資料3-2 研究計画・評価分科会における我が国全体の状況を把握するアウトカム指標について

研究計画・評価分科会における我が国全体の状況を把握するアウトカム指標について(案)


平成29年12月22日
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会

1 目的
 研究開発計画では、「中目標達成状況の評価のための指標」としてアウトプット指標とアウトカム指標を設定し、文部科学省の施策の成果・進捗を測定することとしている。
 プログラム評価を実施するに当たっては、これらに加え、当該分野に関する我が国全体の状況を把握するための指標を設定することで、国際比較や国内の状況を踏まえた施策の評価に資する。

2 論点
(1)国際比較ができることを前提とした指標のレベル感(研究開発活動に近い成果物である論文数や特許数がよいか、研究開発活動から発展して効果として現れる、特許実施料収入、関連する産業の売上高等がよいか。)【資料1-1検討すべき事項3(1)1 】
(2)統一的な指標とするか、統一性にこだわらず中目標ごとの特性に応じた指標とするか。【資料1-1検討すべき事項3(1)2 】

3 指標の候補
 可能な限り既存の資料で、各分野の研究開発の状況、研究開発による効果等を把握できるものとする。指標は、分野毎の事情に応じて最適と思われるものを選択する(別紙)。

【候補1:共通の指標案】各分野の研究内容(サブジェクトカテゴリ)ごとの論文数
施策として実施した研究開発の成果としての論文数だけでなく、当該中目標に係る分野の我が国全体の論文数を用いる。具体的には、クラリベイト・アナリティクス社(旧:トムソン・ロイター社 IP&Science 部門)のデータベースであるWeb of Science※1における各分野の研究内容(サブジェクトカテゴリ)※2の分類ごとの論文数を共通の指標とする。
 サブジェクトカテゴリごとの論文数は、科学技術・学術政策研究所が2年に1度公表している「科学研究のベンチマーキング」に2017年版から追加されているため、これを利用する。(参考資料2)
※1:Web of Science に収録されているのは、「ピア・レビューがあること、定期的な刊行であること、記事のタイトル、抄録、著者によるキーワードは英語で提供されていることなどにより選別されたジャーナル」である。
※2:サブジェクトカテゴリ(参考資料3)は、ジャーナルごとに付与されるもので、1ジャーナルに原則最大6つのサブジェクトカテゴリが付与される。
 

【候補2:中目標ごとの特性を考慮した指標案】社会・経済的に生み出される価値の内容等による指標
 関係する論文が、Web of Scienceのサブジェクトカテゴリに広く浅く分散しているなどにより、サブジェクトカテゴリでは動向を把握できない分野については、研究開発の活動自体やその成果により社会・経済的に生み出される価値の内容(産業データベースや温室効果ガス排出量等)による指標を利用することも考えられる。

4 留意点
(1)【候補1】、【候補2】共通の留意点
・研究開発の成果・効果となるまで時差があり、施策の実施の影響が含まれた状況とは異なっている可能性がある。
・指標の設定根拠や評価においての活用方法を明らかにしておく必要がある。
(2)【候補1】の留意点
・施策の対象としている研究開発とサブジェクトカテゴリの関係に濃淡があり、どのカテゴリまでを含めるべきか判断が難しい。
・異分野との融合を積極的に進める分野、新興領域が次々に生まれる分野などは、関係するサブジェクトカテゴリをあらかじめ決めておくことが難しい。
(3)【候補2】の留意点
・研究分野によって、施策の結果が実用化、産業化に結びつくまでの過程に遠近や施策の対象とする主体以外の主体の影響の違いが大きい。
・景気、為替レートの外部要因の影響を受けやすい。

 上記のような課題があるものの、プログラム評価の実施に当たって、中目標ごとの特性に応じて我が国全体の状況を把握するためのアウトカム指標を試行的に設定し、参考指標として、国際比較や国内の状況を踏まえた施策の評価に活用して行くこととしてはどうか。

5 指標の活用
(1)サブジェクトカテゴリごとの論文数【候補1】は、「科学研究のベンチマーキング」が2年に1度公表された際に、全分野の状況を事務局(企画評価課)から当分科会及び各委員会に報告することとする。
(2)サブジェクトカテゴリごとの論文数【候補1】を活用する場合は、「中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組」が関与するサブジェクトカテゴリごとの論文数の国際比較や状況の変化を確認することにより、研究開発の取組の寄与度について評価する。
(3)研究開発プログラム評価においては、当該分野の状況を俯瞰し、当該分野の国際比較や国内における研究開発や産業・経済への貢献の観点についても検討するための参考指標として活用する。
(4)我が国全体の状況を把握する指標候補については、「4 留意点」のような課題があることから、各委員会においては、これら以外にも、他の定量的なデータ、国際的な学会の情報等から、研究開発の特性や規模に応じて、対象となる研究開発の国際水準を踏まえた評価を実施する。【資料1-1検討すべき事項3(1)3 】 

