全・安心と裏腹な関係であるが、非常に大事なポイントなのではないか。

 トータルな技術がないと安全・安心というシステムとしての技術になっていかないので、単発的な技術があっても、それをうまく実際に社会実装ができないというケースが多いので、それをどういうふうにやっていくかという具体的な話はいろいろあるだろう。

 

【板生主査】  後半は少し具体的な話に進み、それでまた最終的に全体的な整合性をとるというようなことにしていきたい。こんな技術が足りない、不足していると。先ほどの7分野でいいのかどうか、必要なのかどうか、または十分なのかどうかというようなことも含めて、議論に進めていただきたい。

【四ノ宮委員】  私は、社会、国民に支持される安全・安心ということで、ベースには各日本国民個人個人の健康増進と、生活基盤での安全というのはぜひとも必要だと思うが、その上に全体の枠として日本の国家としての安全・安心を支えられればという形で考える。

 ここにある7分野に、日常トピックになるような大きな問題は出ていると思う。少し隠れてあまり見えないが、日常の何でもないようなところでの安全の確保、思わぬところに落とし穴があるようなところの防止などの観点もあってもいいのではないか。

【板生主査】   ほとんどの分野が、少なくとも予算を取って進めている。したがって、まだ手がついてないテロ、地域の安全の分野に力を入れた。新興・再興感染症の問題も一取り上げた。

 全体的な中で、この7分野以外のもっと大事な分野でやらなければいけないことがあるというような観点から取り上げるのも、それは一つの見方ではないか。

【大野委員】  安倍総理のころに出てきたのだと思うが、安全・安心が誇りとなる国というキーワードがあった。国民が自分たちの国をよく考え、自分の国にどういう悪い点があり、どの点がすばらしいから誇りを持つかというのを、一人一人に考えさせるというのは文科省だと思うし、ほかが手を出せない。安全と安心が誇りとなる国を実際つくり、国民一人一人がそれを実感するというのは、非常にいい。

 なので、そこに何か切り口を見出せないか。安全と安心が誇りとなる国を実現するためのものとして、それを実際国民に実感させる方向で何かうまく切り口が切れないか。

【板生主査】  先ほどの青木先生からのお話に、たとえ経済的には少しおくれて新興国が大きくなってきても、質の高い生活、公平で、なおかつ、誇りのある国になるべきだということがあったのかと思う。

 水と空気と安心はただというのが日本の一番の誇りであり特徴であったように思うが、どれもみんな有料になってしまった。安心とは一体何だということで議論をし始めるとなかなか難しいところへ行く。安心の科学というのは一体何なのか。技術的な観点からだけではなく、人間の心理学的な観点、いろいろな観点から安心をどう実現するか、安心とは一体何なのか、そういうところの議論は必要だと思う。

【大野委員】  最近、経済産業省が、セキュリーナというバーチャルダンスユニットで、情報セキュリティの安全性を訴える振りつけをつけたセキュリティ音頭という踊りを出して、ビデオを公開している。

 だから、安全・安心音頭などをつくって夏休みのラジオ体操のかわりに踊ったりする。実際踊ると、そういう幾つかのキーワードがすり込まれる。

【村山委員】  2004年4月の安全・安心な社会の構築に資する科学技術政策に関する懇談会で、安全・安心とは一体何なのかという議論を行ったが、安心とは何かというのがほとんど結論が出なかった。安心の定義というのは非常に難しい。心理的なものなどが絡んでくるので、なかなかこれは客観的な基準というのは難しい。

【板生主査】  既に大勢の方で議論がかなり尽くされていると思う。したがって、今後の我々がこれをベースにしてさらに進めていくというときに、何がさらに新しくつけ加えられるものか、または、根本的に考え直していくかを議論し、考え方を提示していただければありがたい。