別紙
【候補1】各分野の研究内容(サブジェクトカテゴリ)ごとの論文数を指標とする場合の例

○情報科学技術分野
「通信」「コンピューターサイエンス、人工知能」「コンピューターサイエンス、サイバネティクス」「コンピューターサイエンス、ハードウェア、アーキテクチャー」「コンピューターサイエンス、情報システム」「コンピューターサイエンス、学際的応用」「コンピューターサイエンス、ソフトウェアエンジニアリング」「コンピューターサイエンス、理論、手法」 「情報科学、図書館学」「電気通信」

○ナノテクノロジー・材料科学技術分野
「材料科学、総合」「冶金、冶金工学」「物理学、応用」「材料科学、セラミックス」「ナノ科学、ナノテクノロジー」「化学、物理」「材料科学、生体材料」「材料科学、複合材料」「物理学、凝縮物質」「材料科学、塗料、塗旗」「その他」(材料科学分野全て)

○量子科学技術分野
「生物物理学」「化学、分析」「化学、応用」「化学、無機、核」「化学、医薬品」「化学、総合」「化学、有機」「化学、物理」「通信」「コンピューターサイエンス、人工知能」「コンピューターサイエンス、サイバネティクス」「コンピューターサイエンス、ハードウェア、アーキテクチャー」「コンピューターサイエンス、情報システム」「コンピューターサイエンス、学際的応用」「コンピューターサイエンス、ソフトウェアエンジニアリング」「コンピューターサイエンス、理論、手法」「工学、電気電子」「工学、製造」「地球化学、地球物理学」「地球科学、総合」「物質科学、総合」「光学」「薬理学、薬学」「物理学、応用」「物理学、原子、分子、化学」「物理学、凝縮物質」「物理学、流体、プラズマ」「物理学、数理」「物理学、総合」「物理学、核」「物理学、粒子、界」

○環境エネルギー科学技術分野
1 大目標[2]に対する中目標
「地球化学、地球物理学」「地球科学、総合」「環境、サステイナビリティ科学、技術」「気象学、大気科学」「海洋学」
2 大目標[3]対する中目標
「コンピューターサイエンス、学際的応用」「コンピューターサイエンス、ソフトウェアエンジニアリング」「地球科学、総合」「環境、サステイナビリティ科学、技術」

○核融合科学技術分野
「核科学、核技術」「物理学、流体、プラズマ」「物理学、応用」「機器、計装」「物質科学、セラミックス」

○ライフサイエンス分野(脳科学分野含む)
「生化学、分子生物学」「複合科学」「薬理学、薬学」「神経科学」「植物学」「細胞生物学」「食品科学、食品技術」「バイオテクノロジー、応用微生物学」「微生物学」「免疫学」「その他」(基礎生命科学分野全て)

○防災科学技術分野
「地球化学、地球物理学」「地理学、自然」「気象学、大気科学」「コンピューターサイエンス、人工知能」「土木技術、建築技術」「工学、土木」「環境、サステイナビリティ科学、技術」「機器、計装」「都市研究」「行動科学」「教育学、科学分野」「社会科学、学際的」「社会科学、数学的手法」等

○原子力科学技術分野
「核科学、核技術」「物理学、応用」「物理学、総合」
「物質科学、総合」「物理学、流体、プラズマ」「物理学、凝縮物質」「物理学、核」等

【候補2】社会・経済的に生み出される価値の内容等による指標とする場合の例

【航空宇宙産業データベースを使用する例】
○航空科学技術分野
我が国の航空機の生産(売上)高の長期推移(別添)
(航空科学技術分野は、「科学研究のベンチマーキング」のサブジェクトカテゴリには航空分野のみの動向を把握できるものがなく、有用な指標にはなり難いため候補とする。)

【日本の温室効果ガス排出量を使用する例】
○環境エネルギー科学技術分野(大目標[1]対する中目標)
   (温室効果ガスの削減の取組に関与する分野は多岐にわたるため候補とする。)

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研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付

(研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付)