【四ノ宮委員】  資料7の問題意識4に機微情報に関する科学技術の取り扱い、デュアルユースの話がある。科学技術を開発していく段階で通常はいいことに使おうと思ってやっているが、裏を返せば悪いことにも使えてしまうということに関して、技術開発担当者は認識していく必要があると思う。そのバックグラウンドとして教育の問題があるので、教育に研究開発を絡めて何かできるかという観点でも今後議論していただければと思う。

【大野委員】  金沢大学と幾つかの大学が連携して教員免許更新の支援のためのeラーニングの教材をつくっている中で、学校における安全と安心とはというタイトルの7回のレクチャーをつくっている。学校における安全と安心を、生徒ではなく先生に、こういう考え方がこれから重要だというのを適切にわかりやすく出すのも一つのいい切り口か。

【樋渡委員】  大学の教員にもそのeラーニング用の資料を見せたらよい。

【大野委員】  安全・安心科学技術を普及させるためのメカニズムとして取り込むというのはあるのかという気がする。

【奈良委員】  放送大学でも免許更新のコンテンツをつくっているが、教育現場の先生方対象である。

 大阪教育大学では学校リスクマネジメントというプロジェクトで、学校で起こり得るあらゆるリスクに対して教員がどのように取り組むべきかということのマニュアルやビデオ教材をつくったりしている。

 子供たち向けであれば、例えば大阪教育大学附属池田小学校では今度から安全科という科目ができてカリキュラムの中に組み込まれた。

 この委員会の方向性とどのように連携させていくかというのも一つ議論の対象かと思う。

【大野委員】  こういう講習をつくるということは期待は高いが、つくるのは難しい。

【板生主査】  人材育成、リスクマネジメント、それに関するいろいろな教育ということも安全・安心の我々の話の中で議論すべきことかというような意見があった。

 

【板生主査】  科学技術の課題についてもう一度振り返って、議論を深めていただきたい。

【西田室長】  安全・安心科学技術プロジェクトという我々の取り組みでシーズとニーズのマッチングという形で研究開発をさせていただいている。ただ、実際にできた成果を実装という形に持っていこうとすると、いろいろな課題、ハードルがあり、例えば政府で調達していくためにはある程度国際標準になっていないと調達対象にならない。単に研究開発の成果を出しただけで国の支援が終わってしまうと、そこから先になかなか進んでいかない。

 したがって、安全・安心科学技術を社会の中に適用させていくということを国が主導するのであれば、単に研究開発をした段階でもう終わりということではなく、その先も含めて国として考えていかなければいけないのではないかということで、この問題意識1、問題意識2をご提案させていただいた。

【板生主査】  そういう意味でまだ世の中にインパクトを与えるほどの成果という形では出てきてないというのは、一つは予算規模の問題もある。大学での研究の成果を社会に実装していくというときに、さらなる経費が必要になってくる。それからまた人材が必要になってくる。最終的には何らかの形で社会実装して見せるというようなことに関しての戦略、どういうふうにその戦略をつくるかということも大事なポイントになる。

 安全・安心の、またはリスクマネジメントを行える人材をどう育成するかというところは一つ分野の課題となるか。人材育成を安全・安心で扱うかどうか。

【村山委員】  基本政策推進専門調査会社会基盤プロジェクトチームで人材育成の話はしているが、どこの分野の人材育成かというと地震、大規模災害である。安全・安心分野の人材育成をどうするかという議論はあまりない。

 会社レベルでもリスクマネジメントが非常に大切になっているが、なかなかちゃんとした人材がいないというのは非常に大きな問題である。だから、そういう問題はここで話し合ってもいいのではないか。

【大野委員】  普及啓発の話というのもぜひ人材育成とともにここで議論していただきたい。人材育成とともにその育成した人材が広くあまねくいろいろな人に成果を伝えるような体制をぜひ考えていただきたい。

【岸委員】  シーズとニーズのマッチングの話は非常に難しく、どうしてもそこの間にギャップがあるということで、ニーズ側の考えているレベルのものとシーズ側が提供するレベルのもので若干ずれが出てくるというようなことがよく起こる。だから、理想的には研究開発する段階でニーズ側の人に入ってもらってある性能を決めたものを具体的につくるというような形がよい。そうでないと、つくった人がこういうものができたからどなたか使っていただけませんかという話になってしまうので、実装する場合におくれ、ずれが出てくる。シーズとニーズのマッチングのところがもっと密接に、何が必要なのかという、既製品ではなくてこういう性能のものが要るんだというニーズ側の要求がしっかり出てくると、このプロジェクト自身もうまく走るのではないか。

【板生主査】  最初からニーズを持っている役所と一緒になって大学の先生とやるような形をとるのは必要だろう。そういう意味では、防衛省にしても警察にしても国土省にしても、そういうニーズを持っている方の本来のお金でその研究開発ができれば一番よい。ところが、それが必ずしもそうなっていないのが現状だとすれば、その辺をどうするかということもいろいろまた文科省の中でもお考えいただくようなことになるかもしれない。

 いずれにしろ、そういうニーズを持っている人をもっと最初から入ってもらってやるということは非常に大事である。それを実現することを考えていくというのが一つ。

【土井委員】  安全・安心科学技術というときに想定される国際標準というのがイメージがわからない。国として安全・安心で国際標準というふうに言われたときに、一体何を想定されるのか。

【西田室長】  例えばテロ対策の関係で、爆発物検知技術の開発をさせていただいているが、国際的な標準というか、どこまでの性能のものをつくればいいのかという基準が、まだ日本国内はもちろん、海外においてもまだ十分確定していないという実情がある。研究開発側からの希望として、基準、標準といったものがあらかじめ検討されているとその研究開発自体も効率的にできるし、研究開発目標も明確になってきてありがたいというようなニーズが寄せられている。そのような取組への支援を想定している。

【土井委員】  文部科学省と国際標準というのが違和感がある。何か製品なり何なりが定まって、それに対してあるのではないか。世の中に出していくことを真剣に考えてやっていくわけか。それぞれの技術に関して、個々の話になるのか。

【西田室長】  基本的には個々の分野の標準化についても検討していきたい。例えば爆発物検知について、メーカーは研究開発をしているが、標準づくりについてメーカーだけではなかなか動きづらいので、我々文部科学省が、経産省の技術標準課と話し合ってその標準化に向けた動きをサポートするというようなことをする。安全・安心科学技術の将来的な技術の普及をしていくに当たって、そういった標準化の取組についても、国として支援していくような取り組みが必要ではないのかということ。

【土井委員】  国が支援することは必要だと思うが、自らの製品の仕様をデファクトやデジュールとして標準化することを勝ち残っていくというのが常道なので、文部科学省がやることが適しているのか。市場開拓と併せて、経済産業省なりに引き継いで、というのが筋のような気もする。

 国際関係としては、日本の中でどう安全なのか、安心なのかということで考えて今まできているが、海外からの観光客、海外からの雇用もあるので、そういう人たちに安全・安心という教育をどうするかというような観点で、文部科学省はきちんとすべきなのではないか。

【岡谷戦略官】  第4期の科学技術基本計画というのは国全体の政策であって、この審議会は確かに文部科学省の中にあるが、安全・安心がどうあるべきかと考えるときには、省庁の枠にとらわれない検討をしていただきたい。

 もちろん、標準は経産省がやっていることを重々承知しているが、もし安全・安心の科学技術の研究開発を進める中で標準化というのが大きなイシューなのであれば、それについてどういうふうにやるのかというのは第4期の科学技術基本計画のほうに入れていくということを提言していくのも一つの案であるかもしれない。

 文部科学省は教育をやる役所だから教育に関して何かを議論していかなければならないというふうにとらわれていただかないほうがいい。

【大野委員】  ちゃんとした標準化ができるようになるためには教育がないと難しい。科学技術を進めていくときに、一定の標準化をできる人たちがちゃんといないといけない。標準化ということもちゃんと大学のカリキュラムで学んでおくことは重要なのではないか。

【板生主査】  いずれにしろ新しい科学技術を開発したり、それを普及したりするということが最終目的になっているので、いかに大勢の人に使ってもらうか、安く提供するかというような観点から立つと、国際的な協調というのが必要になる。その中に標準化も入っている。標準化が目的だというわけではない。国際的な活動をやっていくことが目標だ。

【岸委員】  国際的なことで動こうと思うと、国と国のいわゆる制度の問題、申し合わせの問題というものが出てきて、そういう制度やシステムがはっきりしてない状態で協力をするというのはなかなか難しい。まずそれを整備するということになると思う。もしそうでなければ、ある程度プライベートな関係で協力をするという形なので、強化するといった場合にどこまでやるかというのは明確にする必要がある。

【青木委員】  標準化については、国際機関でのものも大事だし、ISOやICAANのような非国家主体が主となるものも大事だと思う。また、日本の技術を広めていくという面からも相互運用性、インターオペラビリティ、コンパティビリティ、インターチェンジャビリティ、そういうものすべてを高めていけるようなものを初めから考えていくことが大事ではないか。

【四ノ宮委員】  問題意識4のところに「毒性の強い細菌の遺伝子情報等」とあるが、最近の科学技術の発展に伴い、例えば病原体そのもの、ウィルスや細菌そのものを管理すればいいという時代ではなく、情報からウィルスをつくれるという時代になってきたので、そういう情報の取り扱いは今後かなり重要になってくると思う。

 そういった観点で、ここにガイドライン等とあるが、科学技術の情報の取り扱いそのものについていろいろ考えていただきたい。それを今後どうやって教育していくかということについてもいろいろと意見を伺うことができればと思う。具体的には私のところでは、イギリスと共同で科学技術に関して、研究者に対してどういうふうなエデュケーション・モジュールを提供できるかということを検討している。

 

【泉局長】  我々が気のついていないような視点もあり、安心・安全に関する本質的なご議論もいただいた。いろいろな事柄の階層のようなものもあわせて整理をした上で、次回以降どういうふうにご議論いただくかということを整理する必要があると感じる。

 基本的にはこの分野の研究開発、あるいは技術の普及に、具体的にどういう方策が必要、あるいはこういう方向が重要であるというようなことについて、掘り下げてご議論いただく必要があると思う。

【岡谷戦略官】  テロ対策をやっている中で非常に大きな問題を感じているのは、技術の背後にあるほんとうのニーズのところがわからない、だから、研究開発が空回りすることが起こっているのではないか。

問題意識3の機微な情報を含む海外との協力のためには枠組みが必要になってくる。そういうのをどういうふうにするべきか、また、情報の管理をどういうふうにするべきかと、根っこまで掘り下げた議論をしないとほんとうの意味でのテロ対策技術、ほんとうの意味でのニーズの情報というのは知り得ないというところにこれまでの行政の中で私たちの問題意識が出てきている。もちろんオールジャパンでやることで、当然のことながら警察や、あるいは、国土交通省と連携してやっていかなければいけないし、経産省と標準化の議論もしていかなければいけない。その根っことなるところでほんとうのニーズがわかり切れてないところに私たちは一つのフラストレーションを感じているので、こういう問題提起を行った。

【板生主査】  追加のご意見があれば、3月26日までにいただきたい。

 

3) 閉会

【西田室長】  本日の議論を踏まえ、まず我々で論点整理をし、それを次回提示させていただくとともに、また議論をそれぞれ深めさせていただきたい。

 スケジュールは、現在の案では取りまとめが6月から7月ごろと示している。文科省の中の第4期科学技術基本計画の検討が6月以降始まるので、それに向けて我々の安全・安心科学技術委員会のほうから提言できればという主旨である。

―― 了 ―

 

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